JP5034441B2 - 潜熱蓄熱媒体の製造方法、潜熱蓄熱媒体 - Google Patents
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なお、以下において、「4級アンモニウム化合物をゲストとし、水分子をホストとする包接水和物」を単に「4級アンモニウム化合物の包接水和物」又は「4級アンモニウム化合物をゲストとする包接水和物」という場合がある。
本発明の第4の形態に係る潜熱蓄熱媒体は、4級アンモニウム化合物を含む水溶液に外部から気体を供給しながら又は外部から供給した気体を混合した後、これを冷却することによって生成される潜熱蓄熱性能を有する包接水和物を組成物として含むものである。
本発明の第6の形態に係る包接水和物の製造方法は、第5の形態に係る包接水和物の製造方法であって、外部から供給する気体が前記水溶液の脱酸素用の気体であるものである。
(1)本発明における4級アンモニウム化合物の代表例は、テトラnブチルアンモニウム塩、テトラisoアミルアンモニウム塩、トリnブチル・ペンチルアンモニウム塩などである。
しかし、本発明において、外部から供給すべき気体には水素やヘリウムは含まれない。水素やヘリウムのような小さな分子の気体を4級アンモニウム化合物を含む水溶液に外部から供給しながら又は外部から供給し混合した後、冷却することによって生成した包接水和物では、潜熱蓄熱量の増加が起こらなかった(このことは、小さな分子の気体からは気体包接水和物は生成されないことと関係している可能性があるが、現時点では定かでない)。
他方、本発明において、外部から供給すべき気体には、4級アンモニウム化合物をゲストとする包接化合物に取り込まれる又は、4級アンモニウム化合物とともに水分子に包接されて包接水和物の構成要素となり得るもの、具体的には空気、窒素、酸素、二酸化炭素、アルゴン、クリプトン、キセノン、硫化水素、メタン、エタン、プロピレン、トリメチレンオキシド、プロパン、ブタン、各種フロンといった水素やヘリウムよりも大きな分子の気体が含まれる(これらは当該包接水和物の包接格子の一部又は全部の寸法を大きくする効果又は包接水和物の水和数を増加させる効果を有する大きさの分子の気体であると推測されるが、現時点では定かではない)。
従って、本発明の技術的特徴が外部から気体を供給すること自体にあるものの、当該気体としては、水素やヘリウムよりも大きな分子の気体であって、4級アンモニウム化合物をゲストとする包接化合物に取り込まれる又は、4級アンモニウム化合物とともに水分子に包接されて包接水和物の構成要素となり得るものと整理することができる。
なお、気体の水溶液への溶解速度や最大溶解濃度に着目すると、潜熱蓄熱量が多い包接水和物をより効率的に生成又は製造するためには加圧下の方が常圧下より、常圧下の方が減圧下より好ましい。他方、設備や運転のコストに着目すると、常圧下がより好ましい。
本発明の第1及び第2の形態によれば、外部から供給された気体を取り込んでいない又は当該気体を包接していないものよりも高い潜熱蓄熱性能を有する包接水和物を実現することができる。
本発明の第3及び第4の形態によれば、より高い潜熱蓄熱性能又はより高い潜熱蓄熱量を有する包接水和物を組成物として含む潜熱蓄熱媒体を実現することができる。
本発明の第5の形態によれば、外部から供給された気体を取り込んでいない又は当該気体を包接していないものよりも高い潜熱蓄熱性能を有する包接水和物を製造することができる。
これは、包接水和物の粒子が水溶液中に分散してスラリーとなり、このスラリーを潜熱蓄熱媒体として使用する場合において特に有益である。即ち、当該スラリーが容器、配管等の内面材料に接触する場合であって、そのスラリー中の溶存酸素量を減らして当該内面材料の腐食や劣化を防止又は抑制する必要があるときには、そのスラリーの原液に相当する前記水溶液に脱酸素用気体を供給して脱酸素処理を施せば、腐食抑制剤の投入量を低減もしくは腐食抑制剤投入を不要にできるとともに、そのスラリーの潜熱蓄熱量を増加させることができ、一石二鳥の効果を奏する。
実験は、4級アンモニウム化合物として臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)を用い、水和物スラリーの生成過程において、気体を吹き込まない場合と、気体を吹き込んだ場合との二つの場合を行い、生成された水和物スラリーの蓄熱量と融点を比較した。
常圧下、TBAB水溶液(14.4wt%)をガラスビーカーに入れ、ガラスビーカーに気体(空気、窒素、二酸化炭素)をバブラーを通して吹き込みつつ、ガラスビーカーを0℃の冷却液に浸けて冷却し、気体を含むTBAB水和物を生成させて、水和物スラリーを生成させた。なお、冷却している間、ビーカー内部の攪拌を続けた。
生成した水和物スラリーを、断熱容器に入れ、攪拌しながら浸漬した電気ヒータにより加熱し、水和物スラリーを溶解した。そのときに与えた熱量と水和物スラリー温度から、7℃〜10℃の温度範囲における蓄熱量を計測した。また、水和物スラリー中の固体水和物が完全に溶けきる“融点”を計測した。
計測結果を下記の表1に示す。なお、表1には、気体吹き込みによる蓄熱量の増加比率について、気体を吹き込まない場合を1として算出した増熱比率を示している。
TBAB水溶液の濃度が8wt%の場合の計測結果を下記の表2に示す。 蓄熱量は、5℃〜8℃の温度範囲にて測定した。
さらに、水和物粒子の凝集性に関しては、気体を吹き込んで製造した水和物が気体を吹き込まない場合のものよりも若干凝集性が小さいことも確認された。
また、水和物スラリーが加熱され水和物固体が融解する間、微細な気泡が発生した。気泡から捕集した気体の成分は吹き込んだ気体であることを確認した。
蓄熱量は、5℃〜8℃の温度範囲にて測定した。
以下の実施形態はかかる実験による結果を基になされたものである。
図1は本実施の形態に係る包接水和物の製造装置の説明図である。以下、図1に基づいて本実施の形態に係る包接水和物の製造装置を説明する。
本実施の形態に係る包接水和物の製造装置は、4級アンモニウム化合物を含む水溶液を貯留すると共に生成された包接水和物を貯留する蓄熱槽1と、蓄熱槽1から前記水溶液の供給を受けて該水溶液に気体を供給して混合する混合器5と、混合器5で混合された4級アンモニウム化合物と気体を含む水溶液を冷却して前記気体と4級アンモニウム化合物をゲストとして含む包接水和物を生成する生成器9と、該生成器9から前記包接水和物と未反応の気体の供給を受けて前記未反応の気体を分離する分離器11と、を備えている。
以下、各構成を詳細に説明する。
蓄熱槽1は、4級アンモニウム化合物を含む水溶液を貯留すると共に生成された包接水和物を貯留する。蓄熱槽1に貯留された4級アンモニウム化合物を含む水溶液はポンプ3によって汲み出されて混合器5に供給される。
混合器5は、4級アンモニウム化合物を含む水溶液に気体を供給して混合する。混合器5によって4級アンモニウム化合物を含む水溶液に気体が混合された後、混合流体はポンプ7によって生成器9に送られる。
混合器5の一つの態様としては、混合器5が水溶液を充填したタンクからなり気体が微細な気泡として水溶液中に分散されるようなものがある。この場合、気液接触面積が大きく取れるように気泡径は小さいほうが好ましい。
混合器5の別の態様として、気体を充填した容器内に水溶液をスプレーノズルにより噴霧し気体と接触させ水溶液に気体を溶解させるようなものでもよい。
なお、混合器5を省略して生成器9内の水溶液に気体を供給することにより、水溶液と気体を混合するようにしてもよい。
生成器9は冷却機能を備えており、混合器5で混合された4級アンモニウム化合物と気体を含む水溶液を冷却して気体と4級アンモニウム化合物をゲストとして含む包接水和物を生成する。生成器9には攪拌機構を設けるのが好ましい。
包接水和物が生成され、生成器9内で攪拌が行われることにより、包接水和物粒子が水溶液に分散した水和物スラリーが生成される。
生成器9においては、上記の包接水和物と共に未反応の気体が存在する。
分離器11は、生成器9から包接水和物と未反応の気体の供給を受けて前記未反応の気体を分離する。
分離器11の形式は任意であり、例えばサイクロンセパレータなどを利用することができるが、分離した気体中へのスラリー液滴混入を可能な限り少なくするため、例えば衝突分離式のミストセパレータを併せて用いることが望ましい。
分離器11で分離された気体は、気体タンク13に戻され、ポンプ15によって再び混合器5に送られ水溶液に混合される。もっとも、気体が例えば空気のように安価で環境に影響を与えないものの場合、気体は循環使用せず放散するようにしてもよい。
蓄熱槽1に4級アンモニウム化合物を含む水溶液を充填し、この水溶液をポンプ3で汲み出して混合器5に供給する。混合器5では、供給された水溶液に気体タンク13から気体を供給して水溶液と気体を混合し、気体を水溶液に溶解させる。混合器5で混合された4級アンモニウム化合物と気体を含む水溶液をポンプ7によって生成器9に供給する。生成器9では、供給された水溶液を冷却して気体と4級アンモニウム化合物をゲストとして含む包接水和物が生成され、生成器9内で攪拌が行われることにより、包接水和物粒子が水溶液に分散した水和物スラリーが生成される。生成器9で生成された水和物スラリーと未反応気体が分離器11に供給され、水和物スラリーと未反応の気体が分離される。分離された水和物スラリーは蓄熱槽1に貯留される。他方、分離器11で分離された気体は、気体タンク13に戻されて再度混合器5に供給されて利用される。
図2は本発明の実施の形態2に係る冷房空調設備の説明図である。
本実施の形態の冷房空調設備は、実施の形態1の包接水和物の製造装置を含み、該製造装置で生成される包接水和物スラリーを熱輸送媒体として用いたものである。図2において、図1と同一部分には同一の符号を付してある。
昼間の冷房運転時において、蓄熱槽1内の水和物スラリーをポンプ21によって熱輸送媒体として室内空調機に流送する。室内空調機において、水和物スラリーは空気と熱交換して冷熱を供給し室内を冷房する。この熱交換により、水和物スラリーの水和物は融解して水溶液と気体の混合流体となり、第2分離器19に戻される。
第2分離器19に戻された混合流体は水溶液と気体とに分離され、水溶液は蓄熱槽1に戻され、その一部は直接混合器5に送られる。また、第2分離器19で分離された気体は、気体タンク13に貯留され、その後、混合器5に送られ水溶液に混合される。
また、蓄熱槽1を設けずに生成器9で生成した水和物スラリーを冷熱利用装置17へ供給するようにしてもよい。この場合には、混合器5の容量を大きくするのが好ましい。
冷媒凝縮液が減圧される際にはその周囲は水溶液で囲まれており、減圧に伴う冷媒凝縮液の気化による冷却(温度低下)の直接的効果は主として凝縮液の周囲に存在する水溶液に及ぶ。このため、配管や容器壁等の固体面が水和物生成に寄与するほど冷却されることがなく、冷却の効果が水和物生成に直接かつ効果的に及び水和物の生成が効果的に行われる。そして、水和物の生成が主として水溶液中で進行するため、配管や容器壁等に付着することもない。
なお、冷媒としては自然冷媒、各種フロンを用いることができる。
なお、保冷容器としては、水溶液は漏洩せず気体透過性のある素材を用いた袋体などを利用すればよい。
気体と4級アンモニウム化合物をゲストとして含む包接水和物を含む潜熱蓄熱媒体は、スラリー状態にて熱輸送媒体として利用できる。その場合、所望の気体を含む水和物スラリーを製造し、熱を必要とするところに送って利用するとともに、包接水和物が溶解する際に発生する気体を利用することが可能である。
5 混合器
9 生成器
11 分離器
17 冷熱利用装置
19 第2分離器
Claims (4)
- 4級アンモニウム化合物をゲストとする包接水和物を組成物として含む潜熱蓄熱媒体の製造方法であって、
前記4級アンモニウム化合物を含む水溶液に外部から気体を供給しながら又は外部から供給した気体を混合した後、前記水溶液を冷却する第1の工程と、
該第1の工程における前記水溶液の冷却により、前記気体と前記4級アンモニウム化合物がゲストとして水分子に包接されてなる包接水和物であって、前記気体が供給又は混合されていない前記水溶液の冷却により得られる包接水和物よりも潜熱蓄熱性能が高いものを組成物として含む潜熱蓄熱媒体を生成させる第2の工程とを有することを特徴とする潜熱蓄熱媒体の製造方法。 - 前記潜熱蓄熱媒体は、気体が供給又は混合されていない水溶液を冷却する場合よりも10%以上潜熱蓄熱量が増加していることを特徴とする請求項1記載の潜熱蓄熱媒体の製造方法。
- 前記気体は、前記水溶液の脱酸素用の気体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の潜熱蓄熱媒体の製造方法。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする潜熱蓄熱媒体。
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