JP2021025892A - 時計 - Google Patents

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Abstract

【課題】第1香箱車、中間車、第2角穴車の噛み合い効率を平準化できる時計を提供する。【解決手段】時計は、第1角穴車、第1香箱真、第1ぜんまい、および第1香箱車22を有する第1香箱と、第1香箱車22の回転が伝達される中間車27と、中間車27の回転が伝達される第2角穴車34、第2香箱真、第2ぜんまい、および第2香箱車を有する第2香箱と、を備え、第1香箱車22の歯数は、第2角穴車34の歯数と同じであり、第1香箱車22と中間車27との噛み合い効率が最低になるタイミングと、中間車27と第2角穴車34との噛み合い効率が最低になるタイミングとが異なるように、第1香箱車22、中間車27、および第2角穴車34が配置される。【選択図】図5

Description

本発明は、時計に関する。
特許文献1には、2つのぜんまい箱、すなわち、2つの香箱を備える時計が開示されている。特許文献1のFIG.6では、2つの香箱がカナにより接続されることで、直列的に作動可能に構成されている。
特開昭51−46161号公報
特許文献1では、第1の香箱の歯車とカナの歯車とが接触することで、第1の香箱からカナへと動力を伝達し、カナの歯車と第2の香箱の歯車とが接触することで、カナから第2の香箱へと動力を伝達している。このような歯車同士が接触して動力を伝達する過程では、歯車同士の接触箇所が刻々と変化する。このことにより、一方の歯車から他方の歯車に動力を伝達する際の力の方向が刻々と変化するので、歯車同士が接触してから離れるまでの噛合い1ピッチの間で、伝達される力は一定とならず変化する。
この際、特許文献1のように、第1の香箱と第2の香箱とをカナを介して直列的に作動させる場合において、第1の香箱からカナへと動力を伝達させる場合の力の変化のタイミングと、カナから第2の香箱へと動力を伝達させる場合の力の変化のタイミングとが一致していると、各々の力が最も小さくなるタイミング、すなわち、噛み合い効率が最低になるタイミングが一致することになる。そうすると、第1の香箱から伝達する力によって、第2の香箱のぜんまいを巻き上げる力が十分に得られなくなるタイミングが発生する可能性があるので、安定的にぜんまいを巻き上げることができなくなる可能性があるといった問題があった。
本開示の時計は、第1角穴車、第1香箱真、第1ぜんまい、および第1香箱車を有する第1香箱と、前記第1香箱車の回転が伝達される中間車と、前記中間車の回転が伝達される第2角穴車、第2香箱真、第2ぜんまい、および第2香箱車を有する第2香箱と、を備え、前記第1香箱車の歯数は、前記第2角穴車の歯数と同じであり、前記第1香箱車と前記中間車との噛み合い効率が最低になるタイミングと、前記中間車と前記第2角穴車との噛み合い効率が最低になるタイミングとが異なるように、前記第1香箱車、前記中間車、および前記第2角穴車が配置される。
本開示の時計において、前記第1香箱車と前記中間車との噛み合い始めのタイミングと、前記中間車と前記第2角穴車との噛み合い始めのタイミングとが噛合い0.4ピッチ以上、かつ、噛合い0.7ピッチ以下ずれていてもよい。
本開示の時計において、前記第1香箱車の中心点および前記中間車の中心点を結ぶ第1線分と、前記中間車の中心点および前記第2角穴車の中心点を結ぶ第2線分との交差角度が所定の角度になるように、前記第1香箱車、前記中間車、および前記第2角穴車を配置することにより、前記第1香箱車と前記中間車との噛み合い効率が最低になるタイミングと、前記中間車と前記第2角穴車との噛み合い効率が最低になるタイミングとを異ならせていてもよい。
本開示の時計において、前記第1香箱車の中心点および前記中間車の中心点を結ぶ第1線分と、前記中間車の中心点および前記第2角穴車の中心点を結ぶ第2線分とがそれぞれ所定の長さになるように、前記第1香箱車、前記中間車、および前記第2角穴車を配置することにより、前記第1香箱車と前記中間車との噛み合い効率が最低になるタイミングと、前記中間車と前記第2角穴車との噛み合い効率が最低になるタイミングとを異ならせていてもよい。
本開示の時計において、前記第1香箱車の歯数および前記第2角穴車の歯数を所定の数になるように設けることにより、前記第1香箱車と前記中間車との噛み合い効率が最低になるタイミングと、前記中間車と前記第2角穴車との噛み合い効率が最低になるタイミングとを異ならせていてもよい。
実施形態の時計を示す正面図。 実施形態の時計のムーブメントの要部を示す平面図。 実施形態の時計のムーブメントの要部を示す斜視図。 実施形態の時計のムーブメントの要部を示す斜視図。 第1香箱車、中間車、第2角穴車の噛み合い状態示す平面図。 第1香箱車、中間車、第2角穴車の噛み合い状態示す拡大平面図。 第1香箱車、中間車、第2角穴車の噛み合い状態示す拡大平面図。 第1香箱車、中間車、第2角穴車の噛み合い状態示す拡大平面図。 第1香箱車および中間車の噛み合い効率を示す図。 中間車および第2角穴車の噛み合い効率を示す図。 実施形態の第1香箱車、中間車、第2角穴車の噛み合い効率を示す図。 比較例の第1香箱車、中間車、第2角穴車の噛み合い効率を示す図。 ピッチズレ量と噛み合い効率の最低値との関係を示す図。
[実施形態]
以下、一実施形態に係る時計1を図面に基づいて説明する。
図1は、時計1を示す正面図である。
図1に示すように、時計1は、ユーザーの手首に装着される腕時計であり、円筒状の外装ケース2を備え、外装ケース2の内周側に、文字板3が配置されている。外装ケース2の二つの開口のうち、表面側の開口は、カバーガラスで塞がれており、裏面側の開口は裏蓋で塞がれている。
図2は、時計1のムーブメント10の要部を示す平面図である。
図1、図2に示すように、時計1は、外装ケース2内に収容されたムーブメント10と、時刻情報を表示する時針4A、分針4B、秒針4Cと、持続時間を指示するパワーリザーブ針5とを備えている。文字板3には、カレンダー小窓3Aが設けられており、カレンダー小窓3Aから、日車6が視認可能となっている。また、文字板3には、時刻を指示するためのアワーマーク3Bと、パワーリザーブ針5で持続時間を指示する扇形のサブダイヤル3Cとが設けられている。
外装ケース2の側面には、りゅうず7が設けられている。りゅうず7は、時計1の中心に向かって押し込まれた0段位置から1段位置および2段位置に引き出されて移動することができる。
りゅうず7を0段位置で回転すると、後述するように、ムーブメント10に設けた第1ぜんまい20および第2ぜんまい30を巻き上げることができる。第1ぜんまい20および第2ぜんまい30の巻上げに連動して、パワーリザーブ針5が移動する。本実施形態の時計1は、第1ぜんまい20および第2ぜんまい30をフルに巻き上げた場合に、約100時間の持続時間を確保できる。なお、持続時間は100時間より多い時間となるように設定されてもよく、また、100時間よりも少ない時間となるように設定されていてもよい。
りゅうず7を1段位置に引いて回転すると、日車6を移動して日付を合わせることができる。りゅうず7を2段位置に引くと秒針4Cが停止し、2段位置でりゅうず7を回転すると、時針4A、分針4Bが移動して時刻を合わせることができる。りゅうず7による日車6や時針4A、分針4Bの修正方法は、従来の機械時計と同様であるため説明を省略する。
[ムーブメント]
図3および図4は、ムーブメント10の要部を示す斜視図である。
図2〜4に示すように、ムーブメント10は、第1ぜんまい20が収納される第1香箱21および第2ぜんまい30が収納される第2香箱31を備える。時針4A、分針4B、秒針4Cおよびパワーリザーブ針5は、後述するように、ムーブメント10の指針軸に取り付けられ、ムーブメント10の第1ぜんまい20および第2ぜんまい30によって駆動される。
また、ムーブメント10は、第1ぜんまい20および第2ぜんまい30を巻き上げる手動巻上機構40および自動巻上機構50と、第1ぜんまい20および第2ぜんまい30の持続時間を示すパワーリザーブ表示機構と、第1ぜんまい20および第2ぜんまい30のトルクを伝達する輪列90と、輪列90を介して伝達されるトルクで駆動される発電機80とを備える。
[第1ぜんまいおよび第1香箱]
第1ぜんまい20は、第1香箱21に収納されている。第1香箱21は、第1香箱車22と、第1香箱真23を備えている。第1香箱真23には、第1香箱真23と一体に回転する第1角穴車24が取り付けられている。
[手動巻上機構]
手動巻上機構40は、りゅうず7が取り付けられた巻真41と、つづみ車42と、きち車43と、丸穴車44と、角穴第1伝え車45と、角穴第2伝え車46と、角穴第3伝え車47とを備える。角穴第3伝え車47は、第1角穴車24に噛み合っている。
このため、利用者がりゅうず7を0段位置で回転操作すると、巻真41およびつづみ車42が回転する。りゅうず7が0段位置の場合、つづみ車42はきち車43に噛み合っており、つづみ車42の回転は、きち車43から丸穴車44、角穴第1伝え車45、角穴第2伝え車46、角穴第3伝え車47に順次伝達される。このため、第1角穴車24および第1香箱真23が回転し、第1ぜんまい20が巻き上げられる。
[自動巻上機構]
自動巻上機構50は、図示略の回転錘と、当該回転錘を回動自在に軸支し、外輪に回転錘と一体で回転する歯車を備える図示略のベアリングと、このベアリングの歯車に噛み合う偏心車53と、爪レバー54と、伝え車55とを備える。
偏心車53は、回転錘の回動により、正逆両方向に回動する。爪レバー54は、偏心車53の回転軸に対して偏心した軸によって、偏心車53に対して回動自在に取り付けられている。
偏心車53が回転錘に連動して回動すると、偏心車53に取り付けられた爪レバー54は、伝え車55に近づく方向および遠ざかる方向に進退運動し、伝え車55を一方向に回転する。伝え車55には、第1角穴車24に噛み合う第2伝え車553が一体に設けられる。そして、第1角穴車24は、当該第2伝え車553の回転に連動して回転する。第1角穴車24が回転すると、第1香箱真23が第1角穴車24と一体で回転し、第1ぜんまい20が巻き上げられる。
したがって、本実施形態の時計1は、りゅうず7を操作することによる手巻巻上げと、回転錘の回動させることによる自動巻上げの両方で、第1ぜんまい20を巻き上げる。
[第2ぜんまいおよび第2香箱]
第2ぜんまい30は、第2香箱31に収納されている。第2香箱31は、第2香箱車32と、第2香箱真33を備えている。第2香箱真33は、第2角穴車34と一体に回転可能とされている。
第2ぜんまい30は、第1ぜんまい20によって巻き上げられる。すなわち、第1ぜんまい20が巻き上げられて第2ぜんまい30を巻き上げ可能なトルクが蓄積されると、第1香箱21の第1香箱車22が回転する。第1香箱車22は、中間車27を介して第2香箱31の第2角穴車34に噛み合っており、第1香箱車22が回転すると、第2角穴車34および第2香箱真33が回転し、第2ぜんまい30が巻き上げられる。
したがって、本実施形態の時計1では、手動巻上機構40および自動巻上機構50のいずれによっても第1ぜんまい20および第2ぜんまい30を巻き上げることができる。なお、時計1としては、手動巻上機構40または自動巻上機構50の一方のみを設けてもよい。
[発電機]
発電機80は、ローター81およびコイルブロック82、83を備えて構成される。ローター81は、ローター磁石81A、ローターかな81B、ローター慣性円板81Cを備えている。ローター慣性円板81Cは、第2香箱車32からの駆動トルク変動に対しローター81の回転数変動を少なくする。コイルブロック82、83は、各コアにコイルをそれぞれ巻線して構成されたものである。
したがって、発電機80は、外部からのトルクでローター81が回転すると、コイルブロック82、83によって誘起電力を発生し、電気エネルギーを出力してIC等に供給できる。また、コイルをショートさせることで、ローター81にブレーキを加えることができ、ブレーキ力を制御することで、ローター81の回転周期を一定に調速できる。
[輪列]
次に、第1ぜんまい20および第2ぜんまい30からの機械的エネルギーによって時針4A、分針4B、秒針4Cを駆動する輪列90について説明する。
前記輪列90は、二番車92、三番車93、四番車94、五番車95、六番車96を備えている。第2香箱車32の回転は、二番車92へ伝達された後、三番車93、四番車94、五番車95、六番車96と順次増速され、ローター81へと伝達される。
二番車92には図示しない筒かなを介して分針4Bが固定され、四番車94には秒針4Cが固定されている。また、筒かなには図示略の日の裏車を介して、図示略の筒車が接続され、この筒車に時針4Aが固定されている。
このような時計1では、発電機80からの交流出力は、昇圧整流、全波整流、半波整流、トランジスター整流等からなる整流回路を通して昇圧、整流されて平滑用コンデンサーに充電され、このコンデンサーからの電力で発電機80の回転周期を制御する図示しない回転制御装置を作動させている。なお、回転制御装置としては、発振回路、分周回路、回転検出回路、回転数比較回路、電磁ブレーキ制御手段等を含む集積回路によって構成され、発振回路には水晶振動子が用いられる。
[第1香箱車、中間車、第2角穴車の噛み合い]
図5は、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34の噛み合い状態を示す平面図である。
図5に示すように、第1香箱車22は、本体部221と、本体部221の外周に沿って設けられた歯部222とを有する。本実施形態では、第1香箱車22の歯部222は90個設けられている。
中間車27は、本体部271と、本体部271の外周に沿って設けられた歯部272とを有する。
そして、第1香箱車22の歯部222の1つと、中間車27の歯部272の1つとが噛み合った状態となっている。これにより、第1ぜんまい20の機械的エネルギーによって第1香箱車22が時計回りに回転した際に、中間車27は反時計回りに回転する。
第2角穴車34は、本体部341と、本体部341の外周に沿って設けられた歯部342とを有する。本実施形態では、第2角穴車34の歯部342は90個設けられている。すなわち、第1香箱車22の歯数と第2角穴車34の歯数とは同じである。
そして、中間車27の歯部272の1つと、第2角穴車34の歯部342の1つが噛み合った状態となっている。これにより、第1香箱車22によって中間車27が反時計回りに回転した際に、第2角穴車34は時計回りに回転する。
本実施形態では、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34は、第1香箱車22の中心点P1および中間車27の中心点P2を結ぶ第1線分A1と、中心点P2と第2角穴車34の中心点P3とを結ぶ第2線分A2との交差角度が、所定の角度θを成すように配置されている。なお、中心点P1は第1香箱車22の回転中心であり、中心点P2は中間車27の回転中心であり、中心点P3は第2角穴車34の回転中心である。
ここで、本実施形態では、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34における噛み合い始めから噛み合い終わりまで、すなわち、1つの歯部と1つの歯部とが接触してから離れるまでの時間を「噛合い1ピッチ」と定義する。つまり、第1香箱車22および第2角穴車34は、歯数が90個なので、90ピッチで1回転する、すなわち、噛合い1ピッチで4°回転する。
そして、所定の角度θは、後述するように、第1香箱車22と中間車27との噛み合い始めのタイミングと、中間車27と第2角穴車34との噛み合い始めのタイミングとが0.5ピッチ分ずれるように設定されている。すなわち、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34は、第1香箱車22と中間車27との噛み合い始めのタイミングと、中間車27と第2角穴車34との噛み合い始めのタイミングとが0.5ピッチ分ずれるように配置されている。
なお、本実施形態では、第1香箱車22の歯数と第2角穴車34の歯数とは同じなので、第1香箱車22と中間車27との噛み合いと、中間車27と第2角穴車34との噛み合いは、常に0.5ピッチ分ずれる。
図6は、図5におけるVIの領域を拡大した拡大平面図であり、第1香箱車22と中間車27とが接触点C11にて噛み合い始めている状態を示す図である。
図6に示す状態において、第1香箱車22の歯部222Aと中間車27の歯部272Aとが接触点C11にて噛み合い始めの状態になっている。すなわち、歯部222Aと歯部272Aとの噛み合いが0ピッチの状態になっている。
一方、図6に示す状態において、中間車27の歯部272Cと第2角穴車34の歯部342Cとは、接触点C21にて接触しており、噛み合い始めから0.5ピッチ分回転した状態となっている。すなわち、歯部272Cと歯部342との噛み合いが0.5ピッチの状態になっている。
図7は、図6の状態から第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34を0.5ピッチ分回転させた状態を表す拡大平面図である。
図7に示すように、第1香箱車22の歯部222Aと中間車27の歯部272Aとは、接触点C11にて接触しており、噛み合い始めから0.5ピッチ分回転した状態となっている。すなわち、第1香箱車22の歯部222Aと中間車27の歯部272Aとの噛み合いが0.5ピッチの状態になっている。
また、中間車27の歯部272Cと第2角穴車34の歯部342Cとは、噛み合い始めから1.0ピッチ分回転した状態となっている。すなわち、歯部272Cと歯部342とは、噛み合い終わりの状態になっている。
そして、歯部272Cおよび歯部342Cの次に接触する歯部272Dと歯部342Dとが、接触点C22にて噛み合い始めの状態になっている。すなわち、歯部272Dと歯部342Dとの噛み合いが0ピッチの状態になっている。
図8は、図7の状態から第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34を0.5ピッチ分回転させた状態を表す拡大平面図である。
図8に示すように、第1香箱車22の歯部222Aと中間車27の歯部272Aとは、噛み合い始めから1.0ピッチ分回転した状態となっている。すなわち、歯部222Aと歯部272Aとは、噛み合い終わりの状態になっている。
そして、歯部222Aおよび歯部272Aの次に接触する歯部222Bと歯部272Bとが、接触点C12にて噛み合い始めの状態になっている。すなわち、歯部222Bと歯部272Bとの噛み合いが0ピッチの状態になっている。
一方、図8に示す状態において、中間車27の歯部272Dと第2角穴車34の歯部342Dとは、接触点C22にて接触しており、噛み合い始めから0.5ピッチ分回転した状態となっている。
このように、本実施形態では、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34は、第1香箱車22と中間車27との噛み合い始めのタイミングと、中間車27と第2角穴車34との噛み合い始めのタイミングとが0.5ピッチ分ずれるように配置されている。
なお、本実施形態では、第1香箱車22の歯部222Aと中間車27の歯部272Aとが噛み合い始めてから0.5ピッチ分回転した際に、中間車27の歯部272Dと第2角穴車34の歯部342Dとが噛み合い始めるように、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34は配置されていたが、これに限定されない。例えば、所定の角度θを噛合い1ピッチ分ずつずらすことにより、第1香箱車22の歯部222Bと中間車27の歯部272Bとが噛み合い始めてから0.5ピッチ分回転した際に、中間車27の歯部272Dと第2角穴車34の歯部342Dとが噛み合い始めるように、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34は配置されていてもよい。すなわち、第1香箱車22と中間車27との噛み合い始めのタイミングと、中間車27と第2角穴車34との噛み合い始めのタイミングとがずれるように、所定の角度θが設定されていればよい。これにより、所定の角度θは、噛合い1ピッチ角分ずつ、つまり、4°分ずつずれるように設定できるので、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34の配置の自由度を大きく損なうことなく、第1香箱車22と中間車27との噛み合い始めのタイミングと、中間車27と第2角穴車34との噛み合い始めのタイミングとをずらすことができる。
[第1香箱車、中間車、第2角穴車の噛み合い効率]
図9は、第1香箱車22と中間車27との、噛合い1ピッチ間における噛み合い効率を示す図である。
図9に示すように、第1香箱車22と中間車27とは、0ピッチの状態、すなわち、噛み合い始めの状態において、噛み合い効率が最低となっている。具体的には、0ピッチの状態において、第1香箱車22と中間車27との噛み合い効率は、約95.3%である。
そして、第1香箱車22および中間車27が回転して、ピッチが進むにつれて、第1香箱車22と中間車27との噛み合い効率が上昇する。ピッチに対する噛み合い効率の傾きは、0ピッチから約0.65ピッチまでは急であり、0.65ピッチ以降緩やかになっている。
図10は、中間車27と第2角穴車34との、噛合い1ピッチ間における噛み合い効率を示す図である。
図10に示すように、中間車27と第2角穴車34とは、0ピッチの状態、すなわち、噛み合い始めの状態において、噛み合い効率が最低となっている。具体的には、0ピッチの状態において、中間車27と第2角穴車34との噛み合い効率は、約96.8%である。
そして、中間車27および第2角穴車34が回転して、ピッチが進むにつれて、中間車27と第2角穴車34との噛み合い効率が上昇する。噛み合い効率の上昇の傾きは、0ピッチから約0.35ピッチまで急であり、0.35ピッチ以降緩やかになっている。
図11は、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34を組み合わせた場合の噛合い1ピッチ間における噛み合い効率を示す図である。なお、図11では、第1香箱車22と中間車27との噛み合い状態のピッチを横軸に示している。
図11に示すように、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34の噛み合い効率は、0ピッチの状態において最低となっている。具体的には、0ピッチの状態において、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34の噛み合い効率は、約94.8%である。なお、この際、第1香箱車22と中間車27とは0ピッチの状態になっており、中間車27と第2角穴車34とは0.5ピッチの状態になっている。
そして、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34が回転して、ピッチが進むにつれて、噛み合い効率が上昇し、0.5ピッチ付近で噛み合い効率が急低下する。これは、それまで噛み合っていた中間車27の歯部272と第2角穴車34の歯部342とが噛み合い終わりの状態となり、次の中間車27の歯部272と第2角穴車34の歯部342とが噛み合い始めの状態になって、中間車27と第2角穴車34との噛み合い効率が低下したためである。
その後、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34の噛み合い効率は、ピッチが進むにつれて上昇する。
このように、本実施形態では、第1香箱車22と中間車27との噛み合い始めのタイミングと、中間車27と第2角穴車34との噛み合い始めのタイミングとがずれている、すなわち、噛み合い効率が最低になるタイミングが異なっているので、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34の噛み合い効率を平準化することができる。
[比較例]
図12は、比較例の第1香箱車、中間車、第2角穴車を組み合わせた場合の噛合い1ピッチ間における噛み合い効率を示す図である。比較例では、第1香箱車と中間車との噛み合い始めのタイミングと、中間車と第2角穴車の噛み合い始めのタイミングとが同じになるように、第1香箱車、中間車、第2角穴車が配置されている。なお、第1香箱車、中間車、第2角穴車は、上記した配置以外の条件については、前述した本開示の実施形態と同様になるように設計されている。
図12に示すように、第1香箱車、中間車、第2角穴車の噛み合い効率は、0ピッチの状態において最低となっている。具体的には、0ピッチの状態において、第1香箱車、中間車、第2角穴車の噛み合い効率は、約92.3%であり、前述した本開示の実施形態の値に比べて低くなっている。これは、比較例では、第1香箱車と中間車との噛み合い始めのタイミングと、中間車と第2角穴車との噛み合い始めのタイミングとが同じになっている、すなわち、噛み合い効率が最低になるタイミングが同じになっているためである。
この場合、0ピッチの状態において、第1香箱車から伝達される力によって、第2角穴車を回転させる力が弱くなるので、第2香箱に収容された第2ぜんまいを巻き上げる力が十分に得られなくなるタイミングが発生する。そのため、第2ぜんまいを安定的に巻き上げることができなくなる可能性がある。
[シミュレーション結果について]
図13は、第1香箱車と中間車との噛み合い始めのタイミングに対して、中間車と第2角穴車との噛み合い始めのタイミングを所定ピッチずらした場合の、第1香箱車、中間車、第2角穴車の噛み合い効率の最低値をシミュレーションにより求めた結果である。
図13に示すように、ピッチズレ量が0ピッチの場合、すなわち、第1香箱車と中間車と、中間車と第2角穴車とが同じタイミングで噛み合い始める場合、噛み合い効率の最低値が最も低くなることが示唆された。
そして、ピッチズレ量が大きくなるにつれて、噛み合い効率の最低値は大きくなる。特に、ピッチズレ量が約0.4ピッチまでは、噛み合い効率の最低値は急激に大きくなる。その後、ピッチズレ量が約0.4ピッチから約0.7ピッチまでは、噛み合い効率の最低値は緩やかに大きくなり、ピッチズレ量が約0.7ピッチを超えると、噛み合い効率の最低値が急激に小さくなる。すなわち、ピッチズレ量が0.4ピッチよりも小さい場合や、0.7ピッチを超える場合は、噛み合い効率の最低値が急激に小さくなる。そのため、ピッチズレ量は噛合い0.4ピッチ以上、かつ、噛合い0.7ピッチ以下であることが望ましいことが示唆された。
このような本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、第1香箱車22と中間車27との噛み合い効率が最低になるタイミングと、中間車27と第2角穴車34との噛み合い効率が最低になるタイミングとが異なるように、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34が配置されている。
これにより、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34の噛み合い効率を平準化することができる。そのため、噛み合い効率が極端に低くなることを防ぐことができるので、第1香箱車22から伝達される力により、第2角穴車34を回転させる力が弱くなることを抑制でき、第2ぜんまい30を安定的に巻き上げることができる。
本実施形態では、第1香箱車22と中間車27との噛み合い始めのタイミングと、中間車27と第2角穴車34との噛み合い始めのタイミングとが0.5ピッチ分ずれている。すなわち、第1香箱車22と中間車27との噛み合い始めのタイミングに対する、中間車27と第2角穴車34との噛み合い始めのタイミングとが、噛合い0.4ピッチ以上、かつ、噛合い0.7ピッチ以下であることを満たしている。
そのため、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34の噛み合い効率の最低値が極端に低くなることを抑制することができる。
本実施形態では、第1線分A1と第2線分A2との交差角度が所定の角度θになるように、第1香箱車22、中間車27、および第2角穴車34を配置することにより、第1香箱車22と中間車27との噛み合い効率が最低になるタイミングと、中間車27と第2角穴車34との噛み合い効率が最低になるタイミングとを異ならせている。
これにより、第1香箱車22、中間車27、および第2角穴車34の配置の自由度を大きく損なうことなく、第1香箱車22と中間車27との噛み合い効率が最低になるタイミングと、中間車27と第2角穴車34との噛み合い効率が最低になるタイミングとをずらすことができる。
[変形例]
なお、本開示は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。
前述した実施形態では、第1線分A1と第2線分A2との交差角度が所定の角度θを成すように、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34を配置することにより、所望のピッチズレ量を得られるようにしていたが、これに限定されない。例えば、第1線分A1と第2線分A2とがそれぞれ所定の長さになるように、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34を配置することにより、所望のピッチズレ量を得られるようにしてもよい。
また、第1香箱車22および第2角穴車34の歯数を所定の数になるように設ける、例えば、第1香箱車22および第2角穴車34の歯数を89個にしたり、91個にしたりすることにより、所望のピッチズレ量を得られるようにしてもよい。
さらに、前述した角度θ、第1線分A1および第2線分A2の長さ、第1香箱車22および第2角穴車34の歯数のうちの2つの組み合わせ、または、これら3つの組み合わせにより、所望のピッチズレ量を得られるようにしてもよい。
上記のように構成することにより、第1香箱車22、中間車27、第2角穴車34の配置の自由度をより高くすることができる。
前述した実施形態では、時計1は、発電機80および輪列90を備える電子制御式機械時計として構成されていたが、これに限定されない。例えば、時計1は、ガンギ、アンクルなどの一般的な調速機構を備える機械時計として構成されていてもよく、2つのぜんまいを備えた時計であればよい。
1…時計、10…ムーブメント、20…第1ぜんまい、21…第1香箱、22…第1香箱車、23…第1香箱真、24…第1角穴車、27…中間車、30…第2ぜんまい、31…第2香箱、32…第2香箱車、33…第2香箱真、34…第2角穴車、221…本体部、222,222A,222B…歯部、271…本体部、272,272A,272B,272C,272D…歯部、341…本体部、342,342C,342D…歯部、第1線分…A1、第2線分…A2。

Claims (5)

  1. 第1角穴車、第1香箱真、第1ぜんまい、および第1香箱車を有する第1香箱と、
    前記第1香箱車の回転が伝達される中間車と、
    前記中間車の回転が伝達される第2角穴車、第2香箱真、第2ぜんまい、および第2香箱車を有する第2香箱と、を備え、
    前記第1香箱車の歯数は、前記第2角穴車の歯数と同じであり、
    前記第1香箱車と前記中間車との噛み合い効率が最低になるタイミングと、前記中間車と前記第2角穴車との噛み合い効率が最低になるタイミングとが異なるように、前記第1香箱車、前記中間車、および前記第2角穴車が配置される
    ことを特徴とする時計。
  2. 請求項1に記載の時計において、
    前記第1香箱車と前記中間車との噛み合い始めのタイミングと、前記中間車と前記第2角穴車との噛み合い始めのタイミングとが噛合い0.4ピッチ以上、かつ、噛合い0.7ピッチ以下ずれている
    ことを特徴とする時計。
  3. 請求項1または請求項2に記載の時計において、
    前記第1香箱車の中心点および前記中間車の中心点を結ぶ第1線分と、前記中間車の中心点および前記第2角穴車の中心点を結ぶ第2線分との交差角度が所定の角度になるように、前記第1香箱車、前記中間車、および前記第2角穴車を配置することにより、前記第1香箱車と前記中間車との噛み合い効率が最低になるタイミングと、前記中間車と前記第2角穴車との噛み合い効率が最低になるタイミングとを異ならせる
    ことを特徴とする時計。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の時計において、
    前記第1香箱車の中心点および前記中間車の中心点を結ぶ第1線分と、前記中間車の中心点および前記第2角穴車の中心点を結ぶ第2線分とがそれぞれ所定の長さになるように、前記第1香箱車、前記中間車、および前記第2角穴車を配置することにより、前記第1香箱車と前記中間車との噛み合い効率が最低になるタイミングと、前記中間車と前記第2角穴車との噛み合い効率が最低になるタイミングとを異ならせる
    ことを特徴とする時計。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の時計において、
    前記第1香箱車の歯数および前記第2角穴車の歯数を所定の数になるように設けることにより、前記第1香箱車と前記中間車との噛み合い効率が最低になるタイミングと、前記中間車と前記第2角穴車との噛み合い効率が最低になるタイミングとを異ならせる
    ことを特徴とする時計。
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