JP4906395B2 - 高純度グリコール酸水溶液の製造法 - Google Patents

高純度グリコール酸水溶液の製造法 Download PDF

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Description

本発明は、高純度グリコール酸水溶液の製造方法に関する。
グリコール酸は、従来より、化粧品、染毛剤、シャンプー、トリートメント、洗浄剤(家庭用洗浄剤、工業用洗浄剤等)、金属処理剤、皮なめし剤等の重要な成分として用いられてきたが、近年、各種樹脂製造用原料としても広く用いられるようになった。一般的にグリコール酸を主要構成単位とするポリエステル樹脂において、汎用樹脂用途向けに必要な機械強度を持たせるためには、該樹脂の重量平均分子量を15万以上にすることが望まれている(特許文献1参照)。このようなポリエステル樹脂を、グリコール酸を主体とする原料から重縮合により製造する場合は次の点に注意する必要がある。
グリコール酸は1分子内にカルボキシル基とアルコール性水酸基とをそれぞれ1個有する自己縮合性化合物である。よって、グリコール酸を主体とする原料を重縮合する場合、該原料中に例えば、アルコール性水酸基を有しないカルボン酸類またはカルボキシル基を有しないアルコール類が不純物として存在すると、これらがグリコール酸及び/又はグリコール酸の重縮合物と反応し、該ポリエステル樹脂の高分子量化を阻害する。また、原料中に無機塩類等が不純物として存在すると、得られるポリエステル樹脂の機械特性を著しく低下させる。従ってグリコール酸を主体とする原料から重縮合により高分子量のポリエステル樹脂を合成する場合、グリコール酸は高純度であることが要求される。
一般的な工業的グリコール酸の製造法としては以下のような方法が挙げられる。
1)酸触媒の存在下、ホルムアルデヒドと一酸化炭素と水から製造する方法
2)クロロ酢酸をケン化する方法
いずれの方法でも、グリコール酸は水溶液の形で得られ、アルコール性水酸基を有しないカルボン酸類またはカルボキシル基を有しないアルコール類等の不純物、或いはまた、樹脂の機械特性を著しく低下させる程度の量の無機塩類が不純物として存在する。よって、これらを精製除去する工程が必要となる。
グリコール酸は通常、水溶液の形で得られ、揮発性が低いため蒸留による精製は適さない。また、グリコール酸は蒸留条件下において重縮合反応を起こして、蒸留しにくい縮合物を生成するためますます蒸留精製が困難である。そこで、グリコール酸の精製法としては通常、晶析による精製法が選択されてきた。しかしながら、グリコール酸の水への溶解度は非常に高いので、晶析を行う場合、予め結晶の析出が可能な濃度まで濃縮操作を行う必要がある。その場合、上記蒸留操作と同様な熱履歴を受けるため重縮合物の副生は避けられず、高純度グリコール酸結晶の収率も低下する。
従来の晶析によるグリコール酸の精製法としては、例えば、水分含有率、単量体グリコール酸含有率を特定の範囲に規定したグリコール酸の晶析法(特許文献2参照)、或いはグリコール酸水溶液を特定条件下で水を除去してグリコール酸を含む溶融物を形成させ結晶化剤と混合して冷却する方法(特許文献3参照)、粗グリコール酸をアセトン等の有機溶剤に溶解して溶液とし高圧ガスと混合することで結晶を得る方法(特許文献4参照)等が挙げられる。
これら先行文献に開示されたグリコール酸の晶析法では、必ずしも、工業的に実施可能な簡便且つ、高収率の高純度グリコール酸結晶の製造法にはなっておらず、特に重縮合物の副生を抑制できる高純度グリコール酸結晶の製造法にはなっていなかった。
例えば、前記特許文献2の方法では、確かに規定されている条件を満たすことで、高純度グリコール酸を得ることはできるが、収率が27質量%程度と非常に低く、工業的に満足できるレベルではない。重縮合物副生の収率低下に対する影響の程度は明記されていないが、恐らく低収率の要因の一つになっていると推察される。
また、特許文献3の方法では、確かに高純度グリコール酸を得ることはできるが、そのためには予め電気透析や溶媒抽出等の方法によりグリコール酸水溶液を極めて高純度にしておかねばならず、簡便な方法とは言えない。
また、特許文献4の方法では確かに高純度のグリコール酸を得ることはできるが、有害な有機溶剤を大量に使うので、工業的な製造法としては環境的に問題があり、且つ、全量留去が必要なのでとても現実的な方法とは言えない。
特開平11−130847号公報(WO9919378) 国際公開第2003/064366号パンフレット 特開平8−268955号公報 特開平5−92102号公報
本発明の課題は、不純物を多く含むグリコール酸水溶液から、簡便且つ高収率で、重縮合物の副生を抑制しながら高純度グリコール酸含有結晶を製造し、該結晶を脱アンモニウムすることで高純度グリコール酸水溶液を製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、不純物を多く含むグリコール酸水溶液から、簡便且つ高収率で重縮合物の副生を抑制しながら高純度グリコール酸含有結晶を製造する方法について鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに該グリコール酸水溶液にアンモニアを添加することで、グリコール酸とアンモニアの重量組成比が95:5〜85:15であるグリコール酸とアンモニアを含有する水溶液を調製し、適当な濃度まで濃縮した後、晶析操作を行うことで、重縮合物の副生を抑制しながら、アンモニアを8〜12重量%含有する、グリコール酸及びアンモニアからなる結晶性化合物が得られることを見出した。更に得られた該結晶の水溶液を脱アンモニウムすることで高純度のグリコール酸水溶液を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明は、以下に記載する通りの構成を有する。
[1] グリコール酸とアンモニアの重量組成比が95:5〜85:15である、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液を調製することによって、中間体としてアンモニアを8〜12重量%含有するグリコール酸及びアンモニアからなる結晶性化合物を製造し、水溶液からこの中間体の結晶を晶出させて分離し、分離した中間体の結晶の水溶液を調製し、この水溶液を脱アンモニウム処理することを特徴とする高純度グリコール酸水溶液の製造方法。
[2] グリコール酸とアンモニアの重量組成比が95:5〜85:15である、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液が、グリコール酸アンモニウム水溶液を脱アンモニウム処理することによって調製されたものであることを特徴とする[1]記載のグリコール酸の製造方法。
[3]脱アンモニウム処理を電気透析及び/または陽イオン交換により行うことを特徴とする[1]〜[2]記載のグリコール酸の製造方法。
本発明によれば、不純物を多く含むグリコール酸水溶液から、簡便に且つ高収率で高純度グリコール酸水溶液を製造することができる。
本発明で言うグリコール酸及びアンモニアからなる結晶性化合物とは、従来全く知られていなかった新規結晶性化合物である。本発明者らは、グリコール酸アンモニウムを試薬のグリコール酸結晶と水と試薬の25重量%アンモニア水を用いて調製している最中に、ある特定の組成液から急激な結晶化現象が起こることを偶然発見した。本結晶を濾別、乾燥したものを、既知量の水へ溶解させた後、高速液体クロマトグラフイーによるグリコール酸の分析とイオンクロマトグラフィーによるアンモニウムイオンの分析を行った。その結果、本結晶の組成は、該結晶性化合物中にアンモニアを8〜12重量%含有することが判明した。これはグリコール酸とグリコール酸アンモニウムが、ほぼ等モル存在することを示唆すると思われるが詳細は定かではない。また、その分析値から計算して、本結晶中には水和物が含まれていないことが判明した。
更に、本結晶の物性を明らかにするため、グリコール酸、グリコール酸アンモニウム、本結晶の融点測定を実施したところ、それぞれ79〜81℃、101〜103℃、108〜114℃で、本結晶が特異的に融点の高いことが判明した。これらの結果からして本結晶が何かしら特異的な結合を有しており、エネルギー的に安定な結晶であることが容易に類推できる。
本発明におけるグリコール酸とアンモニアの重量組成比が95:5〜85:15である、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液は如何なる方法で調製されてもよい。例えば、既存のグリコール酸結晶或いはまた、グリコール酸水溶液に対しアンモニア水或いはまたアンモニアガスを混合して調製することができる。また、グリコール酸アンモニウムの一部アンモニウムを公知の方法で脱塩することで調製できる。公知の脱塩方法としては、例えば、プロトン型のカチオン交換樹脂を用いたイオン交換、電気透析、熱分解して系外にアンモニアを除去する方法、有機溶媒を添加した後熱処理で系外にアンモニアを除去する方法等が挙げられる。
本発明におけるグリコール酸とアンモニアの重量組成比が95:5〜85:15である、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液中のグリコール酸とアンモニアの全重量濃度は、特に限定されることなく任意に選ぶことができるが、30〜70重量%がよく、より好ましくは40〜60重量%がよい。濃度が低すぎると、溶解度の関係から晶出温度を低くする必要があり、過度に低い場合、全く晶出できない場合がある。また、該濃度の上限は自ずと液温に対応した溶解度から決定される。
本発明においては、グリコール酸とアンモニアの重量組成比が95:5〜85:15である、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液の濃度が希薄な場合、該水溶液を濃縮して上記濃度範囲に調製する必要があるが、その場合、熱履歴によって、該グリコール酸の重縮合物(エステル結合)が副生することがあるので注意を要する。該重縮合物が多すぎると結晶の晶出を妨げるだけでなく、得られた結晶中に該縮合物が混入し、粘性の高い結晶となるので取扱いが困難となる。該重縮合物の許容量は、グリコール酸とアンモニアの重量組成比が95:5〜85:15である、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液中のグリコール酸とアンモニアの全重量に対する該重縮合物の重量割合で表すと、通常は15重量%以下がよく、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、最も好ましくは1重量%以下がよい。
本発明におけるグリコール酸とアンモニアの重量組成比が95:5〜85:15である、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液中には1種又は2種以上の不純物を含んでいてもよい。該不純物の総重量は不純物含有率で表して、通常は28重量%以下、より好ましくは23重量%以下、更に好ましくは20重量%以下がよい。
不純物の例としては、ギ酸、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、メトキシ酢酸等のカルボン酸類、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンニ酸、ドデカンニ酸、フマル酸、マレイン酸、ジグリコール酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,4−ブタントリカルボン酸、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、プロパントリカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、エチレンジアミン四酢酸等のポリカルボン酸類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール等のアルコール類、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ホルムアルデヒドの低分子量重合物、グリセリン、ブタン−1,2,3−トリオール等のポリオール類、デンプン、グルコース、セルロース、ヘミセルロース、キシラン、キシロース、キシリトール、ペンタエリスリトール、キチン、キトサン、デキストリン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、アミロペクチン、グリコーゲン等の多糖類、乳酸、2−ヒドロキシペンタン酸、2−ヒドロキシオクタン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸、2−ヒドロキシ−2−メチルペンタン酸、2−ヒドロキシ−2−エチルペンタン酸、2−ヒドロキシ−2−プロピルペンタン酸、2−ヒドロキシ−2−ブチルペンタン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシペンタン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸、3−ヒドロキシ−3−メチルペンタン酸、3−ヒドロキシ−3−エチルペンタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシペンタン酸、4−ヒドロキシヘキサン酸、4−ヒドロキシヘプタン酸、4−ヒドロキシオクタン酸、4−ヒドロキシ−4−メチルペンタン酸、5−ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシ安息香酸、グリセリン酸、ジグリセリン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸類、また、上記カルボン酸類とアルコール類の組み合わせで生じるエステル類の内、フリーのカルボン酸基或いは水酸基を有している化合物(これらは反応中に生成される場合があり、特に系中に大量に存在するグリコール酸が関与するものも含まれる)、メチルアミン、エチルアミン、アニリン等のアミン類(本発明においてアンモニアの存在は必須なので不純物から除く)、ヒドラジン、メチルヒドラジン、モノメチレンジアミン、ジメチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の多価アミン類、グリシン、(+)−アラニン、β−アラニン、(−)−アスパラギン、(+)−アスパラギン酸、(−)−システイン、(+)−グルタミン酸、(+)−グルタミン、(−)−ヒドロキシリシン、(−)−ロイシン、(+)−イソロイシン、(+)−リシン、(−)−メチオニン、(−)−セリン、(−)−トレオニン、(+)−バリン、アミノ酪酸、アザセリン、アルギニン、エチオニン等のアミノ酸類、また、上記カルボン酸類、アミン類、アミノ酸類の組み合わせで生じるアミド結合を有する化合物の内、フリーのカルボン酸基或いはアミン基を有している化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。
更に別の不純物の例として、元素周期律表1族のリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、2〜12族に属する元素、13族のアルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、14属の錫、鉛、ゲルマニウム、15族のアンチモン、16族のテルル等の元素、及び上記元素のイオンが挙げられる。
更に不純物の例として上記元素の中から選ばれる1種または複数を陽イオン成分とし、上記カルボン酸類或いはフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、過塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、ホウ酸イオンからなる群から選ばれる陰イオン成分とする塩化合物が挙げられる。
本発明における晶析法は特に限定は無く、公知の如何なる方法であってもよい。例えばグリコール酸とアンモニアの重量組成比が95:5〜85:15である、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液を攪拌下または静置条件下で冷却することにより該結晶を析出させることができる。また、晶出方法は回分式であっても、連続式であっても構わない。晶出の温度は該水溶液のグリコール酸濃度によって変わってくるが、通常は、凝固点を越えて70℃以下がよく、より好ましくは5〜70℃、更に好ましくは10〜50℃、最も好ましくは10〜30℃がよい。
本発明においては晶析時に種晶を使うこともできるし、使わなくてもよい。通常は晶析速度を上げるために種晶が使われることが多い。本発明における晶出時に使用する種晶としては、通常、不純物を入れないという観点から、純度の高いグリコール酸結晶或いはグリコール酸アンモニウム結晶或いは結晶性化合物中にアンモニアを8〜12重量%含有するグリコール酸とアンモニアからなる結晶性化合物が挙げられる。これら種晶の添加量は特に限定されないが、結晶品質或いは経済的理由からなるべく少量を入れることが望ましい。また、各結晶の純度については、高い程よいが、通常は99重量%以上、好ましくは99.5重量%以上、より好ましくは99.8重量%以上がよい。
晶出に要する時間(連続の場合は滞留時間)は結晶の晶出が十分に進行する時間であれば特に限定されないが、通常、1分〜20時間、好ましくは2分〜5時間、より好ましくは3分〜2時間、更に好ましくは5分〜1時間、最も好ましくは10分〜30分がよい。
本発明の晶析操作で得られる湿潤結晶は濾過或いは遠心分離等の操作で含水率を十分に下げた後、乾燥することもできるし、乾燥しないでそのまま次工程に廻すこともできる。更に純度を上げるためには、晶出後或いは晶析操作中に洗浄操作を行うこともできる。洗浄液の例としては、0℃を越え5℃以下の冷水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール等の炭素数1〜5のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、グリコール酸水溶液、グリコール酸アンモニウム水溶液、グリコール酸とアンモニアの重量組成比が95:5〜85:15である、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液等が挙げられる。これらの中でも、無害性、使用後の液のリサイクル性、結晶回収率低下の抑制の観点から、グリコール酸とアンモニアの重量組成比が95:5〜85:15である、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液が好ましい。
得られた湿潤結晶を乾燥する場合、公知の乾燥方法で乾燥することができる。乾燥方法は特に限定されないが、通常、結晶の融点より低い温度において、常圧下、減圧下、加圧下、またはガス流通下で行う。該結晶を乾燥する時の雰囲気は特に限定されることはなく、例えば空気下で行うことができ、或いは窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、二酸化炭素、低級炭化水素等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。これらのガスは単独でもよいし、2種類以上の組み合わせでもよい。
本発明においては、得られたアンモニアを8〜12重量%含有する、グリコール酸及びアンモニアからなる結晶性化合物を湿潤状態のまま或いは乾燥状態で水と混合し、適当な濃度の水溶液に調製した後、脱アンモニウム操作を行う。該結晶性化合物の水溶液濃度は、特に限定されないが、通常10〜70重量%、より好ましくは20〜60重量%、更に好ましくは30〜50重量%に調整される。
本発明における上記脱アンモニウム操作としては、特に限定されないが、通常、プロトン型のカチオン交換樹脂を用いたイオン交換或いは電気透析が選択される。カチオン交換樹脂種としては、特に限定されることはなく、市販の強酸性カチオン交換樹脂や弱酸性カチオン交換樹脂が使用される。イオン交換の方法についても、特に限定されることはなく、処理液と樹脂を攪拌混合するだけのバッチ法や樹脂をカラムに充填しておいて、処理液を通液するカラム法等を挙げることができる。また、電気透析の方法としては、カチオン膜、アニオン膜のいずれか或いは両方を使ってもよく、またバイポーラ膜を用いてアンモニアを回収することもできる。
<実施例>
以下実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。尚、本発明はこれらの実施例により限定されるものではなく、その要旨を超えない限り、様々な変更、修飾が可能である。
結晶中或いは水溶液中のグリコール酸、重縮合2量体(エステル)の定量測定は高速液体クロマトグラフィーで実施した。カラムはイオン排除カラム(島津Shim−pack SCR−101H)、カラム温度は40℃、移動相はリン酸水溶液(pH=2.3)、流速は0.7cc/min、検出器はUV(島津SPD−10AV vp、210nm)及びRI(島津RID−6A)で実施した。グリコール酸については試薬(和光純薬製1級試薬)を標準物質とした検量線を用いて定量した。また、重縮合2量体については標準物質がないため、RI分析結果において、グリコール酸2量体と同一ファクターを用いて定量した。
また、結晶中或いは水溶液中のアンモニウムイオンの分析はイオンクロマトグラフィーで実施した。カラムはカチオン交換カラム(東ソー Tsk gel IC−Cation )、カラム温度は40℃、移動相は2mM硝酸水溶液、流速は0.5cc/min、検出器は電導度計(東ソーCM−8020)で実施した。
また、結晶の融点は、空気浴法微量融点測定装置(柳本製作所)を用いて目視で溶解を確認し、結晶の溶けはじめから完全に溶解するまでの温度を測定した。
[原料の組成分析]
原料として用いた97重量%グリコール酸結晶(和光純薬製1級試薬)について高速液体クロマトグラフィー分析を行った結果、重縮合2量体が3200[重量ppm/グリコール酸]含まれていた。
[洗浄液1の調製]
予め5℃の冷水にグリコール酸及びアンモニアからなる結晶性化合物(グリコール酸:89.4wt%、アンモニア:10.3Wt%)を過剰に入れ、その温度のまま5時間攪拌混合し、更に攪拌を止めて1時間静置した後、上澄みを結晶と分けて取得し洗浄液1とした。得られた洗浄液1の高速液体クロマトグラフィー分析を行った結果、重縮合物2量体は検出されなかった。
[洗浄液2の調製]
予め5℃の冷水に99.96重量%グリコール酸結晶(別途グリコール酸の晶析を実施したものであり、重縮合物2量体は検出されない)を過剰に入れ、その温度のまま5時間攪拌混合し、更に攪拌を止めて1時間静置した後、上澄みを結晶と分けて取得し洗浄液2とした。得られた洗浄液2の高速液体クロマトグラフィー分析を行った結果、重縮合物2量体は検出されなかった。
[グリコール酸及びアンモニアからなる結晶性化合物の製造]
97重量%グリコール酸結晶(和光純薬製1級試薬)168.23gと蒸留水258.51g を1L四つ口フラスコに仕込み、5℃の恒温水槽に漬けた。テフロン(登録商標)被覆攪拌プロペラ3枚羽根で攪拌(回転数160rpm)しながら、25重量%アンモニア水(和光純薬特級試薬)73.43gを徐々に滴下して、グリコール酸濃度が32.6重量%、アンモニア濃度が3.7重量%の水溶液を調製した(グリコール酸とアンモニアの重量組成比が89:11に相当)。次に、該フラスコをオイルバスに漬けて、フラスコ口に還流器を取り付け、別の口にはコールドトラップを介して減圧コントローラーと真空ポンプを繋いだ。バス温を110℃に設定し、減圧度を徐々に下げていき(650mmHg→170mmHg)、約3時間かけて192mlの水を抜き出した。分析の結果、濃縮後の水溶液の組成は、グリコール酸が50.7重量%、アンモニアが5.69重量%、重縮合2量体は6.19重量%/グリコール酸であった。本液をそのまま恒温水槽に漬けて、恒温水槽の温度を10℃に設定した。内温も徐々に下がり、ほぼ10℃程度になった時点で、結晶が析出し始めた。1時間程度攪拌を続け、濾紙を載せたガラス漏斗で吸引濾過し湿潤結晶を得た。該結晶の一部を高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、重縮合2量体は74重量ppm/グリコール酸であった。次に得られた結晶の大部分を等重量の前記洗浄液1(5℃)と混合、スパチュラで攪拌したのち、即、濾紙を載せたガラス漏斗で吸引濾過して湿潤結晶を得る操作を3回繰り返した。最終的に得られた湿潤結晶を40℃×24時間、真空乾燥し、乾燥結晶を91.43g回収した。
得られた結晶の融点は108〜114℃であった。該結晶の高速液体クロマトグラフィー分析を行った結果、原料からのグリコール酸収率は47.7%であり、重縮合物2量体は検出されなかった。
[脱アンモニウム処理]
上記で得られた湿潤結晶90.52gに蒸留水90.89gを加えて50℃に加温して結晶を完全に溶解させた。ジャケット付きのガラス製イオン交換カラム(内直径3cm×高さ1m)に予めプロトン型に再生処理を施した、強酸性カチオン交換樹脂(オルガノ製IR120B、公称総イオン交換容量:2mg当量/ml−Na型樹脂)を約450ml充填し、上記の溶液をSV=4でフィードし、カチオン交換を実施した。サンプル液フィード終了後は蒸留水をSV=4でフィードし押出し操作を十分に行った。回収は50mlずつに分けて行い、各回収サンプルのpHと電導度の挙動から、イオン交換液の回収の開始と終了を判断し、ほぼ全てを回収した。得られた回収液の高速液体クロマトグラフィー分析を行った結果、原料からのグリコール酸収率は44.2%であり、重縮合物2量体は検出されなかった。
[比較例1]
99.96重量%グリコール酸結晶(別途グリコール酸の晶析を実施したものであり、重縮合物2量体は検出されない)168.22gと蒸留水258.12g1L四つ口フラスコに仕込み、テフロン(登録商標)被覆攪拌プロペラ3枚羽根で攪拌(回転数160rpm)し、グリコール酸水溶液を調製した。次に、該フラスコをオイルバスに漬けて、フラスコ口に還流器を取り付け、別の口にはコールドトラップを介して減圧コントローラーと真空ポンプを繋いだ。バス温を110℃に設定し、減圧度を徐々に下げていき(650mmHg→170mmHg)、約3時間かけて192mlの水を抜き出した。分析の結果、濃縮後の水溶液の組成は、グリコール酸が47.1重量%、重縮合2量体は52.7重量%/グリコール酸であった。本液をそのまま恒温水槽に漬けて、恒温水槽の温度を10℃に設定した。内温も徐々に下がり、ほぼ10℃程度になったが、結晶は析出しなかった。そこで、99.96重量%グリコール酸結晶を0.5g種晶として添加し、そのまま攪拌を続け結晶を析出させた。1時間程度攪拌を続け、濾紙を載せたガラス漏斗で吸引濾過し湿潤結晶を得た。該結晶の一部を高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、重縮合2量体は420重量ppm/グリコール酸であった。次に得られた結晶の大部分を等重量の前記洗浄液2(5℃)と混合、スパチュラで攪拌したのち、即、濾紙を載せたガラス漏斗で吸引濾過して湿潤結晶を得る操作を3回繰り返した。最終的に得られた湿潤結晶を40℃×24時間、真空乾燥し、乾燥結晶を44.65g回収した。得られた結晶の高速液体クロマトグラフィー分析を行った結果、原料からのグリコール酸収率は26.5%であり、重縮合物2量体は検出されなかった。
本発明法によれば、不純物を多く含むグリコール酸水溶液から、簡便且つ高収率で、重縮合物の副生を抑制しながら高純度グリコール酸含有結晶を製造し、該結晶を脱アンモニウムすることで高純度グリコール酸水溶液を製造することができるので、高純度を要求されるグリコール酸の用途、特にポリマー原料用途或いは香粧品用途の高純度グリコール酸水溶液を製造するための有力な手段として利用することができる。

Claims (3)

  1. グリコール酸とアンモニアの重量組成比が95:5〜85:15である、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液を調製することによって、中間体としてアンモニアを8〜12重量%含有するグリコール酸及びアンモニアからなる結晶性化合物を製造し、水溶液からこの中間体の結晶を晶出させて分離し、分離した中間体の結晶の水溶液を調製し、この水溶液を脱アンモニウム処理することを特徴とする高純度グリコール酸水溶液の製造方法。
  2. グリコール酸とアンモニアの重量組成比が95:5〜85:15である、グリコール酸とアンモニアを含有する水溶液が、グリコール酸アンモニウム水溶液を脱アンモニウム処理することによって調製されたものであることを特徴とする請求項1記載の高純度グリコール酸水溶液の製造方法。
  3. 脱アンモニウム処理を電気透析及び/または陽イオン交換により行うことを特徴とする請求項1又は2記載の高純度グリコール酸水溶液の製造方法。
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