JP5043577B2 - 熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物 Download PDF

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Description

本発明は、基材との密着性、耐折性、低反り性、はんだ耐熱性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性等に優れた可撓性の被膜形成に適した熱硬化性樹脂組成物、並びにその硬化物からなる保護膜や絶縁材料に関し、プリント配線板の製造、特にフレキシブルプリント配線板の製造やテープキャリアパッケージの製造に用いられるソルダーレジストや層間絶縁膜等の保護膜や絶縁層、又は液晶ディスプレイのバックライトや情報表示用のディスプレイ等に使用されるエレクトロルミネッセントパネルの背面電極用保護膜や、携帯電話、時計、カーステレオ等の表示パネルの保護膜、ICや超LSI封止材料などに有用である。
フレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージの製造に用いられるソルダーレジストとしては、カバーレイフィルムと呼ばれるポリイミドフィルムをパターンに合わせた金型で打ち抜いた後、接着剤を用いて貼り付けるタイプや、可撓性を有する被膜を形成する紫外線硬化型、熱硬化型のソルダーレジストインキをスクリーン印刷により塗布するタイプや、可撓性を有する被膜を形成する液状フォトソルダーレジストインキのタイプが用いられている。
しかしながら、カバーレイフィルムでは、銅箔との追随性に問題があるため、高精度なパターンを形成することができない。一方、紫外線硬化型ソルダーレジストインキ及び液状フォトソルダーレジストインキでは、基材のポリイミドとの密着性が悪く、また充分な可撓性が得られない。さらに、ソルダーレジストインキの硬化収縮及び硬化後の冷却収縮が大きいため反りが生じてしまい、問題となっている。
また、従来の熱硬化型ソルダーレジストインキとしては、特公平5−75032号(特許文献1)に開示されているようなエポキシ樹脂と二塩基酸無水物を必須成分とするエポキシ樹脂系レジストインキ組成物があるが、形成される被膜に可撓性を付与するように調整した場合、基材のポリイミドとの密着性が悪くなり、耐めっき性、プレッシャー・クッカー・テスト耐性(PCT耐性)並びにはんだ耐熱性が低下するという問題がある。
そこで、特開2006−117922号(特許文献2)では、(A)1分子中に2個以上のカルボキシル基を有し、かつポリカーボネートジオール(a)とポリイソシアネート(b)との反応で形成されるウレタン結合を有するポリウレタン、及び(B)熱硬化性成分を含む熱硬化性樹脂組成物が提案されている。熱硬化性成分としてのエポキシ樹脂と組み合わせてこのようなカルボキシル基含有ウレタン樹脂を用いることにより、前記した従来のソルダーレジストインキの問題点は解決できるが、はんだ耐熱性等の特性において未だ改良すべき点が残されていた。
特公平5−75032号公報(特許請求の範囲) 特開2006−117922号公報(特許請求の範囲)
従って、本発明の目的は、前述したような従来技術の問題点を解決し、基材との密着性、耐折性、低反り性、はんだ耐熱性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性等に優れた可撓性の被膜形成に適した熱硬化性樹脂組成物を提供し、もって比較的低コストでその硬化物からなる保護膜や絶縁層を形成したプリント配線板、特にフレキシブルプリント配線板や、テープキャリアパッケージ等の部品もしくは製品を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明によれば、(A)芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物を用いて得られたカルボキシル基含有ウレタン樹脂と、(B)エポキシ樹脂とを含有し、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)が、(a)芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物と、(b)1分子中に2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物と、(c)1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基と1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物とを反応させて得られたカルボキシル基含有ウレタン樹脂であり、前記エポキシ樹脂(B)の配合量は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)100質量部に対し、5〜150質量部の割合であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物が提供される。尚、本明細書において、「芳香環」とはベンゼン環及びそれを含む縮合環を意味する。
に好ましくは、前記芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)は、脂肪族イソシアネート化合物(脂環式イソシアネート化合物を含む)、より好ましくは分岐脂肪族イソシアネート化合物である。
好適な態様においては、さらに(C)硬化促進剤を含有することが好ましい。さらに無機及び/又は有機フィラーを含有することもでき、必要に応じて有機溶媒を含有することもできる。
さらに本発明によれば、前記熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物や、該硬化物で、面の一部又は全部が被覆されたプリント配線基板も提供される。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物、好ましくは脂肪族イソシアネート化合物(脂環式イソシアネート化合物を含む)、特に分岐脂肪族イソシアネート化合物を用いて得られたカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)を含有することを特徴としているため、その硬化物は低反り性、耐折性に優れると共に、相反する特性であるはんだ耐熱性にも優れている。一般に、ウレタン樹脂は、ウレタン結合の強い凝集力により結晶化し易いが、その結晶化の度合いは、用いたイソシアネート化合物の種類に従って芳香族イソシアネート>脂肪族イソシアネート>分岐脂肪族イソシアネートであった。本発明者らの研究によれば、詳細は明らかでないが、結晶化の度合いは、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂との熱硬化反応後の反りと耐折性の状況と一致していた。すなわち、ウレタン結合の結晶性は硬化物の反りや耐折性と関係があり、結晶性を低下させることにより、低反りの硬化物を与えることが明らかとなった。さらには、従来、低反り化には不向きである高性能を有する高いガラス転移点(Tg)の多官能エポキシ樹脂等を使用してもなお、低反り性、耐折性に優れると共に、熱硬化の際にカルボキシル基含有ウレタン樹脂のカルボキシル基がエポキシ樹脂(B)の官能基、即ちエポキシ基と架橋反応を起こすため、はんだ耐熱性を向上させることができるようになった。
また、本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)は、(a)芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物と、(b)1分子中に2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物と、(c)1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基と1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物とを反応させて得られるものである。このウレタン樹脂は、末端イソシアネート基が上記化合物(c)で封止されるため、分子末端に未反応のイソシアネート残基が無く、ウレタン樹脂の保存安定性を向上させることができる。また、前記1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)が、1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する場合、得られる組成物の保存安定性を向上させるだけでなく、ウレタン樹脂の末端にフェノール性ヒドロキシル基を有するため、エポキシ樹脂(B)の官能基、即ちエポキシ基との反応性が高くなり、はんだ耐熱性等の特性をさらに向上させることができる。
従って、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、基材との密着性、耐折性、低反り性、はんだ耐熱性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性等に優れた可撓性の被膜形成に適している。
そのため、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、可撓性に優れたフレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージの製造に用いられるソルダーレジスト等の保護膜や絶縁樹脂材料として有用である。また、このような熱硬化性樹脂組成物から得られる被膜は、熱硬化後に反りがないため、フレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージへの部品又はチップの装着が容易である。その結果、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いることにより、上記のような各種分野において、密着性、耐折性、低反り性、無電解金めっき耐性、はんだ耐熱性、電気絶縁性等の諸特性に優れた可撓性の保護膜を低コストで生産性良く形成できる。
本発明者らは、前記した課題を解決すべく鋭意研究した結果、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物を用いて得られたカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)、より好ましくは、(a)芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物と、(b)1分子中に2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物と、(c)1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基と1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物とを反応させて得られるカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)をエポキシ樹脂(B)と共に含む熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化の際にこのカルボキシル基がエポキシ樹脂(B)の官能基、即ちエポキシ基と架橋反応を起こし、はんだ耐熱性等の特性を向上できることを見出した。一般に、樹脂の架橋密度が低くなる程、形成される被膜の可撓性が増大し、熱硬化後の被膜の反りは少なくなる。しかしながら、架橋密度が低くなると、得られる被膜のはんだ耐熱性、めっき耐性、耐薬品性等の特性も低下し易くなる。本発明では、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物を使用して得られたカルボキシル基含有ウレタン樹脂を用いることにより、ウレタン樹脂の結晶性を下げることができ、その結果、反りや耐折性の要求されるフレキシブル基板用ソルダーレジストに使用することが困難であった高性能を有する高いガラス転移点(Tg)のエポキシ樹脂や多官能エポキシ等を用いることが可能となり、低反り性を維持しつつ、はんだ耐熱性等の特性を向上することができた。
また、前記1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)が、さらに1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する場合、分子末端にフェノール性ヒドロキシル基を有するウレタン樹脂が得られる。この分子末端にフェノール性ヒドロキシル基を有するウレタン樹脂は、熱硬化の際にこのフェノール性ヒドロキシル基がエポキシ樹脂の官能基、即ちエポキシ基と架橋反応を起こし、さらにはんだ耐熱性等の特性を向上できることを見出した。
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
まず、本発明のカルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)は、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と、1分子中に2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)と、反応停止剤としても機能する前記1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基及び1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)との反応により、末端に導入されたフェノール性ヒドロキシル基を有するウレタン樹脂であることが好ましいが、これ以外にも、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と、1分子中に2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)との反応により得られ、該化合物(b)として、フェノール性ヒドロキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物を用いて分子側鎖にフェノール性ヒドロキシル基を導入したウレタン樹脂、あるいはさらに1分子中にカルボキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物を用いて分子側鎖にカルボキシル基を導入したウレタン樹脂などを含む。後者のウレタン樹脂においては、末端封止剤(反応停止剤)として、上記1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基及び1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)を用いることができるほか、脂肪族アルコールやモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート化合物等のモノヒドロキシル化合物や、アルコール性ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基等のイソシアネート基と付加反応又は縮合反応し得る官能基を有するモノカルボン酸など、従来公知の各種反応停止剤を用いることができる。
前記ウレタン樹脂(A)は、例えば、前記好適なウレタン樹脂の場合、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と、1分子中に2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)と、1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基と1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)とを一括混合して反応させてもよく、あるいは上記芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と、1分子中に2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)とを反応させ、続いて反応停止剤としても機能する上記1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基と1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)を反応させてもよい。また、前記した他のウレタン樹脂の場合、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と、1分子中にフェノール性ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基と2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)と、反応停止剤とを一括混合して反応させてもよいが、分子量調整の点からは、上記芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)と上記化合物(b)とを反応させ、続いて反応停止剤を反応させることが好ましい。
前記反応は、室温〜100℃で撹拌・混合することにより無触媒で進行するが、反応速度を高めるために70〜100℃に加熱することが好ましい。また、上記(a)〜(c)成分の反応比率(モル比)としては、(a):(b)=1:1〜2:1、好ましくは1:1〜1.5:1、(a+b):(c)=1:0.01〜0.5、好ましくは1:0.02〜0.3の割合が適当である。
前記芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)としては、従来公知の各種の芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物を使用でき、特定の化合物に限定されない。芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)の具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の分岐脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、(o,m,又はp)−(水添)キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネートであるトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。これらの芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらのジイソシアネート化合物を使用した場合、低反り性に優れた硬化物を得ることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、芳香族ジイソシアネートを用いることもできる。
次に、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b)としては、従来公知の各種ポリオールを使用でき、特定の化合物に限定されないが、ポリカーボネートジオール等のポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ポリイソプレン系ポリオール、水素化ポリブタジエン系ポリオール、水素化イソプレンポリオール、リン含有ジオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、カルボキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物、フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物、リン含有ポリオール等を好適に用いることができる。ポリカーボネートジオールとしては、1種又は2種以上の直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b−1)、1種又は2種以上の脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b−2)、又は直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの両方のジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b−3)が挙げられる。また、カルボキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b−4)、さらにフェノール性ヒドロキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b−5)等を用いた場合、分子側鎖に官能基(フェノール性ヒドロキシル基やカルボキシル基)を持たせることができる。リン含有ポリオール(b−6)を用いた場合、ウレタン樹脂に難燃性を付与することができる。これらの化合物(b−1)〜(b−6)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記、1種又は2種以上の直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b−1)の具体例としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール、1,9−ノナンジオールと2−メチル−1,8−オクタンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
前記、1種又は2種以上の脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b−2)の具体例としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールから誘導されるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
前記、直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの両方のジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオール(b−3)の具体例としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールと1,4−シクロヘキサンジメタノールから誘導されるポリカーボネートジオール等が挙げられる。
前記、カルボキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b−4)の具体例としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が挙げられる。これらのカルボキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物を使用することによって、ウレタン樹脂中に容易にカルボキシル基を導入することができる。
前記、フェノール性ヒドロキシル基及び2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(b−5)の具体例としては、6−ヒドロキシ−5−メチル−1,3−ベンゼンジメタノール、2,4−ジ(ヒドロキシメチル)−6−シクロヘキシルフェノール、3,3’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−5−メチル−ベンゼンメタノール)、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス[2−メチル−6−ヒドロキシメチルフェノール]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビス[2−メチル−6−ヒドロキシメチルフェノール]、2−ヒドロキシ−5−フルオロ−1,3−ベンゼンジメタノール、4,4’−メチレンビス(2−メチル−6−ヒドロキシメチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,5−ジメチル−3−ヒドロキシメチルフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2−メチル−6−ヒドロキシメチルフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2−シクロヘキシル−6−ヒドロキシメチルフェノール)、2,6−ビス[(2−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−5−エチル−1,3−ベンゼンジメタノール、2−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−1,3−ベンゼンジメタノール、2−ヒドロキシ−5−(1−メチルプロピル)−1,3−ベンゼンジメタノール、4−(1,1−ジメチルエチル)−2−ヒドロキシ−1,3−ベンゼンジメタノール、2−ヒドロキシ−5−シクロヘキシル−1,3−ベンゼンジメタノール、2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−1,3−ベンゼンジメタノール、2,6−ビス[(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルフェニル)メチル]−3,4−ジメチルフェノール、2,6−ビス[(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルフェニル)メチル]−4−シクロヘキシルフェノール、2−ヒドロキシ−1,3,5−ベンゼントリメタノール、3,5−ジメチル−2,4,6−トリヒドロキシメチルフェノール、4,4’,4”−エチリジントリス(2−メチル−6−ヒドロキシメチルフェノール)、2,3,5,6−テトラ(ヒドロキシメチル)−1,4−ベンゼンジオール、4,4’−メチレンビス[2,6−ビス(ヒドロキシメチル)フェノール]等が挙げられる。これらのフェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物を使用することによって、ウレタン樹脂中に容易にフェノール性ヒドロキシル基を導入することができる。
前記直鎖状脂肪族ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールは、低反り性や可撓性に優れる傾向がある。また、脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールは、耐錫めっき性、はんだ耐熱性に優れる傾向にある。以上の観点から、これらポリカーボネートジオールは2種以上を組み合わせて用いるか、あるいは直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの両方のジオールに由来の繰り返し単位を構成単位として含むポリカーボネートジオールを用いることができる。低反り性や可撓性と、はんだ耐熱性や耐錫めっき性とをバランスよく発現させるには、直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの共重合割合が質量比で3:7〜7:3のポリカーボネートジオールを用いるのが好ましい。
前記ポリカーボネートジオールは、数平均分子量200〜5,000のものが好ましいが、ポリカーボネートジオールが構成単位として直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールに由来の繰り返し単位を含み、直鎖状脂肪族ジオールと脂環式ジオールの共重合割合が質量比で3:7〜7:3である場合は、数平均分子量が400〜2,000のものが好ましい。
前記ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体としては、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体、ブチレンオキシド付加体等が挙げられるが、これらの中でもビスフェノールAのプロピレンオキシド付加体が好ましい。
前記リン含有ポリオールの具体例としてはFC−450(旭電化工業(株)製)、M-Ester(三光(株)製)、M-Ester-HP(三光(株)製)等が挙げられる。このリン含有ポリオールを用いることによりウレタン樹脂中にリン化合物を導入することができ、難燃性を付与することができる。
次に、1つのアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物としては、従来公知の各種モノヒドロキシ化合物を使用でき、特定の化合物に限定されないが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、前記各(メタ)アクリレートのカプロラクトン又は酸化アルキレン付加物、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリルレート、アリルアルコール、アリロキシエタノール、グリコール酸、ヒドロキシピバリン酸等があるが、これらに限定されるものではない。
フェノール性ヒドロキシル基を有する、前記1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物(c)は、ポリウレタンにフェノール性ヒドロキシル基を導入させる目的で用いられ、ポリウレタンの末端封止剤としても機能し、特に分子中にイソシアネートと反応し得る1つのアルコール性ヒドロキシル基及びフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物であれば反応停止剤として機能する。このような化合物(c)の具体例としては、例えばヒドロキシメチルフェノール、ヒドロキシメチルクレゾール、ヒドロキシメチル−ジ−t−ブチルフェノール、p−ヒドロキシフェニル−2−メタノール、p−ヒドロキシフェニル−3−プロパノール、p−ヒドロキシフェニル−4−ブタノール、ヒドロキシエチルクレゾール、2,6−ジメチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、2,4−ジメチル−6−ヒドロキシメチルフェノール、2,3,6−トリメチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、2−シクロヘキシル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルフェノール、4−メチル−6−ヒドロキシメチルベンゼン−1,2−ジオール、4−(1,1−ジメチルエチル)−6−ヒドロキシメチルベンゼン−1,2−ジオール等のヒドロキシアルキルフェノール又はヒドロキシアルキルクレゾール;ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフェニル安息香酸、あるいはヒドロキシフェノキシ安息香酸等のカルボキシル基含有置換基を有するフェノールと、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等とのエステル化物;ビスフェノールのモノエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールのモノプロピレンオキサイド付加物、p−ヒドロキシフェネチルアルコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの化合物(c)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は500〜100,000であることが好ましく、8,000〜50,000がさらに好ましい。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の値である。カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が500未満では、硬化膜の伸度、可撓性、並びに強度を損なうことがあり、一方、100,000を超えると溶媒への溶解性が低くなる上に、溶解しても粘度が高くなりすぎるために、使用面で制約が大きくなる。
前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)の酸価は10〜120mgKOH/gの範囲にあることが好ましく、20〜80mgKOH/gがさらに好ましい。酸価が10mgKOH/g未満では熱硬化性成分との反応性が低下し、耐熱性を損ねることがある。一方、酸価が120mgKOH/gを超えると、硬化膜の耐アルカリ性、電気特性等のレジストとしての特性が低下する場合がある。なお、樹脂の酸価はJIS K5407に準拠して測定した値である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)と共に配合される熱硬化性化合物としては、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)のカルボキシル基(あるいはさらにフェノール性ヒドロキシル基)と反応し得るエポキシ基、オキセタニル基等を1分子中に2個以上有するエポキシ樹脂やオキセタン化合物を好適に使用できるが、特にエポキシ樹脂(B)が好ましい。
エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、2官能エポキシ樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられ、多官能エポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノールノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、ヘテロサイクリックエポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などが挙げられる。さらに好ましい高Tgの硬化物を得られ易いエポキシ樹脂としては、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂などが挙げられ、具体的には、テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂であるGTR−1800(日本化薬(株)製)、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂であるHP−7200H(大日本インキ化学工業(株)製)、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂であるHP−4032D、EXA−7240、EXA−4700、EXA−4770(大日本インキ化学工業(株)製)、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂であるESN−175(東都化成(株)製)、キサンテン骨格を有するエポキシ樹脂であるEXA−7335(大日本インキ化学工業(株)製)、ビフェノールノボラックエポキシ樹脂であるNC−3000(日本化薬(株)製)が挙げられ、これらの多官能エポキシ樹脂や他の3官能及び4官能エポキシ樹脂等を用いることにより、はんだ耐熱性等の特性を向上させることができる。
また、難燃性付与のために、塩素、臭素等のハロゲンや燐等の原子がその構造中に導入されたエポキシ樹脂を使用してもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、前記エポキシ樹脂(B)は、単独で又は2種以上の混合物として用いられる。その配合量は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)100質量部に対し、5〜150質量部、好ましくは10〜80質量部の割合であることが望ましい。5質量部未満では、熱硬化性樹脂組成物の硬化被膜のはんだ耐熱性が不充分となる場合があり、一方、150質量部を超えると、フレキシブルプリント配線基板(FPC)の絶縁保護膜として使用した場合の諸特性、特に電気絶縁性が悪化する傾向がある。
本発明で用いる硬化促進剤(C)は、熱硬化反応を促進させるものであり、密着性、耐薬品性、耐熱性等の特性をより一層向上させるために使用される。このような硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール及びその誘導体(例えば、四国化成工業(株)製、2MZ、2E4MZ、C11Z、C17Z、2PZ、1B2MZ、2MZ−CN、2E4MZ−CN、C11Z−CN、2PZ−CN、2PHZ−CN、2MZ−CNS、2E4MZ−CNS、2PZ−CNS、2MZ−AZINE、2E4MZ−AZINE、C11Z−AZINE、2MA−OK、2P4MHZ、2PHZ、2P4BHZ等);アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類;これらの有機酸塩及び/又はエポキシアダクト;三フッ化ホウ素のアミン錯体;エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン等のトリアジン誘導体類;トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、ヘキサ(N−メチル)メラミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m−アミノフェノール等のアミン類;ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック等のポリフェノール類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−2−シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類;トリ−n−ブチル(2,5−ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;前記多塩基酸無水物;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボロエート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6−トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート、チバ・ガイギー社製、イルガキュアー261、旭電化(株)製、オプトマ−SP−170等の光カチオン重合触媒;スチレン−無水マレイン酸樹脂;フェニルイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物や、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物等の公知慣用である硬化促進剤あるいは硬化剤類が挙げられる。
これら硬化促進剤(C)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。硬化促進剤(C)の使用は必須ではないが、特に硬化を促進したい場合には、前記エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは0.1〜25質量部の範囲で用いることができる。25質量部を超えるとその硬化物からの昇華性成分が多くなるので好ましくない。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)及び必要に応じて硬化促進剤(C)を、混合機、例えばディスパー、ニーダー、3本ロールミル、ビーズミル等を用いて、溶解又は分散することにより得られる。その際、エポキシ基やフェノール性ヒドロキシル基に対して不活性な溶剤を使用してもよい。このような不活性溶剤としては有機溶剤が好ましい。
有機溶剤は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)を容易に溶解又は分散させるため、あるいは塗工に適した粘度に調整するために使用する。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ニトロベンゼン、シクロヘキサン、イソホロン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、カルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム及び塩化メチレン等を挙げることができる。有機溶剤の配合量は、所望の粘度に応じて適宜設定できる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、ポリイミド等の基材との密着性を向上させるために、公知慣用のメルカプト化合物を含有することができる。メルカプト化合物としては、2−メルカプトプロピオン酸、トリメチロールプロパントリス(2−チオプロピオネート)、2−メルカプトエタノール、2−アミノチオフェノール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−プロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。その配合量は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)100質量部当たり、10質量部以下の範囲が適当である。メルカプト化合物の配合量が上記範囲を越えた場合、架橋反応に必要な前記エポキシ樹脂のエポキシ基を消費し(エポキシ基と反応し)、架橋密度が下がるため好ましくない。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、密着性、硬度、耐熱性等の特性を上げる目的で、無機フィラー及び有機フィラーよりなる群から選ばれた少なくとも1種のフィラーを含有することができる。無機フィラーとしては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、チタン酸バリウム、酸化珪素、無定形シリカ、タルク、クレー、雲母粉等が挙げられ、有機フィラーとしては、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等が挙げられる。上記フィラーの中でも、低吸湿性、低体積膨張性に特に優れるのは、シリカである。シリカは溶融、結晶性を問わず、これらの混合物であってもかまわないが、特にカップリング剤等で表面処理したシリカの場合、電気絶縁性を向上させることができるので好ましい。フィラーの平均粒径は、25μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは3μm以下であることが望ましい。これら無機及び/又は有機フィラーの配合量は、前記フェノール性ヒドロキシル基を有するウレタン樹脂(A)100質量部当たり、300質量部以下が適当であり、好ましくは5〜150質量部の割合である。フィラーの配合量が上記割合を越えると、硬化被膜の耐折性が低下し、好ましくない。
さらに本発明の熱硬化性樹脂組成物中には、本発明の効果を損なわない限り、前記成分以外の他の添加剤、着色剤を添加してもよい。添加剤としては、アスベスト、オルベン、ベントンなどの増粘剤、シリコーン系、フッ素系の消泡剤、レベリング剤、ガラス繊維、炭素繊維、窒化ホウ素繊維等の繊維強化材などが挙げられ、着色剤としては、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、酸化チタン、カーボンブラックなどが挙げられる。さらに、必要に応じて、公知慣用の熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、発泡剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌・防黴剤等を添加できる。
以上のような組成を有する熱硬化性樹脂組成物は、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、スプレーコーティング法及びディップコーティング法など従来公知の種々の方法でプリント基板に塗布することができる他、ドライフィルム又はプリプレグ等様々の形態、用途に使用することができる。その使用方法や用途により様々な溶剤を用いることができるが、場合によっては良溶媒だけでなく貧溶剤を用いることも差し支えない。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、回路形成されたフレキシブルプリント配線板やテープキャリアパッケージ又はエレクトロルミネッセントパネルにスクリーン印刷法により塗布し、例えば120〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、硬化収縮及び冷却収縮による反りがなく、基材に対する密着性、耐折性、低反り性、無電解金めっき耐性、はんだ耐熱性、電気絶縁性等に優れたソルダーレジスト膜や保護膜が形成される。
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
合成例
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物として1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(数平均分子量800)を360g(0.45mol)、ジメチロールブタン酸を81.4g(0.55mol)、及び1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基及び1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物としてヒドロキシフェニルエチルアルコール22.1g(0.16mol)を投入した。次に、芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物としてトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート200.9g(1.08mol)を投入し、撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了した。次いで、固形分が50wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、希釈剤を含有する粘稠液体の末端にフェノール性ヒドロキシル基を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂(ワニスC)を得た。得られた末端にフェノール性ヒドロキシル基を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂の固形分の酸価は48.8mgKOH/gであった。
比較合成例1
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物として1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(数平均分子量800)を360g(0.45mol)、ジメチロールブタン酸を81.4g(0.55mol)、及び分子量調整剤(反応停止剤)としてn−ブタノール11.8g(0.16mol)を投入した。次に、芳香族イソシアネートとしてトリレンジイソシアネート187.9g(1.08mol)を投入し、撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm−1)が消失したことを確認して反応を終了した。次いで、固形分が50wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、希釈剤を含有する粘稠液体のカルボキシル基含有ウレタン樹脂(ワニスD)を得た。得られたカルボキシル基含有ウレタン樹脂の固形分の酸価は49.5mgKOH/gであった。
実施例1〜及び比較例1、2
表1に示す各成分及び配合割合で、室温にて三本ロールにより混合して熱硬化性樹脂組成物を調製した。得られた熱硬化性樹脂組成物をスクリーン印刷にて膜厚約20μmとなるように基板に塗工し、150℃で60分間熱硬化を行なった。
Figure 0005043577
前記各熱硬化性樹脂組成物の硬化被膜について、以下のような種々の特性について下記の方法で評価した。その結果を表2に示す。
(1)密着性
上記実施例1〜及び比較例1、2の各熱硬化性樹脂組成物をそれぞれカプトン100EN(東レ・デュポン(株)製ポリイミドフィルム、厚さ25μm)にスクリーン印刷で全面印刷し、150℃で60分間熱硬化させた(乾燥膜厚15μm)。その硬化被膜の密着性を、セロハン粘着テープを用いたピーリング試験によるレジスト層の剥れの有無で確認し、以下の基準で評価した。
○:全く剥れなし
△:若干剥れ有り
×:剥れ有り
(2)耐折性
上記実施例1〜及び比較例1、2の各熱硬化性樹脂組成物をそれぞれカプトン100EN(東レ・デュポン(株)製ポリイミドフィルム、厚さ25μm)にスクリーン印刷で全面印刷し、150℃で60分間熱硬化させた(乾燥膜厚15μm)。得られた硬化被膜を180゜折り曲げ、以下の基準で評価した。
○:硬化被膜にクラックがないもの
△:硬化被膜に若干クラックがあるもの
×:硬化被膜にクラックがあるもの
(3)低反り性
上記実施例1〜及び比較例1、2の各熱硬化性樹脂組成物をそれぞれカプトン100EN(東レ・デュポン(株)製ポリイミドフィルム、厚さ25μm)にスクリーン印刷で全面印刷し、150℃で60分間熱硬化させた(乾燥膜厚15μm)。冷却後、得られた硬化被膜を50×50mmに切り出し、4角の反りを測定して平均値を求め、以下の基準で評価した。
◎:反りが1mm未満であるもの
○:反りが1mm以上、4mm未満であるもの
△:反りが4mm以上、7mm未満であるもの
×:反りが7mm以上であるもの
(4)無電解金めっき耐性
上記実施例1〜及び比較例1、2の各熱硬化性樹脂組成物をそれぞれプリント回路基板(厚さ1.6mm)上にパターン印刷し、150℃で60分間熱硬化させて試験片を得た(乾燥膜厚15μm)。得られた試験片を用いて、後述する工程で無電解金めっきを行ない、無電解金めっき耐性を以下の基準で評価した。
○:硬化被膜にふくれ、剥がれ、変色がないもの
△:硬化被膜に若干ふくれ、剥がれ、変色があるもの
×:硬化被膜にふくれ、剥がれ、変色があるもの
無電解金めっき工程:
1.脱脂:試験片を、30℃の酸性脱脂液((株)日本マクダーミッド製、Metex L−5Bの20vol%水溶液)に3分間、浸漬した。
2.水洗:試験片を、流水中に3分間、浸漬した。
3.ソフトエッチ:試験片を、14.3wt%の過硫酸アンモン水溶液に室温で1分間、浸漬した。
4.水洗:試験片を、流水中に3分間、浸漬した。
5.酸浸漬:試験片を、10vol%の硫酸水溶液に室温で1分間、浸漬した。
6.水洗:試験片を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
7.触媒付与:試験片を、30℃の触媒液((株)メルテックス製、メタルプレートアクチベーター350の10vol%水溶液)に3分間、浸漬した。
8.水洗:試験片を、流水中に3分間、浸漬した。
9.無電解ニッケルめっき:試験片を、85℃、pH=4.6のニッケルめっき 液((株)メルテックス製、メルプレートNi−865M、20vol%水溶液)に30分間、浸漬した。
10.酸浸漬:試験片を、10vol%の硫酸水溶液に室温で1分間、浸漬した。
11.水洗:試験片を、流水中に30秒〜1分間、浸漬した。
12.無電解金めっき:試験片を、85℃、pH=6の金めっき液((株)メルテックス製、オウロレクトロレスUP15vol%、シアン化金カリウム3wt%水溶液)に30分間、浸漬した。
13.水洗:試験片を、流水中に3分間、浸漬した。
14.湯洗:試験片を、60℃の温水に浸漬し、3分間充分に水洗した後、水を良くきり乾燥した。
(5)はんだ耐熱性
上記実施例1〜及び比較例1、2の各熱硬化性樹脂組成物をそれぞれプリント回路基板(厚さ1.6mm)上にパターン印刷し、150℃で60分間熱硬化させた(乾燥膜厚15μm)。得られた硬化被膜にロジン系フラックスを塗布し、260℃のはんだ槽に浸漬し、フラックスを除去し、乾燥後、テープ・ピーリング試験を行い、硬化被膜の状態を以下の基準で評価した。
○:10秒間浸漬しても剥れが無いもの
△:10秒では剥れがあるが、5秒間浸漬しても剥れが無いもの
×:5秒間浸漬した後、硬化被膜の剥がれがあるもの
(6)電気絶縁性
上記実施例1〜及び比較例1、2の各熱硬化性樹脂組成物をそれぞれL/S(ライン/スペース)=20/20μmのポリイミド基板(エスパネックス;新日鐵化学(株)の登録商標)上に塗膜を作成し、150℃で60分間熱硬化させた(乾燥膜厚15μm)。得られた硬化被膜の電気絶縁性を以下の基準にて評価した。
加湿条件:温度120℃、湿度85%RH、印加電圧60V、100時間
試験条件:測定時間60秒、印加電圧60V、室温にて測定
◎:加湿後の絶縁抵抗値1012Ω以上、銅のマイグレーションなし
○:加湿後の絶縁抵抗値1012Ω未満、10Ω以上、銅のマイグレーションなし
△:加湿後の絶縁抵抗値10Ω以上、銅のマイグレーションあり
×:加湿後の絶縁抵抗値10Ω以下、銅のマイグレーションあり
Figure 0005043577
上記表2に示す結果から明らかなように、本発明の熱硬化性樹脂組成物から形成した硬化被膜は、基材への密着性、耐折性、低反り性、無電解金めっき耐性、はんだ耐熱性に優れていた。また、絶縁信頼性においても良好な結果であった。特に、分岐脂肪族イソシアネート化合物を使用して得られたカルボキシル基含有ウレタン樹脂(ワニスC)を用いた実施例1〜3の場合、低反り性に特に優れ、また、末端にフェノール性ヒドロキシル基を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂(ワニスC)であるため、さらに電気絶縁性に優れていた。これに対して、芳香族イソシアネートを使用して得られたカルボキシル基含有ウレタン樹脂(ワニスD)を用いた比較例1、2の場合、基材への密着性、耐折性、無電解金めっき耐性、電気絶縁性には問題なかったが、低反り性に劣っていた。

Claims (5)

  1. (A)芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物を用いて得られたカルボキシル基含有ウレタン樹脂と、(B)エポキシ樹脂とを含有し、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)が、(a)芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物と、(b)1分子中に2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物と、(c)1分子中に1つのアルコール性ヒドロキシル基と1つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物とを反応させて得られたカルボキシル基含有ウレタン樹脂であり、前記エポキシ樹脂(B)の配合量は、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂(A)100質量部に対し、5〜150質量部の割合であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
  2. 前記芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)が、脂肪族イソシアネート化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 前記芳香環に直結していないイソシアネート基を有する化合物(a)が、分岐脂肪族イソシアネート化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 前記請求項1乃至のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
  5. 前記請求項1乃至のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物で、面の一部又は全部が被覆されたプリント配線基板。
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