JP5042905B2 - 船舶用自動操舵装置 - Google Patents

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Description

本発明は、航路制御系の船舶用自動操舵装置に関し、方位制御系を基本にした航路制御系のフィードバック制御系を持つ船舶用自動操舵装置に関する。
船舶用自動操舵装置は、舵角を制御して設定方位に船首方位を追従させる方位制御系(HCS: Heading Control System)と、計画航路に船体位置を追跡させる航路制御系(TCS:Track Control System)とに分けられる。マイクロチップの高機能化、衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の小型化・低コスト化・高精度化により位置情報が簡単に得られるようになったことに伴い、航路制御系の要求が高まっている。方位制御系の場合は、適時針路修正を必要とするが、航路制御系の場合は操船が不要で使い勝手がよい。
一般的に航路制御系の船舶用自動操舵装置は、図1に示すように軌道計画部12、軌道航路誤差演算部14、フィードバック制御部16及び加算器17を備える。計画航路に基づき軌道計画部12が出力する参照方位ψRと参照位置xR、yRと、センサから検出される方位ψと位置x、yとの誤差を軌道航路誤差演算部14で求め、その誤差から保針時にフィードバック制御部16が、船体の方位と位置とを追跡させるべくフィードバック舵角δFBを出力する。フィードバック制御部16は、図2に示すように、推定器18と、フィードバックゲイン器20とからなる。
航路制御系では、航路誤差を直接制御できるアクチュエータを利用しないで船首方位を媒介にして間接的に制御するので劣駆動系である。
このフィードバック制御部の設計にあたっては、次数が大きいために、非特許文献1,2では、LQGベースで代数リカッチ式に帰着させている。このような方法による設計は全体を見通して行なわれるので解の信頼性が高い半面、閉ループ特性は定性的な把握になり、制御対象の特性を把握しないで、直接的に解を求めているので、制御対象に最適な解であるかは不明である。
例えば、非特許文献2では、船体は操舵によって船体横方向に対水の反力による横滑り速度を発生させるが、従来提案されている設計では、この横滑り速度を積極的に考慮して設計に反映させていない。そのため、横滑り速度が閉ループ系を不安定にして発散する原因になるおそれがある、という問題がある。
一方、本願発明者は、特許文献1、非特許文献3で方位制御系の設計方法を提案している。航路制御系は、基本的に、方位制御系に船体と潮流による横方向位置制御を加えたものであるから、航路制御系の性能は、かなりの部分で方位制御系の性能(方位安定性,外乱除去性など)に依存すると考えられる。そこで、本願発明者は、特許文献1で開示する方位制御系のフィードバック制御系を基礎にして、航路制御系のフィードバック制御系の設計を行うことにより、閉ループの定量的把握ができる船舶用自動操舵装置を非特許文献4及び特願2007-54599号で提案しており、また、旋回時に計画旋回に軌跡を乗せることができる船舶用自動操舵装置を特願2007−54667号で提案している。
しかしながら、これらの提案では、潮流の横方向(sway)成分のみの推定を行って、この横方向成分のみで制御を行っているために、潮流の船首方向(surge)成分を考慮に入れていないことによる誤差が生じる。特に、旋回時には船体に印加する潮流成分は船首方位によって変化するので、横方向(sway)の潮流成分の推定に基づく制御だけでは航路誤差が過渡的に生じる、という問題がある。
他方、特許文献2では、船位情報を用いて、潮流に関する状態量を推定することができる潮流推定方法及び装置を提案しており、航走体の位置に関する位置情報を受け付け、受け付けた位置情報に基づいて、航走体の運動を数学モデルで表現した潮流モデルと、航走体に作用する流体力を数学モデルで表現した流体力モデルとを含む運動モデルから状態量を推定することを提案するが、この提案では、具体的なオブザーバゲインの設定が定かでない。
Fossen, T. I.,「Marine Control Systems」, Marine Cybernetics AS, 392/394(2002) Zwierzewicz, Z,「On the Ship Guidance Automatic System Design via LQG-Integral Control」, Manoeuvring and Control of Marine Craft 2003, IFAC. 羽根,「不確かさパラメータの下で閉ループ系代表根の減衰係数を設定する推定器設計」,第34回制御理論シンポジウム,211/214(2005) 羽根,米田,「方位制御系を基本にした航路制御系の設計」,第7回計測自動制御学会制御部門大会,2007,84−1−1 特開2006−44411号公報 特開2005−172618号公報
そこで、本発明の目的は、潮流のベクトルを簡単な計算で推定することができる船舶用自動操舵装置を提供することである。
かかる目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の発明は、船体の参照方位及び参照位置を出力する軌道計画部と、該軌道計画部からの参照方位及び参照位置と、センサで検出された船体の方位及び位置から方位誤差及び位置誤差を演算する軌道航路誤差演算部と、該方位誤差及び位置誤差から船体の方位と位置とを参照方位及び参照位置に追跡させるべく指令舵角を出力するフィードバック制御部とを備えた船舶用自動操舵装置において、
前記フィードバック制御部は、センサで検出された方位ψ及び位置(x、y)並びに指令舵角δFBから推定方位誤差ψe^、推定位置誤差(xe^,ye^)、及び推定潮流ベクトル(dx^,dy^)の推定を行う推定器と、推定器から出力される推定誤差に対してフィードバックゲインを作用して指令舵角δFBを出力するフィードバックゲイン器とを備えており、該推定器は、方位誤差の推定を行う方位制御系推定手段と、航路誤差の推定を行う航路誤差系推定手段とからなり、
航路誤差系推定手段は、制御対象モデルの状態量を推定するための特性多項式として、
Figure 0005042905

とし、前記フィードバックゲイン制御器を含む閉ループ系の特性多項式
Figure 0005042905
の固有周波数ωyを航路制御系固有周波数としたときに、前記ωtを航路制御系固有周波数ωyのρt(>1)倍に設定し、ωtoを航路制御系固有周波数ωyのρto(<1)倍に設定することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の前記減衰係数ζt、ζtoが、1に設定されることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の航路誤差系推定手段が、前記λTCSの極配置を実現する推定ゲインを用いることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の航路誤差系推定手段が、位置誤差xe、ye及び潮流ベクトルdx、dyからなる航路誤差の状態量ベクトルXt=[xe、ye、dx、dyTに対する推定ゲイン行列Kt
Figure 0005042905
としたときに、k22=k11、k32=-k41、k42=k31,k12=k21=0、k31 sinψR=k41 cosψRと設定し(ψRは参照方位である)、
Figure 0005042905
と設定することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の船首方向の推定位置誤差xeが、推定速度誤差x^に、U(cosψe^−1)(Uは船速)を修正したものを積分したものであることを特徴とする。
本発明によれば、推定器を、舵角を制御して設定方位に船首方位を追従させる方位制御系を基礎とした方位制御系推定手段と、航路誤差系の航路誤差系推定手段とに分離して構成する。即ち、推定器の方位制御のみを行うときの制御対象モデルの状態量を推定するための特性多項式と、航路誤差系の推定位置誤差(xe^,ye^)、推定潮流ベクトル(dx^,dy^)を推定するための特性多項式とを分けることによって、それぞれの推定ゲインの決定が可能になる。これによって、既存の方位制御系についての推定器の構成をそのまま使用し、航路誤差系推定手段の構成を追加することで、推定器を構成することができるので、設計の手間を省き、コスト低減を図ることができる。
また、航路誤差系推定手段において、極配置による設計思想及び座標関係を利用した推定ゲインの関係から簡単な計算によって決まる推定ゲインを設定することで、潮流ベクトルの推定を簡単に行うことができる。
航路制御系の中に方位制御系がそのまま存在しているために、航路制御と方位制御との切り替えが円滑になり、切替時にその連続性を担保することができる。
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、船舶用自動操舵装置と制御対象の全体のブロック図である。既述のように、船舶用自動操舵装置10は、計画航路に船体位置を追跡させるために舵を制御する装置であり、軌道計画部12、軌道航路誤差演算部14、フィードバック制御部16、加算器17及び各パラメータを同定する図示しない同定器を備えている。誘導システム22から計画航路及びセンサ類26のスピードログから船速Uが軌道計画部12に入力され、軌道計画部12からは参照方位ψR、参照位置xR、yR及び旋回時にはフィードフォワード舵角δFFが出力される。
軌道航路誤差演算部14には、ジャイロコンパスからの船首方位ψ、GPS等の衛星測位システム(GNSS)からの船体の位置(x,y)といったセンサ類26からの検出信号が入力され、軌道航路誤差演算部14は、前記参照方位ψR、参照位置xR、yRとの比較を行い方位誤差と位置誤差(以下、航路誤差とも称する)(方位誤差と位置誤差を合わせて軌道誤差とも称する)を出力する。
船舶用自動操舵装置10の閉ループ系は図1に示すように船体モデルと外乱モデルとからなる制御対象24と、フィードバック制御部16とから構成される。
フィードバック制御部16は、図2に示すように、推定器18とフィードバックゲイン器20とからなる。軌道航路誤差演算部14からの方位誤差及び位置誤差は、推定器18に入力される。推定器18において、方位誤差及び位置誤差から、方位誤差を含めた方位誤差系の状態量、位置誤差、潮流ベクトルを推定する。推定器18は、方位誤差の推定を行う方位制御系推定器18Aと、航路誤差の推定を行う航路誤差系推定器18Bとからなり、こうして推定器18によって、外乱が除去された推定航路誤差である推定方位誤差ψe^及び横方向の推定位置誤差ye^が算出される。
フィードバックゲイン器20でこの推定誤差に対してフィードバックゲインを乗じて指令舵角であるところのフィードバック舵角δFBを操舵機に出力する。
操舵機は指令舵角に比例した舵角を動かすため、船体は舵角によって旋回角速度を生じ方位、位置が変化する。旋回角速度の発生と共に、斜航角(横方向速度)が発生する。
以下、上記構成の詳細について説明する。
1.運動方程式
1.1 座標系
航路制御系で用いる座標系は、図3に示すように、以下の座標系から構成する。
・対地系(XOY):地球固定の緯度経度座標系で、GNSSからの位置出力(x、y)に相当する。
・船体系(XBGYB):船体固定の運動座標系で、船体の重心を原点とし、船首方位をXB 軸とし、船体運動を定める。
・参照系(XRRR):誘導システム22により生成され指定された計画航路から定まる移動座標系である。
尚、座標系の回転極性は右ネジ方向を正とし、Z軸方向は重力方向を正とする。座標系はX軸、Y軸の2次元を用いる。
1.2 船体の運動方程式
前記制御対象である船体モデルを定めるために、船体の運動方程式を導出する。船体の運動方程式は、前進方向を除き、横方向と方位軸回りとの運動を扱うので、
Figure 0005042905
を用いる。ここでMx ,My はそれぞれx,y方向の付加質量を含んだ質量を、Iz はz軸まわりの付加慣性モーメントを含んだ慣性モーメントを,Y,Nはそれぞれy方向の流体力、z軸まわりの流体モーメントを示し、添字は対応する変数を意味する。変数U,v,r,δはそれぞれ前進速度、横流れ(横滑り)速度、旋回(回頭)角速度と舵角とを示す。上式を整理すると
Figure 0005042905
になり、ラプラス変換すると(s はラプラス演算子を示す)
Figure 0005042905
のようになる。ここで、横滑り速度と旋回角速度とが舵角を入力とした関係で結ばれる。(5)式を整理して、舵加速度δ・・(t)≒0とし、
Figure 0005042905
を得る。ここで、
Figure 0005042905
とおいている。
(6)式より、横方向(sway)の横滑り速度とヨー軸回りの旋回角速度との運動方程式は同一の形でかつ舵角による入力係数が異なるだけである。船体特性は舵を切ることによって、方位軸回りに旋回角速度を発生させ、同時に船体の横方向に対水の反力による横滑り速度を発生させる。(6)式において、実用的見地からs2 項による影響は無視できるためにs2 項を省略する。すると、(6)式は
Figure 0005042905

になる。ここで、
Figure 0005042905
であり、Ts = T1+T2である。ここでKs は旋回力ゲイン、Kv は横滑りゲイン、Ts3、Tv3は時定数である。
また、船舶用自動操舵装置は、舵角を通して制御量を入力するので、制御変数は角度単位の方が都合がよい場合があるため、
Figure 0005042905

を用いて横滑り速度vを斜航角βに変換すると、
Figure 0005042905
として導出される。ここで、Kβ は横滑り角ゲインまたは斜航角ゲイン(旋回力ゲインKs と異符号となる)で、Tβ3は時定数で
Figure 0005042905
を示す。
船体モデルの横滑り速度vおよび斜航角β は旋回角速度rと共通の一次遅れ要素をもつので、(13)式からrを基準にすると
Figure 0005042905
になる。これよりv, β はr にそれぞれゲインKv /Ks,Kβ/Ks によってほぼ比例することがわかる。Tv3 >Tβ3,Ts3>Tβ3 の関係があるので,船体によりTv3,Tβ3 が省略可能である一方で、Kv およびKβ が必須なパラメータになる。
(1)式、(2)式はテーラー展開で1次の項までを考慮しているが、大きな変針角や旋回角速度に対応するためには、非線形項までを考慮する必要がある。その場合には、(9)式の運動方程式は、
Figure 0005042905

とするとよい。ここでαsは非線形係数であり、ゲイン、時定数と同様前記同定器によって与えられる。
1.3 外乱成分
外乱成分は、舵角オフセット成分、波浪成分と潮流成分を考える。舵角オフセットは風などに起因する方位軸まわりに作用する船体モーメントを舵角換算にしたものである。波浪は白色ノイズを入力した狭帯域フィルタの出力を方位相当したものである。潮流成分は対地系の速度成分である。式にまとめると、
Figure 0005042905
になる。ここでδo はほぼ一定値をした舵角オフセット成分を、ψw は波浪成分を、ν は白色ノイズN(0,1) を、Gw は波浪モデルの伝達関数を、Kw ,ζw ,ωw はそれぞれゲイン、減衰係数と中心周波数とを、dx,dy は対地系のそれぞれ北向き,東向きの潮流速度を、Ud ,ψd は潮流速度の大きさと方位とを、それぞれ示す。
制御対象は船体運動と外乱成分とからなる。外乱成分はほぼ一定値とする潮流成分と舵角オフセット成分,および平均値ゼロの有色モデルの波浪成分からなる。制御対象の構成を図5に示す。ただし同図では非線形項は省く。
1.4 対地速度と対地位置
船体の位置は、対地系で定義され、船体運動と潮流速度とからの対地速度を積分することで求めることができる。船体速度は対水速度で、潮流速度は対地速度でそれぞれ表す。
船体運動は舵角δを取ると角速度r=ψを生じるが、同時に横流れ速度v=yも生じる。その様子を、図4を用いて説明する。同図のように定常に旋回しているときまたは参照系が接線方位に一致しているとき、船体系は接線方位に対して斜航角βだけ内側に傾いて釣り合う。このとき船体速度の対地速度成分は
Figure 0005042905
になる。ここでux,vy は対地系のそれぞれ北向き,東向きの船体速度、u,vは船体系の速度を示す。船体速度と斜航角との関係は、
Figure 0005042905
を用いる。
これより、対地系の速度は、船体速度と潮流速度との和になるから、
Figure 0005042905
になる。ここでx、yは船体位置でそれぞれ北向き、東向きを示す。なおdx,dy は風が船体の上部構造物を押すことによる速度成分も含まれているとする。
位置と方位とはそれぞれ速度x、yと角速度rとを積分して
Figure 0005042905
得る。ここで(0)は初期値を意味する。
1.5 軌道航路誤差
軌道航路誤差演算部14で求められる位置誤差及び方位誤差(航路誤差)は、参照系に対する船体系の位置誤差及び方位誤差であり、図3より、
Figure 0005042905
になる。ここでψ,x,yは船首方位と対地位置とを、ψR,xR,yR は参照方位と参照位置とを、ψ,x,yは方位誤差と航路誤差とをそれぞれ示す。x,yは船体位置Gから参照系のY,X 軸にそれぞれ垂線を下ろした距離に相当する。
制御対象の誤差モデルを構成するために、航路誤差の速度誤差を導入する。そこで、参照速度uR,vR を次のようにおく。
Figure 0005042905
参照系における船体系の速度誤差は、前記参照速度からの横流れ速度との偏差を参照系に座標変換したものとなる。
よって、速度誤差は、ψ=ψ−ψR((25)式より)の関係及び(21)式を用いて、
Figure 0005042905
になる。
一方、潮流速度による速度誤差は対地系成分を参照系成分に変換すると
Figure 0005042905
になる。
ここでud,vd は参照系の潮流速度成分を、dx,dyは対地系の潮流速度成分をそれぞれ示す。よって参照系速度誤差xe ,ye
Figure 0005042905
で与えられる。
図6は、制御対象のモデルを偏差系で表したものである。
潮流成分による斜航角βd
Figure 0005042905
になる。数値例を挙げると、β = 0 とすれば、U= 20[knot],ψR = 140[deg],Ud = 5[knot],ψd = 0[deg] のとき
Figure 0005042905
より、βd = −11.24[deg] およびψ =ψR−βd = 128.8[deg] になる。
2.保針制御系
2.1 制御対象
航路保針系の設計で用いる制御対象は参照系に対する誤差を扱う偏差系で定めることとする。船体運動は舵角を入力とし、旋回角速度と斜航角とを出力とするので、そのまま偏差系として利用される。
旋回運動と横滑り運動とは(9)式及び図5を参照すると
Figure 0005042905
になる。ここでsはラプラス演算子を、ψ は船首方位を、δ は舵角を、δo は方位軸まわりの外乱モーメントを舵角換算したオフセットを、Ks,Kv,Ts,Ts3,Tv3は操縦性指数でそれぞれ旋回力ゲイン,横すべりゲインと3つの時定数とを示す。u,vはそれぞれ船首方向(surge),横方向(sway)の船体速度を示す。非線形項αs・3は省く。
船体系の速度誤差成分u,vは(27)式から得られるが、ψeを微小項として近似し、(22)式を用いると、
Figure 0005042905
になる。ここで、u≒U、ψev≒0としている。
これにより、参照系の制御対象は、図5、(29)式、(31)式、(32)式、(33)式から、
Figure 0005042905
になる。ここで、rx、vx は状態変数であり、(図5(b)、(c)参照)、旋回角速度と横滑り速度とは
Figure 0005042905

になる。ここで、
Figure 0005042905
を示す。(35)式と(38)式では、時定数Tsが共通であり、図5(b)、(c)に示したように、同様の構成をとっている。よって、(38)式を消去することにすると、vx とrx とは、
Figure 0005042905
となる。ここで、δo ≒0と仮定しており、一時遅れ要素を省略しても影響は少ないと仮定している。
よって、横滑り速度vは、
Figure 0005042905
と表すことができる。(37)式に、(45)式を入力することで、vの次数を減らすことができる。
以上の横滑り速度vは、斜航角βで置き換えることもでき、その場合、
Figure 0005042905
になる。ここで 、Kβ ,Tβ3 は操縦性指数でそれぞれ斜航角ゲイン、時定数を示す。これより
Figure 0005042905
になる。ここで
Figure 0005042905
を示す。rx 、βx は時定数Ts が共通なので、斜航角の次数を低減すると、(31)式,(46)式より
Figure 0005042905
になる。ここで
Figure 0005042905
を示す。このとき
Figure 0005042905
になる。
2.2 線形近似による誤差
(33)式において、ueは0として線形になるように近似している。航路制御系はsway方向の誤差はゼロにする働きを持つが、surge方向については何の作用もしない。しかしながら、潮流成分を推定するためには、この影響を考慮する必要があるので、ueの近似による潮流計算値への影響を調べる。
(29)式の定常状態とすると、
Figure 0005042905

が成り立つ。ここで
Figure 0005042905
である。よって潮流値は
Figure 0005042905
になる。しかしながら線形化の近似のために(36)式のxe において、ue=U(cosψe−1)成分による誤差が生じる。誤差を低減するために、(36)式のxe にue=U(cosψe−1)を打ち消す修正操作を後述の推定器18内に入れる。surge 方向の位置制御は実施せず、また位置のリセットは変針開始時に実施するために、ueの修正操作は、推定値xe^の増加を防ぐことからも好都合である。潮流の誤差は
Figure 0005042905
になる。数値例を示す。U = 20[knot],ψe = 14[deg] とすればue = −0.6[knot] になり、dx = 5[knot] ならば12% の誤差に相当する。
3 フィードバック制御
方位誤差及びsway 方向の航路誤差は、図5と、(46)式,(37)式とから,波浪モデルを省くと
Figure 0005042905
になる。ここで
Figure 0005042905
を示す。ここで
Figure 0005042905
の関係を用いる。
フィードバックゲイン器20を図7に示すように構成する。制御量であるフィードバック舵角δFBは、状態量が既知であるとして
Figure 0005042905
になる。ここでKP,KD は方位制御系のそれぞれ比例ゲインと微分ゲインとを、Ky は航路制御系の航路ゲインを、αは外乱による修正量を示す。角速度はrでなくrx を利用するために上式に(39)式を代入すると
Figure 0005042905
になる。これより
Figure 0005042905
を得る。ここでγ は時定数Ts3 による修正係数で
Figure 0005042905
を示す。
上式より特性多項式に相当する項を展開して、方位制御系にのみ関連する項をまとめると、特性多項式λは、
Figure 0005042905
になる。上式の右辺の第1項の(s2+2ζωns+ω2 n)は、方位制御系における閉ループの特性多項式であり、ωn、ζはその方位制御系固有周波数、減衰係数を示す。
この減衰係数ζ及び固有周波数ωnは、比例ゲインKP 及び微分ゲインKDとの関係を定めることができる。よって、設計パラメータを例えば比例ゲインKP、減衰係数ζとしたときに、微分ゲインKDと固有周波数ωnとを設計パラメータKP、ζと同定器によって同定される船体パラメータKs,Ts,Ts3とから一義的に決定することができ(特開2007−118828号参照)、
Figure 0005042905
として得られる。
3.1 閉ループによる検討
基本特性を調べるためTs3 =Tv3 =0 とし,CFB =KDs +KP とする。閉ループは
Figure 0005042905
になるから、特性多項式λは
Figure 0005042905
になる。航路ゲインの安定限界は
Figure 0005042905
のようにKyU の1次方程式の解になる。また特性多項式を開ループ伝達関数で表すと
Figure 0005042905
になる。ゼロ点は不安定根s = 1/Cβ (>0) に、極は原点と安定な方位制御系の2根とになる。
ゼロ点は横滑り速度に起因したもので、航路ゲインを極端に大きくすると閉ループが不安定になり発散する(ヨーイング発生)原因になる。
根軌跡の例を図8に示す。開ループ伝達関数と3次方程式との性質から特性根は
1. Ky =0 のとき,根は極(記号×)である方位制御系根と原点根とになる
2. Ky >0 が大きくなると,方位制御系根は安定側から不安定側に原点根は左方向にそれぞれ移動し、この場合、方位制御系根は実軸でBreak-in point になり左右方向に別れて原点根は左方向にそれぞれ移動した後、Breakaway point から安定側から不安定側に移る
3. さらKy >0 が大きくなると、根はゼロ点と左右方向とに向かって移動する
なる特徴をもつ。
3.2 航路ゲインの求解
以上の航路ゲインKyの影響を踏まえて、航路ゲインKyを決定する。
閉ループ系の3次の特性多項式は(61)、(62)式より
Figure 0005042905
になる。Ts3 >0 は横滑り角によるCβ 係数を低減させ安定化に作用する。一方、設計のための特性多項式は
Figure 0005042905
として定める。ここでaは負の実数を,ζy,ωy はそれぞれ航路制御系減衰係数と固有周波数とを示す。航路制御系の設計パラメータをζy として、a,ωy,Ky を求める。閉ループと設計とのそれぞれの特性多項式の係数を比較すると
Figure 0005042905
になる。整理すればωy に関する4次方程式
Figure 0005042905
を得る。ωy の4次と1次との係数は負になり、0次の係数は正になるので,少なくとも上式の根のひとつは負になっている。(78)式から求めたωy から、(75)〜(77)式の関係を用いれば、
Figure 0005042905
が順次求まる。
(78)式のωyの4次方程式は、代数解法で解ける。Ts3,Tβ3 に関連する高次項の近似解はCβ>Ts3 を仮定すると
Figure 0005042905
になり、式(78)の解の中で最大根に相当し、すぐに減衰する特性を示す。そのため、4次式から近似解を除いた3次式の特性が支配的になる。ωyを前述したTs3,Tβ3を省いた3次の開ループ伝達関数の特性を利用して決め、設計パラメータζy は1/√2≦ζy≦1からBreak-inまたはBreakaway pointsとなりKy に対する感度が極めて高くパラメータ誤差の影響を受け易いζy =1を避けて、ζy = 0.9を選ぶ。Ts3,Tβ3 を省いた(74)式の3次系の特性多項式の根軌跡は図8に既に示した通りである。同図において大きさの異なる3つの黒丸はζy = 0.9 として(78)式でTs3,Tβ3 を省いた
Figure 0005042905
を解いたときの3つのωyに対応している。いずれも実根はゼロ点と安定根とになり、共役根は軌跡と直線との交点にある。直線の傾きは安定根ならθ = cos-1ζy,不安定根ならq = cos-1(−ζy) になる。3つの根は大きさが小さい順に航路ゲインKy1 = 0 < Ky2 <Ky3 になる。方位制御系のζ = 0. 9 よりKy1 =0 のとき根は極と一致している。3次方程式の解と根軌跡との性質から航路ゲインKy を決定する方法は
1. まず(82)式の解の中から負の解を除いた解を求める
2. 正の解からa>ωy になるような根ωy を選ぶ。具体的には正の解で最も小さい値が相当する。a>ωy を用いる理由は閉ループ系の応答速度を上げるために代表根の位置を原点からできるだけ離すことによる
になる。上の方法はそのまま4次の(78)式についても全く同様に成立し、得られた根ωyから(79)式,(80)式を用いてそれぞれ実根aと航路ゲインKy とを求めることができる。
フィードバックゲイン器20は、同定器で各係数Cβ、Tβ3、Ts3、ωnが与えられる毎に、(78)式の解を解き、上記手順にて決定された航路ゲインKyにて指令舵角を出力する。
3.3 船速の変化
船速が変化した場合の航路ゲインKyの様子を調べる。船体運動のsway 方向速度は対水速度Uに比例するため、速度が変化したらKy はU と連動させて適切に更新させる必要がある。
船速変化に対する船体パラメータは
Figure 0005042905
がほぼ成立するとする。Ky は式(71)の安定限界を用いると
Figure 0005042905
になる。数値例を挙げると,ζ = 0. 9,ωn = 0. 05[rad/s],Cβ = 30[s],U = 10[m/s],速度変化U = 10, 5[m/s] のときそれぞれKy = 2. 43,3. 83[rad/m] になる.速度が10 から5[m/s]に低下すると航路ゲインは1.6 倍程度大きくする必要がある。
3.4 外乱項による影響と対策
外乱入力に対する航路誤差の定常値を求め、その誤差を修正する。平均値がゼロであるψw を省き、定常値に影響しないTs3,Tv3 をそれぞれゼロとすれば、舵角オフセットδo と潮流成分オフセットvd((28)式参照)との外乱入力に対する方位誤差ψe と航路誤差ye との定常解を求める。フィードバック舵角
Figure 0005042905
を(61)式の方位誤差に代入すると
Figure 0005042905
になる。方位誤差と航路誤差とはそれぞれ
Figure 0005042905
になる。これより
Figure 0005042905
を得る。よって一定値の外乱入力δo(s) =δo(0)/s,vd(s) = vd(0)/s,修正量
Figure 0005042905
に対する定常値は
Figure 0005042905
を用いて
Figure 0005042905
になる。ここで(0) は一定値を意味する。ψe は積分効果をもつ航路系のためδo(0) による誤差を生じないが、vd(0) による偏差または斜航角を生じる。ye はδo(0),vd(0) により誤差を生じる、ye をゼロにする修正量の定常値はα(0) =−δo(0)−KPvd(0)/U になる。
よって修正量
Figure 0005042905
として導ける。修正量α をフィードバックし、船首方位ψ が参照方位ψR 基準から見ればvd(0)/U の逆方向に針路を取ることで、船体のsway 方向におけるvd(0)/U成分と偏差ψeとが相殺する関係になる。数値例を挙げる.KP =1,Ky = 0.0007[rad/m]=0.04[deg/m] とすると,vd(0)/U = 10[deg] のときy= 250[m] になり,δo = 3[deg] のときy= 75[m] になる。
したがって、外乱成分δo(s),vd(s) を推定器18によって推定し、上式の修正量をフィードバックすることで、外乱成分に起因した航路誤差を相殺することができる。
4 推定器
次に、推定器18の構成について説明する。まず、特許文献1で開示する方位制御系の5次推定器について説明し、次に、その5次推定器に基づき、航路制御系の推定器を構成することを考える。
4.1 方位制御系の5次推定器
方位制御系の5次推定器の構成例を図9に示す。この推定器は、波浪モデルと舵角オフセットとを組み込んだものであり、(34)式、(35)式及び検出方位誤差ψe -
Figure 0005042905
を用いて、
Figure 0005042905
と表すことができる。ここで、ki,i=1〜5は推定ゲインを、ξ^は推定状態量を、ψW^は推定波浪を、δO^は推定舵角オフセットを、それぞれ示す。上式を行列で表すと、
Figure 0005042905
となる。
ここで、
Figure 0005042905
であり、ε は微小項を示す。
この特性多項式を求めるために、
Figure 0005042905
とする。航路制御系の特性多項式は、
Figure 0005042905
に定める。ここでλhhは船体モデルの状態推定に、λhwは波浪モデルの状態推定に、そしてλhoは舵角オフセットモデルの状態推定にそれぞれ対応し、ζh,ζhwとωh,ωhw,ωho とは方位制御系のそれぞれ減衰係数と固有周波数とで、ζhw,ωhwは、図示しない波浪同定器によって検出方位から同定されるもので、
Figure 0005042905
を示す。ここでωn は方位制御系の操舵系固有周波数((68)式参照)を、ρh,ρho は推定係数で推定速度やパラメータ不確かさに対する許容度から決定され
Figure 0005042905

とする。
特性多項式の根を極配置することにより求める推定ゲインKh=[kは、
Figure 0005042905
になる。ここで、添字(・)-1 は逆行列を意味し、添字(・)T は転置行列を意味する。
Figure 0005042905
になる。
4.2 航路制御系の制御対象
推定器18は、極配置を用いるために、確定系オブザーバによって構成される。制御対象は方位制御系と航路誤差系とをまとめて扱うより,おのおの分離するほうが構成する上で便利である。方位制御系は航路誤差系から影響を受けないので、方位制御系推定器18Aと、航路誤差系推定器18Bとから構成し、図6の構成は、方位制御系推定器18Aとしてそのまま利用し、新たに航路誤差系推定器18Bを追加する。制御対象を方位制御系と航路誤差系とに分割したブロック行列で表現すると、
Figure 0005042905
になる。添字 h,t は、それぞれ方位系,航路系に関することを意味し、航路系は
Figure 0005042905
を示す。ここでε は微小項を、Athにおいて
Figure 0005042905
を用いることも可能である。
4.3 推定ゲイン
航路誤差系を含めた推定器18の固有値または特性多項式は9次になる。この9つの根を極配置するための推定ゲインを定める。未知数の9×2行列の推定ゲインは特性多項式の9つの係数方程式によって求めることになるが、方程式の数より未知数が多いので不定状態になる。そこで、前述の通り、推定器18を、図9に示した方位制御系推定器18Aと、図10に示した航路誤差系推定器18Bとに分離して、極配置する推定ゲインを設計する。方位制御系の5次相当部分は、4.1章に示した通り、特許文献1において設計可能であるから、航路誤差系推定器18Bの4次の極配置を設計する。
推定器の構成は(93)式と、(106)式及び(107)式から
Figure 0005042905
になる。ここでKt は航路制御系(TCS)の推定ゲインを示す。航路誤差系の推定器を設計し、Kt を求める。この推定器の特徴は、
・対地系の北向き(x)と東向き(y)との潮流成分を推定する
・参照系のxe とye とに方位角を介して潮流成分が印加する
・変化する方位角のために、非線形系である
である。推定ゲインは対角化されて
Figure 0005042905
のように定める。ここでKh は方位制御系の推定ゲインを、Kt は航路誤差系の状態量
Figure 0005042905
を推定するための推定ゲインを示す。
推定器の特性多項式を求めるために、
Figure 0005042905
を定める。ここでsはラプラス演算子を、Iは単位行列を意味しその括弧内の数字は次数を示す。航路制御系の特性多項式は上式より
Figure 0005042905
になる。よって航路制御系の特性多項式は方位制御系の行列式 det(λh) と航路誤差系の行列式 det(λt ) との積になり、det(λh) は、4.1章で説明した。
一方 det(λt ) はこれから設計されるもので
Figure 0005042905
に定める。ここでζt,ζto とωt,ωto とは航路誤差系のそれぞれ減衰係数と固有周波数とを
Figure 0005042905
を示す。λTCS の固有周波数を
Figure 0005042905
と定める。ここでωy は航路制御系固有周波数((74)式参照)を、ρt,ρto は推定係数で、ρt>1,ρto<1とし、例えば、
Figure 0005042905
と定める((104)式参照)。
さてλTCS の極配置を実現する推定ゲインを求める。方程式は上記のa0,a1,a2,a3 の4つであり、推定ゲインは2×4=8個である。そのため解析解の導出は難しい。λHCS の場合は5つの方程式から5つの推定ゲインを求める条件であった。本発明による設計では、推定器の構造に着目することによって、極めて簡単な形で推定ゲインを導出することを実現する。
推定モデルのAt は対地系から参照系までの座標変換の行列をもっている。そのために方位によって特性多項式の係数が変化する。推定ゲインが対称的な方位の要素をもつことで、係数が一定になることが予想される。これより推定ゲインの要素を
Figure 0005042905
とおいて
Figure 0005042905
を用いて、推定ゲインを用いた特性多項式を求めると
Figure 0005042905
になる。ここで
Figure 0005042905
を示す。
さて式(129)式において、係数の要素であるC3 =0 なる関係を導入することは可能である。それを利用すると
Figure 0005042905
になり、残りの変数はC1,C2,k1221 が残る。C1 はs3 の係数a3 に対応させて求める。C2,k1221 は3つのs2,s1,s0 の係数a2,a1,a0 に対応するために、一意的に定まらない。これはC1,C2,C3,k1221 の設定方法では求めることが難しいことを表している。HCSは任意のζh,ζhw を指定することができるが、TCSは特定のζt,ζto を指定することによって極配置を実現する。すなわち
Figure 0005042905
を定める。この理由は
・ 上記の設定により、設計パラメータがωt、ωto の2つになる。
・ 推定速度の点から見ると上記の設定は適切ではないようだが、応答はωt、ωto を調節すれば改善される。
・ この推定器はサンプル毎に方位角に対応して推定ゲインを計算するので、ゲイン計算量を少なくする必要がある。
である。そのためにζt、ζto の任意指定は必ずしも必要がない。上記の設定によって
12 = k21 = 0 が得られるので
Figure 0005042905
になる。また(124)式の係数とC3=0とを用いると
Figure 0005042905
に得る。これより推定ゲインは
Figure 0005042905
になる。よって航路誤差系の推定ゲインは極めて単純な計算によって得られる。
4.4 まとめ
以上のようにして構成される推定器18の航路誤差系推定器18Bの構成を図11に示す。ここでの推定ゲインは(135)式で決まり、また、(135)式におけるωt、ωtoは(125)式で決まり、(125)式における航路制御系の固有周波数ωyは、(73)式に示した航路制御の閉ループ系の特性多項式の固有周波数であり、具体的には、(78)式の4次方程式の解のうちの負の解と、最大の正の解を除き、残りの2つの正の解のうちで、特性多項式の根の代表根が原点からより離れる小さい方の解の値となる。
また、航路誤差系推定器18Bにおいて、2.2章で説明した、船首方向の推定位置誤差xeの推定速度誤差x^に、U(cosψe^−1)(Uは船速)の修正を加えることにより、線形近似による誤差を修正することができる。
5 まとめ
以上説明したように、推定器18を、舵角を制御して設定方位に船首方位を追従させる方位制御系を基礎とした方位制御系推定器18Aと、航路誤差系の航路誤差系推定器18Bとに分離して構成し、航路誤差系推定器18Bにおいて、航路誤差系の推定位置誤差(xe^,ye^)、推定潮流ベクトル(dx^,dy^)を推定し、航路誤差系推定器18Bでは、極配置による設計思想及び座標関係を利用した推定ゲインの関係から簡単な計算によって決まる推定ゲインを設定することで、船体の位置誤差と潮流ベクトルの推定を行うことができる。これらの推定値は、閉ループ安定性確保と、航路誤差の低減に資することができる。
基本的に方位制御系を基礎に、航路制御系の設計を行っているために、設計工数を削減することができ、また、航路制御系と方位制御系との間での動作切換による不連続減少を防止することができる。
本発明による船舶用自動操舵装置の全体構成を表すブロック図である。 フィードバック制御部の構成を表すブロック図である。 航路制御系で用いる座標系を表す説明図である。 舵を取ったときに発生する横流れ速度を表す説明図である。 制御対象のモデルを表すブロック図である。 制御対象のモデルを偏差系で表したブロック図である。 フィードバックゲイン器の構成を表すブロック図である。 s3=Tβ3=0とおいたときの特性多項式の根軌跡を表す図である。 方位制御系推定器のブロック図である。 航路誤差系推定器のブロック図である。 航路誤差系推定器のブロック図である。
符号の説明
10 船舶用自動操舵装置
12 軌道計画部
14 軌道航路誤差演算部
16 フィードバック制御部
18 推定器
18A 方位制御系推定器
18B 航路誤差系推定器
20 フィードバックゲイン器

Claims (5)

  1. 船体の参照方位及び参照位置を出力する軌道計画部と、該軌道計画部からの参照方位及び参照位置と、センサで検出された船体の方位及び位置から方位誤差及び位置誤差を演算する軌道航路誤差演算部と、該方位誤差及び位置誤差から船体の方位と位置とを参照方位及び参照位置に追跡させるべく指令舵角を出力するフィードバック制御部とを備えた船舶用自動操舵装置において、
    前記フィードバック制御部は、センサで検出された方位ψ及び位置(x、y)並びに指令舵角δFBから推定方位誤差ψe^、推定位置誤差(xe^,ye^)、及び推定潮流ベクトル(dx^,dy^)の推定を行う推定器と、推定器から出力される推定誤差に対してフィードバックゲインを作用して指令舵角δFBを出力するフィードバックゲイン器とを備えており、該推定器は、方位誤差の推定を行う方位制御系推定手段と、航路誤差の推定を行う航路誤差系推定手段とからなり、
    航路誤差系推定手段は、制御対象モデルの状態量を推定するための特性多項式として、
    Figure 0005042905
    とし、前記フィードバックゲイン制御器を含む閉ループ系の特性多項式
    Figure 0005042905
    の固有周波数ωyを航路制御系固有周波数としたときに、前記ωtを航路制御系固有周波数ωyのρt(>1)倍に設定し、ωtoを航路制御系固有周波数ωyのρto(<1)倍に設定することを特徴とする船舶用自動操舵装置。
  2. 前記減衰係数ζt、ζtoは、1に設定することを特徴とする請求項1記載の船舶用自動操舵装置。
  3. 航路誤差系推定手段は、前記λTCSの極配置を実現する推定ゲインを用いることを特徴とする請求項1または2記載の船舶用自動操舵装置。
  4. 航路誤差系推定手段は、位置誤差xe、ye及び潮流ベクトルdx、dyからなる航路誤差の状態量ベクトルXt=[xe、ye、dx、dyTに対する推定ゲイン行列Kt
    Figure 0005042905
    としたときに、k22=k11、k32=-k41、k42=k31,k12=k21=0、k31 sinψR=k41 cosψRと設定し(ψRは参照方位である)、
    Figure 0005042905
    と設定することを特徴とする請求項3記載の船舶用自動操舵装置。
  5. 船首方向の推定位置誤差xeは、推定速度誤差x^に、U(cosψe^−1)(Uは船速)を修正したものを積分したものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の船舶用自動操舵装置。
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