JP2018165344A - 窒化ホウ素粒子含有シート - Google Patents
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Abstract
Description
一方、特許文献6には、カードハウス構造の窒化ホウ素二次粒子が樹脂を内包する窒化ホウ素粒子が示されているものの、内包する樹脂に関しては詳細検討がなされていない。さらに、本発明者の検討によると、窒化ホウ素二次粒子は内部に空隙を有しているため、樹脂を内包させても内部の空隙を完全に埋めることが困難であることがわかってきた。
本発明は、窒化ホウ素二次粒子が特定の樹脂を内包することで、熱伝導率、耐電圧、接着力及び耐屈曲性に優れた放熱窒化ホウ素二次粒子含有シートを提供することを課題とする。
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
樹脂Aを含む
窒化ホウ素粒子含有シートであって、
樹脂A及び樹脂Bはそれぞれエポキシ樹脂を含み、
樹脂Aが含むエポキシ樹脂Aのエポキシ当量は、樹脂Bが含むエポキシ樹脂Bのエポキシ当量より大きく、
エポキシ樹脂Bのエポキシ当量が270未満である、窒化ホウ素粒子含有シート。
[2]前記エポキシ樹脂Aのエポキシ当量が270以上である、[1]に記載の窒化ホウ素粒子含有シート。
[3]前記窒化ホウ素二次粒子が、カードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子を含有するものである、[1]又は[2]に記載の窒化ホウ素粒子含有シート。
本発明のシートは、窒化ホウ素二次粒子を含むことにより、高い熱伝導率を達成することができる。さらに、該窒化ホウ素二次粒子に内包される樹脂(樹脂B)がエポキシ樹脂を含み、且つ、該エポキシ樹脂のエポキシ当量が270未満であることで、樹脂Bが高度に架橋される。そのため、高電圧を印加した際に樹脂の劣化による短絡を防止し、耐電圧に優れる。
さらに、窒化ホウ素二次粒子含有シートに含まれる樹脂Aがエポキシ樹脂Aを含み、且つエポキシ樹脂Aのエポキシ当量がエポキシ樹脂Bより大きいことで、樹脂Aは特に柔軟な構造を有する。従って、窒化ホウ素二次粒子含有シートの耐屈曲性が向上し、さらに、窒化ホウ素二次粒子と樹脂Aの界面剥離を抑制することで熱伝導性を向上できる傾向になる。
本発明の窒化ホウ素粒子含有シートは樹脂Aを含有し、樹脂Aはシートを構成する樹脂である。樹脂Aはエポキシ樹脂(以下、「エポキシ樹脂A」と表すことがある。)を含み、エポキシ樹脂A以外を含んでいてもよい。
エポキシ樹脂Aのエポキシ当量(以下、「WPEA」と表すことがある。)は後述するエポキシ樹脂Bが含むエポキシ樹脂Bのエポキシ当量(以下、「WPEB」と表すことがある。)より大きい。WPEAがWPEBより大きいことで、シートを構成するエポキシ樹脂Aの架橋点間距離が長くなり、エポキシ樹脂Bと比較して柔軟な構造となる。従って、よりしなやかで、割れにくい耐屈曲性に優れたシートを得ることができる。
なお、エポキシ当量はエポキシ樹脂の分子量をエポキシ基の数で除した値である。
上記の中でも、多官能脂肪族のエポキシ樹脂が好ましく、特にトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルはエポキシ当量が140と小さく好ましい。
硬化性樹脂としては、熱硬化性、光硬化性、電子線硬化性など重合可能なものであれば良いが、耐熱性、吸水性、寸法安定性などの点で、熱硬化性樹脂および/または熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリエステル樹脂等のポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルアミドイミド樹脂、ポリエーテルアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などが挙げられる。また、それらのブロック共重合体、グラフト共重合体等の共重合体も含まれる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に係る窒化ホウ素二次粒子は、樹脂Bが内包されていることを特徴とする(以下、「樹脂内包窒化ホウ素二次粒子」と表すことがある。)。窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなる窒化ホウ素二次粒子は、その内部に一次粒子が凝集した際に生ずる空隙が存在する。本発明の樹脂内包窒化ホウ素二次粒子は、該空隙が特殊な樹脂により埋められていることを特徴とする。
なお、樹脂Bは、上記の窒化ホウ素粒子含有シートが含む樹脂Aと異なる組成であり、含有するエポキシ樹脂のエポキシ当量が異なる。エポキシ樹脂Aはエポキシ樹脂Bと同じエポキシ樹脂を含んでいても良いが、エポキシ樹脂Bのエポキシ当量はエポキシ樹脂Aのエポキシ当量よりも小さい必要がある。
本発明の樹脂内包窒化ホウ素二次粒子は、樹脂Bが二次粒子中に内包されている。二次粒子に内包されるとは、窒化ホウ素二次粒子中の凝集した一次粒子の空隙に樹脂が存在することを指す。
樹脂Bは、エポキシ樹脂Bを含み、該エポキシ樹脂Bのエポキシ当量(WPEB)が270未満である。複数の種類のエポキシ樹脂を含有する場合には、それぞれのエポキシ樹脂のエポキシ当量に質量分率を掛けた合計数が270未満であればよい。すなわち、エポキシ当量300のエポキシ樹脂70部とエポキシ当量100のエポキシ樹脂30部の場合は、300×0.7+100×0.3=240と計算することができる。
WPEBが270未満であることで、エポキシ樹脂Bの架橋密度が高くなり、硬化した際の樹脂Bが適度な硬度を有する。樹脂構造が適度な硬度を有することで、交流の高電位を負荷した場合にも、樹脂内部の分極による振動が抑制されることによる破壊を低減し、絶縁性が向上する傾向にある。
本願発明の効果を損なわない範囲で、窒化ホウ素二次粒子は上記窒化ホウ素一次粒子以外の成分を含有してもよい。窒化ホウ素一次粒子以外の成分としては、バインダー、界面活性剤、溶媒に由来する成分等を挙げることができる。
樹脂内包窒化ホウ素二次粒子は球状であることが好ましい。ここで「球状」とは、アスペクト比(長径と短径の比)が1以上2以下、好ましくは1以上1.5以下であることをさす。本発明の窒化ホウ素二次粒子のアスペクト比は、SEMで撮影された画像から200個以上の粒子を任意に選択し、それぞれの長径と短径の比を求めて平均値を算出することにより決定する。
樹脂内包窒化ホウ素二次粒子の平均粒子径(D50)は、通常5μm以上であり、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは25μm以上であり、より更に好ましくは30μm以上、より更に好ましくは40μm以上であり、より更に45μm以上であり、特に好ましくは50μm以上である。また、通常200μm以下、好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。上記上限値以下であることで、成形体とした際に表面の平滑性が向上し、さらに樹脂内包窒化ホウ素二次粒子が適当な間隙となるため熱伝導性が向上する傾向にある。また、上記下限値以上であることで、成形体とした際に樹脂内包窒化ホウ素二次粒子間の接触抵抗が大きくなり過ぎず、窒化ホウ素二次粒子自体の熱伝導性が高くなる傾向にある。
樹脂内包窒化ホウ素二次粒子の破壊強度は、通常2.5MPa以上、好ましくは3.0MPa以上、より好ましくは3.5MPa以上、更に好ましくは4.0MPa以上であり、通常20MPa以下、好ましくは15MPa以下、更に好ましくは10MPa以下である。上記上限値以下であることで、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子の強度が過剰にならず、成形体とした際に表面平滑性が向上し、また、熱伝導性が向上する傾向にある、また、上記下限値以上であることで、シートを作製する際の圧力での粒子変形が抑制され、熱伝導性が向上する傾向にある。
式:Cs=2.48P/πd2
Cs:破壊強度(MPa)
P:破壊試験力(N)
d:粒子径(mm)
樹脂内包窒化ホウ素二次粒子の全細孔容積は特に限定されないが、好ましくは2.2cm3/g以下である。また、好ましくは0.01cm3/g以上、より好ましくは0.02cm3/g以上であり、好ましくは2cm3/g以下、より好ましくは1.5cm3/g以下である。
全細孔容積は、窒素吸着法および水銀圧入法で測定することができる。上記上限値以下であることで、シート内の窒化ホウ素二次粒子内が密になっているために、熱伝導を阻害する境界面を少なくすることが可能となり、より熱伝導性の高い窒化ホウ素二次粒子となる傾向にある。また、上記下限値以上であることで、細孔に樹脂が過剰に取り込まれず、見かけの粘度の上昇を抑制できる場合があり、シート組成物の成形加工或いは塗布液の塗工性が向上する傾向にある。
樹脂内包窒化ホウ素二次粒子の比表面積は好ましくは1m2/g以上、より好ましくは3m2/g以上、さらに好ましくは5m2/g以上である。また、好ましくは50m2/g以下、より好ましくは40m2/g以下、さらに好ましくは8m2/g以下、特に好ましくは7.25m2/g以下である。樹脂内包窒化ホウ素二次粒子の比表面積が、この範囲であると、樹脂と複合化した際に、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子同士の接触抵抗が低減される傾向にあり、後述するシート組成物の粘度上昇を抑制できるため好ましい。比表面積は、BET1点法(吸着ガス:窒素)で測定することができる。
樹脂内包窒化ホウ素二次粒子のバルク密度は、通常0.3g/cm3以上であることが好ましく、より好ましくは0.35g/cm3以上、更に好ましくは0.4g/cm3以上である。バルク密度が上記下限値以上であることで、見かけの体積が大きくなり過ぎず、シート中に樹脂成分に対して、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子の体積を抑制することができる。そのため、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子を含むシート組成物等を製造した際の、該シート組成物の粘度上昇を抑制できる傾向にある。
樹脂内包窒化ホウ素二次粒子のバルク密度の上限については特に制限はないが、通常0.95g/cm3以下、好ましくは0.9g/cm3以下、より好ましくは0.85g/cm3以下である。バルク密度が上記上限値以下であることで、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子を含む樹脂組成物中で樹脂内包窒化ホウ素二次粒子の分散が均一となり、沈降を抑制できる傾向にある。
なお、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子のバルク密度は、粉体のバルク密度を測定する通常の装置や方法を用いて求めることができる。
本発明の樹脂内包窒化ホウ素二次粒子の製造方法は特に限定されず、また、樹脂Bを内包させる前の窒化ホウ素二次粒子の製造方法は特に限定されない。
(窒化ホウ素二次粒子の製造方法)
樹脂Bを内包させる前の窒化ホウ素二次粒子の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、上記特許文献2〜6に示す方法等が挙げられる。具体的例として、以下の方法を挙げる。
窒化ホウ素二次粒子は、好ましくは、粘度が200〜5000mPa・である原料窒化ホウ素粉末を含むスラリー(以下「窒化ホウ素スラリー」と称す場合がある。)を用いて粒子を造粒し、造粒粒子を加熱処理することによって、該造粒粒子の大きさを保持したまま窒化ホウ素一次粒子の結晶子を成長させて、製造することができる。窒化ホウ素スラリーの粘度は、好ましくは300mPa・s以上、より好ましくは500mPa・s以上、更に好ましくは700mPa・s以上、特に好ましくは1000mPa・s以上であり、好ましくは4000mPa・s以下、より好ましくは3000mPa・s以下である。
一方、窒化ホウ素スラリーの粘度を5000mPa・s以下とすることにより、造粒を容易にすることができる。
なお、本発明における窒化ホウ素スラリーの粘度とは、FUNGILAB社の回転粘度計「VISCO BASIC Plus R」を用い、ブレード回転数100rpmにて測定した粘度のことである。
なお、上記ピーク強度比および結晶子径は、窒化ホウ素スラリーから製造する造粒粒子を加熱処理する際の焼成温度、原料窒化ホウ素粉末中に存在する酸素濃度によっても制御できる。具体的には、後述の通り、窒化ホウ素スラリーから製造する造粒粒子を加熱処理する際の焼成温度範囲を1800℃以上2300℃以下とすることでピーク強度比を3以上とすることができ、原料窒化ホウ素粉末中に存在する酸素濃度が1.0質量%以上の原料を用いることで、結晶子径を所望の範囲に制御できる。即ち、適切な焼成温度範囲と適切な酸素濃度の原料窒化ホウ素粉末を用いることで上記ピーク強度比と上記平均結晶子径を同時に制御できる。
窒化ホウ素二次粒子に樹脂Bを内包させる方法も特に限定されない。例えば、エポキシ樹脂Bのエポキシ基量100に対して水酸基量が50であるフェノール樹脂とイミダゾール系硬化促進剤を混合し、窒化ホウ素二次粒子と混ぜて真空引きを行う方法が挙げられる。これにより窒化ホウ素二次粒子の内部に樹脂が含浸され、内包した状態となる。その後、窒化ホウ素二次粒子の外部に存在する樹脂Aなどのシートの構成成分、例えば、樹脂Aとエポキシ樹脂Aのエポキシ基量の50%に相当する水酸基を持ったフェノールとイミダゾール系硬化促進剤等を混ぜることができる。樹脂Aの粘度が高い場合には適宜溶媒を用いても良い。
(窒化ホウ素一次粒子の長軸)
樹脂内包窒化ホウ素二次粒子を構成する窒化ホウ素一次粒子の長軸は通常0.5μm以上、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは0.8μm以上、更に好ましくは1.0μm以上、特に好ましくは1.1μm以上である。また通常10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。長軸方向に高い熱伝導率を有するため、一次粒子が上記下限値以上であることで、二次粒子全体が高い熱伝導率を持つことができる傾向にある。また、上記上限値以下であることで、一次粒子同士の結合点が多くなり、高圧で圧潰し難くなる傾向にある。
なお、上記長軸とはSEM測定により得られた窒化ホウ素二次粒子1粒を拡大し、1粒の窒化ホウ素二次粒子を構成している窒化ホウ素一次粒子について、画像上で観察できる窒化ホウ素一次粒子の最大長を平均した値である。
窒化ホウ素一次粒子の結晶構造は、特に限定されないが、合成の容易さと熱伝導性の点で六方晶系のh−窒化ホウ素を主成分として含むものが好ましい。また、バインダーとして窒化ホウ素以外の無機成分が含まれる場合、熱処理の過程でそれらが結晶化するが、窒化ホウ素が主成分として含まれていればよい。なお、上記窒化ホウ素一次粒子の結晶構造は、粉末X線回折測定により確認することができる。
本発明の樹脂内包窒化ホウ素二次粒子を粉末X線回折測定して得られる窒化ホウ素一次粒子の(002)面ピークから求めた窒化ホウ素一次粒子の平均結晶子径は、特に制限はされないが、平均結晶子径は大きいことが熱伝導率の点から好ましい。例えば、通常300Å以上、好ましくは320Å以上、より好ましくは375Å以上であり、更に好ましくは380Å以上、より更に好ましくは390Å以上、特に好ましくは400Å以上であり、通常5000Å以下、好ましくは2000Å以下、更に好ましくは1000Å以下である。上記平均結晶子径が上記上限値以下であることで、窒化ホウ素一次粒子の過剰成長を抑制し、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子内の間隙が広くなりすぎず、成形体とする際の成形性が向上する傾向にある。また、間隙が広くなり過ぎないことにより、熱伝導性を向上できる傾向にある。一方、上記平均結晶子径が上記下限以上であることで、窒化ホウ素一次粒子内の粒界の増加を抑制し、結晶粒界でのフォノン散乱の発生を防止し、熱伝導を向上できる傾向にある。
また、上記平均結晶子径とは、粉末X線回折測定によって得られる窒化ホウ素一次粒子の(002)面ピークから、後述の実施例において記載の通り、Scherrer式にて求められる結晶子径である。
本発明に係る窒化ホウ素一次粒子において、(100)面と(004)面のピーク強度比((100)/(004))が3以上であることが好ましい。前記ピーク強度比は、シート等の成形体に成形する前の粉末の樹脂内包窒化ホウ素二次粒子において0.2mmの深さのガラス試料板に表面が平滑になるように充填し、粉末X線回折測定して得られるものである
また、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子の(100)面と(004)面のピーク強度比は好ましくは3以上、より好ましくは3.2以上、さらに好ましくは3.4以上、特に好ましくは3.5以上である。また、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは7以下である。
窒化ホウ素一次粒子及び樹脂内包窒化ホウ素二次粒子のピーク強度が上記上限値以下であることで、シートとした際に樹脂内包窒化ホウ素二次粒子が崩壊し難い傾向にあり、上記下限値以上であることで、放熱シートの厚み方向の熱伝導性が向上する傾向にある。
なお、ピーク強度比は粉末X線回折測定により測定された該当するピーク強度の強度比から計算することができる。
本発明に係る窒化ホウ素一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))(以下、ピーク面積強度比1と表すことがある。)は0.25以上であることが好ましい。前記ピーク面積強度比1は、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子を10mmφの粉末錠剤成形機で0.85ton/cm2の成形圧力で成形して得られたペレット状の試料を粉末X線回折測定することにより得られる、
ピーク面積強度比1は、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上、よりさらに好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.81以上、特に好ましくは0.85以上、とりわけ好ましくは0.91以上である。また、上限は特に制限はないが、好ましくは10.0以下、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下であり、よりさらに好ましくは2.0以下であり、特に好ましくは1.6以下である。
例えば、樹脂製の高放熱基板は、樹脂製基板内部の空隙低減や分散させた窒化ホウ素二次粒子同士の完全な接触のために、0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2以下のような比較的高い圧力で成形されると考えられる。このため、ピーク面強度比2で用いる上記圧力範囲でも窒化ホウ素一次粒子の配向変化が少ない窒化ホウ素二次粒子が熱伝導性向上には必要である。
なお、0.85ton/cm2以上2.54ton/cm2の範囲におけるピーク面積強度比は、上記圧力範囲において一点でも所定の数値を満たせば問題なく、本発明の圧力範囲全てにおいて達成する必要はない。また、好ましくは、0.85ton/cm2、1.69ton/cm2、2.54ton/cm2の3点にて所定の数値を満たすことである。
[樹脂内包窒化ホウ素二次粒子含有樹脂組成物]
本発明の窒化ホウ素粒子含有シートを製造する際に樹脂内包窒化ホウ素二次粒子と樹脂Aとを含有した樹脂内包窒化ホウ素二次粒子含有樹脂組成物(以下、「シート組成物」と表すことがある。)を用いることで、より高い熱伝導率と耐電圧性を併せ持つ窒化ホウ素粒子含有シートを製造することが可能となる。
シート組成物中の樹脂内包窒化ホウ素二次粒子の含有割合は、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子と樹脂Aの合計を100質量%として、通常5質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下である。上記上限値より小さいことで、シート組成物の粘度が抑制され、成形加工性が得られる傾向にある。また、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子が密に充填され、窒化ホウ素粒子含有シートの熱伝導性が向上する傾向にある、また、上記下限値以上であることで、成形加工性は及び熱伝導性の両方が向上する傾向にある。
本発明に係るシート組成物及び窒化ホウ素粒子含有シートは硬化剤を含んでいてもよく、含まれている硬化剤は特に限定されない。硬化剤は、フェノール樹脂、芳香族骨格又は脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物等であることが好ましい。この好ましい硬化剤の使用により、耐熱性、耐湿性及び電気物性のバランスに優れた樹脂内包窒化ホウ素二次粒子含有シートの硬化物を得ることができる。硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化速度や硬化物の物性などを調整するために、上記硬化剤と硬化促進剤とを併用してもよい。
特にフェノール樹脂を硬化剤として用いる場合には、フェノールに含まれる水酸基の数とエポキシ基の数を調整することが好ましい。エポキシ基の数100に対してフェノールの水酸基の数は20以上、より好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上、100以下、より好ましくは80以下、さらに好ましくは70以下が良い。
本発明のシート組成物及び窒化ホウ素粒子含有シートは、樹脂含有窒化ホウ素二次粒子の他にフィラーを含んでも良い。樹脂含有窒化ホウ素二次粒子以外のフィラーとしては、窒化アルミニウム、窒化ホウ素の一次粒子、アルミナ、結晶性シリカ、合成マグネサイト、炭化ケイ素、酸化亜鉛及び酸化マグネシウム、ナイロンビーズ、アクリルビーズ、エポキシビーズ、スチレンビーズ、ウレタンビーズなどの合成樹脂粒子等が挙げられる。フィラーの形状は球状でもよく、鱗片状でもよく、破砕品などの不定形でもよい。樹脂含有窒化ホウ素二次粒子以外のフィラーは、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
平均粒子径が上記下限値以上であることで、シート組成物の粘度が抑制され、高い密度でフィラーを充填することができる傾向にある。また、平均粒子径が上記上限値以下であることで、窒化ホウ素粒子含有シートの硬化物の絶縁破壊特性が向上する傾向にある。
なお、上記「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径である。
本発明のシート組成物及び窒化ホウ素粒子含有シートは、有機溶剤を含んでも良い。含まれる有機溶剤は、放熱窒化ホウ素粒子含有シート100質量部に対して5質量部以下が好ましい。より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下が好ましい。有機溶剤が5質量部を超える場合には硬化時の溶剤揮発によるボイド形成が生じることがある。
上記有機溶剤の沸点は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
本発明に係るシート組成物及び窒化ホウ素粒子含有シートは、分散剤を含んでいてもよい。分散剤の使用により、窒化ホウ素粒子含有シートの硬化物の熱伝導性及び絶縁破壊特性をより一層高めることができる。
シート組成物の調製方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。なお、その際、シート組成物の均一性の向上、脱泡等を目的として、ペイントシェーカーやビーズミル、プラネタリミキサ、攪拌型分散機、自公転攪拌混合機、三本ロール、ニーダー、単軸又は二軸混練機等の一般的な混練装置などを用いて混合・撹拌することが好ましい。
以下、シート組成物を用いて本発明の窒化ホウ素粒子含有シートを製造する方法を具体的に説明する。
まず基材の表面に、シート組成物で塗膜を形成する。
即ち、シート組成物を用いて、ディップ法、スピンコート法、スプレーコート法、ブレード法、その他の任意の方法で塗膜を形成する。スラリーの塗布には、スピンコーター、スリットコーター、ダイコーター、ブレードコーターなどの塗布装置を用いることにより、基材上に所定の膜厚の塗膜を均一に形成することが可能であり、好ましい。なお、基材としては、後述の銅箔やPETフィルムが一般的に用いられるが、何ら限定されるものではない。
次に、基板に塗布されたシート組成物を乾燥させる。乾燥温度は、通常10℃以上、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは25℃であり、通常140℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下、よりさらに好ましくは70℃以下である。上記下限値以上であることで、塗膜中の有機溶媒を十分に除去でき、有機溶媒が次のシート化工程における高温加圧処理で蒸発し、残留溶媒の蒸発跡がボイドとなることを抑制することができる傾向にある。上記上限値以下であることで、マトリックス樹脂の硬化を抑制でき、良好な乾燥膜を得ることができる傾向にある。
乾燥工程の後には、加圧工程を行ってもよい。シート化工程は、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子を含むフィラー同士を接合させヒートパスを形成する目的、シート内のボイドや空隙をなくす目的、基材との密着をさせる目的等から加圧することが望ましい。
加圧工程は、基材上の乾燥膜に通常10kgf/cm2〜2000Kgf/cm2、好ましくは20Kgf/cm2〜1000kgf/cm2、より好ましくは50Kgf/cm2〜800kgf/cm2の加重をかけて実施することが望ましい。この加圧時の加重を上記上限以下とすることにより、樹脂含有窒化ホウ素二次粒子が破壊することなく、シート中に空隙などがない高い熱伝導性を有するシートを得ることが出来る傾向にある。また、加重を上記下限以上とすることにより、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子を含むフィラー間の接触が良好となり、熱伝導パスを形成しやすくなるため、高い熱伝導性を有するシートを得ることが出来る傾向にある。
加圧工程では、銅基板に塗布、乾燥した組成物膜を通常25〜300℃、好ましくは40〜250℃、より好ましくは50〜200℃、特に好ましくは60〜180℃で加熱することが望ましい。この温度範囲でシート化工程を行うことにより、塗膜中の樹脂の溶融粘度を低下させることができ、シート内のボイドや空隙をなくすことができる。
加圧工程は、通常30秒〜4時間、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは3分〜1時間、特に好ましくは5分〜45分である。この範囲で行うことで、製造性が向上し、さらにシート内の空隙やボイドの除去が十分に行える傾向にある。
また、プレス後の窒化ホウ素粒子含有シートの膜厚は用途に応じて適宜調整することができる。通常40μm以上、好ましくは70μm以上、より好ましくは100μm以上であり、通常、500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。上記膜厚であることで、耐電圧が向上し、熱抵抗を抑制できる傾向にある。
耐電圧性能は、特に制限はないが、好ましくは3kV/mm以上、より好ましくは3.3kV/mm以上、さらに好ましくは5kV/mm以上であり、よりさらに好ましくは8kV/mm以上、よりさらに好ましくは10kV/mm以上、よりさらに好ましくは15kV/mm以上、よりさらに好ましくは20kV/mm以上であり、特に好ましくは30kV/mm以上である。
また、窒化ホウ素粒子含有シートの接着強度(N/cm)は、特に制限はないが通常、0.5N/cm以上、好ましくは1N/cm以上、更に好ましくは2N/cm、特に好ましくは3N/cm以上、とりわけ好ましくは5N/cm以上である。
以下に、実施例における測定条件を記載する。
株式会社メンターグラフィックス製の熱抵抗測定装置「T3ster」を用いて、同一組成・同一条件で作製した厚みの異なる窒化ホウ素二次粒子含有シート成形体の熱抵抗値を測定し、熱抵抗値を厚みに対してプロットしたグラフの傾きから、熱伝導率を求めた。
JISC2110:1994準拠 株式会社計測技術研究所製 AC Withstand Voltage Tester 7473を用いて、成形シートをフロリナートFC-40中で直径25mmの円柱電極を用いて荷重500gにて0Vから20kVまで0.5kV/sの昇圧速度で印加し、電流閾値10mAを超える電圧を測定して、絶縁破壊電圧をも求めた。データ数は1サンプルから点測定し平均を取った。
株式会社エー・アンド・製の引張試験装置を用いて、放熱窒化ホウ素二次粒子含有シートを用いて銅箔を貼り合わせたサンプルの接着力を90°ピール試験によって評価した。評価時の引張速度は50mm/minで評価を行った。
<窒化ホウ素二次粒子の製造>
カードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子は下記の方法で作製した。
原料として、粉末X線回折測定により得られる(002)面ピークの半値幅が2θ=0.67°、酸素濃度が7.5質量%である六方晶窒化ホウ素(以下原料h−BN粉末と記載)を用いた。
原料h−BN粉末:10000g
バインダー(多木化学(株)製「タキセラムM160L」、固形分濃度21質量%):11496g
界面活性剤(花王(株)製界面活性剤「アンモニウムラウリルサルフェート」:固形分濃度14質量%):250g
原料h−BN粉末を樹脂製のボトルに所定量計量し、次いでバインダーを所定量添加した。さらに、界面活性剤を所定量添加した後、ジルコニア性のセラミックボールを添加して、ポットミル回転台で1時間撹拌した。スラリーの粘度は、810mPa・sであった。
BNスラリーからの造粒は、大河原化工機株式会社製FOC−20を用いて、ディスク回転数20000〜23000rpm、乾燥温度80℃で実施し、球状のBN造粒粒子を得た。
上記BN造粒粒子を、室温で真空引きをした後、窒素ガスを導入して復圧し、そのまま窒素ガスを導入しながら2000℃まで83℃/時で昇温し、2000℃到達後、そのまま窒素ガスを導入しながら5時間保持した。その後、室温まで冷却し、カードハウス構造を有する球状の窒化ホウ素二次粒子を得た。
更に、上記加熱処理後の窒化ホウ素二次粒子を、乳鉢および乳棒を用いて軽粉砕した後、目開き90μmの篩を用いて分級した。分級後、窒化ホウ素二次粒子を構成するBN一次粒子の平均結晶子径、該BN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク強度比((100)/(004))、窒化ホウ素二次粒子のD50を測定した。測定結果は表1に示す。
樹脂Bとして、エポキシ樹脂1(2官能の脂肪族エポキシ樹脂、エポキシ当量205g/eq)を1.92gに、フェノール樹脂1(水酸基当量143g/eq)を0.647gを用いた。樹脂Bにイミダゾール系硬化促進剤1(固形分濃度20質量%のMEK溶液)0.135gを混合し、カードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子2.5gを添加し、泡とり錬太郎(シンキー製)で400rpmで30秒、2000rpmで3分間撹拌した。さらに、窒化ホウ素二次粒子を2.74g添加し(窒化ホウ素二次粒子の合計で5.24g)、泡とり錬太郎で同様に撹拌した。
その後、真空オーブンにて30℃で15分間真空下にさらして、窒化ホウ素二次粒子内に樹脂Bを内包させ、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子1を得た。樹脂内包窒化ホウ素二次粒子1が内包するエポキシ樹脂Bのエポキシ当量は205g/eqであった。
樹脂Aとして、エポキシ樹脂1を1.04g、フェノール樹脂1を0.522g、ビスフェノールF系フェノキシ樹脂1(固形分濃度45質量%のMEK溶液、エポキシ当量9840g/eq)を3.49g、エポキシ樹脂2(3官能の芳香族エポキシ樹脂、エポキシ当量97g/eq)を0.207g用意した。
樹脂Aに、アルミナ粒子1(平均粒径7μm 比表面積0.9m2/g 株式会社アドマッテクス製)26.3g、ナイロン粒子1(5μmΦ 東レ株式会社製)0.014g、イミダゾール系硬化促進剤1を0.146g、溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)5.25gを混合して、7.83gの樹脂内包窒化ホウ素二次粒子1に添加した。その後、上記と同一条件で泡とり錬太郎による撹拌混合を実施した。エポキシ樹脂Aのエポキシ当量は380g/eqであった。
上記のシート組成物をPETフィルム上に、ギャップ間300μmのアプリケータを用いてキャスティングした。60℃のホットプレート上で1時間乾燥した後、60℃の真空オーブンでさらに1時間加熱して溶剤を除去し、窒化ホウ素粒子含有シート1を得た。
窒化ホウ素粒子含有シート1の上部にPETフィルムを置き、ハンドプレス機を用いて100kgf/cm2、70℃で10分間プレスを行った。プレス後の窒化ホウ素粒子含有シート1の厚みは135μmであった。円柱電極を用いてフロリナート中で耐電圧を測定したところ、3.31kV/mmであり、良好な値を示した。また、プレス後の窒化ホウ素粒子含有シート1は非常に柔軟であり、Φ5mmの円筒に巻きつけても割れることがなかった。
ビスフェノールF系フェノキシ樹脂1を5.79g、エポキシ樹脂1を1.70g、エポキシ樹脂2を0.342g、フェノール樹脂1を0.868g、イミダゾール系硬化促進剤1を0.28g、MEK4gを混合し、よく撹拌した。さらに、樹脂内包窒化ホウ素二次粒子1を5.22g、アルミナ粒子1を26.51g、ナイロン粒子1を0.0149gを加えて、実施例1と同様の条件で泡とり錬太郎を用いて撹拌混合を行った。
本比較例1では、エポキシ樹脂Aとエポキシ樹脂Bは同じ組成であり、WPEA及びWPEAは382g/eqであった。実施例1と同様の方法で窒化ホウ素粒子含有シート2を製造した。得られた窒化ホウ素粒子含有シート2の厚みは148μmであり、耐電圧は2.9kV/mmであった
Claims (3)
- 樹脂Bを内包する窒化ホウ素二次粒子及び
樹脂Aを含む
窒化ホウ素粒子含有シートであって、
樹脂A及び樹脂Bはそれぞれエポキシ樹脂を含み、
樹脂Aが含むエポキシ樹脂Aのエポキシ当量は、樹脂Bが含むエポキシ樹脂Bのエポキシ当量より大きく、
エポキシ樹脂Bのエポキシ当量が270未満である、
窒化ホウ素粒子含有シート。 - 前記エポキシ樹脂Aのエポキシ当量が270以上である、請求項1に記載の窒化ホウ素粒子含有シート。
- 前記窒化ホウ素二次粒子が、カードハウス構造を有する窒化ホウ素二次粒子を含有するものである、請求項1又は2に記載の窒化ホウ素粒子含有シート。
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