JP5031386B2 - 液圧機器の圧力保持機構 - Google Patents

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Description

本発明は、アクチュエータを作動させる液体の温度変化による膨張や収縮および経時変化による液漏れ等に起因する作動部の位置変動や出力変動を抑制する圧力保持機構の改良に関する。
液圧で作動するアクチュエータに形成された液体給排経路もしくは該液体給排経路に接続された液体給排経路の一部を閉鎖し、この閉鎖位置からアクチュエータの作動部に至る液体給排経路内に封じ込められた液体でアクチュエータに作用する外力を支えることによって作動部の停止位置を保持するようにした液圧機器の圧力保持機構として、トラック等の荷役車両の荷台後端部に設置され、テールゲートを昇降させるテールゲートリフト装置が特許文献1で提案されている。図10は、このテールゲートリフト装置50の油圧回路図である。本回路図で、正逆転可能な油圧ポンプ51から送出された作動油が送りチェック弁52を介してシリンダ供給流路53、フィルタ54を経て油圧シリンダ55の下室56Aに供給される。すると、ピストン57に直結しているピストンロッド58が本図の上方向に伸長することでテールゲート60に搭載されている負荷Wが上昇し、伸長工程が実施される。また、油圧シリンダ55は、下室56Aが戻し流路61を介してドレンタンク62に連通されたとき、ピストンロッド58にかかる荷重Wにより、ピストンロッド58が油圧シリンダ55内へ収納されて収縮工程が実施され、テールゲート60は下降する。
油圧シリンダ55が最伸長状態のとき、油圧シリンダ55が周囲温度の高い例えば炎天下に放置された場合、下室56A内の作動油は熱膨張しようとするが、金属製の油圧シリンダ55の熱膨張はわずかしか増加しないため、その代償として下室56A内の作動油の圧力が上昇することになる。このとき,サーマルリリーフバルブ63が下室56A内の作動油をドレンタンク62へ戻すことで,作動油の熱膨張に基づく油圧シリンダ55の内圧の上昇を防止することができる。
いま、このようなサーマルリリーフバルブ63を、図10と同様に、下室56A内の作動油をドレンタンク62へ戻すことで、作動油の熱膨張に基づく油圧シリンダ55の内圧の上昇を防止する回路に使用し、シリンダで長時間ほぼ一定の力を加える用途として、図示しない例えば工作機械などのワークのクランプの用途を考える。この場合、ノンリーク弁(内部漏れの無い弁)とシリンダとを組み合わせ長時間圧力を封じ込めることができる究極の省エネルギー化と考えられる。しかし、サーマルリリーフバルブを使用した回路では、例えば温度が封じ込めた時の温度よりも低下すると圧力が封じ込めた時よりも低くなってしまうため、圧力が低下したときに作動液を補充して圧力を再度封じ込めなければならないという欠点がある。
また、油圧回路におけるクランプ回路(圧力保持回路)が非特許文献1等で既に公知となっている。
このクランプ回路は、油圧シリンダ等のアクチュエータで駆動されるバイスの締め付け力の保持等に利用されるもので、その主要部は、アクチュエータに作動油を導く液体給排経路に対して並列的に接続されたアキュムレータによって構成され、ポンプから吐出される作動油の圧力をアキュムレータに蓄積した状態でポンプの作動を停止させ、アクチュエータおよびアキュムレータよりも上流側の液体給排経路上つまり液体給排経路上でポンプ寄りの位置に設けられたチェック弁を作動させて液体給排経路を閉鎖し、この閉鎖位置からアクチュエータの作動部であるピストンに至る液体給排経路内に封じ込められた作動油の温度変化に伴う膨張や収縮あるいはピストンとシリンダチューブとの間の摺動部に生じる微小な油漏れ等をアキュムレータの蓄圧力で補償することによって、物品を固定するバイスの作用部の位置変動やバイスの出力変動を抑制するようになっている。
一般に、ポンプから吐出されたばかりの作動油は比較的に温度が高く、この作動油を液体給排経路上の閉鎖位置であるチェック弁からピストンに至る区間で封じ込めてピストンに作用する外力を支えようとした場合、作動油の温度が低下して其の体積が減少すると、バイスの締め付け力が低下し、更には、バイスが開いてしまってクランプ対象の物品が落下する等の問題があり、また、これとは逆に外気温の上昇等によって作動油が膨張して其の体積が相対的に増大すると、バイスの締め付け力が過剰となってクランプ対象の物品が変形したり破壊されたりする問題が生じるので、バイス等を始めとする油圧機器つまり作用部の位置変動や出力変動が問題視される油圧機器においては、アキュムレータを併設してピストンの位置変動や出力変動を抑制することが事実上の必須要件となっている。
高圧の作動油を蓄えるアキュムレータの構造としては、理論上、重量を利用したもの,バネを利用したもの,空気や窒素ガス等の気体の圧縮性を利用したものが知られているが、実際に利用されるのは、専ら、気体の圧縮性を利用したプラダ型アキュムレータやダイヤフラム型アキュムレータあるいはピストン型アキュムレータである。
プラダ型アキュムレータやダイヤフラム型アキュムレータは、隔膜によって仕切られた気体室と油室とを備え、気体室に気体を圧縮して封入することで油室内の作動油を予圧し、前述した液体給排経路の閉鎖区間における作動油の膨張や収縮あるいは油漏れ等に応動して此の該閉鎖区間に作動油を補充あるいは回収することによってピストンの位置変動や出力変動を抑制する構造を有するが、気体室に大量の気体を圧縮して封入する構造であるため全体の構造が大型化する傾向があり、液体給排経路の閉鎖区間に接続することは可能であってもアクチュエータそれ自体に装着することは実質的に不可能である。
また、経年変化による隔膜の劣化やガス抜けといった問題があり、頻繁なメンテナンス作業が要求される。
ピストン型アキュムレータは、シリンダチューブ内にピストンを配置して気体室と油室とを区切り、気体室の側に気体を圧縮して封入した構成を有するが、ピストンとシリンダチューブとの間の摺動部からの油漏れを抑制するために高い加工精度が必要となってコスト高となる欠点があり、前記と同様、経年変化によるガス抜けといった問題も解消しえない。
ピストン型アキュムレータの気体室にコイルスプリングを配置して油室内の作動油を予圧することによってガス抜けの問題を解消するといったことも考えられるが、ピストンとシリンダチューブとの間の摺動部からの油漏れを完全に防止することはできない。また、気体室に大量の気体を圧縮して封入するか此れに代わるコイルスプリングを取り付けて油室の作動油を予圧する関係上、前述したプラダ型アキュムレータやダイヤフラム型アキュムレータほどではないにしても、全体の構造が大型化する弊害が残る。
以上のような理由から、単に圧力を封じ込める省エネルギー化のシステムにおいて、アキュムレータを用いた温度変化への対応は、過剰設計と考えられ、さらに装置のコンパクト化にも適していない。
この他、液圧で作動するアクチュエータの定位置保持を目的とした技術としては、特許文献2に開示されるように、位置検出手段からのフィードバック信号を利用してコントロールバルブを開閉制御するものや、特許文献3に開示されるように、ポンプの駆動源としてサーボモータを利用するようにしたものが提案されているが、何れも制御装置を含む複雑な構成を有するものであって、アクチュエータそれ自体に自己完結的に装着することは不可能であり、電気部品を含むことから耐久性の点でも問題がある。
小栗幸正著,「油圧と回路」,第9版,理工学社,1980年2月,p7.1〜7.3,p8.9〜8.11 特開平8−42512号公報 実開平7−4497号公報 特開2004−96867号公報
そこで、本発明の課題は、前記従来技術の不都合を改善し、従来型の各種アキュムレータに比べて十分に小型化され、アクチュエータそれ自体に装着することが可能であって、経年変化による性能の低下が生じ難く、かつ、実質的にメンテナンスフリーであって、高い加工精度を要さず低コストでの製造が可能な、特に長時間にわたり圧力を封じ込め、周囲温度の変化に対しても安定した圧力を維持できる省エネルギー化を目的とした圧力保持機構を提供することにある。
本発明の圧力保持機構は、液圧で作動するアクチュエータに形成された液体給排経路もしくは該液体給排経路に接続された液体給排経路の一部を閉鎖し、この閉鎖位置からアクチュエータの作動部に至る液体給排経路内に封じ込められた液体で前記アクチュエータ内の圧力を保持するようにした液圧機器の圧力保持機構であり、前記課題を達成するため、特に、
前記アクチュエータに形成された液体給排経路の壁部内側に分散して設けられた複数の凹部の各々に、前記液体を吸収せず、かつ、前記液体の温度変化による圧力変化を体積変化によって吸収する弾性体を内嵌して固定的に配備したことを特徴とする構成を有する。
液圧で作動するアクチュエータに形成された液体給排経路もしくは該液体給排経路に接続された液体給排経路の一部を閉鎖し、この閉鎖位置からアクチュエータの作動部に至る液体給排経路内にアクチュエータ駆動用の液体を封じ込め、この液体で前記アクチュエータ内の圧力を保持する。
この際、閉鎖位置からアクチュエータの作動部に至る液体給排経路内に固定的に配備されている前記弾性体は、液体給排経路の一部を閉鎖した時点における液体給排経路内の液体の圧力を受けて弾性変形した状態、より具体的には、圧縮され体積が縮小した状態となる。
その後、閉鎖位置からアクチュエータの作動部に至る液体給排経路内の液体の温度の低下等により液体の体積が減少した場合には、前記弾性体が弾性変形して膨張することによって液体の体積の減少分を補完し、液体給排経路内に封じ込められている液体の圧力の低下を抑制することで、液体の圧力を略一定の状態に保持する。
厳密には、液体給排経路内に封じ込められている液体の体積が減少して圧力が低下する結果として弾性体が弾性変形して膨張するのであるから、液体給排経路内に封じ込められている液体の圧力と弾性体の内部圧力とが平衡状態を維持したまま両者の圧力が共に僅かに低下することになるが、この圧力の低下は、液体給排経路内に非圧縮性の液体のみを封じ込めた場合の圧力低下に比べて定性的に小さいので、液体の温度の低下等による液体の体積の減少に伴うアクチュエータの作動部の位置変動や出力変動を効果的に抑制することができる。
一方、閉鎖位置からアクチュエータの作動部に至る液体給排経路内の液体の温度の上昇により液体の体積が増大した場合には、前記弾性体が弾性変形して更に圧縮されることによって液体の体積の増大分を吸収し、液体給排経路内に封じ込められている液体の圧力の上昇を抑制することで、液体の圧力を略一定の状態に保持する。
厳密には、液体給排経路内に封じ込められている液体の体積が増大して圧力が上昇する結果として弾性体が弾性変形して圧縮されるのであるから、液体給排経路内に封じ込められている液体の圧力と弾性体の内部圧力とが平衡状態を維持したまま両者の圧力が共に僅かに上昇することになるが、この圧力の上昇は、液体給排経路内に非圧縮性の液体のみを封じ込めた場合の圧力上昇に比べて定性的に小さいので、液体の温度の上昇による液体の体積の増大に伴うアクチュエータの作動部の位置変動や出力変動を効果的に抑制することができる。
ここでいう弾性体とは、液体を吸収せず、かつ、周囲の圧力変化によって弾性変形が可能な弾性体を指すもので、特定の方向からの外力のみに応動して弾性変形する弾性体、例えば、スプリングのようなものや、液体を吸収する多孔質のスポンジのようなものは含まない。
従来型のアキュムレータ、例えば、プラダ型アキュムレータやダイヤフラム型アキュムレータあるいはピストン型アキュムレータとは相違し、空気や窒素ガス等の大量の気体を封じ込めるための気室や液体を貯溜するための油室および両者を隔離するための隔膜やピストン、あるいは、ピストンを加圧するためのスプリングといった複雑な構造を必要としないため、圧力保持機構の小型化と製造コストの低減化が達成され、油圧シリンダ等のアクチュエータそれ自体に圧力保持機構を装着することが可能となり、経年変化による隔膜の劣化やガス抜けに伴う性能の劣化あるいは此れを解消するためのメンテナンス作業の煩わしさといった問題、更には、摺動部からの油漏れといった問題も解消される。
アクチュエータに形成された液体給排経路とは、例えば、油圧シリンダにおけるシリンダヘッド側油室やシリンダボトム側油室等である。
より具体的には、この弾性体は、アクチュエータに形成された液体給排経路の壁部内側に設けられた凹部に内嵌して配備することができる。
油圧シリンダに関していえば、例えば、シリンダヘッドの内壁やシリンダボトムの内壁等に盲穴を穿設して形成した凹部に弾性体を内嵌し、盲穴の開口部近傍に形成した内周溝にインターナルスナップリングを圧入する等して弾性体の脱落を防止することができる。
このような構造を適用した場合、弾性体の形状としては、例えば、円柱体,円筒体,球体等が適する。
この際、配備する弾性体の数を複数個とする場合もある。特に、アクチュエータの内容積が大きいような場合においては1つの弾性体のみの膨張や圧縮によって液体の体積の減少や増大に伴う圧力変動に対処しきれない場合があり、そのような場合は積極的に複数の弾性体を配備することが望ましい。例えば、シリンダヘッドの内壁やシリンダボトムの内壁あるいはピストンの端面の一円周上に沿って間隔をおいて多数の盲穴を穿設して其の各々に弾性体を内嵌して取り付けたり、それでも足りなければ、更に、半径の異なる複数の同心円の各々に沿って前記と同様にして盲穴を穿設し、其の各々に弾性体を内嵌して取り付けるといったこともできる。このようにして複数の弾性体を分散配備することにより弾性体の大型化は不要となるので、アクチュエータに形成された液体給排経路の壁部内側に設ける凹部を大型化する必要もなくなり、シリンダヘッドやシリンダボトムおよびピストンの厚みが十分に確保され、機械的な強度を低下させることなくアクチュエータに圧力保持機構を内蔵させることができる。
あるいは、アクチュエータに形成された液体給排経路の壁部を内側から外側に貫通する孔に前記壁部の外側から取り付けられるプラグ状部材の先端に設けられた凹部に内嵌して弾性体を配備するようにしてもよい。
油圧シリンダに関していえば、例えば、シリンダヘッドやシリンダボトムを厚み方向に貫通する孔あるいはシリンダチューブを径方向に貫通する孔を設け、この孔に外側から取り付けられるプラグ状部材の先端に設けられた凹部に弾性体を内嵌させることができる。
プラグ状部材の先端の凹部はプラグ状部材の先端から穿設された盲穴によって構成することが可能であり、この凹部に内嵌された弾性体は、盲穴の開口部近傍に形成した内周溝にインターナルスナップリングを圧入する等して脱落を防止され得る。
このような構成は、従来型のアクチュエータに追加工によって圧力保持機構を装着する際に適する。
あるいは、アクチュエータに形成された液体給排経路の壁部を内側から外側に貫通する孔に前記壁部の外側から取り付けられるプラグ状部材の先端に設けられた縮径部に外嵌して弾性体を取り付けるようにしてもよい。
この場合、弾性体の形状としては、例えば、環状体あるいは円筒体等が好適である。
プラグ状部材を利用する場合は、アクチュエータに形成された液体給排経路の壁部を内側から外側に貫通する孔の内周部および前記プラグ状部材の外周部が相互に凹凸嵌合するテーパ状に形成されていることが望ましい。
テーパ面同士の凹凸嵌合による楔効果によってプラグ状部材を孔に対して強力に圧入することで液漏れを防止する。
更に、アクチュエータに形成された液体給排経路の壁部を内側から外側に貫通する孔の内周部に雌ネジが形成され、プラグ状部材の外周部に雄ネジが形成されていてもよい。
これにより、アクチュエータからのプラグ状部材の着脱が容易に行なえるようになる。
前述した通り、この圧力保持機構は実質的にメンテナンスフリーであるが、アクチュエータの使用状況、例えば、停止位置を保持する際に作用する外力の大小等に応じ、低圧用,高圧用といったように弾性体の特性を選択する必要が生じる場合も想定されるので、プラグ状部材の着脱つまり弾性体の交換作業は容易に行なえるようにするに越したことはない。
圧力保持機構を構成する弾性体として適するものとしてはシリコーンゴムを挙げることができる。
シリコーンゴムの一般的な特性として、温度変化による特性変化が少ないこと,作動油等の液体を始めとして各種の液体に対する耐久性に優れること,経年変化による劣化が少ないこと,弾性係数の異なる様々な種類の製品が既に多数市販されていること等が挙げられ、何れも、アクチュエータに形成された液体給排経路の内部もしくは該液体給排経路に接続された液体給排経路の内部に圧力変動を抑制するための弾性体として設置するに適した特徴である。
前述しように、アクチュエータの作動部の停止位置を保持する際に作用する外力の大小等に応じ、低圧用,高圧用といったようにシリコーンゴムの特性(弾性係数)を使い分けることが望ましい。つまり、作動部の停止位置を保持する際に作用する外力が小さな場合には、弾性係数が小さく弾性変形し易いシリコーンゴムを選択することで、低圧時の温度変化で生じる液体の体積の増減を微小な圧力変化に追従して体積を変化させ得るシリコーンゴムの圧縮や膨張によって吸収し、また、作動部の停止位置を保持する際に作用する外力が大きな場合には、弾性係数が大きく弾性変形し難いシリコーンゴムを選択し、高圧時の温度変化で生じる液体の体積の増減を強大な圧力の下でも容易に限界まで圧縮されないシリコーンゴムの圧縮や膨張によって吸収することにより、液体の圧力を略一定の状態に保持するようにする。
また、アクチュエータの作動部の停止位置を保持する際に作用する外力の大小が特定され得ないような場合、あるいは、様々な外力の下でアクチュエータの作動部の停止位置を保持する必要があるような場合には、アクチュエータに形成された液体給排経路の内部もしくは該液体給排経路に接続された液体給排経路の内部に、弾性係数の異なる複数のシリコーンゴムを配置することによって対処する。このような構成を適用した場合、作動部の停止位置を保持する際に作用する外力が小さい状況下においては、専ら、弾性係数が小さく弾性変形し易いシリコーンゴムが低圧時の温度変化で生じる液体の体積の増減を圧縮や膨張によって吸収して液体の圧力を略一定の状態に保持し、また、作動部の停止位置を保持する際に作用する外力が大きい状況下においては、弾性係数が小さいシリコーンゴムが限界まで圧縮された状態で、専ら、弾性係数が大きく弾性変形し難いシリコーンゴムのみが高圧時の温度変化で生じる液体の体積の増減を圧縮や膨張によって吸収して液体の圧力を略一定の状態に保持することになる。
あるいは、弾性係数の異なる複数のシリコーンゴムを配置する代わりに、弾性係数の異なる複数のシリコーンゴムを積層して一体化した単体のシリコーンゴムを圧力変動抑制用の弾性体として利用するようにしてもよい。弾性係数の異なる複数のシリコーンゴムを内外に積層する場合、例えば、核となる球状のシリコーンゴムと此れを覆う何層かの球面状のシリコーンゴムとによって全体として球状の弾性体を形成することができる。この際、核となる側のシリコーンゴムを弾性変形し難いシリコーンゴムつまり弾性係数の大きなシリコーンゴムとし、外郭となる側のシリコーンゴムを段階的に弾性係数の小さなシリコーンゴムとすることで、前記と同様に、作動部の停止位置を保持する際に作用する外力が小さい状況下においては、専ら、弾性変形し易いシリコーンゴムの圧縮や膨張によって液体の圧力を略一定の状態に保持し、また、作動部の停止位置を保持する際に作用する外力が大きい状況下においては、弾性変形し易いシリコーンゴムを限界まで圧縮させた状態で、専ら、弾性変形し難いシリコーンゴムのみの圧縮や膨張によって液体の圧力を略一定の状態に保持することができる。
本発明による液圧機器の圧力保持機構は、液圧で作動するアクチュエータの作動部の停止位置を保持するために閉鎖される液体給排経路の閉鎖位置からアクチュエータの作動部に至る液体給排経路内に弾性変形が可能な弾性体を固定的に配備し、閉鎖位置からアクチュエータの作動部に至る液体給排経路内の液体の温度の低下等によって液体の体積が減少した場合には、弾性体の弾性変形による膨張で液体の体積の減少分を補完して液体給排経路内に封じ込められている液体の圧力の低下を抑制する一方、閉鎖位置からアクチュエータの作動部に至る液体給排経路内の液体の温度の上昇によって液体の体積が増大した場合には、弾性体の弾性変形による更なる圧縮で液体の体積の増大分を弾性体に吸収させ、液体給排経路内に封じ込められている液体の圧力の上昇を抑制して液体の圧力を略一定の状態に保持するようにしたので、従来型のアキュムレータ、例えば、プラダ型アキュムレータやダイヤフラム型アキュムレータあるいはピストン型アキュムレータとは相違し、空気や窒素ガス等の大量の気体を封じ込めるための気室や補充用の液体あるいは回収された液体を貯溜するための油室、更には、気室と油室を隔離するための隔膜やピストン、あるいは、ピストンを加圧するためのスプリングといった複雑な構造を必要とせず、圧力保持機構の小型化と製造コストの低減化が達成される。
また、この小型化により油圧シリンダ等のアクチュエータそれ自体に圧力保持機構を装着することが可能となり、経年変化による隔膜の劣化やガス抜けに伴う性能の劣化あるいは此れを解消するためのメンテナンス作業の煩わしさといった問題も解消される。
次に、本発明を実施するための最良の形態について幾つかの例を挙げて具体的に説明する。ここでは、液圧で作動するアクチュエータの一例として、ポンプから吐出される作動油の圧力で作動する単動型の油圧シリンダを取り上げる。
図1は単動型の油圧シリンダの一般的な構造について示した部分断面図である。油圧シリンダ1は、概略において、円筒状のシリンダチューブ2と、シリンダチューブ2に対して摺動自在に内嵌されたピストン3、および、ピストン3に一端を固着されたピストンロッド4と、シリンダチューブ2の開口部を封止するシリンダヘッド5およびシリンダボトム6と、ピストン3を原位置復帰させるためのリターンスプリング8、ならびに、シリンダヘッド5,シリンダチューブ2,シリンダボトム6を共締めする4本のタイバー7によって構成され、シリンダボトム6には給排ポート9が設けられている。
シリンダヘッド側スペース10はシリンダヘッド5の内壁と図1に示されるピストン3の左端面およびシリンダチューブ2の内周壁によって画成される空間であり、シリンダボトム側油室11はシリンダボトム6の内壁と図1に示されるピストン3の右端面およびシリンダチューブ2の内周壁によって画成される空間である。
給排ポート9はアクチュエータである油圧シリンダ1に形成された液体給排経路であり、シリンダボトム側油室11も、広い意味では、アクチュエータである油圧シリンダ1に形成された液体給排経路である。
給排ポート9は油圧シリンダ1の外部に形成された液体給排経路13を介してノンリーク形の切換弁14に接続され、その閉位置において、一対のチェックポペット14aにより流路を完全に閉じる構成となっている。給排ポート9に接続した液体給排経路13はアクチュエータである油圧シリンダ1に形成された液体給排経路に接続した液体給排経路である。
図1に示される位置に切換弁14をシフトさせた状態では、モータMで駆動されるポンプPから吐出される作動油がノンリーク形のチェック弁16を介し、液体給排経路13および給排ポート9を介して油圧シリンダ1のシリンダボトム側油室11に送り込まれ、ピストン3およびピストンロッド4がリターンスプリング8の押圧力に抗して突出方向つまり図1で右から左に向かう向きに移動後、図示しない制御回路によりタイマー設定時間の経過後にモータMを停止させることで、エネルギーの消費なしに油圧シリンダ1の状態を保持することができる。
また、図1に示される状態からノンリーク形の切換弁14を開位置に切換えると、油圧シリンダ1のシリンダボトム側油室11に溜まっていた作動油が給排ポート9および液体給排経路13を介して絞り弁41およびノンリーク形の切換弁14を経てタンクTに回収される。同時に、ピストン3およびピストンロッド4がリターンスプリング8の押圧力によって縮退方向つまり図1で左から右に向かう向きに、絞り弁41の開度に応じた速度で移動することになる。
つまり、この実施形態では、アクチュエータである油圧シリンダ1に形成された液体給排経路と接続した液体給排経路13を切換弁14によって閉鎖することによって、この閉鎖位置から油圧シリンダ1の作動部であるピストン3に至る区間の液体給排経路、すなわち、液体給排経路13と給排ポート9およびシリンダボトム側油室11に作動油を封じ込め、この作動油でピストンロッド4の先端に作用する外力を支えることで、ピストン3およびピストンロッド4の停止位置を保持するようになっている。
ピストンロッド4の停止状態において、ノンリーク形の切換弁14やチェック弁16を使用することで作動油のリークも防げることから、ポンプPを停止することができ、省エネルギー化が可能となる。
このような構成を有する油圧シリンダ1の液体給排経路内に圧力変動抑制用の弾性体を配備するとした場合、その取り付け位置は、アクチュエータである油圧シリンダ1に形成された液体給排経路の内部、例えば、シリンダボトム側油室11の内側が適当である。
シリンダボトム側油室11に圧力変動抑制用の弾性体を配備する方法としては、まず、シリンダボトム側油室11を画成する壁部の内側に盲穴を穿設して凹部を形成し、この凹部に圧力変動抑制用の弾性体を内嵌して取り付けるといったことが考えられる。
シリンダボトム側油室11を画成する壁部の内側に圧力変動抑制用の弾性体を配備する場合は、図1における取り付け位置P1(シリンダボトム6の内壁)や取り付け位置P2(ピストン3の右端面)に凹部を形成して圧力変動抑制用の弾性体を取り付けることになる。
図1における取り付け位置P1に圧力変動抑制用の弾性体を取り付ける場合の構造の一例を図2(a)に示す。
図2(a)に示す通り、圧力保持機構を成す弾性体16aを内嵌するための凹部17は単純な盲穴状のキリ穴でよい。
また、凹部17を形成する盲穴の開口部近傍に内周溝18を刻設し、凹部17に弾性体16aを内嵌させてから内周溝18にインターナルスナップリング19を圧入することで弾性体16aの脱落を防止するようにする。
圧力変動抑制用の弾性体16aの外周部を必ずしも凹部17に圧接させる必要はなく、凹部17の加工精度や弾性体16aの寸法精度は問われない。
図2(a)に示されるような球状の弾性体16aに代えて、図2(b)に示されるような円柱状の弾性体16b、あるいは、図2(c)に示されるような円筒状の弾性体16cを圧力保持機構として取り付けるようにしてもよい。
取り付け位置P2(ピストン3の右端面)に圧力変動抑制用の弾性体を取り付ける場合の取り付け構造も前記と同様である。
シリンダボトム側油室11を画成する壁部の内側に圧力変動抑制用の弾性体を配備する場合においては、図3に示されるような取り付け位置P3(ピストンロッド4の右端面)に前記と同様の方法で圧力変動抑制用の弾性体を取り付けることが可能である。
なお、シリンダボトム側油室11を画成する壁部の内側に圧力変動抑制用の弾性体を配備する場合においては、給排ポート9の内周壁に圧力変動抑制用の弾性体を取り付けること、更には、シリンダボトム6に接続する側のシリンダチューブ2の軸方向端部近傍の内周壁に圧力変動抑制用の弾性体を取り付けることも可能であるが、キリ穴加工用のドリルの軸部が給排ポート9やシリンダチューブ2の周壁部分に干渉しやすくなるので、加工が煩雑となる弊害がある。
図1では取り付け位置P1,P2を1箇所のみ示しているが、シリンダボトム6の内壁あるいはピストン3の右端面において、図1に示される中心線CLを中心とする1つの円周上に沿って一定の間隔、例えば、30°,60°,90°等のピッチで多数の盲穴を穿設して其の各々に弾性体を内嵌して取り付けてもよく、更には、中心線CLを中心とする半径の異なる複数の同心円の各々に沿って此れと同様にして盲穴を穿設し、其の各々に弾性体を内嵌して取り付けるようにしてもよい。
特に、油圧シリンダ1が大型である場合には、シリンダボトム側油室11に滞留する作動油の体積が大きく、必然的に、温度変化に伴う作動油の体積変化を吸収するための弾性体も多くの体積を必要とする。シリンダボトム側油室11に単一の弾性体を設置することを前提として弾性体それ自体を大型化すると、この弾性体を内嵌するために、シリンダボトム側油室11を画成する壁部の内側に大径で底の深い凹部を設ける必要が生じ、シリンダボトム6あるいはピストン3の強度が低下する恐れがあるが、このようにして多数の弾性体を分散して配置することにより、シリンダボトム6やピストン3の強度の低下が最小限度に抑制される。
シリンダボトム側油室11に圧力変動抑制用の弾性体を配備するための別の方法としては、シリンダボトム側油室11を画成する壁部を内側から外側に貫通する孔を設け、弾性体を内嵌したプラグ状部材を此の孔に外側から取り付けるといった方法も考えられる。この方法は、特に、従来型の油圧シリンダ1に追加工を施して圧力保持機構を装着する際に有効である。
シリンダボトム側油室11にプラグ状部材を配備する場合においては、シリンダボトム側油室11を画成する壁部の一つであるシリンダボトム6に厚み方向の貫通孔を穿設して外側からプラグ状部材を取り付けること、および、シリンダボトム6に接続する側のシリンダチューブ2の軸方向端部近傍の周壁を径方向に貫通する孔を穿設して外側からプラグ状部材を取り付けることが可能である。
但し、図1にも示される通り、シリンダボトム6は相当に厚く、また、その内部には給排ポート9が形成され、更には、図3に示されるようなクッション弁20やチェック弁21も内蔵されており、特に、追加工で穿設作業を行う場合に作業が複雑となる問題があるので、ここでは、シリンダボトム6に接続する側のシリンダチューブ2の軸方向端部近傍の周壁を径方向に貫通する孔を穿設して外側からプラグ状部材を取り付ける場合の構造を例に取って説明する。
シリンダボトム側油室11にプラグ状部材を配備する場合には、例えば、図1中の取り付け位置P4(シリンダボトム6に接続する側のシリンダチューブ2の軸方向端部近傍の周壁)がプラグ状部材を取り付けるための孔の穿設位置となる。
図1における取り付け位置P4にプラグ状部材を取り付ける場合の構造の一例を図4に示す。
図4に示す例では、ボルト状のプラグ状部材22の先端に盲穴状のキリ穴を穿設して圧力保持機構である弾性体16aを内嵌するための凹部23を形成し、この凹部23に弾性体16aを内嵌させてから凹部23の内周溝24にインターナルスナップリング19を圧入することで弾性体16aの脱落を防止している。
圧力変動抑制用の弾性体16aの外周部を必ずしも凹部23に圧接させる必要はなく、凹部23の加工精度や弾性体16aの寸法精度は問われない。
図4に示されるような球状の弾性体16aに代えて、例えば、図2(b)に示されるような円柱状の弾性体16b、あるいは、図2(c)に示されるような円筒状の弾性体16cを圧力保持機構として取り付けるようにしてもよい。
シリンダチューブ2の周壁を径方向に貫通した孔25の内周部には、プラグ状部材22の外周部に刻設された雄ネジに適合する雌ネジが刻設され、更に、液漏れ防止用のOリング26を内嵌するための座ぐり27が設けられている。
この例ではプラグ状部材22の外周部の雄ネジと孔25の内周部の雌ネジを共にメートル並目ネジで構成し、Oリング26を利用して液漏れを防止しているが、管用テーパネジ等を利用する場合においてはOリング26は必ずしも必要ではない。
なお、プラグ状部材22の着脱を考慮する必要がなければ、プラグ状部材22の外周部と此れに嵌合する孔25の内周部を滑らかなテーパ面で形成し、外周部に接着剤を塗布したプラグ状部材22を孔25に強力に打ち込んでしまっても構わない。
あるいは、図5に示されるように、弾性体を内嵌したプラグ状部材22に代えて、先端部に設けられた縮径部12aに環状あるいは円筒状の弾性体16dを圧力保持機構として外嵌したプラグ状部材12を利用することも可能である。
図1では取り付け位置P4を1箇所のみ示しているが、シリンダチューブ2の周方向に沿って一定の間隔、例えば、30°,60°,90°等のピッチで多数の孔25を穿設して其の各々にプラグ状部材22あるいはプラグ状部材12を取り付けてもよく、更には、シリンダチューブ2の軸方向に或る程度の位置をずらして軸方向の複数列に亘って周方向に30°,60°,90°等のピッチで多数の孔25を穿設し、其の各々にプラグ状部材22あるいはプラグ状部材12を取り付けるようにしてもよい。
なお、図1から明らかなように、ピストン3がシリンダボトム6に密接した状態あるいはピストン3がシリンダボトム6に極めて近接した状態においては、ピストン3の外周部によって取り付け位置P4の孔25が塞がれ、この位置に配備された弾性体16a(16b,16c,16d)が、シリンダボトム側油室11内の作動油の圧力変動を抑制するための弾性体として機能しなくなるが、ピストン3がシリンダボトム6に密接した状態あるいはピストン3がシリンダボトム6に極めて近接した状態においてはシリンダボトム側油室11の容積が著しく減少しており、シリンダボトム側油室11に滞留する作動油の量も極めて僅かであるので、この作動油の温度変化による体積の減少や増大で生じるシリンダボトム側油室11内の圧力変化やピストン3およびピストンロッド4の停止位置のずれは特に考慮する必要がない。
シリンダボトム側油室11内に滞留した作動油の温度変化による体積の減少や増大で生じるシリンダボトム側油室11内の圧力変化やピストン3およびピストンロッド4の停止位置のずれが問題となるのは、専ら、ピストンロッド4が大きく突出してシリンダボトム側油室11の容積が増大した状況下においてである。
また、単動型の油圧シリンダ1に代えて復動型の油圧シリンダをアクチュエータとして利用する場合もあるが、その場合、シリンダヘッド側スペース10に相当する部分がシリンダヘッド側油室として機能し、このシリンダヘッド側油室にシリンダヘッド5側の給排ポートから作動油を送り込むことでピストン3およびピストンロッド4を縮退方向に移動させる構造となる。復動型の油圧シリンダにおいては、切替弁を中立位置にした状態でシリンダボトム6側の給排ポート9とシリンダヘッド5側の給排ポートが共に切替弁によって閉鎖され、実質的な断面積が多少は相違するものの、ピストン3の左右両端面が同時に左右方向からの油圧を受けるので、作動油の温度変化によって圧力変動が生じたとしても、ピストン3およびピストンロッド4の停止位置にずれが生じるといった問題は発生しづらい。
しかし、作動油の温度変化による圧力変化は、シリンダヘッド側油室およびやシリンダボトム側油室内の圧力変化を来たすことから、この圧力変化を弾性体16a(16b,16c,16d)の体積変化により吸収することにより、安定した圧力保持が可能となる。
圧力保持機構の主要部を構成する弾性体16a,16b,16c,16dを形成する素材としては、温度変化による特性変化が少なく、作動油に接しても解けたり劣化したりすることがなく、更には、経年変化による劣化の少ないシリコーンゴムを利用することが望ましい。弾性係数の異なる様々な種類のシリコーンゴムが既に多数市販されているので、アクチュエータとして機能する油圧シリンダ1の使用環境に応じて適当なシリコーンゴムを選択することが可能である。
例えば、作動部であるピストンロッド4の停止位置を保持する際に作用する外力の大小等に応じて低圧用,高圧用といったようにシリコーンゴムの特性、特に、弾性係数を使い分けることができる。具体的には、ピストンロッド4の停止位置を保持する際に作用する外力が小さな場合には、この外力の大きさに合わせて弾性係数の小さなシリコーンゴムを選択する。弾性係数の小さなシリコーンゴムは、作動油の体積の増減つまり圧力の変動に的確に追従して体積を変化させることができるので、特に、低圧時の温度変化で生じる作動油の体積の増減を吸収あるいは補完するのに適する。
また、ピストンロッド4の停止位置を保持する際に作用する外力が大きな場合、例えば、油圧シリンダ1をバイス用のアクチュエータとして利用するような場合においては、この外力の大きさに合わせて弾性係数の大きなシリコーンゴムを選択するようにする。弾性係数の大きなシリコーンゴムは、強大な圧力の下でも容易に限界まで圧縮されないので、特に、高圧時の温度変化で生じる作動油の体積の増減を吸収あるいは補完するのに適する。
更に、様々な用途に使用される油圧シリンダ1の場合、あるいは、様々な外力の下でピストンロッド4の停止位置を保持する必要がある油圧シリンダ1の場合においては、弾性係数の異なる複数のシリコーンゴムを圧力変動抑制用の弾性体として配置するとよい。
例えば、前述したように、シリンダボトム6の内壁あるいはピストン3の右端面において図1に示される中心線CLを中心とする1つの円周上に沿って60°のピッチで凹部17を穿設して其の各々に弾性体16a(16b,16c)を配置するとした場合、あるいは、前述したように、シリンダチューブ2の周方向に沿って60°のピッチで孔25を穿設して其の各々に弾性体16a(16b,16c,16d)を配置するとした場合においては、例えば、0°,120°,240°に相当する位置のものを弾性係数の小さなシリコーンゴムで形成し、60°,180°,300°に相当する位置のものを弾性係数の大きなシリコーンゴムで形成するといったことが考えられる。
あるいは、シリンダボトム6の内壁またはピストン3の右端面において中心線CLを中心とする半径の異なる2つの同心円の各々に沿って所定のピッチで凹部17を穿設して其の各々に弾性体16a(16b,16c)を配置するとした場合においては、小径の同心円に沿って配置するものを弾性係数の小さなシリコーンゴムで形成し、大径の同心円に沿って配置するものを弾性係数の大きなシリコーンゴムで形成するといったことが可能であり、更には、前述したように、シリンダチューブ2の軸方向に位置をずらして軸方向の複数列たとえば2列に亘って周方向に30°,60°,90°等のピッチで多数の孔25を穿設して其の各々に弾性体16a(16b,16c,16d)を配置するとした場合では、例えば、シリンダボトム6に近い側の列に配置するものを弾性係数の小さなシリコーンゴムで形成し、シリンダボトム6に遠い側の列に配置するものを弾性係数の大きなシリコーンゴムで形成するといったことが可能である。
このような構成を適用した場合、ピストンロッド4の停止位置を保持する際に作用する外力が小さい状況下においては、専ら、弾性係数が小さく弾性変形し易いシリコーンゴムが低圧時の温度変化で生じる液体の体積の増減を圧縮や膨張によって吸収して液体の圧力を略一定の状態に保持し、また、ピストンロッド4の停止位置を保持する際に作用する外力が大きい状況下においては、弾性係数の小さなシリコーンゴムが限界まで圧縮された状態で、専ら、弾性係数が大きく弾性変形し難いシリコーンゴムのみが高圧時の温度変化で生じる液体の体積の増減を圧縮や膨張によって吸収して液体の圧力を略一定の状態に保持することになる。
あるいは、弾性係数の異なる複数のシリコーンゴムを配置する代わりに、弾性係数の異なる複数のシリコーンゴムを積層して一体化した単体のシリコーンゴムを圧力変動抑制用の弾性体として利用するようにしてもよい。
例えば、球状の弾性体16aの場合では、図6に示されるように、弾性体16aの核となる部分を弾性係数の大きなシリコーンゴム16a−1で構成し、このシリコーンゴム16a−1を覆うようにして弾性係数の小さなシリコーンゴム16a−2を積層するといったことが可能である。
この場合も、前記と同様、ピストンロッド4の停止位置を保持する際に作用する外力が小さい状況下においては、専ら、弾性変形し易い外側のシリコーンゴム16a−2の圧縮や膨張によって作動油の圧力が略一定の状態に保持され、また、ピストンロッド4の停止位置を保持する際に作用する外力が大きい状況下においては、弾性変形し易い外側のシリコーンゴム16a−2が限界まで圧縮された状態で、弾性変形し難い内側のシリコーンゴム16a−1のみの圧縮や膨張によって作動油の圧力が略一定の状態に保持されることになる。
成形上の問題からシリコーンゴム16a−1とシリコーンゴム16a−2を完全な同心球とすることは難しいが、シリコーンゴム16a−1とシリコーンゴム16a−2の中心に偏心が生じても、弾性変形し易いシリコーンゴム16a−2つまり作動油の圧力が上昇する過程で先に限界まで圧縮されるべきシリコーンゴム16a−2が全体として外側に位置する限り問題はない。
次に、ピストンロッド4の先端で外力を支えたまま給排ポート9と接続する液体給排経路13を閉鎖してピストンロッド4の停止位置を保持したロックアップ状態においてシリンダボトム側油室11内の作動油の温度が変化した場合の現象について、シリンダボトム側油室11内に弾性係数の等しい弾性体16a(16b,16c,16d)を配備した油圧シリンダ1の場合を例にとって説明する。
前述した通り、弾性体16a(16b,16c,16d)は様々な位置に様々な個数で取り付けることが可能であるが、シリンダボトム側油室11内の作動油の圧力はどの部位をとっても同一であるから、シリコーンゴムからなる弾性体の取り付け位置による作用効果の差はなく、また、弾性体の大きさや取り付け個数は定量的な問題であって、作用効果に定性的な相違を及ぼすことはない。
通常、ポンプPから吐出されたばかりの作動油は比較的に温度が高いので、ロックアップ状態のまま油圧シリンダ1を放置するとシリンダボトム側油室11に封じ込められた作動油の温度は低下するのが普通であるが、外気温の変動その他の理由でシリンダボトム側油室11内の作動油の温度が上昇することもあり得る。
まず、ロックアップ完了直後の段階では、弾性体16a(16b,16c,16d)は、液体給排経路13を閉鎖した時点におけるシリンダボトム側油室11内の作動油の圧力を受けて弾性変形した状態、より具体的には、予圧されて圧縮された状態を維持する。
その後、シリンダボトム側油室11や給排ポート9あるいは液体給排経路13内の作動油の温度の低下あるいは液漏れ等によって作動油の体積が減少した場合には、弾性体16a(16b,16c,16d)が初期の予圧による圧縮状態から弾性変形して膨張し、作動油の体積の減少分を補完してシリンダボトム側油室11に封じ込められている液体の圧力の低下を抑制することで、作動油の圧力を略一定の状態に保持する。
厳密には、シリンダボトム側油室11内に封じ込められている作動油の体積が減少して圧力が低下する結果として弾性体16a(16b,16c,16d)が膨張するのであるから、シリンダボトム側油室11内に封じ込められている作動油の圧力と弾性体16a(16b,16c,16d)の内部圧力とが平衡状態を維持したまま両者の圧力が共に僅かに低下することになるが、この圧力の低下は、シリンダボトム側油室11内に非圧縮性の作動油のみを封じ込めた場合の圧力低下に比べて定性的に小さいので、作動油の温度の低下あるいは液漏れ等による作動油の体積の減少に伴う圧力変動を効果的に抑制することができる。
また、弾性体16a(16b,16c,16d)とシリンダボトム側油室11内の作動油とを合わせた体積はロックアップ完了時点より多少は減少するものの概ね一定の状態に保持されるのでピストンロッド4の位置変動も効果的に抑制される。
一方、作動油の温度上昇によって作動油の体積が増大した場合には、弾性体16a(16b,16c,16d)が初期の予圧による圧縮状態から弾性変形して更に圧縮されることによって作動油の体積の増大分を吸収し、シリンダボトム側油室11内に封じ込められている作動油の圧力の上昇を抑制することで、作動油の圧力を略一定の状態に保持する。
厳密には、シリンダボトム側油室11内に封じ込められている作動油の体積が増大して圧力が上昇する結果として弾性体16a(16b,16c,16d)が弾性変形して圧縮されるのであるから、シリンダボトム側油室11内に封じ込められている作動油の圧力と弾性体16a(16b,16c,16d)の内部圧力とが平衡状態を維持したまま両者の圧力が共に僅かに上昇することになるが、この圧力の上昇は、シリンダボトム側油室11内に非圧縮性の作動油のみを封じ込めた場合の圧力上昇に比べて定性的に小さいので、作動油の温度上昇による作動油の体積の増大に伴う圧力変動を効果的に抑制することができる。
また、弾性体16a(16b,16c,16d)とシリンダボトム側油室11内の作動油とを合わせた体積はロックアップ完了時点より多少は増大するものの概ね一定の状態に保持されるのでピストンロッド4の位置変動も効果的に抑制される。
これに対し、弾性係数の異なるシリコーンゴムからなる独立した弾性体16a(16b,16c,16d)を複数の箇所に分散してシリンダボトム側油室11内に配備した場合、あるいは、図6に示されるように弾性係数の大きなシリコーンゴム16a−1と弾性係数の小さなシリコーンゴム16a−2を積層して形成した弾性体16aをシリンダボトム側油室11内に配備した場合においては、ロックアップ完了時点でピストンロッド4に作用している外力が相対的に小さい状況下においては、専ら、弾性係数が小さいシリコーンゴムが温度変化で生じる作動油の体積の増減を圧縮や膨張によって吸収してシリンダボトム側油室11内の作動油の圧力およびピストンロッド4の突出量を略一定の状態に保持する。作用原理に関しては上記と同様である。この際、弾性係数が大きいシリコーンゴムも多少は弾性変形して圧縮あるいは膨張することになるが、その量は僅かである。
一方、ロックアップ完了時点でピストンロッド4に作用している外力が相対的に大きい状況下においては、ロックアップ完了時点で弾性係数の小さいシリコーンゴムが既に圧縮限度にまで圧縮されているので、専ら、弾性係数が大きいシリコーンゴムのみが温度変化で生じる作動油の体積の増減を圧縮や膨張によって吸収してシリンダボトム側油室11内の作動油の圧力およびピストンロッド4の突出量を略一定の状態に保持することになる。この際、弾性係数が小さいシリコーンゴムは完全に圧縮された状態を保持するので、更に圧縮されることもなければ膨張することもない。実際には、作動油の体積が著しく減少した場合あるいはピストンロッド4に作用する外力が著しく低下した場合に弾性係数の小さいシリコーンゴムが弾性変形して膨張することも考えられるが、その場合は、ロックアップ完了時点に比べてピストンロッド4の突出力が著しく減衰していることを意味するので、もはや、圧力保持機構としての意味をなさない。
次に、弾性係数の異なる2種のシリコーンゴムS1(弾性係数大),S2(弾性係数小)を圧力変動抑制用の弾性体としてシリンダボトム側油室11内に配備した場合の圧力Qの変化と各シリコーンゴムS1,S2の体積Vの変化との対応関係について図7を参照して簡単に説明する。
ここでは、仮に、シリコーンゴムS1,S2の無負荷状態における体積を共にV0とする。シリコーンゴムS1,S2は分散してシリンダボトム側油室11内に配備されていてもよいし、あるいは、図6の例のようにシリコーンゴムS1がシリコーンゴムS2によって内包されていても構わない。
弾性係数の小さなシリコーンゴムS2に圧力を加えると、シリコーンゴムS2は僅かな圧力の上昇で比較的急激に弾性変形して其の体積を減少させ、例えば、図7の圧力Q2の時点で限界まで圧縮され、その後は幾ら圧力を増大させても圧縮されることはない。この時の体積を仮にV2とする。
弾性係数の大きなシリコーンゴムS1の場合も定性的にはシリコーンゴムS2の場合と同様であるが、弾性係数が大きいぶん体積の減少は緩慢になり、前述の圧力Q2よりは高圧の圧力、例えば、図7の圧力Q1の時点で限界まで圧縮され、その後は幾ら圧力を増大させても圧縮されない。この時の体積を仮にV1とする。
この場合、シリンダボトム側油室11内に配備されたシリコーンゴムの体積は全体として2V0であり、限界まで圧縮されたシリコーンゴムS2の体積がV2、また、限界まで圧縮されたシリコーンゴムS1の体積がV1であるから、シリコーンゴム全体としては、圧力Qが無負荷の状態からQ1まで増大する間に2V0−(V1+V2)だけ体積を変化させることが可能である。この間、特に、圧力が無負荷の状態からQ2に増大する低圧の区間では、図7の実線と破線で示されるように僅かな圧力の上昇や下降に敏感に応動してシリコーンゴムS2が其の体積を変化させ、また、圧力がQ2からQ1に増大する高圧の区間では、図7の実線と一点鎖線で示される通りシリコーンゴムS1は敏感に弾性変形して其の体積を大きく変化させることはできないが、この高圧によって座屈することなく、圧力の上昇や下降に応動して或る程度その体積を変化させることが可能である。
弾性係数の小さなシリコーンゴムS2のみをシリンダボトム側油室11内に配備した場合では図7の破線から明らかなように比較的低圧の圧力領域において作動油の体積変化を敏感に吸収して圧力を一定に保持することが可能である反面、高圧の圧力領域においては作動油の体積変化を全く吸収できなくなる問題があり、また、弾性係数の大きなシリコーンゴムS1のみをシリンダボトム側油室11内に配備した場合では、図7の一点鎖線から明らかなように低圧および高圧の圧力領域において作動油の体積変化をある程度吸収することが可能である反面、低圧領域で作動油の体積変化を敏感に吸収して圧力を一定に保持することが難しくなるが、このようにして両者を組み合わせることにより、低圧領域における圧力の一定化と高圧領域における圧力の略一定化を同時に実現することが可能となる。
なお、この例のように弾性係数の異なる2種のシリコーンゴムを組み合わせた場合においては圧力Qの変化とシリコーンゴム全体の体積の変化との対応関係は図7の実線に示されるような折れ線状のものとなるが、弾性係数の異なる多種のシリコーンゴムを組み合わせるようにすれば、徐々に傾きが減衰する曲線状の変化を得ることも可能である。
以上の実施形態においてはアクチュエータとして機能する油圧シリンダ1に形成された液体給排経路であるシリンダボトム側油室11の内部に圧力変動抑制用の弾性体となるシリコーンゴムを実装した例について述べたが、液体給排経路の閉鎖位置から作動部であるピストン4に至る液体給排経路内であれば弾性体の取り付け箇所はどこでもよく、例えば、液体給排経路13内にシリコーンゴム等の弾性体を実装することも可能である。
次に、参考となる実験結果について簡単に説明する。図8は実験に用いた器具を示した断面図である。実験器具は、概略において、圧力容器28および弾性体取付用容器29とシリコーンゴム30、ならびに、ピストン31および弾性体取付用容器29に代えて圧力容器28に取り付けることが可能なダミーブロック(図示せず)によって構成される。
弾性体取付用容器29はフランジ部を有する柱状体で、その中心部には直径が10mmで深さが45mmの円形穴32が穿設され、フランジ部を貫通するボルト33によって圧力容器28に固着されるようになっている。また、符号39はベント穴であり、セットスクリュー40で密封可能な構造とされている。
圧力容器28の内部には適当な長さを有する直径30mmの円形穴34が形成され、円形穴34の縮径された一方の端部35にはストップ弁およびリリーフ弁を介して油圧ポンプが接続され、縮径された他の一方の端部36にはストップ弁のみが接続されるようになっている。更に、圧力容器28の下面には内部の円形穴34に接続する孔37が設けられ、孔37には、円形穴34に充填された作動油の圧力を検出するための圧力センサが接続されるようになっている。また、圧力容器28の上面には、この圧力容器28に固着された弾性体取付用容器29の円形穴32に連絡する直径5.3mm,長さ15mmの小孔38が穿設されている。
図示しないダミーブロックの形状は概略において弾性体取付用容器29と同様であるが、10mmの円形穴の深さは、45mmからシリコーンゴム30の長さとピストン31の厚みを差し引いた深さとされ、シリコーンゴム30およびピストン31に相当する部分が全て剛体に置き換えられている。
ている。
以上の実験器具の構成においては、圧力容器28の円形穴34と小孔38および弾性体取付用容器29の円形穴32が実施形態におけるシリンダボトム側油室11に相当し、また、シリコーンゴム30は実施形態における単一のシリコーンゴムからなる弾性体16a,16b,16c,16dに相当する。但し、実験で用いたシリコーンゴム30がピストン31を介して作動油に接する点、また、シリコーンゴム30の一端面にのみ作動油の圧力が作用する点、更には、柱状のシリコーンゴム30の外周部が円形穴32の内周面と全体的に接する等の点で、実際の実施形態とは相違がある。
この実験では、圧力保持機構として機能するシリコーンゴムとしてセメダイン株式会社のPM−165Rを使用し、また、動油としては出光興産のダフニーハイドロウリックフルイド46(出光興産の登録商標)を使用している。
次に、実験の方法について具体的に説明する。
まず、圧力容器28から取り外された弾性体取付用容器29の円形穴32に直径10mm,長さ30mmのシリコーンゴム30を挿入してピストン31を内嵌し、この弾性体取付用容器29をボルト33で圧力容器28に固着する。
そして、圧力容器28の端部35にストップ弁およびリリーフ弁を介して油圧ポンプを接続し、もう一方の端部36にはストップ弁のみを取り付け、孔37に圧力センサを取り付ける。
そして、リリーフ弁のリリーフ圧を2MPaよりも僅かに大きな値に設定し、端部35側のストップ弁を開放して端部36側のストップ弁を多少開き、ベント穴39を開放した状態で油圧ポンプを作動させ、リリーフ弁と端部35側のストップ弁を介して圧力容器28に20℃の作動油を供給し、弾性体取付用容器29から確実に空気が抜けたことを確認した時点で、ベント穴39をセットスクリュー40で封止して端部36側のストップ弁を閉鎖する。次いで、圧力センサの出力を読みながら圧力容器28および弾性体取付用容器29内の作動油の圧力を上昇させ、圧力センサの出力の読みが2MPaに達した時点で端部35側のストップ弁を閉鎖し、圧力容器28および弾性体取付用容器29内の作動油の圧力を2MPaに保持する。
なお、端部35側のストップ弁を閉鎖することによりポンプから吐出される作動油の圧力が2MPaを超えて増大するが、この作動油はリリーフ弁を介してタンクに回収されるので問題はない。適当な時期を見計らってポンプを停止させ、端部35,36をストップ弁で封止された圧力容器28をストップ弁と共にリリーフ弁から取り外し、20℃の恒温槽に沈める。
そして、恒温槽の温度を2℃上昇させて圧力センサの読みが安定するのを待ち、初期値を20℃として2℃の刻み幅で作動油の温度を上昇させて圧力センサの読みを記録する作業を32℃まで繰り返し実行する。
また、比較基準とするために、弾性体取付用容器29に代えてダミーブロックを取り付けたもう一つの圧力容器28つまり圧力保持機構として機能するシリコーンゴムを備えていない圧力容器28を用意し、条件を前記と等しくして同様の作業を行う。
実験結果は図9の図表に示す通りであり、前述した通り、シリコーンゴム30がピストン31を介して作動油に接する点、また、シリコーンゴム30の一端面にのみ作動油の圧力が作用する点、更には、柱状のシリコーンゴム30の外周部が円形穴32の内周面と全体的に接する等の点で、実際の実施形態とは相違があるが、少なくとも、作動油のみを充填した圧力容器28が温度上昇つまり作動油の体積の増大の影響をそのまま受けて内部圧力を増大させるのに対し、圧力保持機構として機能するシリコーンゴム30を内蔵した圧力容器28では、温度上昇つまり作動油の体積の増大の影響をシリコーンゴム30が吸収して内部圧力の増大を抑制していることが明らかである。
圧力保持機構として利用できる弾性体に必要とされる機能は、既に述べた通り、周囲の圧力変化に応動した体積変化が可能な弾性体を指すもので、特定の方向からの外力のみに応動して弾性変形する弾性体、例えば、スプリングのようなものや、その表面から液体を吸収する多孔質のスポンジのようなものは含まない。
スプリングは周囲の圧力変化に応動した体積変化が可能なわけではなく、例えば、コイルスプリングの場合においては、コイルスプリングの中心軸に沿った方向に外力を作用させる必要上、コイルスプリングを内蔵するシリンダと該シリンダに摺接して移動するピストン等が必要となり、例えば、従来型のピストン型アキュムレータと同様に圧力保持機構の構造が大型化する点、構造が複雑となる点、および、ピストンとシリンダの間からの作動油の漏れが問題となる欠点がある。
また、その表面から液体を吸収する多孔質のスポンジのようなものは、液体を含浸することによって実質的に作動油と同等の非圧縮性の素材となってしまうので、液体給排経路内に作動油のみを封じ込めた場合と同様、圧力変動の吸収は事実上不可能である。
弾性体としては、特に、気体を封止した中空の円柱や球、あるいは、独立した多数の気泡を内包した発泡シリコーン等の円柱状または球状の構造体を利用することが望ましい。また、円柱や球等からなる構造体内部の気泡の1つ1つが必ずしもセルとして独立している必要はなく、隣接する気泡同士の間で気体の行き来が可能な構造であっても、気体を封じ込めるためのコーティング等を塊状の構造体の表面部分に施したものは、周囲の圧力変化に応動した体積変化が可能な弾性体として利用し得る。また、その内部に封じ込める気体としては、空気の他、熱や圧力によって液化する等の性状変化を生じにくい不活性ガスも好適である。気体を封止した中空の円柱や球、あるいは、独立した多数の気泡を内包した発泡シリコーン等の構造体では、気体を封止した外皮や気泡間の隔壁自体は実質的に体積を変化させないが、その内部に封止された気体が圧縮または膨張することで、弾性体として機能する構造体全体が圧縮または膨張することになる。
本発明を適用した一実施形態の圧力保持機構を装着した単動型の油圧シリンダの構造について示した部分断面図である。 圧力変動抑制用の弾性体の取り付け構造を示した断面図であり、図2(a)は球状の弾性体、図2(b)は柱状の弾性体、図2(c)は円筒状の弾性体である。 圧力変動抑制用の弾性体の別の取り付け構造の一例を示した断面図である。 圧力変動抑制用の弾性体の更に別の取り付け構造の一例を示した断面図である。 圧力変動抑制用の弾性体の更に他の取り付け構造の一例を示した断面図である。 弾性係数の異なる複数のシリコーンゴムを積層して形成した弾性体の構造の一例について示した断面図である。 弾性係数の異なる2種のシリコーンゴムを圧力変動抑制用の弾性体として配備した場合の圧力変化と各シリコーンゴムの体積変化との対応関係について簡略化して示した概念図である。 圧力変動抑制用の弾性体の効果の有無を確認する実験に用いた器具を示した断面図である。 実験結果を示した図表である。 液圧機器の圧力保持機構としてテールゲートリフト装置の一例を示したブロック図である(従来例)。
符号の説明
1 油圧シリンダ(液圧で作動するアクチュエータ)
2 シリンダチューブ
3 ピストン(アクチュエータである油圧シリンダの作動部)
4 ピストンロッド
5 シリンダヘッド
6 シリンダボトム
7 タイバー
8 リターンスプリング
9 給排ポート(アクチュエータに形成された液体給排経路)
10 シリンダヘッド側スペース
11 シリンダボトム側油室(アクチュエータに形成された液体給排経路)
12 プラグ状部材
12a 縮径部
13 液体給排経路(アクチュエータに形成された液体給排経路に接続された液体給排経路)
14 切換弁
14a チェックポペット
15 リリーフ弁
16a 球状の弾性体(圧力保持機構)
16a−1,16a−2 シリコーンゴム
16b 円柱状の弾性体(圧力保持機構)
16c 円筒状の弾性体(圧力保持機構)
16d 環状体あるいは円筒状の弾性体(圧力保持機構)
17 凹部
18 内周溝
19 インターナルスナップリング
20 クッション弁
21 チェック弁
22 プラグ状部材
23 凹部
24 内周溝
25 孔
26 Oリング
27 座ぐり
28 圧力容器
29 弾性体取付用容器
30 シリコーンゴム
31 ピストン
32 円形穴
33 ボルト
34 円形穴
35,36 端部
37 孔
38 小孔
39 ベント穴
40 セットスクリュー
41 絞り弁
50 テールゲートリフト装置
51 油圧ポンプ
52 送りチェック弁
53 シリンダ供給流路
54 フィルタ
55 油圧シリンダ
56A 油圧シリンダの下室
57 ピストン
58 ピストンロッド
60 テールゲート
61 流路
62 ドレンタンク
63 サーマルリリーフバルブ
M モータ
P ポンプ
P1,P2,P3,P4 シリンダボトム側油室における弾性体の取り付け位置
CL 中心線
W 負荷

Claims (6)

  1. 液圧で作動するアクチュエータに形成された液体給排経路もしくは該液体給排経路に接続された液体給排経路の一部を閉鎖し、この閉鎖位置から前記アクチュエータの作動部に至る液体給排経路内に封じ込められた液体で前記アクチュエータ内の圧力を保持するようにした液圧機器の圧力保持機構であって、
    前記アクチュエータに形成された液体給排経路の壁部内側に分散して設けられた複数の凹部の各々に、前記液体を吸収せず、かつ、前記液体の温度変化による圧力変化を体積変化によって吸収する弾性体を内嵌して固定的に配備したことを特徴とする液圧機器の圧力保持機構。
  2. 前記アクチュエータに形成された液体給排経路の壁部を内側から外側に貫通する孔に前記壁部の外側から取り付けられるプラグ状部材の先端に設けられた凹部に内嵌して前記弾性体が配備されていることを特徴とした請求項記載の液圧機器の圧力保持機構。
  3. 前記アクチュエータに形成された液体給排経路の壁部を内側から外側に貫通する孔に前記壁部の外側から取り付けられるプラグ状部材の先端に設けられた縮径部に外嵌して前記弾性体が配備されていることを特徴とした請求項記載の液圧機器の圧力保持機構。
  4. 前記孔の内周部および前記プラグ状部材の外周部が相互に凹凸嵌合するテーパ状に形成されていることを特徴とした請求項または請求項の何れか一項に記載の液圧機器の圧力保持機構。
  5. 前記孔の内周部に雌ネジが形成され、前記プラグ状部材の外周部に雄ネジが形成されていることを特徴とした請求項,請求項または請求項の何れか一項に記載の液圧機器の圧力保持機構。
  6. 前記弾性体がシリコーンゴムによって形成されていることを特徴とした請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項の何れか一項に記載の液圧機器の圧力保持機構。
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