JP5002280B2 - 樹脂成形品製造方法 - Google Patents
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これらの熱伝導性フィラーを含有する樹脂組成物(以下「熱伝導性樹脂組成物」ともいう)は、熱伝導性が求められる樹脂成形品の形成に用いられており、特に電子部品用途において広く用いられている。
例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性のベース樹脂と、熱伝導性フィラーを含有する熱伝導性樹脂組成物が、チップ部品の封止や、発熱部品の搭載された回路と放熱板との間の絶縁層の形成などといった用途に用いられたりもしている。
また、特許文献1には、ベース樹脂とフィラーとを含む熱伝導性樹脂組成物によりシート状に形成された高熱伝導性樹脂層が、金属箔を用いた金属箔層上に積層されて形成された金属箔付高熱伝導接着シートが記載されており、この金属箔付高熱伝導接着シートが半導体チップの接着に用いられることが記載されている。
このことから、熱伝導性樹脂成形品の形成には、窒化ホウ素や窒化アルミニウムなどといった高い熱伝導率を有する無機窒化物が用いられたりしており、しかも、このような熱伝導性フィラーを高充填させることが検討されている。
例えば、特許文献2には、エポキシ樹脂中に熱伝導性フィラーを80〜95質量%もの高充填させた樹脂組成物を用いることにより、樹脂成形品の熱伝導率を3〜10W/mKとさせ得ることが記載されている。
このように、樹脂成形品中に空気層が形成されると熱伝導率などの特性を低下させてしまうこととなるため、従来、熱伝導性フィラーが分散されてなる樹脂成形品の製造方法においては、工程を簡略化させつつ得られる熱伝導率の低下を抑制させることが困難であるという問題を有している。
すなわち、工程を簡略化しつつ得られる樹脂成形品の熱伝導率の低下を抑制させ得る樹脂成形品製造方法を提供し得る。
本実施形態の熱伝導性シートには、熱伝導性フィラーが含有された樹脂組成物が用いられている。
これらの中でも、比較的安価で良好なる熱伝導性を有する点において窒化ホウ素を主成分とする無機物粒子(以下「窒化ホウ素フィラー」ともいう)が好適である。
なお、窒化ホウ素の粒子形状は、通常、鱗片状であり、この鱗片状の粒子や、この鱗片状粒子が凝集されてなる凝集粒子のいずれものも窒化ホウ素フィラーとして用いることができる。
しかも、常温固体のエポキシ樹脂が好ましい。
この常温固体のエポキシが好ましいのは、常温液体状のエポキシ樹脂を用いた場合には、熱伝導性シートを被着体に接着すべく加熱条件下において被着体に当接させた場合に、エポキシ樹脂の粘度が低下しすぎて、熱伝導性シートの端縁部から外にエポキシ樹脂が大きく滲み出してしまうおそれがあるためである。
このエポキシ樹脂の滲み出しが激しい場合には、熱伝導性シートの周囲で、例えは、放熱器取り付け箇所や接点箇所などの本来金属部分が露出しているべき個所にエポキシ樹脂被膜を形成させて、熱伝達に問題が生じたり、あるいは、導通不良などといった問題を生じさせたりするおそれがある。
これらの問題をより確実に抑制させ得る点において、このエポキシ樹脂としては、エポキシ当量450〜2000g/eqの常温固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、エポキシ当量160〜220g/eqの多官能の常温固体で87℃から93℃の間に軟化点を有するノボラック型エポキシ樹脂とが(ビスフェノールA型エポキシ樹脂/ノボラック型エポキシ樹脂)=40/60〜60/40となる質量比率で混合されているものを用いることが好ましい。
なお、このエポキシ当量は、JIS K 7236により求めることができる。
前記熱伝導性樹脂組成物に含有される熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルアミドイミド樹脂、ポリエーテルアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などが挙げられる。
この硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、トリエチレンテトラミンなどのアミン系硬化剤、フェノールノボラック樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、ビスフェノール系フェノール樹脂などのフェノール系硬化剤、酸無水物などを用いることができる。
中でも、ジアミノジフェニルスルホンが好適である。
前記硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、三フッ化ホウ素モノエチルアミンなどのアミン系硬化促進剤が好適である。
熱伝導性シートの形成に窒化ホウ素フィラーをマトリックス成分に対してこのような割合で用いることが好ましいのは、マトリックス成分100質量部に対する窒化ホウ素フィラーの量が200質量部未満の場合には、得られる熱伝導性シートに十分な熱伝導性を付与することが困難となるためである。
また、600質量部を超えて使用すると樹脂組成物作製工程にて作製される樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、均質な樹脂組成物を作製することが困難となり、成形加工工程における作業性を低下させるおそれがあるためである。
このような点から、窒化ホウ素フィラーが樹脂成形品中に高充填されるような場合には、工程の簡略化ならびに熱伝導率の低下抑制といった本発明の効果を顕著に発揮させることができ、特に、窒化ホウ素フィラーが65体積%以上の割合で含有されている熱伝導性樹脂組成物で樹脂成形品を形成させる場合においては、本発明の効果をより顕著に発揮させ得る。
本実施形態の樹脂成形品製造方法においては、まず、前記熱伝導性フィラーと、前記マトリックス成分とを用いて熱伝導性樹脂組成物を作製する樹脂組成物作製工程を実施し、前記樹脂組成物作製工程で作製された熱伝導性樹脂組成物を成形加工する成形加工工程を実施する。
なお、この樹脂組成物作製工程においては、有機溶剤を使用することなくマトリックス成分と熱伝導性フィラーとの混合を実施して熱伝導性樹脂組成物を作製する。
この樹脂組成物作製工程は、通常、ミキサーなどの一般的な混合攪拌手段を用いて実施することができ、有機溶剤を用いる場合のように防爆構造や排気機構などを有する特別な混合攪拌手段を必ずしも要さない。
このとき、マトリックス成分と熱伝導性フィラー成分との比率によりマトリックス成分を比較的多く含む液状またはペースト状の熱伝導性樹脂組成物を作製したり、熱伝導性フィラー成分を比較的多く含む粉末状の熱伝導性樹脂組成物を作製したりすることができる。
あるいは、加熱手段の備えられたミキサーを用いて、軟化温度以上にポリマー成分を加熱して、この軟化状態のポリマー成分と、添加剤ならびに熱伝導性フィラーを混練した後にこの混練物の温度をポリマー成分の軟化温度以上に維持したまま次段の成形加工工程に供することもできる。
また、この加熱状態の混練物を造粒機などに投じて粒状の熱伝導性樹脂組成物を作製することもでき、さらには、この粒状の熱伝導性樹脂組成物を粉砕して粉末状の熱伝導性樹脂組成物を作製することもできる。
また、シランカップリング剤や分散剤など熱伝導性フィラー表面に担持させることが好適な添加剤を用いる場合には、予めシランカップリング剤や分散剤などと熱伝導性フィラーとを混合攪拌した後に、この熱伝導性フィラーとポリマー成分とを混合攪拌させて熱伝導性樹脂組成物を作製する二段階の樹脂組成物作製工程を採用することも可能である。
この成形加工工程においても、有機溶剤を使用することなく成型加工を実施する。
この成形加工方法については、例えば、金型を用いたプレス成形、押出し成形、射出成形、カレンダー成形など広く一般に用いられている樹脂成形品の成型加工方法を本実施形態の樹脂成形品製造方法においても採用することができる。
なお、要すれば、真空プレスやベント機構付の押出し機を用いることにより、熱伝導性シート内に空気層が形成されるおそれを低減させ得る。
また、前記添加剤として硬化剤を熱伝導性樹脂組成物に含有させておいて、この成形加工工程において樹脂成形品の成型加工方法を実施するとともに、熱硬化性樹脂の熱硬化を同時に実施させることも可能である。
しかも、残留有機溶剤の起因する発泡が熱伝導性シート内に発生することを防止し得ることから、樹脂成形品の熱伝導率の低下を抑制させ得る。
また、熱硬化性樹脂として、主として、エポキシ樹脂を用いる場合を例示したが、本発明においては熱硬化性樹脂をエポキシ樹脂に限定するものではない。
(樹脂組成物作製工程)
ビフェニルタイプのエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名「YX−4000H」)550gと、フェノール樹脂(明和化成社製、商品名「MEH−7851SS」)550gと、硬化剤である4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化社製、商品名「セイカキュアーS」)15g、窒化ホウ素フィラー(昭和電工社製。商品名「UHP−1」)10kg、シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)(信越化学工業社製、商品名「KBM−403」)10gをヘンシェルミキサーで混合攪拌して一次分散体を作製し、該一次分散体を5kg/hの供給スピードで二軸混練機(栗本鐵工社製)に供給して混練を行いエポキシ樹脂が未硬化状態で含有されている熱伝導性樹脂組成物を作製した。
なお、この樹脂組成物作製工程において作製された熱伝導性樹脂組成物に占める窒化ホウ素フィラーの割合は、体積で60%であった。
樹脂組成物作製工程において作製された熱伝導性樹脂組成物を熱プレスによるプレス成形を実施して0.2mm厚さのシート状に加工するとともにエポキシ樹脂の硬化反応を実施させて熱伝導性シートを製造した。
樹脂組成物作製工程における窒化ホウ素フィラーの使用量を増大させて、窒化ホウ素フィラーの割合が、体積で65%となるように熱伝導性樹脂組成物を作製した以外は、実施例1と同様に樹脂組成物作製工程および成形加工工程を実施して熱伝導性シートを製造した。
樹脂組成物作製工程における窒化ホウ素フィラーの使用量を増大させて、窒化ホウ素フィラーの割合が、体積で70%となるように熱伝導性樹脂組成物を作製した以外は、実施例1と同様に樹脂組成物作製工程および成形加工工程を実施して熱伝導性シートを製造した。
(樹脂組成物作製工程)
ビフェニルタイプのエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名「YX−4000H」)550gと、フェノール樹脂(明和化成社製、商品名「MEH−7851SS」)550gと、硬化剤である4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化社製、商品名「セイカキュアーS」)15gを2−ブタノンに溶解させて固形分濃度60質量%の樹脂溶液を作製した。
窒化ホウ素フィラー(昭和電工社製。商品名「UHP−1」)100gを、減圧装置を備えた攪拌釜に投入し、前記樹脂溶液17g(を加え、ゆっくりと攪拌しながら攪拌釜内部を減圧状態にして20分間攪拌を実施した後に常圧に戻し、さらに、残留する2−ブタノンを除去すべく常温・常圧で一昼夜乾燥させてエポキシ樹脂が未硬化状態で含有されている熱伝導性樹脂組成物を作製した。
なお、この粉末状の熱伝導性樹脂組成物に占める窒化ホウ素フィラーの割合は、体積で60%であった。
樹脂組成物作製工程において作製された粉末状の熱伝導性樹脂組成物を熱プレスによるプレス成形を実施して0.2mm厚さのシート状に加工するとともにエポキシ樹脂の硬化反応を実施させて熱伝導性シートを製造した。
樹脂組成物作製工程における窒化ホウ素フィラーの使用量を増大させて、窒化ホウ素フィラーの割合が、体積で65%となるように熱伝導性樹脂組成物を作製した以外は、比較例1と同様に樹脂組成物作製工程および成形加工工程を実施して熱伝導性シートを製造した。
樹脂組成物作製工程における窒化ホウ素フィラーの使用量を増大させて、窒化ホウ素フィラーの割合が、体積で70%となるように熱伝導性樹脂組成物を作製した以外は、比較例1と同様に樹脂組成物作製工程および成形加工工程を実施して熱伝導性シートを製造した。
各実施例、比較例で作製した熱伝導性シートを用いて熱伝導率の測定を実施した。
熱伝導率は、アイフェイズ社製、商品名「ai−phase mobile」により熱拡散率を求め、さらに、示差走査熱量計(DSC)を用いた測定により熱伝導性シートの単位体積あたりの熱容量を測定し、先の熱拡散率に乗じることにより算出した。
また、硬化された熱伝導性シートの脆さを指触にて判定し、取り扱いが良好で成形時における支障が生じないと見られるものを「○」、やや脆い感じがあるものの実用上問題ない普通レベルと感じられるものを「△」、もろく、成形時に慎重な取り扱いを要するものを「×」として判定した。
結果を表1に示す。
また、窒化ホウ素フィラーが65体積%以上含有されている熱伝導性樹脂組成物を用いた実施例2、3においては、同じ窒化ホウ素フィラー含有率である比較例2、3に対して優れた熱伝導性を示す樹脂成形品が製造されていることもこの表1からわかる。
Claims (3)
- 熱伝導性フィラーと熱硬化性樹脂とが含有され、該熱硬化性樹脂が未硬化状態で含有されている熱伝導性樹脂組成物を作製する樹脂組成物作製工程と、前記樹脂組成物作製工程で作製された熱伝導性樹脂組成物を成形加工する成形加工工程とを実施し、しかも、前記熱硬化性樹脂として常温固体状の熱硬化性樹脂を用い、該熱硬化性樹脂を加熱して軟化させた状態で前記熱伝導性フィラーとの混練を実施して前記熱伝導性樹脂組成物を作製する前記樹脂組成物作製工程を実施し、該樹脂組成物作製工程ならびに前記成形加工工程を有機溶剤を用いることなく実施して前記熱伝導性フィラーが分散されてなる樹脂成形品を形成することを特徴とする樹脂成形品製造方法。
- 前記熱伝導性フィラーが窒化ホウ素粒子である請求項1記載の樹脂成形品製造方法。
- 前記樹脂組成物作製工程により作製される熱伝導性樹脂組成物には、窒化ホウ素粒子が65体積%以上含有されている請求項2記載の樹脂成形品製造方法。
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