JP5818194B2 - ヒト染色体5p15.3上の一塩基多型に基づく動脈硬化性疾患の検査方法 - Google Patents
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Description
(1)ヒト染色体5p15.3上に存在する一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて動脈硬化性疾患を検査する方法。
(2)前記一塩基多型が、配列番号1〜3のいずれかの塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基、または該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基における多型である、(1)に記載の方法。
(3)前記動脈硬化性疾患が冠動脈疾患である、(1)または(2)に記載の方法。
(4)前記冠動脈疾患が心筋梗塞または狭心症である、(3)に記載の方法。
(5)配列番号1〜3のいずれかの塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む10塩基以上の配列、又はその相補配列を有する動脈硬化性疾患検査用プローブ。
(6)配列番号1〜3のいずれかの塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む領域を増幅することのできる動脈硬化性疾患検査用プライマー。
本発明の検査方法は、ヒト第5染色体短腕領域p15.3上の一塩基多型を分析し、該分析結果(当該塩基が疾患感受性アレルか否か)に基づいて動脈硬化性疾患の発症を検査する方法である。動脈硬化性疾患としては、脳梗塞、脳出血などの脳動脈における動脈硬化性疾患;心筋梗塞や狭心症などの冠動脈における動脈硬化性疾患(冠動脈疾患);大動脈瘤、大動脈解離などの大動脈における動脈硬化性疾患;腎硬化症やそれによる腎不全などの腎動脈における動脈硬化性疾患;閉塞性動脈硬化症などの末梢動脈における動脈硬化性疾患が挙げられる。なお、本発明において、「検査」とは動脈硬化性疾患の発症リスクの検査及び発症の有無の検査を含む。
rs490556はGenBank Accession No. NT_006576.15の4012650番目の塩基におけるチミン(T)/シトシン(C)の多型を意味し、この塩基がTである場合は動脈硬化性疾患発症の可能性が高い。また、対立遺伝子を考慮して解析した場合は、TT>TC>CCの順で動脈硬化性疾患発症の可能性が高い。
rs521660はGenBank Accession No. NT_006576.15の4025932番目の塩基におけるグアニン(G)/アデニン(A)の多型を意味し、この塩基がGである場合は動脈硬化性疾患発症の可能性が高い。また、対立遺伝子を考慮して解析した場合は、GG>GA>AAの順で動脈硬化性疾患発症の可能性が高い。
これらの塩基に相当する塩基を本発明においては解析する。ここで、「相当する」とは、ヒト染色体5p15.3上の上記配列を有する領域中の該当塩基を意味し、仮に、人種の違いなどによって上記配列がSNP以外の位置で若干変化したとしても、その中の該当塩基を解析することも含む。
また、LAMP法(特許第3313358号明細書)、NASBA法(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification;特許2843586号明細書)、ICAN法(特開2002-233379号公報)などによって増幅の有無を調べることもできる。その他、単鎖増幅法を用いてもよい。
ハイブリダイゼーションの有無を調べることによって多型の種類を解析することも可能である。すなわち、各塩基に対応するプローブを用意し、いずれのプローブにハイブリダイズするかを調べることによってSNPがいずれの塩基であるかを調べることもできる。
このようにしてSNPがいずれの塩基であるかを決定することで、動脈硬化性疾患を検査するためのデータを得ることができる。
本発明はまた、動脈硬化性疾患発症リスクを検査するためのプライマーやプローブなどの検査試薬を提供する。このようなプローブとしては、ヒト染色体5p15.3上の上記多型部位を含み、ハイブリダイズの有無によって多型部位の塩基の種類を判定できるプローブが挙げられる。具体的には、配列番号1〜3において塩基配列の61番目の塩基を含む配列、又はその相補配列を有する10塩基以上の長さのプローブが挙げられる。プローブの長さはより好ましくは、15〜35塩基であり、さらに好ましくは20〜35塩基である。
上記多型部位をシークエンシングするためのプライマーとしては、上記塩基の5’側領域、好ましくは30〜100塩基上流の配列を有するプライマーや、上記塩基の3’側領域、好ましくは30〜100塩基下流の領域に相補的な配列を有するプライマーが例示される。PCRによる増幅の有無で多型を判定するために用いるプライマーとしては、上記塩基を含む配列を有し、上記塩基を3’末端側に含むプライマーや、上記塩基を含む配列の相補配列を有し、上記塩基の相補塩基を3’ 末端側に含むプライマーなどが例示される。
なお、本発明の検査用試薬はこれらのプライマーやプローブに加えて、PCR用のポリメラーゼやバッファー、ハイブリダイゼーション用試薬などを含むものであってもよい。
(1)材料および方法
(1−1)DNA試料
ゲノムワイド相関解析とそれに続く2次解析のためには、Bio-Bank Japanプロジェクト(http://biobankjp.org/)に登録された心筋梗塞患者と対照者のサンプルを用いた。3次および4次の集団の特徴は、対照サンプルとしてさらにHealth Science Research Resource Bankから購入した1235サンプルを用いたこと以外は、Nat Genet. 38, 921-925 (2006)およびNat Genet. 41, 329-333 (2009)に記載されたとおりである。
なお、解析された心筋梗塞患者は、(i)30分以上の胸部圧迫感、痛み、胸苦しさなどの病歴を持つ、(ii)少なくとも1の標準誘導又は2の胸部誘導において0.1mVより大きいSTセグメントの上昇を示す、(iii)血清クレアチンキナーゼ濃度が標準値の2倍以上に上昇する、の3つの条件(Nat Genet. 32 (4):650-4. 2002)のうち2つ以上を満たすことによって心筋梗塞であると診断された患者である。
狭心症のサンプルもまた、Bio-Bank Japanに登録されたものを用いた。狭心症は、J Am Coll Cardiol36,970-1062(2000)に記載の基準に従って診断した。
被験者はすべて日本人であり、独立行政法人理化学研究所(理研)ゲノム医科学研究センターの当該倫理委員会によって承認された手順に従い、被験者本人または被験者の親(被験者が20歳未満の場合)が本試験に参加するための同意文書を提出した。
ゲノムワイド相関解析および2次スクリーニングのジェノタイピング法はNat Genet. 40
(9):1098-1102(2008)に記載された方法に従った。3次及び4次スクリーニングにおいては、J Hum Genet 46: 471-477(2001)およびNat Genet. 32 (4):650-654.(2002)に記載のマルチプレックス-PCRインベーダーアッセイによりジェノタイピングを行った。
ハプロタイプブロックとハプロタイプ頻度は、Haploview v4.0(Bioinfomatics 21, 263-265 (2005))により解析した。そして、Haploviewソフトウェア(Bioinfomatics 21, 263-265 (2005))を用い、ペアワイズタギングモードでタグSNPを選択し、ハプロタイプ解析の並べ替え検定に適用した。
また、THESIASプログラム(Tregouet et al. 2007)と、赤池の情報量基準(AIC):AIC=−2x(条件付き対数尤度の最大値)+2x(パラメータの数)を用いた条件付き対数尤度を使い、ハプロタイプ分析を行った。パラメータの数として、各々のモデルで用いられた、頻度>0.01であるアレル/ハプロタイプの数を用いた。SNPのロジスティック回帰分析において、まず、自由度1(1-d.f.)の相乗的アレル効果モデル(multiplicative allelic effect model)と自由度2(2-d.f.)の全遺伝子型モデル(full genotype model)のどちらが妥当かどうかを決定するために、自由度1(1-d.f.)の尤度比検定を行った(Bioinfomatics 23(8), 1038-1039 (2007))。全遺伝子型モデルからは有意差が見られなかったため(P>0.05)、我々は相乗的アレル効果モデルを前提とした。次に、forwardロジスティック回帰分析を行い、最も有意なSNPがSNPセット間における関連性のモデルとして十分であるかを分析することから始めた。このため、追加のSNPsに対する相乗的アレル効果を前提として、残りの各々のSNPsをモデルに加えるため、自由度1の(1-d.f.)尤度検定を用いた。患者の臨床プロフィールと遺伝子型情報の関係は一方向ANOVA及びχ2検定を用い評価した。
<ゲノムワイド相関解析>
まず、Bio-bank Japanに登録されている194人の心筋梗塞患者(Cases)と1,539人の対照者(Controls)につき、268,068個のSNPsを解析した(ゲノムワイド相関解析:1次解析)。その結果、210,785個のSNPsについてジェノタイプ情報が得られ、その中から、P<0.02の8,740個のSNPsについて2次スクリーニングを行った。
2次スクリーニングでは、1,394人の心筋梗塞患者と1,388人の対照者を解析し、7,374個のSNPsについてデータを得ることができた。そして、その中で、Bonferroni補正後の統計的有意性(カットオフP<0.0000068)を示す2つのSNPsを同定した。その中の1つはNat Genet. 41, 329-333 (2009)において既報のSNPであった。もう一つは、P=1.8x10-6を示す染色体5p15.3のSNP(rs11748327)であった。このSNPにつき、3次(心筋梗塞患者1,500人、対照1,356人)および4次(心筋梗塞患者2,283人、対照3,439人)スクリーニングを行った。
結果を表2に示す。
rs11748327は、HapMap JPTデータ(http://www.hapmap.org; The International HapMap Consortium 2005)によれば、マイナーアレル頻度20%以上のSNPsによって構成される約250kbの連鎖不平衡(LD)ブロックに位置する(図1)。このブロックに心筋梗塞に相関する別のSNPが存在するかを調べるため、rs11748327に加えて、マイナーアレル頻度が5%より大きく、r2の閾値0.8の15個のSNPsを選択した。上記3次クリーニングのサンプルを用いてこれらのSNPsを解析したところ、rs490556とrs521660が、Bonferroni補正後、心筋梗塞と有意な相関を示すことがわかった(表3)。
さらに上記4次クリーニングのサンプルを用いてこれらのSNPsを解析したところ、これらのSNPsは心筋梗塞と有意な相関を示すことが確認された(表4)。
次に、これら3つのSNPsのハプロタイプと心筋梗塞の相関をTHESIAS(Bioinfomatics 23(8), 1038-1039 (2007))によって調べた。その結果、1番目と2番目に頻度の高いハプロタイプが心筋梗塞と強い相関を示すことがわかった(表5)。
次に、上記3つのSNPsについて、2773人の不安定狭心症(重度の臨床症状を示す狭心症)患者のサンプルを解析し、上記3次および4次スクリーニングで用いた対照者サンプルと比較した。
その結果、表4(UA vs Combined CO:狭心症vsコントロール)に示すように、いずれのSNPsも狭心症と有意な相関を示すことがわかった(rs490556 P=1.1x10-4、rs11748327 P=3.4x10-5、rs521660 P=8.7x10-5)。
Claims (5)
- ヒト染色体5p15.3上の配列番号1〜3のいずれかの塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて、
配列番号1の61番目の塩基に相当する塩基がCの場合;
配列番号2の61番目の塩基に相当する塩基がTの場合;又は、
配列番号3の61番目の塩基に相当する塩基がGの場合、
動脈硬化性疾患の発症リスクが高いと判定される、動脈硬化性疾患を検査する方法。 - 前記動脈硬化性疾患が冠動脈疾患である、請求項1に記載の方法。
- 前記冠動脈疾患が心筋梗塞または狭心症である、請求項2に記載の方法。
- 配列番号1〜3のいずれかの塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む10塩基以上の配列、又はその相補配列を有するプローブを含む、動脈硬化性疾患検査用試薬。
- 配列番号1〜3のいずれかの塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む領域を増幅することのできるプライマーセットと、配列番号1〜3のいずれかの塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む10塩基以上の配列、又はその相補配列を有するプローブを含む、動脈硬化性疾患検査用試薬。
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