JP5038688B2 - 発泡体 - Google Patents

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Description

本発明は、発生気泡の小径化および気泡密度の発泡条件依存性を大幅に改善するために界面活性剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物より形成され、好ましくは発泡剤として超臨界流体を用いて製造された、微細かつ高密度の気泡を有する発泡体(以下単に“微細発泡体”と称する場合がある)に関する。本発明により得られた微細発泡体は、軽量でありかつ高靭性を有する。
近年、従来の発泡体にはない特性を有する材料が求められており、発泡体における気泡径の微細化は大きな技術的課題の1つとなっている。気泡径の微細化および高密度化を達成する方法として、超臨界流体を樹脂に含浸させ、高圧下から急減圧する方法が広く知られている。超臨界流体を発泡剤として利用する発泡体の製造方法としては、例えばポリカーボネート樹脂に関してみても、以下の提案がなされている。
(I)ポリカーボネート樹脂に、金属塩系難燃剤やポリオルガノシロキサン系難燃剤を配合した難燃性樹脂組成物を、超臨界流体で発泡した難燃性発泡体が提案されている(特許文献1参照)。より具体的には該特許文献1によればビスフェノールAからなる分岐状ポリカーボネート樹脂に難燃剤としてパーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩を配合した樹脂組成物から形成された発泡体が公知である。
(II)ポリカーボネートとポリジメチルシロキサンのブロック共重合体樹脂からなり、特定条件を満足する発泡体が公知である(特許文献2参照)。
(III)ポリカーボネート樹脂に、有機オニウムイオンで有機化された層状珪酸塩、およびスチレン−無水マレイン酸共重合体に代表される特定の化合物を配合した樹脂組成物から形成された発泡体が公知である(特許文献3参照)。
(IV)芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族基およびSi−H基含有有機シロキサン、並びにパーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩からなる樹脂組成物、並びに該樹脂組成物の成形方法の1つとして、超臨界流体を利用した発泡成形が例示されている(特許文献4参照)。
(V)ジシクロペンタジエン系樹脂を用いた反応射出発泡成形において、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が均一な発泡や気泡の微細化に有効であることが公知である(特許文献5参照)。
しかしながら、前記特許文献1は、単に難燃性のポリカーボネート樹脂組成物が発泡成形可能であることを開示するにとどまり、微細発泡体を十分に開示するものではなかった。特許文献2は、ポリカーボネートとポリジメチルシロキサンのブロック共重合体樹脂から形成され、特定の条件を満足する発泡体を具体的に開示している。しかしながら、具体的に開示された方法からは必ずしも満足できる発泡体が得られなかった。また、上述のとおり特許文献1においてはかかるブロック共重合体樹脂から同一条件で製造された発泡体が大きな気泡径を有することを鑑みれば、該特許文献2は微細な気泡を有する発泡体およびその製造方法を十分に開示しているとはいい難いものであった。
前記特許文献3の組成物は、微細発泡体を形成し得るものの、適用される発泡条件によっては亀裂状の発泡が生成して微細発泡体が得られない場合があり、かかる点から他の方法が求められる場合もあった。また特許文献4も、かかる特許文献の樹脂組成物が発泡成形に供し得ることを明示するものの、微細発泡体を十分に開示するものではなかった。更に特許文献5は、熱可塑性樹脂との関連について記載がなく、更に発泡体の気泡径も比較的大きいものであった。
再公表WO2003/004552号公報 特開2003−049018号公報 特開2004−107425号公報 特開2005−200526号公報 特開2003−040983号公報
前述のとおり、微細な気泡を形成するためには超臨界流体を樹脂に含浸させ、高圧下から急減圧することが重要であることは知られているものの、樹脂単体では、かような処理を行っても十分に微細な気泡が得られないのが現状である。
本発明の目的は、前記従来技術に鑑み、超臨界流体を樹脂に含浸させ高圧下から急減圧
した際に生成する気泡核を高密度化し、その結果後の気泡成長において気泡の微細化および高密度化を可能にする樹脂組成物、並びに該樹脂組成物から製造される微細発泡体を提供することにある。
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ポリカーボネート樹脂に、界面活性剤、殊にフッ素系界面活性剤を配合した樹脂組成物において、発泡体の気泡径が含浸する超臨界流体の圧力の増加に対応してより小径化することを見出した。かかる効果は樹脂単体では得られないものである。かかる知見より更に検討を進めて本発明を完成するに至った。
本発明によれば、本発明の前記課題は(1)ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部および界面活性剤(B成分)0.001〜30重量部を含有する組成物(組成物−I)より形成された発泡体であって、その気泡の長さ平均直径は0.01〜1μmであり、その気泡数密度は1011〜1016個/cmの範囲にあることを満足する発泡体により達成される。
B成分の界面活性剤により、高圧下から急減圧した際に上記を満足する微細発泡体が得られる原因は明確ではないものの次のように推測している。界面活性剤は、樹脂マトリックス中にミセル状を成して分散し、該ミセル内に発泡剤、好ましくは二酸化炭素(以下、“炭酸ガス”と称することがある)を含有することにより発泡剤を安定に存在させられると考えられる。かかる安定化により圧力開放時のエネルギー解放が樹脂マトリックス全体においてほぼ同一かつ均一に行われて気泡核が高密度で生成する。かかる高密度の気泡核の存在により、その後のガス流入による気泡成長も均一化され、微細かつ高密度の気泡が生成すると推測している。したがって、界面活性剤の作用は特にその気泡核の高密度な生成を助けており、したがって界面活性剤は気泡核生成助剤といえる。また、かかる界面活性剤はミセル径のより小さい状態を作り得るものであることが好ましい。
高密度に気泡核が生成した成形体が得られると、その後の気泡成長には種々の方法が選択できる。例えば、気泡核の生成と気泡成長とを異なる発泡剤で行うことも可能である。具体的には、気泡核の生成に超臨界炭酸ガスを利用し、気泡成長では改めて組成物−I中に窒素やアルゴンなどの他の不活性ガスを含浸させるか、または予め組成物−I中に化学発泡剤を含有させて、これらのガスを利用して気泡の成長を行うことができる。したがって、高密度な気泡核生成に利用する発泡剤は炭酸ガス、殊に超臨界炭酸ガスが好適であるといえ、最終的な発泡体を生成するに利用する発泡剤も、かかる炭酸ガスをそのまま気泡成長に利用することが簡便であることから、炭酸ガスが好ましい。
気泡の長さ平均直径の上限は、好ましくは0.6μm、より好ましくは0.4μm、更に好ましくは0.35μmであり、一方、かかる気泡の長さ平均直径の下限は、好ましくは0.05μm、より好ましくは0.08μmである。気泡密度の上限は好ましくは1015個/cm、より好ましくは1014個/cmであり、かかる下限は、好ましくは1012個/cmである。
本発明の好適な態様の1つは、(2)前記A成分は、ポリカーボネート樹脂である前記構成(1)の発泡体である。
樹脂マトリックスは、圧力開放時には気泡核生成が可能である範囲で、できる限り膨張に対する抵抗が大きいことが好ましい。かかる理由は、抵抗が大きいと気泡核の成長が起こりにくく、開放されるガスのエネルギーが新たな気泡核の生成に消費され、その結果として気泡核の密度が高まるためである。かかる抵抗は、樹脂の粘度や分子量、並びに圧力開放時の温度の影響を受ける。温度が高ければ樹脂は軟化し、膨張に対する抵抗は小さくなる。超臨界流体、殊に超臨界炭酸ガスの含浸により樹脂マトリックスはある程度可塑化される。樹脂の熱変形温度があまりに低い場合、抵抗の大きくなる条件が得られにくくなる。かかる点から本発明のA成分のガラス転移温度は比較的高いことが好ましく、具体的には好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上である。また該温度はあまりに高いと汎用性が低くなることから、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。尚、本発明におけるガラス転移温度はJIS K7121に規定される方法にて測定されたものである。
更に、樹脂マトリックスは、高圧のガスの開放圧力に十分に耐えられる強度を必要とし、かかる点からA成分としてはエンジニアリングプラスチックスであるポリカーボネート樹脂が好適である。尚、かかる好適なA成分は、他の熱可塑性樹脂を熱可塑性樹脂中50重量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは15重量%以下含有することができる。またかかる3種の樹脂に対して混合される他の熱可塑性樹脂の相溶性が低い場合、ガスの圧力が樹脂層間を破壊するようになり、均一かつ微細な発泡体が得られにくい。したがって、かかる3種の樹脂と他の熱可塑性樹脂とは十分に相溶していることが好ましく、即ち、得られた樹脂組成物のガラス転移温度は1つのピークとなることが好ましい。
本発明の好適な態様の1つは、(3)前記B成分は、フッ素系界面活性剤である前記構成(1)〜(2)の発泡体である。前述のとおり界面活性剤はミセル径の小さい状態を作り得る条件を満足することが好ましく、かかる理由によってフッ素系界面活性剤がより小径かつ高密度の気泡径を生成するものと考えられる。更にフッ素化された有機基は超臨界状態の炭酸ガスとの親和性に優れ、これにより高圧の炭酸ガスが速やかにかつ安定して樹脂マトリックス中に分散され、その結果として微細発泡体の生成を可能にすると考えられる。フッ素系界面活性剤は、発泡剤として超臨界流体、殊に超臨界炭酸ガスを用いる場合に好適である。
本発明の好適な態様の1つは、(4)前記発泡体は、固体状の組成物−Iに不活性ガスの超臨界流体を20〜50MPaの圧力で含浸させる方法により製造されることを特徴とする前記構成(1)〜(3)に記載の発泡体である。
本発明の好適な発泡体の製造方法は、組成物−I中に高圧下でガスを含浸させる工程(工程A)、かかる高圧下から減圧して気泡核を生成する工程(工程B)、並びにかかる気泡核を気泡に成長させる工程(工程C)を含んでなる。発泡体の製造が基本的にかかる工程A〜工程Cを含むことはよく知られるところである。尚、工程Bと工程Cとは独立とした工程であっても、連続した工程であってもよい。独立した工程とは、一般的には工程Bとして気泡核の生成した成形体を得る工程、並びに工程Cとしてかかる成形体を加熱して軟化させ、成形体中に含有するガスを用いて気泡を大きくする工程からなる。連続した工程は、減圧処理のみによって最終的な気泡を得、かかる処理内に工程Bおよび工程Cを含む工程である。本発明においては、気泡制御の容易性の点から独立した工程であることが好ましい。また本発明の説明において“ガス”とは超臨界流体をも含む。
前述のとおり、工程Aにおけるガスは、少なくとも気泡核の生成に利用される。工程Cにおいて気泡を成長させるガスは、工程Bの後でも樹脂中に残存するガスであっても、工程Bの後改めて含浸させたガスであってもよい。ここで改めて含浸させるガスは、工程Aにおけるガスと同一であっても異なっていてもよい。
発泡体における気泡径の小径化および気泡密度の向上に対して、高圧下からの急減圧が重要である。本発明の気泡核生成助剤たる界面活性剤、特に好適にはフッ素系界面活性剤を含有する組成物−Iは、より高圧下でガスを含浸させ、更に急減圧する方法に極めて適し、したがってかかる方法により製造されることが好ましい。ここでかかる高圧としては、好ましくは20MPa以上、より好ましくは23MPa以上、更に好ましくは25MPa以上である。かかる高圧の上限は樹脂の化学構造や分子量により好ましい範囲が異なるが、本発明の好適なA成分を考慮すると、50MPaが好ましく、40MPaがより好ましく、35MPaが更に好ましい。かかる上限範囲であれば製造条件の自由度がある程度確保できる。更に急減圧処理における減圧速度は、好ましくは1MPa/sec以上、より好ましくは1.5MPa/sec以上、更に好ましくは3MPa/sec以上、特に好ましくは5MPa/sec以上である。かかる速度の上限は高いほど好ましいといえるが、実用的な上限として好ましくは50MPa/sec、より好ましくは30MPa/secである。尚、かかる急減圧の速度は含浸圧力から2MPa低い圧力に到達するまでの範囲における速度をいう。更にそれ以降の減圧速度も上記範囲を満足することが好ましい。高い減圧速度による断熱膨張の作用により組成物の温度が低下し、その結果ガスの膨張に対するマトリックスの抵抗を大きくできるからである。
一方、かかる減圧時の温度は、減圧処理前の圧力をP(MPa)および組成物−Iのガラス転移温度をTg(℃)としたとき、好ましくは(Tg+10−4P)±15(℃)の範囲である。例えばTgが150℃、Pが25MPaの場合、45〜75℃の範囲となる。かかる温度は、より好ましくは(Tg+10−4P)±10(℃)の範囲、更に好ましくは(Tg+10−4P)−10(℃)〜(Tg+10−4P)+5(℃)の範囲である。かかる範囲は、特にA成分が前記構成(2)の如く好ましい樹脂である場合に好適である。また工程Cにおいて成形体を加熱する場合、成形体の温度がTg±30(℃)の範囲となることが好ましい。かかる範囲はより好ましくは、Tg−10(℃)〜Tg+30(℃)の範囲、更に好ましくはTg(℃)〜Tg+20(℃)の範囲である。
前述の点から、本発明の発泡体のより好適な製造方法は、(i)工程Aとして、組成物−I中に20MPa以上の高圧下で超臨界炭酸ガスを含浸させる工程、(ii)工程Bとして、A成分のTg(℃)に対して(Tg+10−4P)±15(℃)の範囲の温度において、少なくともかかる高圧下の圧力から2MPa低い圧力に到達するまでの範囲において1MPa/sec以上の減圧速度で減圧して気泡核を生成する工程、並びに(iii)工程Cとして、工程Bから得られた気泡核を含む成形体をA成分のTg(℃)に対してTg±30(℃)の範囲に加熱することにより、かかる気泡核を気泡に成長させる工程(工程C)を含んでなる。
本発明の発泡体を製造するに利用される発泡剤としては、前述の如く超臨界炭酸ガスが好ましいが、それ以外にも窒素、およびアルゴンの如き希ガスなどの不活性ガスを利用することができる。更にかかる不活性ガスは単独であっても2種以上を混合したガスであってもよく、また常温大気圧下において体積分率で10%以下、好ましくは5%以下の他のガスを含んでいてもよい。
本発明の好適な態様の1つは、(5)前記発泡体は、切断面(観察面)における気泡部分の占める面積割合をS(%)とし、該切断面(観察面)から算出されるμmを単位とする気泡の長さ平均直径をDwとしたとき、S/Dwは40〜500の範囲にある前記構成(1)〜(4)の発泡体である。かかるS/Dwの指標は、前記特許文献2における指標と同様の内容を示し、気泡密度の高くかつ気泡径の小さな発泡体であるほど大きい数値となる。本発明において、かかるS/Dwの下限は、より好ましくは60、更に好ましくは70、特に好ましくは100であり、その上限はより好ましくは300、更に好ましくは250である。
本発明の組成物−Iは、更にC成分として特定のシリコーン化合物を含有することが好ましい。シリコーン化合物は、組成物−Iの表面張力を更に低下させ、また気泡に対する整泡剤として作用すると考えられる。これによりシリコーン化合物は、更に容易な気泡核の生成並びに安定した気泡成長とを可能にし、その結果発泡体において高い気泡の量(気泡率)と微細化とが両立される。表面張力が高い場合にはガスのエネルギーは新規な表面の形成を必要とする気泡核の生成よりも、既に存在する気泡核へのガス流入に利用され気泡密度が高まりにくくなる。
ここで特定のシリコーン化合物とは、(I)芳香族基が含まれる割合(芳香族基量)が10〜70重量%である、および/または(II)Si−H基が含まれる割合が0.1〜1.66mol/100gである、シリコーン化合物である。前述の如く、本発明の組成物−Iは、高圧のガスの開放圧力に十分に耐えられる強度を有することが好ましく、A成分との相溶性に劣ることは好ましくない。相溶性が悪い場合には、発泡のガスは全体を均一に膨張させることなく、爆発的に内部を破壊して亀裂状の発泡を招く。
一方で、C成分のシリコーン化合物においては、かかる亀裂状の発泡は抑制される。かかる理由は明確ではないが、特定の芳香族基量を有することにより、ポリカーボネート樹脂に代表される好適なA成分との親和性が向上して相溶性が改善されることが考えられる。また特定のSi−H基量を有する場合には、組成物−Iの作成時にシリコーン化合物同士もしくは樹脂成分との間で少なからず結合反応して分子量の増大や樹脂との結合が生じ、その結果相分離が抑制されるものと予想される。一方で、Si−H基自体はその非極性によりガス、特にその超臨界流体との親和性が良好であるため、気泡核の生成およびその後の成長をより安定化する効果も有すると考えられる。
以下、本発明の詳細について説明する。
<A成分について>
本発明のA成分の熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂である。
前記工程Bの気泡核生成においてより微細かつ均一な発泡のためには樹脂中の結晶は少ないことが好ましく、かかる点からA成分は非晶性熱可塑性樹脂が好ましい。また本発明のA成分は、そのTgが好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上である。かかるTgは好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。以下、更に好ましいA成分について説明する。
<ポリカーボネート樹脂>
A成分であるポリカーボネート樹脂(以下単に“ポリカーボネート”と称する場合がある)は、従来種々の成形品のために使用されている、それ自体公知のものである。すなわち、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
ポリカーボネート樹脂は、通常使用されるビスフェノールA型ポリカーボネート以外にも、他の二価フェノールを用いて重合された、低結晶性、高耐熱性、または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂であってもよい。ポリカーボネート樹脂はいかなる製造方法によって製造されたものでもよく、界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。ポリカーボネート樹脂はまた3官能フェノール類を重合させた分岐ポリカーボネート樹脂であってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、または二価の脂肪族または脂環族アルコールを共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。
本発明においては、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が次の点でより好ましい。第1にかかるポリカーボネート樹脂は特に耐衝撃性に優れ、微細発泡体の利点を好適に発揮できる。即ち微細発泡体における微細な気泡はクレーズ生成の起点としてゴム粒状体を含有する場合と同様に、発泡体により高い靭性を付与することが可能となる。これにより耐衝撃性や引張伸びに優れ、かつ軽量な成形体を提供することが可能となる。また第2にかかるポリカーボネート樹脂は比較的結晶化しやすく、この結果不活性ガス、殊に超臨界の炭酸ガスによって結晶化の如き硬化挙動を取り、その結果発泡が不均一または発泡しない状態となりやすい。
本発明のポリカーボネートの好適な構成単位は下記式(i)で表される。
Figure 0005038688
(Aは下記式(i−1)〜(i−3)および(i−5)からなる群より選択される少なくとも1種の二価の有機残基、単結合、または下記式(i−4)のいずれかの結合を表し、sおよびtはそれぞれ独立して0または1〜4の整数であり、R13およびR14はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、および炭素数7〜20のアラルキルオキシ基からなる群より選択される有機残基を表す。)
Figure 0005038688
(式(i−1)中、R15、R16、R17およびR18はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
Figure 0005038688
(式(i−2)中、R19およびR20はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
Figure 0005038688
(上記式(i−3)において、uは4〜11の整数を表し、かかる複数のR21およびR22はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、および炭素数1〜3のアルキル基から選択される基を表す。)
Figure 0005038688
Figure 0005038688
(式(i−5)中、R23およびR24はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、および炭素数1〜10の炭化水素基から選択される基を表す。)
次に、前記式(i)の具体例を、該構成単位を誘導するジヒドロキシ化合物の具体例に基づいて説明する。
式(i)におけるAが単結合であるときの化合物としては、4,4’−ビフェノールおよび3,3’,5,5’−テトラフルオロ−4,4’−ビフェノールが挙げられる。
Aが式(i−1)であるときの化合物としては、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(通常“ビスフェノールM”と称される)、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、およびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンが挙げられる。
Aが式(i−2)であるときの化合物としては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、および9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−トリフルオロメチルフェニル)フルオレンが挙げられる。
Aが式(i−3)であるときの化合物としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロシクロヘキサンが挙げられる。
Aが式(i−4)のいずれかであるときの化合物としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルスルホキシド、および4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジフェニルスルホンが挙げられる。
Aが式(i−5)のいずれかであるときの化合物としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールA”と称される)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールC”と称される)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシー3−フェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(2,3−ジメチルー4−ヒドロキシフェニル)デカン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(通常“ビスフェノールAF”と称される)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、および2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモー4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロー4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチルー4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。
上記の中でも、式(i−1)ではビスフェノールM、式(i−2)では9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、式(i−3)では1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、式(i−4)では3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、並びに式(i−5)ではビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールAF、および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカンが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂のその他詳細については、例えばWO03/080728号パンフレット、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報、および特開2002−117580号公報等に記載されている。
本発明のA成分のポリカーボネート樹脂としては、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂、いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂の使用も可能である。使用済みの製品としては防音壁、ガラス窓、透光屋根材、および自動車サンルーフなどに代表される各種グレージング材、風防や自動車ヘッドランプレンズなどの透明部材、水ボトルなどの容器、並びに光記録媒体などが好ましく挙げられる。これらは多量の添加剤や他樹脂などを含むことがなく、目的の品質が安定して得られやすい。殊に自動車ヘッドランプレンズや光記録媒体などは前記の粘度平均分子量のより好ましい条件を満足するため好ましい態様として挙げられる。尚、前記のバージン原料とは、その製造後に未だ市場において使用されていない原料である。
A成分のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は1.5×10〜5.0×10の範囲が好適である。ポリカーボネートの粘度平均分子量が1.5×10未満であると発泡の制御が困難な場合があり、また衝撃強度や伸びなどの靭性が低下しやすい。一方5.0×10を超えると溶融加工が困難となりやすいため、本発明においては好ましくない。粘度平均分子量の下限は、より好ましくは2.2×10、更に好ましくは2.4×10である。粘度平均分子量の上限はより好ましくは4.5×10、更に好ましくは4.0×10である。前記の好適な範囲の粘度平均分子量を有するポリカーボネートは、加工性、強度、気泡径の微細化、および気泡径の均一化などのバランスに優れるようになる。
尚、かかる粘度平均分子量はA成分全体として満足すればよく、分子量の異なる2種以上の混合物によりかかる範囲を満足するものを含む。特に粘度平均分子量が5.0×10、より好ましくは8.0×10以上、更に好ましくは10.0×10以上を超えるポリカーボネートの混合は、溶融時のエントロピー弾性を高くし、発泡体製造時の条件を拡大し、良好な発泡体がより容易に得られる。したがって、粘度平均分子量が5.0×10を超えるポリカーボネートの混合は、かかる改良が求められる場合に、好適な選択の1つとなる。かかる効果は、ポリカーボネートの分子量が高いほど顕著となるが、実用上該分子量の上限は200×10、好ましくは30×10、より好ましくは20×10である。かかる高分子量成分の混合は、その配合によってGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)などの測定法において2ピーク以上の分子量分布を観察できる量とすることが好ましい。
また本発明のポリカーボネート樹脂(A成分)において、そのフェノール性水酸基量は30eq/ton以下が好ましく、25eq/ton以下がより好ましく、20eq/ton以下がさらに好ましい。なお、かかる値は十分に末端停止剤を反応させることで実質的に0eq/tonとすることも可能である。なお、該フェノール性水酸基量は、H−NMR測定を行い、カーボネート結合を有する二価フェノールユニット、フェノール性水酸基を有する二価フェノールユニット、および末端停止剤のユニットのモル比を算出し、それに基づきポリマー重量当りのフェノール性水酸基量に換算することで求められる。
本発明でいう粘度平均分子量はまず次式にて算出される比粘度を塩化メチレン100mlにポリカーボネート0.7gを20℃で溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
<B成分について>
B成分の界面活性剤は、その希薄溶液で界面エネルギーに変化を与えるものである。構造的には、極性を有し水に溶解するか、あるいは親和性を示す親水基と、無極性もしくは親水基に比較して極性が低く、有機溶剤に溶解するかあるいは親和性を示す親油基、または疎水基の両方を同時に持つ化合物が利用できる。
界面活性剤としては、親水基による分類として、カチオン系化合物、アニオン系化合物、およびノニオン系化合物のいずれも利用できる。またカチオン活性部位、アニオン活性部位、およびポリアルキレンオキサイド類の如きノニオン性活性部位が組み合わされた界面活性剤であってもよい。
B成分として利用されるカチオン系化合物としては、4級アンモニウム塩および4級ホスホニウム塩が好適に例示される。かかる4級アンモニウム塩は、脂肪族アンモニウム塩、芳香族アンモニウム塩、および複素環アンモニウム塩のいずれであってもよく、ホスホニウム塩においても同様である。複素環アンモニウム塩としては、例えばピリジニウム塩、およびイミダゾリニウム塩が含まれる。
B成分のアニオン系化合物としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、およびリン酸エステルなどが好適に例示され、中でも組成物−Iの熱安定性の点から、スルホン酸塩およびリン酸エステルが好ましい。B成分のアニオン系化合物は、その活性部位である塩からなる基により置換された繰り返し単位を有する重合体化合物であってもよい。ポリマー型アニオン系化合物の基体となる重合体の具体例としては、例えばポリエーテルエステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレンおよびスチレン共重合体、並びにポリカーボネートなどが挙げられる。B成分のアニオン系化合物のカウンターイオンとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、亜鉛イオン、並びに有機ホスホニウムイオンおよび有機アンモニウムイオンなどの有機オニウムイオンが好適に例示される。
本発明のB成分の一態様であるノニオン系化合物は、水中でイオン解離しないOH基(水酸基)やエーテル結合(−O−)などを親水基としては有する化合物であり、主としてポリアルキレンオキサイド型と多価アルコール型とがある。ポリアルキレンオキサイド型としては、高級アルコールのポリアルキレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのポリアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸のポリアルキレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルのポリアルキレンオキサイド付加物、および油脂類のポリアルキレンオキサイド付加物などが例示される。多価アルコール型としては、グリセリン、ペンタエリスリトールおよびソルビトールなどの多価アルコールの脂肪酸エステルが例示される。
本発明のB成分の親油基としては、低分子化合物においては、アルキル基、アルキルアリール基、およびナフタレン基などが例示され、重合体化合物においては、エチレン、プロピレン、スチレン、α−メチルスチレン、並びに各種のアクリレートおよびメタクリレートに代表されるエチレン性不飽和単量体から誘導される構成単位が例示される。親油基のアクリレートおよびメタクリレートとしては(以下“(メタ)アクリレート”の形で表記する)、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびフェニル(メタ)アクリレートなどが例示される。
一方、疎水基としては、シロキサン単位およびフルオロアルキル基の如きフッ素化有機部などが好適に例示される。本発明のB成分として、かかるシロキサン単位を含有するシリコーン系界面活性剤およびフッ素化有機部を含有するフッ素系界面活性剤は好ましく、特にフッ素系界面活性剤が好ましい。かかる界面活性剤、特にフッ素系界面活性剤は、かかる疎水基の非極性が高く超臨界炭酸ガスとの親和性に優れ、その結果更に優れた微細発泡体を成形可能としている。
本発明のフッ素系界面活性剤は、親水基とフッ素化有機部からなる疎水基を含有するものである。該界面活性剤は、含フッ素有機基含有エチレン性不飽和単量体の単独重合体、あるいは該単量体と該単量体と共重合可能な単量体との共重合体からなる重合体化合物、およびそれ以外の低分子化合物のいずれも含み、またノニオン系、アニオン系、カチオン系、および両性系のいずれも含まれる。ノニオン系と他の系との併せ持ったものであってもよい。
低分子化合物のフッ素系界面活性剤としては、カチオン系およびノニオン系の界面活性剤が特に好適であり、それぞれ特に下記一般式(ii−1)〜(ii−4)で示される化合物が好適である。
Figure 0005038688
ここでRfは炭素数1〜20のパーフルオロ基または部分フッ素化アルキル基を、XおよびYは単結合または二価の有機基を、並びにMは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、有機ホスホニウム、有機アンモニウム、−NH、水素原子、または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。但し、2価の金属イオンの場合にはアニオン部分2モルに対して金属イオン1モルが対応するものとする。jは1、2または3の整数であり、Aは、アルキレンオキサイド基、または重合度を50、好ましくは30を上限とするアルキレンオキサイドの繰り返し基を表し、R’は水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
式(ii−1)〜(ii−3)のXで表される二価の有機基の好適な具体例としては、−SON(CH)CH−、−SON(C)CH−、−SONHCHCHOCOCHCH−、−SONHCHCHCH−、−SON(C)CHCH−、−CHCH−、−CHCHOCOCHCH−、−SON(C)−A−COCHCH−、および−A−COCHCH−などが挙げられる。尚、後者2つの基におけるAは、式(ii−4)の場合と同じである。また、式(ii−4)のYにおける二価の有機基の好適な具体例としては、−SON(C)−、および−SONH−などが挙げられる。
より好適なXは、単結合、−CHCH−、および−CHCHOCOCHCH−であり、より好適なYは、単結合、および−SON(C)−である。またAがアルキレンオキサイドの繰り返し基である場合、該繰り返し基中には複数のアルキレンオキサイド基が含まれてもよい。更に前記R’は水素原子が好ましい。フッ素系界面活性剤においてもスルホン酸塩およびリン酸エステルが好ましく、中でも上記式(ii−1)および(ii−3)の化合物がB成分として好ましく、特にスルホン酸塩が好ましく、中でも上記式(ii−1)の化合物が好ましい。
重合体化合物のフッ素系界面活性剤としては、含フッ素有機基含有エチレン性不飽和単量体の単独重合体、あるいは該単量体と該単量体と共重合可能な単量体との共重合体が挙げられる。かかる単量体における含フッ素有機基としては、パーフルオロアルキル基が好適である。かかるパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和単量体としては、好適に下記一般式(iii)の化合物が例示される。
Figure 0005038688
前記式(iii)において、Rは直鎖状、分岐状または主鎖中に炭素原子を含有する、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基または部分フッ素化アルキル基を表し、Rは、−H(水素原子)、−CH(メチル基)、−Cl、−F、および−CHCH2m+1(但しmは、1〜20の整数である)を表し、Zは単結合または二価の有機基を表す。
前記式(iii)のZにおける二価の有機基としては、具体的には下記の基が例示される。但し下記式におけるnは1〜10の整数を表し、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。
Figure 0005038688
前記式(iii)におけるRとしては、具体的には下記の基が例示される。但し下記式におけるpおよびrは1〜20の整数を表し、qは0または1〜17の整数を表す。
Figure 0005038688
更にかかる式(iii)の具体例としては、
CH=C(CH)COOCHCH(CFCF(ここでnは5〜11でその平均値は約9)、
CH=C(CH)COOCHCH17
CH=C(CH)COOCHCH(CFCF
CH=CHCOO(CH(CFCF(CF
CH=CHCOO(CH(CF10CF(CF
CH=C(CH)COOCHCHN(C)SO(CFCF
CH=CHCOOCHCHN(C)SO(CFCF
CH=C(CH)COOCHCHN(CH)SO(CFCF
CH=CHCOOCHCHN(CH)SO(CFCF
CH=CHCOO(CH(CFCF
CH=CHCOO(CFCF
CH=CHCOO(CHN(C)SO(CFCF
CH=CHCOOCHCH(OH)CH(CFCF
CH=C(CH)COOCHCHN(C)CO(CFCF、および
CH=CHCOOCHCHN(C)CO(CFCFなどを好適に例示することができる。中でも好適にはCH=C(CH)COOCHCH17が挙げられる。尚、かかる化合物を含む(iii)式の具体例の詳細は、特開平11−209787号公報の式“a−1”〜“a−56”として記載されている。
フッ素有機基含有エチレン性不飽和単量体と共重合可能な単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、3−クロロ−2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、およびジアセトンアクリルアミド、並びに下記一般式(iv)で示される化合物が例示される。
本発明の重合体化合物からなるB成分、殊に重合体化合物のフッ素系界面活性剤は、シリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体から誘導される構成単位を含むことができる。
かかるシリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体としては、好適に下記一般式(iv)で示される化合物が例示される。
Figure 0005038688
前記式(iv)において、Rは−H、−Cl、−F、−CHを表し、RおよびRは、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基もしくは下記式で表される官能基を表し、R、R、R、RおよびRは、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基もしくはフェニル基を表し、Xは−CHCH(OH)CHOCO−、−(CHNHCHCH(OH)CHOCO−、−(CHOCO−、−(CH−O−(CH−OCO−、−OCHCH(OH)CHOCO−、もしくは−(CH−C(CFOCO−を表し、qは0もしくは1〜500の整数を、並びにpは0もしくは1を表し、Xを表す一般式中のmおよびnはそれぞれ2〜6の整数を表す。
Figure 0005038688
前記式(v)において、R、R10、R11、R12およびR13は、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基もしくはフェニル基を表し、rは0もしくは1〜3の整数を表す。
(iv)式の具体例の詳細は、特開平11−209787号公報の式“b−1−1”〜“b−1−36”、“b−2−1”〜“b−2−7”、および“b−3−1”〜“b−3−9”として記載されている。
更に前記式(iv)のより好適な態様としては、下記(vi−1)〜(vi−3)が挙げられる。
Figure 0005038688
前記式(vi−1)〜(vi−3)において、pは0もしくは1〜500の整数を、p’は0もしくはp”との合計が1〜500となる正の整数を表し、p”は1〜500の整数を表し、更にr、sおよびtは、0もしくは1〜3の整数を表し、3者は同一であっても異なっていてもよい。かかるpの上限は好ましくは60、より好ましくは10、更に好ましくは8である。更に前記式(vi−1)〜(vi−3)において、より好ましくは式(vi−1)および式(vi−3)である。中でもシリコーン鎖の分子量が好ましくは5,000以下、より好ましくは100〜1,000の単量体が好ましく、特に式(vi−3)であらわされる単量体、中でもそのr、sおよびtがいずれも0の単量体が特に好ましい。
本発明の重合体化合物からなるB成分、殊に重合体化合物のフッ素系界面活性剤は、ポリアルキレンオキサイド基含有エチレン性不飽和単量体から誘導される構成単位を含むことができる。該単量体としては、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体等のポリ(アルキレンオキサイド)グリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルを用いることが好ましい。かかるポリ(アルキレンオキサイド)グリコールの末端は、炭素数1〜6のアルキル基によってキャップされることができる。かかるポリ(アルキレンオキサイド)単位の重合度は1〜100が好ましい。かかる単量体の更に好適な態様は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体のモノ(メタ)アクリル酸エステル、並びにポリエチレングリコ−ルのジ(メタ)アクリル酸エステルである。
重合体化合物のフッ素系界面活性剤において、パーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和単量体から誘導される構成単位の組成割合は、5〜95重量%、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは15〜65重量%である。重合体化合物のフッ素系界面活性剤において、シリコーン鎖含有エチレン性不飽和単量体から誘導される構成単位の組成割合の上限は60重量%、好ましくは40重量%、更に好ましくは20重量%である。重合体化合物のフッ素系界面活性剤において、ポリアルキレンオキサイド基含有エチレン性不飽和単量体から誘導される構成単位の組成割合の上限は60重量%、好ましくは40重量%、更に好ましくは20重量%である。更に重合体化合物のフッ素系界面活性剤において、これら以外のエチレン性不飽和単量体から誘導される構成単位の組成割合は、5〜95重量%、好ましくは30〜90重量%、更に好ましくは35〜85重量%である。
本発明の重合体化合物のフッ素系界面活性剤は、標準ポリスチレンを基準にして換算される分子量において500〜10,000の範囲が好ましく、600〜9,000の範囲がより好ましく、700〜8,000の範囲が更に好ましい。
B成分の組成割合は、100重量部のA成分を基準として0.001〜30重量部であり、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.05〜1重量部、更に好ましくは0.05〜0.3重量部である。上記の範囲では、より機械特性に優れた微細発泡体を得ることができる。
<C成分について>
本発明では前述のとおり次の(I)および/または(II)の条件を満足するシリコーン化合物をC成分として含有することが好ましい。(I)芳香族基が含まれる割合(芳香族基量)が10〜70重量%である、および/または(II)Si−H基が含まれる割合が0.1〜1.66mol/100gである。かかる特定量の特定基の効果については前述のとおりである。更に好ましくは、C成分は、(III)平均重合度が3〜150であるシリコーン化合物である。ここで、重合度とは、[(R)SiO(4−a)/2](ここでRはSi原子に結合した原子または一価の基を表し、aは0または1〜3の整数を表す)を一シロキサン単位とするときの重合度をいう。
更にMを1官能性シロキサン単位(上記式にてa=3)、Dを2官能性シロキサン単位(上記式にてa=2)、Tを3官能性シロキサン単位(上記式にてa=1)とするとき、MD単位またはMDT単位からなるシリコーン化合物がより好ましい。すなわち、M単位およびD単位のみからなるシリコーン化合物、またはM単位、D単位およびT単位のみからなるシリコーン化合物がB成分として好適である。ここで、官能性とは、一シロキサン単位が有するシロキサン結合のための結合手数を意味する。
C成分の芳香族基は、好適には下記一般式(vii)で表される芳香族基である。中でもフェニル基が最も好ましい(即ち下記式(vii)においてn=0である)。
Figure 0005038688
(式(vii)中、XはOH基または炭素数1〜20の一価の炭化水素基を示す。nは0〜5の整数を表わす。さらに式(vii)中においてnが2以上の場合はn個のXはそれぞれ独立に上記群から選択することができる。)
より好適なC成分は、前記(I)および/または(II)、好ましくは(III)の条件を満足し、下記一般式(viii)および(ix)で示される構成単位から選ばれる少なくとも一種を含むシリコーン化合物である。
Figure 0005038688
Figure 0005038688
(式(viii)および式(ix)中、Z〜Zはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の一価の炭化水素基、または下記一般式(x)で示される化合物を示す。α〜αはそれぞれ独立に0または1を表わす。mは1以上の整数を表わす。さらに式(viii)中においてmが2以上の場合の繰返し単位はそれぞれ互いに異なる複数の繰返し単位を取ることができる。)
Figure 0005038688
(式(x)中、Z〜Zはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の一価の炭化水素基を示す。α〜αはそれぞれ独立に0または1を表わす。mは0もしくは1以上の整数を表わす。さらに式(x)中においてmが2以上の場合の繰返し単位はそれぞれ互いに異なる複数の繰返し単位を取ることができる。)
前記一般式(viii)、(ix)および(x)で示される構成単位のZ〜Z、および一般式(vii)のXにおける炭素数1〜20の一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基およびデシル基などのアルキル基、シクロヘキシル基の如きシクロアルキル基、ビニル基およびアリル基などのアルケニル基、フェニル基およびトリル基などのアリール基、並びにアラルキル基を挙げることができる。これらの基はエポキシ基、カルボキシル基、無水カルボン酸基、アミノ基およびメルカプト基などの各種官能基を置換基として含むものであってもよい。さらに好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基またはアリール基であり、特にはメチル基、エチル基およびプロピル基などの炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、またはフェニル基が好ましい。
シリコーン化合物が複数のシロキサン単位を有する場合は、それらはランダム共重合、ブロック共重合、テーパード共重合のいずれの形態を取ることも可能である。
本発明のC成分においては、少なくとも上記条件(I)の芳香族基量を満足しない場合には、該化合物中のSi−H基の量(以下単に“Si−H量”と称する場合がある)が0.1〜1.66mol/100gであることが必要とされる。Si−H量がかかる範囲にあることで、表面張力の低下、超臨界炭酸ガスとの親和性、並びに適度な架橋効果により良好な発泡特性が発揮される。Si−H量はより好ましくは0.12〜1.2mol/100gの範囲、さらに好ましくは0.15〜1.0mol/100gの範囲である。Si−H量が前記上限を超える場合には、表面張力の低下は更に進むものの、反応の制御が困難となり成形品外観の悪化や、発泡体の製造時の不安定を招く場合がある。よってC成分が条件(I)を満足する場合であっても、Si−H量は前記上限以下であることが好ましい。一方、Si−H量が前記下限を下回る場合には、ポリカーボネート樹脂の如き好適なA成分との相溶性が低下しやすい。しかしながらかかる点は条件(I)を満足していれば解消されることから、条件(I)を満足していればかかる下限を下回ってもよいが、より好ましいのは条件(II)が満足されるシリコーン化合物である。
また、ここで言うSi−H量とは、シリコーン化合物100gあたりに含まれるSi−H構造のmol数を言うが、これはアルカリ分解法により、シリコーン化合物の単位重量当たり発生した水素ガスの体積を測定することにより求めることができる。例えば、25℃においてシリコーン化合物1g当たり122mlの水素ガスが発生した場合、下記計算式により、Si−H量は0.5mol/100gとなる。
122×273/(273+25)÷22400×100≒0.5
さらにC成分のシリコーン化合物としては、105℃/3時間における加熱減量法による揮発量が18%以下であることが好適である。さらに好ましくは揮発量が10%以下であるシリコーン化合物である。揮発量が18%より大きいと樹脂組成物製造時のシリコーン化合物の揮発量も多くなり、発泡体を製造するための予備成形品に不良が生じやすくなる。
前記一般式で示される構成単位を含むシリコーン化合物としては、前記の条件を満たすものであれば直鎖状であっても分岐構造を持つものであってもよい。
一般的にシリコーン化合物の構造は、以下に示す4種類のシロキサン単位を任意に組み合わせることによって構成される。
M単位:(CHSiO1/2、H(CHSiO1/2、H(CH)SiO1/2、(CH(CH=CH)SiO1/2、(CH(C)SiO1/2、(CH)(C)(CH=CH)SiO1/2等のRSiO1/2で示される1官能性シロキサン単位
D単位:(CHSiO、H(CH)SiO、HSiO、H(C)SiO、(CH)(CH=CH)SiO、(CSiO等のRSiOで示される2官能性シロキサン単位
T単位:(CH)SiO3/2、(C)SiO3/2、HSiO3/2、(CH=CH)SiO3/2、(C)SiO3/2等のRSiO3/2で示される3官能性シロキサン単位
Q単位:SiOで示される4官能性シロキサン単位
本発明において使用されるシリコーン化合物の構造は、具体的には、示性式としてD、T、M、M、M、M、M、M、M、D、D、Dが挙げられる。この中で好ましいシリコーン化合物の構造は、M、M、M、Mであり、さらに好ましい構造は、MまたはMである。
(ここで、前記示性式中の係数m、n、p、qは各シロキサン単位の重合度を表す1以上の整数であり、各示性式における係数の合計がシリコーン化合物の平均重合度となる。本発明においては、好ましい平均重合度は3〜150の範囲、より好ましくは3〜80の範囲、更に好ましくは3〜60の範囲、特に好ましくは4〜40の範囲である。かかる好適な範囲であるほど均質な気泡が得られ、発泡体の色相に優れるようになる。またm、n、p、qのいずれかが2以上の数値である場合、その係数の付いたシロキサン単位は、結合する水素原子や有機残基が異なる2種以上のシロキサン単位とすることができる。)
本発明の組成物−Iにおいては、そのC成分の分散状態が重要である。シリコーン化合物の分散が不均一であると、発泡剤がシリコーン層で高濃度となること、および界面密着力がばらつきやすいことに起因して、生成する気泡が不均一かつ亀裂状となりやすい。かかる分散状態を決定する重要な因子としてシリコーン化合物中の芳香族基量、および平均重合度が挙げられる。
かかる観点より、本発明のシリコーン化合物としては、少なくとも前記条件(II)を満足しない場合には、シリコーン化合物中の芳香族基量が10〜70重量%の範囲にあることが必要とされる。好ましい芳香族基量は15〜55重量%の範囲である。シリコーン化合物中の芳香族基量が10重量%より少ないとシリコーン化合物が偏在して分散不良となりやすく、芳香族基量が70重量%より多い場合にも相溶性は逆に低下しやすい。よって条件(II)を満足する場合であっても芳香族基量は70重量%以下が好ましい。
また、ここで芳香族基量とは、シリコーン化合物において、前記一般式(vii)で示される芳香族基が含まれる割合のことをいい、下記計算式によって求めることができる。
(計算式) 芳香族基量=〔A/M〕×100(重量%)
ここで、上記式におけるA、Mはそれぞれ以下の数値を表す。
A=シリコーン化合物1分子中に含まれる、全ての一般式(vii)で示される芳香族基部分の合計分子量
M=シリコーン化合物の分子量
前記のC成分のシリコーン化合物は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このような芳香族基および/またはSi−H結合を有するシリコーン化合物は、それ自体従来公知の方法によって製造することができる。例えば、目的とするシリコーン化合物の構造に従い、相当するオルガノクロロシラン類を共加水分解し、副生する塩酸や低沸分を除去することによって目的物を得ることができる。また、分子中にSi−H基や一般式(vii)で示される芳香族基、その他の有機残基を有するシリコーンオイル、環状シロキサンやアルコキシシラン類を出発原料とする場合には、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸等の酸触媒を使用し、場合によって加水分解のための水を添加して、重合反応を進行させた後、使用した酸触媒や低沸分を同様に除去することによって、目的とするシリコーン化合物を得ることができる。
本発明のC成分は、前記条件(I)および/または(II)を満足するものである。したがって条件(I)または(II)のいずれかが満足されればよいが、前述のとおりいずれの場合であっても芳香族基量は70重量%以下が好ましく、Si−H量は1.66mol/100g以下が好ましい。更に条件(I)および(II)のいずれも満足することが好ましい。
前記C成分のシリコーン化合物の組成割合は、好ましくはA成分100重量部に対して0.05〜30重量部である。かかるC成分の割合の上限は好ましくは20重量部、より好ましくは10重量部、更に好ましくは6重量部である。前記上限を上回る場合には、組成物−Iの機械的特性が低下し、結果として発泡体の強度および耐熱性などが低下しやすくなる。一方、C成分を配合する場合には、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、更に好ましくは1重量部以上とすると、有効である。
<その他の添加剤>
本発明の発泡体を構成する組成物−Iは、前記A成分およびB成分の特定割合をその必須成分として含有し、更に好ましくはC成分をも含有する樹脂組成物であるが、かかるA成分、B成分およびC成分以外にも、通常熱可塑性樹脂に配合される各種の添加剤を含むことができる。
(i)リン系安定剤
組成物−Iの成形加工時の熱安定性を向上させることを主たる目的として各種のリン系安定剤が更に配合されることが好ましい。かかるリン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル、並びに第3級ホスフィンなどが例示される。かかるリン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。
具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリデシルホスファイトの如きトリアルキルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイトの如きジアルキルモノアリールホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイトの如きモノアルキルジアリールホスファイト、トリフェニルホスファイトおよびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトの如きトリアリールホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのペンタエリスリトールホスファイト、並びに2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトおよび2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどの環状ホスファイトが例示される。
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、およびジイソプロピルホスフェートなどが例示され、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、およびビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく例示され、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、およびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は前記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられ、第3級ホスフィンとしては、例えばトリフェニルホスフィンが例示される。
かかるリン系安定剤の配合量は、A成分100重量部に対して0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.002〜0.3重量部がさらに好ましい。
(ii)酸化防止剤
組成物−Iの成形加工時の熱安定性、および耐熱老化性を向上させることを主たる目的として酸化防止剤が配合されることができる。かかる酸化防止剤は好適にはヒンダードフェノール系安定剤である。該ヒンダードフェノール系安定剤としては、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、およびテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。中でもオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましく利用される。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これら酸化防止剤の配合量は、A成分100重量部に対して0.0001〜0.05重量部が好ましい。
(iii)紫外線吸収剤
組成物−Iは、その耐紫外線性を向上させることを主たる目的として、紫外線吸収剤が配合されることができる。かかる紫外線吸収剤としては、紫外線吸収剤として公知のベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、環状イミノエステル系化合物、およびシアノアクリル酸エステル系化合物などが例示される。より具体的には例えば2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(市販品としてはCYTEC社製、CYASORB UV−5411(商品名)が例示される)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(市販品としてはCiba Specialty Chemicals K.K.製、TINUVIN234(商品名)が例示される)、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](市販品としては旭電化工業(株)製、ADEKASTAB LA−31(商品名)が例示される)、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール(市販品としてはCiba Specialty Chemicals K.K.製、TINUVIN1577FF(商品名)が例示される)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)(市販品としては竹本油脂(株)製CEi−P(商品名)、およびCYTEC社製CYASORB UV−3638(商品名)が例示される)、並びに1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン(市販品としてはBASF社製UVINUL3030(商品名)が例示される)などが好ましい紫外線吸収剤として例示される。かかる紫外線吸収剤の配合量は、100重量部のA成分に対して好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.05〜3.5重量部、更に好ましくは0.1〜1重量部である。
(iv)紫外線吸収剤
組成物−Iは、更にブルーイング剤を組成物中0.05〜3.0ppm(重量割合)含むことができる。かかるブルーイング剤は組成物−Iの黄色味を減少させ、発泡体に自然な透明感もしくは高い白色感を付与することを可能とする。ここでブルーイング剤とは、橙色ないし黄色の光線を吸収することにより青色ないし紫色を呈する着色剤をいい、特に染料が好ましい。ブルーイング剤の量が0.05ppm未満では色相の改善効果が不十分な場合がある一方、3.0ppmを超える場合には着色が強くなるためブルーイング剤の配合量としては適当ではない。より好ましいブルーイング剤の量は組成物−I中0.2〜2.0ppmの範囲である。ブルーイング剤としては代表例として、バイエル社のマクロレックスバイオレットB及びマクロレックスブルーRR、並びにクラリアント社のポリシンスレンブルーRLSなどが挙げられる。
(v)蛍光染料
蛍光増白剤を含む組成物−Iは、より高い光反射性や自然な透明感を有し、蛍光増白剤やそれ以外の発光をする蛍光染料を含む組成物−Iは、発光色を生かした意匠効果を有することができる。よってかかる効果を主たる目的として組成物−Iは各種の蛍光染料を含有することができる。
本発明で使用する蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料などを挙げることができる。これらの中でも耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、およびペリレン系蛍光染料が好適である。中でもクマリン系蛍光染料、即ちクマリン誘導体からなる蛍光染料が好ましい。蛍光染料(蛍光増白剤を含む)の配合量は、100重量部のA成分に対し0.0001〜3重量部、好ましくは0.0005〜1重量部、より好ましくは0.0005〜0.5重量部、更に好ましくは0.001〜0.5重量部、特に好ましくは0.001〜0.1重量部である。
(vi)離型剤
組成物−Iは離型剤を含有することができる。離型剤としては、例えば、飽和脂肪酸エステル、不飽和脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1−アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、パラフィンワックス、および蜜蝋などが、好適に例示される。かかる離型剤の中には、脂肪酸エステルの如き前記B成分に含まれる成分も存在する。しかしながら、かかる脂肪酸エステルは本発明において利用する界面活性剤としてはその効果が弱く、本発明において特に好適なB成分はフッ素系界面活性剤である。本発明の組成物−Iにおいては、B成分としてかかるフッ素系界面活性剤を利用する場合に、脂肪酸エステルを離型剤として少量含有することができる。更に組成物−Iは、ポリジメチルシロキサンやポリフルオロアルキルエーテルなどのB成分やC成分に属さないシリコーン化合物やフッ素オイルを離型剤として少量含有することができる。
かかる離型剤の中でも、飽和脂肪酸エステル、特に高級脂肪酸と多価アルコールとの部分エステルおよび/またはフルエステルが好ましい。特にフルエステルが好適である。ここで高級脂肪酸とは、炭素原子数10〜32の脂肪族カルボン酸を指し、その具体例としては、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、ヘキサコサン酸等の飽和脂肪族カルボン酸、並びに、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、セトレイン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。これらのなかでも脂肪族カルボン酸としては炭素数10〜22のものが好ましく、炭素数14〜20であるものがより好ましい。特に炭素数14〜20の飽和脂肪族カルボン酸、特にステアリン酸およびパルミチン酸が好ましい。ステアリン酸の如き脂肪族カルボン酸は、通常、炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物であることが多い。前記飽和脂肪酸エステルにおいても、かかる天然油脂類から製造され他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなるステアリン酸やパルミチン酸から得られたエステル化合物が好ましく使用される。
一方、飽和脂肪酸エステルの構成単位たる多価アルコールとしては、炭素原子数3〜32のものがより好ましい。かかる多価アルコールの具体例としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン(例えばデカグリセリン等)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコール等が挙げられる。
本発明の飽和脂肪酸エステルにおける酸価は、20以下(実質的に0を取り得る)であることが好ましく、水酸基価は20〜500(より好ましくは50〜400)の範囲がより好ましい。更にヨウ素価は、10以下(実質的に0を取り得る)が好ましい。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
離型剤の含有量は、100重量部のA成分を基準として、0.005〜2重量部、好ましくは0.01〜1重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部である。かかる範囲において組成物−Iの成形加工時の良好な離型性と、発泡体の良好な色相とが両立される。
(vii)光拡散剤および光高反射用白色顔料
本発明の発泡体は、微細な気泡を有する場合に、光拡散材料や光高反射材料として利用できる。かかる光拡散効果や光反射効果を効果的に向上もしくは調整する目的で、組成物−Iは光拡散剤および白色顔料を含有することができる。光拡散剤としては高分子微粒子(好適には粒径数μmのアクリル架橋粒子およびシリコーン架橋粒子など)、低屈折率の無機微粒子、およびこれらの複合物等が例示され、その割合は100重量部のA成分を基準として好ましくは0.005〜20重量部、より好ましくは0.01〜10重量部である。白色顔料としては二酸化チタン顔料が特に好ましく、その割合は100重量部のA成分を基準として好ましくは1〜30重量部、より好ましくは2〜20重量部である。
(viii)その他の染顔料
組成物−Iには、前記ブルーイング剤および蛍光染料以外にも各種の染顔料を使用することができる。特に染料が好適である。染料としては、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、およびフタロシアニン系染料などを挙げることができる。更にメタリック顔料や干渉色を呈する顔料なども配合されることができる。かかる染顔料が含まれる場合、その割合は、100重量部のA成分を基準として好ましくは0.0001〜1重量部、より好ましくは0.0005〜0.5重量部である。
(ix)溶融弾性改質剤
組成物−Iには、溶融弾性改質剤を含むことができる。かかる改質剤は溶融弾性を向上し、その結果、気泡成長時の抵抗を増加させ、破泡を抑制することができる。その結果より微細な発泡体が提供される。かかる溶融弾性の改質効果は、基本的に高分子量のポリマーにより得られ、エチレン不飽和化合物のポリマーまたはコポリマーの場合には、その重量平均分子量が100万〜2,000万、より好ましくは200万〜1,000万のものが好適である。エチレン不飽和化合物のポリマーまたはコポリマーとして、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ(アクリロニトリル−スチレン)コポリマー、ポリ(スチレン−無水マレイン酸)コポリマーおよびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが代表的に例示される。かかる溶融弾性改質剤の組成割合は、100重量部のA成分を基準として好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.05〜5重量部である。特に、相溶性の良好なポリ(アクリロニトリル−スチレン)コポリマーでは好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。相溶性に劣るPTFEは、好ましくは0.01〜0.5重量部、より好ましくは0.01〜0.1重量部以下である。
(x)その他
組成物−Iは、熱線吸収能を有する化合物を含有することができる。該化合物としてはフタロシアニン系近赤外線吸収剤、ATO、ITO、酸化イリジウムおよび酸化ルテニウムなどの金属酸化物系近赤外線吸収剤、ホウ化ランタン、ホウ化セリウムおよびホウ化タングステンなどの金属ホウ化物系近赤外線吸収剤などの近赤外吸収能に優れた各種の金属化合物、ならびに炭素フィラーが好適に例示される。これらは単体または2種以上を併用して使用することができる。フタロシアニン系近赤外線吸収剤が含まれる場合、その割合は、100重量部のA成分を基準として好ましくは0.0005〜0.2重量部、より好ましくは0.0008〜0.1重量部、更に好ましくは0.001〜0.07重量部である。金属酸化物系近赤外線吸収剤、金属ホウ化物系近赤外線吸収剤および炭素フィラーは組成物−I中、0.1〜200ppm(重量割合)の範囲が好ましく、0.5〜100ppmの範囲がより好ましい。
組成物−Iには、本発明の目的が損なわれない量の難燃剤を使用することができる。尚、B成分およびC成分の一部は、ポリカーボネート樹脂に代表される熱可塑性樹脂の難燃剤として公知であるが、これらはかかる難燃剤には含まれないものとする。難燃剤としては、例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリアクリレート、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物、ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、ホスホン酸アミド化合物、有機酸金属塩(B成分を除く)、およびシリコーン系難燃剤(C成分を除く)などが挙げられ、それらを一種以上使用することができる。かかる難燃剤はそれぞれポリカーボネート樹脂に対する公知の量を配合することができる。
組成物−Iには、熱可塑性以外の樹脂や架橋性エラストマーを本発明の目的が損なわれない範囲で少割合使用することもできる。更に、組成物−Iは、各種無機充填材、流動改質剤、抗菌剤、光触媒系防汚剤、およびフォトクロミック剤などを少量含有してもよい。
<樹脂組成物の製造方法について>
本発明の組成物−Iの製造に当たっては、その製造方法は特に限定されるものではなく、例えばA成分、B成分、および必要に応じて他の成分を溶融混練する方法、並びにA成分、B成分、および必要に応じて他の成分と、塩化メチレンに代表される溶媒とを混合して溶液とし、その後かかる溶媒を除去する方法が利用できる。更にかかる溶融混練および溶液混合においては、発泡剤とは別に、または発泡剤の一部もしくは全部として不活性ガスやその超臨界流体を混在させてよい。かかる不活性ガス、中でも炭酸ガス、殊にその超臨界流体は、組成物−Iを可塑化させ、成分の分散をより良好にし、良好な発泡体を形成する。またかかる流体は、溶液混合の場合には均一な分散と共に溶媒の揮発を促進し、残留溶媒の低減された組成物−Iおよびその発泡体を提供できる。組成物−Iの製造は、連続法であってもバッチ法であってもよいが、連続法がより好ましい。
前記溶融混練の具体的方法としては、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機、およびスタティックミキサーなどを挙げることができる。かかる押出機には各種の単軸押出機、二軸押出機、および三軸以上の多軸押出機が代表的に例示され、中でも二軸押出機が好適に例示される。かかる二軸押出機におけるスクリューの長さ(L)と直径(D)との比(L/D)は30〜50が一般的な市販品の範囲であり、本発明においても利用しやすく好適であるが、現在はL/Dが100の押出機も公知であり、本発明においてもかかる100に近いL/Dの押出機を利用することも可能である。また押出機は、複数の押出機を直列につないだいわゆるタンデム構成であってもよい。尚、押出機には、前述の押出機の他、浅田鉄工所製「ミラクルKCK」に代表されるずりせん断型混練分散機、および井元製作所製「HSE3000」に代表される高速せん断速度による溶融混練機などを含む。またスタティックミキサーとしては、ノリタケカンパニー製の「PMシリーズ」の他、2004−024992号公報に記載されたエレメントからなるもの、並びに伸長流動分散技術を利用したミキサーを利用することができる。伸長流動分散技術によるミキシングは例えば2001−124691号公報に記載されている。かかるスタティックミキサーは、単独での利用であっても、また押出機との組み合わせであってもよい。押出機においてスタティックミキサーを利用する場合は、ギアポンプを用いて昇圧した後にかかるスタティックミキサーを配置することか好ましい。また前記スタティックミキサーのうち後者の2種は溶液混合おいても利用できる。
更に、溶融状態の樹脂に発泡剤を含浸する方法を取らない場合には、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有する押出機が好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
組成物−Iを製造する押出機への原材料の供給に際しては、予め原材料をドライブレンドすることができる。また液状もしくは加熱により液状になる成分は、液注装置を用いて注入することができ、かかる注入を用いる方が安定した供給および良好な分散が得られることから好ましい。ドライブレンドには、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、および押出混合機などの予備混合装置が利用でき、必要に応じて押出造粒器やブリケッティングマシーンなどを用いて得られた予備混合物の造粒を行うことができる。
組成物−Iのペレットの如き粒状体を利用する場合、押出機のダイスから吐出した樹脂を直接に切断してもよく、得られたストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。
<発泡体の製造方法について>
本発明の発泡体は、前記工程A、即ち組成物−I中に高圧下でガスを含浸させる方法として、(i−a)溶融状態の組成物−Iに含浸させる方法、および(i−b)固体状態の組成物−Iに含浸させる方法のいずれの方法も選択でき、特に後者(i−b)の方法が好ましい。更にかかるガスとしては不活性ガスまたはその超臨界流体が好ましい。かかる固体状態とは、軟化温度を超えても溶融加工が困難な状態をいう。したがって、かかる固体状態の温度の上限としては組成物−Iのガラス転移温度(Tg(℃))より20℃高い温度が例示される。ガスを含浸させる温度は好適には組成物−IのTg以下が好適である。一方、減圧時の温度は(Tg+10−4P)±15(℃)の範囲が好ましい。ガスの含浸は、かかる範囲を超えTg以下である温度で行ってもよい。かかる含浸では、その後に減圧に好ましい温度に低下させ減圧処理を行うこともできる。しかしながら、より本発明の発泡体を安定して製造するには、含浸時の温度はほぼ一定であることが好ましく、したがってガス含浸時の温度も減圧時の好ましい温度と同様とすることが好ましい。
ガスが含浸された組成物−Iから前記工程Bおよび工程Cを経て発泡体が形成される。かかる気泡形成方法としては、(ii−a)発泡剤が含浸された組成物−Iを減圧することにより気泡核生成および気泡生成を連続的に行い気泡を形成する方法、並びに(ii−b)減圧の後更に加熱して気泡核生成および気泡生成を独立に行い気泡を形成する方法のいずれも選択できる。更に発泡体に附型する方法としては、(iii−a)発泡剤の含浸前に附型する方法、(iii−b)減圧時に附型する方法、並びに(iii−c)減圧の後更に加熱して附型する方法のいずれも選択できる。(iii−c)の方法では、その際に気泡が成長してもよく、気泡の成長がなくてもよい。
前記のガスを組成物−Iに含浸させる方法、気泡形成方法、および発泡体に附型する方法における好ましい具体例は次のとおりである。
(1)組み合わせ(i−b)+(ii−a)+(iii−a):かかる組み合わせは、成形品にガスを含浸した後、減圧して発泡させる方法に代表される。発泡の際は自由膨張とするが、一般的には成形品は3次元的に均一に膨張することから、予め附型された形状に相似した形状となり得る。
(2)組み合わせ(i−b)+(ii−a)+(iii−b):かかる組み合わせは、予備附型された組成物−Iの成形体にガスを含浸させ、型内で減圧して発泡させるときに附型する方法に代表される。また該組み合わせには、ガスを含浸させた後に附型して、その後自由膨張の状態で気泡を生成または更に成長させる方法も含まれる。かかる方法は、ガスの含浸で十分に可塑化し溶融する樹脂の場合に好適に利用される。
(3)組み合わせ(i−b)+(ii−b)+(iii−a):かかる組み合わせは、成形品にガスを含浸した後、減圧して気泡核を生成し、更に加熱軟化させて自由膨張の状態で気泡を成長させる方法に代表される。
(4)組み合わせ(i−b)+(ii−b)+(iii−b):かかる組み合わせは、予備附型された組成物−Iの成形体にガスを含浸した後、型内で減圧させるときに附型するか、もしくはガス含浸の成形体を型内で附型した後減圧させ、更に加熱軟化させて自由膨張の状態で気泡を成長させる方法に代表される。
(5)組み合わせ(i−b)+(ii−b)+(iii−c):かかる組み合わせは、予備附型された組成物−Iの成形体にガスを含浸した後、減圧させ、更に加熱軟化させて膨張させると共に附型する方法に代表される。かかる成形体は、予め附型用の型内にあっても、別途最終附型用の型内に導入されてもよく、また前者の型は、予備附型用の型が可動構造を有することにより最終附型用の型となる構造を有するものであってもよい。
<発泡剤を組成物−Iに含浸させる方法について>
前記(i−b)固体状態の組成物−I(以下この説明において単に“樹脂”と称することがある)に含浸させる方法について説明する。かかる方法において、ガスの含浸圧力は、本発明の構成(4)の説明において前述したとおり、好ましくは20〜50MPaの範囲であり、ガスは超臨界状態で注入されることが好ましい。かかる方法で含浸速度と発泡の微細化との両立が可能なように適切な条件が採用される。ガスの含浸速度は樹脂分子の可塑化の状態に依存するため、含浸速度を上げるためには温度を高めとすることが有利である。一方で発泡の微細化を行うためには、ガスの含浸によって可塑化された樹脂のガラス転移温度(Tg’)と減圧時の温度とが近いことが好ましい。かかるガス含浸時の樹脂のTg’は、樹脂の種類やガスの含浸量(例えば処理圧力に依存)により相違するが、本発明において好適な処理温度は前述のとおり(Tg+10−4P)±15(℃)である。
ガスの注入はガスが密閉された状態であっても循環された状態で行ってもよい。固体状態の樹脂へのガスの含浸では、できる限り飽和濃度に近い状態までガスの含浸を行うことが好ましい。しかしながらかかる時間があまりに長すぎる場合には、生産性に劣るようになり、また少なからず結晶化する樹脂の場合、結晶化の如き硬化挙動により、発泡しにくい状態となる。
<発泡体に附型する方法について>
発泡体の附型には、各種の方法が利用できる。前記組み合わせ(1)および(3)においては、その附型方法は特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂の成形加工方法として知られる各種の方法が利用可能である。かかる方法としては、例えば射出成形、押出成形、ブロー成形、インフレーション成形、カレンダー成形、キャスティング成形、熱プレス成形、回転成形、および引き抜き成形などが例示される。射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法、並びに更にこれらを組み合わせた成形法を用いて成形体を得ることができる。押出成形においても多層押出成形および延伸成形などを利用することができ、またかかる押出成形には固相押出成形を含む。
組み合わせ(1)および(3)の方法では、通常成形体の表層には非発泡層が形成される。かかる非発泡層は、表層の分子鎖が高い配向状態にあり、その変形が困難であるために生ずると考えられる。断熱金型成形および急速加熱冷却金型成形などの表面層の歪を緩和する成形方法ではかかる配向状態を緩和し、非発泡層の厚みを薄くすることができる。したがってこのような目的でかかる成形方法が利用できる。一方、超高速射出成形では、表面層の配向状態が高いことから、非発泡層は厚めであってかつ全体に発泡倍率が抑制された状態が形成される。
尚、かかる組成物−Iからなる成形体は、その全てが発泡体とされる必要はなく、成形体の一部が発泡処理される態様であってもよい。例えば二色成形された成形体や多層押出された成形体で組成物−Iが成形体表面を形成しない部分などが例示される。またかかる方法以外であってもガスの含浸を抑制したい部分がある場合には、ガス透過性の低いマスキングフィルムを当該部分に施すなどの処方を取ることもできる。
組み合わせ(5)においては、附型は型内に成形体を導入して加熱する方法、並びに加熱されたローラーやベルトにより形状を規定する方法などが例示される。かかる加熱において気泡を成長または新たに生成することが好ましいが、気泡の生成がなく単に最終形状を付与するため附型であってもよい。
組み合わせ(2)および(4)においては、附型は型内に導入された成形体を減圧して膨張を規制する方法や、ガスを含浸した固体状態の成形体を高圧で押出して附型する方法が利用できる。
<本発明の発泡体について>
本発明の発泡体は、その気泡の長さ平均直径は0.01〜1μmであり、その気泡数密度は1011〜1016個/cmの範囲にあることを満足するものであるが、かかる長さ平均直径および気泡数密度は次のように測定される。
発泡体の切断面を走査型電子顕微鏡により観察する。切断面は該面の平滑性を良好にするため冷却された状態でミクロトームの如き装置を用いて行う。かかる観察画像は、その画素数が縦480ピクセルおよび横640ピクセルであるデジタル画像とし、おおよその気泡の直径が20ピクセル程度となる観察倍率とする。かかる倍率で少なくとも200個の気泡を計測して長さ平均直径の仮の値を算出する。1つの画像において気泡数が200個に満たない場合は、複数の観察画像を得て全部で200個となるように行う。かかる仮の値の算出は、得られた画像を画像解析装置により処理し、各気泡の面積を円相当径に換算する方法により行う。尚、長さが2ピクセル以下に相当する数値は、ノイズとしてカットする。ここで算出された仮の値が10ピクセルとなる観察倍率を求め、該倍率に近い装置の観察倍率で観察画像を再度得、該画像から上記の仮の値の算出と同様の手順で気泡の長さ平均直径Dwを求める。尚、仮の値を算出した観察倍率と、Dwを求めるための観察倍率とが大きく異なる場合には、後者の倍率を仮の値として、同様の手順を繰り返す。またかかる方法は、長さ平均直径が1μmの場合、観察倍率は4000倍が適切であり、その際ノイズとしてカットされる長さは0.1μmとなる。気泡の長さ平均直径Dwは、得られた各気泡径の2乗の合計を各気泡径の合計で除すことにより算出される。尚、前記観察面積をSa(μm)とし、気泡の面積の合計をSc(μm)とすると、切断面(観察面)における気泡部分の占める面積割合をS(%)は、S=(Sc/Sa)×100(%)となる。
また気泡数密度Nは、下記式(1)により算出される値である。
Figure 0005038688
前記式(1)において、N(個/cm)は気泡数密度を、ρ(g/cm)およびρ(g/cm)はそれぞれ発泡体および組成物−Iの密度を、Dw(cm)は前記気泡の長さ平均直径(但し(2)式における単位はcmである)を表す。
本発明の発泡体における気泡の体積分率は特に限定されないものの、好ましくは0.5〜50%、より好ましくは3〜25%、更に好ましくは5〜20%である。本発明の発泡体は微細かつ均一な気泡を有することができることから、かかる気泡をクレーズ発生点とし、破断伸び値に代表される靭性を向上させることができる。即ち通常発泡体に期待される軽量性とは全く無関係の特性において優れた効果を発揮し得る。気泡の体積分率は、前記(2)式中のρ(g/cm)およびρ(g/cm)を用いて、(1−(ρ/ρ))×100(%)として表される。
本発明の発泡体は、微細かつ均一な気泡を高密度で有することができ、かかる特性により幅広い工業分野において利用できる。本発明の発泡体は、引張破壊呼び歪に代表される靭性に優れた樹脂部材を提供でき、該部材は極めて幅広い産業分野に利用可能である。かかる発泡倍率の発泡体の吸水率は、120日間23℃で水中浸漬しても、発泡していない成形品に比較して低くなる。かかる発泡体の吸水率は、気泡を除いた樹脂が吸水した量に相当することから、気泡には水が吸収されないことを示す。即ち、低吸水性、軽量かつ高靭性の樹脂部材の提供も可能とする。
また本発明の発泡体は、殊にA成分がポリカーボネート樹脂の場合には、かかる樹脂が本来有する良好な耐衝撃性と発泡成形品の有する衝撃吸収能力とを併有できることから、前記よりも大きい発泡倍率の範囲においても有効な衝撃吸収剤を提供し得る。前記特性を活かすと有効なコンポジット材料の提供が可能になる。軽量性を活かした分野では、各種の構造材料の他、スピーカーや各種の発振装置の振動版に利用できる。
本発明の発泡体は、気泡の含有により低誘電率を達成できることから、各種の電子・電気機器用の材料として利用でき、各種の分離膜へ利用も可能である。
一方、発泡体の破断面の凹凸および高い表面積を利用することもできる。凹凸の利用としては、印刷用のシートや、細胞培養の足場などへ利用できる。印刷用のシートでは該表面に載せられたインクが凹部に保持され、周囲に滲み広がることなく、所定の部分へのインクの付与が可能になる。かかる特性を活して導電インクにより細線の回路を描画し、電子回路を形成することが可能になる。更にかようにして各種のコーティング、印刷およびメッキなどにおいて物理的なアンカー効果に優れ、これらの密着性改良剤としても利用可能である。本発明の発泡体は気泡分率が数%程度であれば、気泡か微細であるため十分な光透過性を有し、高い透光性の必要とされる分野においても友好である。
また、本発明の発泡体は好適な製造方法によれば、独立気泡でありまた表層には発泡のない層を有する。一方、かかる好適な発泡体は、発泡による大きな歪みを成形体ほぼ均等に有することから、溶剤クラックにより表面凹凸を設けたり、独立気泡を連通気泡としたりすることもできる。よって前記の凹凸利用の用途においては、発泡体の断面でなく、かかるクラックによる凹凸を利用することもできる。
本発明者が現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。
(I)評価項目
(I−i)密度測定
メトラー・トレド株式会社製の電子天秤および比重測定用キットを用いて、水温23℃において発泡体の密度ρ(g/cm)および発泡処理前の試験片の密度ρ(g/cm)を測定した。尚、引張試験片の測定については、該試験片のチャック取り付け部の切断片を用いた。
(I−ii)切断面のSEM観察
発泡試験片を長さ10mm程度に切断し、かかる個々の切断片をクリップに挟んで液体窒素中に沈め、5時間放置した。その後、試験片を液体窒素から取出し、MICROM社製のHM360型ミクロトームに取り付け、該ミクロトームから切断面を得る作業を素早く行った。かかる切断面に白金蒸着し、SEM観察用サンプルとした。SEM観察は、本文記載の方法に基づく倍率で行った。本件の場合、発泡体の表層は気泡を含まない、非発泡の状態となるが、かかる部分は除外して観察した。
(I−iii)気泡径および気泡数密度の算出
前記SEM観察で得られたデジタル画像(縦480ピクセル×横640ピクセル)を、孔部分のコントラストを明確にした後、画像処理プログラム(三谷商事(株)製WINROOF)により画像解析し、気泡断面の面積からその円相当径を算出する操作を行った。かかる算出値から長さ平均直径(Dw)を求めると共に、前記密度の数値から前述の(2)式を用いて、気泡数密度(個/cm)を求めた。またかかる値から、S/Dwの値を算出した。
(II)発泡体の製造および結果
(II−1)発泡体の製造(1)
[実施例2、4、5、比較例1および参考例1
表1記載の各種樹脂パウダー100重量部に、表1記載の各種添加剤を各配合量で、並びにブルーイング剤(バイエル社製:マクロレックスバイオレットB)を0.00007重量部の配合量で配合し、均一にドライブレンドした後、ベント式二軸押出機(テクノベル(株)製KZW15−25MG)を用いて、スクリュー回転数:250rpm、吐出量:2kg/hrの条件で溶融混練し、ペレットを得た。スクリューセグメントの構成は、ベントの位置の上流および下流側にニーディングディスクにより構成された混練ゾーンを有していた。またベント部の真空度は3kPaに保持された。各A成分に対するシリンダー温度およびダイ温度は、PC−1では330℃、PC−2では290℃とした。
得られたペレットを110℃で5時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機((株)日本製鋼所製J75EIII型)を用いて、約30mm/secの射出速度条件で、長さ、幅および厚さがそれぞれ127mm、12.7mmおよび0.8mmの板状試験片を成形した。各A成分に対するシリンダー温度および金型温度はそれぞれ、PC−1では360℃および110℃、PC−2では310℃および100℃とした。
得られた該板状試験片を一端から60mmの長さになるよう切断した。かかる試験片をアルミニウム製の枠内に1つづつ入れた。かかる枠は、その内寸が長さ52mm×幅17mm×厚み3mmであるロの字状(長さ52mmおよび厚み3mmの面が開口)であった。試験片の入った枠を重ねてSUS製網で束ねて、圧力容器内に入れた。かかる圧力容器は、内径約6cm、深さ約16cmおよび容量が約500mLの円筒形であった。
圧力容器を密封した後、26℃の容器内温度において容器内を炭酸ガスでパージし、その後容器に組み込まれた電気ヒーターにより容器内の温度を25分かけて50℃まで昇温した。容器内の温度は挿入された熱電対により計測した。50℃に到達した後、超臨界状態の炭酸ガスを容器内に注入し、容器内の圧力の上昇と共に温度も上昇し、約15分後に容器内の温度が60℃に達した。ここで圧力も25MPaに最終調整し、一旦バルブを閉めて保持処理を開始した。この間圧力の状態を観察し、圧力の低下が認められたら再度バルブを開けて超臨界炭酸ガスを注入する操作を繰り返して、25MPaおよび60℃の状態を3時間維持した。3時間後に開放バルブを急開放し、25MPaから22MPaに到達するまで約0.4秒、20MPaに到達するまで3秒、15MPaに到達するまで7秒、10MPaに到達するまで13.5秒、5MPaに到達するまで37秒、0MPaに到達するまで52秒を要して減圧した。減圧直後の容器の温度は、断熱膨張の冷却作用により26℃に低下した。かかる減圧の直後に圧力容器を開封して試験片を取出し、その約20分後に試験片を155℃のシリコーンオイルバスに30秒間浸漬することにより、更に発泡させた。得られた発泡体の密度を測定し、その切断面のSEM観察から気泡径の計測を行った。
[実施例3、および比較例2]
試験片の作成および圧力容器内の設置は、実施例1と同様に行った。実施例1と同様に室温で炭酸ガスのパージ処理を行い40分掛けて約70℃に昇温した後、超臨界炭酸ガスを容器内に注入し、更に約15分後に80℃に到達したところで、20MPaに最終調整し、保持処理を開始した。同様に圧力の低下があったときはバルブを開放して炭酸ガスを注入し、20MPaおよび80℃の状態を3時間保持した。その後バルブを急開放して、15MPaまで1秒、10MPaまで3秒、5MPaまで8秒、および0MPaまで20秒を掛けて減圧した。約15分後に圧力容器を開放して、その後試験片を155℃のシリコーンオイルバスに30秒間浸漬することにより、更に発泡させた。得られた発泡体の密度を測定し、その切断面のSEM観察から気泡径の計測を行った。
[比較例3]
試験片の作成および圧力容器内の設置は実施例1と同様に行った。実施例1と同様に室温で炭酸ガスのパージ処理を行い50分掛けて約90℃に昇温した後、超臨界炭酸ガスを容器内に注入し、更に約15分後に100℃に到達したところで、15MPaに最終調整し、保持処理を開始した。同様に圧力の低下があったときはバルブを開放して炭酸ガスを注入し、15MPaおよび100℃の状態を3時間保持した。その後バルブを急開放して、13MPaに到達するまでに0.4秒、8MPaに到達するまでに2秒、2MPaに到達するまでに6秒、およびほぼ0MPaに到達するまでに13秒を掛けて減圧した。約20分後に圧力容器を開放して、その後試験片を155℃のシリコーンオイルバスに30秒間浸漬することにより、更に発泡させた。得られた発泡体の密度を測定し、その切断面のSEM観察から気泡径の計測を行った。
Figure 0005038688
表1および表2から明らかなように、本発明の界面活性剤を含有する組成物は、高い圧力条件によって大幅に気泡径が微細化し、かつ気泡密度が高くなっており、その結果従来にない良好な微細発泡体を形成していることがわかる。尚、上記において実施例1および2の発泡処理後の試験片から、引張ダンベルを打ち抜きして簡易の引張試験をしたところ、その破断伸び値は、それぞれ140%および130%であり、極めて優れた特性が認められた。
(III)表1および2における記号表記の各成分の内容
(A成分)
PC−1:粘度平均分子量37,000の分岐構造を有しない直鎖状のポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトC−1400WP)
PC−2:粘度平均分子量22,500の分岐構造を有しない直鎖状のポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1225WP)
PAR:ポリアリレート樹脂(ユニチカ(株)製 UポリマーU−100)
PPE:ポリフェニレンエーテル系樹脂(旭化成工業(株) ザイロン600H)
HMWAS:GPC測定により算出された重量平均分子量が700万であるアクリロニトリル−スチレン共重合体(CROMPTON社製ブレンデックス869)
(B成分)
F114:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(大日本インキ化学(株)製:メガファックF−114P)
F487:前記式(iii)で表される化合物(CH=C(CH)COOCHCH17)を単量体の主成分とし、ジメチルシロキサンユニットからなる式(iv)で表される化合物を単量体として含有するオリゴマー型フッ素系界面活性剤(大日本インキ化学(株)製:メガファックF−487)
F493:前記式(ii−3)で表される(Rf−X−O−が−OCHCH17および−OMが−OHである)パーフルオロ基含有リン酸エステル化合物からなるフッ素系界面活性剤(大日本インキ化学(株)製:メガファックF−493)
(C成分)
C−1:下記方法により製造されたSi−H量が0.21mol/100g、芳香族基量が49重量%、平均重合度が8.0であるシリコーン化合物
C−2:25℃における粘度が20mm/sec、Si−H量が1.52mol/100g、芳香族基量が0重量%であるメチルハイドロジェンポリシロキサン(信越化学工業(株)製 KF99)
C−3:25℃における粘度が500mm/sec、Si−H量が0mol/100g、芳香族基量が57重量%であるメチルフェニルポリシロキサン(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製SH710)
(C−1の製造)
攪拌機、冷却装置、温度計を取り付けた1Lフラスコに水301.9gとトルエン150gを仕込み、内温5℃まで冷却した。滴下ロートにトリメチルクロロシラン21.7g、メチルジクロロシラン23.0g、ジメチルジクロロシラン12.9およびジフェニルジクロロシラン 76.0の混合物を仕込み、フラスコ内へ攪拌しながら2時間かけて滴下した。この間、内温を20℃以下に維持するよう、冷却を続けた。滴下終了後、さらに内温20℃で攪拌を4時間続けて熟成した後、静置して分離した塩酸水層を除去し、10%炭酸ナトリウム水溶液を添加して5分間攪拌後、静置して分離した水層を除去した。その後、さらにイオン交換水で3回洗浄し、トルエン層が中性になったことを確認した。このトルエン溶液を圧力約2KPaの減圧下、内温120℃まで加熱してトルエンと低沸点物を除去した後、濾過により不溶物を取り除いてシリコーン化合物B−1成分を得た。
(その他の成分)
IRGP:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製:Irgafos168)

Claims (3)

  1. ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部、フッ素系界面活性剤(B成分)0.001〜30重量部、ならびに(I)芳香族基が含まれる割合(芳香族基量)が10〜70重量%および/または(II)Si−Hが含まれる割合が0.1〜1.66mol/100gであるシリコーン化合物(C成分)0.05〜30重量部を含有する組成物(組成物−I)より形成された発泡体であって、その気泡の長さ平均直径は0.01〜1μmであり、その気泡数密度は1011〜1016個/cmの範囲にあることを満足する発泡体。
  2. 前記発泡体は、切断面における気泡部分の占める面積割合をS(%)とし、該切断面から算出されるμmを単位とする気泡の長さ平均直径をDwとしたとき、S/Dwは40〜500の範囲にある請求項1に記載の発泡体。
  3. 固体状の組成物−Iに不活性ガスの超臨界流体を20〜50MPaの圧力で含浸させる工程(工程A)、A成分の組成物Tg(℃)に対して(Tg+10−4P)±15(℃)の範囲の温度において、前記圧力から2MPaの圧力に到達するまでの範囲において1MPa/sec以上の減圧速度で減圧して気泡核を生成する工程(工程B)、並びに前記気泡核を含む成形体を前記組成物のTg(℃)に対してTg±30(℃)の範囲に加熱することにより、前記気泡核を気泡に成長させる工程(工程C)を含む請求項1又は請求項2に記載の発泡体の製造方法。
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