JP5024855B2 - グリコール酸とアンモニアからなる新規結晶並びにその製造方法 - Google Patents

グリコール酸とアンモニアからなる新規結晶並びにその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、グリコール酸とアンモニアからなる新規結晶並びにその製造方法に関する。
グリコール酸は、従来より、化粧品、染毛剤、シャンプー、トリートメント、洗浄剤(家庭用洗浄剤、工業用洗浄剤等)、金属処理剤、皮なめし剤等の重要な成分として用いられてきたが、近年、各種樹脂製造用原料としても広く用いられるようになった。一般的にグリコール酸を主要構成単位とするポリエステル樹脂において、汎用樹脂用途向けに必要な機械強度を持たせるためには、該樹脂の重量平均分子量を15万以上にすることが望まれている。(特許文献1参照)このようなポリエステル樹脂を、グリコール酸を主体とする原料から重縮合により製造する場合は次の点に注意する必要がある。グリコール酸は1分子内にカルボキシル基とアルコール性水酸基とをそれぞれ1個有する自己縮合性化合物である。よって、グリコール酸を主体とする原料を重縮合する場合、該原料中に例えば、アルコール性水酸基を有しないカルボン酸類またはカルボキシル基を有しないアルコール類が不純物として存在すると、これらがグリコール酸及び/又はグリコール酸の重縮合物と反応し、該ポリエステル樹脂の高分子量化を阻害する。また、原料中に無機塩類等が不純物として存在すると、得られるポリエステル樹脂の機械特性を著しく低下させる。従ってグリコール酸を主体とする原料から重縮合により高分子量のポリエステル樹脂を合成する場合、グリコール酸は高純度であることが要求される。
一般的な工業的グリコール酸の製造法としては以下のような方法が挙げられる。
1)酸触媒の存在下、ホルムアルデヒドと一酸化炭素と水から製造する方法
2)クロロ酢酸をケン化する方法
いずれも、グリコール酸は水溶液の形で得られ、アルコール性水酸基を有しないカルボン酸類またはカルボキシル基を有しないアルコール類等の不純物、或いはまた、樹脂の機械特性を著しく低下させる程度の量の無機塩類が不純物として存在する。よって、これらを精製除去する工程が必要となる。
グリコール酸は通常、水溶液の形で得られ、揮発性が低いため蒸留による精製は適さない。また、グリコール酸は蒸留条件下において重縮合反応を起こして、蒸留しにくい縮合物を生成するためますます蒸留精製が困難である。よって、通常晶析による精製法が選択されてきた。晶析によるグリコール酸の精製法としては、例えば、水分含有率、単量体グリコール酸含有率を特定の範囲に規定したグリコール酸の晶析法(特許文献2参照)、或いはグリコール酸水溶液を特定条件下で水を除去してグリコール酸を含む溶融物を形成させ結晶化剤と混合して冷却する方法(特許文献3参照)、粗グリコール酸をアセトン等の有機溶剤に溶解して溶液とし高圧ガスと混合することで結晶を得る方法(特許文献4参照)等が挙げられる。
これら先行文献に開示されたグリコール酸の晶析法では、必ずしも、工業的に実施可能な簡便且つ、高収率でエネルギー効率の高い高純度グリコール酸結晶の製造法にはなっておらず、様々な欠点を有していた。
例えば、前記特許文献2では、確かに規定されている条件を満たすことで、高純度グリコール酸を得ることはできるが、収率が27質量%程度と非常に低く、工業的に満足できるレベルではない。また、晶析温度も10℃以下と低いので、エネルギー効率が非常に悪い。
また、特許文献3では、確かに高純度グリコール酸を得ることはできるが、そのためには予め電気透析や溶媒抽出等の方法によりグリコール酸水溶液を極めて高純度にしておかねばならず、簡便な方法とは言えない。
また、特許文献4では確かに高純度のグリコール酸を得ることはできるが、有害な有機溶剤を大量に使うので、工業的な製造法としては環境的に問題があり、且つ、全量留去が必要なのでとてもエネルギー効率の高い方法とは言えない。
特開平11−130847号公報(WO9919378) WO2003/064366 特開平8−268955号公報 特開平5−92102号公報 特公昭53−44454号公報 US2037654 US2152852 US2153064 特開昭62−77349号公報 特公昭60−10016号公報 US4054601 特開平9−028390号公報 特開2005−504506号公報 特開平10―174593号公報 Homolka Chem.Ber Vol.54 p.1395(1921) Salomaa Acta Chem. Scand. Vol.10 p311(1956) P. Servcik Chemicke Zvesti Vol.27(3) p306(1973)
本発明の課題は、不純物を多く含むグリコール酸水溶液或いはまたグリコール酸結晶から、簡便且つ高収率でエネルギー効率よく、高純度グリコール酸含有結晶を製造する方法を提供することにある。また、そのような新規のグリコール酸含有結晶を提供することにある。
本発明者らは、不純物を多く含むグリコール酸水溶液或いはまたグリコール酸結晶から、簡便且つ高収率でエネルギー効率よく、高純度グリコール酸含有結晶を製造する方法について鋭意検討を行ったところ、驚くべきことにグリコール酸とアンモニアのモル比が1.8〜2.2であるグリコール酸結晶が、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液から晶出する現象を発見し本発明を完成させるに至った。
即ち本発明は、以下に記載する通りの構成を有する。
[1] グリコール酸及びアンモニアからなる結晶性化合物であって、該結晶性化合物中に存在するグリコール酸とアンモニアのモル比が1.8:1〜2.2:1であることを特徴とする結晶。
[2] グリコール酸及びアンモニアからなる結晶性化合物であって、該結晶性化合物中に水和物を有していないことを特徴とする請求項[1]記載の結晶。
[3] 融点が108〜114℃であることを特徴とする請求項[1]〜[2]記載の結晶。
[4] グリコール酸とアンモニアのモル比が1.7:1〜2.2:1である水溶液から結晶を晶出せしめ、グリコール酸及びアンモニアからなる結晶を採取することを特徴とする高純度結晶の製造方法。
] 晶出温度が凝固点を越えて、70℃以下であることを特徴とする請求項[4]〜[5]記載の高純度結晶の製造方法。
] グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液に種晶を共存せしめることを特徴とする請求項[4]または[5]記載の高純度結晶の製造方法。
本発明は、不純物を多く含むグリコール酸水溶液或いはまたグリコール酸結晶から、簡
便且つ高収率でエネルギー効率よく、高純度グリコール酸含有結晶を製造する方法を提供
できる。即ち、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液からグリコール酸とアンモニ
アのモル比が1.8:1〜2.2:1であるグリコール酸結晶が晶出する現象を利用して、高純度グリコール酸含有結晶を製造する方法及びその物質を提供できる。更に該結晶中のアンモニウムイオンを脱塩することで、高純度グリコール酸を得ることができる。
本発明で言うグリコール酸及びアンモニアからなる結晶性化合物とは、従来全く知られていなかった新規結晶性化合物である。本発明者らは、グリコール酸アンモニウムを試薬のグリコール酸結晶と水と試薬の25重量%アンモニア水を用いて調製している最中に、ある特定の組成液から急激な結晶化現象が起こることを偶然発見した。本結晶を濾別、乾燥したものを、既知量の水へ溶解させた後、高速液体クロマトグラフイーによるグリコール酸の分析とイオンクロマトグラフィーによるアンモニウムイオンの分析を行った。その結果、本結晶の組成は、該結晶性化合物中に存在するグリコール酸とアンモニアのモル比が1.8〜2.2であることが判明した。これは結晶構造中にグリコール酸とグリコール酸アンモニウムが、ほぼ等モル存在することを示唆すると思われるが詳細は定かではない。但し、分析上の誤差、或いは晶析操作における付着水由来の不純物の混入等が原因となり等モルからのずれを生じることが有り得る。よって、該結晶性化合物中に存在するグリコール酸とアンモニアのモル比は、1.8〜2.2となり、理想的には2である。また、その分析値から計算して、本結晶中には水和物を含んでいないことが判明した。
更に、本結晶の物性を明らかにするため、グリコール酸、グリコール酸アンモニウム、本結晶の融点測定を実施したところ、それぞれ79〜81℃、101〜103℃、108〜114℃で、本結晶が特異的に融点の高いことが判明した。これらの結果からして本結晶が何かしら特異的な結合を有しており、エネルギー的に安定な結晶であることが容易に類推できる。
尚、本結晶の融点が幅広い範囲を有するのは、解け始めから完全溶解までに昇温時間を有することを意味し、この間に固液間に何らかの組成変化が起きるため、このような完全溶解に時間のかかる現象が現れると推察されるが、詳細は定かではない。
本発明におけるグリコール酸とアンモニアを含有する水溶液は如何なる方法で調製されてもよい。例えば、既存のグリコール酸結晶或いはまた、グリコール酸水溶液に対しアンモニア水或いはまたアンモニアガスを混合して調製することができる。また、グリコール酸アンモニウムの一部アンモニウムを公知の方法で脱塩することで調製できる。公知の脱塩方法としては、例えば、プロトン型のカチオン交換樹脂を用いたイオン交換、電気透析、熱分解して系外にアンモニアを除去する方法、有機溶媒を添加した後熱処理で系外にアンモニアを除去する方法等が挙げられる。
本発明におけるグリコール酸或いはグリコール酸アンモニウムの製造法としては、化学合成法、酵素法、醗酵法等の公知の方法を挙げることができる。
化学合成法の例として以下のものを挙げることができる。
・ 酸触媒の存在下、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、水から製造する方法
(特許文献5、6、7、8参照)
・ クロロ酢酸をケン化する方法(特許文献9参照)
・ 強アルカリの存在下、グリオキサールのカニッツアロ反応でグリコール酸塩を製造し、酸を加えてグリコール酸を遊離させる方法(非特許文献1、2参照)
・ エチレングリコールを原料として一官能基のみを選択的に酸化する方法
(特許文献10参照)
・ グリコロニトリルを原料として、加水分解する方法(特許文献11参照)
・ シュウ酸の還元により製造する方法(非特許文献3参照)
また、酵素法、醗酵法の例として以下のものを挙げることができる。
・ 微生物由来の加水分解酵素を用いてグリコロニトリルを原料として製造する方法
(特許文献12、13参照)
・ エチレングリコール含有培地からグリコール酸を分離・回収する方法
(特許文献14参照)
本発明におけるグリコール酸とアンモニアを含有する水溶液から本結晶を得るためには、該液中にグリコール酸とグリコール酸アンモニムの両方を存在させることが必須である。つまり、グリコール酸のみ或いはグリコール酸アンモニウムのみ(アンモニアのモル数がグリコール酸のモル数以上の状態では実質的にグリコール酸アンモニウムのみが存在する)では本結晶を得ることはできない。よって、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液中のアンモニアに対するグリコール酸モル比は1より大きいことが必須であり、好ましくは1.1〜10、より好ましくは1.2〜5、更に好ましくは1.5〜3、最も好ましくは1.8〜2.2、理想的には2に限りなく近いほうがよい。
本発明におけるグリコール酸とアンモニアを含有する水溶液中のグリコール酸とアンモニアの全重量濃度は、特に限定されることなく任意に選ぶことができるが、30〜70重量%がよく、より好ましくは40〜60重量%がよい。濃度が低すぎると、溶解度の関係から晶出温度を低くする必要があり、過度に低い場合、全く晶出できない場合がある。また、該濃度の上限は自ずと液温に対応した溶解度から決定される。
本発明においては、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液のグリコール酸とアンモニアの全重量濃度が希薄な場合、該水溶液を濃縮して上記濃度範囲に調製する必要があるが、その場合、熱履歴によって、該グリコール酸の重縮合物(エステル結合)が副生することがあるので注意を要する。該重縮合物が多すぎると結晶の晶出を妨げるだけでなく、得られた結晶中に該縮合物が混入し、粘性の高い結晶となるので取扱いが困難となる。該重縮合物の許容量は、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液中のグリコール酸とアンモニアの全重量に対する該重縮合物の重量割合で表すと、通常は15重量%以下がよく、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、最も好ましくは1重量%以下がよい。
本発明におけるグリコール酸とアンモニアを含有する水溶液中には1種又は2種以上の不純物を含んでいてもよい。該不純物の総重量は不純物含有率で表して、通常は28重量%以下、より好ましくは23重量%以下、更に好ましくは20重量%以下がよい。
不純物の例としては、ギ酸、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、メトキシ酢酸等のカルボン酸類、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンニ酸、ドデカンニ酸、フマル酸、マレイン酸、ジグリコール酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,4−ブタントリカルボン酸、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、プロパントリカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、エチレンジアミン四酢酸等のポリカルボン酸類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール等のアルコール類、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ホルムアルデヒドの低分子量重合物、グリセリン、ブタン−1,2,3−トリオール等のポリオール類、デンプン、グルコース、セルロース、ヘミセルロース、キシラン、キシロース、キシリトール、ペンタエリスリトール、キチン、キトサン、デキストリン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、アミロペクチン、グリコーゲン等の多糖類、乳酸、2−ヒドロキシペンタン酸、2−ヒドロキシオクタン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルペンタン酸、2−ヒドロキシ−2−エチルペンタン酸、2−ヒドロキシ−2−プロピルペンタン酸、2−ヒドロキシ−2−ブチルペンタン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシペンタン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸、3−ヒドロキシ−3−メチルペンタン酸、3−ヒドロキシ−3−エチルペンタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシペンタン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘプタン酸、4−ヒドロキシオクタン酸、4−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸、5−ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシ安息香酸、グリセリン酸、ジグリセリン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸類、また、上記カルボン酸類とアルコール類の組み合わせで生じるエステル類の内、フリーのカルボン酸基或いは水酸基を有している化合物(これらは反応中に生成される場合があり、特に系中に大量に存在するグリコール酸が関与するものも含まれる)、メチルアミン、エチルアミン、アニリン等のアミン類(本発明においてアンモニアの存在は必須なので不純物から除く)、ヒドラジン、メチルヒドラジン、モノメチレンジアミン、ジメチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の多価アミン類、グリシン、(+)−アラニン、β−アラニン、(−)−アスパラギン、(+)−アスパラギン酸、(−)−システイン、(+)−グルタミン酸、(+)−グルタミン、(−)−ヒドロキシリシン、(−)−ロイシン、(+)−イソロイシン、(+)−リシン、(−)−メチオニン、(−)−セリン、(−)−トレオニン、(+)−バリン、アミノ酪酸、アザセリン、アルギニン、エチオニン等のアミノ酸類、また、上記カルボン酸類、アミン類、アミノ酸類の組み合わせで生じるアミド結合を有する化合物の内、フリーのカルボン酸基或いはアミン基を有している化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。
更に別の不純物の例として、元素周期律表1族のリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、2〜12族に属する元素、13族のアルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、14属の錫、鉛、ゲルマニウム、15族のアンチモン、16族のテルル等の元素、及び上記元素のイオンが挙げられる。
更に不純物の例として上記元素の中から選ばれる1種または複数を陽イオン成分とし、上記カルボン酸類或いはフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、過塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、ホウ酸イオンからなる群から選ばれる陰イオン成分とする塩化合物が挙げられる。
本発明における結晶を晶出させる方法については特に限定は無く公知の方法を用いることができる。例えばグリコール酸とアンモニアを含有する水溶液を攪拌下または静置条件下で冷却することにより該結晶を析出させることができる。また、晶出方法は回分式であっても、連続式であっても構わない。晶出の温度は該水溶液のグリコール酸濃度によって変わってくるが、通常は、凝固点を越えて70℃以下がよく、より好ましくは5〜70℃、更に好ましくは10〜50℃、最も好ましくは10〜30℃がよい。
本発明においては晶析時に種晶を使うこともできるし、使わなくてもよい。通常は晶析速度を上げるために種晶が使われることが多い。本発明における晶出時に使用する種晶としては、通常、不純物を入れないという観点から、純度の高いグリコール酸結晶或いはグリコール酸アンモニウム結晶或いはグリコール酸とアンモニアのモル比が1.8〜2.2であるグリコール酸とアンモニアからなる結晶性化合物が挙げられる。これら種晶の添加量は特に限定されないが、結晶品質或いは経済的理由からなるべく少量を入れることが望ましい。また、各結晶の純度については、高い程よいが、通常は99重量%以上、好ましくは99.5重量%以上、より好ましくは99.8重量%以上がよい。
晶出に要する時間(連続の場合は滞留時間)は結晶の晶出が十分に進行する時間であれば特に限定されないが、通常、1分〜20時間、好ましくは2分〜5時間、より好ましくは3分〜2時間、更に好ましくは5分〜1時間、最も好ましくは10分〜30分がよい。
本発明の晶析操作で得られる湿潤結晶は濾過或いは遠心分離等の操作で含水率を十分に下げた後、乾燥することで乾燥結晶を得ることができるが、更に純度を上げるためには、晶出後或いは晶析操作中に洗浄操作を行う。洗浄液の例としては、0℃を越え5℃以下の冷水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール等の炭素数1〜5のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、グリコール酸水溶液、グリコール酸アンモニウム水溶液、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液等が挙げられる。これらの中でも、無害性、使用後の液のリサイクル性、結晶回収率低下の抑制の観点から、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液が好ましい。
得られた湿潤結晶は、公知の乾燥方法で乾燥することができる。乾燥方法は特に限定されないが、通常、結晶の融点より低い温度において、常圧下、減圧下、加圧下、またはガス流通下で行う。該結晶を乾燥する時の雰囲気は特に限定されることはなく、例えば空気下で行うことができ、或いは窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、二酸化炭素、低級炭化水素等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。これらのガスは単独でもよいし、2種類以上の組み合わせでもよい。
本結晶は、既存の方法により脱アンモニウムすることで、グリコール酸に変換することができるので、最終的には高純度グリコール酸の製造法となりうる。脱アンモニウムの方法としては、例えば電気透析、H型のカチオン交換樹脂を用いたイオン交換、熱分解反応等の方法が利用できる。
以下実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。尚、本発明はこれらの実施例により必ずしも限定されるものではなく、その要旨を超えない限り、様々な変更、修飾が可能である。
結晶中或いは水溶液中のグリコール酸、重縮合2量体(エステル)の定量測定は高速液体クロマトグラフィーで実施した。カラムはイオン排除カラム(島津Shim-pack SCR-101H)、カラム温度は40℃、移動相はリン酸水溶液(pH=2.3)、流速は0.7cc/min、検出器はUV(島津SPD-10AV vp、210nm)及びRI(島津RID-6A)で実施した。グリコール酸については試薬(和光純薬製1級試薬)を標準物質とした検量線を用いて定量した。また、重縮合2量体については標準物質がないため、RI分析結果において、グリコール酸2量体と同一ファクターを用いて定量した。
また、結晶中或いは水溶液中のアンモニウムイオンの分析はイオンクロマトグラフィーで実施した。カラムはカチオン交換カラム(東ソー Tsk gel IC-Cation )、カラム温度は40℃、移動相は2mM硝酸水溶液、流速は0.5cc/min、検出器は電導度計(東ソーCM-8020)で実施した。
また、結晶の融点は、空気浴法微量融点測定装置(柳本製作所)を用いて目視で溶解を確認し、結晶の溶けはじめから完全に溶解するまでの温度を測定した。
[実施例1]
97重量%グリコール酸結晶(和光純薬製1級試薬)206.19gと蒸留水75.50g を1Lガラス製ジャケット付き晶析器に仕込み、テフロン(登録商標)被覆攪拌プロペラ3枚羽根で攪拌(回転数160rpm)しながら、ジャケットへ冷媒を流し、晶析槽内温度を5℃に保った。25重量%アンモニア水(和光純薬特級試薬)89.47gを徐々に滴下して、グリコール酸濃度が53.9重量%、アンモニア濃度が6.0重量%の水溶液(温度46℃)を調製した(グリコール酸とアンモニアの重量組成比が90:10に相当)。次に、内温を31℃に保ちながら、種晶として97重量%グリコール酸結晶(和光純薬製1級試薬)を0.5g添加したところ5分以内に結晶が析出した。15分程度攪拌を続け、最終的なスラリーを得た。次に、濾紙を乗せたガラス漏斗を使って、湿潤結晶61.12gと母液299.88gを回収し、結晶については40℃×24Hrの真空乾燥を実施し、乾燥結晶53.78gを得た。乾燥結晶と母液中のグリコール酸及びアンモニア濃度を、それぞれ高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーで分析したところ表1のような結果を得た。また、同分析法によりグリコール酸の重縮合2量体を分析した結果、原料結晶中においては、グリコール酸の重縮合2量体の結晶に対する濃度が3200重量ppm/グリコール酸であったが、晶析後の乾燥結晶においては210重量ppm/グリコール酸まで低減されていた。また湿潤結晶の一部を、等重量の0℃冷水で1回洗浄し、上記と同様の操作で濾別、乾燥して得られた乾燥結晶中のグリコール酸の重縮合2量体は56重量ppm/グリコール酸まで低減されていた。更に得られた精製結晶の融点測定として、空気浴法微量融点測定装置(柳本製作所)を用いて目視で溶解を確認し、結晶の解け始めから完全に溶解するまでの温度を測定したところ、108〜114℃であった。
Figure 0005024855
[実施例2]
実施例1で得られた母液298gを、1Lガラス製ジャケット付き晶析器に仕込み、テフロン(登録商標)被覆攪拌プロペラ3枚羽根で攪拌(回転数160rpm)しながら、ジャケットへ冷媒を流し、晶析槽内温度を11℃に保ったところ、徐々に結晶が析出し始めた。約1時間攪拌を続けた後、実施例1と同様の操作で表2のような分析結果を得た。
Figure 0005024855
*GA収率が100%を越えているのは、重量測定及び液体クロマトグラフィー分析誤差による。
[実施例3]
実施例2で得られた乾燥結晶80.21gに蒸留水80.35gを加えて50℃に加温して結晶を完全に溶解させた。ジャケット付きのガラス製イオン交換カラム(内直径3cm×高さ1m)に予めプロトン型に再生処理を施した、強酸性カチオン交換樹脂(オルガノ製IR120B、公称総イオン交換容量:2mg当量/ml−Na型樹脂)を約450ml充填し、上記の溶液をSV=4でフィードし、カチオン交換を実施した。サンプル液フィード終了後は蒸留水をSV=4でフィードし押出し操作を十分に行った。回収は50mlずつに分けて行い、各回収サンプルのpHと電導度の挙動から、イオン交換液の回収の開始と終了を判断し、ほぼ全てを回収した。得られた回収液の高速液体クロマトグラフィー分析を行った結果、原料からのグリコール酸収率は42.5%であり、重縮合物2量体は検出されなかった。また、イオンクロマトグラフィー分析を行った結果、アンモニアも検出されなかった。
[比較例1]
97重量%グリコール酸結晶(和光純薬製1級試薬)207.25gと蒸留水75.21g を1Lガラス製ジャケット付き晶析器に仕込み、テフロン(登録商標)被覆攪拌プロペラ3枚羽根で攪拌(回転数160rpm)しながら、ジャケットへ冷媒を流し、晶析槽内温度を30℃に保った。種晶として97重量%グリコール酸結晶(和光純薬製1級試薬)を0.5g添加して2時間攪拌を続けたが結晶は析出しなかった。(グリコール酸とアンモニアの重量組成比が100:0に相当)
[比較例2]
97重量%グリコール酸結晶(和光純薬製1級試薬)205.98gを1Lガラス製ジャケット付き晶析器に仕込み、テフロン(登録商標)被覆攪拌プロペラ3枚羽根で攪拌(回転数160rpm)しながら、ジャケットへ冷媒を流し、晶析槽内温度を5℃に保った。25重量%アンモニア水(和光純薬特級試薬)178.88gを徐々に滴下して、グリコール酸濃度が51.9重量%、アンモニア濃度が11.6重量%の水溶液(温度46℃)を調製した(グリコール酸とアンモニアのモル比1に相当。次に、内温を31℃に保ちながら、種晶として97重量%グリコール酸結晶(和光純薬製1級試薬)を0.5g添加し、攪拌を2時間続けたが結晶は析出しなかった。
本発明法によれば、不純物を多く含むグリコール酸水溶液から、簡便且つ高収率でエネルギー効率よく、高純度グリコール酸含有結晶を製造することができるので、高純度を要求されるグリコール酸の用途、特にポリマー原料用途或いは香粧品用途の高純度グリコール酸を製造するための有力な手段として利用することができる。

Claims (6)

  1. グリコール酸及びアンモニアからなる結晶性化合物であって、該結晶性化合物中に存在するグリコール酸とアンモニアのモル比が1.8:1〜2.2:1であることを特徴とする結晶。
  2. グリコール酸及びアンモニアからなる結晶性化合物であって、該結晶性化合物中に水和物を有していないことを特徴とする請求項1記載の結晶。
  3. 融点が108〜114℃であることを特徴とする請求項1または2記載の結晶。
  4. グリコール酸とアンモニアのモル比が1.7:1〜2.2:1である水溶液から結晶を晶出せしめ、グリコール酸及びアンモニアからなる結晶を採取することを特徴とする高純度結晶の製造方法。
  5. 晶出温度が凝固点を越えて、70℃以下であることを特徴とする請求項4記載の高純度結晶の製造方法。
  6. グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液に種晶を共存せしめることを特徴とする請求項4または5記載の高純度結晶の製造方法。
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