JP5000692B2 - レジスト及びレジストパターン形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体デバイス、半導体集積回路に例示される微細な構造体を形成するためのパターン形成やエッチングに使用されるレジストに関する。本発明は特に、放射線照射露光用のレジストに関する。
微細パターン形成技術は、半導体デバイスもしくは半導体集積回路の形成技術として急速に発展してきた。パターンの微細化により、個々の半導体デバイスの高性能化すなわち高速化、低消費電力化が成し遂げられてきた。さらに、デバイスの集積度が上がることにより高機能な半導体集積回路が実現されてきた。現在、回路寸法(幅)が130nm程度の半導体集積回路が量産されている。
半導体集積回路に用いられるデバイスは、シリコンを基板に用いている。このようなデバイスが動作する寸法の微細化限界は5nm程度であると言われている。半導体デバイスもしくは集積回路の形成には、従来光露光が用いられている。現在は波長256nmのフッ化クリプトンレーザを用いた光露光が行われている。パターンの微細化に対応するために、より短い波長の光が用いられることが求められている。次世代の光露光に用いられることが期待されている光として、波長195nmのフッ化アルゴンレーザが例示される。さらに次次世代の光露光に用いられることが期待されている光として、波長154nmのフッ素レーザが例示される。さらに将来は、波長11〜13.5nmの極端紫外光露光、波長1nmほどのX線露光などが用いられる可能性がある。
一方、デバイスそのものの開発は、量産前に始めておく必要があるため、スループットは低いが汎用性のある電子線露光技術が使われている。電子線露光技術としては、マスクを用いた比較的スループットの高い方式が実用化されており、解像度は50nm程度である。その一方、細く絞った電子線を用いる電子線露光は、任意のパターンが形成できる実用性と超高解像度が両立した露光技術であり、50nm以下の解像度が容易に得られ、量子サイズ効果の研究や超微細トランジスタの試作に用いられている。電子ビームの直径は、細いものでは1nmほどであるが、最小パターンはレジストの解像度で決まり、実用性の高い有機分子を用いたレジストではポジ型のポリメチルメタアクリレート(PMMA)で10nm程度である。
特許文献1、及び特許文献2には、ネガ型及びポジ型レジスト組成物としてポリエチレン基を基本骨格として用いたものが提案されている。
特許文献3、特許文献4、特許文献5には、10nm程度の分解能を持つネガ型のレジストとしてカリックスアレーンレジストが提案されている。
特許文献6には、上述のカリックスアレーンレジストは、アセチル化により溶媒に可溶となることが示される。またこのカリックスアレーンレジストは、クロロ化によって、放射性に対する感度が高くなることが示されている。このカリックスアレーンレジストによりネガ型レジストを用いて10nmレベルのパターン形成が容易に行われる。
非特許文献1には、レジスト材料であるCMC4AOMe又はCMC3AOMeの合成方法が示されている。
特開2001−281864公報 特開2002−49153公報 特公平6−53819号公報 特公平7−23340号公報 特開2000−330281公報 特許第2792508号公報
長崎等:「テトラへドロン」、第48巻、797〜804頁、1992年
上述したように、カリックスアレーンは、ネガ型レジストとして働き、10nmほどの解像度が得られる超高解像度レジストとして有用である。しかし、このレジスト材料が溶解する溶媒はジクロロベンゼン、モノクロロベンゼンなどの塩素を含有した有機溶媒であり、現像にはキシレンなどの有機溶媒が使用される。これらの塩素を含有した溶媒は、オゾン層破壊物質として使用が禁止される方向にあり、また作業環境上好ましくないとして使用が禁止される方向である。
これら溶媒や現像液はパターン形成プロセスにおいて大量に使用するとともに揮発性であるため完全に回収することが難しく、そのため半導体集積回路などの量産現場では使用が許可されない。
このように従来のカリックスアレーンは、溶媒ならびに現像液を大量に消費する量産工場では使用できず、半導体デバイスの製造に用いることが難しい。さらに、近年はナノテクノロジーへの期待が高まり、10nm以下の超微細パターンに対する要求が高まり、従来のカリックスアレーンの解像度の不足が指摘されるようになった。
そこで、本発明の技術的課題は、従来のカリックスアレーンより高解像度であり、作業環境上比較的問題の少ない、作業環境性のよい溶媒に可溶で、ならびに該溶媒を含む現像液を用いて現像することができるレジスト材料、それを用いた露光方法並びに微細加工方法を提供することにある。
本発明では、上記課題を解決するために、カリックスアレーン誘導体を種々合成し検討した結果、下記化1式の構造式(I)で表される5,11,17,23−テトラクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC4AOMe)と、下記化2式の構造式(II)で表される5,11,17−トリクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC3AOMe)組成物との内の少なくとも一方を含むレジストが有望であることを見出した。
Figure 0005000692
Figure 0005000692
本発明によれば、上記化1式の構造式(I)で表される5,11,17,23−テトラクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC4AOMe)と、上記化2式の構造式(II)で表される5,11,17−トリクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC3AOMe)との内の少なくとも一方を含むカリックスアレーン組成物が提供される。
また、本発明によれば、上記化1式の構造式(I)で表される5,11,17,23−テトラクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC4AOMe)ならびに上記化2式の構造式(II)で表される5,11,17−トリクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC3AOMe)の内の少なくとも一方を含むレジストが提供される。
また、本発明によれば、前記レジストに加えて、さらに下記化3式の構造式(III)で表される5,11−ジクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC2AOMe)と、下記化4式の構造式(IV)で表される5−モノクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC1AOMe)との内の少なくとも一方を含むレジストが提供される。
Figure 0005000692
Figure 0005000692
また、本発明によれば、上記いずれかのレジストに加えて、さらにオリゴマーもしくは高分子との内の少なくとも一方を含むレジストが提供される。
また、本発明によれば、上記いずれか一つのレジストにおいて、電子ビーム、X線、イオンビーム、原子ビームの内の少なくとも一つを照射することにより感光されるレジストが提供される。
また、本発明によれば、上記いずれかのレジストにおいて作業環境性のよい溶媒を溶媒とするレジストが提供される。
また、本発明によれば、作業環境性のよい溶媒を溶媒とする上記のレジストを基板に塗布するステップと、基板に塗布されたレジストを放射線に露光するステップと、そのレジストの現像を行うステップとを具備するレジストパターン形成方法が提供される。
露光に用いられる放射線は、電子ビーム、X線、イオンビーム、原子ビームの内の少なくとも一つである。
また、本発明によるレジストパターン形成方法において、作業環境性のよい溶媒は、乳酸エチル(EL)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピオン酸エチル、酢酸−nブチル、2−ヘプタノンの内の少なくとも一種を含む。現像液は、乳酸エチル(EL)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピオン酸エチル、酢酸−nブチル、2−ヘプタノン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの内の少なくとも一種を含む。
また、本発明によれば、上記いずれか一つのレジストパターン形成方法を用いてレジストパターンを形成するステップと、前記レジストパターンをマスクとして基板に対する加工を行うステップとを具備する微細加工方法が提供される。
(作用)
本発明のレジストに使用される上記化1式の構造式(I)で表されるカリックスアレーン(CMC4AOMe)は、ベンゼン環数が4個である。これに対して、特許第2792508号公報に開示され下記化5式の構造式(V)に示される5,11,17,23,29,35−ヘキサクロロメチル−37,38,39,40,41,42−ヘキサメトキシカリックス[6]アレーン(CMC6AOMe)は、ベンゼン環数が6個であり相違している。
また、本発明のレジストに使用される上記化2式の構造式(II)で表されるCMC3AOMeの場合、4つのベンゼン環中3つのベンゼン環にクロロメチル基が結合し、4つのベンゼン環にメトキシ基が結合しており、CMC6AOMeとは構造が相違している。
Figure 0005000692
本発明のレジストに使用されるカリックスアレーン化合物はCMC6AOMeと比較し、多くの点で作用が異なっており、実用的に有用である。
まず、本発明の化合物は、従来のヘキサクロロメチルヘキサメトキシカリックス[6]アレーンと比較し、分子量が小さいためさらに高い解像度を有しており、超微細パターン形成が可能で、半導体デバイス試作や製造のみならず、バイオチップなどのナノテクノジー全般の有意な材料である。本発明の材料をレジストとして用いてパターンを形成したのち、本レジストパターンをマスクとしてエッチング加工を施すことにより、レジストの下地材料を加工し、下地材料を微細加工することができる。
さらに、本発明の化合物又は組成物は、多くの作業環境性にすぐれた溶媒[いわゆる安全溶媒]に可溶である。具体的には乳酸エチル(EL)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピオン酸エチル、酢酸−nブチル、2−ヘプタノンなどの半導体量産工場で使用が許されるこれらの溶剤に可溶である。これらの溶剤は、一般に市販されている多くのレジスト材料の溶媒でもある。そして、これらの溶剤に溶かした溶液は、スピンコーティングによって、シリコンなどの半導体基板上に薄く均一な膜を形成することができる。そして、形成した膜を電子線などで露光し現像することにより微細なパターンを形成することができる。このとき用いることができる現像液は、CMC6AOMeの現像液として用いたキシレンが使えることは勿論、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピオン酸エチル、酢酸−nブチル、2−ヘプタノンなどの作業環境性のよい溶媒で現像することができる。さらに半導体量産現場で用いられている一般のレジストの現像液であるテトラメチルアンモニユウムハイドロオキサイド(TMAH)で現像することができる。
さらに、本発明のレジストをCMC4OMeとCMC3OMeの混合物を主成分として構成した組成物の場合、溶剤への溶解性が向上し、エッジラフネスが改良されシャープなパターンを得ることができる。CMC4AOMeとCMC3AOMeの組成比としては、99.5:0.5〜0.5:99.5の範囲であり、好ましくは99:1〜1:99であり、さらに好ましくは95:5〜5:95での範囲である。またこれの組成物以外に他の種類のカリックスアレーン類や高分子が含まれても良く、同様に溶解性が向上しエッジラフネスが改善される。
本発明のCMC4AOMe又はCMC4AOMeとCMC3AOMeが含まれる組成物は、安全溶媒に可溶であること、安全溶媒ならびにテトラメチルアンモニユウムハイドロオキサイドで現像できるという有用な性質を有している。これにより作業環境上問題が少ないため、シリコンデバイスなどのレジストを消費する量産現場においても使用に問題なく、実用的なレジスト材料である。
本発明の放射線レジストは、10nm以下のパターンが形成できるほど高解像度であり、半導体デバイスの微細化や量子効果の研究、バイオチップの製作などナノテクノロジーの有力な材料を提供することができる。
また、本発明の放射線レジストは、作業環境性がよく乃至は環境負荷の少ない溶媒に可溶であるので、特にレジストを大量に使用する半導体量産現場などで使用することが可能である。
Fig.1は、本発明の実施の形態によるレジストの合成方法ならびに微細パターン形成方法を示す工程図である。 Fig.2は、本発明の実施の形態によるレジストの露光特性の一例を示す図である。 Fig.3は、本発明の実施の形態によるレジストを電子線で露光し現像して得られた線パターンの一例を示した電子顕微鏡写真であり、基板はシリコン、現像はキシレンで行っている。 Fig.4は、本発明の実施の形態によるレジストを電子線で露光し現像して得られた線パターンの一例を示した電子顕微鏡写真で、基板はシリコン、現像は乳酸エチルで行っている。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
Fig.1は本発明の実施の形態によるレジストの合成及び微細パターンの形成方法を示す工程図である。Fig.1を参照すると、レジスト材料であるCMC4AOMe又はCMC3OMeは、前述の長崎等:「テトラヘドロン」、第48巻、797〜804頁、1992年に開示された方法を用いて合成される。
まず、原料である25,26,27,28−テトラメトキシカリックス〔4〕アレーンを、50倍量のジオキサンに溶解し、40モル倍のパラホルムアルデヒド、5倍量の酢酸、10倍量の濃塩酸、10倍量の85%リン酸を加え、100℃で8時間加熱攪拌する。反応後、反応液を氷水に注入し、析出する白色固体を濾取する。
合成過程として、前記固体をクロロホルムに溶解し、水を加え、水相が中性になるまで、洗浄する。クロロホルム相を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮し、組成物を得る(ステップS1)。この組成物はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒/酢酸エチル:ヘキサン=1:7)により精製する(ステップS2)。
精製して得られたカリックスアレーンの誘導体を、必要に応じて適当な混合比で混合し組成物とする。またオリゴマー(例示:低分子量のポリスチレン)やポリマー(例示:PMMA、高分子量のポリスチレン)を添加し混合する。添加量は、1パーセントから99パーセントの範囲で可能である。好ましくは添加量は、1パーセントから50パーセントの範囲である。
次に、合成して得られた材料もしくは組成物を、溶剤に溶かす(ステップS3)。
ここで、溶剤には、先に述べたように非安全溶媒であるモノクロロベンゼンもしくはジクロロベンゼンに溶かすことも可能であるが、本材料の特徴である安全溶媒に可溶であること、すなわち乳酸エチル(EL)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピオン酸エチル、酢酸−nブチル、2−ヘプタノンなどに溶かし込む。十分に溶かすためにスタイラーなどを用いて攪拌することは有効である。溶解する溶剤はここに上げた溶剤に限定されるものではない。
次に、塗布工程として、溶かした溶液を、回転塗布法によりシリコン基板などの被加工物に塗布する。基板の材質としては、シリコン基板(ステップS4a)、膜付き基板(ステップS4b)、ハードマスク付基板(ステップS4c)が例示される。塗布膜厚は回転数により制御される。回転塗布後は溶剤を飛散されるためにプリベークと呼ばれる加熱工程を行うこともある。加熱は例えば80℃から170℃程度の温度で窒素雰囲気中のオーブンもしくはホットプレートなどで加熱する。時間は1分程度から数時間程度である。このプロセス条件は所望の加工処理に最適な条件を選択することが望ましい。代表的な塗布条件は回転数3000rpmで30秒から1分間回転すると、プリベーク後膜厚30nm程度が得られる。この膜厚は、加工対象物とレジストのエッチング比や、エッチング深さにより適当に変えることが望ましい。塗布する基板は、シリコン基板のみ、シリコンにシリコン酸化膜、ポリシリコンの膜、アルミの膜がついたものなどが可能である。これ以外にも必要に応じて被加工膜を選択することができる。また非加工膜の加工深さが深い場合や、エッチング速度が高くない場合は、ハードマスクと称する中間膜を被加工膜の上に形成しておく。レジストで形成したパターンをこの中間膜に一旦転写し、エッチング耐性の高い中間膜をマスクとして、さらのその下の被加工物を効率的にエッチング加工することができる。ハードマスクとしては、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜などの膜がよく用いられる。
次に、塗布後、レジスト膜を放射線で露光する(ステップS5)。微細なパターンを形成する場合は、電子線で露光する事が多い。電子線は、ビーム径を数nm程度まで細くでき、超微細パターンを形成するには好適である。また電子線以外にも、一般の光露光で用いられている紫外線、X線、極端紫外線(EUV)、イオンビーム、原子ビームなどで露光することも可能である。
次に露光したレジスト膜を現像する(ステップS6)。現像には、レジスト材料の溶媒として用いた乳酸エチル(EL)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピオン酸エチル、酢酸−nブチル、2−ヘプタノンやテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、キシレンなどが用いられる。基本的に露光部と未露光部の溶解速度が異なる溶媒が現像液として用いられる。現像は、露光したレジストもしくは試料を現像液に30秒から数分程度浸漬するか現像液に接触させる。本レジストは、照射した放射線量が増えると現像液に溶けづらくなり、パターンが形成される。このように本レジストはネガ型レジストとして働く。
Fig.2は本発明の実施の形態によるレジストの露光特性の一例を示す図であり、レジストは5,11,17,23−テトラクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC4AOMe)/5,11,17−トリクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC3AOMe)=7/3の組成物であり、その組成物を乳酸エチルに溶解し、加速50kVのガウシアン電子ビームで露光し、乳酸エチルもしくはキシレンで現像した。横軸は、電子線照射量、縦軸は現像後の膜厚を示している。
Fig.2を参照すると、これに示される特性は、構造式(I)の5,11,17,23−テトラクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC4AOMe)ならびに5,11,17−トリクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC3AOMe)が分子数比で7:3の割合に混合したものである。照射した電子線は加速電圧50kVのガウシアンビーム型電子線である。溶媒には乳酸エチルを用い、現像は乳酸エチルとキシレンを用いている。比較のためにCMC6AOMeの特性も示している。電子線照射量が増えるに従い、現像後も現像液に溶けずにレジスト膜が残るようになる。乳酸エチル、キシレンとも1mC/cm程度の照射量で半分程度の膜厚が残るようになり、2mC/cm程度の照射量でほぼ塗布時の膜厚が残るようになる。塗布時の膜厚が残る露光量を一般的にレジストの感度と呼ぶ。キシレン現像より乳酸エチル現像の方が若干感度が高い。比較のためのCMC6AOMeはさらに感度が高いことがわかる。この理由は、分子量の違いにより、分子量の小さいCMC4AOMe又はCMC4AOMeとCMC3AOMeの組成物の方が同じ重合度をえるためにより多くの電子線照射が必要であったと考えられる。
Fig.2に示したレジストの感度は、一般的な市販されているレジストの感度度比較すると低い。しかし、高解像度になるほど感度は低下する傾向にあり、クロル化していないMC6AOAcの感度は10mC/cmと悪く、本レジストは高解像度であるにも関わらず比較的高い感度を有している。
Fig.3及びFig.4は本発明の実施の形態による現像後のレジストパターンの一例を示す電子顕微鏡写真で、Fig.3はキシレン現像、Fig.4は乳酸エチルで現像したもので基板はシリコンである。50kVのガウシアンビームを用い一本線描きで露光した線パターンである。いずれの例でも線幅は約8nm程度で非常に高解像度である。Fig.3ならびにFig.4で示すレジストパターンは、構造式(I)の5,11,17,23−テトラクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC4AOMe)ならびに化2の5,11,17−トリクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC3AOMe)が分子数比で7:3の割合に混合したものであり、高感度で、線幅8nmの高解像度パターンが得られている。
また、レジストの組成物としては、化4式又は化2式の構造式(IV)に示す5−モノクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーンもしくは化3に示す5,11−ジクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーンが、前記構造式(I)の組成物に、どちらか一方もしくは両方が混合しているものでも良い。またさらにはカリックスアレーン以外の適度な分子量のオリゴマー(例示:低分子量のポリスチレン)や有機高分子化合物(例示:PMMA、高分子量のポリスチレン)が混合していても良い。混合量は、0.01%の微量な混合から30%ほどの範囲である。これらの組成からなるレジストも、安全溶媒に可溶で、放射線に対して感度があり、安全溶媒で現像できて微細パターンを形成でき、微細形状の作製に用いることができる。
以上に説明したように、本レジストを用いて微細なレジストパターンが形成される。この後、必要な場合は、このレジストパターンをマスクとして、下地がエッチング加工される。エッチングの方法としては、プラズマやイオンを用いたドライエッチングと溶液を用いたウエットエッチングがある。微細な形状を精度良く形成するためにはドライエッチングが一般に用いられる。例えば、アルゴンイオンを用いたスパッタもしくはミリングにより下地の被加工物がエッチング加工される。より効率的にエッチングするためには、反応性イオンエッチングが用いられ、被加工物の材料に応じて用いられイオンすなわちガス種やガスの混合比が変えられる。例えば、シリコン酸化膜のエッチングには、フッ素系のガスや臭素系のガスが用いられる。あるいは砒化ガリウム(GaAs)などの化合物系のエッチングには塩素系のガスが用いられる。具体的にはCF,CHF,CClF,BCl,CBrF,SFなどのガス、あるいはそれらのガスに酸素やアルゴンガスが混合されたガスが用いられる。こうしたガス種やそれらの混合の組み合わせは多数ある。また目的とする加工物のエッチング速度がレジストマスクのエッチング速度と比較しあまり速くないもしくは遅い場合は、エッチング耐性の高い中間膜にレジストパターンが一旦転写され、この中間膜をマスクとして下地が加工される。この場合、レジストパターンを中間膜に転写するときには、レジストとのエッチング速度比が取れるガス種が用いられる。中間膜をマスクとして下地をエッチングするときには、ガス種を変えて、中間膜と下地とのエッチング速度比がとれるガス種が用いられる。またイオンやプラズマを生成する方法は多種あり、そのいずれも適用可能である。

Claims (9)

  1. 下記化式の構造式(I)で表される5,11,17,23−テトラクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC4AOMe)と、下記化式の構造式(II)で表される5,11,17−トリクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC3AOMe)とが混合しているレジスト。
    Figure 0005000692
    Figure 0005000692
  2. 請求項に記載されたレジストにおいて、
    さらに、下記化3式の構造式(III)で表される5,11−ジクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC2AOMe)と、下記化4式の構造式(IV)で表される5−モノクロロメチル−25,26,27,28−テトラメトキシカリックス[4]アレーン(CMC1AOMe)との内の少なくとも一方を含むレジスト。
    Figure 0005000692
    Figure 0005000692
  3. 請求項1又は2に記載されたレジストにおいて、
    さらに、オリゴマーと有機高分子化合物との内の少なくとも一方を含むレジスト。
  4. 請求項1から3の内のいずれか一つに記載されたレジストにおいて、
    電子ビーム、X線、イオンビーム、原子ビームの内の少なくとも一つを照射することにより感光されるレジスト。
  5. 請求項1から4の内のいずれか一つに記載されたレジストにおいて、
    前記レジストは、乳酸エチル(EL)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピオン酸エチル、酢酸−nブチル、2−ヘプタノンから選択された少なくとも一つを溶媒とするレジスト。
  6. 請求項に記載されたレジストを基板に塗布するステップと、
    前記レジストを放射線に露光するステップと、
    前記レジストの現像を行うステップ
    とを具備する
    レジストパターン形成方法。
  7. 請求項において、
    前記放射線は、電子ビーム、X線、イオンビーム、原子ビームのうちのいずれかである
    レジストパターン形成方法。
  8. 請求項6又は7に記載されたレジストパターン形成方法において、
    前記現像は、乳酸エチル(EL)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピオン酸エチル、酢酸−nブチル、2−ヘプタノン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの内の少なくとも一種を含む現像液を用いて行われる
    レジストパターン形成方法。
  9. 請求項6から8の内のいずれか一つに記載されたレジストパターン形成方法を用いてレジストパターンを形成するステップと、
    前記レジストパターンをマスクとして前記基板に対する加工を行うステップ
    とを具備する
    微細加工方法。
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