JP5006909B2 - 釣糸ガイドと釣竿 - Google Patents

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Description

本発明は、巻き糸の巻き付けと接着剤の塗布により竿体に固定される釣糸ガイドと、当該釣糸ガイドが固定された釣竿に関するものである。
通常、釣糸ガイドを竿体に対して固定する場合には、竿体の外周面上に釣糸ガイドの足部を載置した状態で足部と竿体とに亘って巻き糸を巻き付けることで、先ず釣糸ガイドを竿体に対して緊縛しておく。次に、その緊縛した状態で、合成樹脂、例えばエポキシで構成された接着剤を巻き糸の巻き付け部分に塗布して固めている。
而して、上記のように固定しておいても、釣糸ガイドに対してその足部が巻き付け部分から抜け出す方向に力が掛かると、足部がズレ動き、極端な場合には抜け出てしまう場合がある。
そこで、特許文献1では、足部の基端側も接着剤により竿体外周面に対して固着させることが提案されている。そして、この特許文献1では、足部の表側に塗布した接着剤の一部を基端縁から竿体外周面上へ自然に流れ落とすことで、足部の基端縁の前方に接着剤をもってきている。
特開平9−298991号公報
「2009 Rod Components & Fishing Tackle」,富士工業株式会社,2009年、72〜73頁
ところで、釣糸ガイドも種々あり、比較的細い竿体の穂先側に取り付けるものは、一本の足部の基端にリング保持部が前方倒伏姿勢で直接延設されているものが、存在する。このような釣糸ガイドでは、足部の表側と基端縁との間にリング保持部が障壁となって介在していることになるので、特許文献1に教示されたような手法で足部の基端縁の前方に接着剤をもってくることはできない。
一方、接着剤の塗布に際しては、非特許文献1に記載のように、フィニッシングモーターで、無ければ手で竿体を回しながら筆塗り作業をして、接着剤の液が片寄りしたり、タレたりしないで、均一に竿体や巻き糸に載るようにしている。そのため、上記のような釣糸ガイドに対して、竿先側から筆先を入れて接着剤を足部の基端側にのみ塗布するのは非常に難しく、無理に行えば、導糸リングやリング保持部にも接着剤が付着して、美観を著しく損なう可能性が高い。
それ故、本発明は、上記課題を解決するために、形状の工夫された釣糸ガイドと、その釣竿ガイドを使用することで釣糸ガイドの足部を竿体に対し一層強固に固定できた釣竿を提供することを目的とする。
本発明者は、リング保持部に竿尻側から竿先側に通じる抜け穴を形成する場合には、当該抜け穴を接着剤(液体)が流れ出る程度の大きさに設計しなければならないため、導糸リングに嵌合していた内周縁まで切欠くことになり、リング保持強度は有意的に下がってしまい、釣糸ガイドとしての実用価値はかえって下がると当初考えた。しかしながら、穂先側の竿体に取り付ける小さいタイプの釣糸ガイドについては、意外なことに、毛細管現象により、接着剤が導糸リング側に導かれ、リング保持部の保持枠の内周縁と導糸リングの外周縁の間に形成される嵌合凹部を竿尻側と竿先側の両側から埋めてくれるため、リング保持強度が有意的に下がることはなく、しかも、結果的に、リング保持部に切欠き部ができて軽量化でき、且つ特に塩が溜まり易い竿尻側の嵌合凹部が接着剤で埋められるので塩が溜まり難くなるという副次的効果も期待できることを確認して、本発明を完成するに至った。
本発明の請求項1の発明は、一本の足部と、前記足部の基端から倒伏姿勢で延設され、導糸リングを嵌合保持するリング保持部を備え、前記足部が穂先側の竿体の外周面上に載置された状態で、巻き糸が巻き付けられ、接着剤が施されることで前記竿体に固定される釣糸ガイドにおいて、前記導糸リングの外周縁の竿体側最近接端と、前記竿体外周面に載置される前記足部の底面との、竿軸に垂直な方向における距離が3mm以下であり、前記リング保持部は、前記導糸リングを嵌合保持する内周縁を囲む保持枠と、前記保持枠を立設姿勢で支持する脚部とでなり、前記保持枠の内周縁から前記足部側に向かって前記保持枠を貫通させて切り欠いて前記竿体側最近接端を含む導糸リング外周縁を露出させる切欠き部が形成されていることを特徴とする釣糸ガイドである。
請求項2の発明は、請求項1に記載した釣糸ガイドにおいて、切欠き部は、開口端が窄まっていることを特徴とする釣糸ガイドである。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した釣糸ガイドが竿体に固定されてなる釣竿であって、接着剤は、足部においては、竿尻側の巻き付け部分から切欠き部を越して竿先側の基端縁と竿体外周面との間にも介挿され、リング保持部においては、内周縁と導糸リングとの間に形成される嵌合凹部のうち前記切欠き部側部分を竿先側と竿尻側の両側から埋めていることを特徴とする釣竿である。
本発明の釣竿によれば、釣糸ガイドの足部は、竿体に対して強固に固定されており、抜け出る方向に力が掛かっても動き難い。また、そのリング保持部は導糸リングの全外周縁を囲ってはいないが、十分なリング保持強度を維持している。
しかも、釣糸ガイドは軽量化が図れ、且つ、塩も溜まり難くなっている。
本発明の実施の形態に係る釣竿の斜視図である。 図1の釣糸ガイドの分解斜視図である。 図1の釣糸ガイドの斜視図、平面図、側方断面図である。 図1の釣竿を製造するための、接着剤の筆塗り作業の説明図である。 図4の筆塗り作業後の接着剤の足先の基端縁での固着状態を示す側方図である。 図4の筆塗り作業中の竿先側の嵌合凹部への接着剤の流れ込み及び固化を説明する図である。 図4の筆塗り作業後の接着剤の嵌合凹部での固着状態を示す側方断面図である。
本発明の実施の形態に係る釣竿1を、図面に従って説明する。
先ず、釣竿1の概略的な全体構造を、図1に従って説明する。
竿体sは比較的細く、その竿体sの穂先側に釣糸ガイド3が取り付けられている。
釣糸ガイド3は、1枚の金属製平板材をプレス加工により所定のフレーム形状に打ち抜き、さらに曲げ加工により所定の立体形状に成形されており、一本の足部5と、足部5の基端から倒伏姿勢で延設されたリング保持部7とでなる。リング保持部7の内周縁9には硬質材料製の導糸リングRが嵌合保持されている。
足部5は全体として略舌片状をなしており、竿体sの外周面に対応して若干曲成されている。釣糸ガイド3を竿体sに取り付けたときには、足部5は基端が竿先側を向いており、リング保持部7は、竿先側に倒れている。リング保持部7は、外側領域が、筒形に絞り加工されており、外側縁が竿尻側を向いている。
竿体sの外周面上に釣糸ガイド3の足部5を載置した状態で、足部5と竿体sとに亘って巻き糸tが巻き付けられて、足部5が竿体sに対して緊縛されている。そして、巻き付け部分を中心として接着剤Aが塗布されている。接着剤Aは液体の状態で塗布され、巻き糸t同士の隙間から竿体s側に侵入して固化している。このため、足部5と竿体sと巻き糸tとが固化した接着剤Aによって互いに接合された状態となっている。接着剤Aは他の領域でも固着されているが、それに関しては、リング保持部7の特徴的形状と関連付けて、後で詳述する。
次に、釣糸ガイド3のリング保持部7の特徴的形状を、図2〜図3に従って詳述する。
リング保持部7は、内周縁9を囲む保持枠11と、保持枠11を立設姿勢で支持する脚部13とでなり、この脚部13が足部5の基端に延設されている。保持枠11には導糸リングRが嵌合されている。リング保持部7は上記したように筒状に絞り加工されているので、保持枠11と導糸リングRとの間には竿尻側に比較的深い嵌合凹部15が形成されている。また、竿先側にも浅い嵌合凹部21が形成されている。
竿体sの穂先側に取り付けることを考慮して、嵌合している導糸リングRの外周縁rのうち竿体sに最も近い最近接端r1と、足部5の底面との、竿軸に垂直な方向における距離dが3mm以下になるように設計されている。
保持枠11から脚部13に繋がる部分は、外側縁を除いて略平板状になっている。この平板状の壁を切り欠いて切欠き部17が形成されている。切欠き部17は内周縁9を足部5側に向かって切欠いてなるものであり、竿軸方向に貫通した抜け穴になっている。切欠き部17は、竿軸方向から見ると碗状をしており、内方側の幅寸法w1よりも開口端19の幅寸法w2が狭くなって、開口端19が窄まっている。保持枠11は切欠き部17において欠落しているので、導糸リングRの外周縁rのうち下側部分r2は露出している。
次に、釣糸ガイド3の足部5への接着剤(液体)aの塗布作業を、図4に従って説明する。
竿体sを回しながら、巻き糸tの巻き付け部分に接着剤(液体)aを筆fで塗っていく。二度塗りをする場合には、初回塗りは筆fを巻き付け部分上に軽く置いて行くような感じで薄く塗っていき、接着剤(液体)aを巻き糸tの間に十分に浸透させる。そして、十分に乾燥した後、今度は少し厚めに二度塗りを行う。
上記の作業は、いずれも従来から慣用的に行われてきたものである。しかしながら、本発明では、釣糸ガイド3のリング保持部7が従来品と異なる形状的特徴、すなわち切欠き部17を有しているために、接着剤(液体)aが特異的な動きをする。
図4に示すように、足部5の基端側に接着剤(液体)aを塗布すると、その接着剤(液体)aは切欠き部17を通り抜け、基端縁6まで流れ出す。そして、そこから竿体sの外周面上に自然に流れ落ちる。従って、図5に示すように、固化した接着剤Aは、巻き糸tの巻き付け部分だけでなく、足部5の基端縁6の竿先側前方にも存在し、足部5を竿体sに対して固着する。なお、接着剤Aは足部5の基端縁6よりも竿先側に位置するので、物理的な障壁にもなっている。
また、切欠き部17の幅寸法w1、w2が総じて小さくなっているので毛細管現象が発生し易くなっているが、切欠き部17の開口端19は窄まっているので、毛細管現象が一層容易に発生し易くなっている。従って、竿体sの回転による上下反転にも助けられて、図6(1)に示すように、切欠き部17の間の隙間に流れ込んだ接着剤(液体)aは、図6(2)に示すように、その隙間から這い上がり、竿先側の嵌合凹部21に到達する。当該接着剤は、毛細管現象により、嵌合凹部21を埋めながらさらに、這い上がっていく。図示省略するが、接着剤(液体)aは竿尻側の嵌合凹部15も同様にして這い上がっていく。
従って、図6(3)に示すように、嵌合凹部21の切欠き部17側が固化した接着剤Aで埋められ、嵌合凹部15も同様に、固化した接着剤Aで埋められる。
図7は、嵌合凹部15、21が接着剤Aで埋められた状態を示す。
上記のように、保持枠11に欠落部があっても、保持枠11の欠落部付近で、竿先側と竿尻側の両側から接着剤Aにより導糸リングRがリング保持部7に固着されているので、欠落部があってもリング保持強度は下がらない。
また、リング保持部7を切欠いて切欠き部17を形成しているので、結果として、その分だけ軽量化できている。
さらに、嵌合凹部15のうち接着剤Aで埋められた部分は塩が溜まり易いところであったが、接着剤Aが埋められるので、結果として、塩も溜まらなくなる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の具体的構成が上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨から外れない範囲での設計変更があっても本発明に含まれる。
例えば、上記の実施の形態では、切欠き部17の縁と導糸リングRの外周縁によって囲まれた隙間は、接着剤(固体)Aによって完全に埋められており、その分、釣糸ガイド3が竿体sに強固に固定され、導糸リングRも釣糸ガイド3に強固に固定されているが、必ずしも完全に埋める必要はない。
いずれにしても、特許請求されている形状等を除いては、従来からあるまたは将来案出される形状や製造を任意に組み合わせることができる。
本発明に係る釣竿によれば、従来から慣用されている接着剤の塗布作業をするだけでありながら、釣糸ガイドを竿体に強固に固定して釣糸ガイドの竿体に対するズレ移動を効果的に阻止できる。
1‥‥釣竿
3‥‥釣糸ガイド 5‥‥足部
7‥‥リング保持部 9‥‥内周縁
11‥‥保持枠 13‥‥脚部
15‥‥(竿尻側)嵌合凹部 17‥‥切欠き部
19‥‥開口端 21‥‥(竿先側)嵌合凹部
s‥‥竿体 t‥‥巻き糸
R‥‥導糸リング
r1‥‥(外周縁の)竿体側最近接端 r2‥‥(外周縁の)露出領域
d‥‥距離
w‥‥切欠き部の幅寸法 w1‥‥開口端の幅寸法
w2‥‥内方の幅寸法
f‥‥筆

Claims (3)

  1. 一本の足部と、前記足部の基端から倒伏姿勢で延設され、導糸リングを嵌合保持するリング保持部を備え、前記足部が穂先側の竿体の外周面上に載置された状態で、巻き糸が巻き付けられ、接着剤が施されることで前記竿体に固定される釣糸ガイドにおいて、
    前記導糸リングの外周縁の竿体側最近接端と、前記竿体外周面に載置される前記足部の底面との、竿軸に垂直な方向における距離が3mm以下であり、
    前記リング保持部は、前記導糸リングを嵌合保持する内周縁を囲む保持枠と、前記保持枠を立設姿勢で支持する脚部とでなり、前記保持枠の内周縁から前記足部側に向かって前記保持枠を貫通させて切り欠いて前記竿体側最近接端を含む導糸リング外周縁を露出させる切欠き部が形成されていることを特徴とする釣糸ガイド。
  2. 請求項1に記載した釣糸ガイドにおいて、切欠き部は、開口端が窄まっていることを特徴とする釣糸ガイド。
  3. 請求項1または2に記載した釣糸ガイドが竿体に固定されてなる釣竿であって、接着剤は、足部においては、竿尻側の巻き付け部分から切欠き部を越して竿先側の基端縁と竿体外周面との間にも介挿され、リング保持部においては、内周縁と導糸リングとの間に形成される嵌合凹部のうち前記切欠き部側部分を竿先側と竿尻側の両側から埋めていることを特徴とする釣竿。
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