JP5031683B2 - ゴルフクラブ及びクラブヘッドの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、中空構造のクラブヘッドの製造方法及び中空構造のクラブヘッドを備えるゴルフクラブに関する。
従来、中空構造のクラブヘッドの大型化に伴い、このクラブヘッドの中空部内にリブを設け、例えば薄肉化した部位を補強し、剛性を増大し、又は、打球音を最適にすることが行われている。
このようなリブには、ソール部の内面に、フェース部側からバック側サイドに向かって、フェース部と略垂直方向に複数のリブを平行又は放射状に配置することにより、インパクト時にソール部を撓みにくくすると共に、クラウン部に応力を集中させてクラウン部を撓みやすくし、ヘッドスピードの遅いプレーヤが使用した場合でも、飛距離を増大できるようにしようとするものがある(例えば特許文献1参照)。
特開2003−88601
しかし、このようなリブは、鍛造やプレス成形時に、内面から凸状に突出させて一体成形するため、このリブを形成する材料、大きさ、形状、又は、成形位置等が、例えばクラブヘッドの製造に用いる金型、プレス等による種々の制約を受ける。このため、中空構造のクラブヘッドにリブを設けても、このようなリブの機能を効率よく発揮することができないことがある。
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、リブを形成する材料、形状、又は、配置位置の選択の自由度を向上し、リブの特性を最大限に利用することのできるクラブヘッドの製造方法及びこのようなクラブヘッドを備えるゴルフクラブを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明によると、中空構造のクラブヘッドに設けたリブ設置領域に、このリブ設置領域の全体にわたって溝孔を貫通形成し、このクラブヘッドの内側に内縁部を突出させかつ外縁部を外側に突出させて、前記溝孔内にリブ部材の長さ方向に沿う全体を配置し、クラブヘッドの外側から、リブ部材を溝孔内に支えた状態でクラブヘッドに溶接し、このリブ部材とクラブヘッドとの溶接部の外側部分を研磨する、クラブヘッドの製造方法が提供される。
前記リブ部材は、前記溝孔の周壁に、この溝孔の延設方向に沿って離隔させて配置した少なくとも3つの支持点で支えられ、クラブヘッドの肉厚方向で最も外側の支持点と最も内側の支持点とが、リブ設置領域の肉厚よりも大きな距離に離隔し、リブ部材がクラブヘッドの内面から立上がった状態に保持されて溶接されることが好ましい。
前記クラブヘッドは、溝孔の周部の少なくとも一部に、内側に盛上る厚肉部が形成されていてもよい。
更に、フェース部と、クラウン部と、ソール部と、トウ側及びヒール側のサイド部と、後部のバック部とで外殻を形成し、この外殻内に内部空間を形成した中空構造の金属製クラブヘッドを備えるゴルフクラブであって、前記クラブヘッドのリブ設置領域の全体にわたって貫通形成した溝孔と、この溝孔を形成した部位と材質の異なる材料で形成されかつこの溝孔に挿入されて一体に固定され、内縁部を前記溝孔からクラブヘッドの内側に突出させかつ端面を前記溝孔から外面に露出させたリブ部材を備えるゴルフクラブが提供される。
本発明のクラブヘッドの製造方法によると、クラブヘッドに貫通形成した溝孔に、クラブヘッドとは別体のリブ部材をその長さ方向に沿う全体を配置して支え、このリブ部材をクラブヘッドに外側から溶接することで、リブ部材は溝孔内においても、リブとして機能し、クラブヘッドの内側への突出量を大きくすることなくその特性を発揮することができ、更に、このリブ部材の材料をクラブヘッドとは別個に選択可能となることで、所要の物性を備えた材料でリブ部材を形成することができ、リブを形成する材料、形状、又は、配置位置の選択の自由度を向上し、リブの特性を最大限に利用するクラブヘッドを製造することができる。
リブ部材を溝孔内で支える少なくとも3つの支持点のうち、最も外側の支持点と最も内側の支持点とが、クラブヘッドの肉厚方向に沿って、リブ設置領域の肉厚よりも大きな距離に配置される場合は、リブ部材が高さ方向に沿って大きく離隔した部位を支えられ、溝孔内で正確な位置及び姿勢で保持しつつ溶接することができ、精度の優れたクラブヘッドを形成することができる。
クラブヘッドが溝孔の周部の少なくとも一部に、内側に盛上る厚肉部を有する場合には、リブ設置領域の強度を向上し、安定化を図ることができる。
更に、クラブヘッドに貫通形成した溝孔と、この溝孔を形成した部位と材質の異なる材料で形成されかつこの溝孔に挿入されて一体に固定され、内縁部を前記溝孔からクラブヘッドの内側に突出させかつ端面を前記溝孔から外面に露出させたリブ部材を備えるゴルフクラブによれば、リブの特性を最大限に利用するクラブヘッドを形成することができる。
図1から図4は本発明の好ましい実施形態によるゴルフクラブ8に用いる金属製クラブヘッド10を示す。
図1に示すように、本実施形態のクラブヘッド10を用いたゴルフクラブ8は、例えば繊維強化樹脂あるいは金属材料で管状構造に形成したシャフト6の先端に、例えばボールを置く地面等の基準水平面Bに対して規定のライ角α及びロフト角βを設定して取り付けられ、基端には天然ゴムあるいは合成ゴム等の柔軟性や軟質材料で形成したグリップ4を取付けてある。ここに、ライ角αは、後述するソール部あるいは基準水平面Bに対するシャフトの軸線6aの取付角度である。
図2から図4に、金属材料で中空構造に形成したクラブヘッド10を詳細に示す。
本実施形態のクラブヘッド10は、フェース部12に打球面を有するフェース部材14を配置し、このフェース部材14をヘッド部材10aが背面側から支える。このヘッド本体10aは、フェース部12の上縁部12aおよび下縁部12bからそれぞれバック側にクラウン部16およびソール部18が延びる。これらのクラウン部16とソール部18との間に、フェース部12のトウ側およびヒール側からそれぞれトウ側サイド部20およびヒール側サイド部22がクラウン部の16の周縁部に沿って湾曲しつつバック側に延び、バック部24に連続する。トウ側サイド部20およびヒール側サイド部22は、フェース部12側で上下方向すなわちクラウン・ソール方向に大きな寸法を有し、バック部24まで次第にその寸法が減少する。したがって、このクラブヘッド10は、実質的にフェース部12とクラウン部16とソール部18とトウ側及びヒール側サイド部20,22と、後部のバック部24とで外殻を形成し、中空部である内部空間Nをこの外殻内に形成する。
なお、フェース部12とクラウン部16との間の上縁部12aは、その間の稜線で特定することができるが、フェース部12の大部分を形成する面部の曲率半径より小さくなる部位で特定してもよい。下縁部12b等のフェース部12を区画する他の部位についても同様である。
ヘッド本体10aの前部開口部に固定されるフェース部材14は、中央部を外方に僅かに膨出させたバルジを有する板状の部材で形成してあり、この前面がゴルフボールを打つ打球面を形成する。このフェース部12の打球面には、略水平方向の浅い凹溝等の好適な手段でトウ・ヒール方向に延びる多数のスコアライン13(図1参照)を形成してあり、ほぼ中央位置には、クラブヘッド10の重心Gを通り、フェース部12の打球面に垂直に延ばした点であるスイートスポットSが位置する。
フェース部材14は、クラウン部16、ソール部18、トウ側およびヒール側サイド部20,22及びバック部24からなるヘッド本体10aの前方側開口を閉塞する板状の部材で形成し、このフェース部12の全体を形成してもよく、または、いわゆる力ップ状に形成され、クラウン部16、ソール部18及びサイド部20,22のフェース部12側の一部を形成していてもよい。更に、フェース部12に形成した所定の大きさの開口に嵌合する板状に形成し、フェース部12の一部のみを形成するものであってもよい。
本実施形態のへッド本体10aは、フェース部12に設けられるフェース部材14を除いて、例えば、チタン系合金、鉄系合金等を鋳造することで一体形成することが好ましく、その前面側に、フェース部12の打球面を構成する力ップ型に形成されたフェース部材14が溶着、接着等によって止着される開口が形成されている。このような一体構造に代え、へッド本体10aを構成する各部材(フェース部、クラウン部、ソール部、サイド部等の外殻を形成する部材)を個別に形成し、この後、組立て、溶着や接着等によって一体化しても良い。更に、クラウン部16を繊維強化金属や繊維強化樹脂等により形成し、または、それらの金属や繊維などの材料を組み合わせて形成することも可能である。
ヘッド本体10aに結合されるフェース部材14は、例えは、チタン系合金、鉄系合金等を、所定の力ップ型形状となるように、プレス加工、或いは鍛造等することで一体形成し、例えばスイートスポットSの位置を含む打球面の平均肉厚(各部の最大肉厚部、最小肉厚部および中間肉厚部の平均値であり、少なくとも所定厚で広い面積の部分の3箇所以上の測定値から得るのが好ましい)を、打球時の衝撃に耐え得る1.5mm〜3.2mm程度に形成するのが好ましい。圧延材で形成する場合には、フェース部12の反発力を高めると共に耐久性を増大するためにその圧延方向をクラウン・ソール方向に沿って配置することが好ましい。また、スイートスポットSが配置される部位を周部よりも僅かに肉厚に形成することで、強度を維持しつつ反発力を増大することができる。
このように形成されたフェース部材14は、ヘッド本体10aに形成した開口の端面に、接着、溶着、ろう付け等の好適な手段によって止着される。もちろん、フェース部12については、別部材となるフェース部材14を止着するのではなく、前記へッド本体10aと共に一体形成されていてもよい。
このフェース部材14を支えるヘッド本体10aには、シャフト6の先端を止着するシャフト止着部(図示せず)が一体形成されている。シャフト6は、クラウン部16に突出形成されるホーゼル部26の開口26aを介してシャフト6先端部を差し込むことで、シャフト止着部に止着される。
このヘッド本体10aのクラウン部16は、トウ側サイド部20、バック部24およびヒール側サイド部22との間に稜線28を形成する。
このような外殻構造を有するクラブヘッド10のヘッド本体10aの内部空間N内には、バック部24の内面から膨出した状態に、ウェイト部30が設けられている。このウェイト部30は、例えば、鉛、タングステン等の比重の大きな材料で形成した重量部材をバック部24の内面に接着、溶着、ネジ止め、ろう付け等の適宜の手段で一体的に強固に固着することで形成し、又は、このバック部24を厚肉化して形成してもよい。更に、このような厚肉部と重量部材とを組合せて形成してもよい。
更に、このクラブヘッド10は、図2および図3に示すように、ソール部18、トウ側サイド部20及びヒール側サイド部22を形成するそれぞれの壁部を、内部空間N側に滑らかに湾曲させた状態で没入させることにより、複数の凹部を形成してある。この複数の凹部は、ヒール側からトウ側に向かう空気の流れる通路が形成されるように、ヒール側凹部と、トウ側凹部と、ソール側凹部とを有している。本実施形態では、トウ側凹部は1箇所(符号32で示す)、ヒール側凹部は1箇所(符号34で示す)、ソール側凹部は、前記各1箇所づつ形成されたヒール側凹部34と、トウ側凹部32との間に2箇所(それぞれ符号36,38で示す)形成されている。
本実施形態では、前記ヒール側凹部34と、トウ側凹部32と、ソール側凹部36,38には、ヒール側からトウ側に向かって、フェース・バック方向における略中央部が最も内部空間N内に深く没入するような湾曲面で形成されている。
これらのソール部18、トウ側およびヒール側サイド部20,22に、ヒール側からトウ側に向かって形成された各凹部の間には凸部が形成される。すなわち、ヒール側凹部34とソール側凹部38との間に凸部40が形成され、ソール側凹部36,38の間に凸部42が形成され、トウ側凹部32とソール側凹部36との間に凸部44が形成される。このクラブヘッド10を、基準水平面Bに直交する垂直面とフェース部12の前面との間の所定のロフト角βを形成する状態で、基準面を形成する地面に置いたときに、凸部42が地面と接触し、凸部40,44は、地面との間に少し隙間(距離)ができる。
また、各凹部と凸部の境界には、図2に示すように、稜線32a,34a,36a,38aが形成されるようになる。
このように、ソール部18、トウ側およびヒール側サイド部20,22に、ヒール側からトウ側に向かって空気の流れる通路となる複数の凹部32,34,36,38を直線状に配列したことで、打球時のソール部18のフェース・バック方向の変形を減少し、強度の向上、安定化が図れる。
また、ヒール側凹部34、及びトウ側凹部32には、夫々のソール部18側に、湾曲状の傾斜面34b,32bを形成しておくことが好ましい。この傾斜面32b,34bは、各凹部内において、湾曲状の底線32c,34cを下端縁として、中央側に向けて次第に上昇する湾曲面として構成されている。
なお、上記したソール側凹部36,38については、図2に示すように、トウ・ヒール方向に沿う幅寸法より、フェース・バック方向に沿う長さ寸法を大きく形成しておくことが好ましい。この場合、トウ・ヒール方向の寸法とフェース・バック方向の寸法の比は、(2×トウ・ヒール方向寸法≦フェース・バック方向寸法)にすることが好ましい。
このような形状にすることで、打球時のソール部18の変形を防止すると共に、インパクトに至るまでの空気の流れを整えることが可能となり、空気抵抗によるへッドの速度低下を効果的に防止することが可能となる。
また、ソール側凹部36,38のフェース・バック方向に沿う最大窪み部の延在方向yは、インパクト時におけるクラブへッド10の進行方向に一致するように形成することで、強度の安定化が可能となると共に、打球時に最も効率的な空気の流れを形成することができ、空気抵抗による速度低下を可能な限り抑制してインパクトさせることが可能となる。また、打球時の強度や剛性についても、この方向にすることで、高い強度と高い剛性(安定した打球音の効果)が得られる。
以上のように構成されるソール部18や凹部に関しては、様々な形態に変形することが可能である。
例えば、トウ側凹部32はソール部18とトウ側サイド部20にわたって形成し、ヒール側凹部34はソール部18とヒール側サイド部22とにわたって形成することがこのましい。また、ソール部18は、地面や芝生との接触や案内性を考慮して、設計的に中間部分を窪んだ形状にできない場合があるため、ヒール側からトウ側まで全てが、上記のように連続した凹部になっている必要はなく、一部に凹部がない形状であっても良い。これらの凹部については任意に設定できるが、少なくとも、ヒール側、トウ側、中央のそれぞれの部位に1箇所の合計3箇所形成されていれば良い。更に、ヒール側及びトウ側にそれぞれ1箇所づつ形成し、中央の部位に2〜4箇所形成して、合計で6箇所以下にすることが好ましい。
また、各凹部32,34,36,38については、フェース部12の下縁部12bに沿うリーディングエッジよりバック部24側に形成し、ソール部18のバック側の最後端位置よりも前方で終端していることが好ましい。すなわち、凹部は、図5に示すように、ソール部18を下面側から見た状態で、クラブヘッド10のバック側の外縁を規定する範囲内に形成され、クラウン部16側にまで延びなければよい。
また、ソール部18の後部であるバック側ソール部については、図4に示すように、バック側に移行するに連れて次第に上方に傾斜するように傾斜部を形成しておくことが好ましい。このように傾斜部18aを形成することで、ソール部18の後方へ空気を流れ易くすることができる。なお、このような上方に傾斜する形状については、面一状に上昇するような形状であっても良いし、多面的(段階的)に上昇するような形状であっても良い。
上述のような凹部32,34,36,38は、平均肉厚が1mm以下で0.5〜0・9mm、好ましくは0.6〜0.85mmの薄肉部に形成してある。このような、薄肉部に凹部32,34,36,38を形成することにより、クラブヘッド10のクラウン部16の下側領域であるソール側の領域に強度を維持しつつ軽量化することができる。
具体的には、ソール側凹部36,38間の凸部42、および、ソール側凹部36,38とフェース部12との間の領域を厚肉部に形成し、この厚肉部の平均肉厚は0.7〜1.5mmに形成してある。そして、このソール側凹部36を含むトウ側のソール部18およびトウ側サイド部20を、平均肉厚が0.6〜0.9mmの薄肉厚部として形成してある。また、ソール側凹部38を含むヒール側のソール部18およびヒール側サイド部22を、平均肉厚が0.6〜0.9mm程度の薄肉部に形成してある。ソール側凹部36,38と、上述のウェイト部30との間のバック側ソール部18aは、平均肉厚が0.6〜1.0mmの薄肉部に形成してある。
なお、トウ側凹部32およびヒール側凹部34を省略し、トウ側サイド部20およびヒール側サイド部22を凸部40,44からクラウン部16側に滑らかに移行する湾曲面に形成することもできる。この場合には、若干厚めにして、0.65〜0.95mmとなる。
いずれの場合も、これらの凸部40,42,44の外面をトウ・ヒール方向に結ぶ線が、外殻の外面に外方に突出する湾曲形状を形成することが好ましい。この場合には、打球時にフェース部からバック部に伝達される衝撃力に対してソール部18が大きく変形するのを防止し、バック部24の配置したウェイト部30の重さをフェース部12に効率よく伝達することができる。そして、後述するリブ部材50によりトウ・ヒール方向の変形を防止し、特に、ソール部18の軽量化と強度の向上安定化と打球音の改良とを確実に行う等、リブ部材50による特性を最大限に利用することができる。
本実施形態のリブ部材50は、フェース部12の外面に形成した打球面に沿って、トウ・ヒール方向に延びる。このリブ部材50は、ヘッド本体10aとは別部材で形成してあり、ソール部18に貫通形成して内部空間Nを外部に連通する溝孔48に挿入されて一体に固定される。この溝孔48に挿入されて固定されたリブ部材50は、ソール部18から内側の内部空間Nおよび外側の外部空間に露出する。
リブ部材50が挿入される溝孔48は、トウ側凹部32の傾斜面32bからヒール側凹部34の傾斜面34bにわたり、中央凹部36,38と凸部40,42,44とを通して連続して延びる。リブ部材50は、溝孔48をソール部18の肉厚方向に貫通し、ソール側凹部36,38および凸部42の凹凸形状に沿って上下に湾曲して波打つ状態で、内縁部50aがソール部18の内面から内部空間N内に突出し、外縁部50bは、外面に露出し、外面と面一状に連続する。このリブ部材50は、内縁部50aと外縁部50bとの間の距離を一定にし、又は、ソール部18の内面からほぼ一定の高さとなるように形成することが好ましいが、例えば応力の集中し易い稜線部の部位や、凹部の底部など、強度の必要に応じて、所要部位の高さを高くしてもよい。
このようなリブ部材50を配置するリブ設置領域は、トウ側及びヒール側凹部32,34が設けられない場合でも、薄肉部の強化及び横リブ方向の高剛性化を図るために、トウ側およびヒール側サイド部20,22の内面に達するまで延び、ソール部18が、トウ側およびヒール側サイド部20,22とに一体化された状態に近づけることが好ましい。したがって、リブ部材50の全体を溝孔48に嵌合して固定する場合には、このリブ設置領域の全体にわたって溝孔48を形成する。また、リブ部材の一部、例えばソール部のみを溝孔48に嵌合して固定する場合には、このリブ設置領域に溝孔48を形成する。
このようなリブ部材50の設置領域は、フェース・バック方向における各凹部の最大窪み部(例えばフェース・バック方向の中央部)を結ぶ方向、すなわちフェース部12の接線Rに沿う方向に1本だけでもよいが、これに限ることなく、例えばフェース・バック方向に間隔を置いて複数本(例えば2〜4本)を形成することもできる。この場合には、両サイド部20,22間で連続させることに代え、短いリブ部材を組み合わせて形成することも可能であり、また、断面形状の小さいリブ部材を用いることができる。更に、ソール部18からバック部24まで連続させて形成し、あるいは、ソール部18等を前後や左右に区画するように形成する等、リブ機能を必要とする部位のいずれにも設けることができ、その長さ、高さ、断面形状も様々に設定し、直線状又は曲線状に延設することができる。また、リブ設置領域に形成する溝孔48は、全体にわたって連続させる他、断続的に配置した複数の溝孔48であってもよい。
図示の実施形態のように、主としてトウ・ヒール方向の変形を抑制する場合には、リブ部材50の設置領域を、上述の薄肉部とした部位で、フェース・バック方向に沿うソール部18の中央位置Qを中心として、フェース側およびバック側にそれぞれフェース・バック方向長さの25%の範囲で囲まれる領域、すなわちトウ・ヒール方向の距離が長く、フェース部12およびバック部24からも離れ、打球時にトウ・ヒール方向から圧縮するような変形が作用する領域に形成することが好ましい。
リブ部材50の設置領域をこのような位置とすることにより、例えば図3に矢印fで示す方向の変形を防止し、強度の向上、安定化を図ることができる。これは、ソール部18を究極的に薄肉化すると、打球時に、クラブヘッド10のサイド部20,22が矢印f(図3)で示すように、内部空間Nの中心に近づく方向に変形し、クラウン部16にもトウ側およびヒール側から圧縮変形させる力が作用するのに対し、リブ部材50がソール部18およびサイド部20,22の変形を抑制することにより、サイド部20,22を介するクラウン部16の変形も抑制するためである。また、このリブ部材50は、ソール部の各凹部の変形及び振動を効果的に抑制するので、打球音を小さくし、打球感を柔らかくする効果が得られる。
このようなリブ部材50は、幅(厚さ)すなわちフェース・バック方向の寸法は、長さすなわちトウ・ヒール方向の寸法より短くし、これに限るものではないが、例えば0.8〜5.0mmの範囲で、特に1.0〜4.0mmであるのが好ましい。高さすなわちクラウン・ソール方向の寸法は、例えば1.0〜20.0mmで、長さ方向にわたって均一に形成してもよい。又は、その長さ方向にわたって高さを変え、部分的に20.0mmよりも高くしてもよい。この場合には、剛性、強度の他、打球音が調整できる利点がある。又、長さすなわちトウ・ヒール方向の寸法は、リブ効果を得るために15mm〜100mmの範囲に形成することが好ましい。
更に、内縁部50a側すなわち内部空間N内に配置される部位に、適宜の開口を形成し、リブ部材50の軽量化を図ることも可能である。いずれの場合も、長さが、幅(厚さ)よりも大きな寸法を有することが好ましく、効率良く、剛性強度を確保できる。
このリブ部材50は、ヘッド本体10aと同じ材料で形成することも可能であるが、例えば、ソール部18の薄肉部等、ヘッド本体10aにおけるリブ設置領域の周部の材料に対し、リブを設置する狙いに応じて、強度、剛性、振動吸収性等の1つ以上の特質を有する材料を用いることができる。例えば剛性を増大する場合には、溶接可能な本体と同種の合金の中でヤング率が高いもので形成し、振動吸収性を高める場合には、溶接可能な本体と同種の合金の中で振動減衰性の高いもの(制振金属)で形成することができる。
このようなリブ部材50の断面形状は、本体と一体成形のリブの場合のように、金型上の制約が無くなり、外縁部50b側が溝孔48から外側に突出するものであれば、均一な厚さの矩形状に限らず、内縁部50a側を外縁部50b側よりも肉厚に形成したテーパ状やT字状、或いは、リブ面に複数の孔を設ける等、効率的に剛性効果を高める(比剛性向上)等種々の形状に形成することもできる。
いずれの場合も、リブ部材50は、外縁部50bがソール部18等のヘッド本体10aの外面に露出することにより、溝孔48内に収容された部分も含むリブ部材50の全体が、リブとして機能し、クラブヘッドの内側への突出量を大きくすることなくその特性を発揮することができる。しかも、このリブ部材50の材料をヘッド本体10aとは別個に選択可能となることで、所要の物性(例えば、「本体より高強度材料」、「制振性材料」、「圧延材料」など)を備えた材料でリブ部材50を形成することができ、リブを形成する材料、形状、又は、配置位置の選択の自由度を向上し、リブの特性を最大限に利用するクラブヘッド10を製造することができる。
図5から図10は、このようなクラブヘッド10の製造方法を示す。
まず、図5に示すように、例えば鋳造又は鍛造(例えばTi−6Al4V合金の鋳造が設計自由度が高く好ましい)により形成したヘッド本体10aのソール部18にリブ設定領域を定め、このリブ設定領域を例えば機械加工して溝孔48を形成する。なお、予め、ヘッド本体10aを鋳造する際に、溝孔48を設けておいても良いが、その場合は、機械加工で併用して精度を向上するのが好ましい。この溝孔48はソール部18を貫通し、内部空間をNを外部に連通する。図示の実施形態では、図2から図4に示す実施形態の溝孔48と同じくトウ・ヒール方向に延びる1本の連続した形状で形成してあるが、上述のように、必要な場合には、複数本の溝孔48を所要のリブ設定領域に形成することができる。いずれの場合も、ヘッド本体10aに機械加工することで、リブ設定領域に正確に形成することができる。
図6に示すように、この溝孔48に挿入するリブ部材50は、ソール部18の凹部32,34,36,38および凸部40,42,44に沿って上下に湾曲して波打つ、ほぼ一定の高さの板状形状に形成してある。なお、リブ部材50は、外縁部50b側がリブ設置領域に隣接するヘッド本体10aの外面形状に沿うものであれば、内縁部50a側は、外縁部50bから一定高さに形成しなくともよい。いずれの場合も、図6に符号50cで示す溝孔48の周縁部すなわちリブ設置領域に隣接する部位の外面よりも、外縁部50bの全体が外方に突出し、内縁部50aは内部空間N内に突出する状態に形成することが好ましい。
次に、図7に示すように、リブ部材50をヘッド本体10aの溝孔48内に挿入し、外縁部50bを溝孔48から外方に僅かに突出した状態に配置する。このとき、溝孔48の周壁が溝孔48の延設方向に沿って離隔した少なくとも3つである多数の支持点52でリブ部材50を支えるように、溝孔48とリブ部材50とを形成しておくことにより、リブ部材50がソール部18の内面から、好ましくは垂直状態に立上がった状態に保持する。特に、溝孔48が、凹部32,34,36,38および凸部40,42,44を形成した湾曲部に添って形成されることにより、リブ部材50は、ソール部18の肉厚方向で最も外側の支持点52(例えば凸部40,42,44に形成される支持点52)と最も内側の支持点52(例えば凹部32,34,36,38の深部に形成される支持点52)とが、ソール部18の肉厚よりも大きな距離に離隔して位置する。
このように、リブ部材50が溝孔48内で保持されることにより、特別の治具を用いることなく、リブ部材50を所要に姿勢に正確に保持することができ、製造工程を簡略化し、しかも、精度の優れたクラブヘッドを製造することができる。
なお、このような凹部と凸部とを交互に配置してない部位であっても、全体として湾曲した部位に沿って溝孔48が形成されることにより、この湾曲形状の最も突出した部位と最も窪んだ部位とを、肉厚よりも大きく離隔させて配置させ、ほぼ直立した状態にリブ部材50を保持させてもよい。また、このような湾曲形状が利用できない場合には、適宜の冶具を用いてリブ部材50を直立状態に保持することが好ましい。
この後、図8に示すように、ヘッド本体10aの外側からリブ部材50をソール部18に溶接する。溶接は、適宜の方法を用いることが可能であるが、例えばTIG溶接、プラズマ溶接又はレーザー溶接により、リブ部材50の外縁部50bに沿って肉盛Wを形成し、溶融金属がリブ部材50の外縁部50bから溝孔48を介してソール部18の内面側に流れ、肉盛Wを形成する状態に溶接することが好ましい。これにより、リブ部材50とソール部18との一体化が確保される。また、上記溶接法以外に、ろう付け法で接合しても良く、その場合は、熱による変形を抑えることができる。
溶接が完了した後、図9および図10に示すように、リブ部材50の外縁部50bおよび肉盛Wを研磨加工し、ソール部18の外面と面一状に連続させ、リブ部材50の端面を溝孔48から露出させる。溝孔48がリブ部材50および溶融金属で完全に充填され、リブ設置領域すなわち溝孔48を形成した部位の強度が向上する。
したがって、上述のクラブヘッドの製造方法によれば、クラブヘッド10のソール部18に貫通形成した溝孔48に、ソール部18とは別体のリブ部材40を配置し、このリブ部材50をソール部18に外側から溶接することで、リブ部材50は溝孔48内においても、リブとして機能し、ソール部18の内側への突出量を大きくすることなくその特性を発揮することができ、更に、このリブ部材50の材料をソール部18とは別個に選択可能となることで、所要の物性を備えた材料でリブ部材50を形成することができ、リブを形成する材料、形状、又は、配置位置の選択の自由度を向上し、リブの特性を最大限に利用するクラブヘッド10を製造することができる。
図11は、リブ部材50およびソール部18の変形例を示す。なお、以下に示す変形例又は実施形態は、基本的には上述の実施形態と同様であるため、同様なな部位には同様な符号を付し、重複した説明を省略する。
図11に示すリブ部材50は、内縁部50a側が外縁部50b側よりも厚肉に形成してある。図示のようなテーパ状に形成する他、内縁部50a側を幅広のフランジ状に形成し、T字状の横断面形状とすることもできる。また、ソール部18の肉厚t1に対して、リブ設置領域すなわち溝孔48を形成する部位に、肉厚t2(t2>t1)の内側に盛上る厚肉部18aを形成することもできる。この肉厚t2の厚肉部18aは、溝孔48の周部の強度を向上し、安定化させるだけでなく、外側からの溶接熱による外側面形状の変形をリブの剛性効果との相乗効果で効果的に抑えることが可能である。
なお、上記のような断面形状の場合、クラウン部16を本体とは別部材とし、リブ部材50をヘッドの内側から溝内に挿入し、リブ部材50を接合後、クラウン部材を本体に接合することが好ましい。
図12は、リブ部材60をトウ側サイド部20およびヒール側サイド部22に配置したクラブヘッド100を示す。このリブ部材60は、サイド部20,22からクラウン部16まで延設してあり、上述の実施形態と同様に、図示しない溝内に挿入して固定した後、外側から溶接で一体化し、外縁部60bを研磨して形成される。リブ部材60の内側縁部60aが内部空間内に突出し、外側縁部50bは溶接後の研磨工程により、ヘッド本体の外面と面一状に連続し、外部に露出する。
このようにリブ部材60をサイド部20,22からクラウン部16にわたって形成することにより、打球時のサイド部20,22の変形を防止し、強度を向上し、安定化することができる。また、サイド部20,22を薄肉化でき、クラブヘッド100を軽量化することができる。
なお、上述の実施形態および変形例では、いずれもリブ部材50,60を配置する溝孔の全体が連続するが、参考例として、リブ設置領域に断続的に配置した複数の溝孔で形成してもよい。この場合には、いずれか一つの溝孔に一端を取付けたリブ部材を、中空部に延設し、他端を、対応した部位に貫通形成した他の溝孔に挿入し、これらの溝孔に固定したリブ部材を外側から溶接して一体化することもできる。この場合には、リブ部材がヘッド本体の内部空間内で橋渡し状態に配置される。
このような製造方法によっても、上述の実施形態と同様に、リブ部材を確実かつ強固に取付けることができ、更に、このリブ部材の材料をクラブヘッドとは別個に選択可能となることで、所要の物性を備えた材料でリブ部材を形成することができ、リブを形成する材料、形状、又は、配置位置の選択の自由度を向上し、リブの特性を最大限に利用するクラブヘッドを製造することができる。また、リブ部材を設ける位置は、ソール部、クラウン部、フェース部、サイド部、バック部、及びこれらの複数部位に連続して形成することができ、任意の位置に任意の形状のリブ部材を配置することができる。
本発明の好ましい実施形態によるゴルフクラブヘッドを設けたゴルフクラブの全体図。 図1のクラブヘッドの一部を断面とした平面図。 図2のIII−III線に沿う断面図。 図2のIV−IV線に沿う断面図。 図1のクラブヘッドの底面図。 図1のクラブヘッドに固定するリブ部材の説明図。 図6のリブ部材を取付けた状態の図5のVII−VII線に沿う断面図。 図7のVIII−VIII線に沿う断面図。 図7のクラブヘッドの外面を研磨した状態の断面図。 図9のX−X線に沿う断面図。 変形例によるクラブヘッドの図10と同様な断面図。 他の変形例によるクラブヘッドの断面図。
符号の説明
10…クラブヘッド、48…溝孔、50…リブ部材、52…支持点、N…内部空間。

Claims (4)

  1. 中空構造のクラブヘッドに設けたリブ設置領域に、このリブ設置領域の全体にわたって溝孔を貫通形成し、
    このクラブヘッドの内側に内縁部を突出させかつ外縁部を外側に突出させて、前記溝孔内にリブ部材の長さ方向に沿う全体を配置し、
    クラブヘッドの外側から、リブ部材を前記溝孔内に支えた状態でクラブヘッドに溶接し、
    このリブ部材とクラブヘッドとの溶接部の外側部分を研磨する、クラブヘッドの製造方法。
  2. 前記リブ部材は、前記溝孔の周壁に、この溝孔の延設方向に沿って離隔させて配置した少なくとも3つの支持点で支えられ、クラブヘッドの肉厚方向で最も外側の支持点と最も内側の支持点とが、リブ設置領域の肉厚よりも大きな距離に離隔し、リブ部材がクラブヘッドの内面から立上がった状態に保持されて溶接されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記クラブヘッドは、溝孔の周部の少なくとも一部に、内側に盛上る厚肉部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. フェース部と、クラウン部と、ソール部と、トウ側及びヒール側のサイド部と、後部のバック部とで外殻を形成し、この外殻内に内部空間を形成した中空構造の金属製クラブヘッドを備えるゴルフクラブであって、
    前記クラブヘッドのリブ設置領域の全体にわたって貫通形成した溝孔と、この溝孔を形成した部位と材質の異なる材料で形成されかつこの溝孔に挿入されて一体に固定され、内縁部を前記溝孔からクラブヘッドの内側に突出させかつ端面を前記溝孔から外面に露出させたリブ部材を備えることを特徴とするゴルフクラブ。
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