以下、本発明に係る動作板付き時計の具体的な実施の形態であって腕に装着されるもの、すなわち腕時計について、図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明に係る動作板付き時計の一実施形態である腕時計における、時計本体のケース内に収容されたからくり動作基本機構部100と、時計指針を駆動する時計機能部200とを示す分解斜視図である。
図示の動作板付き時計の時計機能部200は、図2の概略断面図に示すように、輪列機構220を含むムーブメント210(筒車222を含む)と、ムーブメント210による時計指針を駆動する機能によって図示しない指針が指示する数字・文字等が表示された、円環状に形成された外側文字板290と、その外側文字板290の内径と同等か又はそれよりも大きく、かつ外側文字板290の外径よりも小さい直径で、外側文字板290よりもムーブメント210に近い位置に、かつ外側文字板290と同心に配設された内側文字板280とを備えた構成である。
一方、動作板の動作基本機構部100は、基台プレート10の文字板280,290側に、輪列機構220に連動して回転駆動される、カム30を有するカム機構と、カム30の外周輪郭31に対応してその先端面42a(図3)が従動する従動部42を有する、カム30の回転駆動に伴って軸41回りに揺動するカムレバー40を含むレバー機構と、時計の厚さ方向(文字板280,290の面に直交する方向)の互いに異なる位置に設けられた2枚の文字板280,290の間の厚さ方向位置に配設され、レバー機構の揺動動作のうち、カム30の回転中心C1から外周輪郭31まで距離(半径)Rが最大Rmax(図4)から最小Rminに変化する下降傾斜部32(下降傾斜面)に対応する動作に連動して、外側文字板290の下(背面側)に隠された非露出位置と外側文字板290の内径よりも内側に突出して内側文字板280上に露出した露出位置との間で直線往復動作する一組の装飾板90,95(動作板)と、を備えている。
外側文字板290と内側文字板280とは同一色で形成され、装飾板90,95には、文字板280,290とは異なる色や、文字・記号や絵・写真・模様等が付されている。
カム機構は、カム30だけでなく、カム30を支持する要素、例えばカム座20なども含む。なお、カム機構が、輪列機構220に連動するには、カム機構と輪列機構220とが直接連結されていてもよいし、輪列機構220の動作に同期する他の動作部分を介して、輪列機構220の動作と同期して駆動されてもよい。
本実施形態においては、カム機構は、時計指針を駆動する輪列機構220のうち60分間で1回転する分針車221に、その中心21が固定されて、分針車221と一体的に回転するカム座20(図4参照)を備え、カム30は、カム座20の回転中心C1回りに回転するように、カム座20に重ねられ、かつカム座20と同軸に軸支されている。
カム座20には、図4,5(a)に示すように、円弧帯状に延び、自由端部に突起23を備えた腕部22が形成されており、分針車221が図示時計回りへの本来の運針動作で回転すると、図5(b)に示すように、突起23の先端面23aが、カム30に形成された柱状受け部34を押圧して、カム30を図示時計回り方向(特定の回転方向)に回転させる。
一方、輪列機構220の時刻分針合わせなどのために、分針車221が、図6(a)に示すように、本来の運針動作とは反対の反時計回りに回転されると、カム30は回らずにカム座20だけが回るため、突起23の先端面23aの背面23bが、図6(b)に示すように、柱状受け部34に当接するが、この背面23bは、外側に向いた傾斜面として形成されているため、柱状受け部34からの、回転中心C1方向の分力を有する荷重を受け、円弧帯状の腕部22が、図6(c)に示すように、回転中心C1方向に弾性変形し、この結果、背面23bが柱状受け部34から逃げ、カム30はカム座20に対して空回りし、カム30が反時計方向に必要以上に回転されるのを防止している。つまり、柱状受け部34と円弧帯状の腕部22の先端の突起23の背面23bは、カム30の逆回転防止構造を構成している。
なお、カム30の外周輪郭31のうち下降傾斜部32を除いた部分は、図4に示すように、下降傾斜部32における傾斜角度よりも緩やかな傾斜角度で上昇傾斜する範囲(回転中心C1からの距離がRminからRmaxに至る範囲)として形成されているが、この上昇傾斜の範囲にカムレバー40の従動部42が当接しているとき、カム30には、カム30を反時計回りに回転させる分力が作用している。
このため、上述した逆回転防止機構は、カム30がカム座20に連れ回って逆回転するのを防止するが、カム30が従動部42から受ける荷重によって逆回転するのを完全に防止するものではない。しかし、従動部42がカム30の下降傾斜部32に位置する範囲では、上述したカム座20に連れ回って逆回転するのを防止する逆回転防止機構が作動するため、カム30の僅かな逆回転によって従動部42がカム30の下降傾斜部32に突き当たるのを防止することができる。
また、カム30の下降傾斜部32には、カム30の回転角度θの範囲で、回転中心C1からの距離が略一定のRmid(Rmin<Rmid<Rmax)となる段付き部33(図4)が形成され、下降傾斜部32のうち、回転中心C1から見て段付き部33よりも外側の範囲32a(第1下降傾斜面;回転中心C1からの距離がRmaxからRmidに至る範囲)は、装飾板90,95の往復動作のうち往動作(非露出位置から露出位置に至る動作)に対応し、回転中心C1から見て段付き部33よりも内側の範囲32b(第2下降傾斜面;回転中心C1からの距離がRmidからRminに至る範囲)は、装飾板90,95の往復動作のうち復動作(露出位置から非露出位置に至る動作)に対応している。
本実施形態では、第1下降傾斜面も第2下降傾斜面も中心から放射状に延びる線上にあるので、θは段付き部33の角度であるとともに、下降傾斜部32の角度でもある。
レバー機構には、カム30の外周輪郭31に直接当接する、図7に示したカムレバー40の他に、このカムレバー40を支持する要素、例えばカムレバー40をカム30側に付勢する押しバネ49(駆動バネ)や、このカムレバー40に連動する一組の作動レバー60,70や、これらの各作動レバー60,70にさらに連動する一組の装飾板座80,85(動作板支持部材)および押え板15を含む。
詳細には、図8,9,10の平面図に示すように、レバー機構は、カムレバー40と、カムレバー40に連結されてカムレバー40の軸41回りの往復揺動動作のうち一方の向きへの揺動動作に対応して往復揺動するとともに、カムレバー40の反対向きへの揺動動作に対応して変位しない作動レバー60と、作動レバー60に連結されて、作動レバー60の軸61回りの往復揺動動作に対応して往復直線変位する装飾板座80とを備え、装飾板90は装飾板座80にビス88により固定されている。
装飾板座80には、作動レバー60に形成された長孔64に挿入されて、この長孔64の長手方向に沿って可動する突起81と、基台プレート10に形成された長孔12に挿入されて、この長孔12の長手方向に沿って可動する突起82,83とが形成されており、これら、長孔64,12および突起81,82,83の協動により、装飾板座80は、作動レバー60の軸61回りの往復揺動動作に対応し、長孔12に沿って往復直線変位する。
作動レバー60の、装飾板座80が連結されている側に対して軸61を挟んだ反対側の端部は、連結ピン78により、作動レバー60と略対称形状の作動レバー70が連結されている。
この作動レバー70は、連結ピン78を挟んで軸61に対して略軸対称(線対称)の位置に形成された軸71回りに揺動自在であり、一方の作動レバー60の揺動動作に対して軸対称の揺動動作を行う。
そして、この作動レバー70には、装飾板座80と略対称形状の装飾板座85が、作動レバー60に対する装飾板座80と同様に連結され、装飾板座85は、作動レバー70の軸71回りの往復揺動動作に対応し、基台プレート10に形成された長孔13に沿って往復直線変位し、その変位の向きは、装飾板座80の往復直線変位の向きと反対向きである。
また、この装飾板座85に、装飾板90と略対称形状の装飾板95が固定されている。これにより、2つの装飾板90,95は、文字板280,290の面と平行に、かつ軸対称に動作する。
レバー機構は、カム30の外周輪郭31のうち、下降傾斜部32における傾斜角度よりも緩やかな傾斜角度で上昇傾斜する範囲(回転中心C1からの距離がRminからRmaxに至る範囲)では、装飾板90,95を停止状態に維持している。
具体的には、図7に示すように、カムレバー40の揺動自由端側に、軸41(揺動中心)からの半径が略一定となる略円弧状の不作動案内溝46(不作動案内路)と、不作動案内溝46の各端部にそれぞれの一端部が連通し、それぞれの他端部同士が連通した2つの作動案内溝44,45(作動案内路)とにより、略三角形辺縁状の循環案内溝43(循環案内路)が形成され、作動レバー60には、図9に示すように循環案内溝43に挿入されてカムレバー40の往復揺動動作により循環案内溝43に沿って図7の反時計回り(一循環方向)にのみ案内される案内素子62が備えられている。
この案内素子62は、幅L1のピン62aと、このピン62aの外側を覆う幅L3(>L1)のボス部62bとによって構成されている。
循環案内溝43は、図7に示すように、第1案内溝44a,45a,46a(第1案内路)と、第1案内溝44a,45a,46aの底壁(底面)44d,45d,46dに、第1案内溝44a,45a,46aの幅L4(>L3)よりも狭く、ピン62aの幅L1よりも広い幅L2(<L3)の第2案内溝44b,45b,46b(第2案内路)とを有し、第1案内溝44a,45a,46aは、案内素子62を略三角形辺縁状の形状に沿って導く案内溝であり、第2案内溝44b,45b,46bは、案内素子62が循環案内溝43を、一循環方向とは反対に逆送するのを防止する案内溝である。
これらの第2案内溝45b,46bには、反時計回りの、作動案内溝45から不作動案内溝46に移行する不作動案内溝46の端部において、より深くなる段差が形成され、かつ不作動案内溝46から作動案内溝44に移行する作動案内溝44の端部において、より深くなる段差が形成されている。
また、第2案内溝の底面45e,46eは、図7と図11に示すように、反時計回りに上述した2つの端部に向かって、第1案内溝45a,46aの底面45d,46dと同一面となるように斜面部45c,46cがそれぞれ形成されている。
そして、図11に示すように、案内素子62のボス部62bが、第1案内溝44a,45a,46aに挿入されて第1案内溝44a,45a,46aに案内されるとともに、板バネ63の付勢力によってピン62aが、ボス部62bの底面から突出して第2案内溝44b,45b,46bに挿入され、ピン62aが上述した段差に落ち込むことによって、案内素子62は循環案内溝43を逆送されずに一循環方向にのみ回転するようになっている。
また、不作動案内溝46と作動案内溝44との接続部近傍において、作動レバー60がふらつくのを防止する変位規制部材(変位規制手段)が設けられている。
この変位規制部材は、具体的には図11に示すように、不作動案内溝46と作動案内溝44との接続部近傍において、第2案内溝46bの底面46eが第1案内溝46aの底面46dと同一面上となることで、作動レバー60の上面から突出したピン62a(突起)と、図11,12に示す基台プレート10(時計の基部)から延びて、突出したピン62aに係合する孔11aが形成された片状部材11とからなる。
この変位規制部材11は、本実施形態では、ボス部62bを貫通して、ボス部62bの底面とは反対側の面(頂面)から突出させたピン62aの外周面を囲む孔11aを備えた片状部材11とすればよく、基台プレート10以外の時計の不動部に設けてもよい。
次に、本実施形態の動作板付き時計の作用について、図8〜10を参照して説明する。
まず、カム座20は分針車221に固定されているため、カム座20は分針車221と同期して、60分間で、時計回りに等角速度で1回転する。
ここで、図4により説明したように、カム座20の腕部22の先端に形成された突起23の先端面23aが、カム30に形成された柱状受け部34を押圧することで、カム30もカム座20とともに、時計回りに等角速度で回転する。
カムレバー40は、押しバネ49によって、その従動部42の先端面42aがカム30の外周輪郭31に当接するように付勢されているため、カム30の回転にしたがって、軸41回りに揺動し、カム30が1回転する60分間に1往復揺動する。
図8に示すように、カムレバー40の従動部42の先端面42aが、カム30の外周輪郭31の、回転中心C1から最も遠い部分に当接しているとき、作動レバー60のボス部62bは、不作動案内溝46と作動案内溝44との接続部に位置し、ボス部62bがこの位置にあるときの作動レバー60,70の姿勢においては、装飾板座80,85は、長孔12,12に沿った可動範囲のうち最外側に位置し、装飾板座80,85に固定された装飾板90,95は、その全体が、外側文字板290に完全に隠蔽された非露出位置にある。
なお、カムレバー40の従動部42の先端面42aが、カム30の外周輪郭31の最大半径Rmaxに達した時点で、板バネ63に付勢された作動レバー60のピン62aが、不作動案内溝46から作動案内溝44の第2案内溝44b(第2案内溝46bの底面46e→斜面部46c→第1案内溝46aの底面46d→作動案内溝44の第2案内溝44bの底面44e)に落とし込まれており、これによって、カムレバー40の従動部42の先端面42aが、図9に示した下降傾斜部32aと下降傾斜部32bとの間に形成された段付き部33まで変位するときには、案内素子62は作動案内溝44を進むしかなく、不作動案内溝46を逆送されることがない。
図9に示すように、カムレバー40の従動部42の先端面42aが、カム30の下降傾斜部32aを落下変位することで、ピン62aは作動案内溝44の第2案内溝44bに沿って、循環案内溝43を反時計回りに変位する。
このボス部62bおよびピン62aの変位により、作動レバー60は軸61回りに、作動レバー70は軸71回りに、それぞれ揺動する。
作動レバー60,70のこの揺動動作により、作動レバー60,70にそれぞれ連結された装飾板座80,85が、長孔12,13に沿って内側方向にそれぞれ直線変位し、これによって、各装飾板座80,85にそれぞれ固定された装飾板90,95が、対応する装飾板座80,85と一体的に直線変位し、外側文字板290からそれぞれ突出し、露出する。
そして、カムレバー40の従動部42の先端面42aがカム30の段付き部33に落下すると、作動レバー60のボス部62bおよびピン62aは、循環案内溝43の作動案内溝44と作動案内溝45との接続部に達し、このとき、両装飾板90,95は外側文字板290からそれぞれ最も突出した位置となり、完全に露出する。
段付き部33は、カム30の回転角度θだけ連続しているため、カムレバー40の従動部42の先端面42aがこの段付き部33に当接している期間中、すなわちカム30の回転角度θに対応した時間(=60[分間]×θ[度]/360[度];例えばθ=6[度]のとき、1[分間])は、カムレバー40は揺動せず、したがって、装飾板90,95も完全に露出した状態を維持する。このため、段付き部33は、メカ的タイマーの機能を果たしている。
カムレバー40の従動部42の先端面42aが、カム30の外周輪郭31の段付き部33に当接しているとき、案内素子62は、作動案内溝44と作動案内溝45との接続部分に位置する。
カムレバー40の従動部42の先端面42aが、カム30の外周輪郭31の段付き部33から落下変位すると、カムレバー40の変位方向との対応関係から、案内素子62は、作動案内溝45を進み、作動案内溝44を逆送することはない。カムレバー40は、その従動部42の先端面42aがカム30の下降傾斜部32bを落下変位することで、軸41を中心として図示の反時計回りに揺動する。
この従動部42の落下変位の間に、作動レバー60のボス部62bは作動案内溝45の第1案内溝45aに沿って、かつ板バネ63に付勢されたピン62aは作動案内溝45の第2案内溝45b(第2案内溝45bの底面45e→斜面部45c→第1案内溝45aの底面45d→不作動案内溝46の第2案内溝46bの底面46e)に沿って、循環案内溝43を反時計回りに変位する。
そして、このボス部62bおよびピン62aの変位により、作動レバー60は軸61回りに、作動レバー70は軸71回りに、それぞれ揺動する。
作動レバー60,70のこの揺動動作により、作動レバー60,70にそれぞれ連結された装飾板座80,85が、長孔12,13に沿って外側方向にそれぞれ直線変位し、これによって、各装飾板座80,85にそれぞれ固定された装飾板90,95が、対応する装飾板座80,85と一体的に直線変位し、外側文字板290の背面の非露出位置に瞬時に変位して隠蔽される。
なお、カム30が、図10に示した回転角度まで回転する直前、すなわちカムレバー40の従動部42の先端面42aが、カム30の外周輪郭31の、回転中心C1から最も近い部分(最小半径Rmin)に当接する直前に、板バネ63に付勢された作動レバー60のピン62aが、作動案内溝45から不作動案内溝46の第2案内溝46b(第2案内溝45bの底面45e→斜面部45c→第1案内溝45aの底面45d→不作動案内溝46の第2案内溝46bの底面46e)に落とし込まれ、これによって、カムレバー40の従動部42の先端面42aが、図10に示したカム30の外周輪郭31の最小半径Rminに落下変位した時点では、案内素子62は不作動案内溝46を進むしかない、作動案内溝45を逆送されることのない状態となる。
その後、カム30がさらに回転して、カムレバー40の従動部42の先端面42aが、カム30の外周輪郭31の上昇傾斜する範囲に当接すると、カムレバー40は、下降傾斜部32に対応して従動していたときとは反対向き(図示時計回り)に、軸41回りに揺動する。
次に、カム30が、図10に示した回転角度位置から図8に示した回転角度位置まで回転する間に、カムレバー40の従動部42の先端面42aは、カム30の外周輪郭31の上昇傾斜範囲に当接し、カム30の回転にしたがって、先端面42aが当接する部分の外周輪郭31の半径が徐々に大きくなり(Rmin→Rmax)、これにより、カムレバー40は、一往復揺動の復動作方向にゆっくり揺動する。
ここで、カムレバー40の不作動案内溝46は、その全長に亘って、カムレバー40の揺動中心である軸41からの距離が略一定であるため、カムレバー40が軸41回りに揺動しても、不作動案内溝46に位置するボス部62bおよびピン62aは、不作動案内溝46に沿った方向にのみ相対的に変位するが、作動レバー60を揺動変位させることがない。
詳しくは、作動レバー60のボス部62bは不作動案内溝46の第1案内溝46aに沿って、かつ板バネ63に付勢されたピン62aは不作動案内溝46の第2案内溝46b(第2案内溝の底面46e→斜面部46c→第1案内溝46aの底面46d)に沿って、循環案内溝43を、相対的に、反時計回りに変位する。
したがって、作動レバー60,70、装飾板座80,85および装飾板90,95は変位せず、装飾板90,95は非露出位置を維持する。
この結果、カム30の外周輪郭31のうち、下降傾斜部32および段付き部33を除いた大部分を占める上昇傾斜する範囲に対応する時間内は、装飾板90,95は隠蔽されたままであり、装飾板90,95は、60分間のうち下降傾斜部32aに対応して瞬時に突出し、段付き部33に対応する時間(例えば、1分間)だけ突出した露出状態を維持し、その後、下降傾斜部32bに対応して瞬時に隠蔽される。
以上の動作により、図8に示した状態に戻り、以下、上述した動作を繰り返す。これにより、例えば1時間のうち、略59分間については、図13(a)に示すように、装飾板90,95は外側文字板290に隠れて外部から見えない状態を維持しつつ装飾板90,95を動作させるためのエネルギを蓄え、残りの略1分間だけ、図13(b)に示すように、この蓄えられたエネルギによって装飾板90,95が外側文字板290から突出して外部から見える状態となり、その後、図13(c)に示すように、装飾板90,95は外側文字板290に隠れた状態となり、このような装飾板90,95の動作により、からくり時計としての機能を発揮する。
そして、カム機構を用いたことにより、輪列機構220による定速回転を利用しつつ、エネルギの蓄積期間とエネルギの解放期間との割合を任意に設定することができる。
また、レバー機構として、カムレバー40と作動レバー60との連結機構を用いたことにより、変位向きの変換と変位量の拡大とを実現することができる。
このように、本実施形態に係る動作板付き時計によれば、レバー機構の従動部42がカム30の外周輪郭31に当接しているため、カム30の回転動作に伴ってレバー機構は揺動するが、レバー機構の揺動動作のうち、カム30の回転中心C1から外周輪郭31までの距離(カム30の動作半径)が最大から最小に変化する下降傾斜部32に対応する動作に連動して、装飾板90,95を、外部に露出する露出位置と隠蔽される非露出位置との間で往復動作させることができ、簡単な構成で、かつ小型のからくり動作基本機構部100を有する動作板付き時計を実現することができる。
なお、装飾板90,95の動作機構部100は、基台プレート10上に上述したカム機構やレバー機構および装飾板90,95が配設されて、一体的なユニットとして構成されているため、既存のムーブメント210に文字板280,290を加えた時計機能部200に、このユニット化されたからくり動作機構部100を組み合わせることで、動作板付き時計を簡単に構成することができる。
また、本実施形態に係る動作板付き時計によれば、カム機構は、時計指針を駆動する輪列機構220に連動する構成であり、輪列機構220を駆動する駆動源とは別異の駆動源をさらに設ける必要がないため、腕時計の、非常に小さな筐体の内部に、からくり動作機構部100を収容することができる。
さらに、本実施形態に係る動作板付き時計によれば、レバー機構の上述した連結機構により、カム30の外周輪郭31の上昇傾斜範囲では、装飾板90,95を停止状態に維持するため、カム30の1回転の間に、装飾板90,95は、カム30の急激な下降傾斜部32で僅かな時間内に1回往復動作するだけであり、動作機構への関心を惹起することもできる。
また、本実施形態に係る動作板付き時計によれば、カム30の外周輪郭31の下降傾斜部32では、装飾板90,95は往復動するが、段付き部33の前後で装飾板90,95の往復動作向きが切り替えられるため、段付き部33の範囲の長さ(回転角度θ)を調整することで、平時における装飾板90,95の非露出状態から変化した、装飾板90,95の露出状態を維持する時間を短縮・延長して調整することができる。
本実施形態に係る動作板付き時計によれば、カム30は分針車221に固定されているため、60分間で1回転する。したがって、例えば毎正時(00分)に1回、装飾板90,95を往復動させることができ、掛け時計や置き時計等における一般的なからくり時計と同様の時間間隔で、露出・非露出の変化の趣向を提供することができる。
なお、カム機構は分針車221に固定されているものに限定されるものではなく、分針車221と同期して回転するものであればよい。
ここで、「分針車221に同期して回転する」とは、分針車221の駆動ステップと1対1に対応した駆動で回転することのみを意味するものではなく、分針車221の1回転に対してカム機構の1回転が対応していることなども含む意味である。したがって、カム機構が分針車221に直接連結されているものに限らず、分針車221との間に適当な輪列が介されているものも含む。
また、カム機構が得る駆動力は、分針車221から直接得るものでなくてもよく、カム機構の動作が結果的に分針車221の動作と対応するものであれば、分針車221とカム機構とが共通の輪列機構220から駆動力を得るものであってもよい。したがって、装飾板90,95の往復動作間隔は、分針車221の1回転(すなわち1時間)に1回に動作するものに限らず、2時間に1回、3時間に1回、6時間に1回等、分針車221の回転数に対応して適宜設定できるものであってもよいし、より短い時間間隔の、例えば30分間に1回の割合であってもよい。
本実施形態に係る動作板付き時計によれば、装飾板90,95が、外側文字板290によって隠蔽された位置(非露出位置)から露出した位置(露出位置)に突出することにより、文字・記号や絵・写真・模様等が表示された装飾板90,95が現れて、見た目の劇的な変化を演出することができ、装飾板90,95に、文字板とは異なる色を付したり、文字・記号や絵・写真・模様等を付することで、種々の変化を用意することができる。
もちろん、装飾板90,95自体の輪郭形状を、上述した実施形態のものとは異なる形状としたり、この装飾板90,95に、その他の装飾部材をさらに連結した構成を採用することもできる。
さらに、本実施形態に係る動作板付き時計によれば、2つの装飾板90,95が対称に同時に動作することにより、露出状態から非露出状態への変化、または非露出状態から露出状態への変化を、よりダイナミックな視覚的効果として演出することができる。
また、本実施形態に係る動作板付き時計によれば、指針時刻の修正動作によって、分針車221が正規の運針動作とは逆向き(反時計回り)に回転されても、カム30は反対向きに回転することはないため、カム30が反対向きに回転したと仮定したときに生じる問題、すなわち、カム30が反対向きに回転したとき、カム30の外周輪郭31に当接するカムレバー40の従動部42が、本来は落下すべき下降傾斜部32を上る方向となるため、この下降傾斜部32に従動部42が衝突して動かなくなったり、破損する、という問題を、回避することができる。
また、本実施形態に係る動作板付き時計によれば、カムレバー40の従動部42がカム30の外周輪郭31に当接しているため、従動部42がカム30の外周輪郭31の下降傾斜部32に従動している状態と、従動部42がカム30の上昇傾斜範囲に当接している状態とで、カムレバー40は互いに反対向きの揺動動作(一往復の揺動動作)を行う。
ここで、作動レバー60,70は、カムレバー40の往復揺動動作のうち、一方の向きへの揺動動作の期間中に往復揺動動作を完了し、反対向きへの揺動動作の期間中には変位しないため、カムレバー40の従動部42がカム30の下降傾斜部32に従動している期間中だけで、作動レバー60,70に連結された装飾板座80,85の往復直線変位(装飾板90,95の対応する動作として、非露出位置から露出位置に変位させ、さらに露出位置から非露出位置に戻す動作)を完結することができる。
すなわち、装飾板90,95の動作を完結させるために、カム30が1周(カム30の回転中心回りの角度として360度、時間換算で60分間)回転するのを待つことなく、カム30に下降傾斜部32が形成されている狭い角度範囲(カム30の回転中心回りの角度範囲)だけで装飾板90,95の動作を完結させることができる。
このことは、装飾板90,95の動作周期と装飾板90,95の動作完結必要時間との組合せの自由度を高める効果がある。
つまり、カム30は、時計指針を駆動する輪列機構220に連動して回転駆動されているため、角速度一定で回転し、カム30が1周する時間は予め規定されている。このため、装飾板90,95の動作間隔は、このカム30が1回転するのに要する時間ということができる。
なお、装飾板90,95の動作周期(一往復動作に要する時間)は、上述した下降傾斜部32が形成されたカム30の回転角度θによって規定されており、この回転角度θを非常に小さく設定し、あるいは負の値に設定したときは、従動部42の先端面42aは下降傾斜部32に沿わずに落下する従動となるため、装飾板90,95の一往復動作は極短時間の内に完了するが、下降傾斜部32の傾斜角度を緩和して、回転角度θをある程度大きく設定したときは、従動部42の先端面42aは下降傾斜部32に当接した従動となるため、装飾板90,95の一往復動作を長くすることができる。
本実施形態では、カム30が分針車221に連動しているため、カム30は60分間で1回転し、装飾板90,95は60分間に1回の割合で往復動作する。一方、カム30に形成する下降傾斜部32の角度範囲は、数度程度から数十度までの範囲で任意に設定可能であり、下降傾斜部32の角度範囲を6度に設定すれば、6[度]/360[度]=1[min]/60[min]であるから、1分間で装飾板90,95の動作を完結させることができ、12度に設定すれば、12[度]/360[度]=2[min]/60[min]であるから、2分間で装飾板90,95の動作を完結させることができる。
これに対して、上述した実施形態とは異なり、単に、作動レバーの一方の向きへの揺動動作を、カムレバーの一方の向きへの揺動動作に対応させ、作動レバーの他方の向きへの揺動動作を、カムレバーの他方の向きへの揺動動作に対応させただけでは、カム30の1回転と装飾板90,95の往復動作を完結させることとが一致するため、装飾板90,95の動作周期と動作完結必要時間とが一致し、上述した組合せの自由度を得ることはできない。
また、カムに、下降傾斜部32と同様の狭い角度範囲の上昇傾斜範囲を形成すれば、下降傾斜部32と上昇傾斜範囲との合計角度範囲で、装飾板90,95の動作完結必要時間を、動作周期よりも短い時間に設定することも可能ではあるが、カム30の上昇傾斜範囲では、カム30の外周輪郭31と従動部42との間の上りの傾斜角に制約があるため、必ずしも所望とする狭い角度範囲に上昇傾斜範囲を形成することはできない。
したがって、本実施形態の動作板付き時計によれば、装飾板90,95の動作周期と動作完結必要時間との組合せの自由度を、顕著に高めることができる。
また、本実施形態に係る動作板付き時計によれば、作動レバー60の案内素子62は循環案内溝43に突入した状態で、カムレバー40の揺動動作にしたがって、循環案内溝43に沿って一循環方向にのみ案内されるが、案内素子62が不作動案内溝46に在る状態では、カムレバー40が揺動動作しても、不作動案内溝46は、このカムレバー40の軸41回りの所定の円弧上を移動するだけであるため、案内素子62を変位させることがない。
一方、案内素子62が、2つの作動案内溝44,45のうち一方の作動案内溝44(または45)に在る状態では、カムレバー40が揺動動作すると、案内素子62を一方の向きに変位させ、他方の作動案内溝45(または44)に在る状態では、カムレバー40が揺動動作すると、案内素子62を他方の向きに変位させる。
したがって、カムレバー40の従動部42が、カム30の下降傾斜部32および段付き部33を除いた範囲(上昇傾斜範囲)に当接している期間中は、案内素子62が不作動案内溝46に在るように、カム30とカムレバー40と作動レバー60との位置関係を設定し、一方、カムレバー40の従動部42が、カム30の下降傾斜部32または段付き部33に従動している期間中に、案内素子62が2つの作動案内溝44,45を通過するように、カム30とカムレバー40と作動レバー60との位置関係を設定しておくことにより、カム30の下降傾斜部32だけで、装飾板90,95を往復直線変位させることができる。
また、本実施形態に係る動作板付き時計によれば、作動レバー60のボス部62bが、第1案内溝44a,45a,46aに挿入されて、この第1案内溝44a,45a,46aに案内され、この結果、作動レバー60は、カムレバー40の略三角形辺縁状の循環案内溝43に沿って変位する。
また、ピン62aが、板バネ63によってボス部62bの底面から突出して第2案内溝44b,45b,46bに沿って案内されるが、第2案内溝44b,46bは、不作動案内溝46と作動案内溝44,45との2つの接続部、すなわち作動案内溝44の端部と不作動案内溝46の端部とにおいて、より深い段差を以て形成されているため、ピン62aは板バネ63の付勢力によってこの第2案内溝44b,46bの底面44e,46eまで落とし込まれ、これによって、ピン62aが当該案内溝44,46から元の案内溝46,45に戻るのを防止し、したがって、案内素子62の案内方向を、循環案内溝43に沿って反時計回りの一循環方向にのみ限定することができる。
さらに、不作動案内溝46と作動案内溝44との接続部近傍の第1案内溝46aにおいて、第1案内溝46aの内周側の側壁が欠落しているため、ボス部62bが、この接続部近傍でふらつきやすくなるが、本実施形態に係る動作板付き時計は、作動レバー60の上面から突出したピン62aに、基台プレート10(時計の基部)から延びた片状部材11の孔11aが係合して、ピン62aの可動範囲を規制するため、作動レバー60のふらつきを防止することができる。
これにより、作動レバー60のふらついたときに生じる、外側文字板290に隠蔽された状態の装飾板90,95が微動しつつ、その一部が外側文字板290から露出するのを、防止することができる。
また、本実施形態に係る動作板付き時計によれば、2つの作動レバー60,70が互いに連結されて、かつ略対称に配置されていることにより、この時計を立てたときに重力によって生じる両装飾板90,95の高さの差を打ち消したり、また、衝撃時に装飾板90,95からの入力荷重を打ち消すなど、両作動レバー60,70の負荷の一部を打ち消すことができる。
(変形例1)
上述した実施形態1は、装飾板90,95が時計の厚さ方向の互いに異なる位置に設けられた2枚の文字板280,290の間の厚さ方向位置に配設され、装飾板90,95自体が外側文字板290から露出した位置を露出位置と定義し、装飾板90,95自体が外側文字板290に隠蔽された位置を非露出位置と定義した実施形態であるが、本発明に係る動作板付き時計は、この定義のものに限定されるものではなく、装飾板90,95自体が、露出、非露出の対象となるのではなく、図14に示すように、装飾板90,95が隠蔽している内側文字板280の一部領域を、露出、非露出の対象とするものであってもよい。
すなわち、図14は、装飾板90,95が、内側文字板280の側方領域281,282を覆う閉成位置と、側方領域281,282を開いた開放位置との間を往復動作する形態の変形例1を示す外観模式図である。
この変形例1の動作板付き時計は、装飾板90,95は、内側文字板280と、時計の厚さ方向に同一に配置され、装飾板90,95は、内側文字板280の側方領域281,282の下方表示された内容を覆う閉成位置と、側方領域281,282を開いた位置に移動して側方領域281,282に表示する内容を露出させる開放位置との間を往復動作するように構成されたものであり、この側方領域281,282には、文字・記号や絵・写真・模様(・人形)等の装飾体を設けてある。
このように構成された変形例1の動作板付き時計によれば、例えば1時間のうち、略59分間については、図14(a)に示すように、装飾板90,95は内側文字板280の側方領域281,282を外部から見えない状態に維持し、その後の略1分間だけ、図14(b)に示すように、装飾板90,95が側方領域281,282から内側文字板280の外側に移動して、側方領域281,282に表示された内容を外部から見える状態とし、その後、図14(c)に示すように、装飾板90,95が側方領域281,282を隠す状態となり、このような装飾板90,95の動作により、からくり時計としての機能を発揮する。
なお、この形態の動作板付き時計では、外側文字板290を備えないものであってもよい。特に、装飾板90,95自体が、内側文字板280と同一色、同一模様に形成されているものでは、装飾板90,95は周囲の領域と色や模様が一致しているため、開放位置であっても、見る者に違和感を与えることは少ないからである。
この変形例1の動作板付き時計の他の構成部分は、実施形態1の対応する構成部分と同じであり、詳しく述べるなら装飾板90,95の動作方向が逆になるので、前述の循環案内溝43を反転させ、これにより、変形例1の動作板付き時計は、実施形態1と同じ作動と効果を発揮する。
(変形例2)
実施形態1は、第2案内溝44b,45b,46bが、第1案内溝44a,45a,46aの底壁44d,45d,46dに、第1案内溝44a,45a,46aよりも幅が狭い溝によって形成され、案内素子62は、第1案内溝44a,45a,46aに係合するボス部62bと、第2案内溝44b,45b,46bに係合し、第2案内溝44b,45b,46bの底部方向に付勢されたピン62aとからなり、ピン62aが、段差に落ち込むことによって、案内素子62が循環案内溝43を逆送されずに一循環方向にのみ回転するように構成された形態であるが、第1案内溝44a,45a,46aと第2案内溝44b,45b,46bとの関係、および案内素子62のピン62aとボス部62bとの関係を、それぞれ反対にした構成を採用することもできる。
すなわち、図15は、そのような構成を採用した変形例2を示すものであり、図15(a)に示したカムレバー40の循環案内路43は、第2案内溝44g,45g,46g(第2案内路)と、第2案内溝44g,45g,46gの底壁44j,45j,46jに、第2案内溝44g,45g,46gの幅L4よりも狭い、幅L2の第1案内溝44f,45f,46f(第1案内路)とを有し、第1案内溝44f,45f,46fは、案内素子62を略三角形辺縁状の形状に沿って導く案内溝であり、第2案内溝44g,45g,46gは、案内素子62が循環案内溝43を、一循環方向とは反対に逆送するのを防止する案内溝である。
これらの第2案内溝45g,46gには、反時計回りの、作動案内溝45から不作動案内溝46に移行する不作動案内溝46の端部において、より深くなる段差が形成され、かつ不作動案内溝46から作動案内溝44に移行する作動案内溝44の端部において、より深くなる段差が形成されている。
また、第2案内溝の底面45j,46jは、図15(a)に示すように、反時計回りに上述した2つの端部に向かって上る斜面部45k,46kがそれぞれ形成されている。
一方、作動レバー60に備えられた案内素子62は、図15(b)に示すように、幅L2の第1案内溝44f,45f,46fに挿入されて第1案内溝44f,45f,46fに案内される幅L1(<L2)のピン62cと、このピン62cの外側を覆う幅L3(L2<L3<L4)のボス部62dとによって構成されている。
そして、案内素子62のピン62cが、第1案内溝44f,45f,46fに挿入されて第1案内溝44f,45f,46fに案内されるとともに、弦巻バネ62eの付勢力によってボス部62dが、第2案内溝44g,45g,46gに挿入され、ボス部62dが上述した段差に落ち込むことによって、案内素子62は循環案内溝43を逆送されずに一循環方向にのみ回転するようになっている。
このように構成された変形例2の動作板付き時計によれば、作動レバー60のピン62cが、第1案内溝44f,45f,46fに挿入されて、この第1案内溝44f,45f,46fに案内され、この結果、作動レバー60は、カムレバー40の略三角形辺縁状の循環案内溝43に沿って変位する。
また、ボス部62dが、弦巻バネ62eによって付勢された第2案内溝44g,45g,46gに沿って案内されるが、第2案内溝44gは、不作動案内溝46から作動案内溝44に移行する作動案内溝44の端部において、より深い段差を以て形成され、第2案内溝46gは、作動案内溝45から不作動案内溝46に移行する不作動案内溝46の端部において、より深い段差を以て形成されているため、ボス部62dは弦巻バネ62eの付勢力によってこの第2案内溝44g,46gの底面44j,46jまで落とし込まれ、これによって、ボス部62dが当該案内溝44,46から元の案内溝46,45に戻るのを防止し、したがって、案内素子62の案内方向を、循環案内溝43に沿って反時計回りの一循環方向にのみ限定することができる。
この変形例2の動作板付き時計の他の構成部分は、実施形態1の対応する構成部分と同じであり、これにより、変形例2の動作板付き時計は、実施形態1と同じ効果を発揮する。
なお、上述した実施例1、変形例2における循環案内溝43は、その略三角形辺縁状の全周に亘って、外周側壁と内周側壁とを有する文字通りの溝であるが、例えば、図16(a)に示すように、不作動案内溝46については、外周側壁を敢えて備えない構成とすることもできる。
このように構成された動作板付き時計によれば、本来、作動レバー60とカムレバー40の当該外周側壁と装飾板座80とが重なり合うところ、当該外周側壁の存在しない構成により、この部分の重なり厚さを薄くすることができる。
ところで、このように構成された不作動案内溝46に案内素子62が挿入されると、案内素子62が、外周側壁の存在しない外方OUTに逃げて、不作動案内溝46から脱落する虞がある。
そこで、図16(b)に示すように、案内素子62が不作動案内溝46から外方OUTに脱落しないように、作動レバー60の外方OUTへの変位量を規制するストッパー65を、時計の不動部(例えば、基台プレート10等)に形成するのが好ましい。
これにより、案内素子62を不作動案内溝46から脱落させずに、不作動案内溝46に沿って相対的に移動させることができる。
なお、ストッパー65は例えば時計の不動部に形成されているため、作動レバー60との組合せ部品精度(集積誤差)の大きさによっては、不作動案内溝46の幅方向についての、案内素子62の可動量にバラツキを生じる虞がある。そして、そのようなバラツキは、装飾板90,95の微動となり、見栄えの悪化を招く。
そこで、作動レバー60を、例えば外方OUTとは反対向きに付勢する板バネを設けて、不作動案内溝46の幅方向についての、案内素子62の可動量を抑制するのが好ましい。
(変形例3)
上述した実施形態1,変形例2は、循環案内溝43を循環案内路の一形態とした構成の動作板付き時計であるが、本発明に係る動作板付き時計は、この形態に限定されるものではない。
また、実施形態1,変形例2は、案内素子が循環案内溝43を逆送するのを防止する構成として、循環案内溝43が有する、カムレバー40の揺動面内に直交する方向についての段差を利用したものであるが、本発明に係る動作板付き時計は、この形態に限定されるものではなく、循環案内溝43に対応する循環案内路43′の幅の差によって、案内素子62の逆送を防止する構成を採用することもできる。
図17,18は、そのような構成を採用した変形例3を示すものであり、図示のカムレバー40の循環案内路43′は、外周側壁43a′と内周側壁43b′との間の、略三角形辺縁状の空間によって形成され、不作動案内溝46に対応する不作動案内路46′から一方の作動案内溝44に対応する作動案内路44′に移行する作動案内路44′の端部と、他方の作動案内溝45に対応する作動案内路45′から不作動案内路46′に移行する不作動案内路46′の端部とにおいて、内周側壁43b′が、外周側壁43a′と内周側壁43b′との間隔を案内素子62の幅よりも狭くするように移動可能であり、この外周側壁43a′と内周側壁43b′との間隔が、図19に示す作動レバー60の案内素子62の幅よりも狭い状態で、案内素子62が循環案内路43′を逆送するのを防止する構成である。
ここで、内周側壁43b′は全体として略三角柱状を呈する回転部材43c′を形成しており、その底面には2つの円柱状突起43d′,43e′を備えている。
そして、カムレバー40をその裏面側から見た図18(a)に示すように、円柱状突起43d′は、カムレバー40に形成された、円柱状突起43d′の直径よりもわずかに大きい直径の円孔43f′に挿入され、円柱状突起43e′は、カムレバー40に形成された、長孔43g′に挿入されており、円柱状突起43d′を回転中心として、円柱状突起43e′が長孔43g′の長手方向に沿って変位可能であり、これによって、回転部材43c′は、円柱状突起43d′を回転中心として僅かに回動することができる。
また、円柱状突起43e′は、バネ48によって、長孔43g′の長手方向の一端部方向(矢印R方向)に付勢されている。
ここで、円柱状突起43e′が、長孔43g′の長手方向の一端部方向(矢印R方向)に付勢されている状態では、図18(b)の実線で示すように、不作動案内路46′のうち、作動案内路45′との接続部に近い側の部分(一循環方向Pの上流側部分)の幅は、案内素子62の幅よりも広く、作動案内路44′との接続部に近い側の部分(一循環方向Pの下流側部分)の幅は、案内素子62の幅よりも狭く設定されている。
作動案内溝45′についても同様であり、作動案内路45′のうち、作動案内路44′との接続部に近い側の部分(一循環方向Pの上流側部分)の幅は、案内素子62の幅よりも広く、不作動案内路46′との接続部に近い側の部分(一循環方向Pの下流側部分)の幅は、案内素子62の幅よりも狭く設定されている。
一方、円柱状突起43e′が、バネ48の付勢力に抗して、長孔43g′の長手方向の他端部方向(矢印R′方向)に回動した状態では、図18(b)の二点鎖線で示すように、不作動案内路46′のうち、作動案内路44′との接続部に近い側の部分の幅は、案内素子62の幅よりも広くなる。
作動案内溝45′についても同様であり、作動案内路45′のうち、不作動案内路46′との接続部に近い側の部分の幅は、案内素子62の幅よりも広くなる。
したがって、案内素子62が不作動案内溝46を一循環方向Pに沿って応対的に変位すると、幅の狭い、作動案内路44′との接続部に近い側の部分において、案内素子62の外周面が、内周側壁43b′を押圧しながら進むが、このとき、回転部材43c′は、案内素子62の外周面から受けた押圧力によって、バネ48の付勢力に抗して、矢印R′方向に回動し、外周側壁43a′と内周側壁43b′との間隔が、案内素子62の通過を許容するように広げられる。
案内素子62が、作動案内路44′との接続部に到達すると、案内素子62の外周面が、内周側壁43b′から離れ、これによって、回転部材43c′は、案内素子62からの押圧力が無くなり、バネ48の付勢力によって、矢印R方向に回動して実線で示した状態に戻る。
この結果、不作動案内路46′のうち、作動案内路44′との接続部に近い側の部分の幅が、案内素子62の幅よりも狭くなり、案内素子62が不作動案内溝46を戻ることはできなくなって、案内素子の逆送が防止される。
このように、変形例3の動作板付き時計によれば、案内素子62の案内方向を、循環案内路43′に沿って反時計回りの一循環方向Pにのみ限定することができる。
この変形例3の動作板付き時計の他の構成部分は、実施形態1の対応する構成部分と同じであり、これにより、変形例3の動作板付き時計は、実施形態1と同じ効果を発揮する。
なお、上述した実施形態1、各変形例1〜3は、カムレバー側に循環案内路を形成し、作動レバー側に、この循環案内路に案内される案内素子を形成した構成であるが、本発明に係る動作板付き時計は、この形態に限定されず、作動レバー側に循環案内路を形成し、カムレバー側に案内素子を形成した構成であってもよく、そのような構成によっても、カムレバー側に循環案内路を形成し、作動レバー側に案内素子を形成した構成と同じ効果を発揮することができる。
(実施形態2)
図20は、本発明に係る動作板付き時計の他の実施形態である腕時計の動作状態を示す、図1に示した実施形態1の変形例1における図14相当の模式図である。
図示の動作板付き時計の時計機能部400は、いわゆる機械式時計(駆動源をゼンマイとし、脱進機(ガンギ車、アンクル)および調速機(テンプ)によって、ゼンマイのほどける速度を制御しているもの)であって、実施形態1と同様に輪列機構を含むムーブメントと、ムーブメントによる時計指針(時針401、分針402、秒針403)を駆動する機能によってこれら指針が指示するバーインデックス491が表示された、円環状に形成された外側文字板490と、その外側文字板490の内径と同等か又はそれよりも大きく、かつ外側文字板490の外径よりも小さい直径で、外側文字板490よりもムーブメントに近い位置に、かつ外側文字板490と同心に配設された内側文字板480とを備えた構成である。
ここで、内側文字板480は、円板体から、この円板体の中心近傍部を除いた下部領域が切り欠かれた略半円形の輪郭形状を呈している(図21(a))。そして、この切り欠かれた単一の領域489(以下、単に単一の切欠き489という。)は、図20(c)に示すように、外側文字板490と内側文字板480とによって覆われた時計内部の調速機411を始めとする機械式時計駆動体(調速機411、アンクル412、ガンギ車413、その他の輪列機構等)を外部に視認させる単一の開口を形成している。
また、開閉可能であって、閉じた状態(露出した状態)では、内側文字板480の切欠き489を補完し、時計内部の機械式時計駆動体を覆い外部から視認できないようにする2つの開閉扉590,595(動作板)が設けられている(図21(b))。2つの開閉扉590,595(動作板)が設けられている。これらの開閉扉590,595は、切欠き489のうち互いに異なる領域を覆うように配置されている。
開閉扉590,595は、図示において左右対称に往復回動し、上記開口を閉じた状態(図20(a))では、外側文字板490の背面側から露出した状態(露出位置)であり、一方、上記開口を開いた状態(図20(c))では、外側文字板490の背面側に隠れた非露出の状態(非露出位置)となる。
なお、これら開閉扉590,595は、往復動作によって露出位置(閉位置)と非露出位置(開位置)との間を変位するが、この動作は、実施形態1のように軌跡が直線である直線動作ではなく、軌跡が円弧であるところの回動動作である。
また、これら動作板590,595を上述したように開閉動作させる動作基本機構部は、図22〜26に示すように、日の裏車520を介して輪列機構(分針402が固定される筒車の筒かな511)に連動して回転駆動される、カム530を有するカム機構(詳細は図27,28参照)と、カム530の外周輪郭531に対応して従動する先端面542を有する、カム530の回転駆動に伴って軸541回りに揺動するカムレバー540(図30)、軸561,571回りに揺動する作動レバー560,570(図31,32)を含むレバー機構と、時計の厚さ方向(文字板480,490の面に直交する方向)の互いに異なる位置に設けられた2枚の文字板480,490(外側文字板490が、内側文字板480よりも、時計の厚さ方向の上方側(文字板480,490を見る使用者の顔に近い側)に配設されている。)のうち、内側文字板480と略面一の位置(断面方向について同一位置(時計の厚さ方向における同一位置))に配設され、レバー機構の揺動動作のうち、カム530の回転中心C1から外周輪郭531まで距離(半径)R(図27)が最大Rmaxから最小Rminに変化する下降傾斜部531b(下降傾斜面)に対応する動作に連動して、前述の露出位置と非露出位置との間で往復回動(揺動)動作する一組の開閉扉590,595と、を備えている。
なお、この開閉扉590,595の円弧状の上縁と内側文字板480の円弧状の下縁とは、作動レバー560,570の回転中心561,571を中心とした円弧であるため、開閉扉590,595が回転中心561,571回りに往復回動する際は、開閉扉590,595の円弧状の上縁が内側文字板480の円弧状の下縁に沿いながら回動する。
しかも、2つの開閉扉590,595と内側文字板480とは、断面方向(時計の厚さ方向)において同一の位置に配置され、かつ同一色で形成されているため、これら開閉扉590,595が閉じた状態(図20(a))では、使用者が時計の風防ガラス(図示せず)を通して文字板480,490、開閉扉590,595を見た(平面視)とき、開閉扉590,595と内側文字板480とは一見すると単一の円板として視認されうる(開閉扉590,595が開いたときの意外性を演出することができる)。
カム機構は、図27におけるカム機構をその背面側から見た図28に示すように、カム530の他、輪列機構に連動して回転中心C1回りに回転駆動されるカムかな535(カム車)と、カムかな535の一方向(図27,28において矢印D方向)への回転(通常の運針動作に同期した回転)のみをカム530に伝達し、反対方向(矢印−D方向)への回転(指針を時刻に一致させる針合わせ動作など、指針の通常の運針動作方向とは反対向きの回転)はカム530に伝達しない、カム530の略周方向に沿って円弧帯状に延びたカムばね536(弾性部材、板バネ部材)とを有し、カムかな535が、日の裏車520を介して、時計指針を駆動する輪列機構の筒かな511から回転を伝達される(図29の断面図参照)。
なお、カムかな535は、筒かな511と同じ歯数を有しており、筒かな511とカムかな535とはそれぞれ日の裏車520に噛合して、筒かな511の回転がカムかな535に伝達されるため、カムかな535は、筒かな511と同一の回転角速度で、かつ同一の回転方向に回転する。すなわち、カムかな535は、筒かな511に固定される分針402と同一の動作を為す。
カムばね536は、このカムかな535に固定されているためカムかな535と同一の動作を為し、したがって、このカムばね536も分針402と同一の動作を為す。
これに対して、カム530は、カムかな535と同一の回転中心C1を有するが、カムかな535に対して固定されていない。
しかし、分針402の通常の運針動作(図28(a)における矢印D方向への回転)においては、カムばね536の先端面537が、カム530に形成された柱状受け部532の周面に当接し、カムかな535の矢印D方向への回転にしたがって、この先端面537が柱状受け部532を押すことにより、カム530はカムばね536およびカムかな535と同期して矢印D方向に回転し、この結果、カム530は、分針402の通常の運針動作に連動して回転する。
一方、時計指針の針合わせ動作等の際に、分針402を通常運針動作とは反対向き(矢印−D方向)に回転させたときは、カムかな535およびカムばね536は、分針402と同様に矢印−D方向に回転する(図28(b),(c))が、このときカムばね536の先端面537は、カム530の柱状受け部532の周面から離れるため、カム530はカムばね536およびカムかな535とともに矢印−D方向に回転することはない。
また、カム530の外周輪郭531には、カムレバー540の先端面542が当接しているため、両者の間に生じる摩擦力によって、カムバネ536の先端面537が柱状受け部532から離れてもカム530は停止状態を維持し、カム530が不測の回転を行うことはない。
針合わせ動作では、分針402を矢印−D方向に1周(回転角度360度)以上回転させる場合もあるが、この場合は、図28(c)に示すように、カムばね536の先端面537ではなく外側周面538がカム530の柱状受け部532の周面に摺接するため、カムばね536は柱状受け部532に対して、カム530の周方向に回転力を作用させることができず、カム530が矢印−D方向に回転することはない。
そして、カムばね536は、反対にカム530の柱状受け部532から、カム530の半径方向に反力を受け、この反力を受けたカムばね536は、カム530の半径方向に弾性変形しつつカム530の柱状受け部532の側方を通過する。
したがって、カムかな535およびカムばね536は、カム530の柱状受け部532によって、その矢印−D方向への回転を妨げられることがなく、針合わせ動作によって、カム機構や輪列機構が損傷または破損するのを防止することができる。
以上の作用によって、カムかな535の一方向(矢印D方向)への回転のみをカム530に伝達し、カム530が逆回転するのを防止している。
また、カム530の下降傾斜部531bには、カム530の回転角度θの範囲で、回転中心C1からの距離が略一定のRmid(Rmin<Rmid<Rmax)となる段付き部531c(図27)が形成され、下降傾斜部531bのうち、回転中心C1から見て段付き部531cよりも外側の範囲531d(第1下降傾斜面;回転中心C1からの距離がRmaxからRmidに至る範囲)は、開閉扉590,595の往復動作のうち往動作(露出位置から非露出位置に至る動作(開く動作))に対応し、回転中心C1から見て段付き部531cよりも内側の範囲531e(第2下降傾斜面;回転中心C1からの距離がRmidからRminに至る範囲)は、開閉扉590,595の往復動作のうち復動作(非露出位置から露出位置に至る動作(閉じる動作))に対応している。
したがって、カムレバー540の先端面542が段付き部531cに当接している期間中は、開閉扉590,595が開いた状態に維持されている。
本実施形態において、段付き部531cは分針402の回転角度6度に対応する長さであり、カムレバー540の先端面542がこの段付き部531cに当接している時間は、略1分(回転角度6度に対応)に設定されている。なお、この時間(段付き部531cの長さ)は、本実施形態のものに限定されるものではなく、より短いものであってもよいし、より長いものであってもよい。
本実施形態においては、第1下降傾斜面531dおよび第2下降傾斜面531eにそれぞれ、開閉扉590,595の開閉動作をさらに段階的な動作とする2つずつの小段付き部531f,531g,531h,531iが形成されている(図27(b))。
図20(b)に示すのは、カムレバー540の先端面542が、例えば小段付き部531fに当接している状態に対応した開閉扉590,595の開閉状態である。
各小段付き部531f,531g,531h,531iは、分針402の回転角度3度に対応する長さであり、カムレバー540の先端面542がこれらいずれの小段付き部531f,531g,531h,531iに当接している時間は、略0.5分(回転角度3度に対応)に設定されている。なお、この時間(小段付き部531f,531g,531h,531iの長さ)も、本実施形態のものに限定されるものではなく、より短いものであってもよいし、より長いものであってもよい。
このように構成されていることにより、開閉扉590,595は、1時間ごとに1回、段階的な開閉動作を行う。
具体的には、1時間のうち57分間は図20(a)(図26から図22に至る状態)に示すように、開閉扉590,595は閉じた状態を維持する。その後、例えば時刻の毎正時(毎時00分)に、カムレバー540の先端面542がカム530の上昇傾斜面531a(上昇傾斜面)から第1下降傾斜面531dの小段付き部531fに落下し、図20(b)および図23に示すように開閉扉590,595が開き、カムレバー540の先端面542が小段付き部531fに当接している略0.5分間はこの状態を維持し、続いてカムレバー540の先端面542が第1下降傾斜面531dの小段付き部531gに落下し、開閉扉590,595がさらに開き、カムレバー540の先端面542が小段付き部531gに当接している略0.5分間はこの状態を維持し、さらにカムレバー540の先端面542が段付き部531cに落下し、図20(c)および図24に示すように開閉扉590,595が完全に開き、カムレバー540の先端面542が段付き部531cに当接している略1分間はこの状態を維持する。
次に、カムレバー540の先端面542がカム530の段付き部531cから第2下降傾斜面531eの小段付き部531hに落下し、開閉扉590,595がわずかに閉じ、カムレバー540の先端面542が小段付き部531hに当接している略0.5分間はこの状態を維持し、続いて図25に示すように、カムレバー540の先端面542が第2下降傾斜面531eの小段付き部531iに落下し、開閉扉590,595がさらに閉じ、カムレバー540の先端面542が小段付き部531iに当接している略0.5分間はこの状態を維持し、さらに図20(c)および図26に示すように、カムレバー540の先端面542がカム530の上昇傾斜面531aの最短半径部(回転中心C1から外周縁までの半径が最も短い部分(Rmin))まで落下し、開閉扉590,595が完全に閉じる。
以上の動作により、開閉扉590,595は、1時間ごとに1サイクル約3分間の開閉動作を行う。
レバー機構には、カム530の外周輪郭531に直接当接する、図30に示したカムレバー540の他に、このカムレバー540を支持する要素、例えばカムレバー540をカム530の外周輪郭531側に付勢する押しバネ549(駆動バネ)や、このカムレバー540に連動する一組の作動レバー560(図31),570(図32)を含む。
作動レバー560は、図31に示すように、回転中心561回りに揺動可能とされ、一方の端部には、もう一つの作動レバー570に連結される連結ピン562が形成されている。
また、作動レバー560には、後述するカムレバー540に形成された案内溝544(案内路)に挿入され、この案内溝544に沿って案内されるピン568(案内素子)が設けられている。このピン568は、板ばね567の弾性力によって図示下方に付勢されているが、下方に脱落しないように、図示しない脱落防止構造を有している。
一方、もう一つの作動レバー570は、図32に示すように、回転中心571回りに揺動可能とされ、一方の端部には、作動レバー560の連結ピン562が挿入されて、この作動レバー570を作動レバー560の揺動に連動して揺動させるための連結孔572が形成されている。なお、この連結孔572は、回転中心(561,571)を異にする両作動レバー560,570を、固定の連結ピン562で連結させた状態における、連結孔572に対する連結ピン562の相対的な変位を吸収させるために、真円ではなく長孔となっている。
また、作動レバー570には、カムレバー540の案内溝544に作動レバー560のピン568が案内されている状態におけるピン568を、案内溝544の外側壁面に付勢させるための遊び規制ばね577(変位規制手段)が設けられている。
なお、図22〜26に示すように、一方の作動レバー560には、一方の開閉扉590がビス等で固定され、他方の作動レバー570には、他方の開閉扉595がビス等で固定され、連結ピン562および連結孔572により連結された2つの作動レバー560,570の軸対称の揺動動作により、開閉扉590,595は軸対称の開閉動作を為す。
作動レバー560のピン568が挿入されるカムレバー540の案内溝544は、図30に示すように、略三角形辺縁状の閉じた循環案内溝(循環案内路)であり、挿入されたピン568がこの循環案内溝544に沿って、図示反時計回りに案内される(図22→図23→図24→図25→図26(→図22))ことにより、作動レバー560,570は互いに軸対称に往復動作(揺動)し、両作動レバー560,570にそれぞれ固定された開閉扉590,595が軸対称の開閉動作を為す。
循環案内溝544は、図30、図33等に示すように略三角形辺縁状に形成されているが、この三角形辺縁のうち2つの辺縁に対応した案内溝544bおよび案内溝544cは、カムレバー540の先端面542がカム530の下降傾斜部531bを通過している状態に対応しており、詳しくは、案内溝544bは、カムレバー540の先端面542がカム530の第1下降傾斜面531dを通過している状態に対応し、案内溝544cは、カムレバー540の先端面542がカム530の第2下降傾斜面531eを通過している状態に対応しており、案内溝544bは、開閉扉590,595を全閉状態(露出位置)から全開状態(非露出位置)に移行させる作動案内溝(作動案内路)であり、案内溝544cは、開閉扉590,595を全開状態(非露出位置)から全閉状態(露出位置)に移行させる作動案内溝(作動案内路)である。
一方、案内溝544aは、カムレバーの回転中心541から等距離(半径が一定)にある円弧上に形成されており、カムレバー540の先端面542がカム530の上昇傾斜面531aを通過している状態に対応している。
そして、カムレバー540の先端面542がカム530の上昇傾斜面531aを通過している状態においては、カムレバー540が回転中心541回りに揺動しても、案内溝544aを通過している作動レバー560のピン568は、案内溝544aから、回転中心561回りのモーメントを受けることがなく、したがって、作動レバー560,570は揺動しない。すなわち、この案内溝544aは作動レバー560,570を作動させない不作動案内溝(不作動案内路)である。
このように、循環案内溝544は、1つの不作動案内溝544aと、この不作動案内溝544aの各端部にそれぞれの一端部が連通し、それぞれの他端部同士が連通した2つの作動案内溝544b,544cとにより、略三角形辺縁状に形成されている。
また、この循環案内溝544は、実施形態1における循環案内溝44とは異なり、二重の溝(幅および深さの異なる二つの溝)ではなく、単一の溝となっている。
この循環案内溝544は、その幅がピン568の直径と同じか、僅かに大きく設定されており、これにより循環案内溝544の側壁面とピン568の周面との摺接により、ピン568は循環案内溝544に沿って確実に案内される。
また、循環案内溝544は、その深さの変化により、ピン568が循環案内溝544を時計回り方向に逆送するのを防止した構造となっている。
すなわち、例えば、この循環案内溝544をピン568と同様に反時計回りに移動したとき、不作動案内溝544aから下流側の作動案内溝544bに移行する作動案内溝544bの端部と、不作動案内溝544aの上流側の作動案内溝544cから不作動案内溝544aに移行する不作動案内溝544aの端部とにおいて、図34に示すように、板ばね567によるピン568の付勢方向について深くなる段差544d,544eがそれぞれ形成されている。
そして、板ばね567によって、循環案内溝544の底部方向に付勢されたピン568が、この段差544d,544eに落ち込むことによって、ピン568が循環案内溝544を時計回り方向に逆送されるのを防止し、一循環方向(反時計回り方向)にのみ回転させることを実現している。
また、本実施形態においても、不作動案内溝544aと作動案内溝544bとの接続部近傍において作動レバー560がふらつくのを防止する変位規制部材577(変位規制手段)が、設けられている。
すなわち、不作動案内溝544aと作動案内溝544bとの接続部では、ピン568が不作動案内溝544aから作動案内溝544bにスムーズに移行するように、循環案内溝544の通路幅がピン568の直径より相当程度大きく形成されているため、ピン568の周面と循環案内溝544の側壁面との間に隙間が生じ、ピン568が循環案内溝544の中でがたつき、この結果、作動レバー560がふらついて、作動レバー570もふらつくとともに、開閉扉590,595が閉じた状態から開く動作が開始される直前に微動することとなり、外観品質を損なう虞がある。
そこで、この変位規制部材577によってピン568のがたつきを防止することで、開閉扉590,595の微動を抑制し、外観品質の低下を防止することができる。
具体的には、変位規制部材577によってピン568の周面を循環案内溝544の外側の側壁面に付勢することで、ピン568のがたつきを防止している。
本実施形態においては、変位規制部材577は、図22〜26に示す作動レバー570に固定された、カムレバー540の突起543を押圧する板バネであり、この板バネ577がカムレバー540の突起543を押圧することによって、不作動案内溝544aと作動案内溝544bとの接続部近傍において、ピン568の周面が循環案内溝544の外側の側壁面に当接し続け、ピン568が循環案内溝544内でがたつくのを防止することができる。
なお、循環案内溝544内でのピン568のがたつきの問題は、上述した不作動案内溝544aから作動案内溝544bへの移行部分(不作動案内溝544aと作動案内溝544bとの接続部)だけでなく、作動案内溝544cから不作動案内溝544aへの移行部分(作動案内溝544cと不作動案内溝544aとの接続部)においても同様に生じうる。
しかし、不作動案内溝544aから作動案内溝544bへの移行部分では、ピン568は57分間という長時間を掛けて不作動案内溝544aを進行してきた状態であるのに対して、作動案内溝544cから不作動案内溝544aへの移行部分では、ピン568は1秒間にも満たない極短時間のうちに作動案内溝544cの最後の1/3程度の通路(カム530の外周面531のうち、小段付き部531iから上昇傾斜面531aに移行する落下動作に対応した通路)を進行してきた状態である点で、両者の状況は相違している。
すなわち、ピン568は、不作動案内溝544aから作動案内溝544bへ移行する部分では、ピン568がある程度の長い時間滞まるため、開閉扉590,595の微動が目立つのに対して、作動案内溝544cから不作動案内溝544aへ移行する部分では、ピン568は極短時間しか滞まらないため、開閉扉590,595の微動が目立たない。
しかも、不作動案内溝544aから作動案内溝544bへ移行する部分では、カムレバー540をカム530の外周輪郭531側に付勢する押しバネ549の弾性変形量がカム530の1周の期間中で最大となっているため、その弾性変形によって押しバネ549に蓄えられているエネルギは最大であり、ピン568の周面が循環案内溝544の外側の側壁面に当接することによってピン568の周面と循環案内溝544の外側の側壁面との間で生じる摩擦力に抗して、カムレバー540はこの蓄えられたエネルギによって揺動されるが、作動案内溝544cから不作動案内溝544aへ移行する部分では、カムレバー540をカム530の外周輪郭531側に付勢する押しバネ549の弾性変形量がカム530の1周の期間中で最小となっているため、このエネルギによって、ピン568の周面と循環案内溝544の外側の側壁面との間で生じる摩擦力に抗して、カムレバー540を揺動させることができなくなる虞がある。
したがって、開閉扉590,595の微動が目立たず、しかもカムレバー540の揺動が阻害される虞のある、作動案内溝544cから不作動案内溝544aへ移行する部分では、ピン568のふらつきを抑制する措置を採用しない構成とするのが好ましい。
この点、作動レバー570に固定された板バネ577は、ピン568が不作動案内溝544aから作動案内溝544bへ移行する部分(図22)では、カムレバー540の突起543を押圧して、ピン568の周面が循環案内溝544の外側の側壁面に当接するようにピン568のふらつきを防止する一方、ピン568が作動案内溝544cから不作動案内溝544aへ移行する部分(図26)では、カムレバー540の突起543から離れた状態となるため、ピン568の周面を循環案内溝544の外側の側壁面に当接させる付勢力は作用しないため、カムレバー540の揺動が阻害されるのを防止することができる。
なお、本実施形態においては、板バネ577は作動レバー570に設けられた構成であるが、この構成とは反対に、板バネ577がカムレバー540に固定され、作動レバー570を押圧する構成を採用することもでき、この場合も本実施形態の構成と同様の効果を得ることができる。
次に、本実施形態の動作板付き時計の作用について、図面を参照して説明する。
まず、カムかな535は分針402が固定された筒かな511に同期するため、60分間で時計回り(図27において矢印D方向)に等角速度で1回転する。
ここで、図28により説明したように、カムばね536の先端面537が、カム530に形成された柱状受け部532を押圧することで、カム530もカムかな535とともに、矢印D方向に等角速度(2π[rad]/60[min])で回転する。
カムレバー540は、押しバネ549によって、その先端面542がカム530の外周輪郭531に当接するように付勢されているため、カム530の回転にしたがって、軸541回りに揺動し、カム530が1回転する60分間に1往復揺動する。
図22に示すように、カムレバー540の先端面542が、カム530の外周輪郭531の、回転中心C1から最も遠い部分に当接しているとき、作動レバー560のピン568は、カムレバー540の循環案内溝544のうち不作動案内溝544aと作動案内溝544bとの接続部に位置し、ピン568がこの位置にあるときの作動レバー560,570の姿勢においては、開閉扉590,595は、内側文字板480の切欠き489を補完して、機械式時計駆動体の調速機411等を完全に覆った状態(開閉扉590,595自体は露出位置)となっている。
なお、カムレバー540の先端面542が、カム530の外周輪郭531の最大半径Rmaxに達した時点で、板ばね567により付勢された作動レバー560のピン568が、不作動案内溝544aから作動案内溝544bの段差544dに落とし込まれ、これによって、カムレバー540の先端面542が、図23に示した小段付き部531fまで変位するときには、ピン568は作動案内溝544bを進むしかなく、不作動案内溝544aを逆送されることがない。
図23に示すように、カムレバー540の先端面542が、カム530の小段付き部531fまで落下変位することで、ピン568は作動案内溝544bに沿って、循環案内溝544を反時計回りに変位する。
これにより、作動レバー560は軸561回りに、作動レバー570は軸571回りに、それぞれ揺動する。
作動レバー560,570の揺動動作により、作動レバー560,570にそれぞれ固定された開閉扉590,595が開き(図20(b),図23)、開閉扉590,595によって覆われていた機械式時計駆動体(調速機411、アンクル412、ガンギ車413、その他の輪列機構等)の一部を外部から視認可能となる。
小段付き部531fは、略0.5分間に対応した弧長を有するため、図20(b),図23の状態が略0.5分間維持される。
その後、カムレバー540の先端面542が、カム530の小段付き部531gまで落下変位することで、ピン568は作動案内溝544bに沿って、循環案内溝544を反時計回りにさらに進み、作動レバー560および作動レバー570の各軸561,571回りの揺動がさらに進む。
そして、作動レバー560,570のさらなる揺動により、作動レバー560,570にそれぞれ固定された開閉扉590,595がさらに開き、開閉扉590,595によって覆われていた機械式時計駆動体の外部から視認可能な範囲が広がる。
小段付き部531gは、略0.5分間に対応した弧長を有するため、この状態が略0.5分間維持される。
次いで、カムレバー540の先端面542が、カム530の段付き部531cまで落下変位することで、ピン568は作動案内溝544bから作動案内溝554cに移行する部分まで進み、作動レバー560および作動レバー570の各軸561,571回りの揺動がさらに進む。
作動レバー560,570の揺動により、作動レバー560,570にそれぞれ固定された開閉扉590,595は図20(c)および図24の全開状態(外側文字板490の背面に完全に隠れた状態(非露出位置))となり、開閉扉590,595によって覆われていた機械式時計駆動体の外部から視認可能な範囲がさらに広がる。
段付き部531cは、略1分間に対応した弧長を有するため、この状態が略1分間維持される。
ここで、本実施形態の動作板付き時計ではない一般の時計では、機械式時計駆動体は文字板に覆われて隠されているため、使用者の目に触れることはないが、本実施形態の動作板付き時計では、開閉扉590,595が開いた状態(図20(c)など)で、使用者が普段目にすることのない機械式時計駆動体を、使用者に対して視認させるため、視覚的な趣向を与えることができ、商品性を向上させることができる。
特に、開閉扉590,595が開いた状態において、動きの速い調速機411などを視認させることで、機械式時計駆動体の動作への興味を使用者に惹かせることができる。
そして、係る調速機411などに注目を集中させる観点から、この調速機411に、通常は施さない塗装等を施して着色するのも好ましい。いわゆるスケルトン仕様のように機械式時計駆動体の一部または全部を常時視認可能とした時計では、動きの速い調速機411等に着色を施すのは、使用者の目に疲れを与えたり、時刻を確認するという時計本来の機能を阻害する虞があるが、本実施形態の動作板付き時計のように、定時間ごとにわずかな時間だけ、内部の構造を見えるようにした時計では、内部の構造を常時視認可能とした時計のように使用者の目の疲れや時計本来の機能の問題は比較的低いため、内部の構造を強いインパクトで見せることが可能となる。
また、本実施形態の動作板付き時計は、内側文字板480は単一の切欠き489を有し、開閉扉590,595は、露出位置において切欠き489の領域のうち互いに異なる領域を覆うとともに非露出位置において切欠き489の領域(内部の構造等)を現出させる2つの開閉扉であるため、開閉扉590,595が開いた状態で単一の開口となり、実施形態1のように開口が複数のものよりも、広い開口が開いたような感覚を使用者に与えることができ、開閉の変化を大きく感じさせる効果がある。
その後、カムレバー540の先端面542が、カム530の小段付き部531hまで落下変位することで、カムレバー540はさらに傾き、ピン568は作動案内溝544bから作動案内溝544cに移行し(図24)、作動レバー560および作動レバー570は、各軸561,571回りに、これまでとは反対方向に揺動し始める。
作動レバー560,570の反転した揺動により、作動レバー560,570にそれぞれ固定された開閉扉590,595は閉じる方向に回動し、外部から視認可能とされていた機械式時計駆動体が、開閉扉590,595によって覆われ始める。
小段付き部531hは、略0.5分間に対応した弧長を有するため、この状態が略0.5分間維持される。
さらにその後、カムレバー540の先端面542が、カム530の小段付き部531iまで落下変位することで、ピン568は作動案内溝544cに沿って、循環案内溝544を反時計回りにさらに進み、作動レバー560および作動レバー570の各軸561,571回りの揺動がさらに進む。
作動レバー560,570のさらなる揺動により、作動レバー560,570にそれぞれ固定された開閉扉590,595は図25に示すようにさらに閉じ、外部から視認可能とされていた機械式時計駆動体の視認可能範囲は、開閉扉590,595によってさらに狭くなる。
小段付き部531iは、略0.5分間に対応した弧長を有するため、この状態が略0.5分間維持される。
次いで、カムレバー540の先端面542が、上昇傾斜面531aの最小半径部分(Rmin)まで落下変位すると、ピン568は作動案内溝544cから不作動案内溝554aに移行する部分まで進み、作動レバー560および作動レバー570の各軸561,571回りの揺動が進み、開閉扉590,595は完全に閉じられた状態となる(図20(c)、図26)。
以上の動作では、開閉扉590,595が開き始めてから閉じ終わるまでの1サイクルの開閉動作は略3分間で終了する。
カムレバー540の先端面542が、上昇傾斜面531aに当接している期間中(略57分間)は、カムレバーは僅かずつ姿勢が変化して揺動を続けるが、不作動案内溝544aはカムレバー540の回転中心541から一定距離の円弧上に形成されているため、この不作動案内溝544aを相対的に進行する作動レバー560のピン568(絶対的な空間に対しては、作動レバー560は動かずに、カムレバー540が動いている。)は、不作動案内溝544aからモーメントを受けないため、カムレバー540の揺動に拘わらず、作動レバー560は変位することがなく、したがって、開閉扉590,595は閉じた状態で維持される。
したがって、本実施形態に係る動作板付き時計は、開閉扉590,595が1時間ごとに約3分間の開閉動作を行うとともに、残りの約57分間は、開閉扉590,595が閉じた状態となり、からくり時計としての機能を発揮する。
そして、カム機構を用いたことにより、時刻表示の輪列機構による定速回転を利用しつつ、エネルギの蓄積期間(開閉扉590,595を動作させない期間)とエネルギの解放期間(開閉扉590,595を動作させる期間)との割合を任意に設定することができる。
また、レバー機構として、カムレバー540と作動レバー560との連結機構を用いたことにより、変位向きの変換と変位量の拡大とを実現することができる。
特に、本実施形態においては、カム機構を、その中心C1が時計指針の回転中心C0とは異なる位置となるように配置した構成を採用しているため、回転中心C0に構成部品が集中配置されるのを回避することができ、カム機構の厚さやカムレバー540の配置・形状の選択の自由度を高めることができ、開閉扉590,595の変位量を大きくすることができ、変化の大きさによる商品性の向上を図ることができる。
本実施形態の動作板付き時計は、第1下降傾斜面531dおよび第2下降傾斜面531eにそれぞれ、開閉扉590,595の開閉動作を段階的な動作とする2つずつの小段付き部531f,531g,531h,531iが形成されていることにより、一動作で全閉状態から全開状態まで変位させ、および一動作で全開状態から全閉状態まで変位させる実施形態1よりも、一動作での変位量を低減させることができ、一動作で大きな変位を行わせる場合に生じる動作音を低減させて、品質感を向上させることができる。
また、一動作で一気に全閉状態から全開状態まで変位させ、および一動作で全開状態から全閉状態まで変位させる場合、変位が開始される瞬間と、正時など時刻との高度の一致性が求められるため、この高度の一致性を確保するために、部品精度や組立精度、その他動作環境の影響を排除する構造を採用する必要性など、製造コストの上昇が不可避であるが、段階的全閉状態から全開状態まで変位させ、または段階的に全開状態から全閉状態まで変位させる構造の時計では、変位が開始される瞬間と時刻との一致性の要求度合いが緩和されるため、製造コストを抑制することができる。
さらに、開閉扉590,595の段階的な変位に趣向があるため、この観点からも商品性を向上させることができる。
本実施形態に係る動作板付き時計によれば、レバー機構の先端面542がカム530の外周輪郭531に当接しているため、カム530の回転動作に伴ってレバー機構は揺動するが、レバー機構の揺動動作のうち、カム530の回転中心C1から外周輪郭531までの距離(カム530の動作半径)が最大から最小に変化する下降傾斜部531bに対応する動作に連動して、開閉扉590,595を、外側文字板490の外部に露出する露出位置と隠蔽される非露出位置との間で往復動作させることができ、簡単な構成で、かつ小型のからくり動作基本機構部を有する動作板付き時計を実現することができる。
また、本実施形態に係る動作板付き時計によれば、カム機構は、時計指針を駆動する輪列機構に連動する構成であり、輪列機構を駆動する駆動源とは別異の駆動源をさらに設ける必要がないため、腕時計の、非常に小さな筐体の内部に、からくり動作機構部を収容することができる。
さらに、本実施形態に係る動作板付き時計によれば、レバー機構の上述した連結機構により、カム530の外周輪郭531の上昇傾斜面531aでは、開閉扉590,595を停止状態に維持するため、カム530の1回転の間に、開閉扉590,595は、カム530の急激な下降傾斜部531bで僅かな時間内に1回往復動作するだけであり、動作機構への関心を惹起することもできる。
本実施形態に係る動作板付き時計によれば、カム530は筒かな511に同期しているため、60分間で1回転する。したがって、例えば毎正時(00分)に1回、開閉扉590,595を往復動させることができ、掛け時計や置き時計等における一般的なからくり時計と同様の時間間隔で、露出・非露出の変化の趣向を提供することができる。
また、開閉扉590,595自体の輪郭形状を、上述した実施形態のものとは異なる形状としたり、この開閉扉590,595に、その他の装飾部材をさらに連結した構成を採用することもできる。
さらに、本実施形態に係る動作板付き時計によれば、2つの開閉扉590,595が対称に同時に動作することにより、露出状態から非露出状態への変化、または非露出状態から露出状態への変化を、よりダイナミックな視覚的効果として演出することができる。
また、本実施形態に係る動作板付き時計によれば、針合わせ動作によって、筒かな511が正規の運針動作とは逆向き(反時計回り)に回転されても、カム530は反対向きに回転することはないため、カム530が反対向きに回転したと仮定したときに生じる問題、すなわち、カム530が反対向きに回転したとき、カム530の外周輪郭531に当接するカムレバー540の先端面542が、本来は落下すべき下降傾斜部531bを上る方向となるため、この下降傾斜部531bに先端面542が衝突して動かなくなったり、破損する、という問題を、回避することができる。
また、本実施形態に係る動作板付き時計によれば、カムレバー540の先端面542がカム530の外周輪郭531に当接しているため、先端面542がカム530の外周輪郭531の下降傾斜部531bに従動している状態と、先端面542がカム530の上昇傾斜面531aに当接している状態とで、カムレバー540は互いに反対向きの揺動動作(一往復の揺動動作)を行う。
ここで、作動レバー560,570は、カムレバー540の往復揺動動作のうち、一方の向きへの揺動動作の期間中に往復揺動動作を完了し、反対向きへの揺動動作の期間中には変位しないため、カムレバー540の先端面542がカム530の下降傾斜部531bに従動している期間中だけで、作動レバー560,570に連結された開閉扉590,595の往復揺動動作を完結することができる。
このことは、開閉扉590,595の動作周期と開閉扉590,595の動作完結必要時間との組合せの自由度を高める効果がある。
つまり、カム530は、時計指針を駆動する輪列機構に連動して回転駆動されているため、角速度一定で回転し、カム530が1周する時間は予め規定されている。このため、開閉扉590,595の動作間隔は、このカム530が1回転するのに要する時間ということができる。
本実施形態では、カム530が筒かな511に連動しているため、カム530は60分間で1回転し、開閉扉590,595は60分間に1回の割合で往復動作する。一方、カム530に形成する下降傾斜部531bの角度範囲は、数度程度から数十度までの範囲で任意に設定可能であり、下降傾斜部531bの角度範囲を6度に設定すれば、6[度]/360[度]=1[min]/60[min]であるから、1分間で開閉扉590,595の動作を完結させることができ、18度に設定すれば、18[度]/360[度]=3[min]/60[min]であるから、本実施形態で説明したように3分間で開閉扉590,595の動作を完結させることができる。
これに対して、上述した実施形態とは異なり、単に、作動レバー560,570の一方の向きへの揺動動作を、カムレバー540の一方の向きへの揺動動作に対応させ、作動レバー570,580の他方の向きへの揺動動作を、カムレバー540の他方の向きへの揺動動作に対応させただけでは、カム530の1回転と開閉扉590,595の往復動作を完結させることとが一致するため、開閉扉590,595の動作周期と動作完結必要時間とが一致し、上述した組合せの自由度を得ることはできない。
また、カム530に、下降傾斜部531bと同様の狭い角度範囲の上昇傾斜面531aを形成すれば、下降傾斜部531bと上昇傾斜面531aとの合計角度範囲で、開閉扉590,595の動作完結必要時間を、動作周期よりも短い時間に設定することも可能ではあるが、カム530の上昇傾斜面531aでは、カム530の外周輪郭531と先端面542との間の上りの傾斜角に制約があるため、必ずしも所望とする狭い角度範囲に上昇傾斜面531aを形成することはできない。
したがって、本実施形態の動作板付き時計によれば、開閉扉590,595の動作周期と動作完結必要時間との組合せの自由度を、顕著に高めることができる。