JP2012215640A - 眼鏡レンズの製造方法 - Google Patents

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【課題】各種形状のレンズ表面に対してスラブオフ加工を容易に行うための手段を提供すること。
【解決手段】眼鏡レンズの少なくとも一方の表面の一部を機械加工により切除しプリズム作用を調整するスラブオフ加工を行うことを含み、前記スラブオフ加工を、前記表面において、切除すべき領域を未被覆とし、未切除とすべき領域を被膜により被覆した状態で行うことを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、眼鏡レンズの製造方法に関するものであり、詳しくは、プリズム作用の調整がなされ装用感が改善された眼鏡レンズの製造方法に関するものである。
多焦点眼鏡レンズには、遠方視のための遠用屈折力を有する遠用部と近方視のための近用屈折力を有する近用部が存在する。また、多焦点眼鏡レンズの中で屈折力が上部から下部へ向かって連続的に変化する累進面を有する累進屈折力レンズは、上記遠用部と近用部の間に屈折力が連続的に変化する中間部を有する。
一般に、眼鏡レンズの処方の中には、上記の遠用部屈折力や近用部屈折力といった焦点作用に関係した屈折力の他に、視線の方向を変化させる作用を有するプリズム屈折力が存在する。多焦点眼鏡レンズを製造する場合は遠用部のプリズム屈折力を決めると、近用部のプリズム屈折力は累進面の形状や遠用部屈折力および加入屈折力によって定まり、また同様の理由から、近用部のプリズム屈折力を決めると遠用部のプリズム屈折力が決まってしまう。したがって遠用部および近用部のプリズム屈折力をそれぞれ自由に選択することは困難である。
しかし、ほとんどの眼鏡装用者は左右同じ視力ではない。したがって、遠用部または近用部の一方で左右レンズのプリズム量を一致させると他方では左右のレンズのプリズム量に違いが生じることになる。これをプリズム誤差といい、左右の度数に大きな差がある、いわゆる不同視の装用者用の眼鏡レンズではプリズム誤差が極めて大きくなってしまい眼精疲労や頭痛の原因となり、プリズム誤差による左右の眼に入射される光のずれが人間の脳が有像できる限界を超えてしまうと二重像を生じて複視という症状を起こしてしまう。
上記現象の発生を抑制する手段としては、例えば特許文献1に記載されているように、従来よりスラブオフ加工が知られている。
WO2009/072528
上記スラブオフ加工とは、レンズのプリズム作用を調整するためにレンズ表面の一部を切除する加工であり、切除することでプリズム量を低減することができる。以下、図4に基づき、一般的なスラブオフ加工の工程について説明する。
図4は、バイフォーカルレンズ(セミフィニッシュドレンズ)の光学面にスラブオフ加工を行う工程の説明図である。図4(a)に示す被加工レンズは、台玉レンズに小玉レンズが埋め込まれたバイフォーカルレンズであって、小玉レンズによって近用部が形成されている。このような構成のバイフォーカルレンズでは、近方視する場合、台玉レンズの光学中心よりも8〜10mm程度下方の領域を使用することとなり、レンズ度数の強弱によって近用部にプリズムが発生する。左右レンズの度数差が1.00D以下であればプリズムも1△以内であり両眼視時に装用感を損なうことはないが、1.5D以上も差がつくとプリズムによる左右のアンバランスが顕著となる。この場合、少なくとも左右どちらかのレンズの一部を切除すること(スラブオフ加工)で左右レンズのプリズム作用を調整し両眼視時の装用感を改善することができる。具体的には、図4(b)に示すように被加工面の形状を転写した面形状を有するダミーレンズを被加工面に貼り合わせる。次いで、図4(c)に示すように、切除すべき領域(スラブオフ加工領域)をダミーレンズごと研削等の機械加工により除去する。図4ではセミフィニッシュドレンズを加工する例を示しているが、セミフィニッシュドレンズの非光学面(図4では凹面)に光学面を創成する機械加工(研削または切削、およびその後の研磨加工)は、通常スラブオフ加工後に残ったダミーレンズを除去する前に行われる。こうして光学面が創成されたレンズは図4(d)に示す状態となり、この状態のレンズからダミーレンズを除去することでスラブオフ加工がなされた眼鏡レンズ(図4(e))が得られる。
以上説明した従来のスラブオフ加工では、例えば被加工面が凸面である場合には、該凸面形状を転写した面形状の凹面を有するダミーレンズを作製し、このダミーレンズの凹面を被加工面(凸面)と嵌合させる。被加工面が球面であれば、これを転写した面形状(即ち球面)をダミーレンズに形成することは容易である。しかし累進屈折力レンズのように面内で曲率の異なる複雑な形状の光学面を有する眼鏡レンズについて、該光学面を転写した面形状を有するダミーレンズを作製することは困難であり、仮に作製できたとしてもレンズ処方に応じた様々な面形状に対応するダミーレンズをそれぞれ用意しなければならず製造コスト増の原因となる。また、バイフォーカルレンズの中でプラスチック製のバイフォーカルレンズは凸面側(物体側)に小玉を突出させることで近用部と遠用部を持たせているため、凸面側の面形状に対応するダミーレンズを作製することは難しく、したがって従来は凹面側にスラブオフ加工せざるを得なかった。
そこで本発明の目的は、各種形状のレンズ表面に対してスラブオフ加工を容易に行うための手段を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成するためにダミーレンズを使用することなくスラブオフ加工を行う手段を見出すべく鋭意検討を重ねた。その結果、樹脂コーティングやマスキングテープ等の被膜により未切除領域を覆い、切除領域を未被覆としてスラブオフ加工を行うことで、累進要素を含む自由曲面や突出部を有するバイフォーカルレンズ表面等の様々な形状のレンズ表面に対してスラブオフ加工を容易に行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記目的は、下記手段により達成された。
[1]眼鏡レンズの少なくとも一方の表面の一部を機械加工により切除しプリズム作用を調整するスラブオフ加工を行うことを含み、
前記スラブオフ加工を、前記表面において、切除すべき領域を未被覆とし、未切除とすべき領域を被膜により被覆した状態で行うことを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
[2]前記被膜を、未切除とすべき領域上に光硬化性組成物を塗布し、該組成物を光照射により硬化させることで形成する[1]に記載の眼鏡レンズの製造方法。
[3]前記被膜としてマスキングテープを未切除とすべき領域上に貼り付けることで、該領域を被覆する[1]に記載の眼鏡レンズの製造方法。
[4]前記スラブオフ加工を施す表面は累進屈折力レンズの累進面である[1]〜[3]のいずれかに記載の眼鏡レンズの製造方法。
[5]前記スラブオフ加工を施す表面はバイフォーカルレンズの突出部を有する凸面である[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、累進屈折力レンズ、バイフォーカルレンズ等の各種眼鏡レンズに対してスラブオフ加工を容易に行うことが可能となる。
スラブオフ加工領域の説明図である。 プラスチック製のバイフォーカルレンズの断面形状の具体例を示す。 図2(a)〜(c)に示すバイフォーカルレンズの近用部の光学中心の位置を示す図である。 従来のスラブオフ加工工程の説明図である。
本発明は、眼鏡レンズの少なくとも一方の表面の一部を機械加工により切除しプリズム作用を調整するスラブオフ加工を行うことを含む眼鏡レンズの製造方法に関する。本発明の眼鏡レンズの製造方法は、前記スラブオフ加工を、前記表面において、切除すべき領域を未被覆とし、未切除とすべき領域を被膜により被覆した状態で行う。
以下、本発明の眼鏡レンズの製造方法について、更に詳細に説明する。
本発明においてスラブオフ加工が施される眼鏡レンズは、両面光学面であるフィニッシュドレンズであっても、一方の面が光学面であり他方の面が非光学面であって受注を受けた後にユーザーのニーズに応じて所望の光学特性を有する光学面が創成されるセミフィニッシュドレンズであってもよい。また、スラブオフ加工が施される表面の形状は、平面、凸面、凹面等の任意の形状であることができる。前記した累進屈折力レンズとは、遠用部および近用部を有し、かつ遠用部から近用部にかけて屈折力が累進的に変化する累進面を有するレンズである。累進屈折力レンズには、凸面に累進面を配置した凸面(外面)累進屈折力レンズ、凹面に累進面を配置した凹面(内面)累進屈折力レンズがある。凸面累進屈折力レンズは、凸面に累進面を有し、凸面の光学面表面形状により累進屈折力を形成している。凹面屈折力レンズも凹凸の違いを除けば同様である。先に説明したように、従来のスラブオフ加工では、球面レンズに対応する面形状を有するダミーレンズを作製することは容易であるが、上記累進屈折力レンズのように累進要素を含む自由曲面を有する複雑な面形状に対応するダミーレンズを作製することは困難である。また、仮に作製できたとしてもレンズ処方に応じた様々な面形状に対応するダミーレンズをそれぞれ用意する必要があり、これがスラブオフ加工レンズの価格増の原因となっていた。
これに対し本発明では、ダミーレンズによらずスラブオフ加工を行う。後述するように被膜は光硬化型樹脂やマスキングテープ等により形成することができるため、複雑な面形状の表面に対応させることは容易である。したがって本発明によれば累進要素を含む自由曲面に対してスラブオフ加工を容易に行うことができる。また、バイフォーカルレンズの中でプラスチック製のバイフォーカルレンズは凸面側(物体側)に小玉を突出させることで近用部と遠用部を持たせているため、凸面側の面形状に対応するダミーレンズを作製することは難しく、したがって従来は凹面側にスラブオフ加工せざるを得なかった。これに対し本発明によれば、突出部を有する凸面に対して被膜を形成することでスラブオフ加工を容易に行うことができる。このように、本発明によれば、様々な面形状のレンズ表面に対してスラブオフ加工を行いプリズム作用を調整することができる。スラブオフ加工を施す眼鏡レンズの素材は、特に限定されるものではなく、プラスチック、無機ガラス等の通常眼鏡レンズの素材として使用される各種材料を挙げることができる。
図1左図は、物体側が凸面、眼球側が凹面の累進屈折力レンズ(フィニッシュドレンズ)の断面図であり、光学中心の下方に近用部が配置されている。図1右図は上記凹面の平面図である。この凹面において、近用部より上の領域(実線より上の領域)を機械加工により所定量切除することで遠方視の縦方向のプリズム差を低減することができる。この場合、図1右図の斜線部が未切除領域とすべき領域となるため、本発明では当該領域を被膜により被覆する。被膜は、無機材料や金属材料を蒸着、スパッタ等の公知の成膜法によって堆積させることにより形成してもよく、ディップ法、スピンコート法、スプレーコート法等の公知の塗布法によって被膜形成用塗布液を塗布することにより形成してもよい。例えば、未被覆とすべき領域をマスキングテープで保護した状態でレンズ全面に被膜形成処理を施し、該処理後にマスキングテープを除去することで、所望領域に被膜を形成することができる。被膜形成の容易性の観点からは、塗布法を用いることが好ましい。塗布液としては、熱硬化性成分または光硬化性成分を含む組成物(硬化性組成物)を用いることができ、塗布後に所定の硬化処理(加熱または光照射)を行うことでレンズ表面の所望の位置に硬化被膜を形成することができる。短時間での硬化処理が可能である点で、紫外線硬化性組成物等の光硬化性組成物を用いることが好ましい。このような硬化性組成物は、公知の方法で調製可能であり、また一般に眼鏡レンズのハードコート用塗料として市販されているものを何ら制限なく用いることができる。または、マスキングテープを被膜として用いることも可能である。マスキングテープとしては、支持体フィルムの一方または両方の面に接着層または粘着層を有する市販の保護テープ等を使用することができる。被膜の厚さは特に限定されるものではなく、例えば10〜50μm程度とすることができる。被膜の厚さは、成膜条件や塗布条件によって制御することができる。また、上記のマスキングテープを用いる態様では、総厚が所望の厚さとなるよう必要に応じて複数枚のマスキングテープを積層してもよい。
一方、プラスチック製のバイフォーカルレンズは、上記の通り通常、少なくとも一方の面の一部に突出部(近用部)を設けることにより、遠用部と近用部とを持たせている。このようなバイフォーカルレンズの断面形状の具体例を、図2に示す。図2(a)は、遠用部、近用部共に+の屈折力、図2(b)は遠用部が−の屈折力、近用部が+の屈折力、図2(c)は、遠用部、近用部共に−の屈折力のレンズである。図2中、Aは遠用部の光学中心、Bは近用部の幾何中心であり、それぞれの場合の近用部の光学中心は、それぞれ図3(a)〜(c)に示すように、AとBの間、Bより下側、Aより上側の位置で、遠用部と近用部の屈折力差(加入度数)に応じて移動する。
このように一部に突出部を有する凸面に対して従来の方法でスラブオフ加工を施す場合には、ダミーレンズの凹面に上記突出部と嵌合する凹部を形成することとなるが、このような面形状のダミーレンズを作製することは困難であるため、従来はスラブオフ加工を行う面は凹面とせざるを得なかった。これに対し本発明によれば、例えば図2(a)〜(c)に示す断面形状を有するバイフォーカルレンズにおいて、凸面の突出部を含む下方領域(図3(a)〜(c)中、点線以下の領域)を被膜で覆い、突出部より上の領域を未被覆とした状態でスラブオフ加工を行うことで、凸面の突出部より上の領域においてプリズム作用を調整することができる。即ち、本発明によれば突出部を有する凸面に対してもスラブオフ加工を行うことができる。
上記被膜を形成した後に未被覆領域を切除するための機械加工は、通常のスラブオフ加工と同様に、研削加工、切削加工等により行うことができる。ここで機械加工に使用する治具は、被膜に接触してもかまわない。被膜によって保護されているため、被膜下の領域は未切除領域となる。一般的なスラブオフ加工では、カーブジェネレーターにより被切除領域を球面研削または研削する。その後、機械加工面を鏡面研磨することで、プリズム作用の調整がなされた光学面を有する眼鏡レンズを得ることができる。上記研磨加工は、被膜をつけた状態で行ってもよく、被膜を除去した後に行ってもよい。また、被膜またはダミーレンズをつけた状態での研磨を行った後、被膜またはダミーレンズを除去して表面全体に研磨を行うことも可能である。被膜の除去は、溶剤による拭き取り等の公知の方法で行うことができる。また、マスキングテープを被膜として用いた場合には、レンズ上からテープを剥離すればよい。その後、セミフィニッシュドレンズについては、スラブオフ加工後に他方の面(非光学面)を光学面に創成するための加工を行うことで、両面が光学面に仕上げられた眼鏡レンズを得ることができる。この場合の被膜の除去は、上記光学面の創成前に行ってもよく、創成後に行ってもよい。
以上説明した本発明によれば、各種形状のレンズ表面に対してスラブオフ加工を容易に施すことができ、これにより優れた装用感を有する累進屈折力レンズ、バイフォーカルレンズ等を提供することが可能となる。
以下、本発明を実施例により更に説明する。ただし本発明は、実施例に示す態様に限定されるものではない。
[実施例1]
物体側が凸面、眼球側が凹面の累進屈折力レンズ(フィニッシュドレンズ)の凹面に以下の手順でスラブオフ加工を施した。
上記凹面の光学中心から3mm下方の領域の全面に、図1右図に示すように市販の保護テープ(厚さ10μm)を粘着層を介して貼り付けた後、3次元NC制御を行うカーブジェネレータによって切削加工を施した。これにより保護テープによって被覆されていない遠用部側の領域が球面切削された。保護テープを貼り付けた状態で切削加工に引き続き鏡面研磨加工を行った後、保護テープを剥離した。
[実施例2]
2枚の保護テープを積層して総厚20μmの被膜を形成した点を除き実施例1と同様の操作を行った。
[実施例3]
3枚の保護テープを積層して総厚30μmの被膜を形成した点を除き実施例1と同様の操作を行った。
[実施例4]
以下の方法で被膜を形成した点を除き実施例1と同様の操作を行いスラブオフ加工済眼鏡レンズを得た。
眼鏡レンズの凹面の光学中心から3mm下方の領域を除く領域に、実施例1で使用した保護テープを貼り付けた後、上記凹面全面にスピンコート法により硬化後の厚さが10μm程度となる塗布量で市販のアクリル系UV硬化型樹脂を塗布した後、UV硬化処理を施し硬化膜を形成した。その後、マスキングテープを該テープ上に形成された硬化膜とともに除去した。これにより、光学中心から3mm下方の領域を厚さ約10μmの硬化膜により被覆することができた。
[実施例5]
図2(a)に示す断面形状を有するプラスチック製のバイフォーカルレンズの凸面の突出部を含む下方領域(図3(a)中の点線以下の領域)に実施例1で使用した保護テープを貼り付け、以降実施例1と同様の操作を行った。
実施例1〜5について、スラブオフ加工前後の遠用部測定基準点におけるプリズム屈折力をレンズメーターにより測定し、スラブオフ加工によりプリズム屈折力が低下したことを確認した。また、実施例1〜3ではマスキングテープの積層枚数を変えることで被膜の膜厚を変えたが、被膜の膜厚が厚くなるほどスラブオフ加工領域と未加工領域の境界線(一般に「スラブオフライン」と呼ばれる。)は目視で鮮明に視認されるようになった。この点について詳細に説明すると、実施例1〜3で得られた眼鏡レンズをそれぞれ蛍光灯下で装用したところ、実施例1の眼鏡レンズでは、装用時に他者からスラブオフラインの存在が確認できないほどスラブオフラインの視認性はきわめて低かった。これに対して実施例2で得られた眼鏡レンズでは、装用時に他者がスラブオフラインの存在を確認することはできなかったが、装用者にはスラブオフラインの存在が確認される程度までスラブオフラインの視認性が高まった。実施例3で得られた眼鏡レンズについては、装用者、他者ともにスラブオフラインの存在が確認された。
前述の特許文献1では、スラブオフラインは近用部と遠用部の境目が目立たない点を利点とする累進屈折力レンズでは望ましくないとされているが、装用者によってはスラブオフラインが鮮明に視認できることを好むこともある。なぜなら、スラブオフラインが鮮明に視認できればスラブオフ加工された領域を容易に判別できるため、スラブオフラインを目印として視線を動かすことで、レンズ面内で良好な装用感が得られる領域を直ちに選択することができるためである。一方で、特許文献1に記載されているように外観上の観点からスラブオフラインが明確に視認されないことが好まれる場合もある。即ち、スラブオフ加工により生じるスラブオフラインの視認性は、装用者の好みに応じて選択できることが望ましい。実施例1〜3で実証されたように、本発明によれば被膜の膜厚によりスラブオフラインの視認性を制御することができるため、装用者の好みに応じた外観を有するスラブオフ加工済レンズを提供することができる。この点も本発明の利点の1つである。したがって本発明では、装用者の嗜好、即ちプリズム作用調整のために切除する領域と未切除領域との境界線(スラブオフライン)の所望の視認性に応じて、未切除領域に形成する被膜の厚さを決定することも好ましい。
実施例1〜3の眼鏡レンズについて、スラブオフ加工を施した凹面全面の表面形状を触針式(プローブを用いる非接触式)の表面形状計測機(パナソニック社製商品名UA−3P)を使用して計測した。なお、ここでは上記表面形状計測機を使用したが、原子間力顕微鏡等の手法を用いて表面形状を計測することもできる。実施例1、2については、得られた計測データに基づいてスラブオフ加工を施した面を一次微分可能な関数で近似することができたが、実施例3では曲線近似となり直線近似することはできなかった。
以上の結果から、スラブオフラインを含む領域が一次微分可能な表面形状を有する眼鏡レンズは、スラブオフラインが容易に視認されないレンズであることが示された。また、実施例1について得られた一次微分値(勾配)は0.4以下、実施例2について得られた一次微分値(勾配)は0.4超0.7未満であったことから、下記水準を、スラブオフラインの視認性の指標とすることも可能であることが確認された。例えば、下記水準と被膜の厚さとの相関関係をデータベース化することにより、所望の視認性でスラブオフラインが確認される(または確認されない)眼鏡レンズを迅速に供給することが可能となる。
[水準1]触針式(プローブを用いる非接触式)の表面形状計測機を使用して計測された表面形状測定値の一次微分値(勾配)が0.4以下:スラブオフラインが自身にも他者にも視認されない。
[水準2]上記形状測定値の一次微分値(勾配)が0.4超0.7未満:スラブオフラインが他者には視認されないが、自身はスラブオフラインの存在を確認可能。
[水準3]上記形状測定値の一次微分値(勾配)が0.7以上:水準2よりもスラブオフラインの視認性が高い。
[水準4]上記形状測定値が一次微分不可:スラブオフラインが自身にも他者にも容易に視認される。
上記の通りスラブオフラインの視認性はスラブオフ加工後の表面形状と相関する。したがって、眼鏡の受注を受けた後に所望の視認性を示すスラブオフラインを有するスラブオフ加工済レンズを迅速に供給するために、スラブオフ加工後の表面形状と被膜の膜厚、およびスラブオフラインの視認性の対応関係に関するデータベースを作成しておき、このデータベースに基づき未切除領域に形成する被膜の厚さを決定することも好ましい対応である。
以上の結果から、本発明によれば累進屈折力レンズの累進面やバイフォーカルレンズの突出部を有する凸面に対してスラブオフ加工を行いプリズム作用を調整できることが示された。
本発明は、眼鏡レンズの製造分野に有用である。

Claims (5)

  1. 眼鏡レンズの少なくとも一方の表面の一部を機械加工により切除しプリズム作用を調整するスラブオフ加工を行うことを含み、
    前記スラブオフ加工を、前記表面において、切除すべき領域を未被覆とし、未切除とすべき領域を被膜により被覆した状態で行うことを特徴とする眼鏡レンズの製造方法。
  2. 前記被膜を、未切除とすべき領域上に光硬化性組成物を塗布し、該組成物を光照射により硬化させることで形成する請求項1に記載の眼鏡レンズの製造方法。
  3. 前記被膜としてマスキングテープを未切除とすべき領域上に貼り付けることで、該領域を被覆する請求項1に記載の眼鏡レンズの製造方法。
  4. 前記スラブオフ加工を施す表面は累進屈折力レンズの累進面である請求項1〜3のいずれか1項に記載の眼鏡レンズの製造方法。
  5. 前記スラブオフ加工を施す表面はバイフォーカルレンズの突出部を有する凸面である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
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