JP5044082B2 - 洗浄されたシトラスオイルフレーバーの製造方法 - Google Patents

Description

【０００１】
技術分野
本発明は、フレーバー工業に関する。特に、洗浄されたシトラスオイルフレーバー（citrus washed oil flavor）を製造するための方法に関し、この場合、この方法は、シトラスオイルを、プロピレングリコールとＣ_１〜Ｃ_４アルカノールとの混合物で処理することを含む。さらに、本発明は、本発明による方法によって調合された、洗浄されたシトラスオイルフレーバーで付香された透明清涼飲料（clear beverage）に関する。
【０００２】
背景技術
種々のシトラスオイルのフレーバー工業における重要性によって、処理方法、組成分析、品質および適用に関する、集中的な研究が行われてきた。
【０００３】
商業的に重要なシトラスオイルに関する詳細な組成データは、いくつかの文献で見出すことができる。オレンジオイル、グレープフルーツオイル、タンジェリンオイル、レモンオイルおよびライムオイルの成分として同定された種々の化学化合物の多くのリストが記載されている。
【０００４】
シトラスオイルの香気的性質は、オイル中で同定された一定の成分の特異的作用によるものである。また、シトラスオイル中に存在する主要な成分であるｄ−リモネンは、主に、シトラスフレーバーの性質の源となる他の含酸素化合物のためのフレーバーのキャリアーとして作用する。
【０００５】
したがって、シトラスフレーバーの要因となる、含酸素化合物のシトラスオイルからの抽出は、フレーバー工業に関してのかなり重要な分野である。香料がフォールディッド（folded）オイルから、抽出されたかまたは洗浄されたフレーバープロフィールで、望ましい含酸素化合物を抽出することによって製造されてもよいことは従来的に公知である。
【０００６】
従来技術において開示されている、洗浄されたオイルフレーバーの調合は、シトラスオイルから有用なフレーバー化合物を抽出するための溶剤として、水またはプロピレングリコールを使用する。たとえば、米国特許第３８０９７５７号明細書では、プロピレングリコールおよび炭化水素系溶剤を用いての選択的抽出による、オレンジオイルからのフレーバーエクストラクトの製造が記載されている。
【０００７】
エクストラクトまたはウオッシュ（wash）の質は、主に、抽出された化合物の選択性によって特徴付けられる。したがって、フレーバー工業の範囲内で、シトラスオイルからのウオッシュを調合する場合は、キー（key）となるシトラスフレーバー化合物、すなわち、含酸素化合物、たとえば、ネラール、ゲラニアール、ネラールアセテート、ゲラニアールアセテート、デカーナル、ヌートカトン等を選択的に得ることである。他の要求、たとえば、透明性または引火点は、最適化されたオイル製品を得るために必要である。
【０００８】
発明の実施形態
本発明において、洗浄されたシトラスオイルフレーバーを製造するための新規方法が見出され、この場合、この方法は、含酸素化合物を抽出するために通常使用されるプロピレングリコールと、Ｃ_１〜Ｃ_４アルカノールとを組合わせることを特徴とする。この方法は、驚くべきことに、シトラスオイル中に存在するキーフレーバー化合物について、選択的にウオッシュを得ることが可能であり、これは、さらに、このような製品に必要とされる品質および安全性に関する要求をすべて満たすものである。したがって、本発明は、洗浄されたシトラスオイルフレーバーを製造するための方法に関し、この場合、この方法は、シトラスオイルを、プロピレングリコールとＣ_１〜Ｃ_４アルカノールとの混合物で処理することを特徴とする。好ましい実施態様において、アルカノールは、エタノールおよびイソプロパノールから成る群から選択される。
【０００９】
本発明は、有利には、技術的に要求される透明性、引火点および使用量に関する目標を満たす、洗浄されたシトラスオイルフレーバーを得ることを可能にする。本発明による方法によって得られるウオッシュは、１００゜Ｆ（３８℃）を上廻る引火点を有し（すなわち、これらはクラスＩの液体に属する）、水中で透明に溶解し、かつ、０．０５〜０．２％、好ましくは０．１％のわずかなフルーツフレーバーを有する、ライトかつクリアーなプロフィールを有している。さらに、それぞれＣ_１〜Ｃ_４アルカノールを用いるかまたは用いないで調合された洗浄されたシトラスオイルの分析は、いくつかのアルカノールを用いて製造されたウオッシュが、プロピレングリコールのみで製造されたものよりも優れていることを明らかにした。この結果は、エタノールを用いた場合について、以下の比較可能な表中で示されている。
【００１０】
予想されなかったことだが、Ｃ_１〜Ｃ_４−アルカノールが、その低い引火点の観点から許容されることの加えて、引火点の制限を満たしながら、含酸素化合物を抽出するために一定のレベルで、アルカノールを用いて、洗浄されたシトラスオイルの調合を最適化することを見出した。
【００１１】
プロピレングリコールを有する混合物の抽出中で使用されるアルカノールの割合は、一定範囲の量で変更することができる。典型的には、シトラスオイル、プロピレングリコールおよびアルカノールを含有する組成物の全量に対して３〜１０％、好ましくは、５〜７％を含有していてもよい。シトラスオイル５〜１５％を、プロピレングリコール７５〜９０％およびアルカノール３〜１０％で処理することができる。
【００１２】
前記に示したように、Ｃ_１〜Ｃ_４−アルカノールとして、エタノールおよびイソプロパノールが好ましい。
【００１３】
本発明の方法のための出発生成物は、コールドプレスオイルの形で、商業的に入手可能な任意のシトラスオイルか、またはたとえば、フォールディッドオイル（folded oil）であってもよい。本発明の方法のために使用されてもよいシトラスオイルの制限されない例は、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、タンジェリン、ライム、キンカン、マンダリン、ベルガモットおよび他のエッセンシャルオイルまたはその混合物を含む。
【００１４】
抽出系の選択は、いくつかのエタノールからなる洗浄されたシトラスオイルと、７５％プロピレングリコール：２５％フレーバーオイルから成る、すなわちエタノールを含まない洗浄されたシトラスオイルとの間の比較によって試験されてもよい。
【００１５】
以下の表において、エタノールとプロピレングリコールとの組み合わせによって得られた洗浄されたオイルと、プロピレングリコールのみから得られた洗浄されたオイルとを比較した。
【００１６】
第１表は、レモンウオッシュの結果であり、同様に第２表は、グレープフルーツウオッシュの結果である。
【００１７】
【表１】

【００１８】
【表２】

【００１９】
【表３】

【００２０】
【表４】

【００２１】
以上の結果から、エタノールを用いて、シトラスオイルからキーフレーバー化合物（すなわち含酸素化合物、たとえば、ネラール、ゲラニアール、ネラールアセテート、ゲラニアールアセテート、デカナール、ヌートカトン等）を抽出することが有利であることが容易に推断される。
【００２２】
さらに、本発明は、付香組成物または付香製品のフレーバーの性質を付与、改善、増大または改質化するための方法に関し、この場合、この方法は、本発明の方法によって製造される洗浄されたシトラスオイルを、これらの組成物または製品に添加することを含む。
【００２３】
本発明の他の目的は、付香組成物または付香製品、たとえば透明飲料であり、この場合、これは、活性フレーバー成分として洗浄されたシトラスオイルフレーバーを含有し、その際、その割合は、組成物または製品の全質量の０．０５〜０．２％である。
【００２４】
本発明は、以下の例によって詳細に例証されてもよく、その際、温度は、℃で示され、かつ、略記は従来的に使用されている意味を有する。
【００２５】
実施例
例１
洗浄されたシトラスオイルフレーバーを製造するための一般的処理工程
冷却器を−８℃にする。
【００２６】
好ましい量のフレーバーオイルを、約１０〜１２℃の温度で、混合槽に添加する。
【００２７】
好ましい量のアルカノールを、約１０〜１２℃の温度で、混合槽に添加する。
【００２８】
オイルおよびアルカノールを、激しい攪拌によって２０分に亘って混合する（攪拌を調整し気泡を回避する）。
【００２９】
攪拌を止める。
【００３０】
好ましい量のプロピレングリコールを、２１℃の温度で、混合槽に添加する。
【００３１】
槽の内容物の温度を１９〜２３℃にする。
【００３２】
攪拌を開始し、かつ、溶液に空気が混入することなしに、２０分に亘って激しく混合する。
【００３３】
攪拌速度を、約１０〜１５ｒｐｍに低下させる。
【００３４】
混合槽の冷却ジャケットを可動させる。
【００３５】
約１時間に亘って、低い攪拌速度で冷却する（たとえば、１０〜１５ｒｐｍ）。温度が０〜５℃に達すると同時に攪拌を止める。
【００３６】
さらに３時間に亘って、槽の内容物を攪拌することなく、約−２℃〜０℃に連続的に冷却する。
【００３７】
合着（coalescer）生成物槽のジャケットを冷却する。
【００３８】
槽の内容物を、Ｐａｌｌ ５ミクロンフィルターおよび１ミクロンフィルターを通して、約２．６〜３．０ｋｇ／分（場合によっては：Ｗｅｓｔｆａｌｉｓ遠心分離器によって生成物を遠心分離してもよい。液−液遠心分離が好ましい）の速度で合着させる（coalesce）。合着生成物槽中の内容物を、２時間に亘って−２〜０℃でデカントする。
【００３９】
最終生成物の槽のジャケットを冷却する。
【００４０】
生成物は、飲料中での適用において透明であり、使用量は３℃で０．０５〜０．２％である。
【００４１】
フレーバーの製造
生成物の調合および処理方法を同定と同時に、以下のフレーバーを、プロピレングリコールとエタノールとの混合物によって製造した：
天然のライムフレーバー^＊
天然のピンクグレープフルーツフレーバー^＊
天然グレープフルーツフレーバー^＊
天然オレンジフレーバー^＊
天然レモンフレーバー^＊
＊オイルの出所：フィルメニッヒ シトラスセンター、フロリダ、ＵＳＡ（Firmenich Citrus Center, Florida, USA）
第３表は、シトラスウオッシュの調合を示す。
【００４２】
【表５】

【００４３】
このようにして得られた洗浄されたオイルフレーバーを、連続的に、盲試験上で、フレーバー技術の専門家のパネルによって評価し、抽出およびその後の前記に示された方法によって得られるが、しかしながらプロピレングリコール ７５％とフレーバーオイル ２５％のみを使用する相当する洗浄されたオイルと比較した。洗浄されたオイルに関する系統的選好（systematic preference）を示したパネルは第３表に示されており、これらの官能的性質は、エタノールなしで得られた洗浄されたオイルフレーバーのものよりも優れていると判断された。
【００４４】
この結果は、それぞれ第１表および第２表に示されたレモンウオッシュおよびグレープフルーツウオッシュのＧＣ／ＭＳＤ分析を証明するものであった。

Claims (10)

1. 洗浄されたシトラスオイルフレーバーの製造方法において、シトラスオイル５〜１５％を、プロピレングリコール７５〜９０％とＣ_１〜Ｃ_４アルカノール３〜１０％との混合物で処理することを特徴とする、洗浄されたシトラスオイルフレーバーの製造方法。
2. アルカノールを、エタノールとイソプロパノールとから成る群から選択する、請求項１に記載の方法。
3. 洗浄されたシトラスオイルフレーバーが、１００゜Ｆ（約３７．８℃）を上廻る引火点を有する、請求項１に記載の方法。
4. シトラスオイルが、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、タンジェリン、ライム、キンカン、マンダリン、ベルガモットまたはこれらの混合物から選択される、請求項１に記載の方法。
5. 請求項１に記載の方法によって得ることが可能な、洗浄されたシトラスオイルフレーバー。
6. 付香組成物または付香製品のフレーバーの性質を付与、改善、増強または改質化するための方法において、請求項５に記載の洗浄されたシトラスオイルフレーバーを、これらの組成物または製品に添加することを特徴とする、付香組成物または付香製品のフレーバーの性質を付与、改善、増強または改質化するための方法。
7. 活性フレーバー成分として、請求項５に記載の洗浄されたシトラスオイルフレーバーを含有する、付香組成物または付香製品。
8. 洗浄されたシトラスオイルフレーバーの割合が、組成物または製品の全質量に対して０．０５〜０．２％である、請求項７に記載の付香組成物または付香製品。
9. 香料として、請求項５に記載の洗浄されたシトラスオイルフレーバーを含有する、透明飲料。
10. 請求項５に記載の洗浄されたシトラスオイルフレーバー ０．０５〜０．２％で付香された、請求項９に記載の透明飲料。