JP5038566B2 - 管理装置および情報提供装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子地図データの管理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータで利用可能に電子化された地図データ(以下、「電子地図データ」と呼ぶ)の利用が広まっている。電子地図データは、いわゆるパーソナルコンピュータでの地図表示、車載用のナビゲーションシステム、インターネットを介した地図提供および印刷物としての地図の版下作成などに利用される。特に、ナビゲーションシステムでは、目的地の設定、目的地までの経路探索などを容易に行うことができる点で、電子地図データの有用性が高い。電子地図データは、CD−ROMなどの記憶媒体に格納された形で提供される他、ネットワークを介して配信されることもある。
【0003】
電子地図データは、情報の正確性が重要である。一般に道路、建造物は、年々新たなものが増える一方、古いものが取り壊されたりする。こうした建築、取り壊しが起きると、その時点で電子地図データと現実の状態に差違が生じ、その正確性が損なわれる。住宅地図のように各家庭の名字まで表記する地図では、引っ越し等があった時点で、同様にして正確性が損なわれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの変化が生じた時点で、直ちに電子地図データに反映することは非常に困難である。これらの変化は不定期に生じるものであり、電子地図データに収録された全範囲について、その変化を把握することが非常に困難だからである。 電子地図データの更新を定期的に行うとしても、変化が生じた時期と更新時期との兼ね合いによっては、その変化が電子地図データに長期間反映されない可能性があった。電子地図データに反映されない変化は、電子地図データと現実の状態との差違を生じさせ、電子地図データの正確性を損ねていた。これらの差違は、電子地図の利用者に、無用の混乱を生じさせる可能性があった。
【0005】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、電子地図データと現実の状態との差違に基づく混乱の緩和を図るための技術を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記課題の少なくとも一部を解決するため、本発明では、電子地図データを管理する管理装置において、要素データ記憶部と、判断指標データ記憶部とを備えるものとした。要素データ記憶部は、電子地図データを構成する各要素データおよびその属性情報を記憶する。要素データとは、電子地図データを構成する公共施設、事業施設、個人住宅などの位置データ、形状データ、行政区画、町丁目などの境界データ、地形データ等をいう。属性情報は、各要素データについての属性、例えば名称、種別、ガソリンスタンドやファーストフードなどの業種を表すアイコン、屋号、略称などの情報をいう。要素データが個人住宅または事業施設の場合には、その代表者、構成員などを属性情報に含めることもできる。
【0007】
なお、上記形状データ、属性情報は、電子地図データを表示する縮尺に応じて複数種類用意するものとしてもよい。例えば、属性情報の一つである名称については、小縮尺用に正確な会社、中縮尺用に屋号、大縮尺用にアイコンなど複数用意することが考えられる。
【0008】
判断指標データ記憶部は判断指標データを記憶する。判断指標データとは、要素データおよび属性情報の少なくとも一部について、情報の正確性を判断する指標である。判断指標データによって、電子地図データの利用者に対し、要素データおよび属性情報についての正確性を示唆することが可能となる。
【0009】
判断指標データは、要素データまたは属性情報のいずれか一方のみに対して備えるものとしてもよいし、双方に備えるものとしてもよい。
【0010】
本発明の管理装置において、判断指標データは、要素データおよび属性情報を登録する基準時刻から現時点までの差違を示唆する指標とすることができる。一般に要素データ等の正確性は、かかる時間的な差違に影響を受けるからである。
【0011】
基準時刻とは、要素データおよび属性情報の内容が、確からしいと考えられる所定の時刻を意味する。例えば、調査などによってある要素データ等を取得した場合には、その調査日時を基準時刻とすることができる。基準時刻は、調査日時と必ずしも一致する必要はない。例えば、調査によって、建造物が建てられた過去の日時が確認された場合には、調査日時に関わらず、その建てられた日時、即ち、建造物などの要素データに異同が生じた日時を基準時刻とすることができる。基準時刻は、必ずしも過去の時刻とは限らない。例えば、高速道路などの建設計画が公表されている場合、高速道路の開通という異同が生じる将来の日時を、基準時刻とすることもできる。指標は種々の形式をとることができ、例えば、基準時刻自体を用いてもよいし、基準時刻と現時点との差違を用いてもよい。必ずしも時間を単位とする必要はなく、無次元化等してもよいし、時間的な差違と非線形の関係にある指標としてもよい。
【0012】
本発明の管理装置において、判断指標データは、要素データおよび属性情報の取得方法を示唆する指標とすることもできる。一般にデータの正確性は、取得方法と密接に関連するからである。例えば、データの取得方法としては、現地の調査、関係者からの申告、関係者への聞き込み、刊行物等による発表など種々の方法が考えられる。判断指標データは、これらの取得方法を示すコード等を用いるものとしてもよいし、取得方法に対して正確性の評価値を設定し、この評価値を用いるものとしてもよい。
【0013】
本発明の管理装置において、判断指標データは、電子地図データの閲覧時に要素データ等を提示する提示精度を示唆する指標とすることもできる。かかる指標には、例えば、建造物の高さなどの数値情報が属性情報に含まれている場合には、データ提示時の有効桁数を示唆する情報などが含まれる。また、氏名表示などにおいて、いわゆる常用漢字への置換が行われているか否かを示す情報を指標として用いてもよい。
【0014】
判断指標データは、ここに例示したものに限らず、種々のデータを用いることが可能である。また、複数種類の指標、例えば、上述した時間的な差違、データの取得方法、提示精度に関する指標を組み合わせた指標を設定してもよい。
【0015】
本発明の管理装置において、要素データ記憶部および判断指標データ記憶部は、最新のデータだけを保持するものとしてもよいが、データの履歴を併せて保持することが望ましい。つまり、要素データ等に異同が生じた場合には、異同の前後のデータを保持しておくことが望ましい。こうすることにより、過去または将来の特定の時点での電子地図データを閲覧することが可能となり、その時点における正確性も判断することが可能となる。
【0016】
本発明は、電子地図データを閲覧させるための情報提供装置として構成することもできる。この場合は、例えば、上述した特徴の少なくとも一部を有する管理装置との間で情報の入出力を行う管理部と、情報提供の要求を入力する要求入力部と、要求に応じて要素データおよび属性情報の少なくとも一部を、判断指標データと関連づけて出力する情報提示部とを備える構成により実現することができる。情報提供装置は、先に説明した管理装置と一体で構成してもよいし、管理装置とローカル接続またはネットワーク接続された別体として構成してもよい。要求の入力および出力は、情報提供装置にキーボード等の操作部、およびディスプレイ等の表示部を設けるものとしてもよいし、ネットワークで接続されたクライアントとの間で入出力するものとしてもよい。
【0017】
判断指標データとの関連づけは、種々の態様をとりうる。第1の態様として、要素データおよび属性情報を、判断指標データに基づいて複数のグループに区分し、各グループを視覚的に区別可能な態様で出力する態様が考えられる。各グループごとに色、フォントなどを使い分ける態様が含まれる。
【0018】
第2の態様として、出力対象となる要素データおよび属性情報の全体について、判断指標データの代表値を出力する態様が考えられる。例えば、出力対象となるデータに含まれる判断指標データの範囲を代表値としてもよいし、最も正確性が高い側または低い側の判断指標データを代表値としてもよい。
【0019】
第3の態様として、要素データおよび属性情報の少なくとも一部について、判断指標データの出力要求がなされたときに、判断指標データを出力する態様が考えられる。
【0020】
本発明は、電子地図データの管理装置、情報提供装置としての構成に限らず、種々の態様での構成が可能である。例えば、電子地図データの管理方法、情報提供方法の態様で構成してもよいし、コンピュータにこれらの管理方法、情報提供方法を実現させるコンピュータプログラムとして構成してもよい。要素データ記憶部と判断指標データ記憶部に含まれるデータを備えた電子地図データとして構成してもよい。また、これらのプログラムおよび電子地図データを記録した記録媒体として構成してもよい。なお、記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等の、コンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。
【0021】
本発明は、さらに、電子地図データの表示機能を有するコンピュータを用いて各要素データおよびその属性情報の更新を支援する更新支援方法として構成することもできる。電子地図データには、判断指標データも含まれているものとする。かかる更新支援方法では、例えば、判断指標データに基づき、各要素データおよび属性情報についての正確性を定量的に表す正確性指標を設定し、要素データ等の更新を示唆する態様で正確性指標を出力する構成とすることができる。こうすることで、正確性が低いと判断される領域のデータ更新を優先的に行うなど、効率的なデータ更新を実現することができる。
【0022】
正確性指標は、判断指標データによって種々の設定が可能であり、例えば、判断指標データが、先に説明した基準時刻と現時点との差違を示唆する指標である場合には、その差違の増大とともに正確性が低くなる設定とすることができる。
【0023】
また、判断指標データが、要素データおよび属性情報の取得方法を示唆する指標である場合には、取得方法ごとに予め設定された正確性指標を割り当てることができる。
【0024】
正確性指標の出力は、例えば、更新が望ましいと判断される要素データ等を、地図上で、密度を確認可能な態様で行うことが望ましい。こうすることにより、判断指標データに基づいて、正確性が低いと判断される要素データが密集しているような地域を優先的に更新することが可能となり、電子地図データの効率的な維持管理が可能となる。かかる更新支援方法についても、これをコンピュータによって実現させるコンピュータプログラム、およびそのプログラムを記録した記録媒体などの態様で構成することが可能である。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、以下の項目に分けて説明する。
A.電子地図提示システム:
B.情報提示処理:
C.電子地図データの維持管理:
D.効果:
【0026】
A.電子地図提示システム:
図1は実施例としての電子地図提示システムの構成を示す説明図である。電子地図提示システムは、情報提供装置100と、管理装置として機能する地図データベース200から構成される。情報提供装置100と地図データベース200は、一体の装置として構成してもよいが、本実施例ではより多数の情報提供装置100による地図データベース200へのアクセスを許容するため、両者をLAN(Local Area Network)で接続する構成とした。地図データベース200に記憶されている電子地図データは、要素データ、属性データ、判断指標データに大別される。各データの内容については後述する。情報提供装置100は、インターネットINTに接続されており、外部のクライアントPCからの要求に応じて電子地図を提示することができる。情報提供装置100とクライアントPCとの接続は、LANなど種々のネットワークを用いるものとしてもよい。また、情報提供装置100とクライアントPCとを一体的に構成しても構わない。
【0027】
図中に情報提供装置100の機能ブロックを示した。本実施例では、ネットワーク通信機能を備える汎用のコンピュータによって情報提供装置100を構成し、図示する各機能ブロックをソフトウェア的に構成するものとしたが、専用の回路を用いてハードウェア的に構成することも可能である。
【0028】
データベース管理部130は、地図データベース200からのデータの読み出し、地図データベース200へのデータの書き込みを行う。要求入力部140は、インターネットINTを介してクライアントPCからの地図表示等に関する要求を入力する。この要求は、データベース管理部130に受け渡される。データベース管理部130は要求に応じたデータを用意すると、結果を情報提示部150に受け渡す。情報提示部150は、インターネットINTを介してクライアントPCに情報の提示を行う。この際、適宜、情報を加工し、クライアントPCからの要求等に応じた態様で情報を提示する。
【0029】
コマンド入力部110は、情報提供装置100に備えられたキーボードその他の入力デバイスからコマンドを入力する。表示制御部120は、情報提供装置100のディスプレイ等に情報を表示する。データベース管理部130は、コマンド入力部110からのコマンドに応じて地図データベース200の変更等を行うことができ、その結果を表示制御部120に表示することができる。
【0030】
図2は地図データベース200の構成を示す説明図である。本実施例の地図データベース200に記憶されるデータは、要素データ、属性データ、判断指標データに大別される。要素データとは、道路、橋などを含む種々の建造物について、緯度、経度などの位置および形状を記憶するデータである。要素データは、建造物の種別に応じて種々のレイヤに分けて構築されている。本実施例では、説明の便宜上、公共施設、事業施設、個人住宅の3つに大別して管理するものとした。公共施設とは、道路、橋、官公庁など公共の用に供される建造物をいう。事業施設とは、店舗、スーパー、劇場など種々の事業を行うための建造物をいう。個人住宅は、個人が居住する住居をいい、一戸建ての住宅、アパート、マンションなどが含まれる。もっとも、これらの分類は、厳密なものではなく、後述する属性データの内容との関係で適宜対応づければよい。
【0031】
属性データとは、各要素データについて、その種別、名称などを特定するためのデータである。属性データの内容は、全要素データに共通としてもよいが、本実施例では、より具体的かつ詳細な属性データを設定可能とするため、公共施設、事業施設、個人住宅の分類に応じて内容を設定した。この内容については、後述する。
【0032】
判断指標データとは、地図データベース200に記憶された内容の正確性を示す指標となるデータである。図示する通り、判断指標データは、要素データおよび属性データのそれぞれに対応づけて設定される。要素データに対応づけられた判断指標データは、形状、位置についての正確性を示すデータとなり、属性データに対応づけられた判断指標データは、形状、位置等に関わらず属性データの内容の正確性を示すデータとなる。判断指標データは、形状、位置など、各データ項目ごとに個別に対応づけるものとしてもよい。また、要素データまたは属性データのいずれか一方との対応づけを省略してもよい。複数の要素データで判断指標データを共有化してもよい。判断指標データの具体的な内容については後述する。
【0033】
地図データベース200は、適宜更新される。地図データベース200は、更新によって得られた最新のデータのみを保持するものとしてもよいが、本実施例では、各更新段階におけるデータを履歴として保持するものとした。また、地図データベース200は、かならずしも現在または過去のデータのみを保持しているとは限らず、将来に対応するデータも保持され得る。例えば、高速道路などの建設計画が公表された場合、この計画に基づく高速道路データは、開通前でも十分取得可能である。こうして取得された高速道路データは、開通予定時における将来の地図データとして地図データベース200に保持される。
【0034】
ここで、本実施例における属性データの内容について順に説明する。図3は公共施設について属性データとして含め得る内容を例示する説明図である。公共施設に関する属性データは、施設表示情報、建造物関連情報、利用関連情報に大別される。施設表示情報とは、地図への表示に使用される情報であり、施設表示、住所、管理責任者などが含まれる。建造物関連情報は、建造物自体の特徴を示す情報であり、種別、建築年月日、建築様式、階数または高さなどの情報が含まれる。利用関連情報は、公共施設の利用可能者についての情報であり、利用料金、対象者、利用可能時間などの情報が含まれる。
【0035】
図4は事業施設について属性データとして含め得る内容を例示する説明図である。事業施設に関する属性データは、施設表示情報、建造物関連情報、各テナント情報に大別される。施設表示情報および建造物関連情報は、公共施設の場合とほぼ同じ内容である。事業施設の場合、事業上の便宜を考慮して、施設表示情報に電話番号を含めた。また、建造物関連情報には、テナント数を含めた。各テナント情報は事業施設内における事業者を特定する情報である。スーパーなど多数の店舗が存在する場合には、各店舗ごとに備えられる。テナント情報には、屋号、階数、場所、業種、従業員数、営業時間などが含まれる。
【0036】
図5は個人住宅について属性データとして含め得る内容を例示する説明図である。個人住宅に関する属性データは、住居表示情報、住宅関連情報、構成員情報に大別される。住居表示情報とは、地図への表示に使用される情報であり、住居表示、住所、棟および階数、電話番号などが含まれる。住宅関連情報は、住宅自体の特徴を示す情報であり、種別、建築年月日、建築様式などの情報が含まれる。構成員情報は、居住者についての情報であり、居住者数、世帯主の氏名、各構成印の氏名、年齢構成、社会権限などが含まれる。社会権限とは、年金生活者、乳幼児、要介護者、障害者、外国人など、社会生活を営む上で受ける特別な保護または扱いに関する情報をいう。
【0037】
図3〜図5に示したのは属性データの例にすぎず、これらに限定されるものではない。各要素データについて、さらに詳細な属性データを備えるものとしてもよいし、例示したデータの一部を省略しても構わない。もちろん、これらの属性データは、必ずしも全要素データについて取得されている必要はなく、情報が取得された範囲で用意されていればよい。
【0038】
図6は判断指標データとして含め得る内容を例示する説明図である。本実施例では、要素データおよび属性データのいずれについても同じデータ構造の判断指標データを用いるものとした。ここでは、時間的に古い順にD1〜D4の4通りのデータが保持されている場合を例にとって、判断指標データの内容を説明する。
【0039】
判断指標データは、関連データ特定情報、時間経過関連指標、取得方法関連指標、提示精度関連指標に大別される。
【0040】
関連データ特定情報とは、地図データベース200において、判断指標データに対応づけられている要素データおよび属性データを、履歴も含めて特定するためのデータである。本実施例では、対象データポインタ、直前データポインタPP、後続データポインタNPの3種類のポインタが含まれる。対象データポインタとは、判断指標データが対応づけられている要素データ(以下、対象データと呼ぶ)の格納アドレスを示すデータである。直前データポインタは、対象データの直前の要素データ等の格納アドレスを示すデータである。後続データポインタは、対象データの直後の要素データ等の格納アドレスを示すデータである。例えば、データD2が対象データである場合には、対象データポインタにはデータD2の格納アドレスが記憶され、直前データポインタにはデータD1の格納アドレスが記憶され、後続データポインタにはデータD3の格納アドレスが記憶される。なお、対象データがデータD1のように履歴の先頭データである場合には、直前データポインタにはNullデータが記憶される。対象データがデータD4のように履歴の末尾データである場合には、後続データポインタにはNullデータが記憶される。
【0041】
時間経過関連指標は、時間をパラメータとして要素データ等の正確性を判断するための指標である。本実施例では、各データの登録時に正確性を判断する基準となる時間として、3種類のデータを用いるものとした。なお、本実施例では、「日時」の形で各データを備えるものとしたが、「日」、「月」、「年」などを単位として備えてもよい。
【0042】
第1の基準時間は、データの取得日時である。現地調査、関係者へのヒアリングなど種々の方法によって現実にデータが取得された日時をいう。データの取得日時は、既存の要素および属性については、少なくともその時点では正確であることが確認された日時に相当する。
【0043】
第2の基準時間は、データの内容に異同が生じた日時または異同が生じる予定の日時である。既存の要素データ等については過去の日時が登録され、将来計画に基づく要素データ等については将来の日時が登録されることにある。異同とは、例えば、建造物の竣工日、利用開始日など、実質的に要素データおよび属性データの内容に変動が生じる日時を用いることができる。
【0044】
第3の基準時間は、データの入力日時である。一般にデータの入力日時は、データの正確性を十分に保証しているとは限らない。データが取得されてから入力が行われるまでに、実際の状況が変化している可能性があるからである。従って、本実施例では、データ取得日時、および異同または異同予定日時が、不明または不正確である場合に、データの入力日時を補助的な基準時間として用いるものとした。
【0045】
取得方法関連指標は、データの取得方法に基づいてその正確性を与えるための指標である。データは、取得方法によって精度が異なるからである。本実施例では、5種類の取得方法、即ち、所有者へのヒアリング、関係者へのヒアリング、現地調査、刊行物公表、申告をそれぞれコードで表すものとした。個人住宅所有者へのヒアリングとは、例えば、世帯主に構成員など属性データの内容を聞くことによってデータを取得する方法である。関係者へのヒアリングとは、例えば、世帯主以外の構成員、または近隣の住人からのデータ取得である。現地調査とは、例えば、現地にて住居表示、形状などを調査する取得方法である。刊行物公表とは、例えば、新聞、広報などによる道路の建設計画などに基づく取得方法である。申告とは、事業主などによる自己申告に基づく取得方法である。取得方法関連指標は、これらに限らず、多くの取得方法を含めることができる。また、これらの取得方法に応じて、正確性を定量的に評価し、その評価値を取得方法関連指標として用いても良い。
【0046】
提示精度関連指標とは、電子データとして記憶されているデータの正確性に関わらず、クライアントPCへのデータ提示時における正確性を示す指標である。本実施例では、形状精度、文字置換の有無、数値の有効桁数を用いるものとした。形状精度とは、地図データとして提供される建造物の形状の正確性を示す指標であり、測量等に基づいて得られた形状の提示、外観から把握される概ねの形状の提示、外観に関わらず長方形など代表的な形状で提示などの種別を与える指標である。文字置換の有無とは、氏名の表示などでいわゆる常用漢字への置換が行われているか否かを示す指標である。数値の有効桁数は、建造物の高さなどの数値情報の有効桁数を与える指標である。
【0047】
図6は、判断指標データの例示であり、さらに多くの指標を判断指標データに含めても良い。また、図6に例示したデータの一部を省略して判断指標データとしても構わない。
【0048】
B.情報提示処理:
図7は情報提示処理のフローチャートである。クライアントPCからの要求に応じて地図を提示するための処理である。左側にクライアントPCの処理、右側に情報提示システムの処理を示した。
【0049】
まず、情報提示システムは、クライアントPCに対して要求入力画面を提示する(ステップS20)。本実施例では、Webページの形式で提示するものとした。クライアントPCは、ブラウザによってこの画面を表示することができ、地図表示に必要な情報を地図表示要求として送信することができる(ステップS10)。地図表示要求には、表示すべき地図の代表点を示す緯度、経度および表示スケールなどの情報が含まれる。
【0050】
情報提示システムは、この要求に応じて、地図データベース200を参照してデータを取得し(ステップS22)、Webページの形式でクライアントPCに提示する(ステップS24)。クライアントPCは、ブラウザによって地図を表示する(ステップS12)。この地図は、主として要素データによって構成される。属性データを適宜、併せて表示するものとしてもよい。
【0051】
この段階で、提示された地図データの正確性を示唆するために、判断指標データを併せて提示するものとしてもよいが、本実施例では、改めてクライアントから判断指標データの出力を要請した場合に(ステップS14)、この要請に応じて判断指標の出力および表示を行うものとした(ステップS26、S28、S16)。これらの処理は、地図の提示(ステップS22、S24、S12)に統合することが可能である。
【0052】
判断指標データの出力は、次に示す3種類のうち、いずれかの態様を採ることができる。3種類のいずれかの態様のみに固定してもよいし、クライアントPCからの要求に応じて切り替え可能としてもよい。
【0053】
図8は判断指標データの第1の出力態様を例示する説明図である。クライアントPCにおけるウィンドウWDの表示内容を例示した。地図データMAPに含まれる全ての要素データおよび属性データについて、判断指標の代表値を示す態様である。ここでは、時間経過関連指標を提示する場合を例示した。例えば、提示された地図データに含まれる最古の基準時間、最新の基準時間を代表値として提示することにより、何年の範囲の情報が提示されているかを示すことができる。いずれか一方の基準時間のみを用いるものとしてもよい。ここで提示される基準時間は、図6で例示した3種類の基準時間のいずれを用いても構わない。
【0054】
また、予め設定された優先順位で3種類の基準時間を用いても良い。例えば、異同日時、データ取得日時、データ入力日時の順に優先順位を設定した場合を考える。この場合、3種類の基準時間が全て登録されているデータについては、異同日時が代表的な基準時間として抽出される。異同日時が登録されていないデータについては、データ取得日時が代表的な基準時間として抽出される。データ入力日時のみが登録されているデータについては、これが基準時間として抽出される。こうして各要素について抽出された代表的な基準時間に基づいて、最古の基準時間および最新の基準時間が求められ、判断指標の代表値として提示される。
【0055】
図9は判断指標データの第2の出力態様を例示する説明図である。クライアントPCが判断指標の提示が要求された場合、要求された要素について、ポップアップウィンドウPUを開き、そこに判断指標を提示する態様である。ここでは、時間経過関連指標を提示する場合を例示した。
【0056】
図10は判断指標データの第3の出力態様を例示する説明図である。判断指標に応じて各要素を色分け等して出力する態様である。ここでは、時間経過関連指標に基づいて各要素を3つのグループに分類して、提示する場合を例示した。
【0057】
図11は第3の出力態様を実現するためのフローチャートである。情報提示装置100の情報提示部150が適宜実行する処理である。この処理では、情報提示部100は、まず、要素データ、属性データ、判断指標データを入力する(ステップS30)。また、グループ定義データを入力する(ステップS32)。グループ定義データとは、判断指標データに基づくグループ分けを定義するデータをいい、予め情報提示装置100に用意されているものとする。
【0058】
情報提示部150は、これらのデータに基づいて各要素のグループ分類処理を行う(ステップS34)。図中に、データ取得日時に基づいて3つのグループに分ける場合の処理を例示した。データ取得日時が、「Y1年M1月D1日」以前の場合にはグループAに分類される。データ取得日時が、これよりも後で、「Y2年M2月D2日」以前の場合にはグループBに分類される。データ取得日時がさらに後の場合にはグループCに分類される。「Y1年M1月D1日」などの閾値は、グループ定義データによって与えられる。
【0059】
情報提示部150は、全要素データについてかかる処理を実行し(ステップS36)、結果をクライアントPCに出力する(ステップS38)。図10に示した表示は、かかる処理によって実現される。
【0060】
なお、図11では、取得日時による分類を例示したが、グループ定義データの設定に応じて、グループの分類方法は、柔軟に設定可能である。図12はグループ化処理の方法を示す説明図である。グループ化の基準は、判断指標データ自体を用いるものとしてもよいし、判断指標データに基づいて演算される正確性指標を用いるものとしてもよい。
【0061】
判断指標データ自体を用いる場合には、時間経過関連指標、取得方法関連指標、提示精度関連指標をそれぞれ用いることができる。時間経過関連指標、および提示精度関連情報における形状精度、有効桁数など定量的な指標については、図11で例示したように数値範囲でグループ化する方法を用いることができる。取得方法関連指標のように、予め分類されている指標については、各分類をそのままグループとすればよい。
【0062】
正確性指標の演算方法を図中に例示した。正確性指標は、例えば、経過時間評価値と重み値の積で定義することができる。経過時間評価値とは、データ登録の基準日時からの時間経過に基づいてデータの正確性が低下していくことに起因した正確性の評価値である。本実施例では、図中に示すように、経過時間とともに評価値が低減する関数で与えるものとした。ここでは、非線形な関数としているが、線形関数としてもよい。経過時間は、例えば、時間経過関連指標で与えられるいずれかの基準時間と、現時点との差違で与えられる。一般に、都会の方が田舎に比較して状況の変化が生じやすいことを考慮して、本実施例では、都会と田舎で評価値の関数を使い分けるものとした。
【0063】
重み値は、経過時間以外の要因による正確性を評価する係数である。例えば、取得方法、提示精度に応じて正確性を評価し、その影響を重み値として与えることができる。また、要素データおよび属性データの種別による影響を重み値としてもよい。例えば、個人住宅の場合、アパートなどの賃貸住宅では一戸建てよりも異同が生じやすいから、前者では後者よりも重み値を小さくするなどの与え方が考えられる。本実施例では、経過時間評価値の関数を都会と田舎で使い分けるものとしたが、関数の使い分けに代えて、地域による差違を重み値に反映させてもよい。
【0064】
以上の説明では、地図表示要求(図7のステップS10)として、位置および表示スケールが指定された場合を例示した。本実施例では、地図データベース200は、時系列的にデータが保持されているため、表示の基準時刻を地図表示要求に含め、これに応じて地図の表示内容を切り替えるものとしてもよい。
【0065】
図13は出力基準時刻を指定した場合の出力態様を例示する説明図である。地図データベース200として、古い順に、上から3種類の地図データが時系列的に保持されている場合を考える。上方に位置する工場が、現在は野球場に代わり、将来はその近くに高速道路の建設予定があるものとする。地図表示要求において、野球場が建設されるよりも以前の出力基準時刻T1が指定された場合には、その時点でもっとも正確性の高いデータとして、工場が残っている上方の地図が提示される。将来、高速道路が開通する時点よりも以前の出力基準時刻T2が指定された場合には、その時点でもっとも正確性の高いデータとして、野球場が建設された中央の地図が提示される。高速道路が開通した後の出力基準時刻T3が指定された場合には、その時点でもっとも正確性の高いデータとして、下方の地図が提示される。このように時系列的に地図データを保持しておくことにより、過去または将来の特定の出力基準時刻において、正確性の高い地図を提供することが可能となる。
【0066】
C.電子地図データの維持管理:
社会の状況は、建造物の建設や取り壊し、所有者の移転などによって変動する。これらの変動を反映し、正確性の高い地図を提供するため地図データベース200は、逐次更新される。一般に、社会状況の変動は、地域によって頻繁に生じる場所とそうでない場所とがある。地図データベース200は、各地域を定期的に調査し、その結果を反映させることによって更新することもできるが、変動頻度の地域的な差違に効率的に対応することが好ましい。かかる観点から、本実施例では、先に説明した情報提示システムを用いて更新支援情報を提示させ、データを更新する必要性の高い地域を絞り込むものとした。このように地域を決定した上で、調査、更新を行うことにより、地図データベース200の効率的な維持管理を実現することができる。以下、更新支援情報の提示について説明する。
【0067】
図14は更新支援情報を提示するためのフローチャートである。情報提示装置100が実行する処理である。この処理が開始されると、情報提示装置100は、更新候補地域を入力する(ステップS40)。更新候補地域は、市町村単位、県単位など、まとめて調査する対象とできる広さで適宜設定可能である。ステップS40では、かかる単位で更新候補地域を複数入力する。もちろん、全国を対象としても構わない。
【0068】
情報提示装置100は、次の手順で要更新指標、即ち入力された更新候補地域から更新を行うべき地域を決定するための判断指標を生成する。このため、情報提示装置100は、定期更新スケジュール、電子地図データ、ランドマーク情報を入力する(ステップS42)。定期更新スケジュールとは、各地域について予め設定された定期調査および更新のスケジュールをいい、情報提示装置100に事前に登録されているものとする。ランドマーク情報とは、刊行物の記事等から取得された情報であり、各地域に調査対象とすべき新たな建造物が建設されたことを示す情報である。この情報は、新たな建造物に関する記事が雑誌等の刊行物で紹介された時点で、逐次、情報提示装置100に蓄積されているものとする。
【0069】
情報提示装置100は、これらの3種類の情報に基づいて要更新指標を設定する(ステップS44)。本実施例では、この3種類の情報を用いるものとしたが、いずれか一部のみを用いるものとしても構わない。
【0070】
図15は要更新指標の設定方法を示す説明図である。上述した3種類の情報をそれぞれ所定の関数に基づいて数値化し、その積によって要更新指標を設定した。定期更新スケジュールについては、例えば、次に定期更新が予定されている時期までの待ち時間に応じて指標Cm1を与えることができる。待ち時間が長い程、調査、更新しておく必要性が高いと判断され、指標Cm1の値が大きくなる。
【0071】
地図データベースについては、例えば、正確性の低い要素の数に応じて指標Cm2を与えることができる。正確性の指標は、図12で例示した方法によって設定可能である。正確性指標が所定値以下の要素数が多い程、更新の必要性が高いと判断され、指標Cm2の値が大きくなる。要素数に代えて、地域内の全要素に対する正確性指標の合計値または平均値などを用いることもできる。これらの値を用いる場合には、合計値または平均値が小さい程、正確性が低いと判断され、指標Cm2の値が大きくなる関数を用いることになる。
【0072】
ランドマーク情報については、地域内で新たな建造物の数が多くなる程、更新の必要性が高いと判断され、指標Cm3の値が大きくなる。ランドマークの情報数に代えて、道路、ビル、遊戯施設など建造物の種別、建造物のサイズなどに応じて重み付けした評価値を横軸としてもよい。
【0073】
要更新指標は、こうして設定された指標Cm1、Cm2、Cm3の積によって与えられる。図15の方法は例示に過ぎず、指標Cm1、Cm2、Cm3を与える関数および要更新指標の設定方法は、任意に設定可能である。
【0074】
図14に戻り、更新支援情報提示処理について説明する。情報提示装置100は、全候補地域について、要更新指標の設定を完了すると(ステップS46)、要更新指標別にソートし(ステップS48)、更新支援情報を提示する(ステップS50)。本実施例では、情報提示装置100のディスプレイに表示するものとしたが、データの更新を遠隔で支援するためにクライアントPCに表示可能としても構わない。
【0075】
図16は更新支援情報の出力方法を示す説明図である。表示D1に示すように、更新支援情報は、要更新指標の高い順にリスト形式で出力される。各地域別に、種別、要更新指標、定期更新の予定、低正確性要素の数、新規ランドマークの有無など、更新の必要性を判断するための支援情報が提示される。低正確性の要素数は、星印の数で量子化して示されており、これをマウス等でクリックすることにより、各要素が正確性指標に応じて色分けされた状態で該当地域の地図D2が表示される。この表示は、先に図10、図11で説明した判断指標の出力態様を用いることができる。ランドマークについては、マウス等でクリックすることにより、登録されている記事の概要D3が表示される。更新支援情報は、図16に例示した態様に限られるものではなく、さらに多くの情報を含めても良い。また、表示態様もリスト形式に限らず任意に設定可能であることはいうまでもない。
【0076】
D.効果:
以上で説明した本実施例の情報提示システムによれば、第1にクライアントPCに地図データを提示する際に判断指標データを併せて与えることができる。従って、閲覧者は、提示された地図の正確性について判断することが可能となる。
【0077】
本実施例の情報提示システムによれば、第2に地図データを更新するための支援情報を提示することができる。従って、地図データの正確性が低下した地域など更新の必要性が高い地域のデータを優先的に調査等することができ、正確性の高い地図データを効率的に維持管理することが可能となる。
【0078】
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。以上の実施例で例示した特徴は、その一部を適宜省略して、システムを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例としての電子地図提示システムの構成を示す説明図である。
【図2】地図データベース200の構成を示す説明図である。
【図3】公共施設について属性データとして含め得る内容を例示する説明図である。
【図4】事業施設について属性データとして含め得る内容を例示する説明図である。
【図5】個人住宅について属性データとして含め得る内容を例示する説明図である。
【図6】判断指標データとして含め得る内容を例示する説明図である。
【図7】情報提示処理のフローチャートである。
【図8】判断指標データの第1の出力態様を例示する説明図である。
【図9】判断指標データの第2の出力態様を例示する説明図である。
【図10】判断指標データの第3の出力態様を例示する説明図である。
【図11】第3の出力態様を実現するためのフローチャートである。
【図12】グループ化処理の方法を示す説明図である。
【図13】出力基準時刻を指定した場合の出力態様を例示する説明図である。
【図14】更新支援情報を提示するためのフローチャートである。
【図15】要更新指標の設定方法を示す説明図である。
【図16】更新支援情報の出力方法を示す説明図である。
【符号の説明】
100…情報提示装置
110…コマンド入力部
120…表示制御部
130…データベース管理部
140…要求入力部
150…情報提示部
200…地図データベース
Claims (3)
- 電子地図データを管理する管理装置であって、前記電子地図データを構成する各要素データおよびその属性情報を記憶する要素データ記憶部と、該要素データおよび前記属性情報の少なくとも一部について、情報の正確性を判断する指標となる判断指標データを記憶する判断指標データ記憶部とを備え、
前記判断指標データは、前記要素データおよび前記属性情報の取得方法を示唆する指標である管理装置。 - 電子地図データを提供する情報提供装置であって、請求項1記載の管理装置との間で情報の入出力を行う管理部と、情報提供の要求を入力する要求入力部と、該要求に応じて、前記要素データおよび前記属性情報の少なくとも一部を、前記判断指標データと関連づけて出力する情報提示部とを備え、
前記情報提示部は、前記要素データおよび属性情報を、前記判断指標データに基づいて複数のグループに区分し、各グループを視覚的に区別可能な態様で出力する情報提供装置。 - 電子地図データを提供する情報提供装置であって、請求項1記載の管理装置との間で情報の入出力を行う管理部と、情報提供の要求を入力する要求入力部と、該要求に応じて、前記要素データおよび前記属性情報の少なくとも一部を、前記判断指標データと関連づけて出力する情報提示部とを備え、
前記情報提示部は、出力対象となる前記要素データおよび属性情報の全体について、判断指標データの代表値を出力する情報提供装置。
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