JP5034645B2 - 発停レバー、発停レバーを備えたクロノグラフ付き時計 - Google Patents
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Description
このようなクロノグラフ輪列を備えた時計において、駆動源に連結された基本時計輪列側から、動力が垂直クラッチによってクロノグラフ輪列側に伝達される時計が知られている(例えば、特許文献1参照)。
これにより、クロノグラフ計測時には、秒クロノグラフ車は、クラッチばねに付勢されたクラッチ板が四番車に面接触することにより当該四番車から摩擦力を受けて回動し、秒を積算する。また、秒クロノグラフ車の回動により、クロノグラフ輪列が駆動し、クロノグラフ輪列を構成する分クロノグラフ車も回動されて分を積算する(クロノグラフ計測時)。以下は、秒クロノグラフ車の動きに着目して説明する。
また、クラッチ板と発停レバーとの摩擦力が高いと、秒復針レバーがハートカムを圧接するのに必要な力(帰零力)も高くなるため、リセットボタンの押し操作に必要なボタンクリック力も高くなる。
そのため、垂直クラッチを備えた従来の時計では、クラッチばねの弾性力を下げた場合、その分、秒クロノグラフ針の大きさや形状、重量を、ハートカムとのバランスが取れるように調整しなければならず、デザイン上の制約となっていた。また、設計が煩雑となっていた。
少なくともクラッチ板との接触部分に形成された硬質炭素層と、少なくとも前記硬質炭素層が形成された部分以外の部分に形成されたニッケル硬化層とを備え、
前記ニッケル硬化層は、無電解ニッケルメッキ層が熱処理されることにより形成されており、前記クラッチ板との接触面には油が注油されいることを特徴とする。
そして、クラッチばねの弾性力を下げることなく、ボタンクリック力を適正化できるので、クラッチ板と基本時計輪列を構成する歯車との摩擦力を維持できる。従って、本発明の発停レバーをクロノグラフ付時計に用いれば、クロノグラフ車に取り付けられたクロノグラフ針の衝撃時における針飛びを抑制できる。なお、ここで、クロノグラフ針とは、時間を積算表示する指針のことをいう。
また、針飛びを抑制できるので、クロノグラフ針のデザイン状の制約を小さくでき、時計のデザイン面および品質面を向上できる。
そのうえ、硬質炭素層は、経年変化による初期摩擦係数の低下がほとんど見られないので、硬質炭素層が形成された発停レバーのクラッチ板との接触部分の摩擦係数を、長年に亘って低い状態のまま維持することができ、発停レバーの長寿命化を図ることができる。
また、本発明によれば、発停レバーの表面には、ニッケル硬化層と硬質炭素層とが形成されている。すなわち、発停レバーの製造時に、まず、発停レバーの表面に無電解ニッケルメッキ層を形成し、この後に、硬質炭素層を形成すれば、硬質炭素層の形成と同時に、当該硬質炭素層の形成時の熱により無電解ニッケルメッキ層を熱処理してニッケル硬化層とすることができる。よって、無電解ニッケルメッキ層を熱処理するための工程を別途行わなくてもニッケル硬化層を確実に形成でき、発停レバーの製造時間を短縮できるとともに、製造コストを低減できる。
そのうえ、ニッケル硬化層は、少なくとも硬質炭素層が形成された部分(少なくともクラッチ板との接触部分)以外の部分、すなわち、例えば、発停レバーの側面等に形成されているので、発停レバーの強度および耐久性をさらに向上できる。
本発明によれば、無電解ニッケルメッキ層を発停レバーの基材の全面に形成することが可能なので、無電解ニッケルメッキ層の形成時に、硬質炭素層を形成する部分にマスク等を付けることを不要にでき、無電解ニッケルメッキ層の形成を容易にできる。
本発明によれば、プラズマDVD法、イオン化蒸着法、アークプラズマ法等などの一般的な方法を用いて、発停レバーの上面に一度の工程で硬質炭素層を形成することができるので、一度の工程で、硬質炭素層をクラッチ板との接触面を含む広い面に形成することができ、コストを抑えながら、発停レバーの強度および耐久性を向上できる。
本発明によれば、発停レバーの基材の表面全体にニッケル硬化層が形成されているので、クラッチ板との接触面のみならず、側面等の応力が強くかかる部分の耐久性をも向上させることができ、製品の耐久年数を飛躍的に向上させることができる。
本発明によれば、前述の発停レバーと同様の構成の発停レバーを備えているので、前述と同様の効果を奏することができる。
図1は、本実施形態の時計の基本時計輪列102の調速機構を示す構成図、図2は、クロノグラフ輪列202,203を示す平面図である。なお、以下において、「クロノグラフ(CHRONOGRAPH)」を「CG」と略す場合がある。
クロノグラフ付電子制御式機械時計は、図1および図2に示すように、通常時刻を示す指針101(秒針、分針、および時針)を有する基本時計輪列102と、クロノグラフ時間(積算時間)を示す図示しない秒CG針(秒クロノグラフ針、以下略。)および分CG針を有する第1クロノグラフ輪列202と、図示しない時CG針を有する第2クロノグラフ輪列203とを備えて構成されている。また、時計は、クロノグラフ計測(秒,分,時CG針による時間の積算表示)をスタートまたはストップさせる第1の外部操作ボタンとしてのスタート/ストップボタン301と、秒,分,時CG針を帰零させてクロノグラフ計測をリセットする第2の外部操作ボタンとしてのリセットボタン401とを備えている。
まず、基本時計輪列102の調速機構を説明する。
基本時計輪列102は、図1に示すように、駆動源であるぜんまい103を有する香箱車112(一番車:図2参照)および図示しない二番車〜六番車を備えて構成されており、六番車は発電機104のロータと噛み合っている。基本時計輪列102は、ぜんまい103のほどける力によって回転する香箱車112により回転駆動され、香箱車112の回転を約27万倍に増速して発電機104のロータに伝達する。
発振回路108は、時間標準源である水晶振動子111を用いて発振信号(32768Hz)を出力し、この発振信号を所定の分周回路で分周し、基準信号fsとしてブレーキ制御回路110に出力する。
回転検出回路109は、発電機104から出力される発電波形からロータの回転速度を検出し、その回転検出信号FGをブレーキ制御回路110へ出力する。
次に、クロノグラフ輪列202,203について説明する。
本実施形態のクロノグラフ輪列は、図2に示すように、秒CG車204および分CG車206を有する第1クロノグラフ輪列202と、時CG車232を有する第2クロノグラフ輪列203とから構成されている。これら第1クロノグラフ輪列202および第2クロノグラフ輪列203は、伝達経路は異なるが、共に基本時計輪列102から動力が伝達されて回転駆動される。
第1クロノグラフ輪列202は、図2に示すように、秒CG車204、分CG中間車205、および分CG車206を備えて構成されている。秒CG車204は、詳しくは後述するが、スタート/ストップボタン301の押し操作によるクロノグラフ計測時は、基本時計輪列102を構成し1分間に1回転する四番車113(図3参照)から動力が伝達されて1分間に1回転し、自身が保持する秒CG針により秒を積算表示する。秒CG車204は、分CG中間車205のスリープ状の歯車205Aと噛み合う分CG送り爪207を備えており、秒CG車204の回転は、分CG中間車205を経て分CG車206へ、当該分CG車206を30分間に1回転させるように減速されて伝達される。そして、分CG車206に保持された分CG針により分が積算表示される。なお、秒CG車204、分CG車206、および後述する時CG車232は、図2において、反時計方向に回転する。
また、ストップ時におけるリセットボタン401の押し操作によるリセット時(帰零時)には、秒CGハートカム209が後述する秒時CG復針レバー424によって圧接されて強制回動されることにより、秒CG針が0秒位置まで回動(帰零)する。また、分CGハートカム211が分CG復針レバー418によって圧接されて強制回動されることにより、分CG針が0分位置まで回動(帰零)する。
第2クロノグラフ輪列203は、図2に示すように、第一時CG中間車230、第二時CG中間車231、および時CG車232を備えて構成されている。第一時CG中間車230は、軸230Aの文字板側に設けられて香箱車112と噛み合う第1の歯車233と、軸230Aの裏蓋側に設けられて第二時CG中間車231の歯車231Bと噛み合う第2の歯車234とを備えて構成され、香箱車112の回転を第二時CG中間車231へ伝達する。
これら第一時CG中間車230および第二時CG中間車231により、香箱車112の回転は、時CG車232へ、当該時CG車232を12時間で1回転させるように減速されて伝達される。そして、時CG車232に保持された時CG針により時が積算表示される。
ストップ時には、時CG歯車238の側面が、時CG規制ばね316によって付勢された図示しない時CG規制レバーにより押圧されることにより、時CG車軸235の回転が止められ、クロノグラフ計測がストップする。また、時CG歯車238と噛み合う第二時CG中間車231のかな231Cが固定されるため、かな231Cと一体の第二時CG中間車231の軸231Aも固定され、香箱車112から回転が伝達される第二時CG中間車231の歯車231Bは、軸231Aに対してスリップしながら回転する。
リセット時には、時CGハートカム236が秒時CG復針レバー424によって圧接され、図示しない時CG規制レバーによって固定されている時CG歯車238に対して強制回動されることにより、時CG針が0時位置まで回動(帰零)する。
続いて、秒CG車204および発停レバー302,309について説明する。秒CG車204から説明する。
図3は、クロノグラフ計測時の秒CG車204の状態を示す斜視図、図4は、ストップ時およびリセット時の秒CG車204の状態を示す斜視図である。
秒CG車204は、図3に示すように、秒CG車軸208と、秒CGハートカム209と、秒CGバランサー217と、分CG送り爪207(図2参照)と、秒CG車軸208から径方向外側に突出する図示しない鍔部と、クラッチばね218と、クラッチ板としてのクラッチリング222とを備えて構成されている。
クラッチリング222は、筒状の大径部223と、大径部223の下部に形成された筒状の小径部224とを備えて構成されている。大径部223は、外径が下方に向かうに従って細くなる筒状に形成され、テーパ状の外周面223Aを備えている。大径部223には、前述したように、クラッチばね218が嵌め込まれ接着されて当該大径部223を四番車113側に付勢している。これにより、クラッチリング222は、四番車113側に付勢される。小径部224の下端面は平坦に形成されており、クロノグラフ計測時に四番車113の板状部114と面接触する。
図5は、クロノグラフ計測時における発停レバー302,309を示す平面図、図6は、ストップ時およびリセット時における発停レバー302,309を示す平面図、図7はクロノグラフ計測時における発停レバー302および復針制御レバー410を示す斜視図、図8は、リセット時における発停レバー302および復針制御レバー410を示す斜視図である。
発停レバー302は、図5に示すように、回動軸308に挿通されており、当該回動軸308を中心に回転可能に構成されている。
発停レバー302,309は、後述する作動カム5により制御される。以下に、発停レバー302,309の動作を説明する。
クロノグラフ計測が行われていない通常運針時(リセット時)には、図6に示すように、発停レバー規制部305が作動カム柱52に乗り上げており、発停レバー302,309は、共に秒CG車204に差し込まれている。この際、発停レバー309は、発停レバー302によって時計方向に回動された状態となっており、ばね部313により、反時計方向に付勢されている。そして、発停レバー302は、反時計方向に付勢された発停レバー309により、時計方向、すなわち、発停レバー規制部305が作動カム柱52に圧接される方向に付勢されている。
以上述べたように、発停レバー302,309の爪部304,311は、クロノグラフ計測が行われていない通常運針時(リセット時)には、図4および図6に示すように、共にクラッチリング222の大径部223と四番車113との間に差し込まれ、クラッチリング222を持ち上げている。これにより、四番車113から秒CG車204への動力の伝達が断たれている。この際、四番車113は、秒CGハートカム209が秒時CG復針レバー424により圧接され秒CG車軸208が固定されているため、秒CG車軸208に対し空転している。
リセット時には、クラッチリング222が爪部304,311に持ち上げられたまま、秒CGハートカム209が秒時CG復針レバー424を圧接する。これにより、秒CG車204は、クラッチリング222を発停レバー302,309との間で摺動させながら回動し、秒CG針を帰零する。
ここで、図7および図8に示す本実施形態の発停レバー302,309においては(発停レバー309においては図3等参照)、クラッチリング222との接触部分(摺動部分)である斜面304B,311Bおよび持上げ面304A,311Aを含む上面全体に、硬質炭素膜(DLC膜:Diamond like Carbon膜)からなる硬質炭素層が形成されている。また、発停レバー302,309の全体には、ニッケル硬化膜からなるニッケル硬化層が形成されている。すなわち、本実施形態の発停レバー302,309では、金属材料から構成された基材の表面全体にニッケル硬化層が形成されており、ニッケル硬化層上において、発停レバー302,309の上面にあたる部分に、硬質炭素層が形成されている。
また、リセット時の発停レバー302,309とクラッチリング222との滑りトルクを低減できるので、リセット時における秒時CG復針レバー424の秒CGハートカム209への圧接に必要な力を低減することができ、リセットボタン401のボタンクリック力を適正化できる。
また、発停レバー302,309の基材の全面にニッケル硬化層が形成されているので、発停レバー302,309の全面の強度および耐久性を確保できる。
このような発停レバー302,309へのニッケル硬化層および硬質炭素層の形成は、以下のようにして行われる。なお、ニッケル硬化層の形成方法および硬質炭素層の形成方法は公知であるので、簡略に説明する。
まず、前処理を施した発停レバー302,309の基材をメッキ液に浸漬し、基材の全面に無電解ニッケルメッキ層を形成する。続いて、当該無電解ニッケルメッキ層上において、発停レバー302,309の上面にあたる部分に、メタンを原料としたプラズマDVD法、ベンゼンを原料としたイオン化蒸着法、グラファイトを原料としたアークプラズマ法等により、硬質炭素層を積層する。
以下に、クロノグラフ計測に係る構成について説明する。
図5に示すように、スタート/ストップボタン301およびリセットボタン401の中間部分に配置される竜頭6の延出方向上には、作動カム5(ピラーホイール)が配置されている。
スタート/ストップボタン301の没入方向には、図5に示すように、作動レバー318が配置されている。作動レバー318は、作動カム5を時計方向に1ピッチ分回転させるためのものである。作動レバー318には、作動カム歯車51の歯と当接する作動レバー規制部319と、スタート/ストップボタン301の没入方向に延びるトラック状の孔320とが形成されている。孔320内には、作動レバー318の移動方向を規制する案内軸321が配置されている。また、作動レバー318には、作動レバーばね323を受ける受ピン322が形成されている。
作動レバー318は、スタート/ストップボタン301を押すと、スタート/ストップボタン301に押圧されて当該スタート/ストップボタン301の没入方向に移動し、作動レバー規制部319によって作動カム5を1ピッチ回転させた後に、作動レバー318ばねにより元の位置方向に付勢されて、元の位置に戻る。これにより、スタート/ストップボタン301も、元の突出状態に戻される。
図9は、ストップ時の時計の要部を示す平面図、図10は、リセット時の時計の要部を示す平面図である。
リセットボタン401の没入方向には、図9に示すように、復針伝達レバー402が配置されている。復針伝達レバー402は、後述する復針伝えレバー406を移動させ、当該復針伝えレバー406に復針制御レバー410を押圧させるためのものである。復針伝達レバー402は、回動軸403に挿通されており、当該回動軸403を中心に回転可能に構成されている。また、復針伝達レバー402は、リセットボタン401に押圧されて反時計方向(図9および図10中反時計方向)に回動した際に、復針伝達レバーばね404によって時計方向に付勢され、元の位置に戻るように構成されている。これにより、リセットボタン401も、押し操作されると、復針伝達レバー402により元の突出状態に戻される。復針伝達レバー402には、略半月状の固定軸407が形成されている。
この復針伝達レバー402上には、図9に示すように、復針伝えレバー406が配置されている。復針伝えレバー406は、略半月状の固定軸407に嵌め込まれて復針伝達レバー402に、当該復針伝達レバー402と一体に固定されている。この復針伝えレバー406の一端側には、ストップ時に作動カム柱52に当接する当接部408が形成されている。復針伝えレバー406の他端側には、復針制御レバー410を押圧する押圧部409が形成されている。復針伝えレバー406は、リセットボタン401の押し操作により復針伝達レバー402が回動すると、作動カム柱52に当接する当接部408を中心にして、復針伝達レバー402と一体に移動し、押圧部409で復針制御レバー410を押圧する。
復針制御レバー410は、秒時CG復針レバー424、ひいては分CG復針レバー418を移動させるためのものである。この復針制御レバー410は、図7および図9に示すように、平面視くちばし状に形成された復針制御レバー規制部411と、後述する復針ジャンパー415の凹部416,417に嵌まり込む突部412と、下端に形成された作動ピン413とを備えている。また、復針制御レバー410は、回動軸414に挿通され、当該回動軸414を中心に回動可能に構成されている。
復針制御レバー規制部411は、作動カム柱52間に入り込み可能な大きさに形成されており、作動カム柱52間に入り込んでいるスタート時に作動カム5が回転することにより、復針制御レバー410を反時計方向に回動させる。
作動ピン413は、後述する秒時CG復針レバー424の作動孔425内に配置され、作動孔425の側面を押圧することにより秒時CG復針レバー424を移動させる。また、秒時CG復針レバー424を移動させることにより、秒時CG復針レバー424と一体の分CG復針レバー418を移動させる。
復針制御レバー410は、クロノグラフ計測がスタートしていない通常運針時には、図10に示すように、復針制御レバー規制部411が作動カム柱52間に入り込んでいるともに、突部412が復針ジャンパー415の第2凹部417に嵌まり込んで位置決めされている。
復針制御レバー410は、クロノグラフ計測のスタート時には、作動カム5が1ピッチ分回転し、復針制御レバー規制部411が作動カム柱52に押圧されることにより、反時計方向に回動する。そして、突部412が復針ジャンパー415の第1凹部416に嵌まり込むことにより、図9に示す位置に位置決めされる。
また、クロノグラフ計測時の作動カム5の回転位置は、復針制御レバー規制部411が回動しようとすると作動カム柱52に当たる位置にある。
リセット時には、図10に示すように、復針制御レバー410は、復針伝えレバー406に押圧されることにより、突部412が第1凹部416から抜けて反時計方向に回動し、作動ピン413によって秒時CG復針レバー424を移動させる。また、この際、復針制御レバー410は、復針制御レバー規制部411が作動カム柱52間に入り込むとともに、突部412が第2凹部417に嵌まり込んで位置決めされる。
秒時CG復針レバー424は、図9に示すように、秒CGハートカム209を圧接する腕部424A、および時CGハートカム236を圧接する腕部424Bを備えている。この秒時CG復針レバー424には、湾曲したトラック状の作動孔425と、トラック状の第2案内孔426と、トラック状の第3案内孔420とが形成されている。
作動孔425内には、復針制御レバー410の作動ピン413が配置されている。第2案内孔426内には、案内軸427が配置されている。第3案内孔は、後述する分CG復針レバー418の下方(図9の紙面奥側)に形成されている。この第3案内孔420内には、基本時計輪列受に植立された案内ピン428が配置されている。この案内ピン428も、分CG復針レバー418の下方に配置されている。
分CG復針レバー418は、図9に示すように、分CGハートカム209を圧接する腕部418Aを備えている。この分CG復針レバー418は、秒時CG復針レバー424上に配置され、固定ねじ429,431および固定ピン430により当該秒時CG復針レバー424に固定されている。分CG復針レバー418には、秒時CG復針レバー424の作動孔425と略同一形状でかつ作動孔425より若干大きい案内孔419が形成されている。案内孔419内には、復針制御レバー410に形成された作動ピン413が配置されている。
分CG復針レバー418は、この作動ピン413によって秒時CG復針レバー424がスライド移動されることにより、秒時CG復針レバー424と一体にスライド移動し、腕部418Aによって分CGハートカム211を圧接して分CG針を帰零させる。
以下には、クロノグラフ機構全体の動きを通常運針時、スタート時、ストップ時、リセット時に分けてそれぞれ説明する。まず、通常運針時から説明する。
なお、通常運針時には、復針制御レバー410は、突部412が復針ジャンパー415の第2凹部417に嵌まり込んで位置決めされている(図10参照)。また、復針制御レバー規制部411が作動カム柱52間に入り込んでいる。
スタート/ストップボタン301を押し操作すると、図5に示す作動レバー318がスタート/ストップボタン301の没入方向にスライド移動し、作動レバー規制部319が作動カム5の歯を押すことにより、作動カム5を時計方向に1ピッチ回動させる。すると、図9に示すように、復針制御レバー410が、復針制御レバー規制部411が作動カム柱52によって押されることにより、突部412が復針ジャンパー415の第1凹部416に嵌まり込む位置まで反時計方向に回動する。
これにより、秒時CG復針レバー424が復針制御レバー410の作動ピン413によって秒,時CGハートカム209,236から離れた位置にまで移動させられ、当該秒時CG復針レバー424による秒,時CG車209,232の固定が解除される。また、秒時CG復針レバー424と一体の分CG復針レバー418も、分CGハートカム211から離れた位置にまで移動させられ、当該分CG復針レバー418による分CG車206の固定が解除される。
クロノグラフ計測時(スタート時の後)から再度スタート/ストップボタン301を押し操作すると、図6に示すように、作動カム5が1ピッチ回動し、発停レバー302が作動カム柱52上に乗り上げて反時計方向に回動し、秒CG車204へ差し込まれる。また、発停レバー309も発停レバー302の接触部306によって時計方向に回動させられて秒CG車204へ差し込まれる。これにより、図4に示すように、秒CG車204のクラッチリング222が発停レバー302,309によって持ち上げられ、四番車113からクラッチリング222への動力の伝達が切断されて秒CG車204および分CG車206の回転が停止する。
なお、作動カム5が1ピッチ回動することにより、ストップ時の作動カム5の回転位置は、図9に示すように、復針制御レバー410の復針制御レバー規制部411が、作動カム柱52間に入り込むことが可能な位置となる。また、作動カム5の回転位置は、図9に示すように、復針伝えレバー406の当接部408が作動カム柱52に当接する位置となる。
ストップ時において、図9に示すリセットボタン401を押し操作すると、復針伝達レバー402が回動軸403を中心に反時計方向に回動する。これにより、復針伝達レバー402上に固定された復針伝えレバー406が、当接部408を中心に復針伝達レバー402と一体に反時計方向に回動して復針制御レバー410を圧接する。すると、図10に示すように、復針制御レバー410が、作動ピン413で秒時CG復針レバー424を押圧しながら、突部412が復針ジャンパー415の第2凹部417に嵌め込まれる位置まで回動軸414を中心に反時計方向に回動し、位置決めされる。また、復針制御レバー規制部411が作動カム柱52間に差し込まれる。
このような本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)発停レバー302,309のクラッチリング222と接触面、すなわち、斜面304B,311Bおよび持上げ面304A,311Aには硬質炭素層が形成されているので、発停レバー302,309とクラッチリング222との滑りトルクを低減することができ、発停レバー302,309の秒CG車204への差し込みに必要な力を低減できる。従って、スタート/ストップボタン301の押し操作に必要なボタンクリック力を低減することができ、ボタンクリック力を適正化することができる。また、秒時CG復針レバー424の秒CGハートカム209への押圧力を低減することができ、リセットボタン401のボタンクリック力を適正化できる。
さらに、従来とは異なり、ボタンクリック力の適正化のためにクラッチばね218の弾性力を下げることはしていないため、クラッチリング222がクラッチばね218に付勢されて四番車113としっかりと摩擦する。従って、衝撃時における秒CG針の針飛びを抑制できる。そのうえ、秒CG針と、秒CGハートカム209と、秒CGバランサー217とのバランスの調整幅を拡げることができるので、秒CG針のデザイン状の制約を小さくでき、時計のデザイン性および品質性を向上できる。
さらに、発停レバー302,309の硬質炭素層が形成されたクラッチリング222との接触部分の摩擦係数を、長年に亘って低い状態のまま維持することができるので、発停レバー302,309の長寿命化を図ることができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本発明の発停レバー302,309は、基本時計輪列102を構成する番車(歯車)とクロノグラフ車との動力を切断・接続するように用いられていれば、秒CG車204に差し込まれることに限定されず、分CG車や時CG車に差し込まれてもよい。また、発停レバー302,309は、秒CG車204、分CG車206、および時CG車232の前段に設けられたCG針を備えていないクロノグラフ車に差し込まれてもよい。
前記実施形態では、発停レバー302,309の上面全体に硬質炭素層が形成されていたが、少なくともクラッチリング222との接触面に形成されていれば、上面全体に形成されている必要はない。
前記実施形態では、硬質炭素層の熱により無電解ニッケルメッキ層を熱処理してニッケル硬化層を形成したが、無電解ニッケルメッキ層を熱処理してニッケル硬化層を形成した後に硬質炭素層を形成してもよい。
前記実施形態の時計では、クロノグラフ輪列202,203や発停レバー302,309を回転する作動カム(ピラーホイール)5によって制御したが、作動カムを用いず、首振り運動するカムのみを用いて制御してもよい。ただし、ピラーホイール式の方が、ボタン301,401を押す力が作動カム5の回転によって伝わる構造となるため、ボタン操作を軽快に行なうことができ、誤動作も少ないというメリットがある。また、種々の部品に負担がかかりにくく、耐久性がより高くなるというメリットもある。
本発明の発停レバーは、クロノグラフ付電子制御式機会時計に用いられることに限定されず、クロノグラフがついていれば、自動巻発電時計や機械時計にも適用することもできる。
Claims (5)
- クロノグラフ車の軸に遊嵌された状態に配置されて通常時刻を表示する基本時計輪列を構成する歯車と、前記クロノグラフ車に設けられたクラッチばねにより前記歯車側に付勢されて前記クロノグラフ車と一体に回転するクラッチ板と、の間での挿抜により、前記クラッチ板と前記歯車とを接続隔離させる発停レバーであって、
少なくともクラッチ板との接触部分に形成された硬質炭素層と、少なくとも前記硬質炭素層が形成された部分以外の部分に形成されたニッケル硬化層とを備え、
前記ニッケル硬化層は、無電解ニッケルメッキ層が熱処理されることにより形成されており、前記クラッチ板との接触面には油が注油されている
ことを特徴とする発停レバー。 - 請求項1に記載の発停レバーにおいて、
前記硬質炭素層は、前記ニッケル硬化層上に形成されている
ことを特徴とする発停レバー。 - 請求項1または請求項2に記載の発停レバーにおいて、
前記硬質炭素層は、前記発停レバーの上面全体に形成されている
ことを特徴とする発停レバー。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の発停レバーにおいて、
前記ニッケル硬化層は、前記発停レバーの基材の表面全体に形成されている
ことを特徴とする発停レバー。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載の発停レバーを備えている
ことを特徴とするクロノグラフ付時計。
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