周知のように、電気光学装置、例えば光透過型の液晶装置は、ガラス基板、石英基板等からなる2枚の基板間に液晶が介在されて構成された電気光学パネルである液晶パネルが実装ケース等に収容されて構成されている。
また、液晶装置は、液晶パネルの一方の基板に、例えば薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、TFTと称す)等のスイッチング素子及び画素電極をマトリクス状に配置し、他方の基板に対向電極を配置して、両基板間に介在された液晶層による光学応答を画像信号に応じて変化させることで、画像表示を可能としている。
また、TFTを配置したTFT基板と、このTFT基板に相対して配置される対向基板とは、別々に製造される。TFT基板及び対向基板は、例えば石英基板上に、所定のパターンを有する半導体薄膜、絶縁性薄膜又は導電性薄膜を積層することによって構成される。半導体薄膜、絶縁性薄膜又は導電性薄膜は、層毎に各種膜の成膜工程とフォトリソグラフィ工程を繰り返すことによって形成されるのである。
このようにして形成されたTFT基板及び対向基板は、例えば液晶封入方式により、TFT基板と対向基板との間に液晶が介在される場合には、一部に切り欠きを有するよう略周状に塗布されたシール材を介して、パネル組立工程において高精度(例えばアライメント誤差1μ以内)に貼り合わされる。
次いでアライメントが施されてそれぞれ圧着硬化された後、シール材の一部に設けられた切り欠きを介して液晶が封入され、切り欠きが、熱等により硬化された封止材により封止される。
その後、TFT基板及び対向基板の外面となる露出面に、防塵ガラス(以下、カバーガラスと称す)が、接着剤を介してそれぞれ貼着されることにより、液晶パネルは製造される。TFT基板及び対向基板の露出面にカバーガラスが貼着されていることにより、各露出面における表示領域に、塵埃等が付着してしまうのを防止することができるとともに、カバーガラスの露出面に塵埃等が付着してしまったとしても、塵埃等と液晶との間の距離がカバーガラスの厚み分だけ長くなることから、液晶パネルを具備する液晶装置がプロジェクタ等の投射装置に用いられた場合、投射された塵埃等の像がデフォーカスされ、スクリーン上に大きくぼやけて表示されるため、目立たなくなるといった効果がある。
ここで、TFT基板及び対向基板の露出面に、カバーガラスを貼着する際、従来、先ず、液晶パネル用基板であるTFT基板または対向基板が複数構成された一方の基板である大板基板と、該大板基板よりも若干外形が小さめな他方の基板である大板カバーガラス基板とのいずれかの貼着面の略中央の1点に、熱硬化型接着剤を所定量滴下する。その後、熱硬化型接着剤を介して、該熱硬化型接着剤を各面内において広げながら大板基板に対し大板カバーガラス基板を真空下で貼着した後、オーブン等で、熱硬化型接着剤に熱を付与して硬化させる手法を用いていた。
尚、大板基板に対して、大板カバーガラス基板が貼着された後、TFT基板または対向基板毎に、大板基板に大板カバーガラス基板が貼着されたものがそれぞれ分断されることにより、TFT基板または対向基板にカバーガラスが貼着されたものが形成される。このとき、TFT基板に、既にカバーガラスが貼着された対向基板が貼り合わされていても構わない、または、対向基板に、既にカバーガラスが貼着されたTFT基板が貼り合わされていても構わない、
しかしながら、この手法では、大板基板に、例えば反りがある場合、熱硬化型接着剤を介して、大板基板に対し大板カバーガラス基板が貼着された際、各面内において、熱硬化型接着剤が広がり難く、接着不良が発生してしまうといった問題があった。
このような問題に鑑み、特許文献1には、大板基板に大板カバーガラス基板を貼着する際、先ず、大板カバーガラス基板の貼着面の略中央の1点に、熱硬化型接着剤を所定量滴下した後、熱硬化型接着剤の周囲にギャップ材を有する紫外線硬化型接着剤を数点塗布して、熱硬化型接着剤及び紫外線硬化型接着剤を介して大板カバーガラス基板に大板基板を真空下で貼着した後、紫外線硬化型接着剤に紫外線をスポット照射して硬化させることにより、両基板を仮固定し、高温室で、熱硬化型接着剤を硬化させて両基板を固定する手法が開示されている。
尚、両基板を固定前に仮固定するのは、通常、大板カバーガラス基板に対し大板基板を貼着する前に、各基板に対し、スクライブライン等の切断線が切り込まれ、各切断線が一致するよう、大板カバーガラス基板に対し大板基板が貼着されるが、仮固定をせずに高温室で両基板を固定しようとすると、高温室における熱風により、大板カバーガラス基板に対して大板基板がずれてしまい、一致していた切断線がずれてしまう場合があるためである。
このような手法によれば、大板カバーガラス基板に対し大板基板を貼着した際、紫外線硬化型接着剤におけるギャップ材によって両基板間に間隙が発生することにより、該間隙から両基板間に介在された空気が排出されることから、熱硬化型接着剤を各基板の貼着面内において確実に広げることができ、両基板の接着不良を防止することができる。
特開2006−11353号公報
ところで、特許文献1に開示された手法において、大板カバーガラス基板に対して紫外線硬化型接着剤を塗布する際は、大板カバーガラス基板に対して大板基板が貼着された際、紫外線硬化型接着剤を、大板基板の複数のTFT基板または対向基板が構成された有効領域に進入しない有効領域外となる位置に塗布する必要がある。これは、紫外線硬化型接着剤を硬化させる際に照射される紫外線が、有効領域に進入してしまうことを防ぐためである。
しかしながら、取れ個数を増やすため、大板基板に対し出来るだけ多くのTFT基板または対向基板が構成されていると、有効領域外となる部位が狭くなることから、両基板の貼着後、紫外線硬化型接着剤が、有効領域上の熱硬化型接着剤に対し混ざってしまい、熱硬化型接着剤を硬化させる際、硬化に必要な所定の硬度まで硬化できなくなってしまう場合があり、固定不良により液晶パネルの品質が低下してしまうといった問題があった。
また、特許文献1に開示された手法においては、熱硬化型接着剤に加え、紫外線硬化型接着剤を用いるため、製造コストが増大してしまうといった問題もあった。
このような問題に鑑み、熱硬化型接着剤を、1点塗布ではなく、例えば大板カバーガラス基板の貼着面内の位置に対して、ディスペンサ等を用いて描画により広範囲に塗布し、大板カバーガラスを保持する治具にソフトビーム等の光を照射して、治具の発熱を用いて熱硬化型接着剤を仮硬化させて両基板を仮固定し、その後本固定することにより、熱硬化型接着剤のみで両基板を固定することができる手法も周知である。
しかしながら、この手法では、治具にソフトビームを照射して発熱させる際、熱が治具内における熱拡散により治具から外部に逃げてしまい、治具から熱硬化型接着剤に対し、仮硬化に必要な硬化温度を付与することが難しいといった問題があった。
本発明は上記問題点に着目してなされたものであり、熱硬化型接着剤に対し効率良く硬化温度まで熱を付与することができることにより、熱硬化型接着剤のみで一方の基板に対し他方の基板を確実に貼着することができ、製造コストの削減を図るとともに、品質の向上を図ることができる電気光学装置の製造方法、電気光学装置の製造装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明に係る電気光学装置の製造方法は、一対の基板の内、一方の基板に対し他方の基板を、熱硬化型接着剤を介して貼り合わせる貼着工程と、少なくとも一部が他部よりも熱伝導率の低い低熱伝導率部材から構成された治具の低熱伝導率部位に対し、前記一方の基板を載置する載置工程と、前記低熱伝導率部位に対して光照射装置から光を照射して、前記低熱伝導率部位を発熱させ、該熱により、少なくとも前記熱硬化型接着剤の一部を硬化させる接着剤硬化工程と、を具備することを特徴とする。
本発明によれば、一方の基板に対して他方の基板を貼着して仮固定する際、光照射装置から治具の低熱伝導率部位に対し光を照射することにより、低熱伝導率部材によって、両基板を貼着する熱硬化型接着剤の少なくとも一部に対し低熱伝導率部位から確実に硬化温度まで熱を逃がすことなく効率良く付与することができる。このことにより、熱硬化型接着剤のみで、一方の基板に対し他方の基板を貼着することができることから、従来の熱硬化型接着剤及び光硬化型接着剤を用いていた場合に比べ、電気光学装置の製造コストを削減することができる。また、両基板の貼着に熱硬化型接着剤のみを使用することから、従来の熱硬化型接着剤及び光硬化型接着剤を用いていた場合のように、貼着後、光硬化型接着剤が熱硬化型接着剤に混入してしまった結果、熱硬化型接着剤の硬化を妨げてしまうことがないため、品質の向上が図られた電気光学装置の製造方法を提供することができるといった効果を有する。
また、前記一対の基板は、光透過性を有する部材から構成されており、前記接着剤硬化工程は、前記一方の基板及び前記他方の基板に対して前記光照射装置から出射された前記光を透過させて、前記低熱伝導率部位に対し前記光を照射して行うことを特徴とする。
本発明によれば、光照射装置から、確実に低熱伝導率部材に対し光を照射することができ、低熱伝導率部材によって、熱硬化型接着剤の少なくとも一部に対し低熱伝導率部位から確実に硬化温度まで熱を逃がすことなく効率良く付与することができる。このことから、熱硬化型接着剤のみで、一方の基板に対し、他方の基板を貼着することができるため、従来よりも電気光学装置の製造コストを削減することができるとともに、従来よりも品質の向上が図られた電気光学装置の製造方法を提供することができるといった効果を有する。
さらに、前記熱硬化型接着剤の硬度を、設定硬度まで本硬化させる接着剤本硬化工程を具備することを特徴とする。
本発明によれば、熱硬化型接着剤の硬度を、設定硬度まで本硬化させる接着剤本硬化工程を具備していることにより、熱硬化型接着剤のみで、一方の基板に対し、他方の基板を確実に貼着することができるため、従来よりも電気光学装置の製造コストを削減することができるとともに、従来よりも品質の向上が図られた電気光学装置の製造方法を提供することができるといった効果を有する。
さらに、前記一方の基板は、複数の電気光学パネル用基板が構成された大板基板であり、前記載置工程において、前記大板基板の前記電気光学パネル用基板が構成された領域を除く部位を、前記低熱伝導率部位に載置することを特徴とする。
本発明によれば、一方の基板に複数構成された電気光学パネル用基板に、光照射装置から照射された光が入光してしまうことなく、確実に低熱伝導率部材の少なくとも一部に対し光を照射することができ、低熱伝導率部材によって、低熱伝導率部位から、確実に硬化温度まで熱を逃がすことなく、熱硬化型接着剤に対して熱を効率良く付与することができる。このことにより、低熱伝導率部位を確実に熱硬化型接着剤の硬化温度まで発熱させることができることから、熱硬化型接着剤のみで、一方の基板に対し、他方の基板を貼着することができるため、従来よりも電気光学装置の製造コストを削減することができるとともに、従来よりも品質の向上が図られた電気光学装置の製造方法を提供することができるといった効果を有する。
また、前記他方の基板は、前記大板基板の少なくとも複数の前記電気光学パネル用基板が構成された領域に貼着される大板カバーガラス基板であることを特徴とする。
本発明によれば、電気光学パネル用基板が複数構成された一方の基板に対して大板カバーガラス基板を貼着して仮固定する際、光照射装置から治具の低熱伝導率部位に対し光を照射することにより、低熱伝導率部材によって、熱硬化型接着剤の少なくとも一部に対し、低熱伝導率部位から、確実に硬化温度まで熱を逃がすことなく効率良く付与することができる。このことにより、熱硬化型接着剤のみで、一方の基板に対し、大板カバーガラス基板を貼着することができることから、従来の熱硬化型接着剤及び光硬化型接着剤を用いていた場合に比べ、電気光学装置の製造コストを削減することができる。また、貼着に熱硬化型接着剤のみを使用することから、従来の熱硬化型接着剤及び光硬化型接着剤を用いていた場合のように、両基板の貼着後、光硬化型接着剤が熱硬化型接着剤に混入してしまった結果、熱硬化型接着剤の硬化を妨げてしまうことがないため、品質の向上が図られた電気光学装置の製造方法を提供することができるといった効果を有する。
本発明に係る電気光学装置の製造装置は、少なくとも一部が他部よりも熱伝導率の低い低熱伝導率部材から構成された低熱伝導率部位を有する治具であって、一対の基板の内、他方の基板が熱硬化型接着剤を介して貼り合わされた一方の基板が低熱伝導率部位に載置される治具と、前記低熱伝導率部位に対して光を照射して前記低熱伝導率部位を発熱させ、該熱により、少なくとも前記熱硬化型接着剤の一部を硬化させる光照射装置と、を具備することを特徴とする。
本発明によれば、一方の基板に対して他方の基板を貼着して仮固定する際、光照射装置から治具の低熱伝導率部位に対し光が照射されることにより、低熱伝導率部材によって、熱硬化型接着剤の少なくとも一部に対し、低熱伝導率部位から確実に硬化温度まで熱が逃げずに効率良く付与されることにより、熱硬化型接着剤のみで、一方の基板に対し他方の基板を貼着することができる。このことから、従来の熱硬化型接着剤及び光硬化型接着剤を用いていた場合に比べ、電気光学装置の製造コストを削減することができる。また、貼着に熱硬化型接着剤のみが使用されることから、従来の熱硬化型接着剤及び光硬化型接着剤を用いた場合のように、両基板の貼着後、光硬化型接着剤が熱硬化型接着剤に混入してしまった結果、熱硬化型接着剤の硬化を妨げてしまうことがないため、製造後の電気光学装置の品質の向上が図られた電気光学装置の製造装置を提供することができるといった効果を有する。
また、前記一対の基板は、光透過性を有する部材から構成されており、前記光照射装置は、前記一方の基板及び前記他方の基板に対して出射した前記光を透過させて、前記低熱伝導率部位に対し前記光を照射することを特徴とする。
本発明によれば、低熱伝導率部材に対し、光照射装置から確実に光が照射されることにより、熱硬化型接着剤の少なくとも一部に対し、低熱伝導率部位から、確実に硬化温度まで熱が逃げずに効率良く付与されることにより、熱硬化型接着剤のみで、一方の基板に対し、他方の基板を貼り合わせることができるため、従来よりも電気光学装置の製造コストを削減することができるとともに、従来よりも品質の向上が図られた電気光学装置の製造装置を提供することができるといった効果を有する。
さらに、前記治具の前記低熱伝導率部材における前記光が照射される面とは反対側の下層に、断熱材が設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、光照射装置からの光の照射により熱硬化型接着剤の硬化温度まで発熱した低熱伝導率部位から熱が逃げてしまうことを、断熱材によってより確実に防ぐことができることから、低熱伝導率部材によって、低熱伝導率部位から、確実に硬化温度まで熱が逃げずに効率良く付与されることにより、熱硬化型接着剤のみで、一方の基板に対し他方の基板を貼着することができる。このため、従来よりも電気光学装置の製造コストを削減することができるとともに、従来よりも品質の向上が図られた電気光学装置の製造装置を提供することができるといった効果を有する。
また、前記低熱伝導率部材は、ステンレス鋼またはセラミックから構成されていることを特徴とする。
本発明によれば、ステンレス鋼またはセラミックは、熱伝導率が低いため、即ち、光照射装置からの光照射により熱硬化型接着剤の硬化温度まで発熱した熱が逃げづらいことから、低熱伝導率部材によって、低熱伝導率部位から、確実に硬化温度まで熱が逃げずに効率良く付与される。このことにより、熱硬化型接着剤のみで、一方の基板に対し他方の基板を貼着することができるため、従来よりも電気光学装置の製造コストを削減することができるとともに、従来よりも品質の向上が図られた電気光学装置の製造装置を提供することができるといった効果を有する。
さらに、前記一方の基板は、複数の電気光学パネル用基板が構成された大板基板であり、前記治具は、前記大板基板の前記電気光学パネル用基板が構成された領域を除く部位が、前記低熱伝導率部位に載置されることを特徴とする。
本発明によれば、一方の基板に複数構成された電気光学パネル用基板に、光照射装置から照射された光が入光されてしまうことなく、確実に、低熱伝導率部材に対し光が照射されることにより、低熱伝導率部材によって、低熱伝導率部位から、確実に硬化温度まで熱が逃げずに効率良く付与される。このことから、熱硬化型接着剤のみで、一方の基板に対し、他方の基板を貼着することができるため、従来よりも電気光学装置の製造コストを削減することができるとともに、従来よりも品質の向上が図られた電気光学装置の製造装置を提供することができるといった効果を有する。
また、前記他方の基板は、前記大板基板の少なくとも複数の前記電気光学パネル用基板が構成された領域に貼着される大板カバーガラス基板であることを特徴とする。
本発明によれば、電気光学パネル用基板が複数構成された一方の基板に対して大板カバーガラス基板を貼着して仮固定する際、光照射装置から治具の低熱伝導率部位に対し光が照射されることにより、低熱伝導率部材によって、熱硬化型接着剤の少なくとも一部に対し、低熱伝導率部位から、確実に硬化温度まで熱が逃げずに効率良く付与される。このことにより、熱硬化型接着剤のみで、一方の基板に対し、大板カバーガラス基板が貼着されることから、従来の熱硬化型接着剤及び光硬化型接着剤を用いていた場合に比べ、電気光学装置の製造コストを削減することができる。また、貼着に熱硬化型接着剤のみが使用されることから、従来の熱硬化型接着剤及び光硬化型接着剤を用いた場合のように、両基板の貼着後、光硬化型接着剤が熱硬化型接着剤に混入してしまい、熱硬化型接着剤の硬化を妨げてしまうことがないため、製造後の電気光学装置の品質の向上が図られた電気光学装置の製造装置を提供することができるといった効果を有する。
以下、図面を参照にして本発明の実施の形態を説明する。尚、以下に示す実施の形態において電気光学装置は、光透過型の液晶装置を例に挙げて説明する。よって、電気光学装置が具備する電気光学パネルは、液晶パネルを例に挙げて説明する。
また、液晶パネルにおいて対向配置される液晶パネル用基板を構成する一対の基板の内、一方の基板は、素子基板(以下、TFT基板と称す)を、また他方の基板は、TFT基板に対向する対向基板を例に挙げて説明する。
先ず、本実施の形態の製造方法により製造される液晶装置における液晶パネルの全体の構成について説明する。図1は、本実施の形態の製造方法により製造される液晶装置における液晶パネルの平面図、図2は、図1中のII-II線に沿って切断した液晶パネルの断面図である。
図1、図2に示すように、液晶パネル100は、例えば、石英基板やガラス基板等の光透過性を有する部材を用いたTFT基板10と、該TFT基板10に対向配置される、例えばガラス基板や石英基板等の光透過性を有する部材を用いた対向基板20との間の内部空間に、電気光学物質である液晶50が介在されて構成される。対向配置されたTFT基板10と対向基板20とは、シール材52によって貼り合わされている。
TFT基板10の液晶50と接する領域に、液晶パネル100の表示領域40を構成するTFT基板10の表示領域10hが構成されている。また、表面10f側における表示領域10hに、画素を構成するとともに、後述する対向電極21とともに液晶50に駆動電圧を印加する画素電極9aがマトリクス状に配置されている。
また、対向基板20の表面20f側における液晶50と接する領域に、液晶50に画素電極9aとともに駆動電圧を印加する対向電極21が設けられており、対向電極21の表示領域10hに対向する領域に、液晶パネル100の表示領域40を構成する対向基板20の表示領域20hが構成されている。
TFT基板10の画素電極9a上に、ラビング処理が施された配向膜16が設けられており、また、対向基板20上の全面に渡って形成された対向電極21上にも、ラビング処理が施された配向膜26が設けられている。各配向膜16、26は、例えば、ポリイミド膜等の透明な有機膜からなる。
また、TFT基板10の表示領域10hにおいては、複数本の図示しない走査線と複数本の図示しないデータ線とが交差するように配線され、走査線とデータ線とで区画された領域に画素電極9aがマトリクス状に配置される。そして、走査線とデータ線との各交差部分に対応して図示しない薄膜トランジスタ(TFT)が設けられ、このTFT毎に画素電極9aが電気的に接続されている。
TFTは走査線のON信号によってオンとなり、これにより、データ線に供給された画像信号が画素電極9aに供給される。この画素電極9aと対向基板20に設けられた対向電極21との間の電圧が液晶50に印加される。
対向基板20に、液晶パネル100の表示領域40を規定する額縁としての遮光膜53が設けられている。
液晶50がTFT基板10と対向基板20との間の空間に、既知の液晶注入方式で注入される場合、シール材52は、シール材52の1辺の一部において欠落して塗布されている。
シール材52の欠落した箇所は、該欠落した箇所から貼り合わされたTFT基板10及び対向基板20との間の空間において、シール材52により囲まれた領域に液晶50を注入するための切り欠きである液晶注入口108を構成している。液晶注入口108は、液晶注入後、封止材109によって封止される。
シール材52の外側の領域に、TFT基板10の図示しないデータ線に画像信号を所定のタイミングで供給して該データ線を駆動するドライバであるデータ線駆動回路101と外部回路との接続のための外部接続端子102とが、TFT基板10の1辺に沿って設けられている。尚、外部接続端子102は、対向基板20に設けられていても構わない。
外部接続端子102に、液晶パネル100を、プロジェクタ等の電子機器と電気的に接続する、特定の長さを有する柔軟な図示しないフレキシブル配線基板(Flexible Printed Circuits、以下FPCと称す)の一端が接続されている。FPCの他端がプロジェクタ等の電子機器に接続されることにより、液晶パネル100と電子機器とは電気的に接続される。
外部接続端子102が設けられたTFT基板10の1辺に隣接する2辺に沿って、TFT基板10の図示しない走査線及びゲート電極に、走査信号を所定のタイミングで供給することにより、ゲート電極を駆動するドライバである走査線駆動回路103、104が設けられている。走査線駆動回路103、104は、シール材52の内側の遮光膜53に対向する位置において、TFT基板10上に形成されている。
また、TFT基板10上に、データ線駆動回路101、走査線駆動回路103、104、外部接続端子102及び上下導通端子107を接続する配線105が、遮光膜53の3辺に対向して設けられている。
上下導通端子107は、シール材52のコーナー部の4箇所のTFT基板10上に形成されている。そして、TFT基板10と対向基板20相互間に、下端が上下導通端子107に接触し上端が対向電極21に接触する上下導通材106が設けられており、該上下導通材106によって、TFT基板10と対向基板20との間で電気的な導通がとられている。
また、TFT基板10の裏面10rに、カバーガラス30が、後述する熱硬化型接着剤41(図9参照)を介して貼着されている。同様に、対向基板20の裏面20rにも、カバーガラス31が、後述する熱硬化型接着剤41(図9参照)を介して貼着されている。
各カバーガラス30、31は、TFT基板10及び対向基板20の各裏面10r、20rの少なくとも各表示領域10h、20hに塵埃等が付着するのを防止するとともに、塵埃等を、各裏面10r、20rから離間させてデフォーカスすることで、塵埃等の像を目立たなくする機能を有する。
次に、このように構成された液晶パネルの製造方法の一例を、図3〜図6を用いて示す。図3は、TFT基板が複数構成された大板基板に対し、TFT基板毎に、カバーガラスが貼着された対向基板が複数貼着された状態を示す断面図、図4は、図3の大板基板に対し大板カバーガラス基板が貼着された状態を示す断面図、図5は、図4の構造体から複数の液晶パネルが分断された状態を示す断面図、図6は、図3のTFT基板が複数構成され、TFT基板毎に、カバーガラスが貼着された対向基板が複数貼着された大板基板に対し、大板カバーガラス基板を貼着する様子を示す斜視図である。
先ず、図3、図6に示すように、周知の工程を経て、表面10fに所定のパターンを有する上述した各種薄膜が積層されて形成されたTFT基板10が複数構成された一方の基板である大板基板110の表面110fに対し、例えばクリーンルーム内において、TFT基板10毎に、上述したシール材52を介して、チップ状のカバーガラス31が貼着されたチップ状の対向基板20の表面20fをそれぞれ貼り合わせる。
尚、この際、対向基板20の表面20fにも、上述した各種薄膜が積層されている。その後、各TFT基板10と各対向基板20との間に、液晶50をそれぞれ注入した後、各液晶注入口108を、封止材109によってそれぞれ封止する。
次いで、図4、図6に示すように、大板基板110の表面110fとは反対側の裏面110rに、大板基板110よりも若干外形が小さめな他方の基板である大板カバーガラス基板300を、後述する熱硬化型接着剤41(図9参照)を介して貼着する貼着工程を行う。尚、貼着工程の具体的な手法については後述する。
また、以下、チップ状のカバーガラス31が貼着されたチップ状の対向基板20が複数貼着された大板基板110に、大板カバーガラス基板300が貼着された図4に示すものを、構造体400と称す。
最後に、大板基板110、大板カバーガラス基板300に、例えばスクライブラインLを形成し、該スクライブラインLに沿って、大板基板110、大板カバーガラス基板300を、既知のスクライブブレイクによって分断することにより、構造体400から、複数の液晶パネル100を形成する。尚、大板基板110、大板カバーガラス基板300の分断は、スクライブブレイクに限らず、ダイシングで行っても構わないし、レーザを用いて行っても構わない。
また、大板基板110の表面110fに、TFT基板10毎にチップ状の対向基板20を貼り合わせた後、対向基板20の裏面20rにチップ状のカバーガラス31を貼着しても構わない。
さらには、大板基板110の表面110fに、対向基板20が複数構成された図示しない大板基板を貼り合わせた後、対向基板20が複数構成された大板基板に、該大板基板よりも若干小さめな図示しない大板カバーガラス基板を貼着して、その後、各大板基板及び各大板カバーガラス基板を上述した手法により分断することにより、液晶パネル100を複数形成しても構わない。
次に、上述した貼着工程を、図7〜図9に示す。図7は、貼着装置のステージに、大板カバーガラス基板を固定した後、昇降装置に、図3に示す大板基板が固定された状態を示す断面図、図8は、図7の昇降装置が降下されて、大板カバーガラス基板に熱硬化型接着剤を介して図3に示す大板基板が貼着された状態を示す断面図、図9は、図7の大板カバーガラスの貼着面に熱硬化型接着剤が塗布された状態を示す平面図である。
先ず、貼着工程においては、図7に示すように、貼着装置61のステージ140に、大板カバーガラス基板300を載置し、真空吸着等により固定した後、図9に示すように、大板カバーガラス基板300の貼着面300fに、ディスペンサ等を用いて描画により、例えばシリコーンゲルから構成された熱硬化型接着剤41を平面視した状態で広範囲に塗布する。尚、熱硬化型接着材41は、シリコーンゲルに限定されない。
次いで、ステージ140に対して昇降自在な貼着装置61の昇降装置43に、大板カバーガラス基板300に対して、チップ状のカバーガラス31が貼着されたチップ状の対向基板20が複数貼着された大板基板(以下、図3に示す状態の大板基板と称す)110の裏面110rを、該裏面110rが熱硬化型接着剤41に接しないよう所定の距離離間させて、載置、固定する。
その後、図8に示すように、貼着装置61の減圧室130内を減圧した後、真空下において、昇降装置43をステージ140に対してゆっくり、例えば0.5mm/secで降下させることにより、大板カバーガラス基板300の貼着面300fに対して、熱硬化型接着剤41を介して、図3に示す状態の大板基板110の裏面110rを貼着し、その結果、構造体400が形成される。
尚、この際、熱硬化型接着剤41は、図9に示すように、大板カバーガラス基板300の貼着面300fにおいて、平面視した状態において広範囲に塗布されていることから、熱硬化型接着剤41は、貼着後の大板カバーガラス基板300の貼着面300f及び大板基板110の裏面110rの各面内において、各基板300、110の周縁部近傍まで広げられる。
その後、さらに、各カバーガラス31の上部から、加圧ヘッド69を用いて、大板基板110を、大板カバーガラス基板300側に、所定圧力、例えば100g/cm2の圧力で、所定時間、例えば180sec押圧する。
その結果、各基板300、110間の空気が抜気され、熱硬化型接着剤41は、大板カバーガラス基板300の貼着面300f及び大板基板110の裏面110rの各面内において、各基板300、110の周縁部近傍まで確実に広げられる。即ち、大板カバーガラス基板300は、大板基板110に対し、高い密着度で貼着される。
次に、貼着工程において貼り合わされた大板基板110と大板カバーガラス基板300とを、液晶パネルの製造装置を用いて仮固定する工程について、図10〜図13を用いて説明する。
図10は、本実施の形態における液晶装置の製造装置の治具に、構造体が固定された状態を示す部分断面図、図11は、図10の構造体及び液晶装置の製造装置の治具をXIの方向から見た平面図、図12は、図11中のXII-XII線に沿う治具の部分断面図、図13は、治具を構成する部材の変形例を示す治具の部分断面図である。
先ず、図8において形成された構造体400の大板基板110、大板カバーガラス基板300に対して、図11に示すように、上述したスクライブラインLを形成する。
次いで、構造体400を、図10、図11に示すように、液晶パネルの製造装置である仮固定装置62の治具70に載置する載置工程を行う。詳しくは、構造体400における大板基板110の表面110fの複数のTFT基板10が構成された領域を除く部位、具体的には、図11に示すように、大板基板110の外周縁部近傍の一部を、治具70上に載置した後、大板基板110の治具70に載置した部位を、治具70に形成された真空チャック71によって吸着することにより、構造体400を治具70に固定する。
尚、治具70において、少なくとも大板基板110が載置、固定される部位には、例えばステンレス鋼またはセラミックからなる光の照射により発熱する低熱伝導率部材81が設けられている。ここで、以下、治具70において、低熱伝導率部材81が設けられた部位を、低熱伝導率部位90と称す。即ち、大板基板110は、治具70の低熱伝導率部位90に固定される。
治具70の低熱伝導率部位90において、低熱伝導率部材81の後述する光照射装置75(図10参照)から出射された光が照射される面の下層に、例えばリン酸塩系バインダから構成された断熱材82が設けられている。
また、治具70は、低熱伝導率部位90以外は、低熱伝導率部材81以外の部材である、例えばアルミ80等から構成されていても構わない。さらには、治具70において、低熱伝導率部位90以外も、図13に示すように、低熱伝導率部材81から構成されていても構わない。
次いで、図10に示すように、大板カバーガラス基板300の上方から、仮固定装置62の光照射装置75を用いて光(以下、ソフトビームと称す)を出射させ、該出射したソフトビームを、大板カバーガラス基板300、大板基板110を透過させて、治具70の低熱伝導率部位90における低熱伝導率部材81に照射することにより、大板基板110と大板カバーガラス基板300とを貼着する少なくとも熱硬化型接着剤41の一部を仮硬化させる接着剤硬化工程を行う。
具体的には、低熱伝導率部材81にソフトビームが所定の光量で照射されると、低熱伝導率部材81は、熱硬化型接着剤41の硬化温度またはそれ以上の温度まで発熱する。低熱伝導率部材81から発熱した熱は、低熱伝導率部材81内における熱の伝導率が低いことと、低熱伝導率部材81の下層に断熱材82が設けられていることにより、治具70内において拡散されてしまうことなく、確実に、低熱伝導率部位90に固定された大板基板110に伝熱される。その後、伝熱された熱は、大板基板110と大板カバーガラス基板300とを貼着する熱硬化型接着剤41に、該熱硬化型接着剤41の硬化に必要な硬化温度、例えば80℃を保って付与される。
その結果、熱硬化型接着剤41は仮硬化することから、熱硬化型接着剤41を介して貼着された大板基板110と大板カバーガラス基板300とが仮固定される。
尚、構造体400における大板基板110は、複数のTFT基板10が構成された領域以外の部位が治具70の低熱伝導率部位90に固定されていることにより、接着剤硬化工程においてソフトビームを照射した際、ソフトビームが、TFT基板10の、例えば上述したTFTや、TFT基板10と対向基板20との間に介在された液晶50に入光し、液晶パネル100に不具合が発生してしまうことを防止することができる。
また、仮固定後は、構造体400をオーブン等に移動させ、オーブンにて、構造体400を、熱硬化型接着剤41の本硬化に必要な温度まで加熱する接着剤本硬化工程を行うことにより、熱硬化型接着剤41の硬度を、設定硬度まで本硬化させる。即ち、熱硬化型接着剤41は完全硬化する。その結果、対向基板20が貼着された大板基板110に対して大板カバーガラス基板300が本固定される。
このように、本実施の形態においては、図3に示す状態の大板基板110に対して、大板カバーガラス基板300を貼着して仮固定する際、貼着工程において、熱硬化型接着剤41のみを用いて、大板基板110に対して大板カバーガラス基板300を貼着した後、載置工程において、構造体400を、仮固定装置62の治具70の低熱伝導率部位90に載置して、さらに、接着剤硬化工程において、低熱伝導率部位90の低熱伝導率部材81に対してソフトビームを照射し、該低熱伝導率部材81から発熱した熱を用いて、少なくとも熱硬化型接着剤41の一部を仮硬化させると示した。
このことによれば、貼着後、図3に示す状態の大板基板110に対して、大板カバーガラス基板300を仮固定する際、光照射装置75から治具70の低熱伝導率部位90に対し光を照射することにより、熱硬化型接着剤71に対し、低熱伝導率部位90の低熱伝導率部材81によって、低熱伝導率部材81から、確実に熱硬化型接着剤71の硬化温度まで熱を治具70内に逃がすことなく効率良く付与することができる。このことにより、熱硬化型接着剤71のみで、仮固定を行うことができることから、従来の熱硬化型接着剤及び光硬化型接着剤を用いていた場合に比べ、液晶パネル100の製造コストを削減することができる。
また、両基板の貼着に熱硬化型接着剤41のみを使用することから、従来の熱硬化型接着剤及び光硬化型接着剤を用いていた場合のように、両基板の貼着後、光硬化型接着剤が熱硬化型接着剤に混入してしまい、熱硬化型接着剤の硬化を妨げてしまうことがないため、品質の向上が図られた液晶パネル100の製造方法、製造装置を提供することができる。
また、本実施の形態においては、治具70の低熱伝導率部位90において、低熱伝導率部材81の下層に断熱材82が設けられていると示した。
このことによれば、光照射装置75からの光の照射により熱硬化型接着剤41の硬化温度まで発熱した低熱伝導率部材81の熱が治具70内に逃げてしまうことを、断熱材82によってより確実に防ぐことができる。
このことから、熱硬化型接着剤41に対し、低熱伝導率部位90から、確実に硬化温度まで熱を逃がすことなく効率良く熱を付与することができることにより、熱硬化型接着剤41のみで、図3に示す状態の大板基板110に対して、大板カバーガラス基板300を仮固定することができる。このため、従来よりも液晶パネルの製造コストを削減することができるとともに、従来よりも品質の向上が図られた液晶パネル100の製造方法、製造装置を提供することができる。
尚、本実施の形態においては、図3に示す状態の大板基板110に対する大板カバーガラス基板300の貼着、仮固定を例に挙げて示したが、これに限らず、対向基板20が貼り合わされていない大板基板110に対する大板カバーガラス基板300の貼着、仮固定に用いても、本実施の形態と同様の効果を得ることができるということは勿論である。
また、対向基板が複数構成された図示しない大板基板に対する図示しない大板カバーガラス基板の貼着、仮固定に適用しても、本実施の形態と同様の効果を得ることができるということは云うまでもない。
10…TFT基板(電気光学パネル用基板)、20…対向基板(電気光学パネル用基板)、41…熱硬化型接着剤、62…仮固定装置(電気光学装置の製造装置)、70…治具、75…光照射装置、81…低熱伝導率部材、82…断熱材、90…低熱伝導率部位、110…大板基板(一方の基板)、300…大板カバーガラス基板(他方の基板)。