JP5023498B2 - プリプレグシート用樹脂組成物およびプリプレグシート - Google Patents
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Description
このようなエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂とする繊維強化複合材料は力学特性、耐熱性、耐水性に優れており、これまで、さまざまな組成を有するエポキシ樹脂と補強繊維の組み合わせによるプリプレグシートが提案されている。
また、航空機構造材料等の繊維強化複合材料においては、構造材料の軽量化の観点から蜂の巣構造をとるハニカムコアの断面にプリプレグシートの平面を接合させた構造に成形されることが多く、従来より、ハニカムコアとプリプレグシートとの接着には、ハニカムコアとプリプレグとの間に介在させるシート状の接着剤が用いられている。
この新しい知見に基づき、粘度調節用フィラーおよび強靭化フィラーを併用し、特定の温度において所定の粘度範囲となる樹脂組成物が、含浸性および靱性に優れ、該プリプレグシート用樹脂組成物を繊維に含浸させて得られるプリプレグシートが、フィレット形成性に優れ、該プリプレグシートを硬化させることにより得られる繊維強化複合材料が、強度に優れることを見出し、本発明を完成させた。
(1)熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂と、硬化剤と、粘度調節用フィラーと、強靭化フィラーとを含有し、
上記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂であり、
上記粘度調節用フィラーが、BET法で測定する比表面積が90m 2 /g以上の無定形、針状または球状の粒子であり、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、ケイソウ土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー、カーボンブラック、硫酸バリウム、塩基性硫酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、ウォラストナイト、セピオライト、アタパルジャイト、および、ゾノライトからなる群から選択され、
上記強靭化フィラーが、板状の粒子であるマイカであり、
上記強靭化フィラーの粒子径が、20〜30μmであり、
硬化中の最低粘度が10〜150Pa・sとなり、100℃での粘度が300Pa・s以下となる、プリプレグシート用樹脂組成物。
(2)上記熱可塑性樹脂が、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドおよびポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種である上記(1)に記載のプリプレグシート用樹脂組成物。
(3)上記熱可塑性樹脂の含有量が、上記熱硬化性樹脂100質量部に対して30〜50質量部である上記(1)または(2)に記載のプリプレグシート用樹脂組成物。
(4)上記硬化剤が、ジアミノジフェニルスルホンおよび/またはジシアンジアミドを含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載のプリプレグシート用樹脂組成物。
(5)上記硬化剤の含有量が、上記熱硬化性樹脂100質量部に対して25〜45質量部である上記(1)〜(4)のいずれかに記載のプリプレグシート用樹脂組成物。
(6)上記粘度調節用フィラーが、ヒュームドシリカである上記(1)〜(5)のいずれかに記載のプリプレグシート用樹脂組成物。
(7)上記粘度調節用フィラーが、表面疎水化処理されたヒュームドシリカである上記(6)に記載のプリプレグシート用樹脂組成物。
(8)上記粘度調節用フィラーの含有量が、上記熱硬化性樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部である上記(1)〜(7)のいずれかに記載のプリプレグシート用樹脂組成物。
(9)上記強靭化フィラーの含有量が、上記熱硬化性樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部である上記(1)〜(8)のいずれかに記載のプリプレグシート用樹脂組成物。
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載のプリプレグシート用樹脂組成物を繊維に含浸させることにより得られうるプリプレグシート。
(11)上記繊維が、炭素繊維、アラミド繊維およびガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種である上記(10)に記載のプリプレグシート。
(12)上記(10)または(11)に記載のプリプレグシートを硬化させることにより得られうる繊維強化複合材料。
本発明のプリプレグシート用樹脂組成物(以下、単に「本発明の組成物」ともいう。)は、熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂と、硬化剤と、粘度調節用フィラーと、強靭化フィラーとを含有し、硬化中の最低粘度が10〜150Pa・sとなり、100℃での粘度が300Pa・s以下となる樹脂組成物である。
次に、本発明の組成物に用いる熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、硬化剤、粘度調節用フィラーおよび強靭化フィラーについて詳述する。
本発明の組成物に用いられる熱硬化性樹脂は、加熱すると網状構造となって不溶不融の状態に硬化する合成樹脂であれば特に限定されず、その具体例としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、得られる本発明の組成物の靱性、延いては本発明の繊維強化複合材料の強度がより向上する理由から、本質的に機械的、熱的、電気的性質に優れているが、脆さがしばしばその用途拡大を妨げる要因となっている、エポキシ樹脂を用いる。
このようなエポキシ樹脂としては、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。
具体的には、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型等のビスフェニル基を有するエポキシ化合物や、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型のエポキシ化合物や、ナフタレン環を有するエポキシ化合物や、フルオレン基を有するエポキシ化合物等の二官能型のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;
フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の多官能型のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;
ダイマー酸等の合成脂肪酸のグリシジルエステル系エポキシ樹脂;
下記式(1)で表されるN,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン(TGDDS)、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン(TGMXDA)、下記式(2)で表されるトリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン、テトラグリシジル1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(TG1,3−BAC)、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂;
これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
グリシジルアミン系エポキシ樹脂のうち、上記式(1)で表されるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)としては、例えば、ELM−434(住友化学工業社製)、MY−721(ハンツマンアドバンストマテリアル社製)等の市販品を用いることができ、上記式(2)で表されるトリグリシジル−p−アミノフェノールとしては、例えば、MY−0510(ハンツマンアドバンストマテリアル社製)、エピコート630(ジャパンエポキシレジン社製)等の市販品を用いることができる。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、エピコート806、エピコート807(いずれもジャパンエポキシレジン社製)等の市販品を用いることができる。
他のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート828、ジャパンエポキシレジン社製)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エピコート154、ジャパンエポキシレジン社製)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(TETRAD−X、三菱ガス化学社製)等の市販品を用いることができる。
本発明の組成物に用いられる熱可塑性樹脂は、加熱により、成形できる程度の熱可塑性が得られる合成樹脂であれば特に限定されず、その具体例としては、ポリアセタール、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルホルマール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、ポリアリーレンオキシド、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリカーボネート、ポリベンズイミダゾール、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドおよびポリスルホンからなる群から選択される少なくとも1種であるのが、上記熱硬化性樹脂との相溶性が高い理由から好ましい。
本発明の組成物に用いられる硬化剤は、下記式(5)で示されるジアミノジフェニルスルホン(DDS)、ジシアンジアミド(DICY)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)、ビスアニリン、ベンジルジメチルアニリン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、1分子中に、少なくとも1個の芳香族炭化水素基と、少なくとも2個のアミノ基とを有する芳香族アミン化合物であるのが、得られる本発明の組成物の耐熱性が優れるという理由から好ましく、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミドまたはこれらの混合物であるのが、得られる本発明の組成物を用いた本発明のプリプレグシートのフィレット形成性がより良好となるとともに、該組成物の靱性、延いては該プリプレグシートを用いた本発明の繊維強化複合材料の強度がより良好となる理由からより好ましい。
なお、上記硬化剤の含有量は、(上記硬化剤の活性水素基)/(上記硬化剤中の活性水素基と反応する上記熱硬化性樹脂中の官能基)で表される当量比が、0.5〜0.9となるのが好ましく、0.6〜0.8となるのがより好ましい。
本発明の組成物に用いられる粘度調節用フィラーは、上記熱硬化性樹脂に分散し、粘度上昇効果のある充填剤であって、無定形、針状または球状の粒子である。
このような粘度調節用フィラーとしては、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;硫酸バリウム、塩基性硫酸マグネシウム;ホウ酸アルミニウム;チタン酸カリウム;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム;アルミナ;ウォラストナイト;セピオライト;アタパルジャイト;または;ゾノライトを用いる。
本発明の組成物に用いられる強靭化フィラーは、上記熱硬化性樹脂に分散し、強靭化効果のある充填剤であって、板状の粒子である。
このような強靭化フィラーとしては、マイカを用いる。
ここで、硬化中の最低粘度および100℃での粘度は、それぞれ、昇温速度2℃/分で25℃から200℃まで上昇させながら、粘弾性測定装置(DMA)(例えば、TAインスツルメント社製のRDS−II等)を用い、振動周波数10rad/sで30秒おきに測定した粘度のうちの最低値および100℃での複素粘性率をいう。
ここで、硬化後の破壊靱性値(KIC)は、プリプレグ用樹脂組成物の硬化物からなる樹脂版を用い、ASTMD5045−96に記載の方法に準じて、片側ノッチ付き3点曲げ試験によって測定した破壊靱性値(Mpa・m1/2)をいう。
更に、本発明の繊維強化複合材料は、はく離強度が25(lb−in/3in)以上であるのが好ましい。はく離強度がこの範囲であると、極めて高い強度が要求される工業品、特に、航空機材料として好適に使用し得る。
ここで、はく離強度は、ATSM D1781に準じたクライミングドラムピール(Climbing Drum Peel)試験を行った際のはく離時の強度(lb−in/3in)をいう。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
接着付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
本発明のプリプレグシートは、上述した本発明のプリプレグシート用樹脂組成物を繊維に含浸させることにより得られうるプリプレグシートである。
これらのうち、炭素繊維、アラミド繊維およびガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種であるのが、含浸させる工程が簡便となる理由から好ましい。
また、炭素繊維は、その形態や配列について特に限定されず、例えば、強化繊維を一方向に引き揃えた一方向材、製織した織物、短く裁断した強化繊維からなる不織布、組み紐、トウ、ニット、マット等が挙げられる。炭素繊維の形態や配列は、使用する部位や用途に応じて自由に選択することができる。
含浸させる方法としては、例えば、ウェット法、ホットメルト法等が挙げられる。
また、含浸は、加熱下で行うのが好ましい。
本発明の繊維強化複合材料は、上述した本発明のプリプレグシートを硬化させることにより得られうる繊維強化複合材料である。
繊維強化複合材料1は、図1に示すとおり、プリプレグシート10とハニカムコア11とを接着させて得られるが、蜂の巣状の構造を示すハニカムコアの端部12の一方または両方の端面に本発明の組成物で形成したプリプレグシート10を接合し、両端から圧着しながらオートクレーブ等で加熱硬化させることによって作製される。
これに対して、図2のb部に示されるとおり、本発明のプリプレグシート用樹脂組成物では、フィレット形成性にも優れることから、プリプレグシート10とハニカムコア11との接着が完全に行われ、しかもプリプレグシートからプリプレグシート用樹脂組成物が流出し過ぎて樹脂成分がプリプレグシート中からなくなることなく、プリプレグシートに適量のプリプレグシート用樹脂組成物が存在することができる。したがって、上部フィレット14の適切な形状を維持しながら硬化を完了することができる。また、下面においても、粘度が一度低下したときに表面張力によって下部フィレット14’が形成されプリプレグシート用樹脂組成物が適度に保持されて硬化を完了することができる。
熱硬化性樹脂1として、上記式(2)で表されるトリグリシジル−p−アミノフェノール(MY−0510、ハンツマンアドバンストマテリアル社製)を用いた。
熱硬化性樹脂2として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エピコート806、ジャパンエポキシレジン社製)を用いた。
熱可塑性樹脂1として、住友化学工業社製のポリエーテルスルホン(PES)を用いた。
硬化剤1として、和歌山精化工業社製の3,3′−ジアミノジフェニルスルホン(3,3′−DDS)を用いた。
硬化剤2として、ジシアンジアミド(エピキュアDICY15、ジャパンエポキシレジン社製)を用いた。
粘度調節用フィラー1として、ヒュームドシリカ(エアロジル130、BET比表面積130m2/g、日本エアロジル社製)を用いた。
粘度調節用フィラー2として、表面疎水化処理されたヒュームドシリカ(エアロジル972、BET比表面積110m2/g、日本エアロジル社製)を用いた。
強靭化フィラー1として、マイカ(A−11、粒径5μm、山口雲母工業所製)を用いた。
強靭化フィラー2として、マイカ(A−21、粒径25μm、山口雲母工業所製)を用いた。
強靭化フィラー3として、マイカ(A−41、粒径45μm、山口雲母工業所製)を用いた。
(実施例1、参考例2〜3、実施例4〜9、比較例1〜4)
上記の各成分を、下記第1表に示す組成(質量部)で、かくはん機を用いて混合し、実施例1、参考例2(以下、「実施例2」という。)、参考例3(以下、「実施例3」という。)、実施例4〜9、比較例1〜4のプリプレグシート用樹脂組成物を得た。
得られた各プリプレグシート用樹脂組成物について、硬化中の最低粘度、100℃での粘度および破壊靭性値(KIC)を以下に示す方法で測定した。結果を第1表に示す。
得られた各プリプレグ用樹脂組成物の粘度を昇温速度2℃/分で25℃から200℃まで上昇させながら、粘弾性測定装置(DMA)(TAインスツルメント社製のRDS−II等)を用いて測定し、その最低値を求めた。
最低粘度が、10Pa・s以上であるものをプリプレグ用樹脂組成物を用いたプリプレグシートのフィレット形成性が優れるものと評価した。
得られた各プリプレグ用樹脂組成物の100℃での粘度を粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した。
100℃粘度が、300Pa・s以下であるものをプリプレグ用樹脂組成物の繊維への含浸性が優れるものと評価した。
得られた各プリプレグ用樹脂組成物をプログラムオーブンに入れ、常圧下、昇温速度2℃/分で25℃から180℃まで昇温し、その後、180℃で2時間硬化させて、厚さ7mmの樹脂板を作製し、この樹脂板を用いてASTMD5045−96に記載の方法に準じて、片側ノッチ付き3点曲げ試験によって破壊靱性値(Mpa・m1/2)を測定した。
最低粘度が10Pa・s以上、100℃での粘度が300Pa・s以下であり、破壊靱性値が2.00Mpa・m1/2以上であるものを、プリプレグ用樹脂組成物を用いたプリプレグシートを硬化させた繊維強化複合材料の強度が優れるものと評価した。
各プリプレグシート用樹脂組成物をリバースロールコーターを用いて離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製した。次に、この樹脂フィルム2枚で、シート状に一方向に配列させた炭素繊維(トレカ(登録商標)T−700、引張弾性率230GPa、東レ社製)の両面を挟み込むように重ね合わせた。その後、加熱加圧して炭素繊維に樹脂を含浸させ、炭素繊維の目付量が196±5g/cm2、マトリックス樹脂の質量分率が34%の一方向プリプレグシートを作製した。なお、比較例4では、マトリックス樹脂の質量分率が34%に達せず、光学顕微鏡による観察でも樹脂の含浸不良が確認された。
各プリプレグシート用樹脂組成物の繊維への含浸性は、比較例4で調整したプリプレグ用樹脂組成物以外は、いずれも良好であった。この結果からも、プリプレグ用樹脂組成物の100℃粘度が300Pa・s以下であるものが、繊維への含浸性が優れることが確認できた。
得られた各プリプレグシートを、昭和飛行機社製のノーメックスハニカムコアの蜂の巣状の模様を呈する両方の断面と接合させ、バキュームバック法でプレアッシーした後、オートクレーブで昇温速度2℃/分、成形圧力3kg/cm2で180℃まで昇温し、その後180℃で2時間硬化させて、ハニカムコアサンドイッチパネルを作製した。なお、比較例4で調整したプリプレグシート用樹脂組成物は含浸性が不十分であったため、ハニカムコアサンドイッチパネルは作製しなかった。
得られたハニカムコアサンドイッチパネルをハニカムコアの角柱に平行に切断し、ハニカムコアの両端上下に形成するフィレットを目視により確認したところ、比較例3および実施例1〜9で調整したプリプレグシート用樹脂組成物を用いて作製したプリプレグシートを使用した場合は、いずれも400μm以上のフィレットが形成されており、フィレット形成性は良好であった。この結果からも、プリプレグ用樹脂組成物の最低粘度が10Pa・s以上であるものが、プリプレグシートのフィレット形成性が優れることが確認できた。
その結果、実施例1〜9で調整したプリプレグシート用樹脂組成物を用いて作製したプリプレグシートを使用したハニカムコアサンドイッチパネルは、はく離強度が25(lb−in/3in)以上となり、極めて高い強度が要求される工業品、特に、航空機材料としての応用に適することができることが分かった。この結果からも、本発明の繊維強化複合材料の強度が優れることが確認できた。
10 プリプレグシート
11 ハニカムコア
12 端部
13 上面部
13’下面部
14 上部フィレット
14’下部フィレット
a 従来のマトリックス樹脂で形成したプリプレグを用いた構造体
b 本発明の組成物をマトリックス樹脂としたプリプレグを用いた構造体
c セルサイズ
Claims (12)
- 熱硬化性樹脂と、熱可塑性樹脂と、硬化剤と、粘度調節用フィラーと、強靭化フィラーとを含有し、
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂であり、
前記粘度調節用フィラーが、BET法で測定する比表面積が90m 2 /g以上の無定形、針状または球状の粒子であり、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、ケイソウ土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー、カーボンブラック、硫酸バリウム、塩基性硫酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、ウォラストナイト、セピオライト、アタパルジャイト、および、ゾノライトからなる群から選択され、
前記強靭化フィラーが、板状の粒子であるマイカであり、
前記強靭化フィラーの粒子径が、20〜30μmであり、
硬化中の最低粘度が10〜150Pa・sとなり、100℃での粘度が300Pa・s以下となる、プリプレグシート用樹脂組成物。 - 前記熱可塑性樹脂が、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドおよびポリスルホンからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1に記載のプリプレグシート用樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂の含有量が、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して30〜50質量部である請求項1または2に記載のプリプレグシート用樹脂組成物。
- 前記硬化剤が、ジアミノジフェニルスルホンおよび/またはジシアンジアミドを含有する請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグシート用樹脂組成物。
- 前記硬化剤の含有量が、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して25〜45質量部である請求項1〜4のいずれかに記載のプリプレグシート用樹脂組成物。
- 前記粘度調節用フィラーが、ヒュームドシリカである請求項1〜5のいずれかに記載のプリプレグシート用樹脂組成物。
- 前記粘度調節用フィラーが、表面疎水化処理されたヒュームドシリカである請求項6に記載のプリプレグシート用樹脂組成物。
- 前記粘度調節用フィラーの含有量が、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部である請求項1〜7のいずれかに記載のプリプレグシート用樹脂組成物。
- 前記強靭化フィラーの含有量が、前記熱硬化性樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部である請求項1〜8のいずれかに記載のプリプレグシート用樹脂組成物。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のプリプレグシート用樹脂組成物を繊維に含浸させることにより得られうるプリプレグシート。
- 前記繊維が、炭素繊維、アラミド繊維およびガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種である請求項10に記載のプリプレグシート。
- 請求項10または11に記載のプリプレグシートを硬化させることにより得られうる繊維強化複合材料。
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