JP5031386B2 - 液圧機器の圧力保持機構 - Google Patents
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Description
油圧シリンダ55が最伸長状態のとき、油圧シリンダ55が周囲温度の高い例えば炎天下に放置された場合、下室56A内の作動油は熱膨張しようとするが、金属製の油圧シリンダ55の熱膨張はわずかしか増加しないため、その代償として下室56A内の作動油の圧力が上昇することになる。このとき,サーマルリリーフバルブ63が下室56A内の作動油をドレンタンク62へ戻すことで,作動油の熱膨張に基づく油圧シリンダ55の内圧の上昇を防止することができる。
いま、このようなサーマルリリーフバルブ63を、図10と同様に、下室56A内の作動油をドレンタンク62へ戻すことで、作動油の熱膨張に基づく油圧シリンダ55の内圧の上昇を防止する回路に使用し、シリンダで長時間ほぼ一定の力を加える用途として、図示しない例えば工作機械などのワークのクランプの用途を考える。この場合、ノンリーク弁(内部漏れの無い弁)とシリンダとを組み合わせ長時間圧力を封じ込めることができる究極の省エネルギー化と考えられる。しかし、サーマルリリーフバルブを使用した回路では、例えば温度が封じ込めた時の温度よりも低下すると圧力が封じ込めた時よりも低くなってしまうため、圧力が低下したときに作動液を補充して圧力を再度封じ込めなければならないという欠点がある。
また、経年変化による隔膜の劣化やガス抜けといった問題があり、頻繁なメンテナンス作業が要求される。
ピストン型アキュムレータの気体室にコイルスプリングを配置して油室内の作動油を予圧することによってガス抜けの問題を解消するといったことも考えられるが、ピストンとシリンダチューブとの間の摺動部からの油漏れを完全に防止することはできない。また、気体室に大量の気体を圧縮して封入するか此れに代わるコイルスプリングを取り付けて油室の作動油を予圧する関係上、前述したプラダ型アキュムレータやダイヤフラム型アキュムレータほどではないにしても、全体の構造が大型化する弊害が残る。
前記アクチュエータに形成された液体給排経路の壁部内側に分散して設けられた複数の凹部の各々に、前記液体を吸収せず、かつ、前記液体の温度変化による圧力変化を体積変化によって吸収する弾性体を内嵌して固定的に配備したことを特徴とする構成を有する。
この際、閉鎖位置からアクチュエータの作動部に至る液体給排経路内に固定的に配備されている前記弾性体は、液体給排経路の一部を閉鎖した時点における液体給排経路内の液体の圧力を受けて弾性変形した状態、より具体的には、圧縮され体積が縮小した状態となる。
その後、閉鎖位置からアクチュエータの作動部に至る液体給排経路内の液体の温度の低下等により液体の体積が減少した場合には、前記弾性体が弾性変形して膨張することによって液体の体積の減少分を補完し、液体給排経路内に封じ込められている液体の圧力の低下を抑制することで、液体の圧力を略一定の状態に保持する。
厳密には、液体給排経路内に封じ込められている液体の体積が減少して圧力が低下する結果として弾性体が弾性変形して膨張するのであるから、液体給排経路内に封じ込められている液体の圧力と弾性体の内部圧力とが平衡状態を維持したまま両者の圧力が共に僅かに低下することになるが、この圧力の低下は、液体給排経路内に非圧縮性の液体のみを封じ込めた場合の圧力低下に比べて定性的に小さいので、液体の温度の低下等による液体の体積の減少に伴うアクチュエータの作動部の位置変動や出力変動を効果的に抑制することができる。
一方、閉鎖位置からアクチュエータの作動部に至る液体給排経路内の液体の温度の上昇により液体の体積が増大した場合には、前記弾性体が弾性変形して更に圧縮されることによって液体の体積の増大分を吸収し、液体給排経路内に封じ込められている液体の圧力の上昇を抑制することで、液体の圧力を略一定の状態に保持する。
厳密には、液体給排経路内に封じ込められている液体の体積が増大して圧力が上昇する結果として弾性体が弾性変形して圧縮されるのであるから、液体給排経路内に封じ込められている液体の圧力と弾性体の内部圧力とが平衡状態を維持したまま両者の圧力が共に僅かに上昇することになるが、この圧力の上昇は、液体給排経路内に非圧縮性の液体のみを封じ込めた場合の圧力上昇に比べて定性的に小さいので、液体の温度の上昇による液体の体積の増大に伴うアクチュエータの作動部の位置変動や出力変動を効果的に抑制することができる。
ここでいう弾性体とは、液体を吸収せず、かつ、周囲の圧力変化によって弾性変形が可能な弾性体を指すもので、特定の方向からの外力のみに応動して弾性変形する弾性体、例えば、スプリングのようなものや、液体を吸収する多孔質のスポンジのようなものは含まない。
従来型のアキュムレータ、例えば、プラダ型アキュムレータやダイヤフラム型アキュムレータあるいはピストン型アキュムレータとは相違し、空気や窒素ガス等の大量の気体を封じ込めるための気室や液体を貯溜するための油室および両者を隔離するための隔膜やピストン、あるいは、ピストンを加圧するためのスプリングといった複雑な構造を必要としないため、圧力保持機構の小型化と製造コストの低減化が達成され、油圧シリンダ等のアクチュエータそれ自体に圧力保持機構を装着することが可能となり、経年変化による隔膜の劣化やガス抜けに伴う性能の劣化あるいは此れを解消するためのメンテナンス作業の煩わしさといった問題、更には、摺動部からの油漏れといった問題も解消される。
このような構造を適用した場合、弾性体の形状としては、例えば、円柱体,円筒体,球体等が適する。
この際、配備する弾性体の数を複数個とする場合もある。特に、アクチュエータの内容積が大きいような場合においては1つの弾性体のみの膨張や圧縮によって液体の体積の減少や増大に伴う圧力変動に対処しきれない場合があり、そのような場合は積極的に複数の弾性体を配備することが望ましい。例えば、シリンダヘッドの内壁やシリンダボトムの内壁あるいはピストンの端面の一円周上に沿って間隔をおいて多数の盲穴を穿設して其の各々に弾性体を内嵌して取り付けたり、それでも足りなければ、更に、半径の異なる複数の同心円の各々に沿って前記と同様にして盲穴を穿設し、其の各々に弾性体を内嵌して取り付けるといったこともできる。このようにして複数の弾性体を分散配備することにより弾性体の大型化は不要となるので、アクチュエータに形成された液体給排経路の壁部内側に設ける凹部を大型化する必要もなくなり、シリンダヘッドやシリンダボトムおよびピストンの厚みが十分に確保され、機械的な強度を低下させることなくアクチュエータに圧力保持機構を内蔵させることができる。
プラグ状部材の先端の凹部はプラグ状部材の先端から穿設された盲穴によって構成することが可能であり、この凹部に内嵌された弾性体は、盲穴の開口部近傍に形成した内周溝にインターナルスナップリングを圧入する等して脱落を防止され得る。
このような構成は、従来型のアクチュエータに追加工によって圧力保持機構を装着する際に適する。
前述した通り、この圧力保持機構は実質的にメンテナンスフリーであるが、アクチュエータの使用状況、例えば、停止位置を保持する際に作用する外力の大小等に応じ、低圧用,高圧用といったように弾性体の特性を選択する必要が生じる場合も想定されるので、プラグ状部材の着脱つまり弾性体の交換作業は容易に行なえるようにするに越したことはない。
前述しように、アクチュエータの作動部の停止位置を保持する際に作用する外力の大小等に応じ、低圧用,高圧用といったようにシリコーンゴムの特性(弾性係数)を使い分けることが望ましい。つまり、作動部の停止位置を保持する際に作用する外力が小さな場合には、弾性係数が小さく弾性変形し易いシリコーンゴムを選択することで、低圧時の温度変化で生じる液体の体積の増減を微小な圧力変化に追従して体積を変化させ得るシリコーンゴムの圧縮や膨張によって吸収し、また、作動部の停止位置を保持する際に作用する外力が大きな場合には、弾性係数が大きく弾性変形し難いシリコーンゴムを選択し、高圧時の温度変化で生じる液体の体積の増減を強大な圧力の下でも容易に限界まで圧縮されないシリコーンゴムの圧縮や膨張によって吸収することにより、液体の圧力を略一定の状態に保持するようにする。
また、アクチュエータの作動部の停止位置を保持する際に作用する外力の大小が特定され得ないような場合、あるいは、様々な外力の下でアクチュエータの作動部の停止位置を保持する必要があるような場合には、アクチュエータに形成された液体給排経路の内部もしくは該液体給排経路に接続された液体給排経路の内部に、弾性係数の異なる複数のシリコーンゴムを配置することによって対処する。このような構成を適用した場合、作動部の停止位置を保持する際に作用する外力が小さい状況下においては、専ら、弾性係数が小さく弾性変形し易いシリコーンゴムが低圧時の温度変化で生じる液体の体積の増減を圧縮や膨張によって吸収して液体の圧力を略一定の状態に保持し、また、作動部の停止位置を保持する際に作用する外力が大きい状況下においては、弾性係数が小さいシリコーンゴムが限界まで圧縮された状態で、専ら、弾性係数が大きく弾性変形し難いシリコーンゴムのみが高圧時の温度変化で生じる液体の体積の増減を圧縮や膨張によって吸収して液体の圧力を略一定の状態に保持することになる。
あるいは、弾性係数の異なる複数のシリコーンゴムを配置する代わりに、弾性係数の異なる複数のシリコーンゴムを積層して一体化した単体のシリコーンゴムを圧力変動抑制用の弾性体として利用するようにしてもよい。弾性係数の異なる複数のシリコーンゴムを内外に積層する場合、例えば、核となる球状のシリコーンゴムと此れを覆う何層かの球面状のシリコーンゴムとによって全体として球状の弾性体を形成することができる。この際、核となる側のシリコーンゴムを弾性変形し難いシリコーンゴムつまり弾性係数の大きなシリコーンゴムとし、外郭となる側のシリコーンゴムを段階的に弾性係数の小さなシリコーンゴムとすることで、前記と同様に、作動部の停止位置を保持する際に作用する外力が小さい状況下においては、専ら、弾性変形し易いシリコーンゴムの圧縮や膨張によって液体の圧力を略一定の状態に保持し、また、作動部の停止位置を保持する際に作用する外力が大きい状況下においては、弾性変形し易いシリコーンゴムを限界まで圧縮させた状態で、専ら、弾性変形し難いシリコーンゴムのみの圧縮や膨張によって液体の圧力を略一定の状態に保持することができる。
また、凹部17を形成する盲穴の開口部近傍に内周溝18を刻設し、凹部17に弾性体16aを内嵌させてから内周溝18にインターナルスナップリング19を圧入することで弾性体16aの脱落を防止するようにする。
圧力変動抑制用の弾性体16aの外周部を必ずしも凹部17に圧接させる必要はなく、凹部17の加工精度や弾性体16aの寸法精度は問われない。
図2(a)に示されるような球状の弾性体16aに代えて、図2(b)に示されるような円柱状の弾性体16b、あるいは、図2(c)に示されるような円筒状の弾性体16cを圧力保持機構として取り付けるようにしてもよい。
特に、油圧シリンダ1が大型である場合には、シリンダボトム側油室11に滞留する作動油の体積が大きく、必然的に、温度変化に伴う作動油の体積変化を吸収するための弾性体も多くの体積を必要とする。シリンダボトム側油室11に単一の弾性体を設置することを前提として弾性体それ自体を大型化すると、この弾性体を内嵌するために、シリンダボトム側油室11を画成する壁部の内側に大径で底の深い凹部を設ける必要が生じ、シリンダボトム6あるいはピストン3の強度が低下する恐れがあるが、このようにして多数の弾性体を分散して配置することにより、シリンダボトム6やピストン3の強度の低下が最小限度に抑制される。
圧力変動抑制用の弾性体16aの外周部を必ずしも凹部23に圧接させる必要はなく、凹部23の加工精度や弾性体16aの寸法精度は問われない。
図4に示されるような球状の弾性体16aに代えて、例えば、図2(b)に示されるような円柱状の弾性体16b、あるいは、図2(c)に示されるような円筒状の弾性体16cを圧力保持機構として取り付けるようにしてもよい。
シリンダチューブ2の周壁を径方向に貫通した孔25の内周部には、プラグ状部材22の外周部に刻設された雄ネジに適合する雌ネジが刻設され、更に、液漏れ防止用のOリング26を内嵌するための座ぐり27が設けられている。
この例ではプラグ状部材22の外周部の雄ネジと孔25の内周部の雌ネジを共にメートル並目ネジで構成し、Oリング26を利用して液漏れを防止しているが、管用テーパネジ等を利用する場合においてはOリング26は必ずしも必要ではない。
なお、プラグ状部材22の着脱を考慮する必要がなければ、プラグ状部材22の外周部と此れに嵌合する孔25の内周部を滑らかなテーパ面で形成し、外周部に接着剤を塗布したプラグ状部材22を孔25に強力に打ち込んでしまっても構わない。
しかし、作動油の温度変化による圧力変化は、シリンダヘッド側油室およびやシリンダボトム側油室内の圧力変化を来たすことから、この圧力変化を弾性体16a(16b,16c,16d)の体積変化により吸収することにより、安定した圧力保持が可能となる。
例えば、前述したように、シリンダボトム6の内壁あるいはピストン3の右端面において図1に示される中心線CLを中心とする1つの円周上に沿って60°のピッチで凹部17を穿設して其の各々に弾性体16a(16b,16c)を配置するとした場合、あるいは、前述したように、シリンダチューブ2の周方向に沿って60°のピッチで孔25を穿設して其の各々に弾性体16a(16b,16c,16d)を配置するとした場合においては、例えば、0°,120°,240°に相当する位置のものを弾性係数の小さなシリコーンゴムで形成し、60°,180°,300°に相当する位置のものを弾性係数の大きなシリコーンゴムで形成するといったことが考えられる。
あるいは、シリンダボトム6の内壁またはピストン3の右端面において中心線CLを中心とする半径の異なる2つの同心円の各々に沿って所定のピッチで凹部17を穿設して其の各々に弾性体16a(16b,16c)を配置するとした場合においては、小径の同心円に沿って配置するものを弾性係数の小さなシリコーンゴムで形成し、大径の同心円に沿って配置するものを弾性係数の大きなシリコーンゴムで形成するといったことが可能であり、更には、前述したように、シリンダチューブ2の軸方向に位置をずらして軸方向の複数列たとえば2列に亘って周方向に30°,60°,90°等のピッチで多数の孔25を穿設して其の各々に弾性体16a(16b,16c,16d)を配置するとした場合では、例えば、シリンダボトム6に近い側の列に配置するものを弾性係数の小さなシリコーンゴムで形成し、シリンダボトム6に遠い側の列に配置するものを弾性係数の大きなシリコーンゴムで形成するといったことが可能である。
このような構成を適用した場合、ピストンロッド4の停止位置を保持する際に作用する外力が小さい状況下においては、専ら、弾性係数が小さく弾性変形し易いシリコーンゴムが低圧時の温度変化で生じる液体の体積の増減を圧縮や膨張によって吸収して液体の圧力を略一定の状態に保持し、また、ピストンロッド4の停止位置を保持する際に作用する外力が大きい状況下においては、弾性係数の小さなシリコーンゴムが限界まで圧縮された状態で、専ら、弾性係数が大きく弾性変形し難いシリコーンゴムのみが高圧時の温度変化で生じる液体の体積の増減を圧縮や膨張によって吸収して液体の圧力を略一定の状態に保持することになる。
例えば、球状の弾性体16aの場合では、図6に示されるように、弾性体16aの核となる部分を弾性係数の大きなシリコーンゴム16a−1で構成し、このシリコーンゴム16a−1を覆うようにして弾性係数の小さなシリコーンゴム16a−2を積層するといったことが可能である。
この場合も、前記と同様、ピストンロッド4の停止位置を保持する際に作用する外力が小さい状況下においては、専ら、弾性変形し易い外側のシリコーンゴム16a−2の圧縮や膨張によって作動油の圧力が略一定の状態に保持され、また、ピストンロッド4の停止位置を保持する際に作用する外力が大きい状況下においては、弾性変形し易い外側のシリコーンゴム16a−2が限界まで圧縮された状態で、弾性変形し難い内側のシリコーンゴム16a−1のみの圧縮や膨張によって作動油の圧力が略一定の状態に保持されることになる。
成形上の問題からシリコーンゴム16a−1とシリコーンゴム16a−2を完全な同心球とすることは難しいが、シリコーンゴム16a−1とシリコーンゴム16a−2の中心に偏心が生じても、弾性変形し易いシリコーンゴム16a−2つまり作動油の圧力が上昇する過程で先に限界まで圧縮されるべきシリコーンゴム16a−2が全体として外側に位置する限り問題はない。
厳密には、シリンダボトム側油室11内に封じ込められている作動油の体積が減少して圧力が低下する結果として弾性体16a(16b,16c,16d)が膨張するのであるから、シリンダボトム側油室11内に封じ込められている作動油の圧力と弾性体16a(16b,16c,16d)の内部圧力とが平衡状態を維持したまま両者の圧力が共に僅かに低下することになるが、この圧力の低下は、シリンダボトム側油室11内に非圧縮性の作動油のみを封じ込めた場合の圧力低下に比べて定性的に小さいので、作動油の温度の低下あるいは液漏れ等による作動油の体積の減少に伴う圧力変動を効果的に抑制することができる。
また、弾性体16a(16b,16c,16d)とシリンダボトム側油室11内の作動油とを合わせた体積はロックアップ完了時点より多少は減少するものの概ね一定の状態に保持されるのでピストンロッド4の位置変動も効果的に抑制される。
厳密には、シリンダボトム側油室11内に封じ込められている作動油の体積が増大して圧力が上昇する結果として弾性体16a(16b,16c,16d)が弾性変形して圧縮されるのであるから、シリンダボトム側油室11内に封じ込められている作動油の圧力と弾性体16a(16b,16c,16d)の内部圧力とが平衡状態を維持したまま両者の圧力が共に僅かに上昇することになるが、この圧力の上昇は、シリンダボトム側油室11内に非圧縮性の作動油のみを封じ込めた場合の圧力上昇に比べて定性的に小さいので、作動油の温度上昇による作動油の体積の増大に伴う圧力変動を効果的に抑制することができる。
また、弾性体16a(16b,16c,16d)とシリンダボトム側油室11内の作動油とを合わせた体積はロックアップ完了時点より多少は増大するものの概ね一定の状態に保持されるのでピストンロッド4の位置変動も効果的に抑制される。
一方、ロックアップ完了時点でピストンロッド4に作用している外力が相対的に大きい状況下においては、ロックアップ完了時点で弾性係数の小さいシリコーンゴムが既に圧縮限度にまで圧縮されているので、専ら、弾性係数が大きいシリコーンゴムのみが温度変化で生じる作動油の体積の増減を圧縮や膨張によって吸収してシリンダボトム側油室11内の作動油の圧力およびピストンロッド4の突出量を略一定の状態に保持することになる。この際、弾性係数が小さいシリコーンゴムは完全に圧縮された状態を保持するので、更に圧縮されることもなければ膨張することもない。実際には、作動油の体積が著しく減少した場合あるいはピストンロッド4に作用する外力が著しく低下した場合に弾性係数の小さいシリコーンゴムが弾性変形して膨張することも考えられるが、その場合は、ロックアップ完了時点に比べてピストンロッド4の突出力が著しく減衰していることを意味するので、もはや、圧力保持機構としての意味をなさない。
ここでは、仮に、シリコーンゴムS1,S2の無負荷状態における体積を共にV0とする。シリコーンゴムS1,S2は分散してシリンダボトム側油室11内に配備されていてもよいし、あるいは、図6の例のようにシリコーンゴムS1がシリコーンゴムS2によって内包されていても構わない。
弾性係数の小さなシリコーンゴムS2に圧力を加えると、シリコーンゴムS2は僅かな圧力の上昇で比較的急激に弾性変形して其の体積を減少させ、例えば、図7の圧力Q2の時点で限界まで圧縮され、その後は幾ら圧力を増大させても圧縮されることはない。この時の体積を仮にV2とする。
弾性係数の大きなシリコーンゴムS1の場合も定性的にはシリコーンゴムS2の場合と同様であるが、弾性係数が大きいぶん体積の減少は緩慢になり、前述の圧力Q2よりは高圧の圧力、例えば、図7の圧力Q1の時点で限界まで圧縮され、その後は幾ら圧力を増大させても圧縮されない。この時の体積を仮にV1とする。
この場合、シリンダボトム側油室11内に配備されたシリコーンゴムの体積は全体として2V0であり、限界まで圧縮されたシリコーンゴムS2の体積がV2、また、限界まで圧縮されたシリコーンゴムS1の体積がV1であるから、シリコーンゴム全体としては、圧力Qが無負荷の状態からQ1まで増大する間に2V0−(V1+V2)だけ体積を変化させることが可能である。この間、特に、圧力が無負荷の状態からQ2に増大する低圧の区間では、図7の実線と破線で示されるように僅かな圧力の上昇や下降に敏感に応動してシリコーンゴムS2が其の体積を変化させ、また、圧力がQ2からQ1に増大する高圧の区間では、図7の実線と一点鎖線で示される通りシリコーンゴムS1は敏感に弾性変形して其の体積を大きく変化させることはできないが、この高圧によって座屈することなく、圧力の上昇や下降に応動して或る程度その体積を変化させることが可能である。
弾性係数の小さなシリコーンゴムS2のみをシリンダボトム側油室11内に配備した場合では図7の破線から明らかなように比較的低圧の圧力領域において作動油の体積変化を敏感に吸収して圧力を一定に保持することが可能である反面、高圧の圧力領域においては作動油の体積変化を全く吸収できなくなる問題があり、また、弾性係数の大きなシリコーンゴムS1のみをシリンダボトム側油室11内に配備した場合では、図7の一点鎖線から明らかなように低圧および高圧の圧力領域において作動油の体積変化をある程度吸収することが可能である反面、低圧領域で作動油の体積変化を敏感に吸収して圧力を一定に保持することが難しくなるが、このようにして両者を組み合わせることにより、低圧領域における圧力の一定化と高圧領域における圧力の略一定化を同時に実現することが可能となる。
なお、この例のように弾性係数の異なる2種のシリコーンゴムを組み合わせた場合においては圧力Qの変化とシリコーンゴム全体の体積の変化との対応関係は図7の実線に示されるような折れ線状のものとなるが、弾性係数の異なる多種のシリコーンゴムを組み合わせるようにすれば、徐々に傾きが減衰する曲線状の変化を得ることも可能である。
ている。
スプリングは周囲の圧力変化に応動した体積変化が可能なわけではなく、例えば、コイルスプリングの場合においては、コイルスプリングの中心軸に沿った方向に外力を作用させる必要上、コイルスプリングを内蔵するシリンダと該シリンダに摺接して移動するピストン等が必要となり、例えば、従来型のピストン型アキュムレータと同様に圧力保持機構の構造が大型化する点、構造が複雑となる点、および、ピストンとシリンダの間からの作動油の漏れが問題となる欠点がある。
また、その表面から液体を吸収する多孔質のスポンジのようなものは、液体を含浸することによって実質的に作動油と同等の非圧縮性の素材となってしまうので、液体給排経路内に作動油のみを封じ込めた場合と同様、圧力変動の吸収は事実上不可能である。
弾性体としては、特に、気体を封止した中空の円柱や球、あるいは、独立した多数の気泡を内包した発泡シリコーン等の円柱状または球状の構造体を利用することが望ましい。また、円柱や球等からなる構造体内部の気泡の1つ1つが必ずしもセルとして独立している必要はなく、隣接する気泡同士の間で気体の行き来が可能な構造であっても、気体を封じ込めるためのコーティング等を塊状の構造体の表面部分に施したものは、周囲の圧力変化に応動した体積変化が可能な弾性体として利用し得る。また、その内部に封じ込める気体としては、空気の他、熱や圧力によって液化する等の性状変化を生じにくい不活性ガスも好適である。気体を封止した中空の円柱や球、あるいは、独立した多数の気泡を内包した発泡シリコーン等の構造体では、気体を封止した外皮や気泡間の隔壁自体は実質的に体積を変化させないが、その内部に封止された気体が圧縮または膨張することで、弾性体として機能する構造体全体が圧縮または膨張することになる。
2 シリンダチューブ
3 ピストン(アクチュエータである油圧シリンダの作動部)
4 ピストンロッド
5 シリンダヘッド
6 シリンダボトム
7 タイバー
8 リターンスプリング
9 給排ポート(アクチュエータに形成された液体給排経路)
10 シリンダヘッド側スペース
11 シリンダボトム側油室(アクチュエータに形成された液体給排経路)
12 プラグ状部材
12a 縮径部
13 液体給排経路(アクチュエータに形成された液体給排経路に接続された液体給排経路)
14 切換弁
14a チェックポペット
15 リリーフ弁
16a 球状の弾性体(圧力保持機構)
16a−1,16a−2 シリコーンゴム
16b 円柱状の弾性体(圧力保持機構)
16c 円筒状の弾性体(圧力保持機構)
16d 環状体あるいは円筒状の弾性体(圧力保持機構)
17 凹部
18 内周溝
19 インターナルスナップリング
20 クッション弁
21 チェック弁
22 プラグ状部材
23 凹部
24 内周溝
25 孔
26 Oリング
27 座ぐり
28 圧力容器
29 弾性体取付用容器
30 シリコーンゴム
31 ピストン
32 円形穴
33 ボルト
34 円形穴
35,36 端部
37 孔
38 小孔
39 ベント穴
40 セットスクリュー
41 絞り弁
50 テールゲートリフト装置
51 油圧ポンプ
52 送りチェック弁
53 シリンダ供給流路
54 フィルタ
55 油圧シリンダ
56A 油圧シリンダの下室
57 ピストン
58 ピストンロッド
60 テールゲート
61 流路
62 ドレンタンク
63 サーマルリリーフバルブ
M モータ
P ポンプ
P1,P2,P3,P4 シリンダボトム側油室における弾性体の取り付け位置
CL 中心線
W 負荷
Claims (6)
- 液圧で作動するアクチュエータに形成された液体給排経路もしくは該液体給排経路に接続された液体給排経路の一部を閉鎖し、この閉鎖位置から前記アクチュエータの作動部に至る液体給排経路内に封じ込められた液体で前記アクチュエータ内の圧力を保持するようにした液圧機器の圧力保持機構であって、
前記アクチュエータに形成された液体給排経路の壁部内側に分散して設けられた複数の凹部の各々に、前記液体を吸収せず、かつ、前記液体の温度変化による圧力変化を体積変化によって吸収する弾性体を内嵌して固定的に配備したことを特徴とする液圧機器の圧力保持機構。 - 前記アクチュエータに形成された液体給排経路の壁部を内側から外側に貫通する孔に前記壁部の外側から取り付けられるプラグ状部材の先端に設けられた凹部に内嵌して前記弾性体が配備されていることを特徴とした請求項1記載の液圧機器の圧力保持機構。
- 前記アクチュエータに形成された液体給排経路の壁部を内側から外側に貫通する孔に前記壁部の外側から取り付けられるプラグ状部材の先端に設けられた縮径部に外嵌して前記弾性体が配備されていることを特徴とした請求項1記載の液圧機器の圧力保持機構。
- 前記孔の内周部および前記プラグ状部材の外周部が相互に凹凸嵌合するテーパ状に形成されていることを特徴とした請求項2または請求項3の何れか一項に記載の液圧機器の圧力保持機構。
- 前記孔の内周部に雌ネジが形成され、前記プラグ状部材の外周部に雄ネジが形成されていることを特徴とした請求項2,請求項3または請求項4の何れか一項に記載の液圧機器の圧力保持機構。
- 前記弾性体がシリコーンゴムによって形成されていることを特徴とした請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項5の何れか一項に記載の液圧機器の圧力保持機構。
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