JP7341636B2 - 果汁含有飲料 - Google Patents
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Description
ところが果汁含有飲料は、特に果汁含量が多い場合には、加熱殺菌や長期保存することにより、果汁由来の成分が変化して加熱臭やイモ臭などと表現される異風味(オフフレーバー)が強く感じられ、従来果汁のもつ、果物を想起させる風味がマスキングされてしまう。また、該オフフレーバーは果汁の濃縮によっても生じるため、果汁含有飲料の製造において濃縮果汁を使用する場合には問題となる。特にレモン濃縮果汁は、濃縮時に他の果物の果汁よりも一般に高温で濃縮されるため、オフフレーバーが生じやすい。
本発明は、レモン果汁含有飲料において、飲んだ時にオフフレーバーが感じられるのを抑制できる新規な技術を提供することを目的とする。
また、本発明者は鋭意研究の結果、レモン果汁含有飲料中のリモネンとノナナールについて所定の関係を満足するように飲料を構成することで、オフフレーバーを抑制でき、且つ所定の果汁含有率としたときには飲みやすさも改善できることを見出した。
[1] レモン果汁を含む飲料であって、
リモネンとノナナールを含有し、
リモネンの含有量(x,ppm)とノナナールの含有量(y,ppm)について以下の関係を満足する飲料。
a)x≧8
b)y≧0.05
c)y≧0.0025x-0.0025
d)y≦0.02x-0.02
[2] レモン果汁の果汁含有率が10%以上である[1]に記載の飲料。
[3] レモン果汁の果汁含有率が25%以下である[1]または[2]に記載の飲料。
[4] アルコールをさらに含有する[1]から[3]のいずれか一つに記載の果汁含有飲料。
[5] アルコールの含有量が1~10容積%である[4]に記載の果汁含有飲料。
[6] 炭酸ガスをさらに含有する[1]から[5]のいずれか一つに記載の果汁含有飲料。
[7] レモン果汁を含む飲料において、リモネンの含有量(x,ppm)とノナナールの含有量(y,ppm)について以下の関係を満足するようにリモネンとノナナールを含有させることを含む、オフフレーバーのマスキング方法。
a)x≧8
b)y≧0.05
c)y≧0.0025x-0.0025
d)y≦0.02x-0.02
本実施形態はレモン果汁飲料に関し、リモネンに加えてノナナールを含有する。また、リモネンの含有量(x,ppm)とノナナールの含有量(y,ppm)について、以下の関係を満足する。
a)x≧8
b)y≧0.05
c)y≧0.0025x-0.0025
d)y≦0.02x-0.02
なお、本明細書において、オフフレーバーとは、上述のとおり、加熱臭やイモ臭などと表現され加熱や長期保存などにより果汁由来の成分が変化して生じる、果汁の果物を想起させる風味を妨げる異風味をいう。
この点、具体的に説明すると、リモネン、ノナナールの添加によりオフフレーバーが抑制されるが、これらの含有量を増加させるときには、リモネンの増加に由来して酸味様の刺激が強く感じられるようになったり、ノナナールの増加に由来して樹脂のような香りが感じられるようになることがある。その場合、リモネン、ノナナールの含有量無調整のレモン果汁含有飲料と比較して、飲料の飲みやすさが損なわれてしまう。
本実施形態の飲料においては、上記a)、b)、c)およびd)の関係を満足することにより、レモン果汁の含有量を25%以下とする場合には、飲料の飲みやすさについても、リモネン、ノナナールの含有量無調整のレモン果汁含有飲料と比較して、改善することができる。
また、レモン果汁として市販のジュースや濃縮ジュース、ペーストなどを用い、本実施形態の飲料を調製するようにしてもよい。具体的には、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)で指定されたジュースや濃縮ジュースを挙げることができ、例えばこれらのうち1種または2種以上を本実施形態の果汁含有飲料調製のために用いることができる。
ここで、果汁含有率とは、果実等の食用部分を搾汁して得られ、濃縮等の処理を行っていない搾汁(ストレート果汁)のBrix値または酸度を100%としたときの、相対濃度である。また、本明細書においてBrix値は、JAS規格に基づき、試料の温度(液温度)20℃における糖用屈折計の示度をいう。Brix値の測定は、公知の方法、装置を用いて行うことができる。また、酸度は、100g中に含まれる有機酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100g)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
果汁含有率をBrix値または酸度のいずれに基づいて算出するかはJAS規格に基づき果物の種類ごとに定められている。レモンの場合は酸度に基づいて算出する。
例えば、レモンについてはストレート果汁の酸度が4.5%であるから、酸度が30%の濃縮レモンジュースを飲料中1.6重量%配合した場合、10%の果汁含有率の飲料を得ることができる。
a)x≧8
b)y≧0.05
c)y≧0.0025x-0.0025
d)y≦0.02x-0.02
また、リモネン、ノナナールの飲料における含有量の測定は例えばガスクロマトグラフィー質量分析法によって行うことができる。測定は例えば実施例に示す条件に基づいて行うことができる。
飲料のpHや酸度は適宜設定でき、特に限定されない。例えば、pHは2.0~4.5とすることができる。また、酸度は0.25~1.05w/v%とすることができる。なお、酸度は国税庁所定分析法にて定められた酸度の測定方法に基づいて算出される。
また、本実施形態の果汁含有飲料は炭酸ガスを含有する炭酸飲料としてもよい。炭酸ガスを飲料中に含有させる方法は特に限定されず、当業者が適宜設定できる。また、炭酸ガスの含有量(ガスボリューム)は特に限定されないが、例えば1.5~4.5とすることができる。本明細書中においてガスボリューム(G.V.)とは、炭酸飲料中の炭酸ガス量を表す単位を示し、標準状態(1気圧、20℃)における、炭酸飲料の体積に対する炭酸飲料中に溶解した炭酸ガスの体積の比を指す。このガスボリュームは、たとえば、京都電子工業社製ガスボリューム測定装置GVA-500Bを用いて測定することができる。より具体的には、試料温度を20℃とし、ガスボリューム測定装置にて、容器内空気中のガス抜き(スニフト)、振とうした後、このガスボリュームの測定を行うことができる。
例えば、濃縮果汁を原料として用い、これを水で希釈する。炭酸飲料とする場合には、希釈に炭酸水を用いるようにしてもよい。次いで当該希釈液に上記a)、b)、c)およびd)の関係を満足するようにリモネン、ノナナールを添加し、さらにその他必要に応じて加えられる成分を添加するなどして果汁含有飲料を調製する。
添加する順序などは特に限定されず、当業者が適宜設定できる。また、炭酸飲料とする場合、上記希釈において炭酸水を用いる方法のほか、容器に充填する前に所定のガスボリュームになるようにカーボネーションを行うことにより、炭酸飲料とすることもできる。
容器への封入方法などは特に限定されず、例えば常法に従って行うことができる。
容器も公知のものを適宜選択して用いることができ、素材や形状など特に限定されない。容器の具体例としては、例えば、紙容器、透明又は半透明のビン、PETボトル等の透明又は半透明のプラスチック容器、スチール缶やアルミニウム缶等の金属缶などが挙げられる。
また、容器詰飲料とするにあたり、必要に応じて殺菌等の工程を経て製造することができる。殺菌する方法は特に限定されず当業者が適宜設定でき、例えば、飲料を容器に充填した後に熱水シャワー殺菌等の加熱殺菌を行う方法や、飲料を殺菌してから容器に充填する方法などを挙げることができる。
[ベース液1の調製]
レモン混濁濃縮果汁(雄山株式会社より購入、酸度:32.5):18g、原料用アルコール44ml、果糖ぶどう糖液糖30g、クエン酸ナトリウム1.5gと1000mlとする量の水とを混合し、得られた混合液に炭酸ガスを加えて、ベース液1を調製した(アルコール4%、果汁12%、pH3.2、酸度:0.55w/v%、ガスボリューム:2.2~2.4)。
なお、各種化合物無添加である対照(ベース液1)において、リモネンの含有量は1ppmであり、他の3種の化合物は検出されなかった。
0.5gの試料に対して0.5mlのエタノールと100μLの内部標準(20ppm リナロール-d5)を添加した後に、超純水で50倍希釈した。希釈した試料の香気成分をTwisterに吸着(40℃、2時間)させ、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)分析を行い、内部標準添加法により定量を行った。
<GC条件>
装置:昇温気化型注入口(CIS4,Gerstel社製)、加熱脱着ユニット(TDU,Gerstel社製)、GC System(7890B、Agilent Technologies社製)、Mass Selective Detector(5977、Agilent Technologies社製)
LTMカラム(1st:DB-WAX,20m×0.18mm;0.3μm、2nd:DB-5,10m×0.18mm;0.4μm,Agilent Technologies社製)
TDU:20℃(1min)-(720℃/min)-250℃(3min)
CIS4:-50℃(1.5min)-(12℃/sec)-240℃(45min)
スプリット比:10:1
注入口圧:508.28kPa
1stカラム温度:40℃(3min)-(5℃/min)-180℃(0min)
2ndカラム温度:40℃(31min)-(5℃/min)-180℃(0min)
MSD:SCAN mode,m/z 29-230,20Hz,EI
官能試験は、訓練されたパネリスト5名で行い、対照と比べてオフフレーバーが抑制されていれば○、同等もしくは増強であれば×と評価し、過半数のパネリストが選択したほうを評価として採用した。
ベース液1にリモネンとノナナールを添加し、表2に示す含有量の実施例、参考例および比較例の飲料を得た。
オフフレーバーについて、参考試験と同様の官能試験を行い、対照より良ければ効果ありとした。
また、併せて、飲みやすさについても対照と同等もしくは飲みづらくなっているものを×、飲みやすくなっているものを〇として評価を行った。なお、表中では、併せて、対照と比較して酸味様の刺激や樹脂的な香りが感じられるケースについて、×を付して示している。
オフフレーバー、飲みやすさとも、過半数のパネリストが選択したほうを評価として採用した。
なお、オフフレーバーに関しては、すべての実施例、参考例とも抑制されていた。
具体的には、リモネンの含有量(ppm)をx、ノナナールの含有量(ppm)をyとする場合に、y≧0.0025x-0.0025かつy≦0.02x-0.02を満たす範囲で、なおかつx≧8、y≧0.05の範囲であると、オフフレーバーが抑制されており、飲みやすさも改善された飲料が得られたことが理解できる。
ベース液1について果汁含有率を表3に示す値に変更した。果汁含有率10%のものについては、糖は果糖ぶどう糖液糖、酸はクエン酸を用いて、糖酸比がベース液1と同じとなるように調整した。得られたベース液にリモネン、ノナナールを添加した。これらの含有量を表3に示す。
実施例1と同様の官能試験を行い、同じ果汁含有率のリモネン、ノナナール無添加である対照(比較例)と比較した。
Claims (4)
- レモン果汁を含み、レモン果汁の果汁含有率が10%以上25%以下であり、アルコールをさらに含有する飲料であって、
リモネンとノナナールを含有し、
リモネンの含有量(x,ppm)とノナナールの含有量(y,ppm)について以下の関係を満足する飲料。
a)x≧8
b)y≧0.05
c)y≧0.0025x-0.0025
d)y≦0.02x-0.02 - アルコールの含有量が1~10容積%である請求項1に記載の飲料。
- 炭酸ガスをさらに含有する請求項1または2に記載の飲料。
- レモン果汁を含み、レモン果汁の果汁含有率が10%以上25%以下であり、アルコールをさらに含有する飲料において、リモネンの含有量(x,ppm)とノナナールの含有量(y,ppm)について以下の関係を満足するようにリモネンとノナナールを含有させることを含む、オフフレーバーのマスキング方法。
a)x≧8
b)y≧0.05
c)y≧0.0025x-0.0025
d)y≦0.02x-0.02
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