JP5037625B2 - 累進屈折力レンズの製造方法 - Google Patents
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Description
累進屈折力レンズは、それらの屈折面の種類や配置等により分類することができる。
例えば、累進面(累進屈折力を有する曲面。累進屈折面ともいう)を、凸面側に配置した凸面累進屈折力レンズ、凹面側に配置した凹面累進屈折力レンズ、両面に配置した両面累進屈折力レンズ、さらには累進屈折力の要素を縦と横とに分解し、凸面側には縦方向の累進要素、凹面側には横方向の累進要素を有する特殊な非球面を配置した両面複合累進屈折力レンズ等がある。
また、処方度数等の一般的な情報の他に、装用者の眼球からレンズまでの距離やフレームの傾斜角、更には装用者が物を見るときの視線の使い方(クセ)等の情報に対応した個別累進屈折力レンズと呼ばれる種類もある。このように、累進屈折力レンズは様々な設計が展開されており、近年特に多様化が著しい。
また、前記の多様な累進面は、様々な設計思想の下にレンズ設計プログラムが組まれてコンピュータにより設計され、具体的な3次元形状が決定される。それらの3次元形状を加工するのは、通常は数値制御(NC)加工機械と呼ばれる工作機械である。累進面はレンズ素材に直接加工されることもあるが、通常は型、もしくは型を作るための母型に加工され、安定した品質の累進面を有するセミが型により量産される(例えば、特許文献1を参照)。
また、これらのNC加工機械を用いた累進面の加工は、一般的にフリーフォーム加工と呼ばれている(例えば、特許文献3、特許文献4等を参照)。
尚、本件明細書全体において使用している「乱視度数」は、遠用度数での乱視を意味している。
即ち、図11における製造範囲は、
SPH(球面度数)+8.00〜−10.00、
CYL(乱視度数)0.00〜−4.00
(ただし、SPH+CYL≧−10.00)
である。各数値の単位はジオプター(D)であり、製造ピッチは全項目について0.25ジオプターピッチである。従って、図11における、SPHとCYLとの組み合わせは、図11の製造範囲の桝目と同数となり、全部で1105種類となる。尚、CYL=0.00は球面レンズを意味する。
5(BC区分)×12(加入度区分)×2(左眼、右眼区分)=120種類
となり、通常はこれらが全て半完成品(以降、セミフィニッシュドレンズ又はセミともいう)として準備される。
上記「カーブ区分」は、図12及び図13に示すように、上記図11に記載の凸面側のBC区分に対応しており、凹面側の曲面のカーブを表している。また、図12が「ベース方向のカーブ」(即ち凹面側における浅い方のカーブ(D2))、図13が「クロス方向のカーブ」(即ち凸面側における深い方のカーブ(D3))に対応している。尚、上記「ベース方向のカーブ」は、一般にクロスカーブの対語としてベースカーブと呼ばれているが、凸面側のBCとの混同を避けるため、本文ではあえて「ベース方向のカーブ」と呼んで区別する。
SPH=BC−D2・・・・・・・(1)
SPH+CYL=BC−D3・・・(2)
尚、式(2)から式(1)を減ずると、前述の式
CYL=D2−D3・・・(3) となる。
尚、0°の方向は同値の180°と表記されることが多い。また、180°を超え360°までの方向は180°を減じて表現されるのが一般的である。
[特許文献2]特開2003−84244号公報
[特許文献3]WO2005/084885号公報
[特許文献4]特開2006−312233号公報
また、強度の乱視処方の累進屈折力レンズについて、凸面に乱視成分が集中せず、凸面側と凹面側に乱視度数成分が分散されるため、加工性が良くなり、審美性の良好な眼鏡を実現することも可能になる。
本発明では、凸面側をセミとして凹面側を受注加工する従来の方法に対し、凹面側をセミとして凸面側を受注加工するという新しい方法を提供するものである。
尚、本実施形態において、例えば本出願人による従来技術(WO2005/084885)におけるレンズ製造装置を用いることもできる。そのため、本実施形態においては、上記従来技術を用いる場合の実施の形態について説明する。また、本実施形態においては、凸面と凹面とを組み合わせることにより眼鏡装用者の処方値を満足するように設計された累進屈折力レンズについて説明する。
図19は、後述する本実施例における、縦軸SPH、横軸CYLに対する凹面セミ(D2/D3)の区分を示しており、D2のみを記した図17と、D3のみを記した図18とをまとめて表示した図である。従って、図19または図17〜図18を用いることにより、受注した処方度数に対する本実施例の凹面セミを選択することができる。
凹面セミを選択した後、受注した処方度数を満足する凸面の設計に移る。
本実施例の累進屈折力レンズの凸面は、乱視面を基準とした累進屈折面となっている。即ち、本実施例の凸面はベース方向のカーブ(深い方のカーブ。以降、BC2という)とクロス方向のカーブ(浅い方のカーブ。以降、BC3という)の2つの基準カーブを有する累進面となっており、通常の累進面に乱視面を加算したような合成面となっている。ただし、本実施例において、特定の度数範囲(CYL=0.00、−1.00、−2.00、−3.00、−4.00)のみはBC2=BC3となっており、従来と同様な凸面累進面となっている。
図15と図16は、本実施例における、縦軸SPHと横軸CYLに対する凸面側(累進面)のカーブ区分を示しており、図15がベース方向のカーブであるBC2を、また図16がクロス方向のカーブであるBC3の区分を示している。従って、図15と図16を用いることにより、受注した処分度数に対する本実施例の凸面の基準カーブを設計することができる。
SPH=BC2−D2・・・・・・・(4)
SPH+CYL=BC3−D3・・・(5)
式(4)及び式(5)で明らかなように、本実施例のSPH(球面度数)は凸面側のベース方向のカーブBC2と凹面側のベース方向のカーブD2とのカーブ差であり、SPH(球面度数)+CYL(乱視度数)は、凸面側のクロス方向のカーブBC3と凹面側のクロス方向のカーブD3とのカーブ差となっている。
また、式(5)から式(4)を減ずると
CYL=BC3−BC2+D2−D3・・・(6) となる。
即ち、BC3−BC2を凸面側の乱視度数要素と呼び、D2−D3を凹面側の乱視度数要素と呼ぶとき、両面の乱視度数要素の和が処方度数の乱視度数CYLとなる。
このことは、凹面を共通させることで凹面セミの種類を減らそうという本実施例の設計思想の表れである。また、この方法を応用して、例えば本実施例の製造範囲をSPH=+8.25〜+10.00、CYL=+6.25〜+8.00、CYL=0.00〜−4.00の度数範囲の凹面と共通させ、凸面側の曲面については2.00ジオプターだけ深い基準カーブを採用すればよいことになる。即ち、凹面セミの種類を全く増やすことなく、上記の度数範囲まで製造範囲の拡大が可能である。
R=1000(n−1)/Dで表すことができる。
例えば、屈折率が1.600のレンズにおける10.00のカーブの曲率半径は、
R=1000(1.600−1)/10.00=60mmとなる。
ただし、乱視度数成分を凸面側に配置するということは、ベース方向とクロス方向の像倍率に差が生ずるため、光学的には望ましいことではない。しかしながら凸面側に配置する乱視度数成分が1.00ジオプター以下、望ましくは本実施例のごとく0.75ジオプター以下であれば実害は少ないと思われる。
以下に、上記凹面セミ区分と設計コンセプトとの関係について詳細に述べる。
製造されるレンズの度数範囲は設計事項であり、レンズ製造業者の決定により決まる。また、一般的に上記度数範囲が広ければ広いほど上記区分の凹面セミ(D2/D3)の種類が増える。上記区分が密であるほど、光学性能に優れる最適なカーブの組み合わせを作り出すことができるが、設計内容、コスト面及び在庫負担とのバランスにより調整される必要がある。
また、前記の凹面セミを選択した後、凹面セミの凸面側をフリーフォーム加工(以下、FF加工という)することにより、本実施例の凸面側の累進面を仕上げることができる。
前述のごとく、今日の多様な累進面は、様々な設計思想の下にレンズ設計プログラムが組まれてコンピュータにより設計され、具体的な3次元形状が決定される。それらの3次元形状を加工するのは、通常は数値制御(NC)加工機械と呼ばれる工作機械である。
今日の数値制御(NC)の研削・研磨装置は多軸(3軸〜7軸)同時制御ができるほど高性能となっており、種々の複雑な3次元形状の加工にも対応できるようになっている。そのため、本実施例の凸面側の多様な累進面や、それらの累進面と乱視面との合成面といった複雑な形状も凹面セミの凸面側にダイレクトに研削し、研磨して仕上げることが可能である(例えば、前述の従来技術の特許文献及び図2、図4の数値制御(NC)の研削・研磨装置参照)。
切削刃Bは、焼結した多結晶ダイヤモンドや単結晶の天然ダイヤモンドを使用している。
下軸Cは、移動せず、軸回転を行う。上軸Dは、X方向(水平方向)とZ方向(垂直方向)に駆動する。これにより、下軸Cと上軸Dとで、合わせて3軸で加工が制御される。
固定した下軸Cに対して、上軸Dがスライドすることにより、第1のバイトFと第2のバイトHとを切り替えることができる。
さらに、アーム4には、レンズ取付部6と、レンズ取付部6を昇降させる昇降装置11とが設けられている。
レンズ取付部6は、レンズのブランクス5の凹面5aを、レンズ保持体7を介して保持している。
レンズ取付部6の下方には、垂直な軸線Kを中心として首振り旋回運動を行う揺動装置8が設けられている。揺動装置8は、垂直な回転軸21に揺動角度α(例えば、5°)で首振り旋回運動するように傾斜して取り付けられている。回転軸21は装置本体2に配設されている。
揺動装置8の上面に、研磨治具9が着脱自在に設けられている。研磨治具9の表面には、研磨パッド10が着脱自在に取り付けられている。
切削を終えたレンズ5の凸面5bを下にして、レンズ保持体7付きのレンズ5を、アーム4のレンズ取付部6に装着する。また、揺動装置8の上面に、研磨パッド10が取り付けられた研磨治具9を取り付ける。
そして、昇降装置11によってレンズ5を下降させて、凸面5bを研磨パッド10の表面に押し付ける。この状態で研磨剤を研磨パッド10の表面に供給すると共に、アーム4を左右方向や前後方向に往復運動させながら揺動装置を首振り旋回運動させる。これらの運動により、研磨の軌跡が1周ごとにずれる無軌道研磨軌跡でレンズ5の凸面5bを、研磨パッド10及び研磨剤によって研磨する。
図1は、実施形態にかかる眼鏡レンズ製造システムの全体構成を示す図であり、図3はその製造工程のフローを示すものである。
尚、これらの加工は標準的な事例を示すものであるので、詳細な説明は省略し、概略を説明する。
発注元の眼鏡店100は、発注端末101と、フレームを測定するフレーム測定装置102とを備えている。
工場200は、レンズ設計装置201と、加工部202とを備えている。
レンズ設計装置201は、コンピュータ及びその周辺機器等により構成され、コンピュータプログラムにより設計を行うものである。
加工部202は、レンズの加工装置及び加工装置を制御する制御装置等により構成される。
眼鏡店100において、発注端末101で各種のデータを入力することにより、眼鏡レンズの処方情報等の情報が得られるので、この情報を公衆通信回線300を介して工場200へ送ることにより、発注が行われる。
そして、工場200のレンズ設計装置(例えば、メインフレームサーバー)201において、処方情報等の情報を取得されることにより、受注が行われる。
次に、受注したデータ(処方情報等)に適合するように、レンズ設計装置201が眼鏡レンズの加工データを演算する。演算の結果に基づいて、加工用作業指示書を出力する。加工用作業指示書の内容として、加工データがレンズ設計装置201から加工部202に送られる。
次に、凹面のセミフィニッシュレンズブランクス(凹面のみが加工されたプラスチック材料)を選択する。さらに、この選択したブランクスを、ブロックする。即ち、ブランクスを保持材(ブロック)に保持する。
次に、レンズの凸面側について、光学面創成のためのフリーフォーム(研磨も含む)加工を行う。
次に、加工したレンズについて、光学、表面検査を行う。
さらに、染色工程、ハードコート工程、反射防止膜工程、レンズ光学性能検査・外観検査、マーキング、ヤゲン加工工程、の各工程を行う。
これにより、レンズが作製される。
そして、作製したレンズを出荷する。
図6(a)〜(c)は、処方度数がSPH−0.25(D)、CYL−1.75(D)、AXIS 180°、加入度数(ADD)2.00(D)、屈折率ne=1.60のレンズ素材を用いた本発明の実施例1の累進屈折力レンズの光学性能を示す図であり、それぞれ、(a)凸面の表面非点収差分布図、(b)凸面の表面平均屈折力分布図、及び(c)凹面を球面で加工したレンズを通して方眼チャートを眺めたときの歪みを表す概略図である。尚、(a)(b)における各等高線は、0.25Dピッチで描いてある。
図5(a)〜(c)は、従来の凸面累進屈折力レンズの凸面側表面の光学性能を示す図であり、上記図6(a)〜(c)と同様に、それぞれ、(a)凸面の表面非点収差分布図、(b)凸面の表面平均屈折率分布図、及び(c)凹面を球面で加工したレンズを通して方眼チャートを眺めたときの歪みを表す概略図である。
即ち、本実施例の累進屈折力レンズの凸面は、乱視面を基準とした累進屈折面となっているため、表面非点収差分布において従来累進屈折力レンズと大きく異なる結果となっている。
つまり、本実施例の凸面はベース方向のカーブ(深い方のカーブ、以降、BC2という)とクロス方向のカーブ(浅い方のカーブ。以降、BC3という)の2つの基準カーブを有する累進面となっており、通常の累進面に乱視面を加算したような合成面となっているからである。
また、この実施例1の累進屈折力レンズは、図19の凹面セミ設計表に従い、処方度数であるSPH−0.25(D)、CYL−1.75(D)に対応する、D2=6.00,D3=7.00のセミを選択し、更に両面のベース方向を処方値のAXIS=180°と等しく設定して加工されたものである。
ここで、凸面の乱視成分は0.00.0.25,0.50,0.75(D)の4種類、凹面の乱視成分は0.00,1.00,2.00,3.00,4.00(D)の5種類であり、これらの組み合わせでCYL=0.00〜−4.00(D)まで−0.25(D)ピッチの、合計17種類の乱視度数を作り出すことができる。
その結果、図20の桝目の数であるわずか45種類の凹面セミの種類で、図11に示した従来屈折力レンズと同じ製造範囲をまかなうことができる。
本実施例の45種類という数は、前述の従来累進屈折力レンズの凸面セミの種類(120種類)の1/3程度に過ぎず、予め準備しておくセミの種類として非常に少ない数であり、製造上、極めて有利である。
また、凸面と凹面の乱視度数成分の正負を変えて打ち消すように設計すれば、球面度数の累進屈折力レンズとなる。
図7(a)〜(c)、図8(a)〜(c)、図9(a)〜(c)、図10(a)〜(c)は、実施例1と同様に、実施例2〜実施例5の累進屈折力レンズの凸面の表面非点収差分布図、凸面の表面平均屈折力分布図、及び凹面を球面で加工したレンズを通して方眼チャートを眺めたときの歪みを表す概略図であり、処方度数は、それぞれ、
(実施例2)SPH=−1.25、CYL=−0.75、AXIS30°
(実施例3)SPH=−0.25、CYL=−1.75、AXIS60°
(実施例4)SPH=−0.25、CYL=−2.75、AXIS90°
(実施例5)SPH=−1.25、CYL=−0.75、AXIS135°
に対応しており、実施例1と同様に、上記凸面及び凹面の設計区分表では、
(実施例2)BC2=5.75、BC3=5.00、D2=7.00、D3=7.00
(実施例3)BC2=5.75、BC3=5.00、D2=6.00、D3=7.00
(実施例4)BC2=5.75、BC3=5.00、D2=6.00、D3=8.00
(実施例5)BC2=5.75、BC3=5.00、D2=7.00、D3=7.00
である。
更に両面のベース方向(凸面ではBC2、凹面ではD2の方向)は、処方値のAXISと等しく設定するものとする。
図7(a)〜(c)、図8(a)〜(c)、図9(a)〜(c)、図10(a)〜(c)は、実施例1〜実施例5と同様に、実施例6〜実施例9の累進屈折力レンズの凸面の表面非点収差分布図、凸面の表面平均屈折力分布図、及び凹面を球面で加工したレンズを通して方眼チャートを眺めたときの歪みを表す概略図であり、処方度数は、それぞれ、
(実施例6)SPH=+1.25、CYL=−0.75、AXIS30°
(実施例7)SPH=+0.25、CYL=−1.75、AXIS60°
(実施例8)SPH=+0.25、CYL=−2.75、AXIS90°
(実施例9)SPH=+1.25、CYL=−0.75、AXIS135°
に対応しており、実施例1〜実施例5と同様に、上記凸面及び凹面の設計区分表では、
(実施例6)BC2=4.25、BC3=3.50、D2=3.00、D3=3.00
(実施例7)BC2=4.25、BC3=3.50、D2=4.00、D3=5.00
(実施例8)BC2=4.25、BC3=3.50、D2=4.00、D3=6.00
(実施例9)BC2=4.25、BC3=3.50、D2=3.00、D3=3.00
である。
更に両面のベース方向(凸面ではBC2、凹面ではD2の方向)は、処方値のAXISと等しく設定するものとする。
また、これらの本実施例では凹面の乱視成分は処方の乱視成分以下となるように配慮してあるが、処方の乱視成分より0.25(D)大きな乱視成分まで凹面側に許容したとすると、図19の凹面のセミ区分を一列左にシフトさせることにより、凸面側の乱視要素を0.50(D)以下とすることができる。
例えば、処方の乱視成分を表している図19のCYLの欄の値が0.00(D)〜−0.75(D)の範囲における凹面側の乱視成分(D2−D3)は、例外なくD2=D3、即ち0.00(D)となっており、処方の乱視成分(CYLの欄の値)以下となっている。
同様に、CYLの欄の値が−1.00(D)〜−1.75(D)の範囲における凹面側の乱視成分は−1.00(D)、CYLの欄の値が−2.00(D)〜−2.75(D)の範囲における凹面側の乱視成分は−2.00(D)、CYLの欄の値が−3.00(D)〜−3.75(D)の範囲における凹面側の乱視成分は−3.00(D)、CYLの欄の値が−4.00(D)の範囲における凹面側の乱視成分は−4.00(D)となっており、いずれも処方の乱視成分(CYLの欄の値)以下となっていることがわかる。
また、これらのCYLの欄の値と、それに対応する凹面側の乱視成分の値との差異((D2−D3)−CYL)は最大でも0.75(D)となっている。前述したように、凹面側で達成されない乱視成分が凸面側に加算されるため、凸面側の最大の乱視要素は0.75(D)ということになる。
この凸面側の乱視要素を0.50(D)以下とするには、前述のCYLの欄の値と凹面側の乱視成分の値との差異が0.75(D)となっている度数範囲に対し、図19の凹面のセミ区分を一列左にシフトさせて、凹面側の乱視成分の値を1.00(D)増やせばよい。これにより、CYLの欄の値と凹面側の乱視成分の値との差異((D2−D3)−CYL)は0.75(D)−1.00(D)=−0.25(D)に減少する。これは処方の乱視成分より凹面側の乱視成分が0.25(D)大きくなることを意味している。
これらは、いずれの設計も本発明の範疇である。
例えば、凸面の乱視成分を0.75(D)、凹面の乱視成分も0.75(D)にしたとすると、
i)両面の乱視軸を一致させれば乱視成分は加算され、乱視度数は1.50(D)となる。
ii)両面の乱視軸を直交させれば乱視成分は相殺され、乱視度数は0.00(D)となる。
iii)両面の乱視軸の相対的ずれ角を60°とすれば、乱視度数は0.75(D)となる。
このように、両面の乱視軸の相対的ずれ角を適切な値とすることにより、0.00D(相対的ずれ角を90.0°),0.25D(80.4°),0.50D(70.5°),0.75D(60.0°),1.00D(48.2°),1.25D(33.6°),1.50D(0.0°)の7種類の乱視度数を、わずか1種類の凹面セミを用いて作り出すことが可能である。尚、ここで合成された乱視度数の軸方向は、両面の乱視軸の相対的ずれ角(鋭角)の中央の方向である。
尚、凸面の乱視成分と凹面の乱視成分が等しくない場合は上記より計算が多少複雑となるが、2種類の乱視度数を合成する計算技術の応用により算出が可能である。
Claims (3)
- 凸面に累進屈折面を配置し、前記凸面と前記凹面とを組み合わせることにより眼鏡装用者の処方値を満足するように設計された累進屈折力レンズの製造方法において、
前記凹面側を、製造度数範囲の球面度数と乱視度数とに対応し、所定の区分表に基いたセミフィニッシュドレンズ群として予め用意しておき、
受注により、最適なセミフィニッシュドレンズを選択すると共に、凸面側の乱視度数成分と凹面側の乱視度数成分とが合成されて、処方値の乱視度数を満足するように設計し、処方値を満足する凸面側の累進屈折面を設計し、フリーフォーム加工により仕上げる
累進屈折力レンズの製造方法。 - 請求項1に記載の累進屈折力レンズの製造方法において、受注により選択されたセミフィニッシュドレンズの乱視度数成分は、処方値の乱視度数と異なる累進屈折力レンズの製造方法。
- 請求項2に記載の累進屈折力レンズの製造方法において、前記凹面の前記セミフィニッシュドレンズの乱視度数成分と処方値の乱視度数との差異は0.75(D)以下である累進屈折力レンズの製造方法。
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