JP5039005B2 - セルロースエステルフィルム、それを含む偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents
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Description
より具体的には、本発明者は鋭意検討した結果、アセチル基ならびにプロピオニル基及び/又はブチリル基の双方を有するセルロースエステルであって、且つ所定のアセチル置換度、所定のプロピオニル基及び/又はブチリル基の置換度、及び所定の総置換度を有するセルロースエステルを用いることによって、ヘイズが低く、且つRe及びRthに関する所望の特性を示すセルロースエステルフィルムを作製できるとの知見を得、さらには、このセルロースエステルフィルムを延伸して主鎖を配向させ、その方向に分子長軸が配向する化合物を含ませることによって、セルロースエステルフィルムのReおよびRthに逆分散性をもたせるとの知見を得た。この知見に基づいてさらに検討し、本発明を完成するに至った。具体的には、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 下記式I〜IIIを満足する少なくとも一種のセルロースエステルを含有し、及び下記式IV〜VIIを満足することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
式I 2.2≦X1+X2≦2.55
式II 1.1≦X1≦1.5
式III 1.05≦X2≦1.4
式IV Re(450)/Re(550)<1
式V Re(650)/Re(550)>1
式VI Rth(450)/Rth(550)<1
式VII Rth(650)/Rth(550)>1
(X1は、セルロースエステルのアセチル基による置換度を、及びX2はセルロースエステルのプロピオニル基及び/又はブチリル基による置換度を表す。また、Re(λ)は波長λ(nm)における面内レターデーション(nm)、及びRth(λ)は波長λ(nm)における厚み方向のレターデーション(nm)を表す。)
[2] 前記少なくとも1種のセルロースエステルが、下記式I’〜III’を満足し、及び下記式VIII及びIXを満足することを特徴とする[1]のセルロースエステルフィルム。
式I’ 2.3≦X1+X2≦2.5
式II’ 1.2≦X1≦1.4
式III’ 1.1≦X2≦1.3
式VIII 5nm≦{Re(650)−Re(450)}≦20nm
式IX 10nm≦{Rth(650)−Rth(450)}≦30nm
[3] 下記式X及びXIを満足することを特徴とする[1]又は[2]のセルロースエステルフィルム。
式X 40nm≦Re(589)≦70nm
式XI 90nm≦Rth(589)≦220nm
[4] 分子長軸方向の分極率異方性と比較して分子短軸方向の分極率異方性が大きく、且つセルロースエステルフィルム中でセルロースエステルの主鎖の配向方向に分子長軸が配向する化合物を、セルロースエステルに対して0.1〜30質量%含むことを特徴とする[1〜3]のいずれかのセルロースエステルフィルム。
[8] フィルム全幅について、遅相軸の軸ズレが0.4度以下であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかのセルロースエステルフィルム。
[9] 膜厚が20〜80μmであることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかのセルロースエステルフィルム。
[10] [1]〜[9]のいずれかのセルロースエステルフィルムを含む偏光板。
[11] [10]の偏光板を含む液晶表示装置。
[12] [11]の偏光板が、VAモードの液晶セルの表示面側及びバックライト側に各1枚ずつ、それぞれの偏光板吸収軸を直交させて配置されることを特徴とする液晶表示装置。
まず、本明細書で用いられる用語について、説明する。
(レターデーション(Re及びRth))
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(X)及び式(XI)よりRthを算出することもできる。
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
また、本明細書において、位相差膜及び液晶層等の各部材の光学特性を示す数値、数値範囲、及び定性的な表現(例えば、「同等」、「等しい」等の表現)については、液晶表示装置やそれに用いられる部材について一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲及び性質を示していると解釈されるものとする。
本発明は、アセチル基ならびにプロピオニル基及び/又はブチリル基を有するセルロースエステルを少なくとも含むセルロースエステルフィルムに関する。本発明のセルロースエステルフィルムは、下記式I〜IIIを満足する少なくとも一種のセルロースエステルを含有することを特徴とする。
式I 2.2≦X1+X2≦2.55
式II 1.1≦X1≦1.5
式III 1.05≦X2≦1.4
ここで、X1は、セルロースエステルのアセチル基による置換度を、及びX2はセルロースエステルのプロピオニル基及び/又はブチリル基による置換度を表す。
本発明では、上記式I〜IIIを満足するセルロースエステルを利用することで、下記式IV〜VIIを満足するセルロースエステルフィルムを提供している。
式IV Re(450)/Re(550)<1
式V Re(650)/Re(550)>1
式VI Rth(450)/Rth(550)<1
式VII Rth(650)/Rth(550)>1
式VIII 5nm≦{Re(650)−Re(450)}≦20nm
式IX 10nm≦{Rth(650)−Rth(450)}≦30nm
式I’ 2.3≦X1+X2≦2.5
式II’ 1.2≦X1≦1.4
式III’ 1.1≦X2≦1.3
本発明のセルロースエステルフィルムは、1種又は2種以上のセルロースエステルを主成分として含有する。ここで「主成分として含有する」とは、セルロースエステルフィルムの材料として用いられているセルロースエステルが1種である場合は、当該セルロースエステルをいい、複数種である場合は、最も高い割合で含有されるセルロースエステルをいう。セルロースには、β−1,4結合しているグルコース単位当り、2位、3位及び6位に遊離の水酸基がある。本発明のセルロースエステルフィルムの材料には、これらの3つの水酸基が、アセチル基と、プロピオニル基及び/又はブチリル基に置換されたセルロースエステルを少なくとも使用する。具体的には、アセテート・プロピオネート、セルロースアセテート・ブチレート、又はセルロースアセテート・プロピオネート・ブチレートを用いるのが好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムは、種々の目的により、添加剤の少なくとも1種を含有していてもよい。これらの添加剤は、当該セルロースエステルフィルムを溶液製膜法で製造する場合は、セルロースエステルドープ中に添加することができる。添加のタイミングについては特に制限はない。添加剤は、セルロースエステルと相溶(溶液製膜法ではセルロースエステルドープ中に可溶)な剤から選択する。添加剤は、セルロースエステルの光学特性の調整及びその他の特性の調整等を目的として添加される。
(一般式(1)で表される化合物)
本発明のセルロースエステルフィルムは、下記式(1)で表される化合物を含有しているのが好ましい。
また、前記一般式(1)で表される化合物は、当該繰り返し単位を6〜50含む、いわゆるオリゴマー化合物である。前記一般式(1)の繰り返し単位の両末端に結合する基は、特に制限されるものではない。水素原子、低級アルキル基などの他、脂肪族アシル基、芳香族アシル基などの通常の末端原子又は基が結合している。
また、本発明のセルロースエステルフィルムは、下記一般式(A)で表される化合物の少なくとも1種を含有しているのが好ましい。下記一般式(A)で表される化合物を添加することにより、フィルムの面内レターデーションが上昇するとともに、フィルムのレターデーションの波長分散性が逆分散性になる傾向がある。
なお、ハメットの置換基定数のσp、σmに関しては、例えば、稲本直樹著「ハメット則−構造と反応性−」(丸善)、日本化学会編「新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応V」2605頁(丸善)、仲谷忠雄著「理論有機化学解説」217頁(東京化学同人)、ケミカル レビュー,91巻,165〜195頁(1991年)等の成書に詳しく解説されている。
nは0〜2の整数を表し、好ましくは0、1である。
さらに、前記スキームに示したように、化合物(1−E)のテトラヒドロフラン溶液に、メタンスルホン酸クロライドを加え、N,N−ジイソプロピルエチルアミンを滴下し攪拌した後、N,N−ジイソプロピルエチルアミンを加え、化合物(1−D)のテトラヒドロフラン溶液を滴下し、その後、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)のテトラヒドロフラン溶液を滴下することで、例示化合物(1)を得ることができる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、可塑剤を含有しているのが、製膜性などが改善されるので好ましい。可塑剤として、糖類及びその誘導体からなる化合物群から選択される糖類系可塑剤、又はジカルボン酸類とジオール類との重縮合エステル及びその誘導体からなるオリゴマー類から選択されるオリゴマー系可塑剤を使用すると、セルロースエステルフィルムの環境湿度耐性が改善されるので好ましい。具体的には、湿度に依存したRthの変動|ΔRth|を軽減することができ、上記条件で測定した|ΔRth|について8nm以下を達成することができる。糖類系可塑剤及びオリゴマー系可塑剤の双方を併用すると、|ΔRth|の軽減効果が高くなる。
上記した通り、本発明のセルロースエステルフィルムは、糖類及びその誘導体からなる化合物群から選択される少なくとも1種の化合物を、含有しているのが好ましい。中でも、1〜10量体の糖類及びその誘導体からなる化合物群から選択される化合物は、可塑剤として好ましい。その例には、国際公開を2007/125764号パンフレットの[0042]〜[0065]に記載のグルコース等の糖のOHの一部又は全部の水素原子がアシル基に置換された糖誘導体が含まれる。糖類系可塑剤の添加量は、主成分であるセルロースエステルに対して、0.1質量%以上20質量%未満であるのが好ましく、0.1質量%以上10質量%未満であるのがより好ましく、0.1質量%以上7質量%未満であるのがさらに好ましい。
上記した通り、本発明のセルロースエステルフィルムは、オリゴマー類から選択されるオリゴマー系可塑剤を含有しているのが好ましい。オリゴマー系可塑剤の好ましい例には、ジオール成分とジカルボン酸成分との重縮合エステル及びその誘導体(以下、「重縮合エステル系可塑剤」という場合がある)、並びにメチルアクリレート(MA)のオリゴマー及びその誘導体(以下、「MAオリゴマー系可塑剤」という場合がある)が含まれる。
芳香族ジカルボン酸の例には、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等が含まれ、フタル酸、及びテレフタル酸が好ましい。脂肪族ジカルボン酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が含まれ、中でも、コハク酸、及びアジピン酸が好ましい。
また、MAオリゴマー系可塑剤が、2種以上の繰り返し単位を有するオリゴマーである場合は、X(親水基を有するモノマー成分)及びY(親水基を持たないモノマー成分)からなり、X:Y(モル比)が1:1〜1:99のオリゴマーが好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムは、前述した糖類系可塑剤、重縮合エステル系可塑剤、及びMMAオリゴマー系可塑剤とともに、又はそれに代えて、他の高分子系可塑剤を含有していてもよい。他の高分子系可塑剤としては、ポリエステルポリウレタン系可塑剤、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、フェノール−ホルムアルデヒド縮合物、尿素−ホルムアルデヒド縮合物、酢酸ビニル、等が挙げられる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、少なくとも2つの芳香環を有する化合物を含有していてもよい。当該化合物は、セルロースエステルフィルムの光学特性を調整する作用がある。例えば、本発明のセルロースエステルフィルムを光学補償フィルムとして用いる場合、光学特性、特にReを好ましい値に制御するには、延伸が有効である。Reの上昇はフィルム面内の屈折率異方性を大きくすることが必要であり、一つの方法が延伸による主鎖配向の向上である。また、屈折率異方性の大きな化合物を添加剤として用いることで、さらにフィルムの屈折率異方性を上昇することが可能である。例えば上記の2つ以上の芳香環を有する化合物は、延伸によりポリマー主鎖が並び、それに伴い該化合物の配向性も向上し、所望の光学特性に制御することが容易となる。
また、本発明のセルロースエステルフィルムは、光学異方性調整剤を含有していてもよい。例えば、特開2006−30937号公報の23〜72頁に記載の「Rthを低減させる化合物」が例に挙げられる。
前記セルロースエステルフィルムには、マット剤を添加してもよい。マット剤として使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、且つ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができ、より好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
前記セルロースエステルフィルムには、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、低分子可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期は、ドープ調製工程においていずれのタイミングで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後のタイミングで添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースエステルフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、溶液製膜法(ソルベントキャスト法)によって製膜されたフィルムであるのが好ましい。ソルベントキャスト法では、ポリマーを有機溶媒に溶解して調製されたドープを、金属等からなる支持体の表面にキャストして、乾燥して製膜する。その後、膜を支持体面から剥ぎ取り、延伸処理することで製造される。
ソルベントキャスト法を利用したセルロースエステルフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同2,367,603号、同2,492,078号、同2,492,977号、同2,492,978号、同2,607,704号、同2,739,069号及び同2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号及び同736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号及び同62−115035号等の記載を参考にすることができる。また、前記セルロースエステルフィルムは、延伸処理を施されていてもよい。延伸処理の方法及び条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号 等に記載の例を参考にすることができる。
(Re及びRth)
本発明のセルロースエステルフィルムの光学特性の好ましい範囲は、用途に応じて変動するであろう。VAモード液晶表示装置に利用される態様では、Re(589)が40nm〜70nmであり、及びRth(589)が90nm〜220nmであるのが好ましく;Re(589)が45nm〜65nmであり、及びRth(589)が100nm〜160nmであるのがより好ましい。さらには、Re(589)が50nm〜60nmであり、及びRth(589)が110nm〜150nmであることがさらに好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムを液晶表示装置の部材等、薄型化が望まれる装置の部材として利用する態様では、膜厚は薄いほうが好ましいが、一方、膜厚が薄すぎるとその用途に要求される光学特性を達成できない。液晶表示装置の光学補償フィルムや偏光板保護フィルムとして利用する態様では、膜厚は20〜80μm程度であるのが好ましい。より好ましくは、25〜70μm程度であり、さらに好ましくは30〜60μm程度である。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、低ヘイズであるのが好ましい。低へイズのフィルムを用いると、液晶表示装置の正面(表示面に対して法線方向)のコントラストを低下させないので好ましい。本発明のセルロースエステルフィルムは、ヘイズ0.5%以下を達成可能である。より好ましくは、ヘイズは0.4%以下であり、さらに好ましくは0.3%以下である。なお、ヘイズの下限値については特に制限されない。
なお、本明細書において、フィルムのヘイズの測定方法は以下の通りである。フィルム試料40mm×80mmを準備し、25℃,60%RHの環境下、ヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)により、JIS K−6714に従って測定する。
テンター延伸により横方向すなわちフィルム搬送方向と直交する方向に遅相軸を持つフィルムにおいては、延伸によってフィルムの中心では遅相軸が直交する方向にあってもフィルム幅の外へ行くほど弓なりに遅相軸がずれることがある(ボウイング)。フィルム幅とは、溶液流延法で作製されたフィルムについては、ドープ流延方向に直交する方向のフィルムの長さをいう。
本発明のセルロースエステルフィルムは、フィルム全幅について、遅相軸の軸ズレが小さいのが好ましい。具体的には、フィルム全幅のある地点を光学測定した際に、遅相軸の軸ズレが0.4度以下、すなわち遅相軸の軸ズレが直交方向を0度とすると、−0.4度〜0.4度の範囲に収まるのが好ましい。±0.3度以内であるのがより好ましく、±0.2度以内であることがさらに好ましい。
フィルムの遅相軸は、フィルムの搬送方向に沿った末端と完全に平行に切り出した小片を用いて、KOBRA 21ADH又はWRによって、面内のレターデーション測定をすることにより同時に測定される。
本発明のセルロースエステルフィルムは、種々の用途に用いることができる。例えば、液晶表示装置の光学補償フィルム、偏光板の保護フィルム等に利用することができる。
(光学補償フィルム)
本発明のセルロースエステルフィルムは、光学補償フィルムとして用いることができる。なお、「光学補償フィルム」とは、一般に液晶表示装置等の表示装置に用いられ、光学異方性を有する光学材料のことを意味し、光学補償シートなどと同義である。液晶表示装置において、光学補償フィルムは表示画面のコントラストを向上させたり、視野角特性や色味を改善したりする目的で用いられる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、偏光板(本発明の偏光板)の保護フィルムとして用いることができる。本発明の偏光板の一例は、偏光膜とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(透明フィルム)からなり、本発明のセルロースエステルフィルムを少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして有する。本発明のセルロースエステルフィルムが支持体として利用され、その表面に液晶組成物からなる光学異方性層を有する態様について、偏光板の保護フィルムとして利用する場合は、支持体である本発明のセルロースエステルフィルムの裏面(光学異方性層が形成されていない側の面)を偏光膜の表面に貼り合せるのが好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムを前記偏光板保護フィルムとして用いる場合、本発明のセルロースエステルフィルムには前記表面処理(特開平6−94915号公報、同6−118232号公報にも記載)を施して親水化しておくことが好ましく、例えば、グロー放電処理、コロナ放電処理、又は、アルカリ鹸化処理などを施すことが好ましい。特に、本発明のセルロースエステルフィルムを構成するセルロースエステルがセルロースエステルの場合には、前記表面処理としてはアルカリ鹸化処理が最も好ましく用いられる。
本発明のセルロースエステルフィルム、ならびそれを利用した光学補償フィルム及び偏光板は、様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。以下にこれらのフィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。これらのモードのうち、本発明のセルロースエステルフィルム、並びにそれを利用した光学補償フィルム及び偏光板は、特にVAモードの液晶表示装置に好ましく用いられる。これらの液晶表示装置は、透過型、反射型及び半透過型のいずれでもよい。
図1のVAモード液晶表示装置は、液晶セルLC(上側基板1、下側基板3、及び液晶層5、からなる)と、液晶セルLCを挟持して配置される一対の上側偏光板P1及び下側偏光板P2とを有する。なお、偏光膜は、双方の表面に保護フィルムを有する偏光板として液晶表示装置に組み込まれるのが一般的であるが、図1では、偏光膜の外側保護フィルムは省略した。偏光板P1及びP2は、それぞれ偏光膜8a及び8bを有し、その吸収軸9a及び9bを互いに直交方向にして配置されている。液晶セルLCはVAモードの液晶セルであり、黒表示時には、図1に示す通り、液晶層5はホメオトロピック配向になる。上側基板1と下側基板3は、それぞれ内面に、配向膜(図示せず)と電極層(図示せず)を有し、さらに観察者側の基板1の内面には、カラーフィルタ層(図示せず)を有する。
本発明のセルロースエステルフィルムは、場合により、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへ適用してもよい。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明の透明セルロースエステルフィルムの片面又は両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れか或いは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明のセルロースエステルフィルムにおいても好ましく用いることができる。
下記表2に記載の割合になるようにセルロースエステルを100質量%、可塑剤としてTPP(トリフェニルフォスフェート)6質量%およびBDP(ビフェニルジフェニルフォスフェート)5質量%に、さらに表にそれぞれ示した化合物を含む各成分を混合してセルロースエステル(具体的には、セルロース・アセテート・プロピオネート)溶液を調製した。この溶液を、バンド流延機を用いて流延し、得られたウェブをバンドから剥離し、その後140℃の条件下、TD方向(フィルム幅方向)に30%延伸した後、乾燥して、厚さ50μmのセルロースエステルフィルム(具体的には、セルロース・アセテート・プロピオネート)フィルムを作製した。これをフィルム101として用いた。
なお、比較および後述の液晶表示装置での表示性能確認のため、実際の液晶テレビに搭載されている光学フィルムの性能を表に記載した。このフィルムは、偏光板の形態で液晶テレビより剥がし、さらに偏光子を温水で溶かして光学フィルムを分離した。光学特性については実施例と同様の方法により測定した結果を記載した。
上記作製した本発明のセルロースエステルフィルム103および203、比較例のフィルム110の表面をそれぞれアルカリ鹸化処理した。具体的には、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。
同様に、フジタックTD80UL(富士フイルム社製)をアルカリ鹸化処理した。
別途、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。
ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理した各フィルム103、203、比較例のフィルム110と同様のアルカリ鹸化処理したフジタックTD80UL(富士フイルム社製)を、これらの鹸化した面が偏光膜側となるようにして偏光膜を間に挟んで貼り合わせ、フィルム103、203、110のそれぞれとTD80ULとが、偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板103、203、110をそれぞれ作製した。
上記作製した各偏光板103、203、110を用いて、図1と同様の構成の液晶表示装置No.103、203、110をそれぞれ作製した。具体的には、液晶セルとして、VAモード液晶テレビ(SONY製BRAVIA KDL40J−5000)を用い、各偏光板を図1中の表示面側及びバックライト側の偏光板(図1中P1及びP2)として組み合わせて、それぞれ組み込んで、液晶表示装置を作製した。なお、それぞれの位相差膜の遅相軸を、図1に示す通り、互いに直交させて配置した。
・黒表示時、白表示時の透過率
上記で作製した液晶表示装置No.103、203、110およびこれらの液晶表示装置のもともとの製品である液晶テレビ(SONY製BRAVIA KDL40J−5000)について、黒表示時及び白表示の、正面方向及び斜め方向(極角45度・方位角60度方向)の透過率を測定することにより正面コントラスト及び斜め方向のコントラストを求めた。斜めコントラストの結果を下記表に示す。
・黒表示時のカラーシフト
上記で作製した液晶表示装置No.1〜7について、黒表示時の色味変化Δu’v’(=√(u’max−u’min)2+(v’max−v’min)2)をそれぞれ測定した。ここで、u’max(v’max)は極角45度における、方位角0〜360度のうち最大のu’(v’)、u’min(v’min)は0〜360度のうち最小のu’(v’)であり、横軸u’、縦軸v’とした色空間座標上での色味変化の大きさを表す。結果を下記表に示す。
3 液晶セル下側基板
5 液晶層(液晶分子)
8a、8b 偏光フィルム
9a、9b 偏光フィルム吸収軸
10a、10b 位相差膜(本発明のセルロースエステルフィルム)
P1、P2 偏光板
LC 液晶セル
Claims (9)
- 下記式I〜IIIを満足する少なくとも一種のセルロースエステルを含有し、及び下記式IV〜VIIを満足し、さらに、分子長軸方向の分極率異方性と比較して分子短軸方向の分極率異方性が大きく、且つセルロースエステルフィルム中でセルロースエステルの主鎖の配向方向に分子長軸が配向する化合物であって、下記一般式(1)で表される化合物を、セルロースエステルに対して0.1〜30質量%含むことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
式I 2.2≦X1+X2≦2.55
式II 1.1≦X1≦1.5
式III 1.05≦X2≦1.4
式IV Re(450)/Re(550)<1
式V Re(650)/Re(550)>1
式VI Rth(450)/Rth(550)<1
式VII Rth(650)/Rth(550)>1
(X1は、セルロースエステルのアセチル基による置換度を、及びX2はセルロースエステルのプロピオニル基及び/又はブチリル基による置換度を表す。また、Re(λ)は波長λ(nm)における面内レターデーション(nm)、及びRth(λ)は波長λ(nm)における厚み方向のレターデーション(nm)を表す。)
- 前記少なくとも1種のセルロースエステルが、下記式I’〜III’を満足し、及び下記式VIII及びIXを満足することを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルム。
式I’ 2.3≦X1+X2≦2.5
式II’ 1.2≦X1≦1.4
式III’ 1.1≦X2≦1.3
式VIII 5nm≦{Re(650)−Re(450)}≦20nm
式IX 10nm≦{Rth(650)−Rth(450)}≦30nm - 下記式X及びXIを満足することを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースエステルフィルム。
式X 40nm≦Re(589)≦70nm
式XI 90nm≦Rth(589)≦220nm - ヘイズが0.5%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
- フィルム全幅について、遅相軸の軸ズレが0.4度以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
- 膜厚が20〜80μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムを含む偏光板。
- 請求項7に記載の偏光板を含む液晶表示装置。
- 請求項7に記載の偏光板が、VAモードの液晶セルの表示面側及びバックライト側に各1枚ずつ、それぞれの偏光板吸収軸を直交させて配置されることを特徴とする液晶表示装置。
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