JP5012256B2 - 打ち抜きプレス加工方法、及び打ち抜きプレス金型 - Google Patents
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Description
打ち抜きプレス加工の場合、パンチとダイスとの間には所定のクリアランスが設定されている。金属材料のせん断の際、せん断力によってパンチとダイスの刃先が材料にくい込み、ある程度進行して材料を塑性変形させてから刃先から割れが生じてせん断が完了する。この場合、割れの進行方向は、板材の表面に対して垂直にならずある角度を持つ。このとき、パンチ側からの割れと、ダイス側からの割れとが、一直線上につながるように、クリアランスが設定される。
切断面のうち、せん断面はせん断の途中で刃先の側面によって押し付けられながらこすられ変形してできた面で、バニシ面とも呼ばれる。せん断面は、刃物で切断されたような比較的きれいな面である。せん断面の長さは、一般に板厚の1/3を標準としている。せん断面に続くのが破断面である。破断面は、材料がむしり取られたような面である。
その問題を解決するために、特許文献1の考案では、板厚の異なる部分を有するワークを打ち抜くプレス金型として、板厚が変化するワーク断面と係合する形状のワーク押え(ストリッパ)と、板厚が変化するワーク断面と係合する段差付きパンチを用いている。これにより、異形断面のワークであっても、打ち抜き部位に均等な押え力とせん断力を与えることできるとしている。
すなわち、部品の最終的な使用状態によっては、一面が平板状で、裏面が打ち抜きプレス加工方向で厚みが異なるワークを、該裏面にダイスを当接させ、該平板方向からパンチで打ち抜く打ち抜きプレス加工方法を必要とする場合がある。例えば、平板方向にバリやかえりが出ていると製品の機能上問題となる場合である。特許文献1のプレス方法では、平板方向にバリ等が発生するため、バリ取りの工程を設けなければならず、コストアップの問題があった。
一方、押え板の外周の内側には、傾斜面が形成されている。これは、磁気回路を的確に形成するためである。この切欠部を打ち抜きプレス加工方法で行う場合、傾斜部があるため、プレスの打ち抜き方向で厚さが異なっている。
一方、押え板の外側は、バリ等のない平板状であることが要求されるため、平板から打ち抜く必要がある。
せん断から破断への変化のタイミングにずれが生じると、ワーク最終面における破断の位置にずれが発生し、最終位置(ワークの裏面)において、切断位置が近傍の2箇所に生じるため、線状の抜きかすが生じる問題があった。
線状の抜きかすは、モータの固定子コアに付いたままだと、巻線の絶縁材を傷つけたりする恐れがある。また、線状の抜けかすがダイス上に落下すると、ワークである固定子コアの面を傷つけ、モータの性能に悪影響を与える2次的な問題を発生させる。
(1)一面が平板状で、裏面が打ち抜きプレス加工方向で厚みが異なるワークを、該裏面にダイスを当接させ、該平板方向からパンチで打ち抜く打ち抜きプレス加工方法であって、記ワークの厚みの大きい部位に、パンチを早いタイミングで当接させる。
(2)(1)に記載する打ち抜きプレス加工方法において、前記ワークの厚みが不連続に変化している部位では、前記パンチが当接するタイミングを、前記部位の両側よりも遅くすることを特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する打ち抜きプレス加工方法において、前記パンチの先端形状が、前記プレス加工でワークが破断されたときの、せん断面と破断面との境界線の形状に対応していることを特徴とする。
(4)一面が平板状で、裏面が打ち抜きプレス加工方向で厚みが異なるワークを、該裏面にダイスを当接させ、該平板方向からパンチで打ち抜く打ち抜きプレス加工方法で使用される打ち抜きプレス金型であって、パンチの先端形状が、プレス加工でワークが破断されたときの、せん断面と破断面との境界線の形状に対応している。
一面が平板状で、裏面が打ち抜きプレス加工方向に厚みが異なるワークの打ち抜き加工方法について説明する。仮に、ワークの厚みが大きい部分をA部とし、厚みの小さい部分をB部と呼ぶ。
本発明の打ち抜きプレス加工方法においては、パンチの先端部が平板形状でなく、ワークの厚みの大きな部位に対応する位置でパンチの下面が突出している。このため、パンチがワークと当接するタイミングに時間的な相違が生じる。すなわち、パンチの突出部分が、早いタイミングで、ワークの厚みの大きい部位(A部)に当接する。
パンチの突出がワークに当接したときに、パンチの一部に単位面積当たり大きな力がかかっているので、割れの発生、亀裂の発達が急速に進むと同時にパンチの側面が切断面を押付けながらこするため、その切断部分ではせん断による切断が行われ、その切断面はバニシ面となる。このとき、ワークとスクラップが接続している部分の変態能にはまだ余力があり、破断せずに、せん断が行われる。
しかし、さらに時間が経過すると、切断作用が、せん断から破断に変化する。これは、切断部分における材料の変態能が尽き、パンチ先端から亀裂が入るためである。これにより破断が行われ、切断面は、バニシ面から破断面へと変化する。
このとき、板厚差により破断に入るタイミングがずれると、ずれた破断の先端が行き違うため、ワークが、製品、スクラップ、打ち抜きかすの3つに分断され、線状の抜きかすが発生する。従来は、このずれを回避するために、パンチとダイスとの間のクリアランスを調整していたが、板厚差が大きい場合には、クリアランスの調整では、このずれを回避しきれなかった。
板厚差が大きい場合に生じる線状の抜きかすの発生を回避するために、本発明の打ち抜きプレス加工方法においては、A部におけるせん断から破断へ移行する箇所を表面より深い位置に移動させ、A部とB部とにおいて、せん断から破断に移行するタイミングを同じとさせることにより、A部で発達する切断面が、B部で発達する切断面と最終位置(ワークの裏面)で一致するようにさせている。これにより、線状の抜きかすの発生をなくしている。
ワーク1は、モータの固定子コアを構成するための積層鋼板の押え板であり、円盤形状をしていて、8箇所に切欠部が形成されている。また、前工程において、裏面の外周に沿って傾斜面が形成されているため、打ち抜き線に沿ってワーク1の厚さが相違している。パンチ2の平面図を図12示す。連続平板で供給される材料を打ち抜くためのパンチ2である。パンチ2の両側に略半円状の打ち抜き線21,22が形成されている。打ち抜き線21,22には、4箇所ずつ中心に向かって突出する突出部21b、22bが形成されている。
また、突出部21,22の図の垂直方向に平面より突き出た凸部21a、22aが形成されている。凸部21a、22aの間には、凹部21c、22cが存在する。
パンチ2の先端部である下面には、凹部2a(図12の凹部21a、22cに相当)が形成されている。ダイス3の上面には、凸部3aが形成されている。ダイス3の凸部3aの位置及び形状は、ワーク1の凹部1aの位置及び形状と一致させている。
(1)先端部である下面が平面状のパンチでワーク1を打ち抜いた場合、線状の抜けかすが発生することはあるが、一応、打ち抜くことは可能である。そのとき、せん断面と破断面との境界線は、ワーク1の凹部1aに対応して、凹部1aに対応する位置で、上向きに凸状の境界線となる。せん断面は一様でないが、破断面は一様であるため、破断面の境界線をせん断面と破断面の境界線とするとわかりやすい。
(2)次に、パンチの下面に、凸状の境界線の位置及び大きさに一致させて、凹部を形成する。そして、そのパンチにより打ち抜きプレス加工を行う。そうすると、せん断面と破断面の境界線が少し変化する。
(4)(3)の作業を数回繰り返すことにより、パンチ2の凹部2aの形状が、最終的なせん断面と破断面との境界線の凹部の位置及び形状と一致する。この一致した凹部を有するパンチ2が、本実施例の打ち抜きプレス加工方法で使用しているパンチ2の形状である。
すなわち、ワーク1を打ち抜きプレス加工した最終的なワーク1の切断面を図9に示す。せん断によるバニシ面11と破断面12が形成されている。バニシ面11と破断面12との境界線13の、凹部1aに対応した位置に境界線13の凹部13aが形成されている。この凹部13aとパンチの凹部2aとが、位置及び形状で一致させている。
図2は、ダイス3の上面にワーク1がセットされた第1工程を示す。第1工程では、ワーク1を固定するためのブランクホルダ4、パンチ2は、ワーク1から離れた位置にある。Cは、パンチ2とダイス3とのクリアランスを示している。
図3は、ワーク1が固定される第2工程を示す。第2工程では、ブランクホルダ4が下降してダイス3と共にワーク1を、打ち抜きプレス加工中にずれないように固定する。
図4は、ワーク1にパンチ2が当接を開始した第3工程を示す。第3工程は、パンチ2の先端部である下面がワーク1に当接した状態を示している。図5は、図4のA矢視図を示す。ワーク1の凹部1aは、ダイス3の凸部3aと嵌合されている。パンチ2の下面の凹部2aの中心線は、ワーク1の凸部1aの中心線と位置が一致している。ここで、パンチ2の凹部2a以外の平面部がワーク1に当接し、パンチ2の凹部2aは、ワーク1から離れている。
すなわち、パンチ2の先端部が平板形状でなく、パンチ2がワーク1と当接するタイミングに時間的な相違が生じる。パンチ2の凹部2a以外の平面部が早いタイミングでワーク1に当接し、せん断加工を開始している。
パンチ2の凹部2a以外の平面部がワーク1に当接したときに、パンチ2の凹部2a以外の平面部に単位面積当たり大きな力がかかっているので、割れの発生、亀裂の発達が急速に進むと同時にパンチ2の側面が切断面を押付けながらこするため、その切断部分ではせん断による切断が行われ、その切断面はバニシ面となる。すなわち、ワーク1とスクラップ5が接続している部分の変態能にはまだ余力があり、破断せずにせん断が行われる。
図8は、打ち抜きプレス加工により、ワーク1が打ち抜かれ、スクラップ5が下に落下する第6工程を示している。
第2実施例では、ワーク1が、上面1aが平板状であり、厚みが段差的に直角で変化する薄板部分1bが存在する。
ダイス3は、ワーク1と同じ段差部3aが形成されており、ワーク1は、ダイス3のぴったり保持される。パンチ2は、先端部に段差部2bを備えている。下面2aから段差部2bへ移行する箇所に凹部2cが形成されている。この段差部2b及び凹部2cは、第1実施例と同様に繰り返しの試行により、決定した形状である。
図11に、ワーク1の打ち抜きプレス加工した切断面を示す。バニシ面11と破断面12との境界線13は、下線13aから段差部13bへ移行する箇所に凹部13cが形成されている。パンチ2の先端形状は、図11の境界線13と一致している。
具体的には、不連続部に対応するパンチの箇所に凹部2cを形成することにより、実施される。
例えば、本実施例では、パンチ2の凹部2aの形状を複数回の試作により決定しているが、打ち抜きプレス加工時の応力分布等をシミュレーションすることにより、決定しても良い。
1a 凹部
2 パンチ
2a 凹部
3 ダイス
3a 凸部
11 バニシ面
12 破断面
13 境界線
Claims (3)
- 一面が平板状で、裏面が打ち抜きプレス加工方向で厚みが異なるワークを、該裏面にダイスを当接させ、該平板側からパンチで打ち抜く打ち抜きプレス加工方法において、
前記ワークの厚みの大きい部位に、前記パンチを早いタイミングで当接させること、
前記ワークの厚みが不連続に変化している部位では、前記パンチが当接するタイミングを、前記部位の両側よりも遅くすること、
を特徴とする打ち抜きプレス加工方法。 - 一面が平板状で、裏面が打ち抜きプレス加工方向で厚みが異なるワークを、該裏面にダイスを当接させ、該平板側からパンチで打ち抜く打ち抜きプレス加工方法において、
前記ワークの厚みの大きい部位に、前記パンチを早いタイミングで当接させること、
前記パンチの先端形状が、前記プレス加工でワークが切断されたときの、せん断面と破断面との境界線の形状と一致していること、
を特徴とする打ち抜きプレス加工方法。 - 一面が平板状で、裏面が打ち抜きプレス加工方向で厚みが異なるワークを、該裏面にダイスを当接させ、該平板側からパンチで打ち抜く打ち抜きプレス加工方法で使用される打ち抜きプレス金型において、
前記パンチの先端形状が、前記プレス加工でワークが切断されたときの、せん断面と破断面との境界線の形状と一致していることを特徴とする打ち抜きプレス金型。
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