JP5001598B2 - 固体レーザ発振装置および固体レーザ増幅装置 - Google Patents

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本発明は固体レーザ発振装置および固体レーザ増幅装置に関し、特に高効率動作が可能な固体レーザ発振装置および固体レーザ増幅装置に関するものである。
従来より、半導体レーザ(LD)を励起光源とし、希土類イオン(あるいは遷移金属イオン)をホストに添加した固体レーザ媒質を利用した固体レーザ装置が活発に開発されてきている。なお、ここで固体レーザ装置とは、固体レーザ発振装置および固体レーザ増幅装置を含む総称である。その多くがネオジム(Nd)を活性イオンとし、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Y3Al5O12)やイットリウム・バナデート(YVO4)などのホスト結晶(あるいはガラス)にこれらのイオンを添加した固体レーザ結晶(固体レーザ媒質)を用いている。この場合、励起光の吸収係数αが比較的高く(5〜30cm-1)、数mmの結晶長(媒質長)dでLDからの励起光の光パワーをほぼ吸収することができる。ここで固体レーザ媒質におけるシングルパスでの吸収率ηabsは次式(1)で表される。
ηabs=1−exp(−αd)・・・(1)
例えば、Nd:YVO4(1at%添加濃度)では、励起光吸収係数α=30cm-1(励起波長808.9nm)が得られ、結晶長1mmにて、シングルパス吸収率ηabsは95%にも達する。つまり、励起パワーを結晶長1mmで効率良く吸収することができる。Nd:YAG(濃度1at%)では、励起光吸収係数α=5cm-1(励起波長808nm)であるため、結晶長2mm程度で、シングルパス吸収率ηabs=63%が得られる。一般的には、励起光の吸収率を高めることが、高い固体レーザ装置の総合効率(電気入力から光出力への効率)向上のために必須である。また短い結晶長で励起光を吸収できるため、小型LD励起固体レーザ装置が実現可能である。
それに対し、吸収係数の低い固体レーザ媒質では、数mm程度の結晶長ではシングルパス吸収率が1〜20%程度と著しく小さくなってしまう場合がある。たとえば、Nd:YAGでのホットバンド励起(励起波長885nm)を行う場合、吸収係数α=1.6cm-1であり、1mm長の結晶では15%程度の吸収になる。さらにTi:Sapphireレーザ結晶(チタンイオン添加サファイア固体レーザ媒質)においては、吸収係数α=0.6cm-1(励起波長532nm)であり、結晶長2mmで吸収率ηabs =11%、結晶長3mmでも吸収率ηabs =16%と非常に低い。なお、吸収係数αが小さい媒質でも、結晶長dを大きくして、吸収係数と結晶長の積αdが2.3以上となるようにすれば、シングルパス吸収率ηabs >90%と高くすることはできるが、結晶が大型になることからコストが増大するという欠点がある。
また吸収係数が比較的高い場合でも、準3準位レーザ発振をさせる場合、結晶長dを伸長することは、レーザ発振光に対する自己吸収、ひいては発振閾値の増大に繋がるため、できる限り避けたい。例えば、Nd:YAGの946nm発振(4F3/24I9/2)や、Yb:YAG(2F5/22F7/2)は準3準位系であり、励起光の高い吸収と、低い発振閾値を両立させることは難しい。Nd:YAG以外にも、準3準位系レーザ発振を呈するレーザ結晶は多くあり、Pr:YLF(LiYF4)での青色発振(480nm、3P03H4)、Pr:YAGでの青色発振(488nm、3P03H4)、Tm:YLFでの青色発振(482nm、1G43H6)、Er:YLFでの緑色発振(551nm、4S3/24I15/2)などの可視発光は準3準位系レーザ発振に相当する。
従来から、励起光の吸収率を上げる幾つかの工夫が提案されている。例えば、励起光を結晶端面または外部に設けられたミラーなどにより折り返して、ダブルパスさせる手法が最も簡便でよく用いられる方法である(非特許文献1)。この場合、吸収長が結晶長の2倍になり、吸収率も向上する。しかし吸収係数がごく低い場合では、2倍程度の吸収長の伸長では効果が薄い場合が多い。例えば、先のNd:YAGホットバンド励起では、媒質長Lを1mmから2mmへと拡大したとしても、ηabs=27%と約2倍にはなるものの、非常に低いことには変わりない。これ以上のマルチパス化は、簡便な光学系では難しい。
一方、軸をずらしながら像転送(イメージリレー)を用いて、励起光をマルチパスさせる方法が実現されている。実際、薄ディスク型のYb:YAG結晶(厚み0.2〜0.5mm)を16回通過させる光学系が提案されている(非特許文献2参照)。しかしこの場合、非常に複雑な光学系を、精密な位置合わせにより配置しなければならない。
以上の例は励起光をインコヒーレントな光として扱う場合である。一方、励起レーザのコヒーレンス(可干渉性)を利用する例としては、狭線幅の単一周波数(単一縦モード)発振している半導体レーザを用いて、外部共振器による共振効果を利用するものが提案され、実証されている。この場合、励起レーザの発振周波数は温度あるいは電流制御により外部共振器の縦モードに同調され、外部共振器における励起レーザに対する共振状態を維持している。レーザ結晶はこの外部共振器内に配置され、励起光は外部共振器内を多重回往復する。このことで、レーザ結晶のシングルパス吸収率が低くても、実効的に、吸収長が10から100倍程度に伸長したのと同じ効果が得られ、励起光が効率よく吸収される(非特許文献3、4および特許文献1)。
非特許文献3に記載の従来例では、図13に示すように、単一周波数発振半導体レーザ(波長810nm)を励起光源101とし、Nd:YAG結晶102を励起する。Nd:YAG結晶102のリア側(LD側)102aと出力鏡103で、レーザ発振光108に対する共振器を組むと同時に、励起光107に対する外部共振器としても動作させている。Nd:YAGリア側102aは、レーザ発振光108に対して高反射、810nm励起光107に対して部分反射(反射率85%)とし、出力鏡103は、レーザ発振光108に対しては部分反射(99.5%)し、励起光107に対しては高反射としている。共振器長は10mmであった。Nd:YAG結晶102は0.3mm厚み、Nd濃度1at%である。励起パワー10mWに対し、出力光109の出力パワーとして1mW(波長946nm)が得られている。シングルパス吸収は記載が無いが15%と推定できる。この例では、946nm発振は準3準位系であり、シングルパス吸収をより高く取ると、レーザ下準位による自己吸収損失が増え、発振効率低下を来たすため、敢えて非常に薄いレーザ結晶を採用している。
非特許文献4および特許文献5では、同じくNd:YAG結晶を用いて946nm発振を実現している。図14に示すように、0.33mm厚みのレーザ結晶105の端面を共振器ミラーとし、励起光107とレーザ発振光108両方に対する共振器を構成している。また、図示していないが、波長同調回路を設けることで安定した動作を実現している。この例では、励起パワー60mWに対し、出力30mWの946nm発振109を得ている。シングルパス吸収は18%であった。
図13および図14に示した従来例では、単一周波数(単一縦モード)連続発振LDを励起光源として使用している。しかし、単一周波数発振の励起レーザの高出力化は難しい。単一周波数発振させるためには、共振器内にエタロン、回折格子や分布帰還(DFB)構造を設け、所望のレーザ発振周波数のみ発振させ、他の周波数に対し損失を被らせる必要があり、励起レーザ光出力の低下を招くことが多い。これは必然的に、この励起レーザを用いた固体レーザの出力低下を招くことになる。一般的に単一周波数発振半導体レーザの出力は10mW〜100mW程度に限定されている。
米国特許第5048047号明細書 T.Taira et al., IEEE J. Selected Topics on Quantum Electronics vol.3 No.1 (1997) pp.100-104. C. Stewen et al., IEEE J. Selected Topics on Quantum Electronics vol.6 No.4 (2000) pp.650-657. J. P. Cuthbertson et al.,Optics Letters vol.16 no.6 (1991) pp.396-398. W. J. Kozlovsky et al.,IEEE J. Quantum Electron. vol.28 no.4 (1992) pp.1139-1141. T. Skettrup,Journal of Optics A: Pure and Applied Optics vol.2 (2000) pp. 546-549.
以上のように、従来、シングルパス吸収率の低い固体レーザ媒質に対して、実効吸収率を高めるためには、(1)多重パス励起光学系を用いる、(2)狭線幅の単一周波数励起レーザを用いて外部共振器による吸収増強を行う、という2つの手法が提案あるいは実現されている。
しかしながら、(1)の手法では励起光学系が著しく複雑あるいは大型になるという問題があり、(2)の手法では、励起光の狭帯域化により励起パワーが低減し、レーザ出力を高く取れないという問題があり、小型で高出力な固体レーザ装置は実現されていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、シングルパス吸収率の低い固体レーザ媒質に対し、高い実効吸収率を実現しつつ、小型・高出力な固体レーザ発振装置および固体レーザ増幅装置を提供することを目的とする。
さて、レーザ光のコヒーレンス長Lcは、ローレンツ型のスペクトル分布を考慮すると、スペクトル線幅Δνの関数として次式(2)で与えられる。
ただし、c:光速、Δν:光源のスペクトル線幅(周波数幅)である。(非特許文献5の(2)式、あるいはA.Yariv著、「光エレクトロニクスの基礎」、第10章、原書第三版、丸善 参照のこと)
一般的に、単一周波数連続発振LDのスペクトル線幅は、100kHzから10MHz程度であるため、その場合のコヒーレンス長は、Lc=9.5m(10MHz)〜950m(100kHz)と非常に長く取れる。このため、報告例のレーザ装置(外部共振器の共振器長<1cm)では、励起光は実効的に外部共振器内を完全にコヒーレント光として往復することになり、先に述べた励起光が強めあう効果が期待できる。
一方、本発明者は、上記(2)式から、励起光の高い吸収率を実現するために必要な励起光のスペクトル線幅は、外部共振器の共振器長および所望の実効吸収率の関数であるため、励起レーザは狭線幅の単一周波数発振していなくとも良いことを見出した。また励起レーザとして、単一縦モードではない、例えばマルチ縦モードのファブリペロー型LDは、出力パワーとして数100mWから1W程度まで発振可能である。
本発明は、上記発明者による知見に基づいてなされたものであり、本発明の固体レーザ発振装置は、希土類イオンあるいは遷移金属イオンを添加した固体レーザ媒質と、該固体レーザ媒質が内部に配置され、該固体レーザ媒質からの出力光をレーザ発振させるための第1の共振器と、前記固体レーザ媒質を励起する励起光を出力する励起手段とを備えた固体レーザ発振装置において、
前記励起光を、前記固体レーザ媒質を通過させるように共振させる第2の共振器をさらに備え、
前記励起手段が、前記励起光として2つ以上の縦モードを有するとともに前記第2の共振器の共振器長以上のコヒーレンス長を有するレーザ光を出力し、前記第2の共振器内に入力するものであることを特徴とするものである。
上記構成の本発明の固体レーザ発振装置では、狭線幅の単一周波数発振の励起光を用いる従来技術に比べて励起光のコヒーレンス長を短くすることができ、コヒーレンス長は9.5m(10MHz)以下とすることができる。
本発明の固体レーザ発振装置は、前記固体レーザ媒質として、その励起光に対する吸収率がシングルパスで40%以下、さらには20%以下、さらには10%以下であるものを用いる場合に好適である。
本発明の固体レーザ発振装置は、前記第2の共振器を構成する共振ミラーのうち、前記励起光を該共振器内に導入する入力ミラーの励起光強度反射率R1が、
ただし、R:前記第2の共振器を構成する入力ミラー以外のミラーの励起光強度反射率と共振器周回での伝搬効率の積、γ=αdcosθ/2:前記固体レーザ媒質での周回あたりの励起光電界減衰係数、d:前記固体レーザ媒質の媒質長、α:前記励起光の前記固体レーザ媒質における吸収係数、θ:前記固体レーザ媒質への入射角、L:前記第2の共振器の共振器長、Lc:前記励起光のコヒーレンス長
を満たすものであることが望ましい。
なお、前記第2の共振器が、複数の共振ミラーによりリング型共振器が構成されている場合、Rは入力ミラー以外のミラー全ての励起光強度反射率と周回伝搬効率の積を表す。Lはラウンドトリップ共振器長である。
前記固体レーザ媒質が可視光を発光するものであることが望ましい。また、励起手段がGaN系半導体レーザを備えていることが望ましい。GaN系半導体レーザとしては、例えばGaN半導体レーザ、InGaN半導体レーザ、AlGaN半導体レーザ等が挙げられる。
さらに、前記第1の共振器が、前記第2の共振器を兼ねるものであることが望ましい。
前記第1の共振器内に、前記固体レーザ媒質からの発振光の波長を第2高調波に変換する第2高調波発生非線形媒質を備えてもよい。
また、前記第1の共振器が前記第2の共振器を兼ねるものである場合には、前記共振器内に、前記励起光と前記固体レーザ媒質からの発振光との和周波あるいは差周波を発生する非線形媒質を備えてもよい。
本発明の固体レーザ増幅装置は、希土類イオンあるいは遷移金属イオンを添加した固体レーザ媒質と、前記固体レーザ媒質を励起する励起光を出力する励起手段とを備え、前記固体レーザ媒質を通過する信号光を増幅させる固体レーザ増幅装置において、
前記励起光を、前記固体レーザ媒質を通過させるように共振させる励起光用共振器を備え、
前記励起手段が、前記励起光として2つ以上の縦モードを有するとともに前記励起光用共振器の共振器長以上のコヒーレンス長を有するレーザ光を出力し、前記励起光用共振器内に入力するものであることを特徴とするものである。
上記構成の本発明の固体レーザ増幅装置では、狭線幅の単一周波数発振の励起光を用いる従来技術に比べて励起光のコヒーレンス長を短くすることができ、コヒーレンス長は9.5m(10MHz)以下とすることができる。
本発明の固体レーザ増幅装置は、前記固体レーザ媒質として、その励起光に対する吸収率がシングルパスで40%以下、さらには20%以下、さらには10%以下であるものを用いる場合に好適である。
本発明の固体レーザ増幅装置は、前記励起光用共振器を構成する共振ミラーのうち、前記励起光を該共振器内に導入する入力ミラーの励起光強度反射率R1が、
ただし、R:前記第2の共振器を構成する入力ミラー以外のミラーの励起光強度反射率と共振器周回での伝搬効率の積、γ=αdcosθ/2:前記固体レーザ媒質での周回あたりの励起光電界減衰係数、d:前記固体レーザ媒質の媒質長、α:前記励起光の前記固体レーザ媒質における吸収係数、θ:前記固体レーザ媒質への入射角、L:前記第2の共振器の共振器長、Lc:前記励起光のコヒーレンス長
を満たすものであることが望ましい。
前記固体レーザ媒質が可視光を発光するものであることが望ましい。また、励起手段がGaN系半導体レーザを備えていることが望ましい。GaN系半導体レーザとしては、例えばGaN半導体レーザ、InGaN半導体レーザ、AlGaN半導体レーザ等が挙げられる。
本発明の固体レーザ発振装置および固体レーザ増幅装置においては、励起光を固体レーザ媒質を通過させるように共振させる第2の共振器(増幅装置においては励起光用共振器)をさらに備え、励起手段が、励起光として2つ以上の縦モードを有するとともに第2の共振器(励起光用共振器)の共振器長以上のコヒーレンス長を有するレーザ光を出力し、第2の共振器(励起光用共振器)内に入力する、励起光が固体レーザ媒質を通過して複数回往復するように共振させるものであることから、シングルパス吸収率の低い固体レーザ結晶においても、実効吸収率を高めることが出来るため、高効率動作が可能となる。
励起光として、縦単一モードのレーザ光を用いる場合と比較して、励起手段の構成を小型にすることができ、また、励起光を高出力にすることができることから、装置全体として小型かつ高出力な固体レーザ発振装置および固体レーザ増幅装置を構成することができる。
本発明の固体レーザ発振装置および固体レーザ増幅装置においては、シングルパス吸収率が、40%以下、20%以下、さらには10%以下と小さいものほど高効率化の効果を顕著に得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1に、本発明の第1の実施形態の固体レーザ発振装置1の概略構成を示す。固体レーザ発振装置1は、固体レーザ媒質(固体レーザ結晶)を励起する励起手段である励起用レーザ2と、ミラー3枚M1、M2、M3で構成されるリング型外部共振器3と、この共振器3中に配置される固体レーザ結晶4と、励起用レーザ2からの励起光7の共振状態を検知し、励起用レーザ2あるいは外部共振器3にフィードバックを加える機構5(以下、制御器5という。)を有している。なお、共振状態とは、概念的には、励起光の周波数と外部共振器の周波数が一致し、位相が整合した状態であるが、実際には反射光7’が最小になった状態を共振状態として判断する。
ここではミラーM3を図示しない圧電アクチュエータ素子の上に配置し、ミラーM1からの励起光7の反射光7’を受光素子6により受光し、モニタして共振を維持するよう制御器5にてミラーM3位置にフィードバックを掛け、必要に応じて矢印X方向にミラーM3位置を調整している。また、外部共振器3は、発振光を共振させる第1の共振器と励起光を共振させる第2の共振器とを兼ねるものであり、励起光7とレーザ発振光8ともに共振させるよう、それぞれの波長に対する高反射ミラーあるいは部分反射ミラーで構成されている。
励起用レーザ2は、励起光7として2つ以上の縦モードを有するレーザ光を出力し、共振器3に励起光7を入力ミラーM1から入力するものであり、図2に示すように、半導体レーザ11と、該半導体レーザ11からの励起光を平行光化するコリメートレンズ12と、平行光化された励起光のスペクトル幅を狭帯域化する、エタロン13および回折格子14からなる狭帯域化手段とから構成されている。なお、図2では外部に出力される(入力ミラーM1に向かう)励起光7を模式的に矢印で表し、固体レーザ結晶4に入力するための光学系の図示を省略している。
本実施形態では、レーザ結晶4はNd:YAG (Nd濃度0.1at%)とし、946nm準3準位発振を行うものとする。レーザ結晶4の結晶長d=1mm、励起光の吸収係数α=0.5cm-1であり、励起光7の吸収率は、シングルパスでηabs=1−exp(αd)=4.9%である。外部共振器3の共振器長Lは5.0cm(ラウンドトリップ)、励起光7の波長は810nmとする。
このとき、励起光のコヒーレンス長Lcを0cm(インコヒーレントな状態)から100cmまで変化させたときの、固体レーザ結晶4での実効吸収率の入力ミラーM1の励起光強度反射率R1依存性の計算結果を図3に示す(図3中、上からコヒーレンス長Lcが100cm、50cm、20cm、10cm、5cm、1cm、0cmの場合を示す)。ただし、共振器3内の散乱損失はシングルパス吸収より十分に小さいとして無視した。またミラーM2、M3の励起光強度反射率はR2、R3=1とした。計算手法は、吸収がある場合のファブリーペロー干渉計理論(T. Skettrup著、Journal of Optics A: Pure and Applied Optics vol.2 (2000) pp. 546-549)を参考とし、外部共振器に適用できるように拡張した。この共振器から反射されるコヒーレント成分の光電界は、コヒーレンス長を考慮して、次式(3)のように書かれる。ただし空間モードは平面波と仮定している。第1項は、ミラーM1での反射、第2項は、一周回した励起光7がミラーM1で透過する成分(吸収とコヒーレンス長によるコヒーレント成分の減少効果、周回による位相差が含まれる)、以下同様に多数回周回する成分を加え合わせている。
ただし、Ein:入射電界、r1:入力ミラーM1の励起光電界反射率、t1:入力ミラーM1の励起光電界透過率、rm=r23(1−EL):入力ミラー以外の全てのミラーの電界反射率の積と共振器周回での伝搬効率の積=入力ミラーを除く共振器周回に伴う伝搬効率、r2:ミラーM2の励起光電界反射率、r3:ミラーM3の励起光電界反射率、EL:共振器周回での電界散乱損失、φ=2π/λL:周回あたりの位相差、γ=αdcosθ/2:レーザ結晶での周回あたりの励起光電界減衰係数、L:ラウンドトリップ共振器長、d:結晶長(結晶厚み)、θ:結晶入射角である。同様に、透過するコヒーレント電界、インコヒーレント成分光電界などを計算することができ、最終的に、吸収パワーが算出できる。計算では、位相差φ=2pπ(ただしp:整数)とした。
この場合、コヒーレンス長が共振器長(5cm)以上、または共振器長と同程度以上、望ましくは2倍程度であれば、実効吸収率はシングルパス吸収の11倍程度に増強される。コヒーレンス長5cmで、入力ミラーM1の励起光強度反射率R1=0.5とすると、実効吸収率56%を得ること出来ることが図3より分かる。さらに共振器長の10倍程度のコヒーレンス長(50cm)があれば、励起光強度反射率R1=0.85近傍で90%以上の実効吸収率が得られることが理解される。もちろんコヒーレンス長が、共振器長に比べ十分長いとみなせる場合(20倍以上=100cm以上)では、励起光強度反射率R1を適切に選択すればほぼ全励起パワーが吸収されることになる(なお、ここでは散乱損失を無視している)。
吸収率が最大になる入力ミラーM1の励起光強度反射率R1の値は、コヒーレンス長が共振器長に対し十分長い場合は、下式(4)で与えられる。なお、ここで共振器内の散乱損失を無視すると、Rは、ミラーM2、ミラーM3の励起光強度反射率の積R=R×Rである。
ただし、必ずしもこの値でのみ、コヒーレント効果による増強が発現されるのではなく、この値近傍であることが、より望ましいという意味である。具体的には下式(5)の範囲であれば、十分なコヒーレント効果が得られる。
コヒーレンス長5cmというのは励起用レーザ2から出力される励起光7であるレーザ光のスペクトル線幅Δν=1.9GHzに相当する。波長で表すと、4.1pm(800nm波長において)である。この程度の波長幅であれば、特別に狭線幅のDFBレーザや外部共振器半導体レーザを使用する必要が無いことを示している。この線幅は比較的容易に達成できる値であり、励起光源の狭帯域化に伴う損失による励起パワー低下は低く抑えられるため、高出力化が可能である。励起用レーザ2中の半導体レーザ11の外部共振器に回折格子、干渉フィルタなどを挿入した場合、共振器長は20cm程度になる。このとき、自由スペクトルレンジは、0.75GHzであり、単一周波数ではなく、2〜3本の縦モードが発振する。
半導体レーザを備えた、単一縦モードの励起用レーザを用いた図11、図13に示すような従来の固体レーザ装置と比較して、本発明はパワー損失の低減と小型化・低コスト化という点で有用性がある。より具体的には、以下のように説明できる。通常、単一縦モード半導体レーザを構築するには、レーザ共振器で決まる等間隔の縦モードの中から、一本のみを選択する光学系を共振器内に設置する。一般的に、20cm程度の共振器長に対し、図4に示すような、半導体レーザ11と、該半導体レーザ11からの励起光を平行光にするコリメートレンズ12と、平行光化された励起光のビームを拡大するプリズム15a、15b、15c、15dからなるビーム拡大プリズム群、スペクトル幅を狭帯域化する、エタロン16および回折格子17からなる狭帯域化手段とを有する構成を取ることが多い。なお、図4では外部に出力される励起光を模式的に矢印で表し、外部出力用のコリメートレンズの図示を省略している。
この場合、縦モード間隔は0.75GHz=1.6pmであり、半導体レーザの利得幅=10nmとすると、およそ6000本もの縦モードが存在しうることになる。この中で一本のみ選択する場合、回折格子とエタロンなどの波長選択素子を複数使用するか、回折格子へのビーム径を拡大する必要がある。一方、3本で良い場合、概略、単一縦モードの場合の3倍の透過帯域幅で良いので、回折格子のみで良いか、ビーム径をそれほど拡大せずとも良い。これは部品点数を少なくし、低コスト化、小型化に繋がる。さらに帯域幅の広い波長選択素子を用いることで、素子の損失を数%改善できるため、パワー損失は概略、20%程度改善できるという有用な特徴がある。これらの効果は、複数の縦モード、特に、3本以上の縦モードを許容するものとすれば、著しく効果が発現してくる。
実験では、図2に示す構成の励起用レーザ2のように、ファブリペロー型LDを回折格子とエタロンで狭帯域化した結果、出力500mW、線幅2GHzが得られた。これを励起用レーザとして用いた図1に示す固体レーザ発振装置1では、吸収パワーは300mW、閾値は70mW、出力光9のレーザ出力は100mW(スロープ効率45%)が波長946nmにおいて得られた。励起光を共振させる共振器を備えていない場合(図1において共振器3が励起光を共振させる機能を有しない場合)、レーザ結晶の励起光の吸収率はシングルパスで4.9%であるので、吸収される励起パワーは僅か15mWである。従って、発振に必要な閾値を越えず、レーザ発振は得られなかった。励起光を共振させる共振器を備えていない場合、吸収率60%に必要な吸収長は1.83cm、つまり、1mmの結晶を18パス(9往復)する分の励起パスが必要であるが、共振器以外の方法でこれを実現することは非常に難しい。なお、このときの共振器構成は、ミラーM1:フラットミラー、ミラーM2:凹面ミラー(曲率半径50mm)、ミラーM3:凹面ミラー(曲率半径50mm)、ミラーM1−結晶4間距離:10mm、結晶4−ミラーM2間距離:10mm、ミラーM2−ミラーM3間距離:15mm、ミラーM3−ミラーM1:15mm、結晶4での共振器スポット半径72μmであった。また、各ミラーには以下のコートを施した。ミラーM1:励起光7に対して反射率50%、かつ946nm波長に対して高反射(HR)、ミラーM2:励起光7に対してHR、かつ946nm波長に対して98%、ミラーM3:励起光7および946nm波長に対してHR。
なお、本発明のように、励起光を共振させる外部共振器を備える場合、外部共振器に励起光の発振周波数を同調させるか、その逆に、外部共振器の周波数を励起光に合致させる必要があるが、これを維持する手法としてPound-Drever法などが挙げられる。これは、外部共振器の入力ミラーの反射光を検知し、それが最小になるように、共振器長を微細に制御する手法である。また上記の共振が最適に成立するためには、1)励起光と発振光の空間的モード整合、2)インピーダンス整合(入力ミラーM1の励起光強度反射率R1=共振器内部損失:式(4)に相当)が必要と考えられる(より詳しくは文献(W. P. Risk et al.著、”Compact Blue-Green Lasers”、Cambridge University Press、第4章)を参照のこと)。前者に関しては、外部共振器の共振器モードに励起レーザのモードを整合させれば良く、TEM00モード同士であるので、比較的容易である。具体的には、外部共振器で形成される共振器モードを光線行列などで計算し、そのモードスポット径およびウエスト位置を算出する。この位置とスポット径に励起レーザのビームが集光されるよう、外部のレンズ系でビーム整形する。後者に関しては、図3で示すように、必ずしも完全に整合していない状態でも、十分に共振効果が発現することが本発明者の研究により明らかになった。また、図1(および以下の実施形態)に示す制御器5は、レーザ発振器全体が高精度に温度調節されており、共振器長を波長レベルで一定に制御できていれば、必須のものではなくなる。
また、シングルパス吸収が20%以上ある場合でも、本発明のコヒーレント効果で、吸収の増加が得られる。図5、図6にシングルパス吸収が20%(α=2.2cm-1)と40%(α=5.1cm-1)の場合を示す。しかしながら、図3〜図6を比較すると、シングルパス吸収が低い方がむしろ、コヒーレント効果による吸収増強の割合は大きくなることが分かる。例えば、図3と図6を比較すると、コヒーレンス長5cmの場合で、実効吸収率はそれぞれ最大56%、65%で、シングルパス吸収からの増強割合を考えると、それぞれ11倍、3.3倍である。これは、シングルパス吸収が大きいと、外部共振器内の損失が大きくなり、励起光が周回できる回数も減るためである。言い換えると実効的な共振器のフィネスが下がることと等価である。
シングルパス吸収が40%より大きければ、外部共振器を用いない通常のダブルパス構成で65%以上の吸収が得られる。従って、40%以下のシングルパス吸収率の場合は、本発明を用いることで、シングルパス吸収の2倍〜20倍程度の増強が得られるため非常に有益であるといえる。
ここでは、Nd:YAG結晶を用いた例を示したが、他の如何なるレーザ結晶でも本発明は適用可能である。例えば、Pr:YLF(LiYF4)結晶では、波長440nmで励起し、639.5nm(3P03F2)、522nm(3P13H5)、480nm(3P03H4)で発振する。特に、480nm発振では準3準位系エネルギー構造を取るので、本発明を適用する効果が大きい。図1と同様の固体レーザ発振装置を構成し、440nm波長GaN半導体レーザ(出力60mW)を周波数幅2GHz程度(波長幅1.2pm)まで狭帯域化した。その結果、シングルパス吸収が10%程度の結晶に対し、70%以上の実効吸収率を得ることが出来た。吸収パワー35mWにおいて、2mWの青色480nm発振が得られた。他にも、Pr:YAG(488nm、3P03H4)、Ho:YLF(540nm、5S25I8)、Tm:YLF(482nm、1G43H6)、Er:YLF(551nm、4S3/24I15/2)など可視域の発光を有する固体レーザ結晶は、特に準3準位発振が多く、本発明を適用することで、大幅な特性改善が見込める。
第2の実施形態の固体レーザ発振装置20として、共振器3内部に、レーザ結晶4に加えて、第2高調波発生用の非線形結晶である波長変換素子21を挿入した固体レーザ発振装置の概略構成を図7に示す。なお、以下の実施形態においては、図1に示した固体レーザ発振装置と同一要素には同一符号を付し詳細な説明を省略する。
この場合、励起光7は外部共振器3内を共鳴的に周回し、レーザ発振を引き起こすことまでは第1の実施形態と同様である。本実施形態では発振したレーザ光8は、引き続き、波長変換素子21で第2高調波に変換され、出力光9として第2高調波を出力する点で第1の実施形態と異なる。
実験では、第1の実施形態の場合と同一の構成に、さらに非線形結晶21としてKNbO3結晶を用いた。第一種位相整合を用い、位相性合角60.5度、KNbO3結晶長2mmとした。励起パワー300mWにて、青色領域(473nm)の第2高調波は70mW程度と非常に高効率な青色光が得られた。
なお、同様の構成の固体レーザ発振装置において、GaN半導体レーザ(440nm)を励起光源とし、固体レーザ結晶4として、Nd:YAGに換えてPr:YLF結晶を用いることにより、480nm発振光8に対し、第2高調波を発生させ240nmの深紫外光9を得ることができた。この場合、レーザ出力は0.5mWと低いものの、非常にコンパクトな構成で紫外レーザを実現できた。
第3の実施形態の固体レーザ発振装置30として、共振器3内部に、レーザ結晶4に加えて、和周波あるいは差周波を発生させる非線形結晶31を挿入した固体レーザ発振装置の概略構成を図8に示す。
本実施形態の固体レーザ発振装置30は、外部共振器3内で励起光7と発振光8がともに共振していることを利用し、非線形結晶31において、和周波あるいは差周波発生をさせるものである。
例えば固体レーザ結晶4としてNd:YAGを用いた場合、Nd:YAG の1064nm発振では、809nm励起光7と1064nm発振光8の和周波発生においては波長459.5nmの青色領域、差周波発生においては3375nmの中赤外領域の発生が可能である。459.5nmは各種光化学反応、ディスプレイ、医療生体応用に適しており、3375nmは分子の振動遷移の共鳴線が多く存在するため、化学物質同定などに使用可能である。また、Nd:YAGの946nm発振では、809nmの励起光7と946nmの発振光8の和周波(436nm)、差周波(5586nm)と、上記と同様に、実用上非常に有益な波長帯域がコンパクトな構成で得られる。
また、第4の実施形態の固体レーザ発振装置について図1を参照して説明する。第4の実施形態の固体レーザ発振装置は、図1の励起用レーザ2として、高出力な半導体レーザ(>500mW)を用いる場合である。この場合、固体レーザ結晶4中には励起光7の集光分布に応じて温度分布が生じ、一般的には凸レンズを形成する(Nd:YLFなどの屈折率の温度依存性dn/dT<0の媒質では、凹レンズになる)。これを熱レンズという。ここで熱レンズとは、固体レーザ結晶4が励起された状態において、励起分布に応じた温度勾配に起因する光学収差のことであり、通常レンズ効果を発現することから、熱レンズと呼ばれる。この凸レンズは、熱レンズが無い場合に安定領域にある外部共振器3に対し、励起パワーの増大に伴い、外部共振器3を不安定領域に引き込む作用をもたらす。このレーザ結晶中4での熱レンズに対し、外部共振器3のミラー(M2、M3)に、熱レンズを打ち消すような曲率をつけることにより、最大励起パワーでも外部共振器3を安定動作させ、励起光の共鳴効果を発現させることが出来る。具体例としては、励起パワー700mWにおいて、焦点距離5cmの熱レンズが発現したが、M1−M2間距離:20mm、M2−M3間距離:10mm、M1−M3間距離:10mmとおき、共振器ミラーM2(曲率=75mm)、M3(曲率=40mm)とすることで、熱レンズによるビーム径拡大(第1の実施形態では100μm以上)を抑制し、熱レンズがある状態で、70μm程度の共振器モード半径が得られた。このとき、Nd:YAGの946nm発振では吸収パワー420mW、発振出力200mWが得られた。このように、熱レンズによる効果を打ち消すような構成が容易に可能である点が、外部に共振器ミラーを用いる有利な点である。
なお、上記各実施形態で示した固体レーザ発振装置における共振器は、3枚の共振器ミラーを用いるリング構成のものであるが、もちろん、本発明はこれに限定されるものではない。2枚のミラーを対向させるファブリーペロー型共振器(図9)や、4枚のミラーを用いるボウタイ型(Bow-tie型、図10)でも何ら本質的には変わらず、本発明を適用できる。
図9に示す第5の実施形態の固体レーザ発振装置40は、2枚のミラー41、42を対向して構成したファブリーペロー型共振器43を備えた点で第1〜第4の実施形態の固体レーザ発振装置と異なる。共振器43はここでも励起光7と発振光8の両波長の光を共振させるものである。なお、本実施形態においては、入力ミラー41からの励起光の反射光7’をハーフミラー45により受光素子6側に反射させる構成である。
本実施形態の固体レーザ発振装置40においても、励起光7を共振させることにより固体レーザ媒質4における吸収率を増加させる効果を得ることができ、また、励起用レーザ2は、励起光7として2つ以上の縦モードを有するレーザ光を出力し、共振器43に励起光を入力ミラー41から入力するものであることから、縦単一モードの励起用レーザを励起手段として備える場合と比較してコンパクトで高出力な装置とすることができる。
図10に示す第6の実施形態の固体レーザ発振装置50は、4枚のミラー51〜54により構成されたボウタイ型の共振器55を備えた点で上述の実施形態の固体レーザ発振装置と異なる。共振器55はここでも励起光7と発振光8の両波長の光を共振させるものである。本実施形態についても上述と同様の効果を得ることができる。
次に、本発明の固体レーザ増幅装置の実施形態を第7の実施形態として説明する。図11は本発明の固体レーザ増幅装置の実施形態であるシングルパス増幅器60の概略構成を示すものである。上述の固体レーザ発振装置1と略同様の構成であり、シングルパスの吸収が小さいレーザ結晶4を外部共振器3内に配置し、一方で、外部に設けられたシード光発生装置65からの信号レーザ光67をダイクロイックミラー66で反射させ、共振器3内のレーザ結晶4に通すことにより光増幅させ、増幅された光を出力光9として得るものである。
なお、ここではシングルパス増幅器を例に説明したが、信号光パルスを適当な回数だけ外部共振器を周回させ、十分な増幅率を得た後に、共振器から取り出すという再生増幅器として構成することも可能である。光増幅装置の詳細原理に関しては文献W. Koechner著、Solid-state laser engineering(Springer-Verlag、第9章)に記載がある。
このように、固体レーザ増幅装置としても、励起光7を共振させることにより固体レーザ媒質4における吸収率を増加させる効果を得ることができ、また、励起用レーザ2は、励起光7として2つ以上の縦モードを有するレーザ光を出力し、共振器3に励起光を入力ミラーM1から入力するものであることから、縦単一モードの励起用レーザを励起手段として備える場合と比較してコンパクトで高出力な装置とすることができる。
上述の各実施形態においては、固体レーザ結晶4として、主としてNd:YAGを用いるものとして説明したが、もちろん固体レーザ結晶はこれに限定されることなく、希土類イオンあるいは遷移金属イオンを添加した固体レーザ媒質であればよい。なお、シングルパス吸収率の低いレーザ結晶、あるいは準3準位レーザ媒質などのように、吸収率を上げるとレーザ下準位による自己吸収損失が増え、レーザ発振効率が下がる媒質にも広く適用可能である。
また、上述の各実施形態では、共振器は、励起光と発振光との両者を共振させるものとしたが、必ずしもこれに限定されることなく、励起光と発振光それぞれに別々の共振器を構成しても良い。図12に第8の実施形態の固体レーザ発振装置70として、その一例を示す。固体レーザ発振装置70では、励起光は、図1に示す構成と同様に、M1〜Mの3枚のミラーで構成される共振器3で共振している。一方、発振のための共振器は、M1〜Mとは別のミラーM、Mを用いて直線状の共振器73を構成している。この場合、発振出力の調整と、励起光の共振とを独立に最適化できるという有利な点もある。
第1の実施形態に係る固体レーザ発振装置の概略構成図 励起用レーザの概略構成図 第1の実施形態における、実効吸収率の入力ミラー反射率依存性(シングルパス吸収=4.9%) 単一縦モードの励起用レーザの概略構成図 第1の実施形態における、実効吸収率の入力ミラー反射率依存性(シングルパス吸収=20%) 第1の実施形態における、実効吸収率の入力ミラー反射率依存性(シングルパス吸収=40%) 第2の実施形態に係る固体レーザ発振装置の概略構成図 第3の実施形態に係る固体レーザ発振装置の概略構成図 第5の実施形態に係る固体レーザ発振装置の概略構成図 第6の実施形態に係る固体レーザ発振装置の概略構成図 第7の実施形態に係る固体レーザ増幅器の概略構成図 第8の実施形態に係る固体レーザ発振装置の概略構成図 従来例(その1) 従来例(その2)
符号の説明
1、20、30、40、50 固体レーザ発振装置
2 励起用レーザ
3 外部共振器
4 固体レーザ結晶
5 制御器
6 受光素子
7 励起光
8 発振光
9 出力光
1、M2、M3 ミラー
60 固体レーザ増幅装置

Claims (17)

  1. 希土類イオンあるいは遷移金属イオンを添加した固体レーザ媒質と、該固体レーザ媒質が内部に配置され、該固体レーザ媒質からの出力光をレーザ発振させるための第1の共振器と、前記固体レーザ媒質を励起する励起光を出力する励起手段とを備えた固体レーザ発振装置において、
    前記励起光を、前記固体レーザ媒質を通過させるように共振させる第2の共振器をさらに備え、
    前記励起手段が、前記励起光として2つ以上の縦モードを有するとともに前記第2の共振器の共振器長以上のコヒーレンス長を有するレーザ光を出力し、前記第2の共振器内に入力するものであることを特徴とする固体レーザ発振装置。
  2. 前記固体レーザ媒質の前記励起光に対する吸収率がシングルパスで40%以下であることを特徴とする請求項1記載の固体レーザ発振装置。
  3. 前記固体レーザ媒質の前記励起光に対する吸収率がシングルパスで20%以下であることを特徴とする請求項1記載の固体レーザ発振装置。
  4. 前記固体レーザ媒質の前記励起光に対する吸収率がシングルパスで10%以下であることを特徴とする請求項1記載の固体レーザ発振装置。
  5. 前記第2の共振器が、周回あたり前記励起光が1回のみ前記固体レーザ媒質を通過する構成であり、
    前記第2の共振器を構成する共振ミラーのうち、前記励起光を該共振器内に導入する入力ミラーの励起光強度反射率R1が、
    ただし、R:前記第2の共振器を構成する入力ミラー以外のミラーの励起光強度反射率と共振器周回での伝搬効率の積、γ=αdcosθ/2:前記固体レーザ媒質での周回あたりの励起光電界減衰係数、d:前記固体レーザ媒質の媒質長、α:前記励起光の前記固体レーザ媒質における吸収係数、θ:前記固体レーザ媒質への入射角、L:前記第2の共振器の共振器長、Lc:前記励起光のコヒーレンス長
    を満たすものであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の固体レーザ発振装置。
  6. 前記固体レーザ媒質が可視光を発光するものであることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の固体レーザ発振装置。
  7. 前記励起手段がGaN系半導体レーザを備えていることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の固体レーザ発振装置。
  8. 前記第1の共振器が、前記第2の共振器を兼ねるものであることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の固体レーザ発振装置。
  9. 前記第1の共振器内に、前記固体レーザ媒質からの発振光の波長を第2高調波に変換する第2高調波発生非線形媒質を備えたことを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の固体レーザ発振装置。
  10. 前記第1の共振器内に、前記励起光と前記固体レーザ媒質からの発振光との和周波あるいは差周波を発生する非線形媒質を備えることを特徴とする請求項8記載の固体レーザ発振装置。
  11. 希土類イオンあるいは遷移金属イオンを添加した固体レーザ媒質と、前記固体レーザ媒質を励起する励起光を出力する励起手段とを備え、前記固体レーザ媒質を通過する信号光を増幅させる固体レーザ増幅装置において、
    前記励起光を、前記固体レーザ媒質を通過させるように共振させる励起光用共振器を備え、
    前記励起手段が、前記励起光として2つ以上の縦モードを有するとともに前記励起光用共振器の共振器長以上のコヒーレンス長を有するレーザ光を出力し、前記励起光用共振器内に入力するものであることを特徴とする固体レーザ増幅装置。
  12. 前記固体レーザ媒質の前記励起光に対する吸収率がシングルパスで40%以下であることを特徴とする請求項11記載の固体レーザ増幅装置。
  13. 前記固体レーザ媒質の前記励起光に対する吸収率がシングルパスで20%以下であることを特徴とする請求項11記載の固体レーザ増幅装置。
  14. 前記固体レーザ媒質の前記励起光に対する吸収率がシングルパスで10%以下であることを特徴とする請求項11記載の固体レーザ増幅装置。
  15. 前記励起光用共振器を構成する共振ミラーのうち、前記励起光を該共振器内に導入する入力ミラーの励起光強度反射率R1が、
    ただし、R:前記第2の共振器を構成する入力ミラー以外のミラーの励起光強度反射率と共振器周回での伝搬効率の積、γ=αdcosθ/2:前記固体レーザ媒質での周回あたりの励起光電界減衰係数、d:前記固体レーザ媒質の媒質長、α:前記励起光の前記固体レーザ媒質における吸収係数、θ:前記固体レーザ媒質への入射角、L:前記第2の共振器の共振器長、Lc:前記励起光のコヒーレンス長
    を満たすものであることを特徴とする請求項11から14いずれか1項記載の固体レーザ増幅装置。
  16. 前記固体レーザ媒質が可視光を発光するものであることを特徴とする請求項11から15いずれか1項記載の固体レーザ増幅装置。
  17. 前記励起手段がGaN系半導体レーザを備えていることを特徴とする請求項11から16いずれか1項記載の固体レーザ増幅装置。
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