JP4998874B2 - 炎症性疾患の判定方法 - Google Patents
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(1)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の5338番目の塩基におけるC/Tの多型、
(2)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の8813番目の塩基におけるG/Aの多型、
(3)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の9186番目の塩基におけるG/Aの多型、
(4)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11093番目の塩基におけるG/Aの多型、
(5)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11741番目の塩基におけるG/Aの多型、
(6)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の12311番目の塩基におけるC/Tの多型、及び
(7)上記(1)から(6)に記載の多型と連鎖不平衡係数D’が0.8以上の連鎖不平衡状態にある多型。
(1)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の5338番目の塩基におけるC/Tの多型、
(2)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の8813番目の塩基におけるG/Aの多型、
(3)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の9186番目の塩基におけるG/Aの多型、
(4)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11093番目の塩基におけるG/Aの多型、
(5)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11741番目の塩基におけるG/Aの多型、
(6)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の12311番目の塩基におけるC/Tの多型、及び
(7)上記(1)から(6)に記載の多型と連鎖不平衡係数D’が0.8以上の連鎖不平衡状態にある多型。
(1)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の5338番目の塩基におけるC/Tの多型、
(2)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の8813番目の塩基におけるG/Aの多型、
(3)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の9186番目の塩基におけるG/Aの多型、
(4)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11093番目の塩基におけるG/Aの多型、
(5)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11741番目の塩基におけるG/Aの多型、
(6)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の12311番目の塩基におけるC/Tの多型、及び
(7)上記(1)から(6)に記載の多型と連鎖不平衡係数D’が0.8以上の連鎖不平衡状態にある多型。
好ましくは、炎症性疾患は心筋梗塞である。
好ましくは、検出はゲルシフトアッセイにより行われる。
本発明によればまた、配列番号1に記載の塩基配列からなる遺伝子が提供される。
本発明によればまた、配列番号2から5の何れかに記載の塩基配列からなる遺伝子が提供される。
本発明の方法は、炎症性疾患と関連性を示す特定遺伝子に存在する遺伝子多型、特には一塩基多型(SNPs)を検出することによって、炎症性疾患の発症の有無、あるいは炎症性疾患の発症の可能性を判定する方法である。
上記の特定遺伝子とは、配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子であって、遺伝子多型は、この遺伝子を含むゲノムDNAのエクソン又はイントロンに存在する。
(1)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の5338番目の塩基におけるC/Tの多型、
(2)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の8813番目の塩基におけるG/Aの多型、
(3)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の9186番目の塩基におけるG/Aの多型、
(4)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11093番目の塩基におけるG/Aの多型、
(5)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11741番目の塩基におけるG/Aの多型、
(6)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の12311番目の塩基におけるC/Tの多型、及び
(7)上記(1)から(6)に記載の多型と連鎖不平衡係数D’が0.8以上の連鎖不平衡状態にある多型。
[式中、Min[(PAB+PaB)(PaB+Pab),(PAB+PAb)(PAb+Pab)]は、(PAB+PaB)(PaB+Pab)と(PAB+PAb)(PAb+Pab)とのうち、値の小さい方をとることを意味する。]
本発明では、好ましくは、連鎖不平衡係数D'が0.8以上、より好ましくは0.95以上、さらに好ましくは0.99以上、最も好ましくは1である多型を用いることができる。
遺伝子多型の検出の対象は、ゲノムDNAが好ましいが、場合によっては(つまり多型部位及びその隣接領域の配列がゲノムと同一または完全相補的になっている場合)cDNA、又はmRNAを使用することもできる。また、上記対象を採取する試料としては、任意の生物学的試料、例えば血液、骨髄液、精液、腹腔液、尿等の体液;肝臓等の組織細胞;毛髪等の体毛等が挙げられる。ゲノムDNA等は、これらの試料より常法に従い抽出、精製し、調製することができる。
遺伝子多型を検出するにあたっては、まず遺伝子多型を含む部分を増幅する。増幅は、例えばPCR法によって行われるが、他の公知の増幅方法、例えばNASBA法、LCR法、SDA法、LAMP法等で行ってもよい。
遺伝子多型の検出は、一の対立遺伝子型に特異的なプローブとのハイブリダイゼーションにより行うことができる。プローブは、必要に応じて、蛍光物質や放射性物質等の適当な手段により標識してもよい。プローブは、前記の一塩基多型部位を含み、被検試料とハイブリダイズし、採用する検出条件下に検出可能な程度の特異性を与えるものである限り何等限定はない。プローブとしては、例えば配列番号1又は2に示す配列における、前記の一塩基多型部位を含む連続する少なくとも10塩基以上、好ましくは10〜100塩基の配列、より好ましくは10〜50塩基の配列、又はそれらの相補配列にハイブリダイズすることのできるオリゴヌクレオチドを用いることができる。また、一塩基多型部位がプローブのほぼ中心部に存在するようにオリゴヌクレオチドを選択するのが好ましい。該オリゴヌクレオチドは、プローブとして機能し得る限り、即ち、目的の対立遺伝子型の配列とハイブリダイズするが、他の対立遺伝子型の配列とはハイブリダイズしない条件下でハイブリダイズする限り、その配列において1又はそれ以上の置換、欠失、付加を含んでいてもよい。また、プローブには、RCA(rolling circle amplification)法による増幅に用いられる一本鎖プローブ(パドロックプローブ)のように、ゲノムDNAとアニールし、環状になることによって上記のブロープの条件を満たすプローブが含まれる。
前記のプライマー又はプローブとしてのオリゴヌクレオチドは、これを含む炎症疾患診断用キットとして提供できる、キットは、上記遺伝子多型の分析法に使用される制限酵素、ポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸、標識、緩衝液等を含んでいてもよい。
本発明によればまた、配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11741番目の塩基におけるG/Aの一塩基多型を検出することによって、MIAT遺伝子の発現状態を分析することができる。即ち、MIAT遺伝子の11741番目の塩基がGである場合は、MIAT遺伝子の発現量が多いと判断でき、MIAT遺伝子の11741番目の塩基がAである場合は、MIAT遺伝子の発現量が少ないと判断できる。
本発明によればまた、配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11741番目の塩基におけるG/Aの一塩基多型を含むMIAT遺伝子断片を細胞に導入し、該細胞を培養し、該遺伝子の発現を分析することによってMIAT遺伝子の転写活性を測定することができる。
本発明においては、配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11741番目の塩基におけるG/Aの一塩基多型を含むMIAT遺伝子断片を細胞に導入し、MIAT遺伝子の転写活性を促進する候補物質の存在下で該細胞を培養し、該遺伝子の発現を分析することによって、MIAT遺伝子の転写活性促進物質をスクリーニング方法することができる。
例えば、MIAT遺伝子の発現量が有意に低いことが認められる一塩基多型(例えば、配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11741番目の塩基がAである場合)を有する遺伝子の下流にレポーター遺伝子を挿入した系を導入した細胞を候補物質の存在下又は非存在下の両方の場合について培養し、候補物質の存在下で培養を行った場合にレポーター活性が上昇すれば、その候補物質は、MIAT遺伝子の転写活性促進物質として選択することができる。
候補物質としては任意の物質を使用することができる。候補物質の種類は特に限定されず、個々の低分子合成化合物でもよいし、天然物抽出物中に存在する化合物でもよく、あるいは化合物ライブラリー、ファージディスプレーライブラリー、コンビナトリアルライブラリーでもよい。候補物質は、好ましくは低分子化合物であり、低分子化合物の化合物ライブラリーが好ましい。化合物ライブラリーの構築は当業者に公知であり、また市販の化合物ライブラリーを使用することもできる。
本発明においてはまた、配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11741番目の塩基におけるG/Aの一塩基多型を含む遺伝子断片とMIAT遺伝子の転写制御因子の存在が予想される試料を接触させ、上記断片と転写制御因子との結合を検出することによって、MIAT遺伝子の転写制御因子をスクリーニングすることができる。前記の一塩基多型を含む遺伝子断片とMIAT遺伝子の転写制御因子の存在が予想される物質との結合の検出は、ゲルシフト法(電気泳動移動度シフト解析: electrophoretic mobility shift assay, EMSA)、DNase I フットプリント法等によって行うことがきるが、ゲルシフト法が好ましい。ゲルシフト法では、タンパク質(転写制御因子)が結合すると、分子サイズが大きくなり電気泳動におけるDNAの移動度が低下するので、32Pで標識した遺伝子断片と転写制御因子を混ぜ、ゲル電気泳動にかける。オートラジオグラフィーでDNAの位置を見ると、因子の結合したDNAはゆっくり動くので、通常のバンドよりも遅れて移動するバンドとして検出される。
本発明においては、以下の実施例で示す通り、心筋梗塞患者では、配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11741番目の塩基がAとなる確率が高く、これによりMIAT遺伝子の発現が抑制されていることが示された。この結果は、MIAT遺伝子が、心筋梗塞等の炎症性疾患の発症、進展に関与していることを示していると共に、MIAT遺伝子の発現や活性を抑制することによる心筋梗塞等の炎症性疾患の治療が期待できる。また、MIAT遺伝子の活性を促進するための手段としては、例えば、MIAT遺伝子の発現を促進する物質などを用いることができる。
本発明では、炎症性疾患では、MIAT遺伝子の発現又は活性の抑制が関与していることが示されたことにより、MIAT遺伝子の発現又は活性を促進させる物質は、炎症性疾患の治療薬として有用であることが判明した。本発明によればさらに、MIAT遺伝子の発現又は活性を低下させる物質をスクリーニングする方法が提供される。上記スクリーニングの一例としては、細胞と候補物質とを接触させる工程、細胞内におけるMIAT遺伝子の発現量を分析する工程、及び候補物質の非存在下の条件と比較して当該遺伝子の発現量を促進させる候補物質を炎症性疾患の治療薬として選択する工程により行うことができる。また、上記スクリーニングの別の例としては、MIAT遺伝子と候補物質とを接触させる工程、MIATの活性を測定する工程、及び候補物質の非存在下の条件と比較してMIATの活性を低下させる候補物質を炎症性疾患の治療薬として選択する工程により行うことができる。
炎症性疾患治療薬にはその作用機序が完全には明らかになっていないものも多い。本発明は、MIAT遺伝子が炎症性疾患の原因遺伝子の一つである可能性を示唆するが、現在市販されている炎症性疾患治療薬の中にはMIAT遺伝子(以下「当該遺伝子」)に直接あるいは間接的に作用するものも、全く作用しないものも含まれていると考えられる。
配列番号1に記載の塩基配列からなる遺伝子(本明細書においてはMIAT遺伝子と称するる)も本発明の範囲内である。また、配列番号1に記載の塩基配列からなるMIAT遺伝子の4種のスプライシングバリアントである配列番号2から5の何れかに記載の塩基配列からなる遺伝子も本発明の範囲内である。配列番号1から5に記載の塩基配列からなる遺伝子は、生体中の該遺伝子を増幅し、本明細書に記載した遺伝子多型を検出することにより、炎症性疾患の判定や診断を行うのに有用である。また、配列番号1から5に記載の塩基配列からなる遺伝子は、本発明による炎症性疾患の判定方法においてプローブ又はプライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの設計や製造のためにも有用である。また、本明細書中に上記した通り、配列番号1から5に記載の塩基配列からなる遺伝子は、MIAT遺伝子の転写活性促進物質のスクリーニング又は炎症性疾患の治療薬のスクリーニングを行う場合の標的遺伝子としても有用である。
(1)材料および方法
(1−1)DNA試料
本試験には、大阪急性冠動脈症候群研究会(OACIS、大阪の心臓救急病院25施設が参加)に紹介された日本人心筋梗塞患者3,464名が含まれる。心筋梗塞の確定診断は既報の通りである(Ohnishi Y et al. (2000) Hum.Genet. 106(3): 288-292、及びOzaki K et al. (2002) Nat.Genet. 32: 650-654)。対照とした被験者は、日本国内の医療施設数カ所で募集した一般集団3,819名から構成された。標準プロトコールに従い、これらの試料からDNAを調製した。被験者はすべて日本人であり、横浜の独立行政法人理化学研究所(理研)遺伝子多型研究センターの当該倫理委員会によって承認された手順に従い、被験者本人または被験者の親(被験者が20歳未満の場合)が本試験に参加するための同意文書を提出した。
PCRプライマー、PCR実験、DNA抽出、DNA配列決定、およびSNPの遺伝子型解析は既報の方法で行った(Iida A. (2001) J Hum Genet 46: 668-683)。SNPの発見には日本人集団24名のゲノムDNAを用い、実験はアプライドバイオシステムズ社(米国、カリフォルニア州、フォスターシティ)製ABI3700型キャピラリーシーケンサーを用いてダイレクトシーケンス法により行った。
相関性とハーディ・ワインベルグ平衡はχ2検定により評価した(Yamada Y et al. (2001) Am. J. Hum. Genet. 68(3): 674-685; 及びOzaki K et al. (2002) Nat.Genet. 32: 650-654)。ダイナコム社(日本、千葉)製SNPAlyzeおよびHaploview v3.2を用いて、ハプロタイプブロックおよびハプロタイプ頻度を推定した。
既報のハプロタイプブロックの構造(Haga H. et al (2002) J.Hum.Genet. 47: 605-610;及びTsunoda T et al. (2004) Hum.Mol.Genet. 13: 1623-1632)に基づいてJSNPデータベースから選択した52,608遺伝子に存在するSNPについて、高速大量処理マルチPCRインベーダーアッセイ法(Ohnishi Y et al. (2001) J.Hum.Genet. 46: 471-477)により、心筋梗塞患者188名および日本人一般集団752名を対象に相関性を検討する大規模症例対照研究を行った。この一次スクリーニングにより、22番染色体(22q12.1)に位置するFLJ25967(GenBankアクセッション番号、AK098833)で1個のSNP(rs2301523)を同定した。このSNPは心筋梗塞と相関性があることが明らかになった(P = 0.0006)。心筋梗塞患者3,464名および一般集団3,819名を対象にこのSNPについてさらに詳細に検討したところ高い相関性が認められ、χ2値は22.71(P = 0.0000019;アレル頻度の比較)、オッズ比は1.36(95%信頼区間(CI);1.32〜2.15、表2)であった。
(1)方法
(1−1)ノーザンブロット解析
クロンテック社(米国、カリフォルニア州、パロアルト)製ヒトMTN多組織ノーザンブロットをプレハイブリダイズした後、α-[32P]-dCTPで標識したcDNAフラグメント(表5のプライマー対を用いてPCRで調製したもの)をプローブとしてハイブリダイズさせた。洗浄したメンブレンのオートラジオグラフィーを-80℃で7日間実施した。
遺伝子特異的なリンカープライマー、ランダムヘキサマーリンカープライマー、市販のオリゴ(dT)リンカープライマー、およびストラタジーン社(米国、カリフォルニア州、ラ・ホーヤ)製ZAP cDNA synthesis kitを用いて、メーカーのプロトコールに従ってヒト胎児脳cDNAライブラリーを作製した。このライブラリーをノーザン実験と同一のプローブでスクリーニングした。陽性クローンを選択し、メーカーのプロトコールに従って、それらのインサートcDNAをin vivoでpBluescript II SK (-)(ストラタジーン社製)に組み込んだ。欠失している5'末端領域または3'末端領域を得るため、メーカーのプロトコールに従って、Marathon cDNA増幅キット及びBD SMARTTM RACE cDNA増幅キット(クロンテック社製)の組み合わせを用いてcDNA末端の迅速増幅(RACE)を行った。完全長cDNAを得るためのプライマーは表5に示した。配列決定はアプライドバイオシステムズ社製ABI3700型キャピラリーシーケンサーを用いて行った。
FLJ25967(1713塩基対)には長いオープンリーディングフレーム(ORF)は含まれないと考えられたので、まず、胎児4検体およびヒト成人組織16検体でのFLJ25967の発現をノーザンブロット解析により検討した。図1に示すように、長さが約10 kbの転写産物のシグナルは胎児脳および脳で顕著に検出されたが、脾臓、末梢血白血球、肺、肝臓、胸腺、結腸および小腸でもこのシグナルは検出された。FLJ25967には完全長の遺伝子が含まれないことは明らかであったので、胎児脳cDNAライブラリーのスクリーニングを行い、5'- and 3'-RACE法も数回行った。最終的に、完全長の遺伝子を同定することができ、この遺伝子をMIATと命名した。MIATには4つのスプライシングバリアント(配列番号2から5、各スプライシングバリアントの長さは10142、10016、10068および9942ヌクレオチド)が存在する。各バリアントはポリアデニル化シグナルを有し、その下流の3'末端にはポリA配列が続く。しかし、この遺伝子にも長いORFは含まれていないと考えられた。最も長いORFでも149アミノ酸をコードする447塩基であった(図2b)。BLASTプログラムを用い、公開されているデータベースの既知の遺伝子とこのORFとを比較したが、類似性を見出すことはできなかった。転写産物が実際にタンパク質に翻訳されているのか否かを検討するため、4つのバリアントそれぞれについて、in vitro翻訳アッセイを実施したが、翻訳産物を検出することはできなかった。この結果は、MIATがmRNA様の非コードRNAであることを示している。
この遺伝子座のその他のSNPが心筋梗塞のリスクをもたらす可能性を検討するため、この領域のSNPについて網羅的に検討した(繰り返し配列に相当するものは除く)。日本人集団24名のゲノムDNAをダイレクトシーケンスすることにより、計60個のSNPを同定した。そのうち14個は新規のSNPであり、dbSNPデータベースに登録されていなかった(Build 126、表1)。次に、この領域の厳密なハプロタイプ構造を検討するため、マイナーアレル頻度が5%を上回るSNPを選択した。また、互いに完全な連鎖不平衡であった一群のSNPからは1個のSNPのみを選択した。心筋梗塞患者96名について、Haploview software(http://hapmap.org)を用いてこれら35個のSNPの遺伝子型を解析し、rs2301523を含むハプロタイプブロック1カ所を同定した(図3)。
(1)方法
(1−1)ルシフェラーゼアッセイ
ゲノムDNAを鋳型として用いてPCRによりC22orf35のSNPを含むDNAフラグメントをPCRにより増幅し、5’−3’の向きでプロメガ社(米国、マディソン)製pGL3-promoter vectorにクローニングした。ルシフェラーゼ構築物のクローニングに使用したプライマーを表5に示す。HEK293細胞(RIKEN Cell Bank、日本、和光市)を、10%ウシ胎児血清を添加したダルベッコ改変イーグル培地で培養した。その後、メーカーのプロトコールに従ってルシフェラーゼアッセイを行った。トランスフェクションから24時間後に細胞をpassive lysis buffer(プロメガ社製)で溶解した後、デュアル−ルシフェラーゼレポーターアッセイシステム(プロメガ社製)でルシフェラーゼ活性を測定した。
既報の方法(Andrews NC et al. (1991) Nucleic Acid Res 19(9):2499)でHEK293細胞から核抽出物を調製し、ロシュ社(ドイツ、マンハイム)製DIGゲルシフトキット、2ndジェネレーションを用いて、ジゴキシゲニン-11-ddUTPで標識した33bpのオリゴヌクレオチドを添加してインキュベートした。反応は1/10量のPoly [d(I-C)]存在下で行った。EMSAに用いたオリゴヌクレオチドを表5に示す。競合実験として、核抽出物を非標識オリゴヌクレオチド(200倍の過剰量)とプレインキュベートした後、ジゴキシゲニンで標識したオリゴヌクレオチドを添加した。6%非変性ポリアクリルアミドゲルを用い、0.5 x TBE(Tris-Borate-EDTA)バッファーで泳動してタンパク質−DNA複合体を分離した。メーカーのプロトコールに従い、ゲルをニトロセルロース膜に転写して、化学発光検出システム(ロシュ社製)でシグナルを検出した。
MIATは非コードRNAであると考えられた。6個のSNPが転写調節に及ぼす影響を検討するため、HEK293細胞を用いてルシフェラーゼアッセイを行った。図4aに示すように、エクソン5における11741 Gアレルを含むクローンでは、Aアレルを含むクローンまたはベクターのみを含むクローンと比べて、転写活性が約1.3倍に増加した。しかし、残りの5個のSNPでは差は認められなかった(図4a)。次に、核内因子がエクソン5における11741のSNP周辺のゲノム配列に結合するか否かを検討するため、この配列内に既知の転写因子の結合モチーフが存在しないかどうかを検討した。結合モチーフであると予想される配列が存在しなかったため、MIATのエクソン5における11741のGアレルおよびAアレルに相当するオリゴヌクレオチドへのHEK293細胞からの核抽出物の結合について検討した。図4bに示すように、HEK293細胞に含まれる転写因子に対してAアレルはより強く結合した。
(1)方法
EBVでトランスフォームしたB細胞(HEV:5個のSNPがヘテロ接合型)のcDNAを用いて、5個のSNP(エクソンに位置する)を含む領域を増幅した。構築したプライマーに相当する2つのフラグメントをpBluescript II SK (+) にクローニングした。使用したプライマーを表5に示す。クローニングしたベクターをQIAGENを用いて精製し、MEGAscript High yield transcription kit(T3 kit)(Ambion社製)のプロトコールに従って転写実験を行った。転写産物3μlおよび全細胞抽出物(蒸留水で20倍に希釈したもの)3μlを用いて、Suzuki S. et al (2003) Nat.Genet.34(4): 395-402;及びYang T (2003) J.Biol.Chem. 278:15291-15296に記載の方法に従ってRNA安定性アッセイを行った。反応時間はそれぞれ、0、10、20、30、および40分間とし、室温で反応させた。
既報の研究では、エクソン内のSNPおよびハプロタイプはmRNAの安定性に関与していた(Suzuki S. et al (2003) Nat.Genet.34(4): 395-402;及びYang T (2003) J.Biol.Chem. 278:15291-15296)。心筋梗塞と有意な相関性を示す6個のSNPのうち5個(エクソン3の8813 G>A、エクソン3の9186 G>A、エクソン5の11093 G>A、エクソン5の11741 G>A、およびエクソン5の12311 C>T)がmRNAの安定性に影響を及ぼす可能性を検討するため、HEK293細胞を用いてRNA安定性アッセイを行った(Suzukiら 2003)。低頻度のハプロタイプに相当する構築物は高頻度のハプロタイプと比較してmRNAの分解が速い傾向があったが、統計的な有意差はなかった(図5)。
Claims (7)
- 下記の(1)から(6)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の一塩基多型を検出することを含む、心筋梗塞の罹患危険性の予想方法。
(1)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の5338番目の塩基におけるC/Tの多型、
(2)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の8813番目の塩基におけるG/Aの多型、
(3)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の9186番目の塩基におけるG/Aの多型、
(4)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11093番目の塩基におけるG/Aの多型、
(5)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11741番目の塩基におけるG/Aの多型、
(6)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の12311番目の塩基におけるC/Tの多型。 - 下記の(1)から(6)よりなる群から選ばれる少なくとも1つの部位を含む連続する少なくとも10塩基の配列、又はその相補配列にハイブリダイズすることができ、請求項1に記載の方法においてプローブとして用いるオリゴヌクレオチドの1種以上を含む、心筋梗塞疾患診断用キット。
(1)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の5338番目の塩基におけるC/Tの多型、
(2)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の8813番目の塩基におけるG/Aの多型、
(3)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の9186番目の塩基におけるG/Aの多型、
(4)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11093番目の塩基におけるG/Aの多型、
(5)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11741番目の塩基におけるG/Aの多型、
(6)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の12311番目の塩基におけるC/Tの多型。 - 下記の(1)から(6)よりなる群から選ばれる少なくとも1つの部位を含む連続する少なくとも10塩基の配列、及び/又はその相補配列を増幅することができ、請求項1に記載の方法においてプライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの1種以上を含む、心筋梗塞疾患診断用キット。
(1)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の5338番目の塩基におけるC/Tの多型、
(2)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の8813番目の塩基におけるG/Aの多型、
(3)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の9186番目の塩基におけるG/Aの多型、
(4)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11093番目の塩基におけるG/Aの多型、
(5)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11741番目の塩基におけるG/Aの多型、
(6)配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の12311番目の塩基におけるC/Tの多型。 - 配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11741番目の塩基におけるG/Aの一塩基多型を検出することを含む、MIAT遺伝子の発現状態の分析方法。
- 配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の11741番目の塩基におけるG/Aの一塩基多型を含むMIAT遺伝子断片を細胞に導入し、MIAT遺伝子の転写活性を促進する候補物質の存在下で該細胞を培養し、該遺伝子の発現を分析することを含む、MIAT遺伝子の転写活性促進物質のスクリーニング方法。
- 細胞と候補物質とを接触させる工程、細胞内における配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の発現量を分析する工程、及び候補物質の非存在下の条件と比較して当該遺伝子の発現量を増加させる候補物質を心筋梗塞の治療薬として選択する工程を含む、心筋梗塞の治療薬のスクリーニング方法。
- 配列番号1に記載の塩基配列を有するMIAT遺伝子の発現状態を、心筋梗塞治療薬の存在下及び非存在下で比較観察する工程を含む、心筋梗塞治療薬の作用機序の確認方法。
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