JP2012215639A - 眼鏡レンズの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】左右レンズの度数差が大きい場合であっても両眼視した際に快適な装用感を得ることができる眼鏡を構成し得る眼鏡レンズを提供すること。
【解決手段】レンズ発注業者からレンズ情報およびレンズ加工指定情報を受注すること、受注したレンズ情報に基づきレンズ基材を選択すること、および、選択したレンズ基材にレンズ加工指定情報に従い加工を施すこと、を含み、前記レンズ加工指定情報には、眼鏡レンズの少なくとも一方の表面の一部を機械加工により切除しプリズム作用を調整するスラブオフ加工領域の位置情報が含まれ、前記スラブオフ加工領域の位置情報は、前記眼鏡レンズを備えた眼鏡を使用するユーザーの嗜好情報および眼球動作情報からなる群から選ばれるユーザー情報に基づき決定され、かつ、前記選択したレンズ基材の指定されたスラブオフ加工領域にスラブオフ加工を施すことを特徴とする、眼鏡レンズの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、眼鏡レンズの製造方法に関するものであり、詳しくは、両眼視した際に快適に装用可能な眼鏡を提供し得る眼鏡レンズの製造方法に関するものである。
多焦点眼鏡レンズには、遠方視のための遠用屈折力を有する遠用部と近方視のための近用屈折力を有する近用部が存在する。この多焦点眼鏡レンズの中で屈折力が上部から下部へ向かって連続的に変化する累進面を有する累進屈折力レンズは、上記遠用部と近用部の間に屈折力が連続的に変化する中間部を有する。また、累進屈折力レンズの中で近年開発された両面非球面型累進屈折力レンズは、レンズ両面に振り分けられた累進要素により遠近両用レンズとしての機能を発揮する眼鏡レンズである。
一般に、眼鏡レンズの処方の中には、上記の遠用部屈折力や近用部屈折力といった焦点作用に関係した屈折力の他に、視線の方向を変化させる作用を有するプリズム屈折力が存在する。多焦点眼鏡レンズを製造する場合は遠用部のプリズム屈折力を決めると、近用部のプリズム屈折力は累進面の形状や遠用部屈折力および加入屈折力によって定まり、また同様の理由から、近用部のプリズム屈折力を決めると遠用部のプリズム屈折力が決まってしまう。したがって遠用部および近用部のプリズム屈折力をそれぞれ自由に選択することは困難である。
しかし、特許文献1等に記載されているように、ほとんどの眼鏡装用者は左右同じ視力ではない。したがって、遠用部または近用部の一方で左右レンズのプリズム量を一致させると他方では左右のレンズのプリズム量に違いが生じることになる。これをプリズム誤差といい、左右の度数に大きな差がある、いわゆる不同視の装用者用の眼鏡レンズではプリズム誤差が極めて大きくなってしまい眼精疲労や頭痛の原因となり、プリズム誤差による左右の眼に入射される光のずれが人間の脳が有像できる限界を超えてしまうと二重像を生じて複視という症状を起こしてしまう。
WO2009/072528
そこで本発明の目的は、左右レンズの度数差が大きい場合であっても両眼視した際に快適な装用感を得ることができる眼鏡を構成し得る眼鏡レンズを提供することにある。
本発明の上記目的は、
レンズ発注業者からレンズ情報およびレンズ加工指定情報を受注すること、
受注したレンズ情報に基づきレンズ基材を選択すること、および、
選択したレンズ基材にレンズ加工指定情報に従い加工を施すこと、
を含み、
前記レンズ加工指定情報には、眼鏡レンズの少なくとも一方の表面の一部を機械加工により切除しプリズム作用を調整するスラブオフ加工領域の位置情報が含まれ、
前記スラブオフ加工領域の位置情報は、前記眼鏡レンズを備えた眼鏡を使用するユーザーの嗜好情報および眼球動作情報からなる群から選ばれるユーザー情報に基づき決定され、かつ、
前記選択したレンズ基材の指定されたスラブオフ加工領域にスラブオフ加工を施すことを特徴とする、眼鏡レンズの製造方法
によって達成された。
上記スラブオフ加工とは、レンズのプリズム作用を調整するためにレンズ表面の一部を切除する加工であり、切除することでプリズム量を低減することができる。左右レンズの少なくとも一方にスラブオフ加工を施すことにより、左右の度数の違いによって両眼視した際に生じる違和感を低減することができる。
従来、多焦点眼鏡レンズに対するスラブオフ加工は、遠用部測定基準点または近用部測定基準点において左右レンズのプリズム量が一致するように光学設計を行った際に、遠用部測定基準点でプリズム量を一致させた際には近用部で、逆の場合には遠用部で生じるプリズム誤差を解消するために、レンズメーターによって測定されるプリズム屈折力に基づき行われていた。
しかし実際に眼鏡レンズ装用時にユーザーが感じる装用感は、同じスラブオフ加工を施したとしても個人個人で異なる。これは、第一には脳の有像機能は人によって異なるためであり、第二には、眼球動作も個人個人で異なるためである。この点について説明すると、眼鏡装用者が視線を動かし眼鏡レンズの面内で上方領域を使用することを上方視、下方領域を使用することを下方視、中間領域を使用することを中間視、中心部から左右どちらかに外れた領域を使用することを側方視と呼ぶが、上方視する傾向が強いユーザーもいれば、下方視、中間視、または側方視する傾向が強いユーザーもいる。このように面内のある領域を使用する傾向が強いユーザー用の眼鏡レンズでは、ユーザーが違和感なく両眼視するためには、装用時に主に使用される領域のプリズム誤差を低減すべきである。また、多焦点眼鏡レンズにおいてユーザーが眼鏡レンズ面内の上方領域(遠用部)を使用し遠方視する際に使用する位置は、遠用部測定基準点と完全に一致するとは限らない。したがって遠用部測定基準点でプリズム量を一致させたとしても、遠方視する際に違和感が生じる場合もある。
以上の点から本発明者は、両眼視した際により良好な装用感を有する眼鏡を提供するためには、スラブオフ加工領域は眼鏡使用者の嗜好や眼球動作傾向に応じて決定すべきであると考えるに至り、上記本発明を完成させた。
本発明によれば、きわめて快適な装用感を有する眼鏡を作製し得る眼鏡レンズを提供することができる。
本発明の眼鏡レンズの製造方法を実施するためのシステムの全体構成図である。 本発明の眼鏡レンズの製造方法の流れを示すフローチャート図である。 本発明の眼鏡レンズの製造方法の流れを示すフローチャート図である。 本発明の眼鏡レンズの製造方法の流れを示すフローチャート図である。 レンズの種類の指定を行うオーダーエントリー画面を示す図である。 スラブオフ加工工程の説明図である。 スラブオフ加工領域の説明図である。 プラスチック製のバイフォーカルレンズの断面形状の具体例を示す。 図8(a)〜(c)に示すバイフォーカルレンズの近用部の光学中心の位置を示す図である。 スラブオフ加工領域の配置例を示す。
本発明の眼鏡レンズの製造方法は、レンズ発注業者からレンズ情報およびレンズ加工指定情報を受注すること、受注したレンズ情報に基づきレンズ基材を選択すること、および、選択したレンズ基材にレンズ加工指定情報に従い加工を施すこと、を含むものであって、前記レンズ加工指定情報には、眼鏡レンズの少なくとも一方の表面の一部を機械加工により切除しプリズム作用を調整するスラブオフ加工領域の位置情報が含まれ、前記スラブオフ加工領域の位置情報は、前記眼鏡レンズを備えた眼鏡を使用するユーザーの嗜好情報および眼球動作情報からなる群から選ばれるユーザー情報に基づき決定され、かつ、前記選択したレンズ基材の指定されたスラブオフ加工領域にスラブオフ加工を施すことを特徴とする。本発明によれば、製造される眼鏡レンズを備えた眼鏡を使用するユーザーの嗜好や眼球動作を考慮したスラブオフ加工がなされるため、両眼視した際の違和感が低減ないし解消された快適な装用感を有する眼鏡を提供することが可能となる。
図1は、本発明の眼鏡レンズの製造方法を実施するためのシステムの全体構成図、図2〜図4は本発明の眼鏡レンズの製造方法の流れを示すフローチャート、図5はレンズの種類の指定を行うオーダーエントリー画面を示す図である。以下、これらの図面に基づいて、本発明について更に詳細に説明する。
図1において、レンズ発注業者である眼鏡店100とレンズ供給業者であるレンズメーカーの工場200とは公衆通信回線300で接続されている。図1では眼鏡店を1つしか示さないが、通常は複数の眼鏡店が工場200に接続される。また、この通信回線は、眼鏡店のほかに、眼科医1001、または個人1002にも接続してもよい。
眼鏡店100には、オンライン用の端末コンピュータ101およびフレーム形状測定器102が設置される。端末コンピュータ101はキーボード入力装置やCRT画面表示装置を備えるとともに、公衆通信回線300に接続されている。公衆通信回線300は、インターネットを利用するものであってもよい。端末コンピュータ101へは、加工に必要な条件データを送信し、フレームデータにおいては、フレームメーカーの型式などの識別番号またはフレーム形状測定器102から眼鏡枠実測値が入力されて演算処理が行われる。キーボード入力装置からその他の眼鏡レンズ情報、処方値等が入力される。
端末コンピュータ101の出力データは、公衆通信回線300を介して工場200のメインフレーム201にオンラインで転送される。端末コンピュータ101とメインフレーム201との間に、中継局を設けてもよい。インターネットを利用する場合はブラウザがその機能を有することとなる。また、端末コンピュータ101の設置場所は眼鏡店100に限定されるものではない。
メインフレーム201は眼鏡レンズ加工設計プログラム、ヤゲン加工設計プログラム等を備え、入力されたデータに基づき、ヤゲン形状を含めたレンズ形状を演算し、その演算結果を、公衆通信回線300を介して端末コンピュータ101に戻して画面表示装置に表示させるとともに、その演算結果を工場200の各端末コンピュータ210,220、230、240、250にLAN202を介して送信する。
端末コンピュータ220には、レンズメーター221と肉厚計222とが接続され、端末コンピュータ220は、レンズメーター221と肉厚計222とで得られた測定値と、メインフレーム201から送られた演算結果とを比較して、曲面仕上げが完了したレンズの受入れ検査を行うとともに、合格レンズには光学中心を示すマーク(3点マーク)を施す。
端末コンピュータ230には、マーカ231と画像処理機232とが接続される。端末コンピュータ230は、メインフレーム201から送られた演算結果に従い、レンズの縁摺りおよびヤゲン加工をする際にレンズをブロック(保持)すべきブロッキング位置を決定し、また、ブロッキング位置マークを施すことに使用される。このブロッキング位置マークに従い、ブロック用の治工具がレンズに固定される。
端末コンピュータ240には、マシニングセンタからなるNC制御のレンズ研削装置241とチャックインタロック242とが接続される。端末コンピュータ240は、メインフレーム201から送られた演算結果に従い、スラブオフ加工、レンズの縁摺り加工およびヤゲン加工を行う。
端末コンピュータ250には、ヤゲン頂点の形状測定器251が接続され、端末コンピュータ250は、この形状測定器251が測定したヤゲン加工済のレンズの形状を、メインフレーム201から送られた演算結果と比較して加工の合否判定を行う。
以上のような構成のシステムにおいて、眼鏡レンズが供給されるまでの処理の流れを、以下、図2〜図5を参照して説明する。なお、この処理の流れには、「問い合わせ」と「注文」との2種類があり、「問い合わせ」は、ヤゲン加工を含めたレンズ加工の完了時のレンズ予想形状を報知するように、眼鏡店100が工場200に求めることであり、また、「注文」は、縁摺り加工前のレンズまたはヤゲン加工済のレンズを送るように、眼鏡店100が工場200に求めることである。
図2は、眼鏡店100での最初の入力処理の流れを示すフローチャートである。図中、Sに続く数字はステップ番号を表す。
〔S1〕スタート操作により、眼鏡店100の端末コンピュータ101のレンズ注文問い合わせ処理プログラムが起動され、オーダーエントリー画面が画面表示装置に表示される。眼鏡店100のオペレータは、オーダーエントリー画面を見ながら、キーボード入力装置により、注文または問い合わせの対象となるレンズの種類の指定を行う。
図5はこのレンズの種類の指定に使用されるオーダーエントリー画面の一例を示す図であり、欄61でレンズの種類を指定する。欄61にはメーカ側の商品区分記号が入力され、これによりレンズ材質、屈折率、コーティング、レンズカラー、レンズ表面の光学設計外径等が指定できるようになっている。問い合わせの場合には2種類のレンズを指定できる。欄65の「形態」で、注文または問い合わせをするレンズが、ヤゲン加工済のレンズ(HELP)であるか、または縁摺り加工とヤゲン加工とが施されないレンズであるかを指定する。また、欄65の「METS加工」で、レンズの厚さを必要最小値になるように指定する加工指定や、マイナスレンズのコバを目立たなくする面取りおよびその部分の研磨仕上げを指定する加工指定を行う。
欄62の右欄に、「加工1」〜「加工3」とある欄には、レンズ加工に関する指定の有無、および指定有りの場合は加工の詳細を入力する。スラブオフ加工に関する指定は、この欄に記載されることになる。レンズ発注業者は、レンズメーカーから納入される眼鏡レンズを使用するユーザーがレンズ面内のどの部分を使用する傾向が強いか(眼球動作情報)をレンズ処方作製の際に確認し、更に必要に応じて、スラブオフ加工が施されたダミーレンズを使用することで、ユーザーがレンズ面内のどの部分にスラブオフ加工が施されている場合に快適な装用感を得ることができるか(嗜好情報)を把握する。この嗜好情報は、ユーザーの脳の有像機能にも依存するものである。ここで得たユーザー情報に基づき、レンズ発注業者は左右どちらのレンズのどの領域にスラブオフ加工を施すかを決定する。なおスラブオフ加工は、左右レンズのどちらか一方のみに施してもよい。また、ユーザーの嗜好や眼球動作傾向によっては、装用時の視線の向きに応じて異なるプリズム作用を与えるために、物体側と眼球側でスラブオフ加工を施す領域の配置を変えることや、同一面上の複数の領域にスラブオフ加工を施すことも可能である。図10にスラブオフ加工領域の配置例(眼鏡レンズの概略断面図;斜線部がスラブオフ加工により切除される領域)を示すが、例えば、眼鏡レンズの下方領域を主に使用する傾向がある装用者用の眼鏡レンズについては、下方領域をスラブオフ加工領域とする図10(a)、(d)の配置が好ましく、逆に上方領域を主に使用する傾向のある装用者用の眼鏡レンズについては、上方領域をスラブオフ加工領域とする図10(b)、(e)の配置が好ましい。また、上方領域、下方領域ともほぼ平等に使用する傾向のある装用者用の眼鏡レンズについては、上方領域、下方領域にスラブオフ加工を施す図10(c)、(f)の配置が好ましい。
なお、図示しないが、図5のオーダーエントリー画面の下部に、ソフトキーメニューが表示される。ここでは、画面に登録したデータを送信するための送信キー、画面入力したデータを登録する登録キー、画面をオーダー画面に切り換えるオーダーキー、クリアキー、頁指定キー、および登録の終了を示す終了キーが表示される。これらのソフトキーは、端末コンピュータ101のキーボード上にあるファンクションキーにより選択指定される。図5では、加工指定を行う部分は3つ(「加工1」〜「加工3」)であるが、加工指定は3つに限定されるものではなく、レンズ厚さ、コバ厚さ、プリズム、偏心、外径、レンズ表カーブ(ベースカーブ)等の各種指定値を入力できる。
〔S2〕図5の欄61で、レンズのカラーの指定を行う。
〔S3〕図5の欄62の左欄で左右眼の球面屈折力、円柱屈折力、乱視軸、加入度等のレンズの処方値を入力し、同様に、欄62の右欄でレンズの加工指定値を、欄63で眼鏡枠(フレーム)の情報を、欄64でレイアウト情報、例えばPD、NPD(近用PD)、SEG(SEGMENT柱位置)、ET(最小コバ厚値)、EP(アイポイント)等、ヤゲンモード、ヤゲン位置を含めたヤゲン形状を入力する。レイアウト情報は、眼鏡枠上の瞳孔位置であるアイポイント位置を指定するものである。
眼鏡枠の情報は、フレーム測定装置のないインターネットでの個人の端末からのオーダーに対応できるように、メーカの商品区分記号(フレーム番号)の入力方式の場合と、直接フレームを測定し、そのデータを入力する場合とが選択できるようになっている。その他、フレームサイズ、フレーム素材、色、形状、玉型種類等のフレーム情報の一切が入力できるようになっており、「問い合わせ」の場合には、ステップS1でのレンズの種類の指定が1種類であれば、眼鏡枠を2種類まで指定することができる。
ヤゲンモードは、レンズコバのどこにヤゲンを立てるかによって、「1:1」、「1:2」、「凸ならい」、「フレームならい」、および「オートヤゲン」のモードがあり、それらの中から選択して入力する。「凸ならい」とは、レンズ表面(前面)に沿ってヤゲンを立てるモードである。
ヤゲン位置の入力は、ヤゲンモードが「凸ならい」、「フレームならい」、および「オートヤゲン」のときに限り有効であり、ヤゲン表面側底の位置をレンズ前面からどれだけ後面方向に位置させるかを指定するもので、0.5mm単位で指定する。眼鏡枠が厚く、枠前面からヤゲン溝までの距離が長い場合でも、このヤゲン位置の入力で、レンズ前面が枠前面に沿う用にヤゲン頂点を位置付けることができる。
ヤゲン形状は、「標準ヤゲン」「コンビ用ヤゲン(コンビネーションフレーム用ヤゲン)」、「溝摺り」、「平摺り」から選択して入力する。「コンビ用ヤゲン」は眼鏡枠に装飾部材が設けられ、レンズが装飾部材に当たるような場合に指定する。「溝摺り」、「平摺り」もここで指定する。
〔S4〕欄63に指定した眼鏡枠に対し、図1のフレーム形状測定機102による眼鏡枠形状の測定が既に完了しているか(形状データを持っているかどうか)否かを判別する。完了していればステップS7へ進み、完了していなければステップS5へ進む。
〔S5〕まず、眼鏡店100の端末コンピュータ101において、レンズ注文問い合わせ処理プログラムからフレーム形状測定プログラムへ処理が渡される。そして、これから形状測定される眼鏡枠に付された測定番号を入力する。また、眼鏡枠の材質(メタル、プラスティック等)を指定し、さらに、フレーム曲げの可不可の指定を行う。眼鏡枠の材質は、レンズを眼鏡枠に枠入れする際に、眼鏡枠にレンズが嵌合するように材質に応じてヤゲン頂点の周長を補正するためのパラメータとしてステップS12の演算に使用される。フレーム曲げが不可の指定がある場合、眼鏡枠を曲げずにレンズを枠入れすることができないときには、注文を受けないようにするため、眼鏡店100の端末コンピュータ101の画面表示装置にエラー表示を出すようにする。
〔S6〕測定すべき眼鏡枠をフレーム形状測定器102に固定して測定を開始する。フレーム形状測定器102は、眼鏡枠の左右枠のヤゲン溝に測定子を接触させ、その測定子を所定点を中心に回転させてヤゲン溝の形状の円筒座標値(Rn,θn,Zn)(n=1,2,・・・,N)を3次元的に検出し、データを端末コンピュータ101に送る。端末コンピュータ101では、場合によっては、それらのデータのスムージングを行い(スムージングを必要としない場合もある)、トーリック面の中心座標(a,b,c)、ベース半径RB、クロス半径RC、トーリック面の回転対称軸方向単位ベクトル(p,q,r)、またはフレームカーブCV(眼鏡枠が球面上にあるとみなせるときのその球面の曲率)、ヤゲン溝の周長FLN、フレームPD(瞳孔間距離)FPD、フレーム鼻幅DBL、眼鏡枠左右および上下の最大幅であるAサイズおよびBサイズ、有効径ED(最大動径の2倍の値)、左右眼鏡枠のなす角度である傾斜角TILTを算出する。
〔S7〕既に眼鏡枠形状データがある場合には、そのデータを読み出すために、眼鏡枠の商品区分番号を入力する。
〔S8〕商品区分番号に従い、該当する眼鏡枠についての記憶された眼鏡枠形状情報をメインフレームのフレームデータの中から読み出す。以上のステップS1〜S8により、眼鏡レンズ情報、眼鏡枠情報、処方値、レイアウト情報、加工指示情報の必要とされる加工条件データが送信される。
〔S9〕図5のオーダーエントリー画面の欄60に、「問い合わせ」か、「注文」かの指定をする。以上のステップの実行によって得られたレンズ情報、処方値、眼鏡枠情報等のデータが、公衆通信回線300を介して工場200のメインフレーム201に送られる。眼鏡枠情報は、2次元の極座標値(Rn,θn)(n=1,2,・・・,N)、トーリック面の中心座標(a,b,c)、ベース半径RB、クロス半径RC、トーリック面の回転対称軸方向単位ベクトル(p,q,r)、またはフレームカーブCV、ヤゲン溝の周長FLN、フレームPD(瞳孔間距離)FPD、フレーム鼻幅DBL、AサイズおよびBサイズ、有効径ED、傾斜角TILT等である。
図3は、工場200での処理の流れ、ならびに工場200からの転送により眼鏡店100で行われる確認およびエラー表示のステップを示すフローチャートである。
〔S11〕工場200のメインフレーム201には、眼鏡レンズ受注システムプログラム、眼鏡レンズ加工設計プログラム、およびヤゲン加工設計プログラムが備えられている。レンズ情報、処方値、眼鏡枠情報、レイアウト情報、ヤゲン情報等の加工条件データが、公衆通信回線300を介して送られると、眼鏡レンズ受注システムプログラムを経て眼鏡レンズ加工設計プログラムが起動し、レンズ加工設計演算が行われる。
まず、眼鏡枠の形状情報、処方値、およびレイアウト情報に基づき、指定レンズの外径が不足していないかを確認する。レンズの外径が不足している場合には、ボクシングシステムでの不足方向、不足量を算出し、眼鏡店100の端末コンピュータ101に表示するために、眼鏡レンズ受注システムプログラムに処理を戻す。
次に、レンズ加工設計を実行する。スラブオフ加工領域の指定を受けたレンズメーカーが、左右レンズの中で指定されたレンズの指定された領域にスラブオフ加工する設計を含む、指定された各種加工に応じた設計を行うことで、縁摺り加工前のレンズの全体形状が決定する。ここで、眼鏡枠各方向の動径毎に全周のコバの厚さを調べて、必要なコバ厚さを下回る箇所がないかを確認する。そして、レンズの加工のために必要となる、工場200の端末コンピュータ210に対する指示値を算出する。
以上の演算は、端末コンピュータ210、荒擦り機211、および砂掛け研磨機212によって、縁摺り加工前のレンズ研磨加工が行われる場合に必要なものであり、算出された種々の値が次のステップに渡される。
〔S12〕次に、メインフレーム201では、眼鏡レンズ受注システムプログラムを経てヤゲン加工設計プログラムが起動し、ヤゲン加工設計演算が行なわれる。ヤゲン加工を行うためにレンズを保持する際に基準となる加工原点および回転軸である加工軸を決め、この加工座標に今までのデータを座標変換する。そして3次元のヤゲン加工の設計演算を行う。
〔S13〕図2のステップS9での指定が「注文」ならばステップS15へ進み、一方、「問い合わせ」ならば、問い合わせの結果を公衆通信回線300を介して眼鏡店100の端末コンピュータ101へ送り、ステップS14へ進む。
〔S14〕ステップS14は、工場200のメインフレーム201から送られてきた問い合わせの結果に基づき、端末コンピュータ101がスラブオフ加工やヤゲン加工完了時のレンズの予想形状を画面表示装置に表示し、変更や確認に供するためにある。眼鏡店100では、この表示画面によりヤゲン形状や再設計のレンズ表面の出っ張り具合やコバ厚さ等の全体を確認して必要に応じて指定変更する。
〔S15〕図2のステップS9での指定が「注文」ならば、このステップを実行し、図3のステップS11およびステップS12での加工設計演算においてエラーが発生したか否かを判別する。エラーが発生していれば、その結果を公衆通信回線300を介して眼鏡店100の端末コンピュータ101へ送り、ステップS17へ進む。一方、エラーが発生していなければ、その結果を公衆通信回線300を介して眼鏡店100の端末コンピュータ101へ送り、ステップS16へ進むとともに、ステップS18以降(図4)に進み、実際の加工を実行する。
〔S16〕眼鏡店100の端末コンピュータ101の画面表示装置に「注文を受け付けた」旨の表示を行う。これにより、眼鏡枠に確実に枠入れ可能な縁摺り加工前またはヤゲン加工後のレンズを発注できたことが確認できる。
〔S17〕注文のレンズがレンズ加工設計演算またはヤゲン加工設計演算においてエラーが発生していて加工のできないレンズである場合には、「注文を受け付けられない」旨の表示を行う。
図4は、工場200で行われるレンズ裏面の研磨加工、レンズの縁摺り加工、およびヤゲン加工等の実際の工程を示すフローチャートである。
〔S18〕ステップS9で「注文」が指定されていて、しかもレンズまたはヤゲンの加工設計演算においてエラーが発生していなかった場合は、このステップが実行される。すなわち、予め、ステップS11でのレンズ加工設計演算結果が図1の端末コンピュータ210に送られており、荒擦り機211と砂掛け研磨機212とにより、送られた演算結果に従い、レンズ裏面の曲面仕上げを行う。さらに、図示がない装置により、染色や表面処理が行われ、縁摺り加工前までの加工が行われる。なお、在庫レンズが指定されたときは、このステップはスキップされる。
スラブオフ加工が指定されている場合には、指定された位置にスラブオフ加工を行う。スラブオフ加工は、レンズ裏面の曲面仕上げを行い両面が光学面となったフィニッシュドレンズに行う場合もあり、光学面創成前であり片面が非光学面であるセミフィニッシュドレンズの光学面に行う場合もある。
以下、スラブオフ加工について図面を参照し説明する。
図6は、バイフォーカルレンズ(セミフィニッシュドレンズ)の光学面にスラブオフ加工を行う工程の説明図である。図6(a)に示す被加工レンズは、台玉レンズに小玉レンズが埋め込まれたバイフォーカルレンズであって、小玉レンズによって近用部が形成されている。このような構成のバイフォーカルレンズでは、近方視する場合、台玉レンズの光学中心よりも8〜10mm程度下方の領域を使用することとなり、レンズ度数の強弱によって近用部にプリズムが発生する。左右レンズの度数差が1.00D以下であればプリズムも1△以内であり両眼視時に装用感を損なうことはないが、1.5D以上も差がつくとプリズムによる左右のアンバランスが顕著となる。この場合、少なくとも左右どちらかのレンズの一部を切除すること(スラブオフ加工)で左右レンズのプリズム作用を調整し両眼視時の装用感を改善することができる。具体的には、図6(b)に示すように被加工面の形状を転写した面形状を有するダミーレンズを被加工面に貼り合わせる。次いで、図6(c)に示すように、切除すべき領域(スラブオフ加工領域)をダミーレンズごと機械加工により除去する。この切除すべき領域は、上記の通りユーザーの嗜好情報および眼球動作情報からなる群から選ばれるユーザー情報に基づき決定されたものである。
上記ダミーレンズを使用する方法は、球面に対してスラブオフ加工を行うために好適な方法であるが、この方法により累進面や累進要素を含む非球面のような球面以外のレンズ表面に対してスラブオフ加工を行うことは困難である。これは、上記のような複雑な面形状を有する被加工面を転写した面形状を有するダミーレンズを作製することが困難だからである。一方で本発明では、ユーザーの嗜好や眼球動作傾向に基づき定められた任意の位置にスラブオフ加工を施すため、球面以外にスラブオフ加工を行うことが求められる場合もある。そのような場合には、以下の本発明者によって見出された方法を用いることが好ましい。以下の方法は、ダミーレンズの作製が不要であり上記方法と比べて簡便であり、また所望の位置にスラブオフ加工を施すことが容易であるため、本発明において好適に使用される方法である。
図7左図は、物体側が凸面、眼球側が凹面の累進屈折力レンズ(フィニッシュドレンズ)の断面図であり、光学中心の下方に近用部が配置されている。図7右図は上記凹面の平面図である。この凹面において、近用部より上の領域(実線より上の領域)を機械加工により所定量切除することで遠方視の縦方向のプリズム差を低減することができる。この場合、図7右図の斜線部が未切除領域とすべき領域となるため、当該領域を被膜により被覆する。被膜は、無機材料や金属材料を蒸着、スパッタ等の公知の成膜法によって堆積させることにより形成してもよく、ディップ法、スピンコート法、スプレーコート法等の公知の塗布法によって被膜形成用塗布液を塗布することにより形成してもよい。例えば、未被覆とすべき領域をマスキングテープで保護した状態でレンズ全面に被膜形成処理を施し、該処理後にマスキングテープを除去することで、所望領域に被膜を形成することができる。被膜形成の容易性の観点からは、塗布法を用いることが好ましい。塗布液としては、熱硬化性成分または光硬化性成分を含む組成物(硬化性組成物)を用いることができ、塗布後に所定の硬化処理(加熱または光照射)を行うことでレンズ表面の所望の位置に硬化被膜を形成することができる。短時間での硬化処理が可能である点で、紫外線硬化性組成物等の光硬化性組成物を用いることが好ましい。このような硬化性組成物は、公知の方法で調製可能であり、また一般に眼鏡レンズのハードコート用塗料として市販されているものを何ら制限なく用いることができる。または、マスキングテープを被膜として用いることも可能である。マスキングテープとしては、支持体フィルムの一方または両方の面に接着層または粘着層を有する市販の保護テープ等を使用することができる。被膜の厚さは特に限定されるものではなく、例えば10〜50μm程度とすることができる。被膜の厚さは、成膜条件や塗布条件によって制御することができる。また、上記のマスキングテープを用いる態様では、総厚が所望の厚さとなるよう必要に応じて複数枚のマスキングテープを積層してもよい。
一方、プラスチック製のバイフォーカルレンズは、少なくとも一方の面の一部に突出部(近用部)を設けることにより、遠用部と近用部とを持たせている。このようなバイフォーカルレンズの断面形状の具体例を、図8に示す。図8(a)は、遠用部、近用部共に+の屈折力、図8(b)は遠用部が−の屈折力、近用部が+の屈折力、図8(c)は、遠用部、近用部共に−の屈折力のレンズである。図8中、Aは遠用部の光学中心、Bは近用部の幾何中心であり、それぞれの場合の近用部の光学中心は、それぞれ図9(a)〜(c)に示すように、AとBの間、Bより下側、Aより上側の位置で、遠用部と近用部の屈折力差(加入度数)に応じて移動する。
このように一部に突出部を有する凸面に対して従来の方法でスラブオフ加工を施す場合には、ダミーレンズの凹面に上記突出部と嵌合する凹部を形成することとなるが、このような面形状のダミーレンズを作製することは困難であるため、従来はスラブオフ加工を行う面は凹面とせざるを得なかった。これに対し本発明によれば、例えば図8(a)〜(c)に示す断面形状を有するバイフォーカルレンズにおいて、凸面の突出部を含む下方領域(図9(a)〜(c)中、点線以下の領域)を被膜で覆い、突出部より上の領域を未被覆とした状態でスラブオフ加工を行うことで、凸面の突出部より上の領域においてプリズム作用を調整することができる。
上記のように、ダミーレンズによらず、被加工表面において切除すべき領域を未被覆とし、未切除とすべき領域を被膜により被覆した状態で機械加工を行うことで、複雑な形状の表面においてスラブオフ加工を行うことが可能となる。
上記被膜を形成した後に未被覆領域を切除するための機械加工は、通常のスラブオフ加工と同様に、研削加工、切削加工等により行うことができる。ここで機械加工に使用する治具は、被膜に接触してもかまわない。被膜によって保護されているため、被膜下の領域は未切除領域となる。また、ダミーレンズを使用するスラブオフ加工を行った後には、図6(c)に示すように、切除すべき領域(スラブオフ加工領域)をダミーレンズごと機械加工により除去する。
一般的なスラブオフ加工では、カーブジェネレーターにより被切除領域を球面研削または研削する。その後、機械加工面を鏡面研磨することで、プリズム作用の調整がなされた光学面を有する眼鏡レンズを得ることができる。研磨加工はスラブオフ加工が施された切除領域の機械加工による粗さを解消するための工程であるため、少なくとも切除領域に対して行われる。ただし、研磨治具は切除領域以外の部分に接触してもかまわない。上記研磨加工は、被膜またはダミーレンズをつけた状態で行ってもよく、除去した後に行ってもよい。また、被膜またはダミーレンズをつけた状態での研磨を行った後、被膜またはダミーレンズを除去して表面全体に研磨を行うことも可能である。被膜の除去は、溶剤による拭き取り等の公知の方法で行うことができる。また、マスキングテープを被膜として用いた場合には、レンズ上からテープを剥離すればよい。その後、洗浄工程等の後工程を任意に行うことで、一方の光学面がスラブオフ加工された眼鏡レンズが得られる。スラブオフ加工は、レンズの片面のみに施してもよく、ユーザーの装用感を改善できるのであれば両面に施してもよい。両面に施す場合には、引き続き、上記と同様の加工を他方の面に施すことで、物体側光学面、眼球側光学面ともスラブオフ加工された眼鏡レンズを得ることができる。両面にスラブオフ加工を施すことで、プリズム作用の調整機能を両面に分散させることができるため、片面のみにスラブオフ加工を行う場合と比べて一方の面での切除量を低減することができる。スラブオフ加工において、例えば物体側と眼球側での切除量を50:50に配分することができ、または眼球側の切除量を多く、物体側の切除量を少なく配分することも、その逆に配分することもできる。なお、スラブオフ加工された領域(切除領域)は、切除領域と未切除領域との境界(一般に、「スラブオフライン」と呼ばれる。)の存在により、またはプリズム屈折力の測定により、容易に確認することができる。
〔S19〕ステップS18の実行で縁摺り加工前まで加工された眼鏡レンズに対して光学性能、外観性能の品質検査を行う。この検査には、図1の端末コンピュータ220、レンズメータ221、肉厚計222が利用され、光学中心を示す3点マークが施される。なお、縁摺り加工前までのレンズを眼鏡店100から注文された場合には、上記品質検査を行った後、そのレンズを眼鏡店100へ出荷する。
〔S20〕ステップS12で演算された結果に基づき、図1の端末コンピュータ230、マーカ231、画像処理機232等により、レンズ保持用のブロック治工具をレンズの所定の位置に固定する。
〔S21〕ブロック治工具に固定されたレンズを、図1のレンズ研削装置241に装着する。そして、レンズ研削装置241に装着された状態でのレンズの位置(傾斜)を把握するために、予め指定された、レンズ表面または裏面の少なくとも3点の位置を測定する。ここで得られた測定値は、ステップS22で演算データとして使用されるために記憶される。
〔S22〕図1のメインフレーム201がステップS12のヤゲン加工設計演算と同様の演算を行う。ただし、実際の加工では、計算上で把握したレンズの位置と実際のレンズの位置とに誤差が生じる場合があるので、加工座標への座標変換が終了した時点で、この誤差の補正を行う。他はステップS12のヤゲン加工設計演算と同様の演算を行い、最終的な3次元ヤゲン先端形状を算出する。そして、この算出された3次元ヤゲン先端形状を基に、所定の半径の砥石で研削加工する際の加工座標上の3次元加工軌跡データを算出する。
〔S23〕ステップS22で算出された加工軌跡データが端末コンピュータ240を介してNC制御のレンズ研削装置241に送られる。レンズ研削装置241は、Y軸方向(スピンドル軸方向に垂直方向)に移動制御されてレンズの縁摺りやヤゲン加工を行う研削用の回転砥石を有し、また、レンズを固定するブロック治工具の回転角制御(スピンドル軸回転方向)と、Z軸方向(スピンドル軸方向)に砥石またはレンズを移動制御してヤゲン加工を行うZ軸制御との、少なくとも3軸制御が可能なNC制御の研削装置であり、送られたデータに従い、レンズの縁摺りおよびヤゲン加工を行う。
〔S24、S25〕ヤゲン加工完了のレンズのヤゲン位置を含むヤゲン形状を、ステップS12で演算された結果に基づいて作成された加工指示書に打ち出されているヤゲン位置の図面と比較してヤゲンの品質を検査する。また、縁摺り加工によってレンズに傷、バリ、欠け等が発生していないかの外観検査を行う。
〔S26〕以上のようにして出来上がったヤゲン加工上がりレンズを眼鏡店100へ出荷する。
レンズを供給された眼鏡店100では、左右レンズをフレームに枠入れしてユーザーへ眼鏡を提供する。こうして提供された眼鏡は、ユーザーの眼球動作傾向や嗜好に基づく位置にスラブオフ加工がなされているため、左右レンズの度数が大きく異なる場合でも、快適に装用することができる。
以下、前述の被膜を用いる方法により、レンズ発注業者から指定された領域にスラブオフ加工を行った例を示す。
[例1]
物体側が凸面、眼球側が凹面の両面非球面型累進屈折力レンズ(フィニッシュドレンズ)の凹面、凸面に以下の手順でスラブオフ加工を施した。
上記凹面の光学中心から3mm下方の領域の全面に、図7右図に示すように市販の保護テープ(厚さ20μm)を粘着層を介して貼り付けた後、3次元NC制御を行うカーブジェネレータによって切削加工を施した。これにより保護テープによって被覆されていない遠用部側の領域が球面切削された。保護テープを貼り付けた状態で切削加工に引き続き鏡面研磨加工を行った後、保護テープを剥離した。
その後、凸面の光学中心から3mm下方の領域の全面に、上記市販の保護テープを貼り付け、以降、上記と同様の操作を行った。凹面側と凸面側の切除量は50:50に配分した。
これにより、凹凸両面の上方領域にスラブオフ加工が施された両面非球面型累進屈折力レンズが得られた。
[例2]
以下の方法で被膜を形成した点を除き例1と同様の操作を行いスラブオフ加工済眼鏡レンズを得た。
眼鏡レンズの凹面の光学中心から3mm下方の領域を除く領域に、実施例1で使用した保護テープを貼り付けた。次いで、上記凹面全面にスピンコート法により硬化後の厚さが10μm程度となる塗布量で市販のアクリル系UV硬化型樹脂を塗布した後、UV硬化処理を施し硬化膜を形成した。その後、マスキングテープを該テープ上に形成された硬化膜とともに除去した。これにより、光学中心から3mm下方の領域を厚さ約10μmの硬化膜により被覆することができた。凹面の加工後、凸面についても同様に被膜を形成した。
[例3]
図8(a)に示す断面形状を有するプラスチック製のバイフォーカルレンズの凸面の突出部を含む下方領域(図9(a)中の点線以下の領域)に例1で使用した保護テープを貼り付け、以降実施例1と同様の操作を行った。
その後、凹面側にも同様に下方領域に保護テープを貼り付け、以降例1と同様の操作を行った。
これにより、凹凸両面の上方領域にスラブオフ加工が施されたバイフォーカルレンズが得られた。
[例4]
物体側表面(凸面)が球面であり眼球側表面(凹面)が累進面である内面累進屈折力レンズの凹面および凸面に対して例1と同様の操作を行った。
これにより、凹凸両面の上方領域にスラブオフ加工が施された内面累進屈折力レンズが得られた。
[例5]
凸面側にスラブオフ加工を施さなかった点を除き、例1と同様の操作を行った。これにより、凹面のみ上方領域にスラブオフ加工が施された両面非球面型累進屈折力レンズが得られた。
例1〜5について、スラブオフ加工前後の遠用部測定基準点におけるプリズム屈折力をレンズメーターにより測定し、スラブオフ加工によりプリズム屈折力が低下したことを確認した。
本発明は、眼鏡レンズの製造分野に有用である。

Claims (2)

  1. レンズ発注業者からレンズ情報およびレンズ加工指定情報を受注すること、
    受注したレンズ情報に基づきレンズ基材を選択すること、および、
    選択したレンズ基材にレンズ加工指定情報に従い加工を施すこと、
    を含み、
    前記レンズ加工指定情報には、眼鏡レンズの少なくとも一方の表面の一部を機械加工により切除しプリズム作用を調整するスラブオフ加工領域の位置情報が含まれ、
    前記スラブオフ加工領域の位置情報は、前記眼鏡レンズを備えた眼鏡を使用するユーザーの嗜好情報および眼球動作情報からなる群から選ばれるユーザー情報に基づき決定され、かつ、
    前記選択したレンズ基材の指定されたスラブオフ加工領域にスラブオフ加工を施すことを特徴とする、眼鏡レンズの製造方法。
  2. 前記スラブオフ加工を、レンズ基材表面において切除すべき領域を未被覆とし、未切除とすべき領域を被膜により被覆した状態で行う請求項1に記載の眼鏡レンズの製造方法。
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