JP3804563B2 - ぜんまい装置およびこのぜんまい装置を備えた時計 - Google Patents

ぜんまい装置およびこのぜんまい装置を備えた時計 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ぜんまい装置およびこのぜんまい装置を備えた時計に関する。例えば、手巻き式や自動巻式で巻上げられるぜんまいおよびてんぷを有する機械式時計や、そのようなぜんまいが解ける時に出力される機械エネルギを発電機で電気エネルギに変換し、その電気エネルギで回転制御手段を作動させて発電機の回転周期を制御することにより、輪列に固定される指針を正確に運針させる電子制御式機械時計に利用できる。
【0002】
【背景技術】
従来より、ぜんまいの機械エネルギを利用して指針を運針させる機械式時計が知られている。また、近年では、特開平8−5758号公報に記載されているように、ぜんまいが解放する時の機械エネルギを発電機で電気エネルギに変換し、その電気エネルギにより回転制御手段を作動させて発電機のコイルに流れる電流値を制御することにより、輪列に固定される指針を正確に運針させて正確に時刻を表示する電子制御式機械時計も多く用いられている。
【0003】
ところで、ぜんまいは、図12に示すように、巻上げていった最後の巻締め時(巻数が所定の巻数A以上になった時)には、ぜんまいに蓄積されるトルクが急激に大きくなり、ぜんまいが解放し始めた際に非常に大きなトルクを出力してしまい、ぜんまいにより回転される輪列の回転速度を制御する調速機や脱進機等の規正部に大きなトルクが加わって時刻制御不能や、これらの部品が破壊される場合がある。
【0004】
反対に、巻き戻された最後の時(巻数が所定の巻数B以下になった時)には、ぜんまいから出力されるトルクが著しく小さくなってしまい、運針が徐々に遅くなって時刻を誤表示してしまう場合がある。このことに関し、例えば電子制御式機械時計についていえば、ぜんまいが所定巻数以下に巻き戻されると、発電機における発電量も小さくなって制御可能な回転数以下となるため、運針が正確に行えず、その結果、時刻の誤表示として現れる。このため、ぜんまいが巻上げや巻戻しを一定巻数で停止するロック機構が設けられていた。
【0005】
このロック機構としては、例えば、特開2000−2773号公報に記載されているように、加減算用輪列の巻上げ側、巻戻し側をロックすることによって、常に設定範囲内のトルクを出力できるようにしたものが挙げられる。このロック機構の具体的構成としては、加減算用輪列を構成する部品とは別に、巻上げ/巻戻し側のトルクが伝達される少なくとも1つの部品に係合するロックレバーを備えるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、加減算用輪列を構成する部品とは別に、ロックレバーを備えるために、部品数が多くなってしまうという問題がある。また、ロックレバー自体の占めるスペースが大きく、腕時計等の小型化が要求される製品の適用に関しては、省スペース化に対する問題がある。
【0007】
本発明の目的は、部品点数の低減および省スペース化を図ることのできるぜんまい装置およびこのぜんまい装置を備えた時計を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達するために、本発明のぜんまい装置は、ぜんまいの機械エネルギで輪列を駆動するように構成されたぜんまい装置であって、前記ぜんまいにエネルギを蓄積するための巻上げ部と、前記ぜんまいの巻上げ量と巻戻し量とを加減算する加減算用輪列と、前記加減算用輪列の動作に連動して作動し、設定範囲外のトルクが前記ぜんまいから前記輪列に伝達されるのを防止するロック機構とを備え、前記ロック機構は、前記加減算用輪列を構成する車と一体に回転する係合部材と、前記加減算用輪列が巻上げ側に回転した際に前記係合部材と係合する巻上げ係合部と、前記加減算用輪列が巻戻し側に回転した際に前記係合部材と係合する巻戻し係合部とを備え、前記加減算用輪列は、ぜんまいの巻戻し時に回転する巻戻し輪列を備え、前記巻戻し係合部は、前記巻戻し輪列を構成する車であることを特徴とする。
【0009】
このような本発明によれば、前記加減算用輪列を構成する車と一体に回転する係合部材と、前記係合部材に係合する巻上げ係合部および巻戻し係合部とを備えることにより、前記係合部材と巻上げ係合部および巻戻し係合部が係合して、巻き上げ量および巻き戻し量が規制されるので、設定範囲外のトルクが前記ぜんまいから前記輪列に伝達されるのを防止する。従って、加減算用輪列を構成する部品とは別に設けられたロックレバーを必要とせずに、ぜんまいが巻上げや巻戻しを一定巻数で停止するロック機構を構成するので、部品点数の低減を図ることができる。また、ロックレバーと比較して、巻上げ係合部および巻戻し係合部は係合部材の回転を止める程度の十分小さい部材で構成することができ、係合部材は、前記加減算用輪列を構成する車と一体に設けられつつ当該加減算用輪列の回転を阻害しないような大きさで構成されるので、省スペース化を図ることができる。
その上、前記巻戻し係合部は、前記巻戻し輪列を構成する番車であることにより、加減算用輪列の他に、部品を設ける必要もないので、より一層、部品点数を低減することができる。
【0010】
本発明のぜんまい装置では、前記加減算用輪列は、ぜんまいの巻上げ時に回転する巻上げ輪列と、ぜんまいの巻戻し時に回転する前記巻戻し輪列とを備え、前記巻上げ輪列は、ぜんまいの巻上げ側から順に第1の車と、この第1の車と噛み合う第2の車と、この第2の車と噛み合う第3の車とを備え、前記巻戻し輪列は、ぜんまいの巻戻し側から順に第4の車と、この第4の車に遊星歯車として自転可能に設けられ、かつ前記第1の車および前記第3の車に対して噛み合う前記第2の車とを備え、前記第1の車および前記第4の車は、前記第3の車の軸に対して個別に回転可能に挿通され、前記係合部材とは、前記第3の車の軸に対して一体に回転可能に設けられていることが好ましい。
【0011】
本発明のぜんまい装置では、前記巻上げ係合部は、前記係合部材に係合する位置に設けられたピンであることが好ましい。前記巻上げ係合部が、前記係合部材に係合する位置に設けられたピンであることにより、ピンは構造が簡単であり加工も容易なので、容易に係合部を設けることができる。
【0012】
本発明のぜんまい装置では、前記加減算用輪列は、前記係合部材に設定範囲外のトルクがかかると前記トルクの伝達を防止するスリップ機構を備えることが好ましい。
前記係合部材と巻き上げ係合部が接触するまで、ぜんまいを巻き上げた後においては、巻き上げ操作を続けると、この操作による負荷を前記係合部材と巻き上げ係合部がそのまま受けてしまい、前記係合部材と巻き上げ係合部に耐久限界を超える力が加わって、前記係合部材と巻き上げ係合部が破損等する可能性がある。これに対して本発明では、加減算用輪列が、前スリップ機構を備えており、設定範囲外のトルクがかかると、スリップ機構にのみ該トルクが加わる。そして、スリップ機構自体は、前記加減算用輪列の他の構成部品との間にすべりが生じるため、そのような負荷が前記係合部材と巻き上げ係合部に加わることもなく、前記係合部材や巻き上げ係合部の故障が防止される。
【0013】
本発明のぜんまい装置では、前記スリップ機構は、前記加減算用輪列の他の部品を押圧・保持する接触部を備えることが好ましい。
【0014】
これによれば、前記スリップ機構は、接触部を備えることにより、接触部は、前記加減算用輪列の他の部品を押圧・保持しているので、通常のトルクが加わった場合には、押圧・保持により通常のトルクを伝達することができる。また、押圧力を越えるような過度のトルクが加わった場合には、スリップ機構自体が他の部品と独立して滑ることにより動作するので、過度のトルクをぜんまいに伝達することがない。
【0015】
本発明の時計は、前述のいずれかのぜんまい装置を備えることを特徴とする。特に、本発明の時計は、ぜんまいの機械エネルギで輪列を駆動するように構成されたぜんまい装置と、輪列を介して伝達される前記ぜんまいの機械エネルギを電気エネルギに変換する発電機と、前記輪列に結合された指針と、変換された電気エネルギにより駆動されて前記発電機の回転周期を制御する回転制御手段とを備える時計であって、前記ぜんまい装置は、前述のぜんまい装置であることを特徴とする。
【0016】
ここで、時計は、腕時計、置き時計等種々の時計が挙げられる。また、一般に電子制御式機械時計とよばれる時計は、ぜんまいの機械的エネルギを単に時計の駆動するためだけでなく、一部を電気エネルギに変換している。この電気エネルギは、時計の運針制御に消費されるので、ぜんまいが発生する機械的エネルギは、より大きいものであることが望まれている。そのため、ぜんまいは、大型化する傾向がある。これに伴い、時計自体の大きさも大きくなってしまう傾向がある。
しかし、このような本発明によれば、前述のぜんまい装置で得られた作用・効果と同様にロックレバーが不要になるのでこのロックレバーのスペース分を利用すれば時計全体を大きくせずにぜんまいのみを大型化できる。従って大きなぜんまいが望まれる電子制御式機械時計において、部品点数の低減および省スペース化を図る本発明のぜんまい装置を備えることは、大きなメリットがある。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るぜんまい装置を備えた電子制御式機械時計の概略を示す平面図、図2、3は、その要部の断面図である。
電子制御式機械時計は、香箱車1を備えている。香箱車1は、ぜんまい1aと、香箱歯車1bと、香箱真1cと、香箱蓋1dとを備えている。ぜんまい1aは、外端が香箱歯車1b、内端が香箱真1cに固定されている。香箱歯車1bには、香箱かな1eが一体的に設けられている。香箱真1cは、地板2に支持され、角穴車4と一体で回転するようになっている。
【0018】
角穴車4は、時計方向には回転するが反時計方向には回転しないように、こはぜ3と噛み合っている。この角穴車4は、図示しない竜頭に接続された巻真31を操作することにより、きち車32、丸穴車33、角穴中間車34を介して回転され、前記香箱真1cを回転してぜんまい1aを巻上げるように構成されている。従って、巻真31、きち車32、丸穴車33、角穴中間車34、角穴車4によってぜんまい1aにエネルギを蓄積する巻上げ部30が構成されている。
【0019】
香箱歯車1bの回転は、図3にも示すように、二番車6へ伝達された後、増速されて三番車7へ、三番車7から秒針車8および四番車9へ、さらに四番車9から順次増速されて五番車10、六番車11、ローター12へと伝達される。そして、二番車6には筒かな6aを介して図示しない分針が固定され、秒針車8には秒針が固定されている。また、筒かな6aには日の裏車38を介して筒車6bが接続され、この筒車6bに時針が固定されている。
【0020】
なお、各車6〜11およびローター12は、輪列受14や二番受15と地板2とで支持されている。また、各車6〜11によって、ぜんまい1aの機械エネルギを指針(時針、分針、秒針)に伝達する輪列13が構成されている。
この電子制御式機械時計は、図1に示すように、ローター12およびコイルブロック21,22から構成される発電機20を備えている。ローター12は、図3に示されるように、ローター磁石12a、ローターかな12b、ローター慣性円板12cを備えている。このうち、ローター慣性円板12cは、香箱車1からの駆動トルク変動に対しローター12の回転数変動を少なくするためのものである。
【0021】
コイルブロック21、22は、各コア23にコイル24をそれぞれ巻線して構成されたものである。各コア23は、ローター12に隣接して配置されるコアステーター部23aと、前記コイル24が巻回されるコア巻線部23bと、互いに連結されるコア磁気導通部23cとが一体に形成されて構成されている。
【0022】
以上の電子制御式機械時計では、発電機20からの交流出力は、昇圧整流、全波整流、半波整流、トランジスター整流等からなる整流回路を通して昇圧、整流されて平滑用コンデンサーに充電され、このコンデンサーからの電力で発電機20の回転を制御する図示しない回転制御回路(回転制御手段)を作動させている。なお、回転制御回路としては、発振回路、分周回路、回転検出回路、回転数比較回路、電磁ブレーキ制御手段等を含む集積回路(IC)によって構成され、発振回路には水晶振動子が用いられる。
【0023】
また、分針および時針を合わせる針合わせ操作は、竜頭を引き出して前記巻真31を軸方向に移動し、おしどり40、クリックばね41、かんぬき42の作用によってつづみ車35を小鉄車36側に移動して噛み合わせ、この小鉄車36から日の裏中間車37、日の裏車38を介して筒かな6aおよび筒車6bを回転させることで行われる。従って、竜頭、巻真31、つづみ車35、小鉄車36、日の裏中間車37、日の裏車38、おしどり40、クリックばね41、かんぬき42により、針合わせ機構44が構成されている。
【0024】
この電子制御式機械時計には、図1(平面図)および図4(図1の拡大平面図)に示されるように、ぜんまい1aの巻上げ量および巻戻し量を加減算する加減算用輪列50が設けられている。加減算用輪列50は、角穴車4からのトルクを伝達する巻上げ輪列50aと、香箱かな1eからのトルクを伝達する巻戻し輪列50bとを備えている。
【0025】
巻上げ輪列50aは、図5(図4の斜視図)にも示すように、八十八番車501と、八十七番車502と、八十六番車503と、第1の車である八十五番車504と、第2の車である八十四番車505が設けられた第3の車である八十三番車506とを備えて構成されている。
【0026】
八十八番車501は、角穴車4に噛合している。また、八十八番車501は、八十七番車502に噛合している。八十七番車502は、八十六番車503に噛合している。八十六番車503は、八十六番車かな503aを備えている。八十六番車かな503aは、八十五番車504に噛合している。八十五番車504は、八十五番車かな504aを備えている。八十五番車かな504aは、八十四番車505に噛合している。
【0027】
図6は,図5の要部を拡大した図である。図6に示されるように、八十三番車506は、軸506bと、八十三番車かな506aと、係合部材52と、八十三番車歯車506cとを備えて構成されている。八十三番車かな506aは、八十一番車507(図4)に噛合している。九十六番車513は、八十五番車504とは略同一の外径を有している。
【0028】
また、係合部材52は、図7に示されるように、円板状の係合部材本体521と、係合部材本体521外周部に設けられた延出部522とを備えている。なお、係合部材52は、係合部材本体521の中心部に、軸506bを備えている。
【0029】
図5に戻って、八十四番車505は、第4の車である九十六番車513上で自転する遊星歯車である。この八十四番車505は、八十四番車かな505aを備えている。八十四番車かな505aは、八十三番車歯車506cに噛合している。すなわち、九十六番車513が回転している際には、八十四番車505は、九十六番車513の軸を中心とする公転および自転をしていることになる。図4に戻って、八十一番車507は、八十番車508に噛合している。八十番車508には、図示しないパワーリザーブ針が固定されている。また、八十一番車507および八十番車508は、パワーリザーブ針に回転を伝達するパワーリザーブ輪列を構成している。
【0030】
ここで、八十五番車504は、図8に示すように、係合部材52に設定範囲外のトルクがかかるとトルクの伝達を防止するスリップ機構を備える。八十五番車504は、八十三番車506の軸506bを径方向に押圧・保持する接触部504cを備えている。具体的には,八十五番車504は、打抜部504bを有するアミダ状とされ、八十五番車かな504aとの接触部504cにばね性を付与することで八十五番車かな504aを径方向に押圧保持している。すなわちばね性を有する接触部504cによってスリップ機構が形成されている。
【0031】
一方、巻戻し輪列50bは、図4(一部分図5)に示されるように、九十八番車511と、九十七番車512と、九十六番車513と、八十四番車505と、八十三番車506とを備えて構成されている。九十八番車511は、香箱車1の香箱かな1eに噛合している。九十七番車512は、九十六番車513に噛合している。
【0032】
本発明に係るぜんまい装置は、前述した巻上げ部30および加減算用輪列50と、ロック機構とを備えている。図6に示されるように、ロック機構は、加減算用輪列50を構成する八十三番車506と一体に回転する係合部材52と、加減算用輪列50が巻上げ側に回転した際に係合部材52と係合する巻上げ係合部(係合部用ピン530)と、加減算用輪列50が巻き戻し側に回転した際に係合部材52と係合する巻戻し係合部(九十七番車512)とを備えている。
【0033】
また、係合部用ピン530は、地板2に形成された係合部用孔53aに挿通して、固定されている。さらに、係合部用ピン530は、円板状の頭部531と、頭部531の中心軸状に垂直に設けられた軸部532と、軸部532の先端に設けられた先端部533とを備えて構成されている。
【0034】
ぜんまい1aの巻上げ操作/巻戻し操作を以下に述べる。ぜんまい1aの巻上げ操作で角穴車4が回転されると、その回転は、八十八番車501から順次減速して、八十七番車502、八十六番車503、八十五番車504、八十四番車505、八十三番車506、八十一番車507、八十番車508に伝達される。ここで、ぜんまい1aの巻上げ時には香箱歯車1bは回転が遅くほぼ停止状態の為、巻戻し輪列50bの九十八番車511、九十七番車512、九十六番車513は固定状態とされているので、図示しないパワーリザーブ針に回転が伝達されるようになっている。
【0035】
一方、ぜんまい1aの巻戻し時には、角穴車4が停止しているために、巻上げ輪列50aの八十八番車501、八十七番車502、八十六番車503、八十五番車504は略停止している。そして、香箱かな1eが回転されると、九十八番車511から順次減速して、九十七番車512、九十六番車513、八十三番車506、八十一番車507、八十番車508に伝達される。この際、九十六番車513も回転しているので、八十四番車505は、九十六番車513の軸を中心とする公転および自転をしていることになる。これにより、前記ぜんまい1aの巻上げ操作時とはパワーリザーブ針も逆方向に回転されるようになっている。
【0036】
次に、加減算用輪列50の動作に連動して作動し、設定範囲外のトルクがぜんまい1aから輪列13に伝達されるのを防止するロック機構の作用について述べる。巻上げ時には、前述したように、角穴車4が回転されると、そのトルクは、八十八番車501から順次減速して、八十七番車502、八十六番車503、八十五番車504、八十四番車505、八十三番車506、八十一番車507、八十番車508に伝達される。
【0037】
この際、図9に示されるように、八十三番車506が矢印方向に回転している。その後、係合部用ピン530と八十三番車506の係合部材52の延出部522が接触して、それ以上、八十三番車506が回転しないようになる。したがって、八十三番車かな506aからトルクが伝達されないので、八十一番車507、八十番車508にはトルクが伝達されることもない。なお、係合部用ピン530は、ぜんまい1aの所定巻き数、例えば、ぜんまい1aの巻上げが完了する巻き数は、図12のAになるように設けられている。
【0038】
スリップ機構の作用について述べる。図8に示すように、スリップ機構を備える八十五番車504は、設定範囲外の大きなトルクがかかると、八十五番車504にのみ該トルクが加わる。ここで、八十五番車504は、接触部504cを備えている。この接触部504cは、加減算用輪列50の八十五番車かな504aを押圧・保持しているので、この押圧力を越えない通常のトルクが加わった場合には、押圧・保持により通常のトルクを伝達することができる。また、八十五番車504に、接触部504cの押圧力を越えるような過度のトルクが加わった場合には、八十五番車504自体が八十五番車かな504aと独立して滑ることにより、動作するので、過度のトルクを他輪列に伝達することがない。なお、香箱かな1eおよび角穴車4にも図示しない公知のスリップ機構が設けられており、八十五番車504がスリップして回転することにともなって、香箱かな1eおよび角穴車4が回転してもぜんまい1aが過度に巻きあがる心配がない。
【0039】
一方、巻戻し時には、前述したように、香箱歯車1bが回転されると、九十八番車511から順次減速して、九十七番車512、九十六番車513、八十三番車506、八十一番車507、八十番車508に伝達される。この際、図10に示されるように、八十三番車506が矢印方向に回転している。その後、九十七番車512と八十三番車506の係合部材52の延出部522が接触して、それ以上、八十三番車506が回転しないようになる。したがって、八十一番車507、八十番車508にはトルクが伝達されることもない。なお、八十三番車506の係合部材52の延出部522と九十七番車512と接触する位置は、ぜんまい1aの所定巻き数、例えば、図12の巻き数Bになるように設けられている。
【0040】
すなわち時計の通常の使用下にあっては、係合部材52が、係合部用ピン530と九十七番車512と接触する位置との間で往復回動することになる。
【0041】
上述のような本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)加減算用輪列50を構成する八十三番車506と一体に回転する係合部材52と、加減算用輪列50が巻上げ側に回転した際に係合部材52と係合する巻上げ係合部(係合部用ピン530)と、加減算用輪列50が巻き戻し側に回転した際に係合部材52と係合する巻戻し係合部(九十七番車512)とを備えることにより、係合部材52と係合部用ピン530および九十七番車512が係合して、巻き上げ量および巻き戻し量が規制されるので、設定範囲外のトルクがぜんまい1aから輪列13に伝達されるのを防止する。従って、加減算用輪列50を構成する部品とは別に設けられたロックレバーを必要とせずに、ぜんまい1aが巻上げや巻戻しを一定範囲内の巻数で停止するロック機構を構成するので、部品点数の低減を図ることができる。
【0042】
(2)ロックレバーと比較して、係合部用ピン530および九十七番車512は係合部材52の回転を止める程度の十分小さい部材で構成することができ、係合部材52は、加減算用輪列50を構成する八十三番車506と一体に設けられつつ加減算用輪列50の回転を阻害しないような大きさで構成されるので、省スペース化を図ることができる。
【0043】
(3)係合部材52は、加減算用輪列50を構成する八十三番車506と一体に設けられる部品であるので、組み込みを容易化することができる。
【0044】
(4)ロックレバーを組み込む際には、ロックレバーのばね性を有する部分を係合する部分に、係合させる。この際ロックレバーは、係合させる部品への反力を発生させる。しかし、本実施形態の係合部材52の組込みの際には、加減算用輪列50を構成する部品への反力が発生することもないから、ぜんまい1aの巻上げ時に負荷がかかるということもなく、巻戻し時にも負荷がかかることもないので、巻上げ効率および持続時間の向上を図ることができる。
【0045】
(5)巻戻し係合部が、巻戻し輪列50bを構成する九十七番車512であることにより、加減算用輪列50の他に、部品を設ける必要もないので、より一層、部品点数を低減することができる。
【0046】
(6)係合部用ピン530は構造が簡単であるので、容易に巻き上げ係合部を設けることができる。
【0047】
(7)係合部材52は、ロックレバーと比較して、構造が簡単であるので、容易に製造することができる。
【0048】
(8)スリップ機構自体は、加減算用輪列50の八十三番車506の軸506bとの間にすべりが生じることにより、スリップ機構に加わったトルクを加減算用輪列50の八十番車508にまでトルク伝えることがないので、八十番車508に固定されたパワーリザーブ針が振り切れることもない。
【0049】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。本発明は、電子制御式機械時計に限らず、がんぎ車、アンクル、てんぷ等を備える機械式時計に適用してもよい。但し、電子制御式機械時計は、機械式時計に比べて水晶発振器を用いて高精度の運針制御を行うものであるため、要求される時刻指示精度も機械式時計に比べて高い。このため、出力トルクの変動による影響が顕著に表れる電子制御式機械時計に、本発明のぜんまい装置のロック機構を設けることが好ましい。また,図11に示されるように,係合部用ピン530は、地板2に固定されるだけでなく、係合部用ピン530’のようにその取り付け位置を可変して、トルクのレンジを調整できるようになっていても良い。
【0050】
また、ぜんまい1aを巻上げる巻上げ部としては、手巻きに限らず、公知の回転錘を用いた自動巻上げ装置を用いてもよい。
また、本発明のぜんまい装置としては、時計に限定されるものではなく、ぜんまいを駆動源とする玩具としての自動車(ミニカー)や、メトロノーム、オルゴール等であってもよい。
【0052】
また、本発明のスリップ機構は、八十五番車504に設けられていたが、これに限られず、角穴中間車34に設けられるようにしてもよい。このようにすれば、スリップ機構を1つ設けるだけで、過度にぜんまい1aを巻き上げた際の回転が、加減算用輪列50に伝わることもない。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、部品点数の低減および省スペース化を図ることのできるぜんまい装置および時計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における電子制御式機械時計を示す平面図である。
【図2】図1の要部を示す断面図である。
【図3】図1の要部を示す断面図である。
【図4】図1の加減算輪列を示す平面図である。
【図5】巻上げ輪列を示す側面図である。
【図6】ロック機構を構成する部分を示す断面図である。
【図7】係合部材を示す斜視図である。
【図8】スリップ機構を示す平面図である。
【図9】巻上げ時のロック機構の動作を示す説明図である。
【図10】巻戻し時のロック機構の動作を示す説明図である。
【図11】ロック機構の変形例を示す説明図である。
【図12】ぜんまいの特性を示す図である。
【符号の説明】
1a…ぜんまい、50…加減算用輪列、50b…巻戻し輪列、52…係合部材、530、530’、535…係合部用ピン、504…八十五番車

Claims (6)

  1. ぜんまい(1a)の機械エネルギで輪列(13)を駆動するように構成されたぜんまい装置であって、
    前記ぜんまい(1a)にエネルギを蓄積するための巻上げ部(30)と、前記ぜんまい(1a)の巻上げ量と巻戻し量とを加減算する加減算用輪列(50)と、前記加減算用輪列(50)の動作に連動して作動し、設定範囲外のトルクが前記ぜんまい(1a)から前記輪列(50)に伝達されるのを防止するロック機構とを備え、
    前記ロック機構は、前記加減算用輪列(50)を構成する車と一体に回転する係合部材(52)と、前記加減算用輪列(50)が巻上げ側に回転した際に前記係合部材(52)と係合する巻上げ係合部(530)と、前記加減算用輪列(50)が巻戻し側に回転した際に前記係合部材(52)と係合する巻戻し係合部とを備え、
    前記加減算用輪列(50)は、ぜんまい(1a)の巻戻し時に回転する巻戻し輪列(50b)を備え、
    前記巻戻し係合部は、前記巻戻し輪列(50b)を構成する車(512)であることを特徴とするぜんまい装置。
  2. 請求項1に記載のぜんまい装置において、
    前記加減算用輪列(50)は、ぜんまい(1a)の巻上げ時に回転する巻上げ輪列(50a)と、ぜんまい(1a)の巻戻し時に回転する前記巻戻し輪列(50b)とを備え、
    前記巻上げ輪列(50a)は、ぜんまい(1a)の巻上げ側から順に第1の車(504)と、この第1の車(504)と噛み合う第2の車(505)と、この第2の車(505)と噛み合う第3の車(506)とを備え、
    前記巻戻し輪列(50b)は、ぜんまい(1a)の巻戻し側から順に第4の車(513)と、この第4の車(513)に遊星歯車として自転可能に設けられ、かつ前記第1の車(504)および前記第3の車(506)に対して噛み合う前記第2の車(505)とを備え、
    前記第1の車(504)および前記第4の車(513)は、前記第3の車(506)の軸(506b)に対して個別に回転可能に挿通され、前記係合部材(52)とは、前記第3の車(506)の軸(506b)に対して一体に回転可能に設けられていることを特徴とするぜんまい装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載のぜんまい装置において、
    前記巻上げ係合部は、前記係合部材に係合する位置に設けられたピンであることを特徴とするぜんまい装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載のぜんまい装置において、
    前記加減算用輪列は、前記係合部材に設定範囲外のトルクがかかると前記トルクの伝達を防止するスリップ機構を備えることを特徴とするぜんまい装置。
  5. 請求項4に記載のぜんまい装置において、前記スリップ機構は、前記加減算用輪列の他の部品を指圧・保持する接触部を備えることを特徴とするぜんまい装置。
  6. 請求項1から請求項5のいずれかに記載のぜんまい装置を備えることを特徴とする時計。
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