JP5030579B2 - ロドコッカス属細菌用発現ベクター - Google Patents
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Description
また、ロドコッカス属細菌を、遺伝子組換えの方法により、さらに有用なものに改変する試みがなされている(特許文献3〜5)。例えば、ロドコッカス属細菌の遺伝子操作を効率的に推し進めるために、宿主−ベクター系の開発が進められており、新規なプラスミドの探索(特許文献6〜8)、ベクターの開発(特許文献9〜12、非特許文献1)などが行われている。
また、本発明者は、ニトリラーゼ遺伝子プロモーターを活性化する作用を有する調節因子を見出し、ロドコッカス属細菌用の発現ベクターを開発している(特許文献14)。
(1)以下の(a)又は(b)のDNAの全部又は一部を含有するニトリラーゼ遺伝子プロモーターを含む、ロドコッカス属細菌用の発現ベクター。
(a) 配列番号18で示される塩基配列からなるDNA
(b) 配列番号18で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、プロモーター活性を有するDNA
(2)以下の(a)又は(b)のDNAの全部又は一部を含有するニトリラーゼ遺伝子プロモーター、ニトリラーゼ発現調節遺伝子及びロドコッカス属細菌での複製に必要な遺伝子を含む、ロドコッカス属細菌用の発現ベクター。
(a) 配列番号18で示される塩基配列からなるDNA
(b) 配列番号18で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、プロモーター活性を有するDNA
(3)発現標的遺伝子をさらに含む、(1)又は(2)に記載のベクター。
(4)発現標的遺伝子が、プロモーターの制御下に発現するようにプロモーターの下流に連結されたものである、(3)に記載のベクター。
(5)発現標的遺伝子がニトリルヒドラターゼ遺伝子である、(3)又は(4)に記載のベクター。
(6)発現標的遺伝子がハロヒドリンエポキシダーゼ遺伝子である、(3)又は(4)に記載のベクター。
(7)以下の地図で示されるpSJ042、pSJ080、pSJH101、pSJH102、pSJH104及びpSJH105からなる群から選択されるいずれかのベクターである、(1)〜(4)のいずれか1項に記載のベクター。
(8)(1)〜(7)のいずれか1項に記載のベクターにより形質転換されたロドコッカス属細菌。
(9)以下の(a)又は(b)のDNAの全部又は一部を含有するプロモーター。
(i) 配列番号18で示される塩基配列からなるDNA
(ii) 配列番号18で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、プロモーター活性を有するDNA
1.本発明のベクター
本発明のベクターは、ニトリラーゼ遺伝子プロモーターを含有するベクターであって、ロドコッカス属細菌で発現標的として組み込んだ遺伝子を高率に発現し得るものである。本発明のベクターは、好ましくは、(i) ニトリラーゼ遺伝子プロモーター、(ii) ニトリラーゼ発現調節遺伝子、及び(iii) ロドコッカス属細菌での複製に必要な遺伝子を含むベクターである。
本発明は、ロドコッカス属細菌において機能するニトリラーゼ遺伝子プロモーター(以下、「本発明のプロモーター」とも称する)を提供する。本発明のプロモーターは、ロドコッカス属細菌において遺伝子を高率に転写させることができる。
また、本明細書において、プロモーター活性とは、遺伝子からmRNAへの転写活性を意味する。
pSJ034は、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)SK92-B1株由来のニトリラーゼ発現調節遺伝子により組換え遺伝子を発現するベクターである。pSJ034のマルチクローニング部位に酵素遺伝子を導入すると、数残基のアミノ酸が酵素のN末端に結合した融合タンパク質が発現する。
本明細書において、「実質的に同一のプロモーター活性を有する」とは、遺伝子からmRNAへの転写活性(プロモーター活性)を有し、かつ、その活性の程度が配列番号18で示される塩基配列からなるDNAによる活性の50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上であることを意味する。
上記の方法には、ニトリルヒドラターゼ遺伝子のプロモーター領域を含むベクター、mRNA、total RNA、cDNA、ゲノムDNA又はそれらのライブラリーを用いることができる。これらの核酸は、ロドコッカス属に属する微生物由来であることが好ましい。また、これらの核酸は、当業者であれば、公知の方法で取得することができる。市販の核酸を用いることもできる。ライブラリーの作製方法については、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Press (1989))を参照することができる。本発明のプロモーターを含有するベクターとしては、pSJ034が挙げられる。
本発明のベクターには、ニトリラーゼ発現調節遺伝子が含有される。
本明細書において、発現調節遺伝子は、他の遺伝子の発現を調節するタンパク質をコードし、リプレッサー、アクチベーター等の活性を有する遺伝子である。
本発明におけるニトリラーゼ発現調節遺伝子は、ロドコッカス属細菌においてニトリラーゼ遺伝子の発現を調節するタンパク質をコードする遺伝子を意味する。
本発明のベクターには、ニトリラーゼ発現調節遺伝子として、regulator gene及びsensor geneの両方が含有される。regulator gene及びsensor geneは二成分制御系という発現調節に使用されるレギュレータータンパク質、センサータンパク質をコードする遺伝子である。センサータンパク質は、誘導物質の存在などの環境因子をセンサー部位で感知し、自身の特定のヒスチジン残基をリン酸化し、レギュレータータンパク質はセンサータンパク質からリン酸基を特定のアスパラギン酸残基に受け取ることで活性化され、特定の遺伝子の発現を制御する。
本発明におけるニトリラーゼ発現調節遺伝子としては、例えば、前述のpSJ034に含有される発現調節遺伝子1:regulator gene(276-1010)及び発現調節遺伝子2:sensor gene(1007-2611)が挙げられる(特開平8-173169号公報、特開平9-28382号公報)。
本発明のベクターは、ロドコッカス属細菌用の発現ベクターであるため、ロドコッカス属細菌での自律複製に必要な遺伝子(以下、「複製領域」とも称する)を組み込む必要がある。
また、本発明のベクターが、複数の宿主細胞に適合させるためのシャトルベクターである場合には、それぞれの宿主での自律複製に必要なそれぞれの遺伝子をベクターに組み込んでおくことが必要である。例えば、ロドコッカス属細菌だけでなく、大腸菌にも導入可能なベクターを構築する場合には、ロドコッカス属細菌及び大腸菌に対するそれぞれの複製領域を、ベクターに組み込むことが必要である。
プラスミドpRC001、pRC002、pRC003及びpRC004は、各々ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)ATCC 4276、ATCC 14349、ATCC 14348、IFO 3338株由来のプラスミドであり、特開平2-84198号公報、特開平4-148685号公報、特開平5-64589号公報及び特開平5-68566号公報に記載されている。
また、ロドコッカス属細菌中での複製に必要な遺伝子としては、RepA及びRepB遺伝子を挙げることができる。
RepA及びRepBは、プラスミドpRC001、pRC002、pRC003及びpRC004に含まれる遺伝子である。RepA又はRepBを同定するには、まず、単離したプラスミドの全DNA配列を決定し、ホモロジー検索によってRepA又はRepBの存在を推定する。最終的には、推定した遺伝子が複製に必要な遺伝子であることを、実験的に確認する。
本発明において、発現標的遺伝子とは、本発明のベクターを用いてロドコッカス属細菌において発現させようとする標的タンパク質(以下、「発現標的タンパク質」とも称する)をコードする構造遺伝子を意味する。本発明のベクターに組み込まれる発現標的遺伝子は、ロドコッカス属細菌で高発現させることが困難であるか、又はロドコッカス属細菌で高発現させることが望まれるタンパク質をコードする遺伝子が好ましい。このようなタンパク質としては、例えば、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ、ニトリラーゼ、オキシニトリラーゼ及びハロヒドリンエポキシダーゼを挙げることができる。
ベクターに発現標的遺伝子を挿入するには、当該遺伝子が本発明のプロモーターの制御を受けて適切に転写されるように挿入し連結すればよい。より具体的には、本発明のプロモーターの下流に存在する適当な制限酵素切断部位に、発現標的遺伝子が正しく転写される方向に組み込めばよい。または、発現標的遺伝子の上流に存在する適切な制限酵素切断部位に、本発明のプロモーターが正しく機能する方向に組み込めばよい。
N−4701株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1-1-1中央第6)に平成1年4月19日付で寄託されており、その受託番号はFERM BP-2644である。
本発明のベクターは、ロドコッカス属細菌で高率に遺伝子を発現させ得る限り、基本となるベクターの由来は特に限定されず、例えば、ロドコッカス属細菌、大腸菌、枯草菌由来のプラスミド、バクテリオファージ、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスを使用することができる。また、例えば、ロドコッカス属細菌で使用されるベクターとしてpSJ023、pTipベクター(特開2004-73032)、pNitベクター(特開2004-321013)、pMVS301、pAN12などの公知のベクターを利用することができる。
pSJ042は、11.27 kbpのベクターであって、プロモーターとして約0.8 kbpのSpeI−XbaI領域を有するベクターである(図1)。
pSJ080は、11.01 kbpのベクターであって、プロモーターとして約0.5 kbpのSpeI−XbaI領域を有するベクターである(図1)。
pSJH101は、10.33 kbpのベクターであって、プロモーターとして約0.8 kbpのSpeI−XbaI領域を有するベクターである(図5)。
pSJH102は、10.07 kbpのベクターであって、プロモーターとして約0.5 kbpのSpeI−XbaI領域を有するベクターである(図5)。
pSJH104は、9.94 kbpのベクターであって、プロモーターとして約0.8 kbpのSpeI−XbaI領域を有するベクターである(図4)。
pSJH105は、9.68 kbpのベクターであって、プロモーターとして約0.5 kbpのSpeI−XbaI領域を有するベクターである(図4)。
また、pSJ042、pSJ080、pSJH101、pSJH102、pSJH104及びpSJH105は、ニトリラーゼ遺伝子プロモーター、ニトリラーゼ発現調節遺伝子(regulator gene及びsensor gene)及びロドコッカス属細菌での複製に必要な遺伝子(RepA及びRepB)を含むベクターである。
さらに、pSJ080及びpSJ042は、発現標的遺伝子としてニトリルヒドラターゼ遺伝子を含有するベクターである。pSJH101、pSJH102、pSJH104及びpSJH105は、発現標的遺伝子としてハロヒドリンエポキシダーゼ遺伝子を含有するベクターである。
次に、上述の本発明のベクターを宿主に導入することで、形質転換体を作製することができる。当該形質転換体も本発明の範囲に含まれる。本発明において使用される宿主は、ロドコッカス属細菌が好ましい。
ロドコッカス属細菌としては、例えば、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous) ATCC999株、ATCC12674株、ATCC17895株、ATCC15998株、ATCC33275株、ATCC184、ATCC4001株、ATCC4273株、ATCC4276株、ATCC9356株、ATCC12483株、ATCC14341株、ATCC14347株、ATCC14350株、ATCC15905株、ATCC15998株、ATCC17041株、ATCC19149株、ATCC19150株、ATCC21243株、 ATCC29670株、ATCC29672株、ATCC29675株、ATCC33258株、ATCC13808株、ATCC17043株、ATCC19067株、ATCC21999株、ATCC21291株、ATCC21785株、ATCC21924株、IFO14894株、IFO3338株、NCIMB11215株、NCIMB11216株、JCM3202株、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J1株(FERM BP-1478)、ロドコッカス・グロベルルス(Rhodococcus globerulus)IFO14531株、ロドコッカス・ルテウス(Rhodococcus luteus)JCM6162株、JCM6164株、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)IFO12538株、IFO12320株、ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)IFO3730株、JCM1313株が挙げられる。好ましくはロドコッカス・ロドクロウス J1株、ATCC 12674株、ATCC17895株、ATCC15998株等が、特に好ましくはロドコッカス・ロドクロウス J1株、ATCC12674株が挙げられる。
本発明において発現標的タンパク質は、上述の方法で調製されたベクターを含有する形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより得ることができる。
ここで、「培養物」とは、培養上清、培養菌体、培養細胞、又は培養菌体若しくは培養細胞の破砕物等を意味するものである。
形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が挙げられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等が挙げられる。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅若しくは炭酸カルシウム等が挙げられる。
ロドコッカス属細菌の形質転換体の培養は、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、30〜40℃で行うことが好ましい。培養は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて適時pH調整を行うことが好ましい。
界面活性剤で処理した菌は、バッファーで洗浄して用いても良いし、洗浄せずそのまま次の工程に用いても良い。
また、標的タンパク質の発現は、ウエスタンブロット、免疫細胞化学法、免疫組織化学法、ELISA、RIAなどの免疫化学的方法、質量分析法などの公知の方法によって測定することができる。
本変換反応は、アクリロニトリルを上述の培養物又はその処理物と変換させることにより行う。変換反応に用いる基質濃度は、0.1〜10% (W/V)が好ましく、5% (W/V)が特に好ましい。反応は、pH6〜8の緩衝液又は水中で行うことが好ましく、例えば、50 mM リン酸緩衝液(pH 7.7)中で行うことができる。
(1)1,3−ジハロ−2−プロパノールのエピハロヒドリンへの変換
本変換反応は、1,3−ジハロ−2−プロパノールを上述の培養物又はその処理物と接触させることにより行う。基質である1,3−ジハロ−2−プロパノールは、以下の式(1)で示される化合物である。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が好ましく、塩素、臭素が特に好ましい。
反応温度は5〜50℃、より好ましくは10〜40℃である。反応pHは4〜10の範囲で行うことが好ましく、より好ましくはpH6〜9である。反応時間は基質等の濃度、菌体濃度あるいはその他の反応条件等によって適時選択するが、1〜120時間で終了するように条件を設定するのが好ましい。なお、本反応においては、反応の進行に伴い生成する塩素イオンを反応系内から取り除くことにより、光学純度をより一層向上させることができる。この塩素イオンの除去は、硝酸銀等の添加によって行うことが好ましい。
本変換反応は、1,3−ジハロ−2−プロパノールをシアン化合物及び上述の培養物又はその処理物と接触させることにより行う。
基質である1,3−ジハロ−2−プロパノールは、式(1)に示される化合物であり、好ましくは1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール等である。
また、シアン化合物の使用量は、酵素安定性の観点から基質の1〜3倍量(モル)が好ましい。
反応条件は、上記(1)と同様に行うことができる。
本変換反応は、エピハロヒドリンをシアン化合物及び上述の培養物又はその処理物と接触させることにより行う。
基質であるエピハロヒドリンは、以下の式(2)に示される化合物である。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が好ましく、塩素、臭素が特に好ましい。
反応条件、採取及び精製方法は、上記(2)と同様に行うことができる。
使用したpSJ034は、ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌においてニトリルヒドラターゼを発現するベクターであり、特開平10-337185号公報に示す方法でpSJ023より作製した。なお、pSJ023は形質転換体ATCC12674/pSJ023(FERM BP-6232)として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に平成9年3月4日付けで寄託されている。
なお、SK-92B1は、ニトリラーゼを保有する菌株として単離されたRhodococcus erythropolis SK-92株に変異処理を行い、構成的にニトリラーゼを生産する変異株である。
pSJ034からpSJ041を作製し、pSJ041からpSJ042、pSJ080及びpSJ081を以下に示すように作製した。図1にベクターpSJ041、pSJ042、pSJ080、pSJ081の構築図を示す。また、図2に、pSJ034の塩基配列の一部と、実施例で使用したプライマーNR-14、NR-15及びNR-16の位置とを示す。
なお、図2中、「-10」は転写開始位置より10塩基上流にある-10領域を示し、「-35」は転写開始位置(+1)より35塩基上流にある-35領域を示す。この2つの領域は、原核生物で機能するプロモーター配列に保存されており、代表的な配列はそれぞれTATAAT及びTTGACAである。
pSJ034をEcoRIで切断し、DNA Bluntinng Kit(タカラバイオ)を用いて平滑化し、SpeIリンカー(GACTAGTC)を挿入した。作製したベクターをpSJ041とした。
pSJ034を鋳型として使用し、以下に示す反応液組成及びプライマーを用いてPCRを行った。
(反応液組成)
pSJ034(1/100希釈) 1μl
10×Pfu Buffer(Sratagene) 10μl
プライマー NLR-09(配列番号6) 1μl
プライマーNR-14(配列番号7) 1μl
2.5mM dNTP 8μl
滅菌水 78μl
Pfu turbo DNAポリメラーゼ(Sratagene) 1μl
総量 100μl
(プライマー)
NLR-09: ggtctagagctccttgatgtgtggagtgatgc (配列番号6)
NR-14: ggactagtcgcggcacatccctggtcgtg (配列番号7)
次いで、反応液をGFX PCR DNA band and GelBand Purification kit(アマシャムバイオサイエンス社製)で精製し、制限酵素XbaIとSpeIで制限酵素処理を行い、PCR産物を切断した。制限酵素処理を行ったPCR産物を、0.7%アガロースゲルにおける電気泳動に供し、0.8 Kb付近のバンドを回収した。回収したPCR産物を、Ligation Kit(宝酒造社製)を用いてベクターpSJ041のXbaI-SpeI部位に連結し、ベクター:pSJ042を作製した。
さらに、PCRのプライマーにNLR-09とNR-16(配列番号9)を使用して約0.3KbのDNA断片(配列番号12)を増幅し、これをベクターpSJ041のXbaI-SpeI部位に連結しベクターpSJ081を作製した。
(プライマー)
NR-15 cgactagtgcactccgctgcgacatgtatcg (配列番号8)
NR-16 ggactaGTCATTGGTTGATCTGCCGTTGAGAG (配列番号9)
(1)コンピテントセルの作製
ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)ATCC 12674株の対数増殖期の細胞を遠心分離器により集菌し、氷冷した滅菌水にて3回洗浄し、滅菌水に懸濁し、コンピテントセルを作製した。
実施例2で調製したベクター(pSJ042、pSJ080、pSJ081)各1μlと(1)で作製したコンピテントセルの菌体懸濁液各10μlとを混合し、各々氷冷した。キュベットに各混合液を入れ、遺伝子導入装置 Gene Pulser(BIO RAD)により20 KV/cm、200 OHMSで電気パルス処理を行った。電気パルス処理液を氷冷下10分静置し、37℃で10分間ヒートショックを行った。その後、キュベットにMYK培地(0.5 %ポリペプトン、0.3 %バクトイーストエキス、0.3 %バクトモルトエキス、0. 2% K2HPO4 、0.2 % KH2PO4)500μlを加え、30 ℃、5時間静置した後、50μg/mlカナマイシン入りMYK寒天培地に塗布し、30 ℃、3日間培養した。
得られたコロニーに含まれるベクターを確認し、3種の形質転換体(ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)ATCC12674/pSJ042、ATCC12674/pSJ080、ATCC12674/pSJ081)を得た。
また、比較対照としてATCC12674/pSJ034を作製した。
(2)で得られたコロニーをMYK培地(50μg/mlカナマイシン含有)10 mlに接種し、30 ℃で72時間、前培養した。前培養後、MYK培地(50μg/mlカナマイシン及び10μg/ml塩化コバルトを含有)100mlに前培養液を1%接種し、30℃で96時間本培養した。本培養後、培養物を遠心分離し、菌体を集菌した。得られた菌体を100 mMリン酸緩衝液(pH8.0)で洗浄し、最後に少量の緩衝液に懸濁した。
実施例3で調製した菌体を含む培養液のニトリルヒドラターゼ活性の測定は、以下の方法に従って行った。
まず、実施例3(3)の本培養後に得られた培養液1 mlと50 mMリン酸緩衝液(pH7.7)4 mlとを混合し、さらに5.0 %(w/v)のアクリロニトリルを含む50 mMリン酸緩衝液(pH7.7)5 mlを混合液に加えて、10 ℃で10分間反応させた。次いで、菌体を濾別して、ガスクロマトグラフィーを用いて、生成したアクリルアミドの量を定量し、アクリルアミドの量からニトリルヒドラターゼ活性を換算した。ニトリルヒドラターゼ活性は、乾燥菌体重量当たりの活性(U/mgDC)で示した。なお、分析条件は、以下に示す通りであった。
(分析条件)
分析機器 ガスクロマトグラフGC-14B(島津製作所製)
検出器 FID(200℃にて検出)
カラム ポラパックPS(ウォーターズ社製カラム充填剤)を充填した
1mガラスカラム
カラム温度 190℃
したがって、本発明のプロモーターを含有するベクターは、ロドコッカス属細菌における遺伝子発現を促進可能であることが示された。
(1)ベクターの作製
(i) ハロヒドリンエポキシダーゼ遺伝子を含むベクター
コリネバクテリウム(Corynebacterium)sp.N−1074(FERM BP-2643)を、MYKG培地(0.5 %ポリペプトン、0.3 %バクトイーストエキス、0.3 %バクトモルトエキス、1 %グルコース、0.2 % K2HPO4及び0.2 % KH2PO4、pH7.0)100 ml中、30 ℃で72時間振盪培養した。
培養後、菌体を集菌し、Saline−EDTA溶液(0.1 M EDTA及び0.15 M NaCl(pH8.0))4 mlに懸濁した。次いで、懸濁液にリゾチーム8 mgを加えて、37 ℃で1〜2時間振盪した後、-20 ℃で凍結した。
次いで、混合液に等量のTE飽和フェノール(TE:10 mM Tris-HCl及び1 mM EDTA(pH 8.0))を加えて撹拌した後、遠心した。遠心後、上層を回収し、2倍量のエタノールを加え、析出したDNAをガラス棒で巻きとり、90 %、80 %、70 %のエタノールの順にすすぎ、残存するフェノールを取り除いた。
得られた上層に等量のTE飽和フェノールを加えてから上層と下層とに分離させるまでの操作を2回繰り返した後、得られた上層に等量のクロロホルム(4 %イソアミルアルコール含有)を加えて遠心し、上層と下層とに分離させた(以下、上記操作を「フェノール処理」ともいう)。その後、上層に2倍量のエタノールを加え、ガラス棒でDNAを巻き取り、回収し、染色体DNAを得た。
(反応液組成)
染色体DNA(1/20希釈) 10μl
10×PCR Buffer(タカラバイオ) 10μl
プライマーDH-04(配列番号13) 1μl
プライマーDH-07(配列番号14) 1μl
2.5mM dNTP 8μl
滅菌水 69μl
ExTaq DNAポリメラーゼ(タカラバイオ) 1μl
総量 100μl
(プライマー)
DH-04: ggtctagaatggctaacggaagactggcaggc (配列番号13)
DH-07: cgcctgcaggctacaacgacgacgagcgcctg (配列番号14)
(反応液組成)
染色体DNA(1/20希釈) 10μl
10×PCR Buffer(タカラバイオ) 10μl
プライマー DH-05(配列番号15) 1μl
プライマーDH-07(配列番号14) 1μl
2.5mM dNTP 8μl
滅菌水 69μl
ExTaq DNAポリメラーゼ(タカラバイオ) 1μl
総量 100μl
(プライマー)
DH-05: ggtctagaccgattactactccaacttcacca (配列番号15)
DH-07: cgcctgcaggctacaacgacgacgagcgcctg (配列番号14)
このベクターをpJHB057と名付けた。図5はpJHB057の構造を示す模式図である。
次に、pJHB057を制限酵素XbaI及びSse8387Iで切断し、電気泳動で約1.1 Kbのハロヒドリンエポキシダーゼ遺伝子を含むDNA断片(配列番号17)を回収した。次いで、反応液をGFX PCR DNA band and GelBand Purification kit(アマシャムバイオサイエンス社製)で精製し、回収したDNA断片を、Ligation Kit(宝酒造社製)を用いてベクターpSJ042のXbaI-Sse8387I部位に連結し、ベクター:pSJH101を作製した。同様にベクターpSJ080、pSJ081のXbaI-Sse8387I部位に連結し、ベクター:pSJH102、pSJH103も作製した。
実施例3(1)及び(2)と同様の手法を用いて、上記で得られた6種のベクターの形質転換体(ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)ATCC12674/pSJH101、ATCC12674/pSJH102、ATCC12674/pSJH103、ATCC12674/pSJH104、ATCC12674/pSJH105、ATCC12674/pSJH106)を得た。
ロドコッカスロドクロウスJ-1菌は、Rhodococcus rhodocrouse J-1(FERM BP-1478)として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されている。
10 mlのMYKG培地(0.5 %ポリペプトン、0.3 %バクトイーストエキス、0.3 %バクトモルトエキス、0.2% KH2PO4、0.2% K2HPO4、1%グルコース)にJ-1菌を植菌し、30℃で培養した。17時間後、終濃度2%となるように滅菌した20 %グリシン溶液を添加し、さらに24時間培養した。この培養液を1%グリシンを含有した10 mlのMYKG培地に2%植菌し、さらに30℃で48時間培養を行った。この培養液を滅菌水で3回洗浄し、最後に滅菌水500μlに再懸濁した。得られた菌をコンピテントセルとして用いた。
(2)で調製した各ベクター1μlと(3)で調製したJ-1菌コンピテントセル10μlを混合し、30分間氷冷した。キュベットにDNAと菌体との懸濁液を入れ、遺伝子導入装置 Gene Pulser(BIO RAD)により20 KV/cm、100 OHMSで電気パルス処理を行った。電気パルス処理液を氷冷下10分静置し、37℃で10分間ヒートショックを行い、MYK培地(0.5 %ポリペプトン、0.3 %バクトイーストエキス、0.3 %バクトモルトエキス、0.2 % K2HPO4 、0.2% KH2PO4)500μl を加え30℃、24時間静置した。その後、10μg/mlカナマイシン入りMYK寒天培地に塗布し、30℃、3日間培養した。
得られたコロニーのベクターを確認し、6種の形質転換体(ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous) J1/pSJH101、J1/pSJH102、J1/pSJH103、J1/pSJH104、J1/pSJH105、J1/pSJH106)を得た。また、比較対照として、J1/pSJHB057及びJ1/pSJHB047も作製した。
実施例5(4)で得られたロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J1/pSJH101、J1/pSJH102、J1/pSJH103、J1/pSJH104、J1/pSJH105、J1/pSJH106をGGPK培地(1.5%グルコース、1%グルタミン酸ナトリウム、0.1%バクトイーストエキス、0.05 % K2HPO4、0.05 % KH2PO4、0.05 % MgSO4・7H2O、カナマイシン 50μg/ml、pH7.2)100 mlに植菌し、30℃で72時間振盪培養した。培養菌体を50 mM トリス−硫酸緩衝液(pH 8.0)で洗浄し、氷中で超音波破砕器により破砕した。破砕した菌体の遠心分離上清を酵素溶液として用いてハロヒドリンエポキシダーゼの活性測定を行った。各酵素溶液中のタンパク質濃度は、タンパク定量キット(BioRad社製)を用いて、一定量に調製した。
装置 : カラムオーブン 島津製作所社製 GC-17A
インテグレータ 島津製作所社製 C-R5A
カラム : ULBON HR−1701 信和化工株式会社製
キャリヤー : He 純度 99.995%以上
メイクアップガス : He 純度 99.995%以上
検出器ガス : 水素 純度 99.995%以上
カラム温度 : 50℃から10℃ずつ昇温して、250℃で5分保持
インジェクション温度: 250℃
デテクタ温度 : 250℃
線速度 : 35 cm/s
リテンションタイム : 1,3−ジクロロ−2−プロパノール 10min
エピクロルヒドリン 5min
したがって、pSJ080とpSJ081に含まれるニトリラーゼ遺伝子プロモーターの違いを考慮すると、例えば、配列番号18で示される塩基配列又は配列番号18で示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、プロモーター活性を有するタンパク質をコードするDNAの全部又は一部を含む本発明のプロモーターは、ロドコッカス属細菌において機能し得ることが明らかとなった。そして、本発明のプロモーターを有するベクターは、ロドコッカス属細菌において、本プロモーターの制御下に組み込んだ遺伝子の発現に有用であることが示された。
配列番号2:発現調節遺伝子1のアミノ酸配列
配列番号3:発現調節遺伝子1の塩基配列
配列番号4:発現調節遺伝子2のアミノ酸配列
配列番号5:発現調節遺伝子2の塩基配列
配列番号6:プライマー NLR-09
配列番号7:プライマー NR-14
配列番号8:プライマー NR-15
配列番号9:プライマー NR-16
配列番号10:PCR断片 約0.8 kb
配列番号11:PCR断片 約0.5 kb
配列番号12:PCR断片 約0.3 kb
配列番号13:プライマー DH-04
配列番号14:プライマー DH-07
配列番号15:プライマー DH-05
配列番号16:PCR断片 約0.7 Kb
配列番号17:PCR断片 約1.1 Kb
配列番号18:本発明のニトリラーゼ遺伝子プロモーター
配列番号19:ハロヒドリンエポキシダーゼのアミノ酸配列
配列番号20:ハロヒドリンエポキシダーゼの塩基配列
配列番号21:pSJ034の塩基配列の一部(図2)
Claims (9)
- 以下の(a)又は(b)のDNAを含有するニトリラーゼ遺伝子プロモーターを含む、ロドコッカス属細菌用の発現ベクター。
(a) 配列番号1で示される塩基配列の1−3731番目または1−3995番目を欠失した塩基配列からなるDNA
(b) 配列番号1で示される塩基配列の1−3731番目または1−3995番目を欠失した塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、プロモーター活性を有するDNA - 以下の(a)又は(b)のDNAを含有するニトリラーゼ遺伝子プロモーター、ニトリラーゼ発現調節遺伝子及びロドコッカス属細菌での複製に必要な遺伝子を含む、ロドコッカス属細菌用の発現ベクター。
(a) 配列番号1で示される塩基配列の1−3731番目または1−3995番目を欠失した塩基配列からなるDNA
(b) 配列番号1で示される塩基配列の1−3731番目または1−3995番目を欠失した塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、プロモーター活性を有するDNA - 発現標的遺伝子をさらに含む、請求項1又は2に記載のベクター。
- 発現標的遺伝子が、プロモーターの制御下に発現するようにプロモーターの下流に連結されたものである、請求項3に記載のベクター。
- 発現標的遺伝子がニトリルヒドラターゼ遺伝子である、請求項3又は4に記載のベクター。
- 発現標的遺伝子がハロヒドリンエポキシダーゼ遺伝子である、請求項3又は4に記載のベクター。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のベクターにより形質転換されたロドコッカス属細菌。
- 以下の(a)又は(b)のDNAを含有するプロモーター。
(a) 配列番号1で示される塩基配列の1−3731番目または1−3995番目を欠失した塩基配列からなるDNA
(b) 配列番号1で示される塩基配列の1−3731番目または1−3995番目を欠失した塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、プロモーター活性を有するDNA
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