本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、リム部の表面を迅速かつ充分に加温・冷却でき、安価に製造できるステアリングホイールを提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の第1のステアリングホイールは、車両のステアリングシャフトに取り付けられる取付部と取付部に一体化されているリム部とを持つステアリングホイールであって、リム部は、芯材と、芯材の少なくとも一部を覆う表層材と、電源に接続され芯材と表層材との間に介在する熱電変換素子と、を持ち、芯材は、アルミニウム製の本体部と、本体部に熱的に連絡されている鉄製の蓄熱部と、を持ち、蓄熱部は、芯材のなかで少なくとも熱電変換素子に接続されている部分に設けられ、本体部は溝状の収容部を持ち、蓄熱部は変形容易材を介して収容部に保持され、変形容易材は自身が変形して本体部と蓄熱部との熱膨張率の差を吸収することを特徴とする。
また、上記課題を解決する本発明の第2のステアリングホイールは、車両のステアリングシャフトに取り付けられる取付部と取付部に一体化されているリム部とを持つステアリングホイールであって、リム部は、芯材と、芯材の少なくとも一部を覆う表層材と、電源に接続され芯材と表層材との間に介在する熱電変換素子と、を持ち、芯材は、アルミニウム製の本体部と、本体部に熱的に連絡されている鉄製の蓄熱部と、を持ち、蓄熱部は、芯材のなかで少なくとも熱電変換素子に接続されている部分に設けられ、本体部はアルミニウム製であり、蓄熱部は鉄製であり、熱電変換素子と電源とに接続され、表層材を冷却する冷却モードと、冷却モード終了時に表層材の温度が上昇しないように徐々に冷却を終了させる戻しモードと、の少なくとも2段階に熱電変換素子を切換え制御する制御手段を持つことを特徴とする。
また、上記課題を解決する本発明の第3のステアリングホイールは、車両のステアリングシャフトに取り付けられる取付部と取付部に一体化されているリム部とを持つステアリングホイールであって、リム部は、芯材と、芯材の少なくとも一部を覆う表層材と、電源に接続され芯材と表層材との間に介在する熱電変換素子と、を持ち、芯材は、アルミニウム製の本体部と、本体部に熱的に連絡されている鉄製の蓄熱部と、を持ち、蓄熱部は、芯材のなかで少なくとも熱電変換素子に接続されている部分に設けられ、本体部はアルミニウム製であり、蓄熱部は鉄製であり、熱電変換素子に隣接して配置され、芯材と表層材との間に介在して芯材と該表層材との距離を所定長さ以上に保つ規制部材を持つことを特徴とする。
さらに、上記課題を解決する本発明の第4のステアリングホイールは、車両のステアリングシャフトに取り付けられる取付部と取付部に一体化されているリム部とを持つステアリングホイールであって、リム部は、芯材と、芯材の少なくとも一部を覆う表層材と、電源に接続され芯材と表層材との間に介在する熱電変換素子と、を持ち、芯材は、アルミニウム製の本体部と、本体部に熱的に連絡されている鉄製の蓄熱部と、を持ち、蓄熱部は、芯材のなかで少なくとも熱電変換素子に接続されている部分に設けられ、本体部は内部に収容部を持ち、蓄熱部は変形容易材を介して収容部に保持され、変形容易材は自身が変形して本体部と蓄熱部との熱膨張率の差を吸収することを特徴とする。
なお、本発明の要素に含まれる以下の各構成要素をそれぞれ構成(2)、(5)、(6)、(13)および(17)と呼ぶ。
(2)上記蓄熱部は鉄製である。
(5)上記本体部はアルミニウム製である。
(6)上記本体部は溝状の収容部を持ち、上記蓄熱部は変形容易材を介して収容部に保持されている。
(13)上記熱電変換素子と上記電源とに接続され、上記熱電変換素子を、上記表層材
を冷却する冷却モードと、冷却モード終了時に上記表層材の温度が上昇しないように徐々に冷却を終了させる戻しモードと、の少なくとも2段階に切換え制御する制御手段を持つ。
(17)上記熱電変換素子に隣接して配置され、上記芯材と上記表層材との間に介在して上記芯材と上記表層材との距離を所定長さ以上に保つ規制部材を持つ。
本発明のステアリングホイールは、下記の各要素のうち、少なくとも1つを備えるのが望ましい。
(1)上記蓄熱部を構成する材料は、単位体積あたりの熱容量が2.5J/K・cm3以上である。
(3)上記本体部は、上記蓄熱部よりも熱伝導度が大きい材料からなる。
(4)上記本体部は、上記蓄熱部よりも密度が小さい材料からなる。
(7)上記熱電変換素子と上記電源とに接続され、上記熱電変換素子を、上記表層材を加温する第1加温モードと、第1加温モードよりも低い温度で上記表層材を加温する第2加温モードと、の少なくとも2段階に切換え制御する制御手段を持ち、制御手段は、第1加温モード開始後、下記(a)〜(c)の少なくとも一つを満たしたときに、上記熱電変換素子を第2加温モードに切換える。(a)車室内が所定気温に到達した後。(b)上記表層材が所定温度に到達した後。(c)所定時間が経過した後。
(8)(7)の場合、上記第1加温モードにおいて、上記熱電変換素子は上記表層材の温度を40℃以上にする。
(9)(7)の場合、上記第2加温モードにおいて、上記熱電変換素子は上記表層材の温度を30〜38℃にする。
(10)(7)の場合、上記制御手段は、車室内の気温が20℃以上のときに上記熱電変換素子を上記第1加温モードから上記第2加温モードに切換える。
(11)(7)の場合、上記制御手段は、上記表層材の温度が40℃以上のときに上記熱電変換素子を上記第1加温モードから上記第2加温モードに切換える。
(12)(7)の場合、上記制御手段は、上記第1加温モード開始後、1分以上経過したときに上記熱電変換素子を上記第1加温モードから上記第2加温モードに切換える。
(14)第2のステアリングホイールにおいて、上記制御手段は、上記冷却モード開始後、下記(d)〜(f)の少なくとも一つを満たしたときに、上記熱電変換素子を上記冷却モードから上記戻しモードに切換える。(d)車室内が所定気温に到達した後。(e)前記表層材が所定温度に到達した後。(f)所定時間が経過した後。
(15)(14)の場合、上記戻しモードにおいて、上記制御手段は、上記表層材の温度に基づいて上記電源と上記熱電変換素子との電気的接続を繰り返しオン/オフする。
(16)(14)の場合、上記戻しモードにおいて、上記制御手段は、上記表層材の温度に基づいて上記電源が上記熱電変換素子に給電する電流または電圧を徐々に低減する。
(18)第3のステアリングホイールにおいて、上記規制部材は、硬度がHRL60以上の材料からなる。
(19)第3のステアリングホイールにおいて、上記規制部材は、上記本体部よりも熱伝導度が小さい材料からなる。
(20)(19)の場合、上記規制部材は、−20℃〜80℃における熱伝導度が24(W/m・K)以下の材料からなる。
(21)第3のステアリングホイールにおいて、上記規制部材は、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリアセタール、ジルコニア、アルミナ、ステンレススチール、チタン合金、Ni−Mo合金、Fe−Ni−Co合金、から選ばれる少なくとも一種を主として含む。
(22)第3のステアリングホイールにおいて、上記熱電変換素子および上記規制部材と上記表層材との間に介在する熱伝導部材を持つ。
(23)(22)の場合、上記熱伝導部材は、上記表層材よりも熱伝導度が大きい材料からなる。
(24)(22)の場合、上記熱電変換素子と上記熱伝導部材との間および/または上記熱電変換素子と上記芯材との間には、軟質の接続部材が介在している。
(25)(24)の場合、上記接続部材は、前記規制部材よりも硬度が小さい材料からなる。
(26)(24)の場合、上記接続部材は、熱伝導性シート、熱伝導性接着剤、熱伝導性グリス、半田、ろう材から選ばれる少なくとも1種を主として含む。
(27)第3のステアリングホイールにおいて、上記所定長さは上記熱電変換素子の肉厚である。
本発明のステアリングホイールにおいて、芯材と表層材との間には熱電変換素子が介在している。芯材は本体部と蓄熱部とを持つ。蓄熱部は、芯材のなかで少なくとも熱電変換素子に接続されている部分に設けられている。また、蓄熱部は本体部に熱的に連絡されている。したがって本発明のステアリングホイールでは、熱電変換素子が表層材と蓄熱部との間で熱を受け渡し、さらに、蓄熱部と本体部との間で熱が伝導する。よって、本発明のステアリングホイールは、リム部の表面、すなわち表層材を加温・冷却できる。また、蓄熱部は本体部よりも単位体積あたりの熱容量が大きいため、熱電変換素子の芯側面を充分に冷却または加温できる。このため、本発明のステアリングホイールは、表層材を迅速かつ充分に加温・冷却できる。さらに、本発明のステアリングホイールにおいて、芯材は本体部と蓄熱部との2種の部分からなるため、構造が単純であり、部品点数も少ない。したがって、本発明のステアリングホイールは安価に製造し得る。
上記(1)を備える本発明のステアリングホイールは、熱電変換素子の芯側面で生じる熱量が大きい場合にも、蓄熱部が熱電変換素子の芯側面を充分に冷却または加温できる。したがって、上記(1)を備える本発明のステアリングホイールは、表層材の温度(以下、表層温度と略する)が非常に高い場合や非常に低い場合等にも、表層材を迅速かつ充分に加温・冷却できる。
上記(2)を備える本発明のステアリングホイールは、表層材を迅速かつ充分に加温・冷却でき、かつ、非常に安価に製造できる。鉄は単位体積あたりの熱容量が充分に大きく、安価であり、かつ加工し易いためである。なお、鉄の密度は7.9g/cm3(20℃)であり、熱伝導度は80.2W/mK(27℃)であり、比熱容量は449J/kg・Kであり、単位体積あたりの熱容量(比熱容量×密度)は3.55J/K・cm3である。
上記(3)を備える本発明のステアリングホイールでは、蓄熱部の熱が本体部に迅速に伝導する。このため、蓄熱部は熱電変換素子の芯側面を充分に冷却または加温できる。よって、上記(3)を備える本発明のステアリングホイールは、表層材をより迅速かつ充分に加温・冷却できる。
上記(4)を備える本発明のステアリングホイールは、本体部が軽量である。このため、蓄熱部の材料として密度が大きいものを用いる場合にも、全体の重量が過大になることはなく、ステアリングホイールの操舵感を損なうことがない。したがって、蓄熱部の材料として密度が大きく単位体積あたりの熱容量が大きい材料を選択でき、表層材をより迅速かつ充分に加温・冷却できる。
上記(5)を備える本発明のステアリングホイールは、表層材を迅速かつ充分に加温・冷却でき、かつ、非常に安価に製造できる。アルミニウムは熱伝導度が充分に大きく、密度が充分に小さく、安価であり、かつ加工し易いためである。なお、アルミニウムの密度は2.7g/cm3(20℃)であり、熱伝導度は237W/mK(27℃)であり、比熱容量は897J/kg・Kであり、単位体積あたりの熱容量(比熱容量×密度)は2.4J/K・cm3である。
上記(6)を備える本発明のステアリングホイールは、芯部を非常に簡単な構造にできるため、非常に安価に製造できる。また、蓄熱部は変形容易材を介して収容部に保持されているため、本体部と蓄熱部との熱膨張率が異なる場合にも、蓄熱部や本体部に過大な応力が加わることがない。
上記(7)を備える本発明のステアリングホイールは、運転者に不快感を与えることなく表層材を迅速に加温できる。すなわち、表層材が充分にまたは過度に加温されたステアリングホイールを握り続けると、運転者の手の温度が必要以上に上昇する場合がある。この場合には、運転者が手のひらに汗をかく可能性があり、運転者に不快感を与えるおそれがある。熱電変換素子が比較的低い温度で表層材を加温すると、表層材の過度な加温を回避できると考えられるが、この場合には表層材を迅速に加温できない。上記(7)を備える本発明のステアリングホイールは、熱電変換素子を、第1加温モードと第2加温モードとに切換え制御する制御手段を持つ。熱電変換素子は、第1加温モードおよび第2加温モードにおいて表層材を加温する。また、第2加温モードにおいては、第1加温モードよりも低い温度で表層材を加温する。制御手段は、第1加温モード開始後、(a)車室内が所定気温に到達した後、(b)上記表層材が所定温度に到達した後、(c)所定時間が経過した後、の少なくとも一つを満たしたときに、熱電変換素子を第2加温モードに切換える。したがって、第1加温モードにおいて、熱電変換素子は比較的高い温度で表層材を加温するため、表層材を迅速に加温できる。また、第2加温モードにおいて、熱電変換素子は第1加温モードよりも低い温度で表層材を加温するため、表層材を過度に加温することがない。よって、上記(7)を備える本発明のステアリングホイールは、運転者に不快感を与えることなく表層材を迅速に加温できる。
上記(8)を備える本発明のステアリングホイールは、第1加温モードにおいて表層材をより迅速に加温できる。
上記(9)を備える本発明のステアリングホイールは、第2加温モードにおいて表層材を過度に加温することがなく、また、運転者に不快感を与えない程度に表層材を加温できる。
上記(10)〜(12)の何れかを備える本発明のステアリングホイールは、適切なタイミングで制御手段を第1加温モードから第2加温モードに切換えるため、運転者に不快感を与えることなく表層材をより迅速に加温できる。
上記(13)を備える本発明のステアリングホイールは、表層材の冷却終了後に運転者に不快感を与えることがない。すなわち、本発明のステアリングホイールにおいて、熱電変換素子で表層材を冷却する際には、表層材の熱が蓄熱部に受け渡される。したがって、表層材の冷却時間が長かったり、表層材を低い温度にまで冷却する場合には、蓄熱部に大きな熱が蓄えられる。この場合には、表層材の冷却終了後に、蓄熱部に蓄えられた熱が表層材に伝導して、表層温度が急激に上昇するため、運転者に不快感を与えるおそれがある。熱電変換素子で表層材を冷却し続ければ、表層温度が急激に上昇することはなくなるが、表層材が過度に冷却されて運転者に不快感を与えるおそれがある。上記(13)を備える本発明のステアリングホイールは、熱電変換素子を、冷却モードと戻しモードとに切換え制御する制御手段を持つ。制御手段は、冷却モード終了後に熱電変換素子を戻しモードに切換える。冷却モードにおいて、熱電変換素子は表層材を冷却する。戻しモードにおいては、表層温度が上昇しないように徐々に冷却を終了させる。換言すると、戻しモードにおいては、表層温度を徐々に車室内の気温に近づける。このため、上記(13)を備える本発明のステアリングホイールでは、表層材の冷却終了後(冷却モード終了後)に表層温度が急激に上昇することはなく、運転者に不快感を与えることはない。
上記(14)を備える本発明のステアリングホイールは、適切なタイミングで制御手段を冷却モードから戻しモードに切換え得るため、表層材の過度な冷却を確実に回避できる。
上記(15)〜(16)の何れかを備える本発明のステアリングホイールは、表層温度が上昇しないように徐々に冷却を終了させるための制御手段および熱電変換素子の機構を単純化できるため、ステアリングホイールをより安価に製造し得る。
なお制御手段は、戻しモードにおいて、電源と熱電変換素子との電気的接続を予め定めた間隔で繰り返しオン/オフしたり、電源が熱電変換素子に給電する電流や電圧を予め定めた割合で徐々に低減するだけでも、表層温度の急激な上昇を抑制できる。また、制御手段が、熱電変換素子や芯材(蓄熱部、本体部)の温度に基づいて表層材の冷却温度を制御する場合には、上述した2つの場合よりも、戻しモードにおける表層温度を精度高く調整できる。しかし、戻しモード(冷却モード終了後)において、蓄熱部に蓄えられた熱は、熱電変換素子および本体部を介して表層材に伝導し、車室内に放熱されるため、制御手段が表層温度に基づいて表層材の冷却温度を制御する場合には、戻しモードにおける表層温度をさらに精度高く制御できる。すなわち、上記(15)〜(16)の何れかを備える本発明のステアリングホイールは、冷却モード終了後における表層温度の急激な上昇をより確実に回避できる。
熱電変換素子はステアリングホイールのなかで運転者が高頻度で握る部分に配置される。このため、ステアリングホイールを長期間使用した場合には、熱電変換素子が破損する可能性がある。この場合には、表層材を加温・冷却できなくなる可能性がある。また、ステアリングホイールの熱電変換素子付近の部分に大きな衝撃が加わった場合にも同様に、熱電変換素子が破損する可能性がある。上記(17)を備える本発明のステアリングホイールは、芯材と表層材との距離を所定以上に保つ規制部材を熱電変換素子に隣接して配置することで、熱電変換素子に加わる荷重や衝撃を規制部材によって緩和できる。よって、上記(17)を備える本発明のステアリングホイールは、耐久性に優れる。
上記(18)を備える本発明のステアリングホイールは、規制部材の硬度が大きいため、熱電変換素子に加わる荷重や衝撃が規制部材によってより確実に緩和される。したがって、ステアリングホイールの耐久性がより一層向上する。
規制部材として熱伝導度が大きい材料からなるものを用いる場合には、熱電変換素子が表層材と蓄熱部との間で熱を受け渡す一方で、規制部材が熱電変換素子とは逆方向に、表層材と蓄熱部との間で熱を受け渡す可能性がある。したがって、この場合には、表層材を加温・冷却する効率が悪くなる。上記(19)を備える本発明のステアリングホイールは、規制部材が熱伝導度の小さい材料からなるため、規制部材が表層材と芯材とを熱的に連絡し難い。よって、表層材を効率よく加温・冷却できる。
上記(20)を備える本発明のステアリングホイールは、規制部材が熱伝導度の充分に小さい材料からなるため、表層材を効率よく加温・冷却できる。なお、チタン合金としては、例えば、Ti−6Al−4V等を使用できる。
上記(21)を備える本発明のステアリングホイールは、規制部材が、硬度が大きく熱伝導度が充分に小さい材料を主として含むため、耐久性が向上し、かつ、表層材を効率よく加温・冷却できる。
上記(23)を備える本発明のステアリングホイールは、熱伝導部材が熱伝導度の大きい材料からなるために、熱電変換素子が熱伝導部材を介して表層材を効率よく加温・冷却する。
上記(24)を備える本発明のステアリングホイールは、熱伝導部材から熱電変換素子に伝わる荷重や衝撃が、接続部材によって吸収される。したがって、この場合にはステアリングホイールの耐久性がより一層向上する。
上記(25)を備える本発明のステアリングホイールは、接続部材が硬度の小さい材料(衝撃吸収性能に優れる材料)からなるため、熱伝導部材から熱電変換素子に伝わる荷重や衝撃が、接続部材によってさらに緩和される。よって、この場合にはステアリングホイールの耐久性がより一層向上する。
上記(26)を備える本発明のステアリングホイールでは、接続部材が硬度の小さい材料からなるため、耐久性に優れる。また接続部材が熱伝導度の大きい材料からなるため、表層材を効率よく加温・冷却できる。なお、熱伝導性シートとは熱伝導性が大きい材料(シリコン等)がシート状に成形されてなるものを指す。熱伝導性接着剤とは、熱伝導性が大きい材料(シリコン等)からなる接着剤を指す。熱伝導性グリスはアルミナ含有シリコンオイル等の熱伝導性が大きい材料からなるグリスを指す。
上記(27)を備える本発明のステアリングホイールでは、規制部材が、芯材と表層材との距離を熱電変換素子の肉厚以上に保つため、熱電変換素子に加わる荷重や衝撃を規制部材によってより確実に緩和できる。よって、上記(27)を備える本発明のステアリングホイールは、より一層耐久性に優れる。
本発明のステアリングホイールにおける熱電変換素子としては、既知構造からなるものを使用できる。熱電変換素子の数や大きさ等は特に限定しないが、少なくともリム部の左右部分に配するのが好ましい。リム部の左右部分は運転者に触れられる頻度が高いためである。表層材を構成する材料は特に問わず、例えば、樹脂や皮革、金属等を選択できる。表層材は芯材の一部のみを覆っても良いし、全体を覆っても良い。
本体部を構成する材料としては、熱伝導度が大きく密度が小さいものが使用される。具体的にはアルミニウムである。蓄熱部は単位体積あたりの熱容量が大きい材料からなる。具体的には鉄等である。本体部と蓄熱部とは熱的に連絡されていれば良く、接触していても良いし、離間していても良い。本体部と蓄熱部との間に他の部材が介在していても良い。
熱電変換素子は表層材と芯材との間に介在する。したがって、熱電変換素子は一方の面(芯側面)が芯材に熱的に連絡され、他方の面(以下、表側面と呼ぶ)が表層材に熱的に連絡される。芯側面は蓄熱部に直接接触していても良いし、本体部を介して蓄熱部に接触していても良い。他の部材を介して蓄熱部に接触していても良い。表側面は表層材に直接接触していても良いし、他の部材を介して表層材に接触していても良い。
本発明のステアリングホイールは、熱電変換素子を少なくとも2段階に切換え制御する制御手段を備えるのが好ましい。制御手段は、熱電変換素子を3段階以上に切換え制御しても良い。例えば制御手段は、熱電変換素子を第1加温モード、第2加温モード、冷却モード、戻しモードの4段階に切換え制御しても良い。
第1加温モードにおいて、熱電変換素子は表層材を加温する。第1加温モードにおいて、熱電変換素子は表層温度を運転者の体温以上にするのが好ましい。詳しくは、第1加温モードにおいて、熱電変換素子は表層材の温度を36℃以上にするのが好ましく、40℃以上にするのがより好ましく、40℃〜50℃にするのが望ましい。表層材を迅速に加温し、かつ、表層材を過度に加温しないためである。
第2加温モードにおいて、熱電変換素子は第1加温モードよりも低い温度で表層材を加温する。第2加温モードにおいて、熱電変換素子は表層温度を25℃〜40℃にするのが好ましく、30〜38℃にするのがより好ましい。表層温度が過度に上昇するのを抑制して、運転者に不快感を与えないためである。なお、本発明のステアリングホイールでは、第1加温モード終了後に熱電変換素子による表層材の加温を停止しても良い。或いは、第2加温モード開始後、車室内が所定気温に到達した後および/または所定時間が経過した後に、熱電変換素子による表層材の加温を停止しても良い。これらの場合にも、表層材を迅速に加温でき、かつ、表層温度が過度に上昇するのを抑制できる。
本発明のステアリングホイールにおいて、制御手段は、第1加温モード開始後、上述した(a)〜(c)の少なくとも一つを満たしたときに、熱電変換素子を第2加温モードに切換える。制御手段は、第1加温モード開始後、(a)〜(c)の複数を満たしたときに熱電変換素子を第2加温モードに切換えてもよい。
制御手段は、車室内の気温が15℃以上のときに熱電変換素子を第1加温モードから第2加温モードに切換えるのが好ましい。車室内の温度がこの範囲にある場合には、運転者が運転を開始するのに充分な温度にまで表層材が加温されているとみなし得る。車室内の温度が20℃以上のときに熱電変換素子を第1加温モードから第2加温モードに切換えるのがより好ましい。表層材の過度な加温を抑制するためには、車室内の温度が20℃〜26℃の範囲にあるときに熱電変換素子を第1加温モードから第2加温モードに切換えるのが望ましい。
制御手段は、表層温度が38℃以上のときに熱電変換素子を第1加温モードから第2加温モードに切換えるのがより好ましい。表層温度がこの範囲にある場合には、運転者が運転を開始するのに充分な温度にまで表層材が加温されている。表層温度が40℃以上のときに熱電変換素子を第1加温モードから第2加温モードに切換えるのがより好ましい。表層材の過度な加温を抑制するためには、表層温度が40℃〜45℃の範囲にあるときに熱電変換素子を第1加温モードから第2加温モードに切換えるのが望ましい。
制御手段は、第1加温モード開始後、1分以上経過したときに熱電変換素子を第1加温モードから第2加温モードに切換えるのが好ましい。第1加温モード開始後、1分以上経過した場合、運転者が運転を開始するのに充分な温度にまで表層材が加温されているとみなし得る。例えば、第1加温モードにおいて熱電変換素子が表層材を40℃以上に加温するとともに、第1加温モード開始後、1分以上経過したときに熱電変換素子を第1加温モードから第2加温モードに切換えればよい。表層材の過度な加温を抑制するためには、第1加温モード開始後、3分〜10分経過したときに熱電変換素子を第1加温モードから第2加温モードに切換えるのが望ましい。
冷却モードにおいて、熱電変換素子は表層材を冷却する。また、戻しモードにおいて、表層材の温度が上昇しないように徐々に冷却を終了させる。換言すれば、戻しモードにおいて熱電変換素子が表層材を冷却する温度は、冷却モードにおいて熱電変換素子が表層材を冷却する温度よりも高い。また、戻しモードにおいて熱電変換素子が表層材を冷却する温度は、時間の経過とともに徐々に高くなる。車室内の気温が充分に低下した場合には、熱電変換素子は表層材の冷却を停止しても良い。熱電変換素子を冷却モードから戻しモードに切換えるタイミングは、乗員が決定しても良いし、自動的に決定しても良い。例えば、車室内に冷却モードを停止するためのスイッチを設けて、運転者が表層材が充分に冷却されたと感じたときにこのスイッチを操作するようにしても良い。この場合には、スイッチ操作時に制御手段が冷却モードから戻しモードに切換えるように設定しておけばよい。或いは、冷却モード開始後、上述した(d)〜(f)の少なくとも一つを満たしたときに、制御手段が自動的に熱電変換素子を冷却モードから戻しモードに切換えるようにしても良い。この場合には、運転者に煩雑な操作を要求しない利点がある。なお、制御手段は、上述した(d)〜(f)の複数を満たしたときに熱電変換素子を冷却モードから戻しモードに切換えても良い。
本発明のステアリングホイールは、規制部材を持つのが好ましい。規制部材の数は熱電変換素子の数や配置位置に応じて適宜設定すればよいが、複数設ける方がよい。規制部材は、熱電変換素子を挟んで配置するのが好ましい。規制部材は、例えばステアリングホイールの周方向に熱電変換素子を挟んでも良いし、ステアリングホイールの径方向に熱電変換素子を挟んでも良い。規制部材の形状は特に問わないが、熱電変換素子よりも厚肉であるのが好ましい。この場合、規制部材が熱電変換素子よりも先に荷重や衝撃を受けるため、熱電変換素子に作用する荷重や衝撃がより確実に緩和される。規制部材は熱電変換素子に隣接して配置されれば良く、熱電変換素子に接触していても良いし、熱電変換素子と離間していても良い。規制部材は、熱電変換素子よりも硬度の高い材料からなるのが好ましい。規制部材は硬度がHRL60以上の材料からなるのが好ましく、HRL100以上の材料からなるのがより好ましい。規制部材は熱伝導度が小さい材料からなる方が良く、本体部よりも熱伝導度が小さい材料からなるのが好ましい。規制部材は−20℃〜80℃における熱伝導度が24(W/m・K)以下の材料からなるのが好ましく、10(W/m・K)の材料からなるのがより好ましい。なお、−20℃〜80℃は車室内の温度とほぼ一致する。例えば、冬期における車室内の温度は−20℃に達する場合があるし、夏期における車室内の温度は80℃に達する場合がある。したがって、−20℃〜80℃における熱伝導が小さい材料からなる規制部材を用いることで、表層材を効率よく加温・冷却できる。なお、ABS樹脂の25℃における熱伝導度は0.19(W/m・K)である。ポリプロピレンの25℃における熱伝導度は0.14(W/m・K)である。ポリアセタールの25℃における熱伝導度は0.23(W/m・K)である。ジルコニアの25℃におけるにおける熱伝導度は1.0(W/m・K)である。アルミナの25℃における熱伝導度は8.0〜24.0(W/m・K)である。ステンレススチールの25℃における熱伝導度は16(W/m・K)である。チタン合金の25℃における熱伝導度は8.0(W/m・K)である。Ni−Mo合金の25℃における熱伝導度は8.0(W/m・K)である。Fe−Ni−Co合金の25℃における熱伝導度は17.0(W/m・K)である。これらの材料の硬度は、何れもHRL60以上である。したがって、これらの材料を主として含む規制部材は熱伝導度が充分に小さく、硬度が充分に大きい。
本発明のステアリングホイールは、熱伝導部材を持つのが好ましい。熱伝導部材は、熱電変換素子および規制部材と、表層材と、の間に介在すればよく、その数や形状は熱電変換素子や規制部材の数や形状、配置位置に応じて適宜設定すればよい。熱伝導部材は、表層材よりも熱伝導度が大きい材料からなるのが好ましい。熱伝導部材は−20℃〜80℃における熱伝導度が30(W/m・K)以上の材料からなるのがより好ましい。熱伝導部材は、銅、アルミニウムから選ばれる少なくとも一種を主として含むのが望ましい。熱電変換素子と熱伝導部材との間および/または熱電変換素子と芯材との間には、軟質の接続部材が介在しているのが好ましい。接続部材は、硬度が規制部材以下の材料からなるのが好ましい。接続部材は、熱伝導度が大きい材料からなるのが好ましい。熱伝導度が大きい接続部材によって、熱伝導部材と熱電変換素子とを熱的に連絡すれば、表層材を効率よく加温・冷却できる。接続部材は−20℃〜80℃における熱伝導度が0.5(W/m・K)以上の材料からなるのがより好ましい。接続部材は、熱伝導性シート、熱伝導性グリス、熱伝導性接着剤、半田、ろう材から選ばれる少なくとも1種を主として含むのが望ましい。なお、接続部材は、熱電変換素子と熱伝導部材との間と、熱電変換素子と芯材との間との何れか一方に介在していればよいが、両方に介在している場合には、熱電変換素子に作用する衝撃や荷重をより一層低減できる。
以下、図面を基に本発明のステアリングホイールを説明する。
(実施例1)
実施例1のステアリングホイールは、上記構成(1)〜(6)を備える。実施例1のステアリングホイールを模式的に表す断面図を図1に示す。実施例1のステアリングホイールを図1中A−A’位置で切断した様子を模式的に表す断面図を図2に示す。
実施例1のステアリングホイールは、取付部1とリム部2とをもつ。図1に示すように、リム部2は円環状をなす。取付部1は、筒状のボス部10と、ボス部10とリム部2とを連結するスポーク部11とを持つ。
リム部2は、芯材3と、表層材4と、熱電変換素子5とを持つ。芯材3は、本体部30と蓄熱部31とを持つ。本体部30はアルミニウム製であり中空の円環状をなす。本体部30の左右部分には、周方向に延びる溝状の収容部300が形成されている。収容部300には鉄製の蓄熱部31が保持されている。蓄熱部31は断面くさび状であり、収容部300に沿って湾曲している。リム部2全体に対する蓄熱部31の周方向領域は、20〜30%程度である。実施例1のステアリングホイールにおいて、表層材4は皮革からなり、芯材3の表面全体を覆っている。図2に示すように、表層材4の内部には、芯材3および熱電変換素子5が配されるとともに、ウレタンからなる充填材6が充填されている。本体部30と蓄熱部31とは充填材6を介して熱的に連絡されている。
図1に示すように、実施例1のステアリングホイールは、12個の熱電変換素子5をもつ。このうち6個はリム部2の左側部分に配され、6個はリム部2の右側部分に配されている。リム部2の左側部分に配されている6個の熱電変換素子5のなかの3個は、本体部30の内周面と表層材4との間に介在し、残りの3個は本体部30の外周面と表層材4との間に介在している。リム部2の右側部分に配されている6個の熱電変換素子5のなかの3個は、本体部30の内周面と表層材4との間に介在し、残りの3個は本体部30の外周面と表層材4との間に介在している。図2に示すように、各熱電変換素子5の芯側面50は、芯材3(本体部30)に直接接触している。各熱電変換素子5の表側面51は、熱伝導部材7を介して表層材4に接触している。熱伝導部材としては、例えば、銅を採用することができる。
熱電変換素子5は図略の電源に接続されている。電源には、図略の制御手段が接続されている。制御手段は、図略の検知部と、検知部に接続されている制御部とを持つ。検知部は温度センサからなり、表層温度を測定する。制御部はCPU(central processing unit、中央演算処理装置)を持つ。制御手段は、検知部で検知した温度に応じて、熱電変換素子5への通電方向を切換える。詳しくは、制御部は、検知部で検知した温度が所定温度以上のときには、熱電変換素子5への通電方向を、表側面51が降温し芯側面50が昇温する方向にする。検知部で検知した温度が所定温度以下のときには、熱電変換素子5への通電方向を、表側面51が昇温し芯側面50が降温する方向にする。実施例1のステアリングホイールでは、制御手段は、ワイヤレスキー(所謂電波錠、スマートキー)から伝送された信号に基づいて、熱電変換素子5への通電を開始する。
実施例1のステアリングホイールでは、検知部で検知した温度が所定温度以上のときには、熱電変換素子5の表側面51が降温し表層材4が冷却される。また、熱電変換素子5の芯側面50は昇温し、芯側面50の熱は本体部30に伝導する。本体部30に伝導した熱は、充填材6を介して蓄熱部31に伝導する。蓄熱部31は、本体部30よりも単位体積あたりの熱容量が大きいために、本体部30から伝導した熱を充分に蓄え得る。蓄熱部31と本体部30とは熱的に連結されているため、蓄熱部31に伝導した熱は再度本体部30に伝導する。本体部30は蓄熱部31よりも熱伝導度が大きいために、本体部30に伝導した熱は芯材3全体に広がり、雰囲気中に放熱される。このため、実施例1のステアリングホイールは、熱電変換素子5の芯側面50を充分に冷却でき、表層材4を迅速かつ充分に冷却できる。
検知部で検知した温度が所定温度以下のときには、熱電変換素子5の表側面51が昇温し表層材4が加温される。また、熱電変換素子5の芯側面50は降温し、本体部30の熱は芯側面50に伝導する。本体部30には、充填材6を介して蓄熱部31の熱が伝導する。蓄熱部31は、本体部30よりも単位体積あたりの熱容量が大きいために、本体部30を介して芯側面50に充分量の熱を与え得る。このため、実施例1のステアリングホイールは、熱電変換素子5の芯側面50を充分に加温でき、表層材4を迅速かつ充分に加温できる。
また、実施例1のステアリングホイールでは、蓄熱部31は収容部300内に収容され、蓄熱部31の表面と収容部300の表面との間には、ウレタンからなる充填材6が介在している。したがって、実施例1のステアリングホイールでは、充填材6が変形容易材となる。このため、本体部30と蓄熱部31との熱膨張率が異なる場合にも、蓄熱部31や本体部30に過大な応力が加わることがない。また、芯材3を構成する本体部30および蓄熱部31は、ともに簡単な構造からなるため、実施例1のステアリングホイールは非常に安価に製造できる。なお、本発明のステアリングホイールにおける変形容易材は、自身が変形して本体部30と蓄熱部31との熱膨張率の差を吸収できるものであれば良く、ウレタン以外のものからなるものであっても良い。
本体部30は密度が小さいアルミニウムからなる。このため、実施例1のステアリングホイールは、密度が大きい鉄製の蓄熱部31を用いるにもかかわらず軽量である。また、蓄熱部31は、左右方向に対称な位置に配されているため、実施例1のステアリングホイールは重量バランスがとれている。よって、実施例1のステアリングホイールは操舵感に優れる。
(参考例)
参考例のステアリングホイールは、上記構成(1)〜(5)を備える。参考例のステアリングホイールは、本体部および蓄熱部の形状以外は、実施例1のステアリングホイールと同じである。参考例のステアリングホイールを模式的に表す断面図を図3に示す。参考例のステアリングホイールを図3中A−A’位置で切断した様子を模式的に表す断面図を図4に示す。
図3に示すように、参考例のステアリングホイールにおける本体部30は、周方向に分断された環状をなす。蓄熱部31は、湾曲した柱状をなし、本体部30の分断された部分を補う。本体部30と蓄熱部31とは固着されて一体化している。図2に示すように、熱電変換素子5の芯側面50は、蓄熱部31に直接接触している。
参考例のステアリングホイールは、検知部で検知した温度が所定温度以上のときに、熱電変換素子5の表側面51が降温し、表層材4を冷却する。また、熱電変換素子5の芯側面50は昇温し、芯側面50の熱は蓄熱部31に伝導する。蓄熱部31に伝導した熱は本体部30に伝導し、雰囲気中に放熱される。参考例のステアリングホイールは、本体部30および蓄熱部31の形状が実施例1のステアリングホイールと異なるが、実施例1のステアリングホイールと同様に、蓄熱部31の単位体積あたりの熱容量は大きく、本体部30の熱伝導度は大きい。したがって、参考例のステアリングホイールは、表層材4を迅速かつ充分に加温・冷却できる。また、芯材3を構成する本体部30および蓄熱部31は、実施例1のステアリングホイールと同様に簡単な構造からなるため、参考例のステアリングホイールは非常に安価に製造できる。本体部30は密度が小さいアルミニウムからなり、蓄熱部31は左右方向に対称な位置に配されているため、参考例のステアリングホイールは操舵感に優れる。
(実施例2)
実施例2のステアリングホイールは、上記構成(1)〜(5)および(7)〜(11)を備える。実施例2のステアリングホイールは、制御手段が2つの検知部をもつことと、
制御部の機能以外は、参考例のステアリングホイールと同じである。実施例2のステアリングホイールにおいて、制御手段が熱電変換素子を切換え制御する機構を模式的に表すフローチャートを図5に示す。
実施例2のステアリングホイールにおいて、制御手段は、CPUをもつ制御部と、2つの検知部とを持つ。一方の検知部である第1検知部は、温度センサからなり車室内の気温を測定する。他方の検知部である第2検知部は、温度センサからなり、表層温度を測定する。第2検知部はステアリングホイールに埋設され、表層材付近に配置されている。制御部は第1検知部、第2検知部、電源、および熱電変換素子に接続されている。
以下、図5を基に実施例2のステアリングホイールにおいて制御手段が熱電変換素子を切換え制御する機構を説明する。
先ず、制御手段は、ワイヤレスキーから伝送された信号に基づいて、第2検知部で検知した温度(表層温度)が所定温度(実施例2では20℃)以下であるか否かを判断する(ステップ1、以下S1と略し、他のステップについても同様に表記する)。表層温度が20℃を超えるときには、制御部はS1を繰り返す。表層温度が20℃以下のときには、リム部の表面すなわち表層材が過度に冷たくなっているとみなして、制御部は、熱電変換素子への通電方向を表側面が昇温し芯側面が降温する方向にする。すなわち、熱電変換素子によって表層材を加温する(S2)。このとき熱電変換素子が表層材を加温する温度は45℃である。実施例2におけるS2は、本発明における第1加温モードである。S2開始後、制御部は、第1検知部で検知した温度が20℃以上であるか否かを判断する(S3)。第1検知部で検知した温度が20℃に満たなければ、表層材が充分に加温されていないとみなして、制御部はS2〜S3を繰り返す。第2検知部で検知した温度が20℃以上の場合には、表層材が充分に加温されたとみなして、制御部は電源から熱電変換素子に給電される電流値を低減する。したがって、熱電変換素子は第1加温モードよりも低い温度で表層材を加温する(S4)。このとき熱電変換素子が表層材を加温する温度は30℃である。実施例2におけるS4は本発明における第2加温モードである。S4開始後、制御部は第2検知部で検知した表層温度が所定温度(実施例2では28℃)以下であるか否かを判断する(S5)。第2検知部で検知した温度が28℃を超える場合には、表層温度が充分に高いとみなして、制御部はS4〜S5を繰り返す。第2検知部で検知した温度が28℃以下の場合には、表層温度が著しく低下している可能性があるため、制御部はS2〜S5を繰り返す。
なお、実施例2のステアリングホイールにおいて、制御部は、第2検知部で検知した表層温度が所定温度よりも高い場合には、実施例1のステアリングホイールと同様に、熱電変換素子によって表層材を冷却する。
実施例2のステアリングホイールでは、制御手段が、熱電変換素子を第1加温モードと第2加温モードとに切換え制御する。熱電変換素子は、第1加温モードでは運転者の体温以上の温度(45℃)で表層材を加温するため、表層材を迅速に加温できる。また、熱電変換素子は、第2加温モードでは運転者の体温以下の温度(30℃)で表層材を加温するため、表層材を過度に加温することがなく、運転者に不快感を与えることがない。
(実施例3)
実施例3のステアリングホイールは、上記構成(1)〜(5)および(13)〜(15)を備える。実施例3のステアリングホイールは、制御手段がタイマを持つこと、および、制御部の機能以外は実施例2のステアリングホイールと同じである。実施例3のステアリングホイールにおいて、制御手段が熱電変換素子を切換え制御する機構を模式的に表すフローチャートを図6に示す。
実施例3のステアリングホイールにおいて、制御手段は、制御部と第1検知部と第2検知部とタイマとを持つ。制御部と第1検知部と第2検知部とは実施例2とほぼ同じものである。
以下、図6を基に実施例3のステアリングホイールにおいて制御手段が熱電変換素子を切換え制御する機構を説明する。
先ず、制御手段は、ワイヤレスキーから伝送された信号に基づいて、第2検知部で検知した表層温度が所定温度(実施例3では60℃)以上であるか否かを判断する(S1)。表層温度が60℃に満たないときには、制御部はS1を繰り返す。表層温度が60℃以上のときには、リム部の表面すなわち表層材が過度に熱くなっているとみなして、制御部は、熱電変換素子への通電方向を、表側面が降温し芯側面が昇温する方向にする。すなわち、熱電変換素子によって表層材を冷却する(S2)。このとき熱電変換素子が表層材を冷却する温度は40℃である。実施例3におけるS2は、本発明における冷却モードである。S2開始後、タイマが計測を開始する。そして、制御部は、タイマが計測した時間に基づいて、冷却モード開始後10分以上経過しているか否かを判断する(S3)。冷却モード開始後10分以上経過していなければ、表層材のなかで熱電変換素子と離間している部分が充分に冷却されていないとみなして、制御部はS3を繰り返す。冷却モード開始後10分以上経過している場合には、表層材のなかで熱電変換素子と離間している部分が充分に冷却されたとみなして、制御部は冷却モードを終了し、電源と熱電変換素子との電気的接続を繰り返しオン/オフする。したがって、このとき熱電変換素子は冷却モードよりも高い温度で表層材を冷却する(S4)。実施例3におけるS4から後述するS8までが、本発明における戻しモードである。
S4開始後、制御部は、タイマが計測した単位時間(実施例3では1秒間)毎に第2検知部で検知した温度を記憶し、表層温度上昇率(%/秒)を算出する。そして、算出された表層温度上昇率が予め定めた規定値(実施例3では5%/秒)以下であるか否かを判断する(S5)。表層温度上昇率は、表層温度が単位時間あたりにどの程度上昇しているかを示す数値である。詳しくは、表層温度上昇率は下式(1)で算出される。
(式1)
表層温度上昇率=(A−B)/B×100(%/秒)
なお、式1中Aは単位時間経過後の表層温度を指し、Bは単位時間経過前の表層温度を指す。
表層温度上昇率が規定値を超える場合には、表層温度が急激に上昇しているとみなして、制御部は、熱電変換素子に給電する時間(以下、給電オン時間と呼ぶ)を熱電変換素子への給電を停止する時間(以下、給電オフ時間と呼ぶ)よりも長くしつつ、電源と熱電変換素子との電気的接続を繰り返しオン/オフし(S6)、S5に戻る。
表層温度上昇率が規定値以下の場合には、表層温度が徐々に上昇しているとみなして、制御部は、給電オン時間が0になっているか否かを判断する(S7)給電オン時間が0でなければ、給電オン時間を給電オフ時間よりも短くしつつ、電源と熱電変換素子との電気的接続を繰り返しオン/オフし(S8)、S5に戻る。
給電オン時間が0になった時点(S7)で、制御部は、戻しモードを終了し(S9)、S1に戻る。したがって、何らかの理由で表層温度が再度大きく上昇した場合には、再度冷却モードを開始する。
なお、実施例3のステアリングホイールにおいて、制御部は、第2検知部で検知した表層温度が所定温度よりも低い場合には、実施例1のステアリングホイールと同様に、熱電変換素子によって表層材を加温する。
実施例3のステアリングホイールでは、制御手段が、熱電変換素子を冷却モードと戻しモードとに切換え制御する。実施例3のステアリングホイールでは、戻しモードにおいて徐々に冷却を終了させるため、表層温度が急激に上昇することはなく、運転者に不快感を与えることがない。また、戻しモードにおいて、制御手段は、表層温度に基づいて表層温度が上昇しないように徐々に冷却を終了させるため、表層温度を精度高く制御できる。よって、実施例3のステアリングホイールでは、冷却モード終了後における表層温度の急激な上昇を確実に回避できる。
(実施例4)
実施例4のステアリングホイールは、上記構成(1)〜(5)および(17)〜(27)を備える。実施例4のステアリングホイールは、規制部材と接続部材とを備えること以外は、参考例のステアリングホイールと同じである。実施例4のステアリングホイールを模式的に表す断面図を図7に示す。図7の要部拡大図を図8に示す。実施例4のステアリングホイールを図8中A−A’で切断した様子を模式的に表す断面図を図9に示す。実施例4のステアリングホイールを図8中B−B’で切断した様子を模式的に表す断面図を図10に示す。
図7に示すように、実施例4のステアリングホイールは、実施例1および参考例のステアリングホイールと同様に、12個の熱電変換素子5をもつ。図8に示すように、隣接する熱電変換素子5同士の間には規制部材8が配置されている。また、最外側に配されている熱電変換素子5よりもさらに外側(周方向の端側)にも規制部材8が配されている。規制部材8の肉厚は熱電変換素子5の肉厚よりもやや大きい。規制部材8は、熱電変換素子5と同様に、蓄熱部31と表層材4との間に介在する。互いに隣接する規制部材8と熱電変換素子5とは、僅かに離間している。
図9に示すように、各熱電変換素子5の芯側面50と蓄熱部31との間には、接続部材9が介在している。各熱電変換素子5の表側面51と表層材4との間には、熱伝導部材7が介在している。熱伝導部材7は表層材4に接触している。熱電変換素子5の表側面51と熱伝導部材7との間にもまた、接続部材9が介在している。熱電変換素子5の芯側面50は接続部材9に接触している。接続部材9は蓄熱部31に接触している。換言すると、各熱電変換素子5と蓄熱部31とは接続部材9を介して熱的に連絡され、各熱電変換素子5と表層材4とは接続部材9と熱伝導部材7とを介して熱的に連絡されている。さらに、図10に示すように、規制部材8の一方の表面は熱伝導部材7に接触し、他方の表面は蓄熱部31に接触している。実施例4のステアリングホイールにおいて、規制部材8はポリアセタールからなる。熱伝導部材7は銅からなる。接続部材9は半田からなる。
実施例4のステアリングホイールでは、熱電変換素子5に隣接して、規制部材8が配置されている。規制部材8は芯材3(蓄熱部31)と表層材4との距離を所定長さ以上に保つ。実施例4のステアリングホイールでは、規制部材は、芯材3と表層材4との距離を熱電変換素子5の肉厚と2つの接続部材9の肉厚と熱伝導部材7の肉厚との和以上に保つ。したがって、ステアリングホイールの外周側から内周側に向けて荷重や衝撃等の外力が作用した場合、規制部材8がスペーサとして働いて、熱電変換素子5に過大な外力が作用しない。また、熱電変換素子5と芯材3との間、および、熱電変換素子5と表層材4との間には軟質の接続部材9が介在しているため、熱電変換素子5に作用する外力は接続部材9によっても緩和される。よって、実施例4のステアリングホイールを長期間にわたって使用した場合や、実施例4のステアリングホイールに大きな衝撃が加わった場合にも、熱電
変換素子が破損することはない。すなわち、実施例4のステアリングホイールは耐久性に優れる。
1:取付部、2:リム部、3:芯材、4:表層材、5:熱電変換素子、7:熱伝導部材、8:規制部材、9:接続部材、30:本体部、31:蓄熱部、300:収容部、50:芯側面、51:表側面