JP5013919B2 - 炭化水素製造触媒とその調製法 - Google Patents

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Description

本発明は、ジルコニウムと、コバルトおよび/またはルテニウムが、金属酸化物の外表面近傍に選択的に担持された一酸化炭素の還元触媒およびその調製方法に関する。
ガソリン中の硫黄分が10質量ppm、軽油中の硫黄分が50質量ppmになるなど、液体燃料に対する硫黄分規制が近年急速に厳しくなってきている。そのため、硫黄分や芳香族炭化水素の含有量が低い環境にやさしいクリーンな液体燃料製造への期待が高まってきている。このようなクリーン燃料製造法の一つとして、一酸化炭素を水素で還元する、いわゆるフィッシャー・トロプシュ(FT)合成法が挙げられる。FT合成法により、パラフィン含有量に富んだクリーン液体燃料基材を製造することができると共に、ワックス(FTワックス)も同時に製造することができる。そして、FTワックスは水素化分解によりクリーンな中間留分(灯油や軽油などの燃料基材)へと変換することができる。
FT合成は、鉄、ルテニウム、コバルトなどの活性金属をシリカやアルミナなどの担体上に担持して得られる触媒を用いて実施されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、上記活性金属に加えて第2金属を組み合わせて使用することにより、触媒性能が向上することが報告されている(例えば、特許文献2および3参照。)。かかる第2金属としては、ナトリウム、マグネシウム、リチウム、ジルコニウム、ハフニウムなどが挙げられ、触媒性能である一酸化炭素の転化率(活性)または連鎖成長確率(選択性)の向上を目的に適宜使用されている
特開平4−227847号公報 特開昭59−102440号公報 国際公開第2004/085055号パンフレット
触媒性能の向上には上記第2金属が重要な役割を担うが、その効果が最大限に生かされているとはいえないのが現状である。これまでの研究では、通常、活性金属および第2金属を担体上に高分散に担持させることが好まれてきた。その為にIncipient Wetness法に代表される含浸法が用いられるが、FT合成は著しい発熱反応であるため、局部的な高温状態が触媒の外表面近傍で起こりやすいと考えられる。
したがって、活性金属および第2金属を触媒外表面上近傍に選択的に担持した方が、触媒性能の向上により有利に働くと考えられる。しかしながら、活性金属および第2金属を触媒外表面近傍に選択的に担持した例は無く、これが触媒性能の向上に障害となっていると思われる。
本発明は、活性金属および第2金属であるジルコニウムを酸化物として金属酸化物の外表面近傍に選択的に担持した一酸化炭素の還元触媒およびその調製法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、pH7以下の水溶液で金属酸化物を前処理した後、第2金属(ジルコニウム)を担持し、その後活性金属(コバルトおよび/またはルテニウム)を高温下でスプレー担持法により担持して、最後に焼成を行うことにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、pH7以下の水溶液で前処理した金属酸化物にジルコニウムを担持し、得られる担体にコバルトおよび/またはルテニウムをスプレー担持法により担持することにより、ジルコニウムと、コバルトおよび/またはルテニウムとが触媒の外表面から中心に向けた半径の1/5以内(外表面側)に総量の75%以上が担持されていることを特徴とする一酸化炭素の還元触媒の調製方法に関する。
また本発明は、上記方法により得られる一酸化炭素の還元触媒に関する。
本発明の方法により、活性金属およびジルコニウムを金属酸化物の外表面近傍に担持することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の触媒の調製方法においては、まず金属酸化物をpH7以下の水溶液で前処理を行い、次いでジルコニウムを担持し、その後コバルトおよび/またはルテニウムを担持する。
本発明において用いる金属酸化物としては特に制限は無いが、シリカ、チタニア、アルミナ、マグネシアなどを挙げることができ、好ましくはシリカまたはアルミナである。
上記金属酸化物の性状については特に制限は無いが、窒素吸着法で測定される比表面積が50〜800m/gであることが好ましく、150〜500m/gがより好ましい。
また、金属酸化物の平均細孔径としては6〜30nmが好ましく、10〜20nmがより好ましい。平均細孔径が6nm未満ではジルコニウムの担持時間が長くなる傾向があり、好ましくない。一方、平均細孔径が30nmを超えるとジルコニウムが金属酸化物の内部にまで入りやすくなる傾向があるので好ましくない。
上記金属酸化物の形状に制限は無いが、実用性を考慮すると、一般に石油精製や石油化学の実装置で使用されている球状、円柱状および三つ葉型などが良い。また、その粒子径についても制限は無く、実用性から10μm〜10mmが良い。
本発明では、上記金属酸化物の前処理をはじめに行う。本発明に於いてこの前処理は不可欠であり、重要な工程である。以下に前処理について説明する。
金属酸化物をpH7以下の水溶液に浸す。このとき使用する水溶液として硝酸水溶液、酢酸水溶液、硫酸水溶液、塩酸水溶液、イオン交換水、蒸留水、アンモニウム水溶液を挙げることができる。またpHは5〜7が好ましく、6〜7がより好ましい。pHが5未満の場合、前処理後に担持するジルコニウム濃度を濃くする必要があり、経済的に良くない。
金属酸化物をpH7以下の水溶液に浸す時間は、そのまま放置の場合は好ましくは10〜72時間、振動させる場合は好ましくは1〜12時間、超音波をかける場合は好ましくは1〜30分である。いずれの場合も、金属酸化物を必要時間以上浸しておいても影響は無い。上記時間は水溶液の温度が室温の場合であり、水溶液を加熱することで浸す時間を節約することもできる。ただし50℃を超えると水の蒸発が起こりやすくなり、pHが変化するので好ましくない。
前処理を所定時間行った後、過剰のジルコニウムを含む溶液を注ぎ込み、ジルコニウムを金属酸化物に担持する。このとき、前処理後の水溶液の上澄み液を除去すると必要な容器が小さくなるので好ましい。ここでいう過剰とは、金属酸化物の体積に対して2倍以上の体積量を意味する。
ジルコニウム源としては硫酸ジルコニ−ル、酢酸ジルコニ−ル、炭酸ジルコニ−ルアンモニウム、三塩化ジルコニウムを用いることができ、炭酸ジルコニ−ルアンモニウムおよび酢酸ジルコニ−ルが好ましい。
担持するジルコニウム量としては、金属酸化物に対して10質量%以下が好ましい。10質量%を超えると金属酸化物の外表面近傍に選択的に担持できなくなる傾向がある。
ジルコニウムの担持時間は目的とする担持量に依存し、通常3〜72時間である。
ジルコニウム担持終了後、溶液と担体(ジルコニウムを担持した金属酸化物)とを分離し、その後、担体を乾燥処理する。乾燥処理は特に制限されるものではなく、例えば、空気中での自然乾燥や減圧下での脱気乾燥を挙げることができる。通常、100〜200℃、好ましくは110〜130℃で、2〜24時間、好ましくは5〜12時間行う。
乾燥後、焼成処理してジルコニウムを酸化物へと変換する。焼成処理も特に制限されるものではなく、通常、空気雰囲気下に340〜600℃、好ましくは400〜450℃で、1〜5時間行うことができる。
ジルコニウムは、担体の外表面から中心に向けた半径の1/5以内(外表面側)に、全ジルコニウム量の75%以上、好ましくは80%以上が担持される。75%未満では、反応活性が低下するため好ましくない。
次に、上記で得られた担体に、活性金属を担持する。
FT合成における活性金属としては、通常、ルテニウム、コバルト、鉄が用いられるが、本発明において用いる活性金属は、ジルコニウムの特性を生かすため、ルテニウム若しくはコバルトまたは両者の組合わせに限定される。
ルテニウムおよび/またはコバルトの担持量については特に制限は無いが、担体に対して好ましくは3〜50質量%、より好ましくは5〜15質量%である。この担持量が3質量%未満では活性が不十分であり、50質量%を超えると活性金属の凝集が起こりやすくなるので好ましくない。
活性金属(ルテニウムおよび/またはコバルト)を、金属酸化物にジルコニウムが担持された担体の外表面近傍に選択的に担持するための方法としては、スプレー担持法を挙げることができる。従来のIncipient Wetness法に代表される含浸法では、本発明の効果が得られない。
具体的には、上記担体を攪拌しながら50〜350℃、好ましくは100〜250℃において活性金属の前駆体化合物を含んだ水溶液またはアルコール溶液を担体にスプレー含浸する。温度が50℃未満の場合、活性金属は担体粒子の中央まで入り込む傾向があり、一方、350℃を越えると外表面のみに活性金属が担持される傾向があるので、実用上好ましくない。
ルテニウムおよび/またはコバルトを含む前駆体化合物としては特に限定されることは無く、その金属の塩または錯体を使用することができる。例えば、硝酸塩、塩酸塩、蟻酸塩、プロピオンサン塩、酢酸塩などを挙げることができる。
活性金属担持後、温度100〜200℃、好ましくは110〜130℃で、2〜24時間、好ましくは5〜10時間乾燥し、次いで、空気雰囲気下に340〜600℃、好ましくは400〜450℃で、1〜5時間焼成処理を行い、活性金属を酸化物へと変換する。
かくして調製された本発明の触媒は、ジルコニウムと、コバルトおよび/またはルテニウムとが、触媒の外表面から中心に向けた半径の1/5以内(外表面側)、好ましくは1/6以内(外表面側)に、総量の75%以上、好ましくは80%以上が担持されている。75%未満では、反応活性が低下するため好ましくない。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
球状のシリカ(平均細孔径15nm、平均粒子径1.75mm)30gを250mlのガラス瓶に秤量し、そこへpH6.5の硝酸水溶液100mlを加え、超音波を40℃で10分照射した。その後、約50mlの上澄み液をパスツールピペットで吸出し、濃度0.2mol/Lの炭酸ジルコニ−ルアンモニウム水溶液150mlを加えて24時間室温で放置した。その後、ろ紙でろ過した後、120℃で6時間真空乾燥を行い、次いで空気雰囲気下、430℃で3時間焼成した。
得られた担体に対して金属コバルトとして10質量%に相当する量の硝酸コバルトの水溶液を200℃で担体にスプレー含浸させた。含浸後、120℃で12時間乾燥し、その後420℃で3時間焼成し、目的の触媒を得た。
この触媒中のジルコニウムおよびコバルト量を、蛍光X線を用いて定量化した。また、電子走査マイクロ分析(EPMA)により、触媒粒子の半径方向に対するジルコニウムおよびコバルトの分布および定量を行った。表1に、上記測定結果として、触媒中の全ジルコニウム量に対する外表面から中心に向けた半径の1/5以内(外表面側)および1/6以内(外表面側)に存在するジルコニウム量の割合を示す。また、触媒中の全コバルト量に対する外表面から中心に向けた半径の1/5以内(外表面側)および1/6以内(外表面側)に存在するコバルト量の割合を示す。
(実施例2)
円柱状のアルミナ(平均細孔径11.5nm、φ1/16インチ、長さ約3mm)30gを250mlのガラス瓶に秤量し、そこへイオン交換水(pH7.0)100mlを加え、超音波を40℃で10分照射した。その後、約50mlの上澄み液をパスツールピペットで吸出し、濃度0.15mol/Lの炭酸ジルコニ−ルアンモニウム水溶液150mlを加えて36時間室温で放置した。その後、ろ紙でろ過した後、120℃で6時間真空乾燥を行い、次いで空気雰囲気下、430℃で3時間焼成した。
得られた担体に対して金属コバルトとして10質量%に相当する量の酢酸コバルトの水溶液を200℃で担体にスプレー含浸させた。含浸後、120℃で12時間乾燥し、その後420℃で3時間焼成し、目的の触媒を得た。
この触媒中のジルコニウムおよびコバルト量を蛍光X線を用いて定量化した。また、電子走査マイクロ分析(EPMA)により、触媒粒子の半径方向に対するジルコニウムおよびコバルトの分布および定量を行った。表1に、上記測定結果として、触媒中の全ジルコニウム量に対する外表面から中心に向けた半径の1/5以内(外表面側)および1/6以内(外表面側)に存在するジルコニウム量の割合を示す。また、触媒中の全コバルト量に対する外表面から中心に向けた半径の1/5以内(外表面側)および1/6以内(外表面側)に存在するコバルト量の割合を示す。
(比較例1)
スプレー含浸に代えてIncipient Wetness法でコバルトを含浸させたこと以外は、実施例1と同じ触媒調製および分析を行った。得られた分析結果を表1に示す。
(比較例2)
pH6.5の硝酸水溶液による前処理を行わなかったこと以外は実施例1と同じ方法で触媒調製および分析を行った。得られた結果を表1に示す。
表1に示すように、本発明の調製方法により、外表面近傍に活性金属およびジルコニアを選択的に担持した一酸化炭素の還元触媒を調製することができる。
Figure 0005013919

Claims (5)

  1. pH7以下の水溶液で前処理した金属酸化物にジルコニウムを担持し、得られる担体にコバルトおよび/またはルテニウムをスプレー担持法により担持することにより、ジルコニウムと、コバルトおよび/またはルテニウムとが触媒の外表面から中心に向けた半径の1/5以内(外表面側)に総量の75%以上が担持されていることを特徴とする一酸化炭素の還元触媒の調製方法。
  2. 触媒の外表面から中心に向けた半径の1/6以内(外表面側)に、ジルコニウムと、コバルトおよび/またはルテニウムとの総量の75%以上が担持されていることを特徴とする請求項1に記載の一酸化炭素の還元触媒の調製方法。
  3. 金属酸化物がアルミナまたはシリカであることを特徴とする請求項1または2に記載の一酸化炭素の還元触媒の調製方法。
  4. コバルトおよび/またはルテニウムの担持量が、担体に対して5〜15質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の一酸化炭素の還元触媒の調製方法。
  5. 100〜250℃の温度範囲でコバルトおよび/またはルテニウムをスプレー担持法により担持することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の一酸化炭素の還元触媒の調製方法。
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