つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の難燃性接着剤組成物は、下記の(A)〜(D)を必須成分とし、かつ、(D)の配合量が(A)100重量部(以下「部」と略す)に対して35〜85部であり、上記(A)成分が、ポリアミド変性ポリアミドイミド樹脂およびポリエステル変性ポリアミドイミド樹脂の少なくとも一方であるという構成を備えている。
(A)溶解度パラメーターが8〜16である熱可塑性樹脂。
(B)エポキシ樹脂。
(C)硬化剤。
(D)前記の一般式(1−1)〜(1−3)からなる群から選ばれた少なくとも一つの繰り返し単位を有し、重量平均分子量が4,700〜8,400の範囲に設定された有機溶剤可溶のリン含有ポリエステル樹脂からなる難燃剤。
上記特定の熱可塑性樹脂(A成分)としては、溶解度パラメーターが8〜16の範囲であって、溶剤溶解性、柔軟性、耐熱性の点で、ポリアミド変性ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル変性ポリアミドイミド樹脂が用いられる。
また、上記特定の熱可塑性樹脂(A成分)として用いられる変性ポリアミドイミド(PAI)樹脂としては、例えば、下記の(a)〜(c)を共重合(縮重合)させて得られる変性PAI樹脂があげられる。
(a)芳香族イソシアネート化合物。
(b)芳香族系多価カルボン酸の無水物。
(c)カルボン酸両末端ポリエステルまたはカルボン酸両末端ポリアミド。
上記変性ポリアミドイミド(PAI)樹脂の形成に用いる、上記(a)の芳香族系イソシアネート化合物としては、分子構造中に芳香族環を有する化合物であれば特に限定はないが、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、反応性、コスト、溶解性の点で、MDI、TODIが好適に用いられる。
また、上記(b)の芳香族系多価カルボン酸の無水物としては、分子構造中に芳香族環を有し、上記(a)の芳香族系イソシアネート化合物と縮合反応するものであれば特に限定はないが、例えば、トリメリット酸の無水物(無水トリメリット酸)や、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸の無水物の他、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸(ピロメリット酸)、ベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ビフェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸、ビフェニル−2,2′,3,3′−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、フェナントレン−1,3,9,10−テトラカルボン酸、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)のような芳香族系多価カルボン酸の二無水物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、反応性、コスト、溶解性等の点から、トリメリット酸の無水物(無水トリメリット酸)が好適に用いられる。なお、本発明においては、上記芳香族系多価カルボン酸の無水物とともに、芳香族系多価カルボン酸を併用しても差し支えない。
つぎに、ポリアミドイミド樹脂骨格にソフトセグメント部を導入するためのものである、上記(c)のカルボン酸両末端ポリエステルまたはカルボン酸両末端ポリアミド(以下、両者をまとめて「カルボン酸両末端ポリマー」と略す)は、ポリエステルまたはポリアミドの両末端にカルボン酸を有するものであれば特に限定はない。
上記ポリエステルまたはポリアミドの両末端にカルボン酸を導入するために用いるカルボン酸としては、特に限定はなく、例えば、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記脂肪族カルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、シュウ酸、コハク酸、コルク酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸等があげられる。また、上記芳香族カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸等があげられる。
上記(c)のカルボン酸両末端ポリマーは、例えば、通常の製法にしたがって合成したポリエステルまたはポリアミドの両末端に、上記のようなカルボン酸を導入することにより得ることができる。なお、上記ポリエステルやポリアミドの合成法は、特に限定するものではなく、例えば、第4版 実験化学講座28 高分子合成(日本化学会編、1992年、丸善株式会社発行)の第208頁〜第231頁および第252頁〜第287頁に記載の方法に準じて作製することができる。
上記カルボン酸両末端ポリエステルは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、加熱装置、攪拌装置、還流装置、水分離器、蒸留塔および温度計を備えた反応槽に、アジピン酸やセバシン酸等のジカルボン酸と、メチルペンタンジオール,ノナンジオール,メチルオクタンジオール等のジオールとを仕込み、所定温度(例えば、220℃)まで所定時間(例えば、1時間)かけて昇温する。さらに所定温度(例えば、220℃)で縮重合反応を続けた後、所定温度(例えば、室温)まで冷却することにより、所望のカルボン酸両末端ポリエステルを得ることができる。
なお、カルボン酸両末端ポリアミドも、上記カルボン酸両末端ポリエステルの製法に準じて、両末端にカルボン酸を導入することにより、適宜作製することができる。
このようにして得られるカルボン酸両末端ポリマーの酸価は、30〜120mgKOH/gの範囲内が好ましく、特に好ましくは38〜112mgKOH/gの範囲内である。
また、上記カルボン酸両末端ポリマーの数平均分子量(Mn)は、900〜3800の範囲内が好ましく、特に好ましくは数平均分子量(Mn)が1000〜3000の範囲内である。
上記(c)から誘導される構造単位の含有割合は、上記変性ポリアミドイミド樹脂全体の5重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは5〜65重量%の範囲内である。すなわち、5重量%未満であると、柔軟性の効果が得られにくくなるからである。
上記(a)の芳香族イソシアネート化合物と、(b)の芳香族系多価カルボン酸の無水物および(c)のカルボン酸両末端ポリマーとの混合比は、モル比で、(a)/〔(b)+(c)〕=0.9/1〜1.4/1の範囲内が好ましく、特に好ましくは(a)/〔(b)+(c)〕=1/1〜1.25/1の範囲内である。すなわち、(a)のモル比が0.9未満であると、得られる変性PAI樹脂の分子量が小さくなり、引っ張り破壊歪みが低下する傾向がみられ、逆に(b)のモル比が1.4を超えると、得られる変性PAI樹脂の引っ張り弾性率が上昇し、柔軟性が悪くなる傾向がみられるからである。
上記(a)〜(c)を共重合させてなる変性PAI樹脂は、例えば、つぎのようにして調製することができる。すなわち、撹拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた反応容器を準備し、上記芳香族イソシアネート化合物と、無水トリメリット酸等の芳香族系多価カルボン酸の無水物と、カルボン酸両末端ポリエステル等のカルボン酸両末端ポリマーとを所定量配合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP),N,N−ジメチルホルムアミド(DMF),N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC),γ−ブチロラクトン等の極性溶剤とを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら所定時間(好ましくは、1〜2時間)かけて所定温度(好ましくは、130〜150℃)まで昇温する。つぎに、所定温度(好ましくは、130〜150℃)で所定時間(好ましくは、約3〜5時間)反応させた後、反応を停止することにより、変性PAI樹脂を調製することができる。
上記変性PAI樹脂は、数平均分子量(Mn)が5,000〜100,000の範囲内が好ましく、特に好ましくはMnが10,000〜50,000の範囲内である。すなわち、PAI樹脂のMnが5,000未満であると、引き裂き強度が低くなり、耐久性が悪化し、逆にPAI樹脂のMnが100,000を超えると、溶液粘度が高くなり加工性が悪化する傾向がみられるからである。なお、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定することができる。
上記特定の熱可塑性樹脂(A成分)の溶解度パラメーターは8〜16であり、好ましくは9〜14である。すなわち、熱可塑性樹脂(A成分)の溶解度パラメーターが8未満または16を超えると、特定のリン含有ポリエステル樹脂からなる難燃剤(D成分)等との相溶性が悪くなり、熱可塑性樹脂(A成分)の強度が低下するからである。
本発明において、溶解度パラメーターとは、Fedors法〔Polm.Eng.Sci.、14巻(2)、147〜154頁(1974)〕によって算出される値をいう。
また、上記特定の熱可塑性樹脂(A成分)の数平均分子量(Mn)は、機械特性の観点から、1,000〜100,000が好ましく、特に好ましくは5,000〜50,000である。
つぎに、上記特定の熱可塑性樹脂(A成分)とともに用いられるエポキシ樹脂(B成分)としては、特に限定はなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記エポキシ樹脂(B成分)のエポキシ当量は、130〜2200の範囲内が好ましく、特に好ましくは160〜1000の範囲内である。
上記エポキシ樹脂(B成分)の配合量は、上記特定の熱可塑性樹脂(A成分)100部に対して5〜80部が好ましく、特に好ましくは10〜60部である。すなわち、エポキシ樹脂(B成分)が5部未満であると、接着性が悪くなる傾向がみられ、逆に80部を超えると、柔軟性が低下し、曲げに対する機械的強度が不足する傾向がみられるからである。
本発明の難燃性接着剤組成物の必須成分である硬化剤(C成分)としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、芳香族ジアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、カルボン酸系硬化剤、フェノール系硬化剤、ジシアンジアミド、三弗化硼素アミン錯塩等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記イミダゾール系硬化剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチル−1−イミダゾリル)−エチル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2−ウンデシル−1−イミダゾリルエチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2−エチル−4−メチル−1−イミダゾリルエチル)−1,3,5−トリアジン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記硬化剤(C成分)の配合量は、上記エポキシ樹脂(B成分)を硬化させることができる適切量であれば特に限定はなく、通常、B成分100部に対して0.01〜20部が好ましく、特に好ましくは0.05〜5部である。すなわち、硬化剤(C成分)が0.01部未満であると、B成分の硬化が不充分なために、半田耐熱性が悪くなる傾向がみられ、逆に20部を超えると、B成分の硬化が進行しすぎて加工性(ラミネート性)が悪化する傾向がみられるからである。
つぎに、前記特定のリン含有ポリエステル樹脂からなる難燃剤(D成分)は、前記一般式(1−1)〜(1−3)からなる群から選ばれた少なくとも一つの繰り返し単位を有するものであり、前記A,B両成分との相溶性に富み、かつ、非ハロゲン系難燃剤でありながら、ハロゲン系難燃剤と同等の難燃効果を奏するものであって、これが本発明の特徴である。
上記一般式(1−1)および(1−2)で表されるリン含有ポリエステル樹脂のジカルボン酸残基Dを構成するジカルボン酸(d1)としては、例えば、芳香族ジカルボン酸,芳香脂肪族ジカルボン酸,脂肪族ジカルボン酸,脂環式ジカルボン酸等があげられる。
上記芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8〜20のもの、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(1,5−、2,5−、2,6−および2,7−体)酸、ビフェニルジカルボン酸(2,2′−、3,3′−および4,4′−体)、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸(2,5−および2,6−体)およびこれらの混合物があげられる。
また、上記芳香脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数9〜20のもの、例えば、フェニレンジアセティック酸(o−、m−およびp−体)、フェニレンジプロピオン酸(o−、m−およびp−体)、フェニルマロン酸、フェニルグルタル酸およびジフェニルコハク酸があげられる。
また、上記脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数2〜20の飽和または不飽和ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマール酸およびイタコン酸があげられる。
また、上記脂環式ジカルボン酸としては、炭素数6〜50もの、例えば、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−ジカルボキシメチルシクロヘキサン、1,4−ジカルボキシメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシル−4,4′−ジカルボン酸およびダイマー酸があげられる。
上記ジカルボン酸残基Dを構成する(d1 )のなかでも、芳香族ジカルボン酸(特にテレフタル酸およびイソフタル酸)およびこれと他のジカルボン酸との併用(重量比で通常100/0〜65/35、好ましくは100/0〜80/20)が好ましい。
つぎに、上記ジオール残基Gを構成するジオール(g1)としては、数平均分子量(水酸基価による、以下同様。以下「Mn」と略す)が500以下の低分子ジオールおよびMnが500を超える高分子ジオールがあげられる。
上記低分子ジオールとしては、例えば、脂肪族ジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等の炭素数2〜10のアルキレングリコール)、脂環式ジオール〔炭素数5〜20のもの、例えば、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、水添ビスフェノ―ルA等〕、芳香脂肪族ジオール〔炭素数10〜20のもの、例えば、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、ビスヒドロキシメチルジフェニルエーテル等〕等の2価アルコール、および2価フェノール〔炭素数6〜20のもの、例えば、ハイドロキノン等の単環2価フェノール、ビスフェノールA等のビスフェノール〕のアルキレン(炭素数2〜4)オキシド低モル付加物(Mn500以下)、およびこれらの2種以上の混合物があげられる。
また、上記高分子ジオールとしては、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリアクリルジオール、ポリブタジエンジオール、およびこれらの2種以上の混合物等があげられる。上記ポリエーテルジオールとしては、水,低分子(炭素数2〜6)ジオール等の開始剤に、エチレンオキシド,プロピレンオキシド,テトラヒドロフラン等の炭素数2〜4のアルキレンオキシドを付加重合させて得られるものがあげられる。
上記ポリエステルジオールとしては、縮合系ポリエステルジオール、ラクトン系ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール等があげられる。
また、上記縮合系ポリエステルジオールとしては、ジカルボン酸(例えば、アジピン酸等の炭素数2〜20の脂肪族および芳香族ジカルボン酸)もしくはそのエステル形成性誘導体(例えば、ジメチルマレイン酸,無水マレイン酸等の炭素数4〜28の脂肪族および芳香族ジカルボン酸)とジオールの縮合反応で得られるものがあげられる。
上記ポリラクトンジオールとしては、ジオールを開始剤として炭素数4〜20のラクトン(ε−カプロラクトン等)を開環重合させて得られるポリエステルがあげられる。上記ポリカーボネートジオールとしては、ジオールと炭素数3〜20のアルキレンカーボネート(エチレンカーボネート等)の付加重合で得られるポリエステルがあげられる。これらの製造に用いるジオールとしては、前記低分子ジオール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール)およびポリエーテルジオールの少なくとも一方があげられる。
このポリアクリルジオールの製造方法としては、例えば、水酸基を有するアゾ系ラジカル重合開始剤と、水酸基を有する連鎖移動剤共存下に、ラジカル重合を行う方法、水酸基含有モノマーを(共)重合させる方法等があげられる。ポリブタジエンジオールとしては、末端に水酸基を含有するブタジエンと、他のビニルモノマー(例えば、スチレン、アクリロニトリル)の共重合体があげられる。
上記ジオール残基Gを構成するジオール(g1)のMnは、難燃性の観点から、1,000以下が好ましく、より好ましくは500以下、さらに好ましくは62〜350である。
また、上記ジオール(g1)のなかでも、炭素数が2〜6のアルキレングリコールが好ましく、特に好ましくはエチレングリコールである。
本発明における一般式(1−2)および(1−3)で表されるリン含有ポリエステル樹脂のポリラクトン基を構成するラクトンとしては、炭素数3〜20のもの、例えば、β−プロピオラクトン等のβ−ラクトン、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン、δ−バレロラクトン等のδ−ラクトン、ε−カプロラクトン等のε−ラクトン、エナントラクトン,ウンデカノラクトン,ドデカラクトン等の大環状ラクトン等があげられる。上記ラクトンを構成するアルキレン基は直鎖状、分岐状いずれでもよい。
一般式(1−2)および(1−3)におけるpは、2〜20であるが、2〜5が好ましい。すなわち、pが20を超えると、難燃性が悪化するからである。また、rは、1〜500であるが、10〜250が好ましい。すなわち、rが500を超えると、難燃性の悪化とともに、樹脂の強度が悪化するからである。
前記一般式(2)および(3)においてR1 、R4 およびR5 の脂肪族炭化水素基のうちのアルキル基としては、炭素数1〜22(好ましくは1〜6)の直鎖のアルキル(メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−デシル、n−ドデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、n−アイコシルおよびn−ドコシル等)基および分岐のアルキル(i−プロピル、i−、sec−およびt−ブチル、3−メチルブチル、2−エチルブチル、i−ヘプチル、2−エチルヘキシル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、i−ノニルおよびi−デシル等)基があげられる。
また、上記R1 、R4 およびR5 の脂肪族炭化水素基のうちのアルケニル基としては、炭素数2〜22(好ましくは2〜6)の直鎖のアルケニル(ビニル、1−および2−プロペニル、2−ブテニル、2−ペンテニル、デセニル、ドデセニル、トリデセニル、ヘキサデセニル、オレイル、アイコセニルおよびドコセニル等)基および分岐のアルケニル(i−プロペニル、i−ブテニル、i−オクタデセニルおよび2−メチル−1−ブテニル等)基があげられる。これらのなかでも、リン含量の観点から、炭素数2〜6の直鎖および分岐のアルケニル基が好ましい。
また、上記R1 、R4 およびR5 の脂環式炭化水素基としては、炭素数4〜8(好ましくは炭素数4〜6、特に好ましくは炭素数6)、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびシクロオクチル基があげられる。
また、上記R1 、R4 およびR5 の芳香環含有炭化水素基のうちのアリール基としては、炭素数6〜14(好ましくは炭素数6〜10、特に好ましくは炭素数6)、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、クミル基、オクチルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基があげられる。
また、上記R1 、R4 およびR5 の芳香環含有炭化水素基のうちのアリールアルキル基としては、炭素数7〜14(好ましくは炭素数7〜10、特に好ましくは炭素数7)、例えば、ベンジル基、フェネチル基およびメシチル基があげられる。
上記R1 、R4 およびR5 のなかでも、脂肪族炭化水素基(さらに好ましいのはアルキル基),芳香環含有炭化水素基(さらに好ましいのはアリール基)が好ましく、特に好ましくはn−ブチル基である。
つぎに、一般式(2)において、mおよびnは、同一または異なる1〜22(好ましくは1〜6、さらに好ましくは2〜3、特に好ましくは3)の整数である。(m+n)個のR2 およびR3 は同一でも異なっていてもよい。すなわち、mまたはnが22を超えると、難燃性が悪化するからである。
また、上記一般式(2)において、R2 およびR3 で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等があげられる。これらのうち、ポリエステル化反応時の反応性の観点から、メチル基が好ましく、特に好ましくは水素原子(H)である。
一般式(2)で表される基にはホスフィンオキサイドジカルボン酸(d2)(2000年4月27日、化学工業日報記載のもの)残基およびホスフィンオキサイドジオール(g2)(2000年4月27日、化学工業日報記載のもの)の残基の少なくとも一方が含まれる。
上記カルボン酸(d2)としては、例えば、つぎに示す化合物(d21)〜(d24)があげられる。これらのなかでも、難燃性付与効果の観点から、(d21)が好ましい。また、上記ジオール(g2)としては、例えば、つぎに示す化合物(g21)〜(g24)があげられる。これらのなかでも、難燃性付与効果の観点から、(g21)が好ましい。
上記ジカルボン酸(d2)およびジオール(g2)のうち、ポリエステル化反応の反応性の観点から、(d2)が好ましく、特に好ましくは(d21)である。
一般式(3)において、R4 とR5 とが互いに結合して形成する炭素数2〜76の2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数2〜76のアルキレン基,ビフェニレン基等があげられる。
一般式(3)において、qは0または1を示し、sおよびtは、それぞれ0〜2の整数を示す。これらq,sおよびtの組み合わせとしては、例えば、(q=0、s=1、t=0)、(q=1、s=1、t=0)および(q=0、s=1、t=2)があげられ、ポリエステル化の反応速度の観点から、ジカルボン酸残基の場合は(q=1、s=1、t=0)、ジオール残基の場合は(q=0、s=1、t=2)が好ましい。すなわち、qが1を超えると、ポリエステル化時の反応性が悪化するからである。また、sまたはtが2を超えると、ポリエステル化時の反応性が悪化するからである。
一般式(3)で表される基には、ホスフィン酸誘導体ジカルボン酸(d3)の残基およびホスフィン酸誘導体ジオール(g3)の残基の少なくとも一方が含まれる。
上記ジカルボン酸(d3)としては、例えば、つぎに示す(d31)〜(d34)があげられる。これらのうち、難燃性付与の観点から、(d31)が好ましい。また、上記ジオール(g3)としては、例えば、つぎに示す化合物(g31)、(g32)があげられる。これらのうち、難燃性付与効果の観点から、(g31)が好ましい。
前記のジカルボン酸(d3)およびジオール(g3)のうち、ポリエステル化反応の反応性の観点から、(d3)が好ましく、特に好ましくは(d31)である。
一般式(1−1)、(1−2)および(1−3)におけるDおよびGの少なくとも一部は、前記(d2)、(d3)の残基および(g2)、(g3)の残基の少なくとも一方であり、D中の(d2)または(d3)の当量%は、ポリエステル化反応の反応性および難燃性の観点から、5〜95%が好ましく、さらに好ましくは10〜90%である。また、G中の(g2)または(g3)の当量%は、ポリエステル化反応の反応性および難燃性の観点から、5〜95%が好ましく、さらに好ましくは10〜90%である。
一般式(1−1)、(1−2)および(1−3)における、kおよびrは、それぞれ1〜500を示し、特定の熱可塑性樹脂(A成分)への相溶性の観点から、10〜250が好ましい。すなわち、kまたはrが500を超えると、難燃性の悪化とともに、樹脂の強度も悪化するからである。
本発明において、特定のリン含有ポリエステル樹脂からなる難燃剤(D成分)は、ジカルボン酸(d1)およびそのエステル形成性誘導体〔酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル等〕の少なくとも一方と、ジオール(g1)、並びに(g2)、(g3)および(d2)の少なくとも一方と、(d3)およびそのエステル形成性誘導体〔酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル等〕の少なくとも一方から公知のポリエステルの製造方法(脱水エステル化法、エステル交換法、エステル化後重縮合する方法等)により製造することができる。
ジカルボン酸のエステル形成性誘導体のうち、酸無水物としては、炭素数4〜20のもの、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フタル酸があげられる。上記低級アルキルエステルとしては、前記のジカルボン酸(d1)の低級アルキルエステル、例えば、ジメチルテレフタル酸、ジメチルイソフタル酸があげられる。
ホスフィンオキサイドジカルボン酸(d2)のエステル形成性誘導体のうち、低級アルキルエステルとしては、(d2)の低級アルキル(炭素数1〜4)エステルがあげられる。ホスフィン酸誘導体ジカルボン酸(d3)のエステル形成性誘導体のうち、低級アルキルエステルとしては、(d3)の低級アルキル(炭素数1〜4)エステルがあげられ、酸無水物としては(d31)の酸無水物があげられる。
本発明における特定のリン含有ポリエステル樹脂からなる難燃剤(D成分)が得られるポリエステル化反応において、水酸基/カルボキシル基の当量比は、通常、1/1.5〜1.5/1であり、D成分の熱安定性の観点から、1.2/1〜1/1が好ましく、また得られるポリエステルの末端基は水酸基が好ましい。
ポリエステル化反応は通常、触媒の存在下に行われる。触媒としては従来一般に用いられているIIA族(Mg、Ca等)、IIB族(Zn等)、IIIA族(Al等)、IVA族(Ge、Sn等)、IVB族(Ti等)、VA族(Sb等)、VIIB族(Mn等)、VIII族(Fe等)の金属の化合物〔酸化物、塩化物、有機(アルキル基、アリール基等)金属化合物等〕があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記ポリエステル化反応の反応時間は、通常1〜50時間、好ましくは2〜20時間である。反応終点は得られたポリエステルの酸価または水酸基価で確認でき、酸価は、通常125以下、熱安定性の観点から、0〜90が好ましく、さらに好ましくは0〜5、特に好ましくは0である。水酸基価は、通常1〜250、好ましくは2.5〜100、特に好ましくは3〜20である。(酸価+水酸基価)は、通常1〜375、好ましくは2.5〜190、特に好ましくは3〜20である。
本発明における特定のリン含有ポリエステル樹脂としては、前記一般式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される繰り返し単位を有するポリエステル(A1)に加えて、一般式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される繰り返し単位とさらに(ポリ)アミド繰り返し単位を有するアミド変性ポリエステル(A2)、および一般式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される繰り返し単位とさらに(ポリ)ウレタン繰り返し単位を有するウレタン変性ポリエステル(A3)があげられる。
上記(ポリ)アミド繰り返し単位の一般式は、前記一般式(1−1)におけるO−G−O(Gはジオール残基)をHN−G−NH(Gはジアミン残基)に置き換えたもの、一般式(1−2)におけるOC−(CH2 )p −OをOC−(CH2 )p −NHに置き換えたもの、並びに一般式(1−3)におけるO−G−O(Gはジオール残基)をHN−G−NH(Gはジアミン残基)および/またはO−(CH2 )p −COをHN−(CH2 )p −COに置き換えたものとして表され、したがって、この(ポリ)アミド変性ポリエステルは、ポリエステル化反応に、さらにジカルボン酸とジアミンとの反応、アミノカルボン酸の自己縮合反応、ジカルボン酸へのラクタムの重付加反応またはジアミンへのラクタムの重付加反応等を加えることにより得ることができる。
上記ジカルボン酸としては、前記(d1)として例示したものがあげられる。ジアミンとしては、炭素数2〜20の脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン等)、炭素数6〜20の芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、メタキリレンジアミン等)、炭素数6〜20の脂環式ジアミン〔ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン等〕、およびこれらの2種以上の併用があげられる。
上記ジカルボン酸とジアミンとの反応における当量比は、通常、1/1.1〜1.1/1の範囲であり、1/1.05〜1.05/1が好ましい。アミノカルボン酸としては、炭素数4〜20、例えば、アミノヘプタン酸、アミノノナン酸およびアミノウンデカン酸があげられる。ラクタムとしては、炭素数3〜20のもの、例えば、β−ラクタム(β−プロピオラクタム等)、γ−ラクタム(γ−ブチロラクタム等)、δ−ラクタム(δ−バレロラクタム等)、ε−ラクタム(ε−カプロラクタム等)、大環状ラクタム(エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカラクタム等)等があげられる。ラクタムを構成するアルキレン基は直鎖状、分岐状いずれでもよい。
上記(ポリ)ウレタン変性ポリエステルの一般式は、前記一般式(1−1)におけるOC−D−CO(Dはジカルボン酸残基)をOC−HN−D−NH−CO(Dはジイソシアネート残基)に置き換えたものとして表され、したがって、この(ポリ)ウレタン変性ポリエステルは、ポリエステル化反応に、さらにジオールとジイソシアネートとのウレタン化反応を加えることにより得ることができる。
上記ジオールとしては、前記(g1)として例示したものがあげられる。また、上記ジイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素数を除く)6〜20の芳香族ジイソシアネート〔2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4′−および/または4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等〕、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート〔ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等〕、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネート〔イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート等〕、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート〔キシリレンジイソシアネート等〕、これらのジイソシアネートの変性物〔ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビュウレット基、ウレトジオン基、ウレトンイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物等〕およびこれらの2種以上の併用があげられる。上記ジオールとジイソシアネートの反応における当量比は、通常、1.1/1〜1/1.1であり、好ましくは1.05/1〜1.05/1である。
上記特定のリン含有ポリエステル樹脂を構成する、上記繰り返し単位の含有量は、D成分全体に基づいて、(ポリ)アミド繰り返し単位が通常0〜50モル%、好ましくは0〜20モル%、(ポリ)ウレタン繰り返し単位が通常0〜50モル%、好ましくは0〜20モル%である。
上記特定のリン含有ポリエステル樹脂の重量平均分子量(測定法:GPC法、以下同様。以下「Mw」と略す)は、4,700〜8,400である。すなわち、D成分のMwが2,000未満であると、半田耐熱性が劣り、逆に20,000を超えると、接着剤としての相溶性、溶剤溶解性が劣るからである。
本発明で用いる特定のリン含有ポリエステル樹脂は、公知の方法で製造することができ、例えば、特開2002−80731号公報に記載の方法に準じて製造することができる。
上記特定のリン含有ポリエステルからなる難燃剤(D成分)のリン含量は、難燃性および特定の熱可塑性樹脂(A成分)との相溶性の観点から、0.5〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは3〜15重量%、特に好ましくは4〜10重量%である。
上記特定のリン含有ポリエステル樹脂からなる難燃剤(D成分)の配合量は、上記特定の熱可塑性樹脂(A成分)100部に対して35〜85部であり、好ましくは40〜80部である。すなわち、上記特定のリン含有ポリエステル樹脂(D成分)の配合量が35部未満であると、難燃性が劣り、逆に85部を超えると、半田耐熱性が劣るからである。
上記特定のリン含有ポリエステル樹脂からなる難燃剤(D成分)は、有機溶剤に可溶である。本発明において、有機溶剤に可溶とは、濁ることなく透明な液の状態を室温下1ケ月保持していることをいう。
上記D成分が可溶な有機溶剤としては、特に限定はないが、本発明で用いる特定の熱可塑性樹脂(A成分)およびエポキシ樹脂(B成分)に対しても、溶解性を有するものが好ましい。
このリン含有ポリエステル樹脂からなる難燃剤(D成分)の使用の有無は、例えば、IR分析により解明することができる。
なお、本発明の難燃性接着剤組成物には、上記A〜D成分以外に、硬化促進剤、シランカップリング剤、熱老化防止剤、レベリング剤、消泡剤、無機質充填剤等の添加剤を必要に応じて適宜に配合しても差し支えない。
上記硬化促進剤としては、接着剤の分野において、エポキシ樹脂(B成分)の硬化促進剤として通常用いられるものであれば特に限定はなく、例えば、第三級アミン、硼弗化物、オクチル酸塩等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
本発明の難燃性接着剤組成物は、先に述べた各成分を混合、攪拌等することにより得ることができ、通常、溶剤に溶解して用いられる。上記溶剤としては、先に述べた各成分を溶解するようなものが好ましく用いられ、具体的には、メタノール,エタノール,i−プロピルアルコール,n−プロピルアルコール,i−ブチルアルコール,n−ブチルアルコール,ベンジルアルコール,エチレングリコールメチルエーテル,プロピレングリコールメチルエーテル,ジエチレングリコールモノメチルエーテル,ジエチレングリコールジメチルエーテル,ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,メチルアミルケトン,シクロヘキサノン,イソホロン等のケトン系溶剤、トルエン,キシレン,エチルベンゼン,メシチレン等の芳香族系溶媒、酢酸メチル,酢酸エチル,エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート,3−メトキシブチルアセテート等のエステル系溶剤、クロロホルム,四塩化炭素,ジクロロメタン,トリクロロメタン等の塩素系溶剤、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
そして、上記のように、本発明の難燃性接着剤組成物を溶剤に溶解して用いる際、その樹脂固形分濃度は、3〜80重量%に設定されていることが好ましく、より好ましくは10〜50重量%の範囲である。すなわち、上記濃度が80重量%を超えると、溶液の粘度が高くなりすぎるため、樹脂フィルム等の被塗工物に対し均一に塗工しにくく、逆に3重量%未満であると、所望する厚みの塗膜を形成するのが困難となるからである。
本発明の難燃性接着剤組成物の用途は、特に限定はなく、例えば、フレキシブル印刷配線板、電磁波シールド材等に用いられる。
つぎに、本発明のフレキシブル印刷配線板としては、例えば、図1に示すように、絶縁フィルム1の片面に、接着剤層2を介して、金属箔3が形成され、かつ、上記絶縁フィルム1の他方の面に、接着剤層4を介して、金属箔5が形成されてなる両面金属箔張り積層板があげられる。上記接着剤層2,4は、前述した本発明の難燃性接着剤組成物を用いて形成することができる。
上記絶縁フィルム1の形成材料としては、特に限定はなく、例えば、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、アラミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン等があげられる。また、上記絶縁フィルム1の厚みは、特に限定はないが、通常、7.5〜125μmの範囲のものが用いられる。
上記金属箔3,5としては、特に限定はなく、例えば、銅箔、アルミニウム箔等があげられるが、銅箔が好適に用いられる。また、上記金属箔3,5の厚みは、特に限定はないが、通常、9〜105μmの範囲のものが用いられる。
上記図1に示した本発明の両面金属箔張り積層板は、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、前述と同様にして、本発明の難燃性接着剤組成物を作製した後、これを溶剤に溶かし、接着剤溶液(接着剤ワニス)を調製する。そして、用意した絶縁フィルム1の片面に、上記接着剤溶液(接着剤ワニス)を、ロールコータ法により塗布した後、加熱乾燥(通常、180℃×4分間程度)して、絶縁フィルム1の片面に、接着剤層2を形成する。つぎに、この接着剤層2の表面に、金属箔3を熱ラミネーションにより貼り合わせる。ついで、上記絶縁フィルム1の他面に、同様にして接着剤層4を形成した後、この接着剤層4の表面に、金属箔5を加熱ロール等を用いて貼り合わせる。つぎに、これを加熱硬化(通常、80〜160℃×4時間程度)して、上記接着剤層2,4を硬化させることにより、両面金属箔張り積層板を得ることができる(図1参照)。
上記接着剤溶液(接着剤ワニス)の塗布方法としては、上記ロールコータ法に限定されるものではなく、例えば、ダイコータ,コンマコータ,ナイフコータ等の各種の方法により行うことができる。また、上記接着剤層2,4の厚みは、特に限定はないが、好ましくは1〜100μmの範囲に設定され、より好ましくは5〜50μmの範囲である。
上記接着剤層2,4を硬化させるための加熱方法としては、特に限定はなく、例えば、オーブン等の乾燥機や、加熱プレス等の各種の方法により行うことができる。この場合、本発明の接着剤組成物は、200℃以下の比較的低温でも熱接着(熱硬化)可能であるため、加工性に優れている。
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を調製または準備した。
〔熱可塑性樹脂a〕
撹拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた反応容器に、カルボン酸両末端ポリアミド樹脂(富士化成工業社製、TXM−74B3ベース)49.5g(0.03モル)と、MDI(三井武田ケミカル社製、コスモネートPH)30.0g(0.12モル)と、無水トリメリット酸(三菱ガス化学社製)17.3g(0.09モル)と、NMP溶剤226gとを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら2時間かけて150℃まで昇温し、そのまま150℃で約3時間反応させた。その後、溶剤を除去し、ポリアミド変性PAI樹脂を得た。
〔熱可塑性樹脂b〕
アルコール可溶型ポリアミド樹脂(冨士化成工業社製、トーマイド1340)
〔熱可塑性樹脂c〕
アクリル樹脂(長瀬ケムテックス社製、SG−280)
〔エポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)〕
ジャパン・エポキシ・レジン社製、エピコート828
〔イミダゾール系硬化剤〕
2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)(四国化成工業社製、2E4MZ−CN)
また、下記の表3に示す難燃剤を調製または準備した。
〔リン含有ポリエステル樹脂aの調製〕
ジメチルテレフタレート64部、エチレングリコール74部および前記化合物(d31)256部、触媒としてジメチルテレフタレートおよび化合物(d31)の合計重量に対して0.1%の酢酸マンガン、0.5%の酢酸リチウムおよび0.03%の三酸化アンチモンを混合し、常圧で160〜220℃で3時間加熱してエステル交換を行い、ほぼ理論量のメタノールを留去し、ついで系の温度を250℃として、圧力を徐々に減じ1Torr以下にし、8時間反応させてMw:22,3000、リン含有量:6.4%、酸価:0、水酸基価:7.5のリン含有ポリエステル樹脂aを得た。
〔リン含有ポリエステル樹脂bの調製〕
圧力を徐々に減じ1Torr以下の反応時間を5.5時間に変更する以外は、上記リン含有ポリエステル樹脂aの調製に準じて、リン含有ポリエステル樹脂bを得た。
〔リン含有ポリエステル樹脂cの調製〕
圧力を徐々に減じ1Torr以下の反応時間を3時間に変更する以外は、上記リン含有ポリエステル樹脂aの調製に準じて、リン含有ポリエステル樹脂cを得た。
〔リン含有ポリエステル樹脂dの調製〕
圧力を徐々に減じ1Torr以下の反応時間を2時間に変更する以外は、上記リン含有ポリエステル樹脂aの調製に準じて、リン含有ポリエステル樹脂dを得た。
〔リン含有ポリエステル樹脂eの調製〕
圧力を徐々に減じ1Torr以下の反応時間を0.5時間に変更する以外は、上記リン含有ポリエステル樹脂aの調製に準じて、リン含有ポリエステル樹脂eを得た。
〔リン酸エステル型難燃剤〕
下記の構造式(4)で表されるリン酸エステル型難燃剤(大八化学工業社製、PX−200)。
〔リン酸エステルアミド型難燃剤〕
下記の一般式(5)〔式中、Rはアミド基を含有する2価の有機基を示す。〕で表されるリン酸エステルアミド型難燃剤(四国化成工業社製、SP−703)。
上記のようにして調製または準備した難燃剤について、下記の基準に従い、溶剤溶解性の評価を行った。その結果を上記表3に示した。また、各難燃剤のMw、リン含量、酸価および水酸基価についても、上記表3に併せて示した。
〔溶剤溶解性〕
難燃剤含有量50重量%のDMF溶液を作製し、室温下1ケ月放置後の外観を目視にて観察した。評価は、不溶物が見られなかったものを○、不溶物が見られたものを×とした。
つぎに、上記各材料を用いて、接着剤組成物を調製するとともに、これを用いて両面金属箔張り積層板を作製した。
〔実施例1〜4、参考例1〜3、比較例1〜9〕
(接着剤組成物の調製)
下記の表4〜表6に示す各材料を同表に示す割合で割合し、接着剤組成物(接着剤ワニス)を作製した。
(両面金属箔張り積層板の作製)
厚み12.5μmのポリイミドフィルム(絶縁フィルム)の片面に、乾燥後の厚みが10μmとなるよう、各接着剤ワニスを、ロールコータを用いて塗布した後、加熱乾燥(180℃で4分間)して、絶縁フィルムの片面に、接着剤層を形成した。つぎに、この接着剤層の表面に、圧延銅箔(厚み18μm)を120℃の加熱ロールにて熱ラミネーションにより貼り合わせた。ついで、上記絶縁フィルムの他面に、同様にして接着剤層を形成した後、この接着剤層の表面に、温度120℃に調整した加熱ロールを用いて、圧延銅箔(厚み18μm)を貼り合わせた。つぎに、これを加熱硬化(160℃×4時間)して、上記接着剤層を硬化させることにより、両面金属箔張り積層板を作製した(図1参照)。
このようにして得られた実施例、参考例および比較例の接着剤組成物を用い、下記の基準に従って各特性の評価を行った。これらの結果を上記表4〜表6に併せて示した。
〔溶剤溶解性〕
各接着剤組成物をMEKもしくはDMFに溶解して接着剤ワニスを調製した後、その外観を、目視にて観察した。評価は不溶物が見られなかったものを○、不溶物が見られたものを×とした。
〔ラミネート性〕
各接着剤組成物(接着剤ワニス)を用い、80℃×1.0m/minで0.196MPa(2kg/cm2 )の条件でラミネートした後、外観を目視にて観察した。評価は外観に膨れ等の異常が見られなかったものを○、異常が見られたものを×とした。
〔接着力〕
各両面銅張り積層板を用い、JIS C 6471に準拠して、接着力(N/cm)を測定した。
〔半田耐熱性〕
各両面銅張り積層板を用い、JIS C 6471に準拠し、半田浴温度:280℃、浸漬時間:1分の条件で、半田耐熱性の試験を行った。そして、接着剤層の膨れ等の外観異常の有無を目視により観察し、膨れや等の外観異常が確認されなかったものを○、膨れ等の外観異常が確認されたものを×とした。
〔難燃性〕
UV94VTM法に則して難燃性の評価を行った。合格(VTM−0クラス相当)のものを○、不合格のものを×とした。
上記表4〜表6の結果から、全実施例品は、特定のリン含有ポリエステル樹脂からなる難燃剤を特定の配合量で用いているため、溶剤溶解性、ラミネート性、接着性、半田耐熱性および難燃性の全ての評価に優れていた。
これに対し、比較例1品は、難燃剤の配合量が少なすぎるため、難燃性に劣っていた。比較例2品は、難燃剤の配合量が多すぎるため、半田耐熱性に劣っていた。比較例3品は、難燃剤の分子量が高すぎるため、溶剤溶解性に劣っていた。比較例4品は、難燃剤の分子量が低すぎるため、半田耐熱性に劣っていた。比較例5品は、リン酸エステル型難燃剤を用いているため、難燃性が劣るとともに、接着性、半田耐熱性にも劣っていた。比較例6品は、比較例5品に対してリン酸エステル型難燃剤を増量しているため、難燃性は向上するが、接着性が著しく低下し、半田耐熱性も劣っていた。比較例7品は、リン酸エステルアミド型難燃剤を用いているため、難燃性が劣るとともに、溶剤溶解性、ラミネート性が劣っていた。比較例8品は、比較例7品に対してリン酸エステルアミド型難燃剤を増量しているため、難燃性は向上するが、接着性が著しく低下し、半田耐熱性、溶剤溶解性、ラミネート性も劣っていた。比較例9品は、エポキシ樹脂を配合していないため、接着性が著しく低く、半田耐熱性も劣っていた。