JP5036298B2 - フルオレン系化合物 - Google Patents

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本発明は、フルオレン系化合物、特に、新規なフルオレン系化合物に関する。
半導体集積回路、特に、超LSIの製造においては、高密度化および高集積化を達成するための高度な微細加工技術が要求されており、この微細加工技術に適用可能な高解像度のレジストの開発が進められている。
例えば、特許文献1には、アルカリ水溶液に可溶な樹脂、酸発生剤および酸で分解する基を少なくとも二つ有する化合物を含むポジ型感光性組成物が記載されている。また、特許文献2には、アルカリ親和性官能基の一部を酸解離性基で保護したアルカリ可溶性樹脂、感放射線性酸発生剤および低分子フェノール性化合物の水素原子をアルコキシアルキル基またはt−アルコキシカルボニルアルキル基で置換した化合物を含む感放射線性樹脂組成物が記載されている。
特開平6−51519号公報 実開平6−167811号公報
上記各特許文献に記載の組成物は、KrFエキシマーレーザー、ArFエキシマーレーザーおよびFエキシマーレーザーなどの短波長の露光源に対する感度を高めて高解像度のレジストを実現しようとしているが、これらにより形成されるレジストはいずれも高分子膜、すなわち、高分子の集合体である。高分子は、重合度に分布を持ち、分子量が一定ではないため、その膜は、たとえ短波長の露光源に対する感度が高められた組成物に由来のものであったとしても、露光部と未露光部との境界域において生成状態が不安定に若しくは不均一になりやすく、本質的な高解像度化を達成する上で障害がある。すなわち、本質的に高解像度のレジストを実現するためには、感光性組成物の感度を高めるだけでは不十分であり、レジストを分子レベルで改善する必要がある。
本発明の目的は、例えばレジストとして利用可能な低分子膜を形成することができる新規なフルオレン系化合物を提供することにある。
本発明のフルオレン系化合物は、下記の一般式(1)で表されるものである。一般式(1)において、Rは水素原子またはハロゲン原子を示す。ハロゲン原子は、例えばフッ素である。
本発明に係るフルオレン系化合物の製造方法は、上記一般式(1)で表されるフルオレン形化合物の製造方法に関するものであり、この製造方法は、下記の一般式(2)で示されるフルオレン系誘導体と、サリチルアルデヒドとを反応させる工程を含んでいる。一般式(2)において、Rは一般式(1)と同じである。
本発明の膜形成用塗料は、上記一般式(1)で表されるフルオレン系化合物と、当該フルオレン系化合物を溶解した溶媒とを含んでいる。ここで用いられる溶媒は、例えば、シクロヘキサンである。
本発明に係る膜形成方法は、基材の表面に膜を形成するための方法であり、上記一般式(1)で表されるフルオレン系化合物と、当該フルオレン系化合物を溶解した溶媒とを含む塗料を調製する工程と、基材に当該塗料を塗布する工程とを含んでいる。
本発明の分子集合体は、上記一般式(1)で表されるフルオレン系化合物が分子間力により配列して膜を形成しているものである。
本発明は、例えばレジストとして利用可能な低分子膜を形成することができる新規なフルオレン系化合物を提供することができる。
また、本発明の製造方法によると、本発明に係る新規なフルオレン系化合物を製造することができる。
さらに、本発明の膜形成用塗料および膜形成方法は、本発明に係る新規なフルオレン系化合物を溶媒に溶解して用いているため、当該フルオレン系化合物が分子間力により配列した分子集合体の膜を形成することができる。
本発明のフルオレン系化合物は、下記の一般式(1)で表わされるものである。一般式(1)において、Rは水素原子または塩素、臭素、ヨウ素若しくはフッ素などのハロゲン原子を示す。Rがハロゲン原子の場合、フッ素が好ましい。
このフルオレン系化合物は、室温付近(15〜30℃)および大気圧付近(1,000〜2,000hPa)において、黄色を呈する化合物である。
このフルオレン系化合物は、下記の一般式(2)で示されるフルオレン系誘導体に対し、下記の式(3)で示されるサリチルアルデヒドを反応させることで製造することができる。ここでは、上記フルオレン系誘導体とサリチルアルデヒドとの間で脱水反応が進行し、目的のフルオレン系化合物が得られる。
一般式(2)において、Rは、一般式(1)と同じである。一般式(2)で示される化合物は、公知のものであって市販されており、容易に入手することができる。
上記フルオレン系誘導体に対するサリチルアルデヒドの使用割合は、少なくとも2倍モルに設定するのが好ましく、2.5倍モル以上に設定するのがより好ましい。
また、上記フルオレン系誘導体とサリチルアルデヒドとは、通常、溶媒中で反応させるのが好ましい。この場合に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールおよびブタノールなどのアルコール類、アセチルアセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン並びにトルエンなどを挙げることができる。また、この反応時には、30〜80℃に加熱するのが好ましいが、通常は溶媒の還流温度に設定するのが好ましい。
本発明のフルオレン系化合物は、−160〜−170℃付近の極低温下若しくは5,000〜6,000hPa付近の圧力環境下において水素原子の結合位置が変わり、下記の一般式(1a)で表される異性体、すなわち互変体に変化し得る。一般式(1a)において、Rは一般式(1)と同じである。この互変体は、無色である。また、この互変体は、室温付近若しくは大気圧付近の環境下に置くと、再度一般式(1)で表されるフルオレン系化合物に変化する。
したがって、本発明のフルオレン系化合物は、温度変化により黄色と無色との間で可逆的に変色するサーモクロミズム、および、圧力変化により黄色と無色との間で可逆的に変色するピエゾクロミズムを示すことから、温度センサー用材料若しくは圧力センサー用材料としての利用を図ることができる。
また、本発明のフルオレン系化合物は、膜形成用塗料の成膜用材料として用いることができる。本発明のフルオレン系化合物を用いた膜形成用塗料は、上記一般式(1)で表される本発明のフルオレン系化合物と、当該フルオレン系化合物を溶解した溶媒とを含んでいる。ここで、本発明のフルオレン系化合物は、二種以上のものが併用されてもよい。
ここで用いられる溶媒は、本発明のフルオレン系化合物を溶解可能であり、かつ、室温で若しくは加熱により容易に揮散し得るものであり、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、乳酸エチルおよびジアセトアルコール等のレジスト溶解用溶媒類並びにテトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン並びにメタノールやエタノール等のアルコール類などの汎用溶媒類を挙げることができる。
この膜形成用塗料は、上述の溶媒中に本発明のフルオレン系化合物を添加、撹拌して溶解することで、容易に調製することができる。膜形成用塗料における本発明のフルオレン系化合物の使用量は、通常、1〜50重量%になるよう設定するのが好ましく、10〜30重量%になるよう設定するのがより好ましい。フルオレン系化合物の使用量が1重量%未満の場合は、目的の膜が形成されにくくなる可能性がある。逆に、50重量%を超えると、目的の膜が不均一な厚さの厚膜になる可能性がある。
この膜形成用塗料を用いて膜を形成する際は、基材に対して膜形成用塗料を塗料を塗布し、溶媒を揮散させる。これにより、基材の表面において、本発明のフルオレン系化合物による膜、特に薄膜が形成される。基材に対する膜形成用塗料の塗布方法は、特に限定されるものではなく、刷毛塗り法、スプレー法、スピンコート法、キャスト法などの各種の方法を採用することができる。但し、スピンコート法が特に好ましい。また、基材に塗布された膜形成用塗料は、そのまま放置して自然に溶媒を揮散させてもよいし、送風または加熱により強制的に溶媒を揮散させてもよい。
なお、膜形成用塗料を適用可能な基材は、特に限定されるものではないが、例えば、半導体集積回路の製造において用いられるシリコンウエハー、石英ガラスおよび金属板などである。
上述の膜形成用塗料により基材上に形成される膜は、本発明のフルオレン系化合物が平面的に組織したものである。すなわち、この膜は、フルオレン系化合物、すなわち分子量が定まった低分子化合物が水素結合やファンデアワールス力などの分子間力により分子間で緩やかな結合を形成しながら配列して集合した低分子膜であり、分子集合体である。したがって、この膜は、高分子材料を用いて形成される膜においては困難な微細な成膜状態の制御が可能である。具体的には、この膜は、分子量が一定の低分子化合物であるフルオレン系化合物の分子単位で微細な成膜状態の制御ができるため、半導体集積回路、特に、超LSIの製造時の微細加工技術において要望されている高解像度のレジストとして有用である。
実施例1
9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン0.69g(2mmol)とサリチルアルデヒド0.48g(4mmol)とをエタノール30ミリリットル中に添加し、溶液を得た。この溶液をエタノールの還流温度まで加熱し、溶液が透明になるまで反応を継続したところ、溶液中に黄色の固形物が析出した。そして、溶液を室温まで冷却して吸引ろ過により黄色の固形物を採取し、この固形物を水およびエタノールを用いてこの順で洗浄した。この固形物を40℃で一晩真空乾燥し、1.16gの黄色粉末を得た。
この黄色粉末について、マススペクトルを測定した結果を図1に示す。また、この黄色粉末の単結晶をX線回折法により20℃で構造解析した結果を図2に示す。さらに、この黄色粉末の単結晶をX線回折法により−160℃で構造解析した結果を図3に示す。
マススペクトルおよび構造解析の結果、得られた黄色粉末は、室温(20℃)において、一般式(1)のRが水素原子である9,9−ビス(4−サリチリデンアミノフェニル)フルオレンであることが判明した。また、この化合物は、図3から、−160℃では一般式(1a)のRが水素原子である互変体に変化していることが確認された。因みに、黄色粉末の単結晶は、X線回折法の適用時に−160℃に冷却したところ、無色に変色していることが確認された。
実施例2
9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン1.54g(4mmol)とサリチルアルデヒド0.97g(8mmol)とをエタノール50ミリリットル中に添加し、溶液を得た。この溶液をエタノールの還流温度まで加熱し、30分間還流したところ、溶液中に黄色の固形物が析出した。そして、溶液を室温まで冷却して吸引ろ過により黄色の固形物を採取し、この固形物を水およびエタノールを用いてこの順で洗浄した。この固形物を40℃で一晩真空乾燥し、2.51gの黄色粉末を得た。
この黄色粉末の単結晶をX線回折法により−160℃で構造解析した結果を図4に示す。構造解析の結果、得られた黄色粉末は、−160℃において一般式(1a)のRがフッ素原子である構造を有する化合物であることが確認され、室温(20℃)においては一般式(1)のRがフッ素原子である9,9−ビス(4−サリチリデンアミノ−3−フルオロフェニル)フルオレンであることが判明した。また、この黄色粉末は、X線回折法の適用時に−160℃に冷却したところ、無色に変色していることが確認された。
実施例3
実施例1で得られた9,9−ビス(4−サリチリデンアミノフェニル)フルオレンを濃度が15重量%になるようシクロヘキサンに溶解し、膜形成用塗料を得た。この膜形成用塗料をシリコンウエハー上に回転塗布機(スピンコーター)を用いて1,000rpmの回転速度で20秒間塗布した後、110℃のホットプレート上で1分間プレベークした。この結果、シリコンウエハー上に薄膜が形成された。この薄膜の原子間力顕微鏡(AFM)写真を図5に示す。
図5によると、この薄膜は、滑らかで緻密であり、超LSIの製造時のレジストとして用いられた場合に市販のレジストよりも格段に優れた解像度を実現することができる。
実施例1で得られた黄色粉末についてのマススペクトルの測定結果を示す図。 実施例1で得られた黄色粉末の単結晶を20℃でX線回折法により構造解析した結果を示す図。 実施例1で得られた黄色粉末の単結晶を−160℃でX線回折法により構造解析した結果を示す図。 実施例2で得られた黄色粉末の単結晶を−160℃でX線回折法により構造解析した結果を示す図。 実施例3で得られた膜形成用塗料により形成された薄膜の原子間力顕微鏡写真。

Claims (7)

  1. 下記の一般式(1)で表されるフルオレン系化合物。
    (一般式(1)において、Rは水素原子またはハロゲン原子を示す。)
  2. 前記ハロゲン原子がフッ素である、請求項1に記載のフルオレン系化合物。
  3. 下記の一般式(2)で示されるフルオレン系誘導体と、サリチルアルデヒドとを反応させる工程を含む、
    下記の一般式(1)で表されるフルオレン系化合物の製造方法。
    (一般式(1)および(2)において、Rは水素原子またはハロゲン原子を示す。)
  4. 下記の一般式(1)で表されるフルオレン系化合物と、
    前記フルオレン系化合物を溶解した溶媒と、
    を含む膜形成用塗料。
    (一般式(1)において、Rは水素原子またはハロゲン原子を示す。)
  5. 前記溶媒がシクロヘキサンである、請求項4に記載の膜形成用塗料。
  6. 基材の表面に膜を形成する方法であって、
    下記の一般式(1)で表されるフルオレン系化合物と、前記フルオレン系化合物を溶解した溶媒とを含む塗料を調製する工程と、
    前記基材に前記塗料を塗布する工程と、
    を含む膜形成方法。
    (一般式(1)において、Rは水素原子またはハロゲン原子を示す。)
  7. 下記の一般式(1)で表されるフルオレン系化合物が分子間力により配列して膜を形成している、
    分子集合体。
    (一般式(1)において、Rは水素原子またはハロゲン原子を示す。)
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