JP5042239B2 - コウライシャラノキ抽出物及びその用途 - Google Patents

コウライシャラノキ抽出物及びその用途 Download PDF

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Description

本発明はコウライシャラノキ抽出物及びその用途に係り、さらに詳しくは、水C〜C低級アルコール、極性溶媒、非極性溶媒及びこれらの混合溶媒から選ばれた抽出溶媒により抽出したコウライシャラノキ抽出物とこれを有効成分として含有する血管新生促進または組織再生促進用の医薬組成物及びシワ改善用の化粧品に関する。
皮膚は外部環境から人体を保護し、且つ、内的環境の恒常性を維持する役割を果たす。皮膚が損傷すると、副作用と共に2次感染などの問題が発生するため、創傷治療が極めて重要である。皮膚の創傷部位が小さくて表皮にのみ限られている場合には、初期の炎症反応段階をはじめとして、上皮細胞の増殖と移動段階を経て正常細胞機能が回復される表皮層の再建段階から構成される。また、皮膚の基底膜まで損傷を受けた場合には、血栓形成と同時に繊維素、繊維結合素、ヒアルロン酸などの細胞外基質の沈着が発生し、傷内の異物や壊死組織などを除去して傷をきれいにする炎症段階、血管が形成されると共に、PDGF、EGF、FGFなどの成長因子が放出されて創傷部位が新たな組織により埋められて新たな上皮細胞により補われる増殖段階、コラーゲン束の変形及び再構成、傷収縮、張力が増大する成熟段階を経て回復される(Stadelmann, W.K. et al., Am J. Surg., 26S(176), 1998)。
創傷治癒は創傷組織を埋める過程から始まるが、これら組織は基質コラーゲン、フィブロネクチンなどからなり、このとき、コラーゲン合成が重要な役割を担うことになる。創傷治癒や皮膚再生段階においてコラーゲン合成が重要な役割を担うことにより、皮膚再生を促進し、傷痕の生成を抑えることができる(Ueno, H. et al., Biomaterial, 1407(20), 1999; Buckley, A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 7340(82), 2000; Manxi, L. et al., Cell Tissue Res., 423(297), 1999).
上記の如き皮膚の創傷回復過程において伴われる重要な現象が血管形成である。血管形成とは、既存の血管から新たな血管が形成される一連の過程を総称するものであって、血管形成は傷の回復過程中に新たな組織が形成されながらこのような組織に適量の酸素と栄養分を供給してその組織が正常の身体の一部として再生されて機能を行うようにする。
皮膚に傷ができると、その組織部位の繊維芽細胞から繊維芽細胞成長因子(bFGF)が過度に発現され、これにより、血管内皮細胞が活性化しながら血管内皮細胞から細胞外基質タンパク質の分解酵素が発現することになる。これにより、血管内皮細胞は細胞外基質を分解しながら新たな血管が形成される通路を提供し、浸潤と移動過程を経ることになる。このように、移動された血管内皮細胞は本来の機能を維持するために分化をし、分化済みの血管内皮細胞は元の血管のように完璧な形態の血管ではなく、最小限の成長因子と酸素栄養分を供給可能な管をなすことになる。すなわち、創傷部位や壊死により損傷された細胞に新たな栄養分を供給し、供給された酸素と栄養分を基に繊維細胞及び表皮細胞は分化と成長を円滑に行うことができ、その結果、創傷組織の組織再生産と皮膚再生が起こることになる。
一方、コウライシャラノキは双子葉植物のオトギリソウ目ツバキ科の落葉広葉樹であって、韓国・日本等地に分布し、山腹以上において生長する。コウライシャラノキの高さは7〜15mであり、樹皮は黒赤褐色であり、大きな断片として剥がれて、古くなるにつれてサルスベリのように滑らかになる。葉は互生葉序であり、楕円形または広い楕円形であり、先端は尖っており、根元は丸いか鈍い。葉のサイズは長さ4〜10cm、幅2〜5cmであって、周縁に波状の鋸の歯がある。
コウライシャラノキの花は両性であって、6〜7月に白く咲き、新枝の根元の脇に付けられる。花茎は長さ1.5〜2cmであり、苞は卵状または丸状である。萼は丸くて絨毛があり、花びらは卵を逆に立てた形状であり、5〜6本であり、花柱は5個に分かれて合体され、雄しべは5個である。コウライシャラノキの実は殼果であって10月に熟し、5角錐状であり、木材は裝飾材・高級家具材などとして用いられる。
昔からコウライシャラノキの枝を採取してから煎じて飲むと、肝炎や肝硬化症、脂肪肝などの種々の肝疾患と手足麻痺などに優れた治療効果があると知られている。しかしながら、未だコウライシャラノキ及びその葉の抽出物についての科学的で且つ体系的な研究は十分ではないのが現状である。
このため、当業界においては、上記の如き各種の疾患に有効なコウライシャラノキ及びその葉抽出物への持続的な研究及び開発が切望されているのが現状である。
そこで、本発明者らは、コウライシャラノキ抽出物の効能について鋭意研究を重ねてきた結果、コウライシャラノキ葉抽出物が血管内皮細胞の移動と増殖を促進し、且つ、血管形成、創傷回復及び皮膚組織再生に優れた効果を示すということを確認し、本発明を完成するに至った。
発明の要約
従って、本発明の主たる目的は、血管新生促進効果を示すコウライシャラノキ抽出物を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記コウライシャラノキ抽出物を含有する、傷及び凍傷部位の回復、手術後における手術部位の回復、胃潰瘍、虚血性心臓疾患及び脱毛などの治療及び予防のために血管新生が求められる疾病の治療または予防用の医薬組成物を提供するとことにある。
本発明のさらに他の目的は、前記コウライシャラノキ抽出物を含有するシワ改善用の化粧品を提供するとことにある。
前記目的を達成するために、本発明は、血管新生促進効果を示すコウライシャラノキ抽出物を提供する。
本発明において、前記コウライシャラノキ抽出物は、水、C〜C低級アルコール、極性溶媒、非極性溶媒及びこれらの混合溶媒よりなる群から選ばれたいずれか1種の抽出溶媒により抽出されたことを特徴とする。特に、前記コウライシャラノキ抽出物は、(a)水、C〜C低級アルコール、非極性溶媒及びこれらの混合溶媒よりなる群から選ばれたいずれか1種の抽出溶媒にコウライシャラノキの葉を添加した後、攪拌しながら40〜80℃において還流抽出するステップと、(b)抽出物をろ過してろ液を分離するステップと、(c)ろ液を減圧濃縮して乾燥粉末を得るステップと、により製造されたものであることを特徴とする。また、前記混合溶媒は、30〜99%エタノール水溶液または30〜99%メタノール水溶液であることを特徴とする。
さらに、本発明は、前記コウライシャラノキ抽出物を有効成分として含有する血管新生促進用の医薬組成物及び創傷部位の組織再生促進用の医薬組成物を提供する。
さらにまた、本発明は、前記コウライシャラノキ抽出物を有効成分として含有するシワ改善用の化粧品を提供する。
本発明の他の特徴及び具現例は、下記の詳細な説明及び特許請求の範囲からなお一層明らかになる。
本発明によるコウライシャラノキ葉抽出物と既存の創傷治療剤による血管内皮細胞の移動効果を示すグラフである。 本発明によるコウライシャラノキ葉抽出物が血管内皮細胞増殖に及ぼす影響を示すグラフである。 本発明によるコウライシャラノキ葉抽出物が卵(CAM)において血管新生を促進することを示す図である。 本発明によるコウライシャラノキ葉抽出物により形成された卵の血管数を計数した結果である。 本発明によるコウライシャラノキ葉抽出物によるマウスにおいて創傷回復効果を示す図である。 本発明によるコウライシャラノキ葉抽出物によるマウスにおける創傷面積の変化を示すグラフである。 本発明によるコウライシャラノキ葉抽出物による創傷組織再生効果を示す図である。 本発明のコウライシャラノキのメチルアルコール抽出物の濃度別のMMP−1活性阻害の度合いを示すグラフである。 本発明のコウライシャラノキ抽出物中エチルアセテート分画によるMMP−1活性阻害結果を示すグラフである。
発明の詳細な説明及び具体的な具現例
本発明は、一つの観点において、血管新生促進効果を示すコウライシャラノキ抽出物に関する。
本発明によるコウライシャラノキ抽出物は、コウライシャラノキの葉を水、C〜C低級アルコール、極性溶媒、非極性溶媒及びこれらの混合溶媒から選ばれた抽出溶媒により抽出して製造する。その過程を詳述すると、コウライシャラノキの葉を乾燥させて粉砕した後、乾燥重量の5〜25倍、好ましくは、約10倍の体積の水、メタノール、エタノール及びブタノールなどの低級アルコールまたはこれらの1:0.1(v:v)〜1:10(v:v)の混合溶媒により、好ましくは、水または約70%(v)エタノールまたはメタノールにより20〜100℃、好ましくは、40〜80℃の抽出温度において約30分〜2日、好ましくは、1時間〜1日かけて熱水抽出、冷浸漬抽出(cold dipping extraction)、還流冷却抽出または超音波抽出などの方法により1〜5回、好ましくは、2〜3回連続抽出してろ紙によりろ過し、ろ液を回転真空濃縮器により20〜80℃、好ましくは、40〜60℃において減圧濃縮した後、濃縮物を真空凍結乾燥または熱風乾燥または噴射方式による乾燥などを通じてコウライシャラノキ抽出物乾燥粉末を得る。
抽出溶媒としては、上述した水、メタノール、エタノール及びブタノールなどの低級アルコールまたはこれらの混合溶媒を用いることが好ましいが、1−ペンタノール、2−ブトキシエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、酢酸、DMFO、DMSOなどの極性溶媒、アセトン、アセトニトリル、エチルアセテート、メチルアセテート、フルオロアルカン、ペンタン、ヘキサン、2、2、4−トリメチルペンタン、デカン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ジイソブチレン、1−ペンテン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、o−キシレン、ジイソプロピルエーテル、2−クロロプロパン、トルエン、1−クロロプロパン、クロロベンゼン、ベンゼン、ジエチルエーテル、ジエチルスルフィド、クロロホルム、ジクロロメタン、1、2−ジクロロエタン、ジメチルスルホキシド、アニリン、ジエチルアミン、エーテル、4塩化炭素、THFなどの非極性溶媒を用いて血管新生促進効果を示すコウライシャラノキ抽出物の分画を得ることもできる。
前記コウライシャラノキ抽出物の創傷治療効能を調べるために、コウライシャラノキ抽出物が血管内皮細胞の移動及び分化に及ぼす効果、血管新生に及ぼす効果及び創傷治療効果を調べてみたところ、その効果に優れていることを確認した。特に、本発明のコウライシャラノキ抽出物は、創傷治療後に傷痕(瘢痕)がなく損傷された組織を、きれいに回復させることが分かる。
このため、本発明は、他の観点において、前記コウライシャラノキ抽出物を有効成分として含有する血管新生促進用の医薬組成物及び創傷部位の組織再生促進用の医薬組成物に関する。
本発明による創傷回復医薬組成物は、薬剤学的な分野において通常の方法により通常の薬剤学的な剤形に剤形化することができる。好ましい薬剤学的剤形には錠剤、硬質または軟質カプセル、液剤、懸濁剤などの経口投与用の剤形、注射用の剤形、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ローションなどの局所投与用の外用剤などがある。これらの薬学的な剤形は薬剤学的に許容可能な通常の担体、例えば、経口投与用の剤形の場合には賦形剤、結合剤、崩解剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁化剤、保存剤または増量剤など、注射剤の場合には安定剤、保存剤、溶解補助剤、緩衝剤、等張化剤など、外用剤の場合には水性または油性軟膏基剤、酸化防止剤、防腐剤、増量剤などを用いて製造することができる。
本発明のコウライシャラノキ抽出物の好ましい投与量は、患者の状態及び体重、疾病の度合い、薬物の形態、投与経路及び期間によるが、当業者により適切に選択可能である。しかしながら、好ましい効果のために、本発明の抽出物は、1日につき0.01〜1g/kgであり、好ましくは、0.05〜0.5g/kgにて投与した方が良い。投与は1日につき1回投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。前記投与量は何ら本発明の範囲を限定するものではない。
本発明のコウライシャラノキ抽出物は皮膚組織再生効果を示すことから、シワ改善用の化粧品として使用可能である。このため、本発明は、さらに他の観点において、前記コウライシャラノキ抽出物を有効成分として含有するシワ改善用の化粧品に関する。
皮膚シワの発生原因の一つとして、皮膚膠原質(コラーゲン、エラスチン)の欠乏が挙げられる。コラーゲンは皮膚真皮を構成する主なタンパク質であって、皮膚構造と弾力を維持する役割を果たす。コラーゲンとエラスチンは環境的な要因と高齢化に伴いその生成が減少され、その分解が増大されて皮膚高分子の網目構造が毀損されて、その結果、皮膚の弾性減少と復元力の低下により皮膚のシワを引き起こすことが知られている。このため、従来のシワ改善用の化粧品は、上皮細胞及び内皮細胞の細胞増殖の促進、真皮の構成成分であるコラーゲン合成を促進するレチノール成分が含まれているものが主流をなしている。これは、コラーゲンが繊維芽細胞の細胞増殖促進、皮膚損傷部位の血管新生促進及びその他の再生促進因子の分泌誘導、皮膚組織が整然として配向されて網を形成するようにする物質であるフィブロネクチンの合成促進など皮膚組織再生に核心的な役割を担うためである。
同様に、本発明のコウライシャラノキ抽出物も前記コラーゲンに類似する機能である血管形成効果を示し、これは皮膚組織再生と密接な関連性があるため、シワ改善用の化粧品として有用である。
本発明において、前記シワ改善用の化粧品は、化粧水、クリーム、ローション、スキンローション、パック、ファウンデーション、液状石鹸、固形石鹸及び洗顔フォームよりなる群から選ばれた剤形を有することを特徴とする。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。但し、これらの実施例は単に本発明を一層詳しく説明するためのものであり、本発明の要旨により本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかである。
<実施例1:コウライシャラノキ抽出物の製造>
1−1:水を用いた熱水抽出
コウライシャラノキ葉を集めて洗浄して乾燥した後、粉砕した。粉砕された葉1kgを10Lの水に添加し、よく攪拌しながら60〜65℃において5時間かけて還流抽出した後、ろ過してろ液を分離した。分離されたろ液を55〜65℃において減圧濃縮した後、凍結乾燥してコウライシャラノキ抽出物乾燥粉末165gを得た。
1−2:水−エタノール混合溶媒を用いた熱水抽出
前記実施例1−1の方法と同様にして粉砕したコウライシャラノキ葉1kgを10Lの30%(v/v)、50%(v/v)、70%(v/v)エタノール水溶液に添加してよく攪拌しながら60〜65℃において5時間かけて還流抽出した後、ろ過してろ液を分離した。前記分離されたろ液を55〜65℃において減圧濃縮した後、凍結乾燥してコウライシャラノキ抽出物乾燥粉末135、154及び178gを得た。
1−3:水−メタノール混合溶媒を用いた抽出
前記実施例1−1の方法と同様にして粉砕したコウライシャラノキ葉1kgを10Lの80%(v/v)メタノール水溶液に添加してよく攪拌しながら常温において24時間かけて浸漬抽出した後、ろ過してろ液を分離した。この過程を2回繰り返し行った後、前記分離されたろ液を55〜65℃において減圧濃縮した後、凍結乾燥してコウライシャラノキ抽出物乾燥粉末1178gを得た。
<実施例2:コウライシャラノキ抽出物の極性溶媒及び非極性溶媒抽出物の製造>
2−1:クロロホルム可溶性分画分離
前記実施例1−1において得られた熱水抽出物50gを500mLの水に溶かし、クロロホルム500mLと一緒に分液漏斗に入れて強く混ぜた後、水層とクロロホルム可溶性層を分離した。前記水層及びクロロホルム層をそれぞれ70〜75℃及び45〜50℃において減圧濃縮した後、凍結乾燥した。
2−2:エチルアセテート可溶性分画分離
前記実施例2−1において得られたクロロホルム可溶性層に同じ体積のエチルアセテートを添加した後、分液漏斗に入れて強く混ぜた後、エチルアセテート可溶性分画及び不溶性分画を分離した。前記エチルアセテート可溶性分画を減圧濃縮して凍結乾燥した。
2−3:コウライシャラノキメタノール抽出物のエチルアセテート可溶性分画分離
前記実施例1−3において得られたメタノール浸漬抽出物1000gを3000mLの水と3000mLのエチルアセテートと一緒に分液漏斗に入れて強く混ぜた後、水層とエチルアセテート可溶性層を分離した。前記水層及びエチルアセテート層をそれぞれ70〜75℃及び45〜50℃において減圧濃縮した後、凍結乾燥した。
2−4:エチルアセテート可溶性分画の下位分画分離
前記実施例2−3において得られたエチルアセテート可溶性分画300gを12:1、10:1、7:1及び5:1のクロロホルム:メタノール溶出溶媒を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィ(Φ12x20cm)により溶出させた後、それぞれをTLC(薄膜クロマトグラフィ)により分離した。
TLCを行うとき、クロロホルムとメタノールとの割合を8:1にして、1回分画(Rf:1〜0.9)、2回分画(Rf:0.9〜0.7)、3回分画(Rf:0.7〜0.5)及び4回分画(Rf:0.5〜0.3)により分離し、クロロホルムとメタノールとの割合を4:1にして、5回分画(Rf:0.7〜0.5)、6回分画(Rf:0.5〜0.4)及び7回分画(Rf:0.4以下)により分離した。
<実施例3:コウライシャラノキ抽出物が血管内皮細胞の移動に及ぼす影響>
血管内皮細胞の移動は血管新生の必須の過程であり、本発明によるコウライシャラノキ抽出物が血管内皮細胞の移動に及ぼす影響をボイデンチャンバーの方法(Gho, Y.S. et al., Cancer Res., 59:5128, 1999)により確認した。ポリカーボネート膜(米国コスタール社製)に0.1%ゼラチンを10分間塗布した後、室温において1時間かけて乾燥した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cell、HUVEC)1×10cells/mLをトランスウェル(米国コスタール社製)の下のチャンバーに30μL入れ、前記乾燥させたポリカーボネート膜を載せた後、上チャンバーを載せ、ネジを締め付けた。チャンバーをひっくり返して細胞が膜に向かって付着可能に37℃のCO培養器において2時間培養した。
3−1:移動した血管内皮細胞の数の計数
本発明によるコウライシャラノキ抽出物を前記製作された上チャンバーに50μLずつ添加して2時間培養した後、ディフクイック(diff-quick)染色試薬を用いてポリカーボネート膜を染色した後、ポリカーボネート膜を通じて移動した血管内皮細胞の数を顕微鏡により計数した(表1)。実施例1及び2において得られたそれぞれの乾燥コウライシャラノキ抽出物粉末を水に100μg/mLにて添加して使用し、陰性対照群として水を使用し、陽性対照群としてVEGF(vascular endothelialgrowth factor、シグマ社製)10ng/mLを使用した。その結果、下記表1に示すように、本発明によるコウライシャラノキ葉抽出物は血管内皮細胞の移動を効果的に誘導し、特に、70%エタノール及び70%エタノール熱水抽出物が最も効果的であった。
3−2:移動した血管内皮細胞の数の計数
コウライシャラノキ70%エタノール熱水抽出物及び複合マデカソル(Centella asiatica extract、韓国ドングク製薬社製)を前記製作された上チャンバーに50μLずつ添加して2時間培養した後、ディフクイック染色試薬によりポリカーボネート膜を染色した後、ポリカーボネート膜を通じて移動した血管内皮細胞の数を顕微鏡によりそれぞれ計数した(図1)。図1において、C及びVEGFはそれぞれ陰性対照群(水)及び陽性対照群(VEGF10ng/mL)を示し、SKE及びCAEはそれぞれ乾燥コウライシャラノキエタノール抽出物粉末及び複合マデカソルを示す。乾燥コウライシャラノキエタノール抽出物粉末及び複合マデカソルは水に12.5〜100μg/mLにて添加して使用した。その結果、図1に示すように、本発明によるコウライシャラノキ葉エタノール抽出物は市販中の複合マデカソルに比べて、遥かに効果的に血管内皮細胞の移動を誘導することが分かった。特に、コウライシャラノキ70%エタノール熱水抽出物は100μg/mL濃度にて添加した場合には強力な血管新生誘導因子として知られているVEGFよりも血管内皮細胞の移動をさらに促進することが分かった。
<実施例4:コウライシャラノキ抽出物が血管内皮細胞の増殖に及ぼす影響>
コウライシャラノキ抽出物が血管新生過程において血管内皮細胞の増殖に及ぼす影響をボイデンチャンバーの方法を用いて調べた。マトリゲル(BDバイオサイエンス)と無血清RPMI1640倍地(ハイクローン社製)との1:1(v:v)混合液を0.3mLずつ24ウェルプレートに添加した後、37℃培養器において1時間かけて固形化した。次に、臍帯血管内皮細胞(4×10/ウェル)と70%エタノール熱水抽出物乾燥粉末を濃度別に各ウェルに添加し、37℃のCO培養器において48時間培養した後、増殖された細胞の数を測定した(図2)。図2において、C及びVEGFはそれぞれ陰性対照群(水)及び陽性対照群(VEGF10ng/mL)を示す。
その結果、図2に示すように、コウライシャラノキ70%エタノール熱水抽出物は血管内皮細胞の増殖を効果的に誘導して細胞数を増大させ、100μg/mL濃度にて添加した場合には強力な血管新生誘導因子として知られているVEGFとほとんど類似する効果を示した。
<実施例5:コウライシャラノキ抽出物の生体内における血管新生促進効果>
コウライシャラノキ70%エタノール熱水抽出物の血管新生促進作用をCAM(絨毛尿膜)試験方法(Gho, Y.S. et al., Cancer Res., 59:5128, 1999)により測定した。有精卵を37℃において2日間培養した後、4mLのアルブミンを除去し、4日後に3cm×3cm程度の卵の外皮を除去して窓を作った後、培養し続けた。タイプIコラーゲン(Rat tail, Becton Dickinson、米国)とコウライシャラノキ70%エタノール熱水抽出物混合18μLを点滴して乾燥させたテルマノックスカバーを10日胚卵のCAMに載せて3日間培養し、点滴されたコウライシャラノキ抽出物により新生される血管を計数した(図3及び図4)。図4において、C及びVEGFはそれぞれ陰性対照群(水)及び陽性対照群(VEGF10ng/mL)を示す。
その結果、図3及び図4に示すように、70%エタノール熱水抽出物を100μg/卵濃度にて処理した場合、新生される血管の数が強力な血管新生誘導因子として知られているVEGFよりも多いことを確認することができた。
<実施例6:マウスの創傷回復効果>
コウライシャラノキ70%エタノール熱水抽出物による創傷回復能力を測定するために、マウス真皮部位に6mmの傷をつけ、創傷回復実験を行った。実験は先行文献(Repertinger, S.K. et al., J. Invest. Dermatol., 982(123), 2004)により行い、9日間観察した。マウス1匹当たりに2箇所に傷をつけ、それぞれマウス別の特徴を比較実験した。陰性対照群としてはPBSを使用し、陽性対照群としてはEGF(50ng/mice)を使用した。コウライシャラノキ抽出物は200μg/miceになるように処理した。試料は毎日同じ時間に9日間繰り返し処理した。傷の面積はシオンイメージ(scion image)解析を通じて治療部位の面積を計算した(図5及び図6)。
その結果、図5及び図6に示すように、創傷部位は3日経過後に試料を処理したグループにおいて早く回復され、本発明による70%エタノール熱水抽出物により処理した場合(サンプル)の最終的な創傷面積の方が、EGFにより処理した場合よりもなお一層小さくなることを確認することができた。
<実施例7:創傷組織の組織再生効果>
コウライシャラノキ70%エタノール熱水抽出物による創傷組織の組織再生効果を確認するために、組織染色確認実験を行った。実験は先行文献(Repertinger, S.K. et al., J. Invest. Dermatol., 982(123), 2004)によるH.E染色方法を用いて染色した。創傷治癒が80%以上回復されたマウスの創傷部位を切開して得た組織を4%PFA溶液に12時間かけて固定した後、脱水反応を誘導し、これを24時間かけて常温において固めた。作成された試料を10μmに切った後、スライドの上に載せて、H.E溶液を用いて染色させた後に観察した。この場合、細胞外組織は赤色に染色され、細胞は青色に染色される。その結果、図7に示すように、70%エタノール熱水抽出物により処理した場合(サンプル処理)、血管の形成が活発になされるということが分かる。
剤形例
以下、前記実施例のように血管形成及び創傷回復効果に優れたコウライシャラノキ抽出物を用いた薬学的な剤形の例を説明するが、これは本発明を限定するものではなく、具体的に説明するためである。
<剤形例1:注射剤形の製造>
実施例1−2の70%エタノール熱水抽出物100mgと、ピロ亜硫酸ナトリウム3.0mgと、メチルパラベン0.8mg及びプロピルパラベン0.1mgに注射用の滅菌蒸留水を混合して2mLにした後、アンプルに充填し滅菌して製造する。
<剤形例2:錠剤の製造>
実施例1−2の70%エタノール熱水抽出物300mgと、乳糖100mgと、澱粉100mg及びステアリン酸マグネシウム適量を混合し、通常の錠剤の製造方法により打錠して製造する。
<剤形例3:カプセル剤の製造>
実施例1−2の70%エタノール熱水抽出物300mgと、乳糖50mgと、澱粉50mgと、タルク2mg及びステアリン酸マグネシウム適量を混合し、通常のカプセル剤の製造方法によりゼラチンカプセルに充填して製造する。
<剤形例4:液剤の製造>
実施例1−2の70%エタノール熱水抽出物500mgと、砂糖5gと、異性化糖10g及びレモン香適量に精製水を加えて100mLにした後、100mLの褐色瓶に充填し、滅菌して製造する。
<剤形例5:軟膏剤の製造>
実施例1−2の70%エタノール熱水抽出物100mgと、軽質流動パラフィン100mgと、ステアリルアルコール80mgと、セトステアリルアルコール13mgと、プロピレングリコール50mgと、モノステアリン酸ソルビタン30mgと、モノステアリン酸ポリオキシエチルソルビタン40mgと、ブチル化ヒドロキシトルエン0.4mgと、パラオキシベンゾ酸メチルエステル0.9mgと、パラオキシベンゾ酸ブチルエステル0.9mg及び精製水の適量を通常の軟膏剤の製造方法により混合して1g当たりに実施例1−2の70%エタノール熱水抽出物100mgを含有する軟膏剤を製造する。
以下、コウライシャラノキ抽出物の皮膚再生効果を用いた化粧品剤形の例を説明するが、これは本発明を限定するものではなく、具体的に説明するためである。
<剤形例6:化粧水>
実施例1−2のコウライシャラノキ葉70%エタノール抽出物100mgと、グリセリン250mgと、1、3−ブチレングリコール150mgと、PEG1500 50mgと、アラントイン5mgと、DL−パンテノール1.5mgと、EDTA1mgと、ベンゾフェノン−92mgと、ヒアルロン酸ナトリウム250mgと、エタノール500mgと、オクチルドデセス−16 10mgと、ポリソルベート−20 10mgと、防腐剤、香、色素2mg及び蒸留水を適量混合して通常の方法により化粧水を剤形する。
<剤形例7:クリーム>
実施例1−2コウライシャラノキ葉70%エタノール抽出物75mgと、親油性モノステアリングリセリン100mgと、ステアリルアルコール110mgと、ステアリン酸75mgと、蜜蝋50mgと、ポリソルベート−60 75mgと、ソルビタンステアレート30mgと、硬化植物油50mgと、スクアラン150mgと、鉱物油250mgと、トリオクタノイル250mgと、ジメチコン50mgと、ソジウムマグネシウムシリケート5mgと、グリセリン250mgと、ベタイン150mgと、トリエタノールアミン50mgと、ヒアルロン酸ナトリウム200mgと、防腐剤、香、色素2mg及び蒸留水の適量を混合して通常の方法によりクリームを剤形する。
前記組成比は比較的に好みの化粧品に適した成分を好ましい実施例により混合造成したが、需要階層や、需要国、使用用途など地域的、民族的な好みによってその配合比を任意に変形実施しても構わない。
実験例
本発明によるコウライシャラノキ葉抽出物の優れた血管形成効果がシワ改善用の化粧品に適用されるかどうかを調べるために、前記剤形例6の化粧水を用いてシワ改善効果及び安定性テストを実施した。
<実験例1:シワ改善効果テスト>
1−1:皮膚シワ変化の測定
前記剤形例6の化粧水をガーゼに浸して、被検者(30才以上の女性10名)の左側及び右側の腕の上膊に2×2cmの面積にて6週間(2回/日)塗布した後、皮膚シワ変化を透明なシリコン材質の溶液を用いてレプリカを作って皮膚シワ測定器(SKIN VISOMETER SV400、C+K Electronics、Germany)により測定した。レプリカの像をCCDカメラにより3次元的に分析し、皮膚シワ改善効果は、下記式1に示すように、それぞれのシワの粗さ(Rm:mは1以上の整数)の合計をシワの数で除算した値、すなわち、平均シワ粗さ(Rz)により分析した(表2)。
表2において、対照群は剤形例6の成分のうちコウライシャラノキ葉抽出物を除く残りの成分を含有する溶液をガーゼに浸して処理した。その結果、表2に示すように、コウライシャラノキ葉抽出物を含有する剤形例6の化粧水を用いた場合、皮膚シワ改善効果に優れていることが分かった。
1−2:コウライシャラノキメタノール抽出物(SKM)の濃度別MMP−1活性阻害効果
正常人の線維芽細胞を24ウェルプレートに3×10/ウェル接種し、サブコンフルエント(subconfluent)まで培養した後、PBSにより洗浄し、その後、実施例1−3において得られたSKMを5、10及び50μg/μLにて処理し、24時間培養した。前記培養された細胞をPBSバッファーにより洗浄し、各ウェル当たりにRNABee(TEL−TESTInc)1mLを用いてトータルRNAを分離した。前記分離されたトータルRNA(1μg)からImProm-II Reverse Transcription System(Promega)を用いてcDNAを合成した。
前記合成されたcDNA1μLと下記の配列番号1及び2のヒトMMP−1由来のプライマーをそれぞれ1μL、及びSYBR GREEN PCR Master Mix(Applied Biosystems)10μLに蒸留水を添加して20μLに調整した後、PCRを通じて増幅した。前記PCRは50℃において2分、95℃において10分を1回、95℃において15秒、60℃において1分を45回繰り返すようにした。前記増幅物の蛍光をABI PRISM 7000判読システム(Applied Biosystems)を用いて測定した(図8)。その結果、図8に示すように、コウライシャラノキ抽出物を添加した場合、コラーゲン分解酵素であるMMP−1(matrix metaloproteinase-1)の活性が急減することが分かった。
配列番号1:5’−TGC GCA CAA ATC CCT TCT AC
配列番号2:3’−TGT CCC TGA ACA GCC CAG TA
1−3:コウライシャラノキ抽出物エチルアセテート分画(SKEA)の濃度別MMP−1活性阻害効果
正常人の線維芽細胞を24ウェルプレートに3×10/ウェル接種してサブコンフルエント(subconfluent)まで培養し、PBSにより洗浄した後、実施例2−3において得られたSKEA25μg/μL、レチノールl2.5μM及び実施例2−4において分離された1〜7番分画物をそれぞれ5μg/μLにより処理し、24時間培養した。前記培養された細胞をPBSバッファーにより洗浄し、各ウェル当たりにRNABee(TEL−TEST Inc)1mLを用いてトータルRNAを分離した。分離されたトータルRNA(1μg)からImProm-II Reverse Transcription System(Promega)を用いてcDNAを合成した。
前記合成されたcDNA1μLと配列番号1及び2のヒトMMP−1由来のプライマーをそれぞれ1μL、及びSYBR GREEN PCR Master Mix(Applied Biosystems)10μLに蒸留水を添加して20μLに調整した後、PCRを通じて増幅した。前記PCRは50℃において2分、95℃において10分を1回、95℃において15秒、60℃において1分を45回繰り返すようにした。前記増幅物の蛍光をABI PRISM 7000判読システム(Applied Biosystems)を用いて測定した(図9)。その結果、図9に示すように、SKEA及び実施例2−4において分離された1〜7番の分画物を添加した場合、コラーゲン分解酵素であるMMP−1の活性が急減することが分かった。特に、1番及び7番分画物の場合、レチノールを処理した場合よりもMMP−1の活性をさらに減少させるということが分かった。
<実験例2:安全性テスト>
剤形例6の化粧水に対する人体安全性テストを実施した。前記剤形例6の化粧水を男性10名と女性20名を対象として使用性試験及び皮膚貼付試験を行った結果、平均刺激の度合いがそれぞれ0.1及び0.15であり、被検者全員において刺激を示さなかった。
以上、詳述したように、本発明のコウライシャラノキ抽出物は、血管内皮細胞の移動と分化を誘導して生体内においても血管新生を活性化させることから、傷及び凍傷部位の回復、手術後の手術部位の回復、胃潰瘍、虚血性心臓疾患及び脱毛などの治療及び予防のために血管新生が求められる疾病の治療または予防に卓越した効果を示す。また、本発明の抽出物は皮膚組織再生効果を示すことから、シワ改善用の化粧品としても有用である。
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施様態に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかであろう。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定まると言えるであろう。

Claims (3)

  1. ウライシャラノキ抽出物を有効成分として含有する血管新生促進用の医薬組成物。
  2. ウライシャラノキ抽出物を有効成分として含有する創傷部位の組織再生促進用の医薬組成物。
  3. コウライシャラノキ抽出物を有効成分として含有する血管新生促進用、又は組織再生促進用皮膚外用剤組成物
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