JP5024855B2 - グリコール酸とアンモニアからなる新規結晶並びにその製造方法 - Google Patents
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1)酸触媒の存在下、ホルムアルデヒドと一酸化炭素と水から製造する方法
2)クロロ酢酸をケン化する方法
いずれも、グリコール酸は水溶液の形で得られ、アルコール性水酸基を有しないカルボン酸類またはカルボキシル基を有しないアルコール類等の不純物、或いはまた、樹脂の機械特性を著しく低下させる程度の量の無機塩類が不純物として存在する。よって、これらを精製除去する工程が必要となる。
[1] グリコール酸及びアンモニアからなる結晶性化合物であって、該結晶性化合物中に存在するグリコール酸とアンモニアのモル比が1.8:1〜2.2:1であることを特徴とする結晶。
[2] グリコール酸及びアンモニアからなる結晶性化合物であって、該結晶性化合物中に水和物を有していないことを特徴とする請求項[1]記載の結晶。
[3] 融点が108〜114℃であることを特徴とする請求項[1]〜[2]記載の結晶。
[4] グリコール酸とアンモニアのモル比が1.7:1〜2.2:1である水溶液から結晶を晶出せしめ、グリコール酸及びアンモニアからなる結晶を採取することを特徴とする高純度結晶の製造方法。
[5] 晶出温度が凝固点を越えて、70℃以下であることを特徴とする請求項[4]〜[5]記載の高純度結晶の製造方法。
[6] グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液に種晶を共存せしめることを特徴とする請求項[4]または[5]記載の高純度結晶の製造方法。
便且つ高収率でエネルギー効率よく、高純度グリコール酸含有結晶を製造する方法を提供
できる。即ち、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液からグリコール酸とアンモニ
アのモル比が1.8:1〜2.2:1であるグリコール酸結晶が晶出する現象を利用して、高純度グリコール酸含有結晶を製造する方法及びその物質を提供できる。更に該結晶中のアンモニウムイオンを脱塩することで、高純度グリコール酸を得ることができる。
尚、本結晶の融点が幅広い範囲を有するのは、解け始めから完全溶解までに昇温時間を有することを意味し、この間に固液間に何らかの組成変化が起きるため、このような完全溶解に時間のかかる現象が現れると推察されるが、詳細は定かではない。
化学合成法の例として以下のものを挙げることができる。
・ 酸触媒の存在下、ホルムアルデヒド、一酸化炭素、水から製造する方法
(特許文献5、6、7、8参照)
・ クロロ酢酸をケン化する方法(特許文献9参照)
・ 強アルカリの存在下、グリオキサールのカニッツアロ反応でグリコール酸塩を製造し、酸を加えてグリコール酸を遊離させる方法(非特許文献1、2参照)
・ エチレングリコールを原料として一官能基のみを選択的に酸化する方法
(特許文献10参照)
・ グリコロニトリルを原料として、加水分解する方法(特許文献11参照)
・ シュウ酸の還元により製造する方法(非特許文献3参照)
また、酵素法、醗酵法の例として以下のものを挙げることができる。
・ 微生物由来の加水分解酵素を用いてグリコロニトリルを原料として製造する方法
(特許文献12、13参照)
・ エチレングリコール含有培地からグリコール酸を分離・回収する方法
(特許文献14参照)
不純物の例としては、ギ酸、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、メトキシ酢酸等のカルボン酸類、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンニ酸、ドデカンニ酸、フマル酸、マレイン酸、ジグリコール酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,4−ブタントリカルボン酸、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、プロパントリカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、エチレンジアミン四酢酸等のポリカルボン酸類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール等のアルコール類、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ホルムアルデヒドの低分子量重合物、グリセリン、ブタン−1,2,3−トリオール等のポリオール類、デンプン、グルコース、セルロース、ヘミセルロース、キシラン、キシロース、キシリトール、ペンタエリスリトール、キチン、キトサン、デキストリン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、アミロペクチン、グリコーゲン等の多糖類、乳酸、2−ヒドロキシペンタン酸、2−ヒドロキシオクタン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルペンタン酸、2−ヒドロキシ−2−エチルペンタン酸、2−ヒドロキシ−2−プロピルペンタン酸、2−ヒドロキシ−2−ブチルペンタン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシペンタン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸、3−ヒドロキシ−3−メチルペンタン酸、3−ヒドロキシ−3−エチルペンタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシペンタン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘプタン酸、4−ヒドロキシオクタン酸、4−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸、5−ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシ安息香酸、グリセリン酸、ジグリセリン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸類、また、上記カルボン酸類とアルコール類の組み合わせで生じるエステル類の内、フリーのカルボン酸基或いは水酸基を有している化合物(これらは反応中に生成される場合があり、特に系中に大量に存在するグリコール酸が関与するものも含まれる)、メチルアミン、エチルアミン、アニリン等のアミン類(本発明においてアンモニアの存在は必須なので不純物から除く)、ヒドラジン、メチルヒドラジン、モノメチレンジアミン、ジメチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の多価アミン類、グリシン、(+)−アラニン、β−アラニン、(−)−アスパラギン、(+)−アスパラギン酸、(−)−システイン、(+)−グルタミン酸、(+)−グルタミン、(−)−ヒドロキシリシン、(−)−ロイシン、(+)−イソロイシン、(+)−リシン、(−)−メチオニン、(−)−セリン、(−)−トレオニン、(+)−バリン、アミノ酪酸、アザセリン、アルギニン、エチオニン等のアミノ酸類、また、上記カルボン酸類、アミン類、アミノ酸類の組み合わせで生じるアミド結合を有する化合物の内、フリーのカルボン酸基或いはアミン基を有している化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。
更に別の不純物の例として、元素周期律表1族のリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、2〜12族に属する元素、13族のアルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、14属の錫、鉛、ゲルマニウム、15族のアンチモン、16族のテルル等の元素、及び上記元素のイオンが挙げられる。
更に不純物の例として上記元素の中から選ばれる1種または複数を陽イオン成分とし、上記カルボン酸類或いはフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、過塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、ホウ酸イオンからなる群から選ばれる陰イオン成分とする塩化合物が挙げられる。
また、結晶中或いは水溶液中のアンモニウムイオンの分析はイオンクロマトグラフィーで実施した。カラムはカチオン交換カラム(東ソー Tsk gel IC-Cation )、カラム温度は40℃、移動相は2mM硝酸水溶液、流速は0.5cc/min、検出器は電導度計(東ソーCM-8020)で実施した。
また、結晶の融点は、空気浴法微量融点測定装置(柳本製作所)を用いて目視で溶解を確認し、結晶の溶けはじめから完全に溶解するまでの温度を測定した。
97重量%グリコール酸結晶(和光純薬製1級試薬)206.19gと蒸留水75.50g を1Lガラス製ジャケット付き晶析器に仕込み、テフロン(登録商標)被覆攪拌プロペラ3枚羽根で攪拌(回転数160rpm)しながら、ジャケットへ冷媒を流し、晶析槽内温度を5℃に保った。25重量%アンモニア水(和光純薬特級試薬)89.47gを徐々に滴下して、グリコール酸濃度が53.9重量%、アンモニア濃度が6.0重量%の水溶液(温度46℃)を調製した(グリコール酸とアンモニアの重量組成比が90:10に相当)。次に、内温を31℃に保ちながら、種晶として97重量%グリコール酸結晶(和光純薬製1級試薬)を0.5g添加したところ5分以内に結晶が析出した。15分程度攪拌を続け、最終的なスラリーを得た。次に、濾紙を乗せたガラス漏斗を使って、湿潤結晶61.12gと母液299.88gを回収し、結晶については40℃×24Hrの真空乾燥を実施し、乾燥結晶53.78gを得た。乾燥結晶と母液中のグリコール酸及びアンモニア濃度を、それぞれ高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーで分析したところ表1のような結果を得た。また、同分析法によりグリコール酸の重縮合2量体を分析した結果、原料結晶中においては、グリコール酸の重縮合2量体の結晶に対する濃度が3200重量ppm/グリコール酸であったが、晶析後の乾燥結晶においては210重量ppm/グリコール酸まで低減されていた。また湿潤結晶の一部を、等重量の0℃冷水で1回洗浄し、上記と同様の操作で濾別、乾燥して得られた乾燥結晶中のグリコール酸の重縮合2量体は56重量ppm/グリコール酸まで低減されていた。更に得られた精製結晶の融点測定として、空気浴法微量融点測定装置(柳本製作所)を用いて目視で溶解を確認し、結晶の解け始めから完全に溶解するまでの温度を測定したところ、108〜114℃であった。
実施例1で得られた母液298gを、1Lガラス製ジャケット付き晶析器に仕込み、テフロン(登録商標)被覆攪拌プロペラ3枚羽根で攪拌(回転数160rpm)しながら、ジャケットへ冷媒を流し、晶析槽内温度を11℃に保ったところ、徐々に結晶が析出し始めた。約1時間攪拌を続けた後、実施例1と同様の操作で表2のような分析結果を得た。
[実施例3]
実施例2で得られた乾燥結晶80.21gに蒸留水80.35gを加えて50℃に加温して結晶を完全に溶解させた。ジャケット付きのガラス製イオン交換カラム(内直径3cm×高さ1m)に予めプロトン型に再生処理を施した、強酸性カチオン交換樹脂(オルガノ製IR120B、公称総イオン交換容量:2mg当量/ml−Na型樹脂)を約450ml充填し、上記の溶液をSV=4でフィードし、カチオン交換を実施した。サンプル液フィード終了後は蒸留水をSV=4でフィードし押出し操作を十分に行った。回収は50mlずつに分けて行い、各回収サンプルのpHと電導度の挙動から、イオン交換液の回収の開始と終了を判断し、ほぼ全てを回収した。得られた回収液の高速液体クロマトグラフィー分析を行った結果、原料からのグリコール酸収率は42.5%であり、重縮合物2量体は検出されなかった。また、イオンクロマトグラフィー分析を行った結果、アンモニアも検出されなかった。
97重量%グリコール酸結晶(和光純薬製1級試薬)207.25gと蒸留水75.21g を1Lガラス製ジャケット付き晶析器に仕込み、テフロン(登録商標)被覆攪拌プロペラ3枚羽根で攪拌(回転数160rpm)しながら、ジャケットへ冷媒を流し、晶析槽内温度を30℃に保った。種晶として97重量%グリコール酸結晶(和光純薬製1級試薬)を0.5g添加して2時間攪拌を続けたが結晶は析出しなかった。(グリコール酸とアンモニアの重量組成比が100:0に相当)
97重量%グリコール酸結晶(和光純薬製1級試薬)205.98gを1Lガラス製ジャケット付き晶析器に仕込み、テフロン(登録商標)被覆攪拌プロペラ3枚羽根で攪拌(回転数160rpm)しながら、ジャケットへ冷媒を流し、晶析槽内温度を5℃に保った。25重量%アンモニア水(和光純薬特級試薬)178.88gを徐々に滴下して、グリコール酸濃度が51.9重量%、アンモニア濃度が11.6重量%の水溶液(温度46℃)を調製した(グリコール酸とアンモニアのモル比1に相当。次に、内温を31℃に保ちながら、種晶として97重量%グリコール酸結晶(和光純薬製1級試薬)を0.5g添加し、攪拌を2時間続けたが結晶は析出しなかった。
Claims (6)
- グリコール酸及びアンモニアからなる結晶性化合物であって、該結晶性化合物中に存在するグリコール酸とアンモニアのモル比が1.8:1〜2.2:1であることを特徴とする結晶。
- グリコール酸及びアンモニアからなる結晶性化合物であって、該結晶性化合物中に水和物を有していないことを特徴とする請求項1記載の結晶。
- 融点が108〜114℃であることを特徴とする請求項1または2記載の結晶。
- グリコール酸とアンモニアのモル比が1.7:1〜2.2:1である水溶液から結晶を晶出せしめ、グリコール酸及びアンモニアからなる結晶を採取することを特徴とする高純度結晶の製造方法。
- 晶出温度が凝固点を越えて、70℃以下であることを特徴とする請求項4記載の高純度結晶の製造方法。
- グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液に種晶を共存せしめることを特徴とする請求項4または5記載の高純度結晶の製造方法。
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