JP3708455B2 - 難燃性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は難燃性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、耐久難燃性に優れる難燃性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱可塑性樹脂に難燃性を付与する方法としては、ハロゲン系難燃剤が主に使用されてきたが、近年、環境汚染、環境破壊の問題からハロゲン系難燃剤に代わり、安全性の高い難燃剤として含リン化合物を使用する難燃化法が提案されている。たとえば、リン酸エステル化合物を使用する方法(特公昭53−418号など)や、ホスホン酸ユニットやホスフィン酸ユニットのポリエステルへの共重合(特開昭51−54691号公報、特開昭50−56488号公報など)、リン含有線状コポリエステルのブレンド(特開平5−331274号公報など)などが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの含リン化合物を使用する方法のうち、リン酸エステル化合物を使用する方法では時間の経過とともに難燃剤が樹脂からブリードアウトし、難燃性が低下するという問題があり、また、ホスホン酸ユニットやホスフィン酸ユニットを共重合する方法やリン含有線状コポリエステルをブレンドする方法では主鎖のP−O結合が加水分解され、その結果、難燃性樹脂組成物から得られる成形品の機械特性が低下し、難燃性も低下するなどの問題点がある。
本発明の目的は、上記含リン化合物を使用する方法における問題がなく、優れた耐久難燃性を発揮する難燃性樹脂組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち、本発明は下記一般式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される繰り返し単位を有するリン含有ポリエステル(A)0.5〜100重量部と、溶解度パラメーターが9〜14である1種または2種以上の熱可塑性樹脂(B)100重量部からなる難燃性樹脂組成物;および、該組成物を成形してなる難燃性樹脂成形品である。
-[OC-D-CO-O-G-O]k- (1−1)
-[OC-(CH2)pO]r-OC-D-CO-[O-(CH2)pCO]r- (1−2)
-[O-(CH2)pCO]r-O-G-O-[CO-(CH2)pO]r- (1−3)
〔式中、Dはジカルボン酸残基、Gはジオール残基、Dおよび/またはGの一部は下記一般式(2)および/または(3)で表される基、k、rは1〜500の数、pは2〜20の数を表す。]
−(CR2R3)m−PR1(=O)−(CR2R3)n− (2)
【化2】
[式中、R1、R4、R5はH、炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜8の脂環式炭化水素基または炭素数6〜38の芳香環含有炭化水素基(R4と R5は互いに結合して炭素数2〜76の2価の炭化水素基となり、リン原子Pとともに環を形成していてもよい)、R2、R3はHまたは炭素数1〜4のアルキル基、m、nは1〜22の整数、qは0または1、s、tは0〜2の整数を表す。]
【0005】
本発明における一般式(1−1)および(1−2)で表されるリン含有ポリエステル(A)のジカルボン酸残基Dを構成するジカルボン酸(d1)としては、芳香(脂肪)族、脂肪族および脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8〜20、たとえばテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(1,5−、2,5−、2,6−および2,7−体)酸、ビフェニルジカルボン酸(2,2’−、3,3’−および4,4’−体)、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸(2,5−および2,6−体)およびこれらの混合物が挙げられる。
芳香脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数9〜20、たとえばフェニレンジアセティック酸(o−、m−およびp−体)、フェニレンジプロピオン酸(o−、m−およびp−体)、フェニルマロン酸、フェニルグルタル酸およびジフェニルコハク酸が挙げられる。
【0006】
脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数2〜20の飽和または不飽和ジカルボン酸、たとえばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマール酸およびイタコン酸が挙げられる。
【0007】
脂環式ジカルボン酸としては、炭素数6〜50、たとえば1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−ジカルボキシメチルシクロヘキサン、1,4−ジカルボキシメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸およびダイマー酸が挙げられる。
【0008】
上記(d1)のうち好ましいのは、芳香族ジカルボン酸(とくにテレフタル酸およびイソフタル酸)およびこれと他のジカルボン酸との併用(重量比で通常100/0〜65/35、好ましくは100/0〜80/20)である。
【0009】
本発明におけるリン含有ポリエステル(A)のジオール残基Gを構成するジオール(g1)としては 数平均分子量(水酸基価による、以下同様。以下Mnと略記)が500以下の低分子ジオールおよびMnが500を超える高分子ジオールが挙げられる。
低分子ジオールとしては、2価アルコール〔脂肪族ジオール[炭素数2〜10のアルキレングリコール、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール]、脂環式ジオール[炭素数5〜20、たとえばシクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、水添ビスフェノ―ルA]、芳香脂肪族ジオール[炭素数10〜20、たとえばビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、ビスヒドロキシメチルジフェニルエーテルなど];これらの2価アルコールまたは2価フェノール[炭素数6〜20、たとえば単環2価フェノール(ハイドロキノンなど)、ビスフェノール(ビスフェノールAなど)]のアルキレン(炭素数2〜4)オキシド低モル付加物(Mn500以下);およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0010】
また、高分子ジオールとしては、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリアクリルジオール、ポリブタジエンジオール、およびこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
ポリエーテルジオールとしては、開始剤〔たとえば、水、低分子(炭素数2〜6)ジオール〕にアルキレンオキシド(炭素数2〜4、たとえばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン)を付加重合させて得られるものが挙げられる。
【0011】
ポリエステルジオールとしては、縮合系ポリエステルジオール、ラクトン系ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。縮合系ポリエステルジオールとしては、ジカルボン酸(炭素数2〜20の脂肪族および芳香族ジカルボン酸、たとえば、アジピン酸)もしくはそのエステル形成性誘導体(炭素数4〜28の脂肪族および芳香族ジカルボン酸、たとえば、ジメチルマレイン酸、無水マレイン酸)とジオールの縮合反応で得られるものが挙げられる。
ポリラクトンジオールとしては、ジオールを開始剤として炭素数4〜20のラクトン(たとえばε−カプロラクトン)を開環重合させて得られるポリエステルが挙げられる。
ポリカーボネートジオールとしては、ジオールと炭素数3〜20のアルキレンカーボネート(たとえばエチレンカーボネート)の付加重合で得られるポリエステルが挙げられる。
これらの製造に用いるジオールとしては前記低分子ジオール(たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール)および/またはポリエーテルジオールが挙げられる。
【0012】
ポリアクリルジオールとしては、水酸基を有するビニルモノマー〔ヒドロキシアルキル(メタ)クリレート(ヒドロキシアルキル基の炭素数2〜4)、たとえばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート〕と他のビニルモノマー(アルキル(炭素数1〜20)(メタ)アクリレート、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート;芳香族ビニルモノマー、たとえばスチレン〕を共重合したものが挙げられる。
【0013】
ポリアクリルジオールの製造方法としては、例えば、水酸基を有するアゾ系ラジカル重合開始剤と水酸基を有する連鎖移動剤共存下にラジカル重合を行う方法、水酸基含有モノマーを(共)重合させる方法などが挙げられる。
ポリブタジエンジオールとしては、末端に水酸基を含有するブタジエンと他のビニルモノマー(例えば、スチレン、アクリロニトリル)の共重合体が挙げられる。
【0014】
ジオール(g1)のMnは特に限定されないが、難燃性の観点から好ましくは1,000以下、より好ましくは500以下、さらに好ましくは62〜350である。
【0015】
上記ジオール(g1)のうち好ましいのはアルキレングリコールで、さらに好ましいのは炭素数が2〜6のもの、とくにエチレングリコールである。
【0016】
本発明における一般式(1−2)および(1−3)で表されるリン含有ポリエステル(A)のポリラクトン基を構成するラクトンとしては、炭素数3〜20のもの、たとえばβ−ラクトン(β−プロピオラクトンなど)、γ−ラクトン(γ−ブチロラクトンなど)、δ−ラクトン(δ−バレロラクトンなど)、ε−ラクトン(ε−カプロラクトンなど)、大環状ラクトン(エナントラクトン、ウンデカノラクトン、ドデカラクトンなど)などが挙げられる。ラクトンを構成するアルキレン基は直鎖状、分岐状いずれでもよい。
一般式(1−2)および(1−3)におけるpは通常2〜20、好ましくは 2〜5、rは通常1〜500、好ましくは10〜250である。
pが20を超えると難燃性が悪化する。また、rが500を超えると難燃性の悪化とともに、樹脂の強度が悪化する。
【0017】
前記一般式(2)および(3)においてR1、R4およびR5の脂肪族炭化水素基のうちのアルキル基としては、炭素数1〜22(好ましくは1〜6)の直鎖のアルキル(メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−デシル、n−ドデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、n−アイコシルおよびn−ドコシルなど)基および分岐のアルキル(i−プロピル、i−、sec−およびt−ブチル、3−メチルブチル、2−エチルブチル、i−ヘプチル、2−エチルヘキシル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、i−ノニル およびi−デシルなど)基が挙げられる。
【0018】
R1、R4およびR5の脂肪族炭化水素基のうちのアルケニル基としては、炭素数2〜22(好ましくは2〜6)の直鎖のアルケニル(ビニル、1−および2−プロペニル、2−ブテニル、2−ペンテニル、デセニル、ドデセニル、トリデセニル、ヘキサデセニル、オレイル、アイコセニルおよびドコセニルなど)基および分岐のアルケニル(i−プロペニル、i−ブテニル、i−オクタデセニルおよび2−メチル−1−ブテニルなど)基が挙げられる。
これらのうちリン含量の観点から好ましいのは炭素数2〜6の直鎖および分岐のアルケニル基である。
【0019】
R1、R4およびR5の脂環式炭化水素基としては、炭素数4〜8(好ましくは4〜6とくに6)、たとえば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびシクロオクチル基が挙げられる。
【0020】
R1、R4およびR5の芳香環含有炭化水素基のうちのアリール基としては、炭素数6〜14(好ましくは6〜10、とくに6)、たとえばフェニル基、トリル基、キシリル基、クミル基、オクチルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基が挙げられる。
【0021】
R1、R4およびR5の芳香環含有炭化水素基のうちのアリールアルキル基としては、炭素数7〜14(好ましくは7〜10、とくに7)、たとえばベンジル基、フェネチル基およびメシチル基が挙げられる。
上記R1、R4およびR5のH、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基および芳香環含有炭化水素基のうち好ましいのは脂肪族炭化水素基(さらに好ましいのはアルキル基)、芳香環含有炭化水素基(さらに好ましいのはアリール基)、とくに好ましいのはn−ブチル基である。
【0022】
一般式(2)においてmおよびnは同一または異なる1〜22(好ましくは1〜6、さらに好ましくは2〜3、とくに3)の整数である。(m+n)個のR2およびR3は同一でも異なっていてもよい。mまたはnが22を超えると難燃性が悪化する。
R2およびR3の炭素数1〜4のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基などが挙げられる。これらのうちポリエステル化反応時の反応性の観点から好ましいのはメチル基、およびとくにHである。
【0023】
一般式(2)で表される基にはホスフィンオキサイドジカルボン酸(d2)(2000年4月27日、化学工業日報記載のもの)残基および/またはホスフィンオキサイドジオール(g2)(2000年4月27日、化学工業日報記載のもの)の残基が含まれる。
該カルボン酸(d2)としては、たとえば次に示す化合物(d21)〜(d24)が挙げられ、これらのうち難燃性付与効果の観点から好ましいのは(d21)である。
【0024】
該ジオール(g2)としては、たとえば次に示す化合物(g21)〜(g24)が挙げられ、これらのうち難燃性付与効果の観点から好ましいのは(g21)である。
【0025】
【表1】
【0026】
前記のジカルボン酸(d2)およびジオール(g2)のうち、ポリエステル化反応の反応性の観点から好ましいのは(d2)とくに(d21)である。
【0027】
一般式(3)においてR4とR5とが互いに結合して形成する2価の炭化水素基としては、炭素数2〜76のアルキレン基、ビフェニレン基などが挙げられる。
一般式(3)においてqは0または1、s、tは0〜2の整数であり、q、sおよびtの組み合わせとしては、たとえば(q=0、s=1、t=0)、(q=1、s=1、t=0)および(q=0、s=1、t=2)が挙げられ、ポリエステル化の反応速度の観点から、ジカルボン酸残基の場合は(q=1、s=1、t=0)、ジオール残基の場合は(q=0、s=1、t=2)が好ましい。qが1を超えるとポリエステル化時の反応性が悪化する。また、sまたはtが2を超えるとポリエステル化時の反応性が悪化する。
【0028】
一般式(3)で表される基にはホスフィン酸誘導体ジカルボン酸(d3)の残基および/またはホスフィン酸誘導体ジオール(g3)の残基が含まれる。
該ジカルボン酸(d3)としては、たとえば次に示す(d31)〜(d34)が挙げられ、これらのうち難燃性付与の観点から好ましいのは(d31)である。
【0029】
該ジオール(g3)としては、たとえば次に示す化合物(g31)、(g32)が挙げられ、これらのうち難燃性付与効果の観点から好ましいのは(g31)である。
前記のジカルボン酸(d3)およびジオール(g3)のうち、ポリエステル化反応の反応性の観点から好ましいのは(d3)とくに(d31)である。
【0030】
【表2】
【0031】
一般式(1−1)、(1−2)および(1−3)におけるDおよび/またはGの一部は前記(d2)、(d3)の残基および/または(g2)、(g3)の残基であり、D中の(d2)または(d3)の当量%は、ポリエステル化反応の反応性および難燃性の観点から好ましくは、5〜95%、さらに好ましくは10〜90%である。また、G中の(g2)または(g3)の当量%はポリエステル化反応の反応性および難燃性の観点から好ましくは、5〜95%、さらに好ましくは10〜90%である。
一般式(1−1)、(1−2)および(1−3)におけるk、rは通常1〜500、溶解度パラメーターが8〜16である熱可塑性樹脂への相溶性の観点から好ましくは10〜250である。kまたはrが500を超えると難燃性の悪化とともに、樹脂の強度も悪化する。
【0032】
本発明におけるリン含有ポリエステル(A)は、ジカルボン酸(d1)および/もしくはそのエステル形成性誘導体〔酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステルなど〕と、ジオール(g1)、並びに(g2)、(g3)および/または(d2)、(d3)および/もしくはそのエステル形成性誘導体〔酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステルなど〕から公知のポリエステルの製造方法(脱水エステル化法、エステル交換法、エステル化後重縮合する方法など)により製造することができる。
【0033】
ジカルボン酸のエステル形成性誘導体のうち、酸無水物としては、炭素数 4〜20、たとえば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フタル酸が挙げられる。
低級アルキルエステルとしては、前記のジカルボン酸(d1)の低級アルキルエステル、たとえばジメチルテレフタル酸、ジメチルイソフタル酸が挙げられる。
【0034】
ホスフィンオキサイドジカルボン酸(d2)のエステル形成性誘導体のうち、低級アルキルエステルとしては、(d2)の低級アルキル(炭素数1〜4)エステルが挙げられる。
ホスフィン酸誘導体ジカルボン酸(d3)のエステル形成性誘導体のうち、低級アルキルエステルとしては、(d3)の低級アルキル(炭素数1〜4)エステルが挙げら、酸無水物としては(d31)の酸無水物が挙げられる。
【0035】
本発明におけるリン含有ポリエステル(A)が得られるポリエステル化反応において、水酸基/カルボキシル基の当量比は通常1/1.5〜1.5/1、(A)の熱安定性の観点から好ましくは1.2/1〜1/1であり、得られるポリエステルの末端基は好ましくは水酸基である。
【0036】
ポリエステル化反応は通常、触媒の存在下に行われる。触媒としては従来一般に用いられているIIA族(Mg、Caなど)、IIB族(Znなど)、IIIA族(Alなど)、IVA族(Ge、Snなど)、IVB族(Tiなど)、VA族(Sbなど)、VIIB族(Mnなど)、VIII族(Feなど)の金属の化合物〔酸化物、塩化物、有機(アルキル基、アリール基など)金属化合物など〕が挙げられ、これらの2種以上を併用してもよい。
ポリエステル化反応の反応時間は通常1〜50時間、好ましくは2〜20時間である。反応終点は得られたポリエステルの酸価または水酸基価で確認でき、酸価は、通常125以下、熱安定性の観点から好ましくは0〜90、さらに好ましくは0〜5、とくに好ましくは0である。水酸基価は通常1〜250、好ましくは2.5〜100、とくに好ましくは3〜20である。(酸価+水酸基価)は通常1〜375、好ましくは2.5〜190、とくに好ましくは3〜20である。
【0037】
本発明におけるリン含有ポリエステル(A)としては一般式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される繰り返し単位を有するポリエステル(A1)に加えて、一般式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される繰り返し単位とさらに アミド繰り返し単位を有するアミド変性ポリエステル(A2)、および一般式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される繰り返し単位とさらに ウレタン繰り返し単位を有するウレタン変性ポリエステル(A3)が挙げられる。
【0038】
上記 アミド繰り返し単位の一般式は、前記一般式(1−1)におけるO-G-O(Gはジオール残基)をHN-G-NH(Gはジアミン残基)に置き換えたもの、一般式(1−2)におけるOC-(CH2)P-OをOC-(CH2)P-NHに置き換えたもの、並びに一般式(1−3)におけるO-G-O(Gはジオール残基)をHN-G-NH(Gはジアミン残基)および/またはO-(CH2)P-COをHN-(CH2)P-COに置き換えたものとして表され、従って、該 アミド変性ポリエステルは、ポリエステル化反応に、さらにジカルボン酸とジアミンとの反応、アミノカルボン酸の自己縮合反応、ジカルボン酸へのラクタムの重付加反応またはジアミンへのラクタムの重付加反応などを加えることにより得ることができる。
【0039】
上記ジカルボン酸としては前記(d1)として例示したものが挙げられる。
ジアミンとしては、炭素数2〜20の脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなど);炭素数6〜20の芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、メタキリレンジアミンなど);炭素数6〜20の脂環式ジアミン[ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなど]、およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
上記ジカルボン酸とジアミンとの反応における当量比は、通常1/1.1 〜1.1/1、好ましくは1/1.05〜1.05/1である。
アミノカルボン酸としては、炭素数4〜20、たとえばアミノヘプタン酸、アミノノナン酸およびアミノウンデカン酸が挙げられる。
ラクタムとしては、炭素数3〜20のもの、たとえばβ−ラクタム(β−プロピオラクタムなど)、γ−ラクタム(γ−ブチロラクタムなど)、δ−ラクタム(δ−バレロラクタムなど)、ε−ラクタム(ε−カプロラクタムなど)、大環状ラクタム(エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカラクタムなど)などが挙げられる。ラクタムを構成するアルキレン基は直鎖状、分岐状いずれでもよい。
【0040】
上記 ウレタン変性ポリエステルの一般式は、前記一般式(1−1)におけるOC-D-CO(Dはジカルボン酸残基)をOC-HN-D-NH-CO(Dはジイソシアネート残基)に置き換えたものとして表され、従って、該 ウレタン変性ポリエステルは、ポリエステル化反応に、さらにジオールとジイソシアネートとのウレタン化反応を加えることにより得ることができる。
【0041】
上記ジオールとしては、前記(g1)として例示したものが挙げられる。
ジイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素数を除く)6〜20の芳香族ジイソシアネート[2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)など];炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート[ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなど];炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネート[イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネートなど];炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート[キシリレンジイソシアネートなど];これらのジイソシアネートの変性物[ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビュウレット基、ウレトジオン基、ウレトンイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物など]およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
上記ジオールとジイソシアネートの反応における当量比は、通常1.1/1〜1/1.1、好ましくは1.05/1〜1.05/1である。
【0042】
本発明におけるリン含有ポリエステル(A)を構成する上記繰り返し単位の含有量は、(A)全体に基づいて、 アミド繰り返し単位が通常0〜50モル%、好ましくは0〜20モル%、 ウレタン繰り返し単位が通常0〜50モル%、好ましくは0〜20モル%である。
【0043】
リン含有ポリエステル(A)の重量平均分子量(測定法:GPC法、以下同様。以下Mwと略記)は耐久難燃性の観点から好ましくは1,000〜100,000、さらに好ましくは5,000〜50,000である。
【0044】
リン含有ポリエステル(A)のリン含量は難燃性および熱可塑性樹脂(B)との相溶性の観点から、好ましくは0.5〜20重量%、さらに好ましくは3〜15重量%、とくに好ましくは4〜10重量%である。
【0045】
本発明における熱可塑性樹脂(B)の溶解度パラメーターは通常8〜16、リン含有ポリエステル(A)との相溶性および樹脂強度の観点から好ましくは9〜14である。ここにおいて溶解度パラメーターとはFedors法[Polm.Eng.Sci.14(2)152(1974)]によって算出される値である。溶解度パラメーターが8未満または16を超えると、リン含有ポリエステル(A)との相溶性が悪くなり、熱可塑性樹脂の強度が低下する。
【0046】
溶解度パラメーターが8〜16の範囲にある熱可塑性樹脂としてはビニル重合系樹脂〔アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂など〕、縮合系樹脂〔ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリフェニレンスルフィドスルホンなど)、ポリスルホン樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、ポリエーテルイミド樹脂(ポリ−N−ホルミルエチレンイミン樹脂など)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂など〕、重付加系樹脂〔ポリアセタール樹脂(ポリオキシメチレン樹脂など)、ケトン樹脂(脂肪族ポリケトン樹脂、アセトンホルムアルデヒド樹脂、アセトンフルフラール樹脂、環状ケトン樹脂など)など〕などが挙げられる。
【0047】
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体〔炭素数5〜20、たとえば(メタ)アクリル酸(エステル)[(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチルなど]、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなど〕の単独または共重合体;および(メタ)アクリル系単量体と他の共重合可能な単量体(炭素数4〜20、たとえばブタジエン、イソブテン、スチレン、α−メチルスチレンなど)との共重合体[(メタ)アクリル酸(エステル)−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など]が挙げられる。
これらのアクリル樹脂のうち好ましいのは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルおよび(メタ)アクリル酸(メチル)−スチレン共重合体である。
【0048】
ポリスチレン樹脂としては、スチレン系単量体(炭素数8〜20、たとえばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなど)の単独または共重合体;スチレン系単量体とビニル系単量体[上記の(メタ)アクリル系単量体を除く炭素数2〜20、たとえば無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイミドなど]との共重合体などが挙げられる。
これらのポリスチレン樹脂のうち好ましいのは、ポリスチレンおよびスチレン−無水マレイン酸共重合体である。
【0049】
ポリアミド樹脂としては、ジカルボン酸とジアミンから得られるポリアミド;アミノカルボン酸、必要に応じてジカルボン酸および/またはジアミンを併用して得られるポリアミド;およびラクタム、必要に応じてジカルボン酸および/またはジアミンを併用して得られるポリアミドなどが挙げられる。上記ジカルボン酸、ジアミン、アミノカルボン酸およびラクタムとしては前記例示したものが挙げられる。
【0050】
ポリアミド樹脂の具体例としては、脂肪族ポリアミド(ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12など)、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとから得られるポリアミド、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンとから得られるポリアミド、および芳香族および脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとから得られるポリアミドなどが挙げられる。これらのポリアミド樹脂は単独または混合して使用できる。
上記ポリアミド樹脂のうち好ましいのは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、およびジアミン成分とジカルボン酸成分のうち少なくとも一方が芳香族化合物であるポリアミド樹脂である。
【0051】
ポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸とジオールとの重縮合、ラクトンまたはオキシカルボン酸の重縮合、またはこれらの混合成分の重縮合などにより得られるものが挙げられる。
【0052】
ジカルボン酸としては、前記(d1)として例示したもの、およびその誘導体[低級アルキル(炭素数1〜4)エステル、酸無水物などのエステル形成性誘導体]が挙げられる。これらのうち好ましいのは、芳香族ジカルボン酸およびその誘導体、さらに好ましいのはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびそれらの誘導体である。
ジオールおよびラクトンとしては、前記例示したものが挙げられる。
オキシカルボン酸としては、オキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヒドロキシフェニル酢酸、グリコール酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシエナント酸、ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシペルゴン酸、ヒドロキシカプリン酸などが挙げられる。
さらに必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価(3〜4価)カルボン酸などを併用してもよい。
【0053】
ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレートなどのポリエステルが挙げられる。これらのうち樹脂強度の観点からポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレートが好ましい。これらのポリエステル樹脂は単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0054】
ポリカーボネート樹脂としては、ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン、炭酸ジエステルまたはジアルキルカーボネートとの反応により得られる重合体が挙げられる。ジヒドロキシ化合物としてはビスフェノール化合物、脂環式化合物〔シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、水添ビスフェノ―ルAなど〕などが挙げられ、好ましいのはビスフェノール化合物である。
【0055】
ビスフェノール化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド;4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトンなどが挙げられる。
【0056】
上記のポリカーボネート樹脂のうち樹脂強度の観点から好ましいのは、ビスフェノール化合物がビスフェノールAであるビスフェノールA型ポリカーボネートである。
【0057】
ポリフェニレンオキシド樹脂としては、2,6−(ヒドロキシ)アルキルフェノールを重合して得られるもので、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)オキシド、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)オキシド、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)オキシド、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)オキシドポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)オキシドなどが挙げられる。
【0058】
上記の熱可塑性樹脂(B)のMwは成形品の機械特性の観点から好ましくは1,000〜100,000、さらに好ましくは10,000〜50,000である。これらの熱可塑性樹脂は単独でも、また2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0059】
溶解度パラメーターが8〜16の上記熱可塑性樹脂(B)のうち、リン含有ポリエステル(A)との相溶性の観点から好ましいのは、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキキシド樹脂、およびこれらの2種以上の混合物である。これらのうち、とくに好ましいのはポリエステル樹脂である。
【0060】
本発明におけるリン含有ポリエステル(A)の使用量は、熱可塑性樹脂(B)100重量部に対して0.5〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは3〜30重量部である。使用量が0.5重量部未満では難燃効果が十分ではなく、100重量部を越えると樹脂の機械物性が低下する。
【0061】
本発明の樹脂組成物には本発明の目的を損なわない範囲で帯電防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、核剤、(A)を除くその他の難燃剤、可塑剤、着色剤、表面改質剤および/または離型剤などの添加剤を1種以上添加することができる。
帯電防止剤としてはノニオン系界面活性剤〔グリセリン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ポリオキシアルキレングリコール、ショ糖などの多価アルコールの脂肪酸(炭素数8〜22)エステルなど〕、アニオン系界面活性剤〔スルホネート、サルフェート、ホスフェート、脂肪酸塩など〕、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0062】
耐光安定剤としては、ヒンダードフェノール系(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなど)、アミン系(オクチル化ジフェニルアミンなど)、リン系(トリフェニルホスファイトなど)、イオウ系(ジラウリル3,3’−チオジプロピオネートなど)などが挙げられる。
【0063】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)、ベンゾトリアゾールなど]、ベンゾフェノン系(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなど)、サリチル酸系(フェニルサリシレートなど)、アクリレート系[2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’1−ジフェニルアクリレートなど]などが挙げられる。
【0064】
酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤〔モノフェノール系[2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソールなど]、ビスフェノール系[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル)−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル)−6−t−ブチルフェノール)など]、高分子型フェノール系〔1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンなどのなど〕;硫黄系酸化防止剤〔ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’−チオジブチレート、ジラウリルサルファイドなど〕;リン系酸化防止剤〔トリフェニルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルフォスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト〕;アミン系酸化防止剤〔オクチル化ジフェニルアミン、N−n−ブチル−p−アミノフェノール、N,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、フェノチアジン〕などが挙げられる。
【0065】
滑剤としては、ワックス(カルナバロウワックスなど)、高級脂肪酸(ステアリン酸など)、高級アルコール(ステアリルアルコールなど)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミドなど)などが挙げられる。
【0066】
核剤としては1,3,2,4−ジ−ベンジリデン−ソルビトール、アルミニウム−モノ−ヒドロキシ−ジ−p−t−ブチルベンゾエート、ソジウム−ビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、安息香酸ナトリウム、タルクなどが挙げられる。
【0067】
また、さらに難燃性を上げるため、リン含有ポリエステル(A)以外のその他公知の難燃剤を添加してもよい。該難燃剤としては、窒素含有難燃剤〔尿素化合物、グアニジン化合物、トリアジン化合物(メラミン、グアナミンなど)とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩など〕、硫黄含有難燃剤〔硫酸エステル、有機スルホン酸、スルファミン酸、有機スルファミン酸、およびそれらの塩、エステル、アミドなど〕、珪素含有難燃剤(ポリオルガノシロキサンなど)、リン含有無機難燃剤(赤リンなど)などが挙げられる。
【0068】
可塑剤としては、フタル酸エステル系(ジオクチルフタレートなど)、リン酸エステル系、アジピン酸エステル系、セバチン酸エステル系、グリコールエステル系、ポリエステル系、エポキシ系などが挙げられる。
【0069】
着色剤としては、染料(アゾ系、アントラキノン系、インジゴイド系、硫化系、トリフェニルメタン系、ピラゾロン系、スチルベン系、ジフェニルメタン系、キサンテン系、アリザリン系、アクリジン系、キノンイミン系、チアゾール系、メチン系、ニトロ系、ニトロソ系、アニリン系など);無機顔料(酸化チタン、オーレオリン、酸化鉄、酸化クロム、硫化カドミウムなど);有機顔料(アゾレーキ系、モノアゾ系、ジスアゾ系、キレートアゾ系、ベンジイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、チオインジゴ系、ペリレン系、キノフタロン系、アンスラキノン系など)が挙げられる。
【0070】
表面改質剤としては、シランカップリング剤(アミノシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、メタクリルシランなど)、エポキシ化合物(多価アルコールグリシジルエーテルなど)などが挙げられる。
【0071】
離型剤としては、高級脂肪酸の低級アルコールエステル(ステアリン酸ブチルなど)、脂肪酸の多価アルコールエステル(硬化ヒマシ油など)、脂肪酸のグリコールエステル(エチレングリコールモノステアレートなど)、流動パラフィンなどが挙げられる。
【0072】
上記添加剤の添加量は、本発明における(A)と(B)の合計重量に対して帯電防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤は各々通常5重量%以下、好ましくは0.1〜3重量%、滑剤、核剤、可塑剤、表面改質剤、その他の難燃剤は各々通常20重量%以下、好ましくは1〜10重量%、着色剤は通常30重量%以下、好ましくは1〜20重量%である。
【0073】
また、本発明の樹脂組成物には、機械的強度、耐熱性、寸法安定性、電気的性質などの性能に優れた成形品を得るなどの必要に応じて前記成分の他に、繊維状、粉粒状、板状などの充填剤を使用することができる。
繊維状充填剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ−アルミナ繊維、ジルコニア繊維、アラミド繊維および金属(ステンレス、アルミニウム、チタン、銅等)繊維などが挙げられる。これらのうち好ましいのはガラス繊維およびカーボン繊維である。
粉粒状充填剤としてはカーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、珪酸塩(珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレーなど)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなど)、金属の炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、金属の硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素および各種金属(マグネシウム、珪素、アルミ、チタン、銅、銀、金など)粉末などが挙げられる。
板状充填剤としてはマイカ、ガラスフレークおよび各種の金属(アルミ、銅、銀、金など)箔などが挙げられる。
これらの充填剤は1種または2種以上併用することができる。
上記の充填剤のうち好ましいのは繊維状充填剤、とくにガラス繊維である。充填剤の使用量は(A)と(B)の合計重量に対して通常0〜150重量%、好ましくは5〜100重量%である。
【0074】
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて前記添加剤および充填剤の他に、さらに溶解度パラメーターが8〜16の範囲外の熱可塑性樹脂を補助的に併用することもできる。これらの熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、塩素含有ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなど)などを挙げることができる。
これらの熱可塑性樹脂の使用量は、本発明における(A)と(B)の合計重量に対して通常10重量%以下、好ましくは0〜5重量%である。
【0075】
本発明の難燃性樹脂組成物は通常公知の方法で製造される。たとえば、熱可塑性樹脂(B)とリン含有ポリエステル(A)の粒子状物どうしを均一に機械的に混合し、さらに必要に応じて上記添加剤等を混合した後、バンバリーミキサー、ミキシングロール、2軸押出機等を用いて溶融混練する方法、あるいは、熱可塑性樹脂(B)とリン含有ポリエステル(A)をそれぞれ同じ混練機に仕込み、さらに必要に応じて上記添加剤等を混合した後、溶融混練する方法が挙げられ、いずれの方法を採用してもよい。
【0076】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに説明するが本発明はこれに限定されるものではない。実施例中の部は重量部、%は重量%を示す。各特性の測定方法は以下の通りである。
【0077】
(1)機械特性
射出成形により得たダンベル試験片についてASTM D−638に従い引張強度、破断伸度を測定した。
【0078】
(2)難燃性
2軸押出機で得られたペレットから150×5×1mmの試験片を作成し、UL−94に定められている評価基準に従い難燃性を評価した。
難燃性レベルはV−0>V−1>V−2>HBの順に低下する。
【0079】
(3)成形品外観
ダンベル試験片をギヤーオーブン中、120℃×24時間静置した後の外観を以下の基準で評価した。
○:ブリードアウトがほとんど認められない。
△:ブリードアウトがわずかに認められる。
×:ブリードアウトが多量に認められる。
【0080】
(4)耐加水分解性
ダンベル試験片を恒温恒湿槽(80℃、95%RH)中に所定時間(48および96時間)静置処理し、処理前後の分子量変化をGPCにより測定した。
【0081】
製造例1
ジメチルテレフタレ−ト258部,エチレングリコ−ル31部および前記化合物(d21)221部、触媒としてジメチルテレフタレートおよび(d21)に対し0.1%の酢酸マンガン、および0.03%の三酸化アンチモンを混合し、常圧で160〜220℃で3時間加熱してエステル交換反応を行い、ほぼ理論量のメタノ−ルを留去し、次いで系の温度を240℃とし、圧力を徐々に減じ1Torr以下にし、3時間反応させてMw12,400、リン含量7.5%、酸価0、水酸基価9のリン含有ポリエステル[A1]を得た。
【0082】
製造例2
ジメチルテレフタレ−ト64部,エチレングリコ−ル74部および前記化合物(d31)256部、、触媒としてジメチルテレフタレートおよび(d31)の合計重量に対し0.1%の酢酸マンガン、0.5%の酢酸リチウムおよび0.03%の三酸化アンチモンを混合し、常圧で160〜220℃で3時間加熱してエステル交換反応を行い、ほぼ理論量のメタノ−ルを留去し、次いで系の温度を250℃とし、圧力を徐々に減じ1Torr以下にし、6時間反応させてMw14,900、リン含量6.4%、酸価0、水酸基価7.5のリン含有ポリエステル[A2]を得た。
【0083】
製造例3
テレフタル酸83部,エチレングリコ−ル93部および前記化合物(d23)148部を仕込み、窒素により圧力を0.15MPaに上げると同時に温度245℃とし、加圧下4時間加熱してエステル化反応を行い、ほぼ理論量の水を留去し、ついで触媒としてテレフタル酸および(d23)の合計重量に対し0.03%の三酸化アンチモンを混合後、次いで系の温度を240℃とし、圧力を徐々に減じ133Pa以下にし、3時間反応させてMw9,350、リン含量6.8%、酸価6、水酸基価6のリン含有ポリエステル[A3]を得た。 次に本リン含有ポリエステル[A3]187部とエチレンジアミン1.2部、酢酸0.06部を仕込み、220℃で加圧下4時間反応を行い、反応後徐々に圧力を減じ、圧力を133Pa以下にし、260℃で3時間反応させてMw18,700、リン含量6.8%、酸価0、水酸基価6のリン含有アミド変性ポリエステル[A4]を得た。
製造例4
リン含有ポリエステル[A1]124部、トリレンジイソシアネート1.6部、N,N−ジメチルホルムアミド100部を仕込み60℃で反応させ、Mw24,800、リン含量7.5%、酸価0、水酸基価4.5のリン含有ウレタン変性ポリエステル[A5]を得た。
【0084】
比較製造例
特開平5−331274に記載の実施例の方法に準じて、1,2−オキサホスホラン−5−オン−メチル−2−オキシドとエチレングリコールとを反応後、さらに粘度指数(V.I.)が0.23dl/gのポリエチレンテレフタレートプレポリマーを反応させリン含有線状コポリエステル[C1]を合成した。
【0085】
実施例1〜6、比較例1〜4
極限粘度が0.85(25℃、o−クロルフェノール溶液)のポリブチレンテレフタレート100部に対して、実施例においては表1に示す各種リン含有ポリエステル(A)および各種添加剤を混合し、比較例においてはポリブチレンテレフタレート単独およびその他の難燃剤としてリン含有線状コポリエステル[C1]、トリフェニルホスフェート[C2]を使用し、30mmφ2軸押出機を用いて樹脂温度260℃で溶融押出した。得られたペレットを乾燥後、射出成形(金型温度80℃)によりASTM D−638に規定されている引張試験片を作成した。また、プレス成形を行ってUL−94に基づく難燃性評価用サンプルを調製した。
各サンプルの難燃性、機械特性、成形品外観、耐加水分解性の測定結果を表3に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
【発明の効果】
本発明におけるリン含有ポリエステル(A)は、溶解度パラメーター8〜16の熱可塑性樹脂(B)との親和性が高いためブリードアウトがなく、耐加水分解性にも優れる。このため、(A)および(B)からなる難燃性樹脂組成物を用いた成形品は、時間経過による機械的強度の低下がないことに加えて、優れた耐久難燃性を発揮する。このような効果を奏することから本発明の難燃性樹脂組成物は極めて有用である。
Claims (8)
- 下記一般式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される繰り返し単位を有するリン含有ポリエステル(A)0.5〜100重量部と、溶解度パラメーターが8〜16である1種または2種以上の熱可塑性樹脂(B)100重量部からなり、(A)のリン含量が4〜10重量%である難燃性樹脂組成物。
-[OC-D-CO-O-G-O]k- (1−1)
-[OC-(CH2)PO]r-OC-D-CO-[O-(CH2)PCO]r- (1−2)
-[O-(CH2)PCO]r-O-G-O-[CO-(CH2)PO]r- (1−3)
〔式中、Dはジカルボン酸残基、Gはジオール残基、Dおよび/またはGの一部は下記一般式(2)および/または(3)で表される基、k、rは1〜500の数、pは2〜20の数を表す。〕
−(CR2R3)m−PR1(=O)−(CR2R3)n− (2)
- (A)がさらに アミド繰り返し単位を有するアミド変性ポリエステルある請求項1記載の組成物。
- (A)がさらに ウレタン繰り返し単位を有するウレタン変性ポリエステルである請求項1または2記載の組成物。
- (A)の重量平均分子量が1,000〜100,000である請求項1〜3いずれか記載の組成物。
- (B)の重量平均分子量が1,000〜100,000である請求項1〜4いずれか記載の組成物。
- (B)がポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキキシド樹脂、およびこれらの2種以上の混合物からなる群から選ばれる請求項1〜5いずれか記載の組成物。
- さらに、帯電防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、核剤、(A)を除く難燃剤、可塑剤、着色剤、相溶化剤、表面改質剤、離型剤、(B)を除く熱可塑性樹脂および/または充填剤を含有する請求項1〜6いずれか記載の組成物。
- 請求項1〜7いずれか記載の組成物を成形してなる難燃性樹脂成形品。
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