JP5011723B2 - 液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッド及びその液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置に関する。
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドとしては、インクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録ヘッドが周知である。インクジェット記録ヘッドとしては、インク吐出に圧電体を用いたインクジェット記録ヘッド、特に圧電体の圧電縦効果又は圧電横効果を利用したアクチュエータを用いたヘッド構成が知られている。
このヘッド構成においては、アクチュエータの変形効率を高めるために、圧力室の一部に剛性の低い部分を設ける必要がある。しかし、圧力室に低剛性部を設けることは、圧力の発生効率を低下させることになるため問題となる。
一方、インクジェット記録ヘッドによる印字で高解像度化を図るには、ノズルピッチを狭めてノズルを高密度に、例えばマトリックス状に配置する必要があり、これに伴い、各ノズルに対応させて設ける圧電体については小型で且つ高密度に配置できる構造が求められる。
そこで、積層型の圧電体を用いてその内部に圧力室を形成し、この圧電体を積層方向に挟んでノズルプレートと供給路プレートを対向配置することにより、圧力室に低剛性部を設けなくとも圧力の発生効率が改善可能で、且つ、従来のカイザー型の圧電体に比べてノズル配置を高密度化できるヘッド構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平7−81055号公報
しかしながら、上記の構成では、圧力室を一方向(圧電体の積層方向)に変形させてインクに圧力(吐出エネルギー)を加えるため、圧力の発生効率が悪い。圧力の発生効率を向上させるためには、圧力室を複数方向に変形させ、圧力室内の多くの面でインクに圧力を加える方が望ましい。
また、上記のようなインクジェット記録ヘッドにおいては、インクの吐出効率がよいことが望まれる。例えば、圧電体において、インク吐出に寄与しない部分が変形すると、圧電体全体が不必要に振動し、インクの吐出特性が不安定となり、吐出効率が悪くなる。
本発明は、上記事実を考慮し、液体を吐出する吐出効率のよい液滴吐出ヘッド及びその液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を提供することを目的とする。
本発明の請求項1に係る液滴吐出ヘッドは、筒状の圧電体と、前記圧電体の軸方向一端に形成された基体と、前記圧電体の軸方向に沿って前記基体を貫通し前記圧電体の中空部と連通する前記基体の中空部と、を有する圧電体基板と、前記基体の前記圧電体側とは反対側に接合され、前記圧電体に電流を供給するための配線パターンが形成され、前記基体の中空部と連通する連通路を有する電気配線基板と、を備え、前記圧電体は、前記配線パターンによって電流が供給されることで変形し、前記圧電体の中空部に供給される液体へ圧力を加え、前記連通路に通じるノズルから該液体を吐出させ、前記圧電体基板は、圧電性の異なる複数の圧電体層で形成されて前記圧電体の軸方向に層状とされ、前記複数の圧電体層のうち、前記基体の少なくとも一部を含むと共に前記電気配線基板に接合される側の圧電体層が、他の圧電体層よりも圧電性が低い低圧電性層で形成されている。
ここで、本発明の請求項1の構成では、圧電体基板は、圧電性の異なる複数の圧電体層で形成され、電気配線基板に接合される側の圧電体層は、他の圧電体層よりも圧電性が低い低圧電性層で形成されている。
このため、電気配線基板の接合面から圧電体基板の基体(駆動しても液体の吐出に寄与しない部分)へ、電流が誤って供給されても、電気配線基板に接合される側の圧電体層の圧電性が低いため、基体の駆動が抑えられ、圧電体基板全体の振動が抑制される。これにより、液体の吐出が安定し、液体を吐出する吐出効率がよくなる。
本発明は、上記構成としたので、液体を吐出する吐出効率がよくなる。
以下に、本発明の液滴吐出ヘッド及びその液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。本実施形態では、液滴を吐出する液滴吐出ヘッド及びその液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置として、インクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録ヘッド及びそのインクジェット記録ヘッドを備えるインクジェット記録装置について説明する。
[第1実施形態]
まず、図1を用いて、インクジェット記録装置10の概要を説明する。なお、記録媒体は記録紙Pとして説明する。また、図1では、インクジェット記録装置10における記録紙Pの搬送方向を副走査方向として矢印Sで表し、その搬送方向と直交する方向を主走査方向として矢印Mで表す。
図1に示されるように、本実施形態に係るインクジェット記録装置10は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各インクジェット記録ユニット30を搭載するキャリッジ12を備えている。キャリッジ12は、記録紙Pの搬送方向上流側に一対のブラケット14が突設されており(図では片側のブラケット14のみを示している)、この一対のブラケット14にそれぞれ形成された円形孔には、主走査方向に架設されたシャフト20が挿通されている。
キャリッジ12に対し主走査方向の両端側には、主走査機構を構成する駆動プーリー(図示省略)と従動プーリー(図示省略)が配設されている。これらの駆動プーリーと従動プーリーとに巻回されて、主走査方向に走行するタイミングベルト22の一部がキャリッジ12に固定されている。これにより、キャリッジ12は、駆動プーリーの回転駆動によってタイミングベルト22が主走査方向に走行すると、一対のブラケット14がシャフト20にガイドされて主走査方向に往復移動する。
インクジェット記録装置10の前側下部には、画像記録前の記録紙Pを束状にして収納しておく給紙トレイ26が設けられている。この給紙トレイ26の上方には、上記各色のインクジェット記録ユニット30によって画像が記録された記録紙Pが排出される排紙トレイ28が設けられている。また、キャリッジ12及びシャフト20の下方には、給紙トレイ26から1枚ずつ給紙された記録紙Pを所定のピッチで副走査方向へ搬送する搬送ローラー及び排出ローラーからなる副走査機構18が設けられている。
その他、このインクジェット記録装置10には、画像記録時において各種設定を行うコントロールパネル24や、メンテナンスステーション(図示省略)等が設けられている。メンテナンスステーションは、キャップ部材、吸引ポンプ、ダミージェット受け、クリーニング機構等を含んで構成されており、吸引回復動作、ダミージェット動作、クリーニング動作等のメンテナンス動作を行うようになっている。
また、各色のインクジェット記録ユニット30は、図2〜図5に示されるインクジェット記録ヘッド50と、それにインクを供給するインクタンク(図示省略)とが一体に構成されたものであり、インクジェット記録ヘッド50の下面(インク吐出面)に形成された複数のノズル62(図2参照)が、記録紙Pと対向するようにキャリッジ12上に搭載されている。これにより、インクジェット記録ユニット30が主走査機構によって主走査方向に移動しながら、インクジェット記録ヘッド50のノズル62から記録紙Pへ選択的にインク滴を吐出することにより、所定のバンド領域に対して画像データに基づく画像の一部が記録される。
そして、主走査方向への1回の移動が終了すると、記録紙Pは、副走査機構18によって副走査方向に所定ピッチ搬送され、再びインクジェット記録ユニット30(インクジェット記録ヘッド50)が主走査方向(前述とは反対方向)に移動しながら、次のバンド領域に対して画像データに基づく画像の一部が記録されるようになっており、このような動作を複数回繰り返すことによって、記録紙Pに画像データに基づく全体画像がフルカラーで記録される。
次に、このインクジェット記録装置10に搭載されたインクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)50について説明する。
本実施形態に係るインクジェット記録ヘッド50は、図2〜図5に示すように、図の下側からノズルプレート52、プリント配線基板54、圧電効果によりインクを吐出させる圧電アクチュエータとしての圧電体基板56、供給路プレート58、及びインクプールプレート60の順に積層され、各部材が互いに接合されて構成されている。
図2に示されるように、ノズルプレート52には円形貫通孔からなる複数のノズル62が所定の間隔でマトリクス状に配置されている。
プリント配線基板54には、ノズルプレート52の各ノズル62と対応する位置に、ノズル径よりも少し大径の円形貫通孔からなる連通路64がそれぞれ形成されている(図4(B)及び図5(B)参照)。プリント配線基板54の上面には、各連通路64と対応する位置に、円環状のコンタクト電極66がそれぞれ形成されており(図4(B)及び図5(B)参照)、各コンタクト電極66は、プリント配線基板54の上面に形成された配線パターン68を介して、駆動IC70と電気的に接続されている。また、この駆動IC70へは、外部(ヘッド制御部)から制御信号(画像記録命令)が入力され、その制御信号に基づいて、以下に説明する圧電体基板56の各圧電体72に電気信号(駆動信号)を送信し、各圧電体72をそれぞれ所定のタイミングで駆動させる。
図2に示すように、プリント配線基板54の上面の、連通路64が形成されていない端部には、共通接続用電極67が一列に形成されている。共通接続用電極67は、プリント配線基板54の上面に形成された配線パターン69を介して、GND電位に接続されている。
圧電体基板56は、圧電体で形成された長方形板状の基体75、上記の駆動IC70によって個別に駆動される円筒状の圧電体72及び、共通電極接続用圧電体73を備えている。圧電体72は、各ノズル62及び各連通路64に対応して、基体75上にマトリクス状に配置され、基体75と一体的に形成されている。基体75の周縁部には、内側よりも厚みの厚い枠部75Aが構成されている。
圧電体72には、厚み方向に貫通した中空部Rが形成され、圧電体72の中空部Rは、基体75の裏面側まで貫通されている。中空部Rの内径は連通路64よりも少し大径とされている(図4(B)及び図5(B)参照)。
共通電極接続用圧電体73は、圧電体72と略同一形状とされ、共通接続用電極67に対応する位置に形成されている。共通電極接続用圧電体73の高さは、圧電体72の高さよりも低く(少なくとも後述する第1電極78、第2電極74の厚み分低く)構成されている。
ここで、本実施形態の構成では、圧電体基板56が圧電性の異なる2層の圧電体層で形成され、プリント配線基板54に接合される側(底面側)の圧電体層56Aは、プリント配線基板54に接合されない側(上面側)の圧電体層56Bよりも圧電性(圧電定数)が低い低圧電性層で形成されている。本実施形態では、圧電体基板56の基体75の全部が低圧電性層で形成されている。なお、基体75の一部が低圧電性層で形成される構成であってもよい。
圧電体層56Aに用いられる圧電性(圧電定数)が低い低圧電性層としては、図9に示すように、例えば、NECトーキン製のN−61(材料名)が用いられる。N−61は、圧電定数d33が296pm/V、圧電定数d31が−132pm/V、線膨張係数が12×10−7/℃となっている。
また、圧電体層56Bには、圧電体層56Aよりも圧電性(圧電定数)が高い材料として、例えば、NECトーキン製のN−10(材料名)が用いられる。N−10は、圧電定数d33が635pm/V、圧電定数d31が−287pm/V、線膨張係数が14×10−7/℃となっている。
図4(B)、図5(B)に示すように、圧電体72、及び共通電極接続用圧電体73の外周面には、第2電極74が外周面全面を被覆するよう形成されている。各圧電体72、及び共通電極接続用圧電体73の第2電極74は、基体75の上面に形成された共通電極76を介して互いに電気的に接続されている。また、圧電体72、共通電極接続用圧電体73の内周面には、第1電極78が内周面全面を被覆するよう形成されている。各圧電体72の第1電極78は、下端部をプリント配線基板54上の各コンタクト電極66に接触させて電気的に接続されている。
共通電極接続用圧電体73の先端面には、先端面電極73Cが形成されている(図5(A)参照)。したがって、共通電極接続用圧電体73では、第1電極78、及び、先端面電極73Cは、第2電極74と接続されており、共通電極接続用圧電体73に設けられた中空部Rから、各圧電体72に共通の第2電極74が引き出され、配線パターン69を介してGND電位に接続されている。
このように、筒状の圧電体72では、第2電極74を外周面に、第1電極78を内周面に設けていることにより、分極方向が圧電体72の内外方向となるよう、詳細には、圧電体72の外側から内側へ向かう方向となるよう構成されている。また、この圧電体72は、分極方向の側面(外側壁)が基体75に繋がれた構造であることにより、所謂Wall型の圧電体として構成されている。これにより、駆動ICからの電気信号が第1電極78、第2電極74間に配置された圧電体72に印加されると、圧電体72は後述する所定の変形動作を行う。
供給路プレート58には、圧電体基板56の各圧電体72と対応する位置に、圧電体72の内径よりも少し小径の円形貫通孔からなる供給路80がそれぞれ形成されている(図4(B)及び図5(B)参照)。供給路プレート58の下面における各圧電体72との対応位置には、供給路80を中心として圧電体72の外径と略同径の円形状に突出された突出部(厚肉部)82がそれぞれ設けられ、これらの突出部82は各圧電体72に強固に接合されている。また、各突出部82はそれぞれ繋がれてその繋ぎ部(突出部82の周囲)は供給路プレート58本体及び突出部82よりも薄肉とされており、この繋ぎ部によって低剛性のダンパ部84が形成されている。
供給路プレート58を圧電体基板56に積層すると、図5(A)、(B)に示されるように、筒状の圧電体72の中空部Rに圧力室86が形成されるこの圧力室86は、上壁面86Aが突出部82の下面(可動内壁面)によって形成され、周面状とされた内側壁面86Bが、第1電極78が被覆形成された圧電体72の内周面(変形部)によって形成されている。
図4(A)及び図5(A)に示されるように、インクプールプレート60は、下面側に空洞部が形成されており、上面には、空洞部に連通されたインクインレット(インク供給路)88が設けられている。このインクプールプレート60を供給路プレート58に積層すると、上記の空洞部によって供給路プレート58との間にインクプール90が形成される。また、供給路プレート58のダンパ部84は、インクプール90の内壁の一部を構成する構成部位となっており、このインクプール90には、外部(インクタンク)からインクインレット88を通しインクが供給されて貯留される。
本実施形態のインクジェット記録ヘッド50は以上の構成とされており、このインクジェット記録ヘッド50では、上述したように、ノズル62からインクプール90までの各部(ノズル62、連通路64、圧力室86(圧電体72)、供給路80、及びインクプール90)が、各構成部材によって層状に配置されている。
次に、上述した本実施形態のインクジェット記録ヘッド50による印字(インク吐出)動作及び作用について説明する。
インクジェット記録ヘッド50による印字では、まず、インクプール90に貯留されたインクが供給路80を通して圧力室86に供給され、さらに、圧力室86から連通路64を通してノズル62まで充填される。
ここで、圧電体72は、第1電極78、第2電極74間に電気信号が加えられないと、図6(A)に示されるように、円筒状のまま形状が保たれる。印字命令によって第1電極78、第2電極74間に電気信号が加えられると、圧電体72は、図6(B)に示されるように、軸方向断面で見ると樽状に膨張するよう変形する。
本実施形態の圧電体72では、図6(C)に示されるように、分極方向に電気信号を加え、それと平行方向に歪みを生じさせる圧電縦効果(d33)により、矢印d33で示した径方向に膨張変形し、さらに、分極方向に電気信号を加え、それと垂直方向に歪みを生じさせる圧電横効果(d31)により、矢印d31(a)で示した軸方向に圧縮変形し、矢印d31(b)で示した周方向に収縮変形する。このように、この円筒状の圧電体72は、圧電縦効果による径方向、圧電横効果による軸方向及び周方向の3方向に変形する。
ここで、圧電体72の圧電横効果による軸方向への圧縮変形により、圧電体72の上端面に接合された供給路プレート58の突出部82、すなわち圧力室86の上壁面86Aがノズル62側へ移動し(図6(B)の矢印A)、圧力室86内のインクを加圧し圧縮する。さらに、圧電体72の圧電縦効果による径方向への膨張変形と、圧電横効果による周方向への収縮変形とが合わされて、圧電体72の内周面(変形部)、すなわち圧力室86の内側壁86Bが内方へ膨出し(図6(B)の矢印B)、圧力室86内のインクを加圧し圧縮する。そして、これらの2つの変形動作による圧力室86の2方向への変形によって加圧された圧力室86内のインクは、連通路64を介しノズル62からインク滴として吐出される。
続いて、第1電極78、第2電極74への電気信号の印加を停止し、圧電体72に蓄積された電荷を放電すると、圧電体72は、図6(B)の状態から図6(A)に示される元の円筒形状に戻る。そしてこれに伴い、ノズル62内に形成されたメニスカスの復帰力によって、吐出された分のインクがインクプール90から供給路80を通して圧力室86内に補充される。
このインク吐出動作を繰り返すことにより、インクジェット記録ヘッド50のノズル62からインク滴が連続的に吐出されて、用紙等に印字される。
ここで、本実施形態では、第1電極78、第2電極74間に電気信号が加えられた際に、共通電極76とプリント配線基板54の配線パターン68との間で誤って通電し(図5(B)参照)、圧電体基板56の基体75に電流が流れた場合でも、基体75は、圧電性が低いため、基体75の駆動が抑えられ、圧電体基板56全体の振動が抑制される。これにより、インクの吐出が安定し、インクを吐出する吐出効率がよくなる。
また、本実施形態のインクジェット記録ヘッド50では、インクプール90から供給路80を介して圧力室86に供給されたインクを、ノズル62からインク滴として吐出させるため、圧電体72の変形によって圧力室86を変形させ、圧力室86内のインクに圧力を加える構成であるが、この圧電体72は圧電縦効果及び圧電横効果の変形によって圧力室86を2方向へ変形させるため、例えば圧電縦効果のみ、又は、圧電横効果のみの変形によって圧力室を変形させる場合に比べ、圧力の発生効率が向上する。
また、本実施形態では、圧力室86の内側壁86Bを形成する圧電体72の変形部である内周面が、圧力室86内のインクを直接的に加圧するため、インクに加えられる圧力の損失が小さくされ、圧電体72の変形によって発生された圧力がインクに効率よく伝達される。
また、本実施形態は、圧電体72の変形に伴って圧力室86の上壁面86Aが移動し、圧力室86内のインクを吐出方向(ノズル62側)へ加圧/減圧する構成であり、これにより、圧力室86のインク吐出方向への変形が可能となり、圧力の発生効率を向上することができる。また、この可動構造とした圧力室86の上壁面86A(可動内壁面)を供給路プレート58(突出部82)によって形成していることにより、このような可動内壁面を形成するために専用のプレート等を設ける場合に比べて、インクジェット記録ヘッド50を小型に構成できる。
また、本実施形態では、圧電体72を円筒状に形成してその内部に圧力室86を設けていることにより、圧力室86内のインクが、圧電体72の内周面全面(圧力室86の内側壁面86B)によって加圧されるようになり、圧力の発生効率を向上することができている。さらに、このような円筒状の圧電体72であれば、圧電体72(圧力室86)及びノズル62を高密度に配置することができるため、印字画像の高解像度化を実現できる。
また、本実施形態では、上述したインク吐出動作で圧電体72が高速駆動されるが、この高速駆動に伴い圧電体72及び圧力室86の上壁面86A(突出部82)が振動する際に、突出部82同士を繋いで給路プレート本体よりも低剛性とされたダンパ部84によってその振動が減衰される。これにより、隣接する圧電体72間での駆動動作の影響(クロストーク)を低減することができる。
また、このダンパ部84はインクプール90の内壁の一部を構成する構成部位であるため、インク滴を吐出するために圧力室86で発生された圧力はダンパ部84によって吸収される。これにより、インク滴吐出時に特定の圧力室86で発生した圧力が供給路80からインクプール90へ伝わり、隣接する圧力室86での圧力発生に及ぼす悪影響を改善することができる。したがって、インク吐出性能が安定する。
また、本実施形態では、インクジェット記録ヘッド50に設ける各部(ノズル62、連通路64、圧力室86(圧電体72)、供給路80、及びインクプール90)を異なる層に配置していることにより、それらの各部を複数の構成部材に振り分けて形成し、各構成部材を積層することでインクジェット記録ヘッド50を製造することができる。これにより、インクジェット記録ヘッド50の製造性が向上する。
また、本実施形態のインクジェット記録装置では、上記のインクジェット記録ヘッド50を備えることで低消費電力化が図られる。
なお、第1実施形態では、圧電性の異なる2層の圧電体層で形成されていたが、本発明の構成としては、3層以上の圧電体層で形成されていてもよい。その場合においては、プリント配線基板54に接合される側(底面側)の圧電体層が、他の圧電体層(少なくとも、直上に設けられた圧電体層)よりも圧電性が低い低圧電性層で形成する。
次に、本実施形態のインクジェット記録ヘッド50の製造方法について説明する。
まず、圧電体基板56の基体75、圧電体72、及び共通電極接続用圧電体73の製造について説明する。図7(A)に示すように、長方形板状の圧電体板40Aと、圧電体板40Aよりも圧電性の低い材料で形成された長方形板状の圧電体板40Bとを積層し、焼成して、圧電体板40Aと圧電体板40Bとを接合して、圧電性の異なる2層の圧電体層を有する圧電体板40を形成する。圧電体板40Aは、圧電性(圧電定数)の高い材料として、例えば、上述したNECトーキン製のN−10(材料名)が用いられる(図9参照)。圧電体板40Bとは、圧電性(圧電定数)の低い材料として、例えば、上述したNECトーキン製のN−61(材料名)が用いられる(図9参照)。
なお、圧電体板40Aと圧電体板40Bとを、それぞれ焼成した後に、接着剤で接合して、圧電性の異なる2層の圧電体層を有する圧電体板40を形成してもよい。
図7(B)に示すように、形成された圧電体板40に、貫通口(圧電体72及び共通電極接続用圧電体73の中空部Rとなる部分)をマトリクス状に形成する。なお、貫通口(中空部R)は、圧電体板40の焼成前に形成してもよい。貫通口(中空部R)の形成は、サンドブラスト、焼成前であればパンチ等により行うことができる。
次に、図7(C)に示すように、共通電極接続用圧電体73が配置される部分(K)を直線上に所定の深さ分除去する。ここでの除去は、ダイシング加工等によりおこなうことができる。
次に、図7(D)に示すように、圧電体72が形成される位置と共通電極接続用圧電体73が形成される位置との間に、分離溝48を形成して、圧電体72及び共通電極接続用圧電体73に対応する部分をマトリクス状に分離する。分離溝48は、圧電体板40Bに達するように形成され、これにより、圧電体基板56の基体75となる部分が、圧電性の低い材料である圧電体板40Bで形成される。ここでの分離は、ワイヤー加工、ダイシング加工等により行うことができる。
上記のようにして、電極形成前の圧電体基板56が製造される。
次に、プリント配線基板54と電極形成前の圧電体基板56を接合する。プリント配線基板54には、圧電体72の貫通口(中空部R)に対応する位置に連通路64が形成されている。連通路64は、貫通口(中空部R)よりも小径とされている。
プリント配線基板54と電極形成前の圧電体基板56の接合は、図8(A)に示すように、圧電体基板56の基体75側とプリント配線基板54の配線面とを対向させ、プリント配線基板54上面のコンタクト電極66が圧電体72の貫通口(中空部R)へ露出されるように、また、共通接続用電極67が共通電極接続用圧電体73の貫通口(中空部R)へ露出されるようにして接合する。
次に、図8(B)に示すように、圧電体基板56側の全面、及び、プリント配線基板54の連通路64の内壁に、電極膜Dを形成する。電極膜Dの形成は、Cuの蒸着、スパッタリング等により行うことができる。これにより、電極膜Dとプリント配線基板54のコンタクト電極66、共通接続用電極67も接続される。
そして、図8(C)に示すように、圧電体72の先端面72Cに形成された電極膜Dを、除去する。電極膜Dの除去は、CMPなどの片側研磨により行うことができる。これにより、電極膜Dは圧電体72の内壁72Aに形成された第1電極78と、圧電体72の外側壁72Bに形成された第2電極74とに分離される。
次に、ノズルプレート52をプリント配線基板54の下側に接合し、供給路プレート58を圧電体基板56の上側に接合する。このとき、ノズル62と連通路64とが連通されるように、また、中空部Rと供給路80とが連通されるように位置合わせを行って接合する。そして、供給路プレート58の上部にインクプールプレート60を接合して、インクジェット記録ヘッド50が製造される(図5参照)。
上記製造方法によれば、1工程で電極膜Dを形成し、その後、圧電体72の先端面72C部分の電極膜Dを除去することにより、容易に第1電極78と第2電極74とを形成することができる。また、コンタクト電極66、共通接続用電極67と電極膜との接続も電極膜形成の工程で行うことができる。
さらに、共通電極接続用圧電体73を圧電体72よりも低くしているので、圧電体72の先端面72C部分の電極膜Dを除去する際に、共通電極接続用圧電体73の先端面73Aの電極膜は研磨により除去されず、中空部Rを経由させて共通の電極を容易にプリント配線基板54側に引き出すことができる。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。また、インクジェット記録装置の全体構成は、第1実施形態と同一であるので、説明を省略する。
第2実施形態は、第1実施形態に係るインクジェット記録ヘッド50において、圧電体基板56の構成を変形した変形例である。
第2実施形態に係る圧電体基板57は、第1実施形態に係る圧電体基板56と同様に、圧電体で形成された長方形板状の基体75、円筒状の圧電体72及び、共通電極接続用圧電体73を備えている(図10(A)参照)。
この圧電体基板57は、3層の圧電体層で形成され、プリント配線基板54に接合される側(底面側)の第1圧電体層44、及び供給路プレート58が接合される側(先端側)の第2圧電体層46は、第1圧電体層44と第2圧電体層46との間に挟まれる第3圧電体層45よりも圧電性が低い低圧電性層で形成されている。
本実施形態では、圧電体基板57の基体75の全部が低圧電性層で形成されている。なお、基体75の一部が低圧電性層で形成される構成であってもよい。
第1圧電体層44及び第2圧電体層46に用いられる圧電性(圧電定数)が低い低圧電性層としては、例えば、上述のNECトーキン製のN−61(材料名)が用いられる(図9参照)。また、第3圧電体層45には、第1圧電体層44及び第2圧電体層46よりも圧電性(圧電定数)が高い材料として、例えば、上述のNECトーキン製のN−10(材料名)が用いられる(図9参照)。
この構成により、第1実施形態の作用効果に加えて、圧電体基板57の先端側を低圧電性層で構成する事により、この圧電体72の上面に形成される供給路プレート58との接合部の動作が小さくてすむため、この接合部での剥がれ等により信頼性を向上させることができる。また、圧電性の高い材料と低い材料を接合する部分(第1圧電体層44と第3圧電体層45との境目及び第2圧電体層46層と第3圧電体層45との境目)においても、急激に変形状態が変わらないため、接合部への応力が緩和され、接合部の信頼性を向上させることができる。
本実施形態において、圧電体基板57を製造する場合は、図10(B)に示すように、第1実施形態と同様に、第1圧電体層44なす長方形板状の圧電体板34と、第3圧電体層45なす長方形板状の圧電体板35と、第2圧電体層46なす長方形板状の圧電体板36と、を積層し、焼成することにより、圧電体板34と圧電体板35と圧電体板36を互いに接合して、3層の圧電体層を有する圧電体板41を形成する。
この圧電体板41をもとに、第1実施形態と同様の手順により圧電体基板57が製造される(図7参照)。なお、圧電体板34と圧電体板35と圧電体板36とをそれぞれ焼成した後に、接着剤で接合して、3層の圧電体層を有する圧電体板41を形成してもよい。
本実施形態では、圧電性の低い第1圧電体層44及び第2圧電体層46で、圧電性の高い第3圧電体層45を挟んでいるので、これらの圧電体層を接合する際に、ソリが発生せず、インクジェット記録ヘッド50の製造性が向上する。
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。また、インクジェット記録装置の全体構成は、第1実施形態と同一であるので、説明を省略する。
第3実施形態は、第1実施形態に係るインクジェット記録ヘッド50において、圧電体基板56の構成を変形した変形例である。
第3実施形態に係る圧電体基板61は、第1実施形態に係る圧電体基板56と同様に、圧電体で形成された長方形板状の基体75、円筒状の圧電体72及び、共通電極接続用圧電体73を備えている(図11(A)参照)。
第3実施形態では、図11に示すように、圧電体72の圧力室86(中空部R)が、下側(プリント配線基板54が接合される側)から、上側(供給路プレート58が接合される側)に向けて徐々に拡幅されるテーパー形状をしている。これにより、中空部Rの断面は、下方(ノズル側)から上方(供給路側)に向けて徐々に大きくなっており、中空部Rの内壁72Aが上方から下方に向けて、傾斜している。
この構成により、圧力室86内のインク排除体積を損なうことなく(圧電体72が変形したときに排出するインク量が変化することなく)、圧力室86内からの気泡排出性が優れる。このため液体の吐出が安定し、液体を吐出する吐出効率がよくなる。
なお、図12に示すように、中空部Rの断面が、下方(ノズル側)から上方(供給路側)に向けて徐々に大きくなり、中空部Rの内壁72Aが上方から下方に向けて、階段状に形成された圧電体基板63であってもよい。
また、本実施形態の構成は、第1実施形態又は、第2実施形態と併用してもよい。例えば、図12に示すように、圧電体基板63を、第2実施形態に係る第1圧電体層44、第3圧電体層45、第2圧電体層46を積層して形成してもよい。
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。また、インクジェット記録装置の全体構成は、第1実施形態と同一であるので、説明を省略する。
第4実施形態は、第1実施形態に係るインクジェット記録ヘッド50において、圧電体基板56の構成を変形した変形例である。
第4実施形態に係る圧電体基板65は、第1実施形態に係る圧電体基板56と同様に、長方形板状の基体上に形成された円筒状の圧電体72及び、共通電極接続用圧電体73を備えている(図13(A)、(B)参照)。また、圧電体72、及び共通電極接続用圧電体73の外周面には、第2電極74が外周面全面を被覆するよう形成されている。各圧電体72、及び共通電極接続用圧電体73の第2電極74は、基体の上面に形成された共通電極76を介して互いに電気的に接続されている。また、圧電体72、共通電極接続用圧電体73の内周面には、第1電極78が内周面全面を被覆するよう形成されている。
ここで、第4実施形態では、第1電極78、第2電極74及び共通電極76の上面に、第1電極78、第2電極74及び共通電極76を覆うように、電極をインクから保護する保護膜としての低透水性膜91が形成されている。
この低透水性膜91は、少なくとも、インクが流れる流路内に形成された第1電極78の表面に形成される。また、低透水性膜91材料としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン又は酸窒化シリコンを含む材料が用いられる。
これにより、第1電極78、第2電極74、共通電極76及び圧電体72が水分から遮断されるので長期信頼性に優れる。
また、圧電体基板56に形成された分離溝48には、圧電体72より低剛性の充填材(例えば、シリコンゴム)93が充填されており、圧電体72の周囲が充填材93で満たされている。この構成によれば、第1電極78、第2電極74、共通電極76及び圧電体72が水分から遮断する効果に加えて、圧電体72の圧電縦効果による圧力を、より圧力室46に伝達することができるので、吐出効率を向上させることができる。
なお、充填材93を圧電体72より低剛性のものとするのは、充填材93の剛性を圧電体72より高くすると、圧電体72の変形自体が抑えられてしまうためである。また、本実施形態の構成は、第1実施形態〜第3実施形態の構成と併用してもよい。
また、上記の第1〜第4実施形態では、液滴を吐出する液滴吐出装置として、インクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置について説明し、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドとして、インクを吐出して画像を記録するインクジェット記録ヘッドについて説明した。しかし、本発明に係る液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドとしては、記録用紙上へ画像を記録するものに限定されるものではなく、また、吐出する液体もインクに限定されるものではない。
例えば、高分子フィルムやガラス上にインクを吐出してディスプレイ用カラーフィルターを作成する装置、溶接状態の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成する装置など、工業的に用いられる液滴吐出装置及びその液滴吐出装置に用いられる液滴吐出ヘッド全般に対して、本発明を適用することができる。本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変形、変更、改良が可能である。
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の外観を示す斜視図である。 図2は、第1実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの分解状態を示す分解斜視図である。 図3は、第1実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの外観を示す斜視図である。 図4(A)は、第1実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの内部構成を部分破断にて示す斜視図であり、図4(B)は(A)の4B部を拡大した斜視図である。 図5は、第1実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの断面を示し、(A)は図3の5A−5A線断面図、(B)は(A)の5B部を拡大した断面図である。 図6(A)は、第1実施形態に係る圧電素子及び圧力室の未変形状態を示す断面図、図6(B)は、変形状態を示す断面図、図6(C)は、圧電素子の変形方向を示す拡大斜視図である。 図7は、第1実施形態に係る圧電体基板の製造工程を示す図である。 図8は、第1実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの製造工程の一部を示す図である。 図9は、第1実施形態に係る圧電体基板の材料を示す図である。 図10(A)は、第2実施形態に係る圧電体基板を示す断面図であり、図10(B)は、第2実施形態に係る圧電体基板のもとになる圧電体板を示す図である。 図11は、第3実施形態に係る圧電体基板を示す断面図である。 図12は、第3実施形態に係る圧電体基板の変形例を示す断面図である。 図13(A)は、第4実施形態に係る圧電体基板を示す断面図であり、図13(B)は、図13(A)の13B部を拡大した図である。
符号の説明
10 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
50 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
54 プリント配線基板(電気配線基板)
56 圧電体基板
56A 圧電体層
56B 圧電体層
57 圧電体基板
61 圧電体基板
63 圧電体基板
65 圧電体基板
68 配線パターン
72 圧電体
72A 内壁
74 第2電極(電極)
75 基体
76 共通電極(電極)
78 第1電極(電極)
80 供給路
91 低透水性膜(保護膜)
93 充填材
R 中空部

Claims (3)

  1. 筒状の圧電体と、前記圧電体の軸方向一端に形成された基体と、前記圧電体の軸方向に沿って前記基体を貫通し前記圧電体の中空部と連通する前記基体の中空部と、を有する圧電体基板と、
    前記基体の前記圧電体側とは反対側に接合され、前記圧電体に電流を供給するための配線パターンが形成され、前記基体の中空部と連通する連通路を有する電気配線基板と、
    を備え、
    前記圧電体は、前記配線パターンによって電流が供給されることで変形し、前記圧電体の中空部に供給される液体へ圧力を加え、前記連通路に通じるノズルから該液体を吐出させ、
    前記圧電体基板は、圧電性の異なる複数の圧電体層で形成されて前記圧電体の軸方向に層状とされ、
    前記複数の圧電体層のうち、前記基体の少なくとも一部を含むと共に前記電気配線基板に接合される側の圧電体層が、他の圧電体層よりも圧電性が低い低圧電性層で形成され、
    前記複数の圧電体層は、3層以上で構成され、
    前記複数の圧電体層のうち、前記基体の少なくとも一部を含むと共に前記電気配線基板に接合される側の圧電体層と、前記圧電体における前記基体側とは反対側の軸方向端部を含む圧電体層とが、他の圧電体層よりも圧電性が低い低圧電性層で形成されている液滴吐出ヘッド。
  2. 前記基体の全部が、前記低圧電性層で形成されている請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
  3. 請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
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