JP4688492B2 - 炎症性疾患の判定方法 - Google Patents
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Description
共通の遺伝的変異は、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病に罹患する危険性と顕著に関連していることが知られている(Risch,N.,et al.,Science,273,1516−1517,1996;Collins,F.S.,et al.,Science,278,1580−1581,1997;Lander,E.S.,et al.,Science,274,536−539,1996)。多遺伝子性疾患の感受性遺伝子を同定するには、「連鎖」を利用する方法と、「関連」を利用する方法がある。連鎖解析では、疾患感受性遺伝子の座位と遺伝マーカー(主としてマイクロサテライト)の座位が連鎖しているかを検出する、すなわち遺伝子座位間の関係を調べるのに対して、関連解析では特定の遺伝マーカー(主として一塩基多型:SNP)のどの型(アレル:対立遺伝子)が疾患と関連しているかを検出する、つまり対立遺伝子間の関係を調べる。従って、共通の変異をマーカーとして用いる関連解析は疾患関連遺伝子の局在に対する連鎖解析のよりもずっと強力といえる。一塩基多型(SNPs)は、疾患易罹患性や薬剤反応性に関連する遺伝子を探索する際の有用な多型マーカーとなる。SNPsは、遺伝子産物の質や量に直接影響を与えたり、ある疾患や薬剤による重篤な副作用に対する危険性を増やすことがある。よって、多くのSNPsを探索することにより、疾患関連遺伝子の同定や薬剤による副作用を避ける診断方法の確立に寄与できることを期待される。
ヒト染色体6p21上の約130kbの領域には、リンホトキシン−α(LT−α)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、LST1、1C7、アログラフト炎症因子−1(AIF−1:allograft inflammatory−factor−1)、I kappa B−like protein(IKBL)、V−ATPase G−subunit like protein(ATP6G)、BAT1、MICB及びp5−1が存在している。LT−α(TNF−βとしても知られる)は血管炎症過程の最初の段階に生産されるサイトカインの一つで、βシート構造がサンドイッチ状に重なったホモトリマー構造をとり、インターロイキン−1及び接着分子のような他のメディエーターを誘導することによってサイトカインカスケードを活性する(Ross,R.,N.Engl.J.Med.,340,115−126,1999)。サイトカインのような炎症メディエーターは、アテローマ形成やアテローマ性損傷に関与し、管腔内血栓を誘導することが知られている(Ross,R.,N.Engl.J.Med.,340,115−126,1999)。IKBLは主要組織親和性複合体(NHC)クラスII領域において6p21.3に位置している。IKBLはB細胞におけるκ軽鎖遺伝子のインヒビター(IKB)ファミリータンパク質に類似していると報告されている。IKBファミリーのタンパク質はB細胞内におけるκ軽鎖遺伝子エンハンサーの核因子を阻害する作用を有する。
遺伝子変異と心筋梗塞との関係については、これまでヒトプロスタサイクリン合成酵素遺伝子の多型を分析して心筋梗塞の遺伝的要因を判定する方法(特開2002−136291号公報)などがある。しかしながら、上記の6p21上の約130kbの領域に存在する遺伝子変異と心筋梗塞との関連についてはこれまで報告はない。
本発明者らは上記の課題を解決すべくヒトLT−α、IKBL、及びBAT1遺伝子内のSNPsをそれぞれ約1,000人の心筋梗塞患者群と対照群についてマルチプレックスPCR−インベーダ法によりタイピングし、患者−対照研究(case−control study)による関連解析を行った結果、これらのSNPsの頻度が統計学的に有意に心筋梗塞患者で多いことを同定した。さらに、ルシフェラーゼアッセイ法、リコンビナントプロテインを用いた実験により、これらのSNPsが該遺伝子の転写活性に影響を与え、その結果遺伝子産物量が変化し、この変化が心筋梗塞等の疾患を引き起こす可能性を見出した。本発明はかかる知見により完成されたものである。
すなわち、本発明によれば、リンホトキシン−α(LT−α)遺伝子、I Kappa B−like(IKBL)遺伝子、及びBAT1遺伝子より成る群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子に存在する少なくとも一種の遺伝子多型を検出することを含む、炎症性疾患の判定方法が提供される。
すなわち、本発明によれば、リンホトキシン−α(LT−α)遺伝子、I Kappa B−like(IKBL)遺伝子、及びBAT1遺伝子より成る群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子に存在する少なくとも一種の一塩基多型を検出することを含む、炎症性疾患の判定方法が提供される。
本発明によればまた、下記の(1)から(5)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の一塩基多型を検出することを含む、炎症性疾患の判定方法が提供される。
(1)配列番号1に示すLT−α遺伝子のエキソン1の塩基配列の10番目の塩基におけるG/Aの多型
(2)配列番号2に示すLT−α遺伝子のイントロン1の塩基配列の90番目の塩基におけるA/Gの多型
(3)配列番号3に示すLT−α遺伝子のエキソン3の塩基配列の81番目の塩基におけるC/Aの多型
(4)配列番号4に示すIKBL遺伝子のプロモーターの塩基配列の572番目の塩基におけるT/Aの多型
(5)配列番号5に示すBAT1遺伝子のプロモーターの塩基配列の1228番目の塩基におけるG/Cの多型
本発明によればまた、配列番号3に示すLT−α遺伝子のエキソン3の塩基配列の80番目から82番目の塩基の少なくとも一つが他の塩基に置換されることによって、コードされるアミノ酸がスレオニンからアスパラギンに変異する遺伝子多型を検出することを含む、炎症性疾患の判定方法が提供される。
本発明によればまた、配列番号1から5に示される配列における、前記の(1)から(5)よりなる群から選ばれる少なくとも1つの部位を含む連続する少なくとも10塩基の配列、又はその相補配列にハイブリダイズすることができ、前記判定方法においてプローブとして用いるオリゴヌクレオチドが提供される。
(1)配列番号1に示すLT−α遺伝子のエキソン1の塩基配列の10番目の部位
(2)配列番号2に示すLT−α遺伝子のイントロン1の塩基配列の90番目部位
(3)配列番号3に示すLT−α遺伝子のエキソン3の塩基配列の81番目の部位
(4)配列番号4に示すIKBL遺伝子のプロモーターの塩基配列の572番目の部位
(5)配列番号5に示すBAT1遺伝子のプロモーターの塩基配列の1228番目の部位
本発明によればまた、配列番号1から5に示される配列における、前記の(1)から(5)よりなる群から選ばれる少なくとも1つの部位を含む連続する少なくとも10塩基の配列、及び/又はその相補配列を増幅することができ、前記判定方法においてプライマーとして用いるオリゴヌクレオチドが提供される。
(1)配列番号1に示すLT−α遺伝子のエキソン1の塩基配列の10番目の部位
(2)配列番号2に示すLT−α遺伝子のイントロン1の塩基配列の90番目部位
(3)配列番号3に示すLT−α遺伝子のエキソン3の塩基配列の81番目の部位
(4)配列番号4に示すIKBL遺伝子のプロモーターの塩基配列の572番目の部位
(5)配列番号5に示すBAT1遺伝子のプロモーターの塩基配列の1228番目の部位
さらに、本発明によれば、上記のオリゴヌクレチドの1種以上を含む、炎症性疾患診断用キットが提供される。
本発明の別の側面によれば、前記の(1)から(5)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の一塩基多型を検出することを含む、LT−α、IKBL、又はBAT1の発現状態の分析方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、前記の(1)から(5)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の一塩基多型を含むLT−α、IKBL、又はBAT1遺伝子断片を細胞に導入し、該細胞を培養し、該遺伝子の発現を分析することを含む、LT−α、IKBL、又はBAT1の転写活性の測定方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、前記の(1)から(5)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の一塩基多型を含むLT−α、IKBL、又はBAT1遺伝子断片を細胞に導入し、LT−α、IKBL、又はBAT1の転写活性を阻害する候補物質の存在下で該細胞を培養し、該遺伝子の発現を分析することを含む、LT−α、IKBL、又はBAT1の転写活性阻害物質のスクリーニング方法が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、前記LT−α、IKBL、又はBAT1遺伝子断片の下流にリポーター遺伝子を結合させた転写ユニットを細胞に導入し、該細胞を培養し、リポーター活性を測定することによって該遺伝子の発現を分析する、上記いずれかの方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、前記の(1)から(5)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の一塩基多型を含む遺伝子断片とLT−α、IKBL、又はBAT1の転写制御因子の存在が予想される試料を接触させ、上記断片と転写制御因子との結合を検出することを含む、LT−αの転写制御因子のスクリーニング方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、配列番号2に示すLT−α遺伝子のイントロン1の塩基配列の90番目の塩基におけるC/Aの多型を含む遺伝子断片を接着分子誘導性細胞に導入し、該細胞の接着分子の誘導化能を評価する方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、リンホトキシン−α(LT−α)の発現又は活性を抑制することを含む、炎症性疾患の治療方法が提供される。好ましくは、炎症性疾患は心筋梗塞である。上記方法において好ましくは、リンホトキシン−α(LT−α)に対する抗体を用いる。
本発明のさらに別の側面によれば、リンホトキシン−α(LT−α)の発現又は活性を抑制する物質を有効成分として含む、炎症性疾患の治療薬が提供される。好ましくは、リンホトキシン−α(LT−α)の発現又は活性を抑制する物質は、リンホトキシン−αに対する抗体である。
本発明のさらに別の側面によれば、細胞と候補物質とを接触させる工程、細胞内におけるリンホトキシン−α(LT−α)をコードする遺伝子の発現量を分析する工程、及び候補物質の非存在下の条件と比較して当該遺伝子の発現量を低下させる候補物質を炎症性疾患の治療薬として選択する工程を含む、炎症性疾患の治療薬のスクリーニング方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、リンホトキシン−α(LT−α)と候補物質とを接触させる工程、リンホトキシン−αの活性を測定する工程、及び候補物質の非存在下の条件と比較してリンホトキシン−αの活性を低下させる候補物質を炎症性疾患の治療薬として選択する工程を含む、炎症性疾患の治療薬のスクリーニング方法が提供される。好ましくは、リンホトキシン−αの活性は、接着分子及び/又はサイトカインを誘導する活性である。好ましくは、接着分子は、VCAM−1、ICAM−1又はE−セレクチンであり、サイトカインはTNFである。
本発明の一例によれば、リンホトキシン−α(LT−α)の発現量又は活性の低下は、IKBL遺伝子の発現量又は活性の増加を介したものである。
上:各遺伝子におけるゲノタイプされたSNPsの数を表す転写マップ。
下:本領域におけるD’の分布。D’はLT−αのイントロン1内のSNP対他のSNPで示す。
図2(A)はLT−αのイントロン1(252A>G)、図2(B)はIKBLのプロモーター領域(−63T>A)内のSNPによる転写制御活性をそれぞれ示す。*10G−252Aと10A−252Gとの間の比較においてp<0.01:**−63Aアレルと−63Tアレル間の比較においてp<0.01(student’t test)。
図3は、LT−αのイントロン1に対する未知の核因子の結合を示す。矢印は核因子のG−アレルに対するより強い結合を示すバンドである。
図4(A)は、HCASMCのみを培養した場合(白色バー)、HCASMCを26T−LT−α(灰色バー)又は26N−LT−α(黒色バー)(5ng/ml)を用いて4時間処理して培養した場合のVCAM−1の相対的なmRNA発現量をそれぞれ示す。図4(B)は、HCASMCのみを培養した場合(白色バー)、HCASMCを26T−LT−α(灰色バー)又は26N−LT−α(黒色バー)(5ng/ml)を用いて4時間処理して培養した場合のE−セレクチンの相対的なmRNA発現量を示す。結果は平均値±S.D.(n=3、*p<0.01、**p<0.05対26T)を示す。
図5は、ヒト冠動脈血管内皮細胞(HCAEC)におけるLT−α(26Asn)(26N)のTNF誘導活性及びSelectinE誘導活性(相対的なmRNA発現量)について、LT−α(26Thr)(26T)の場合と比較した結果を示す。結果は平均値±S.D.(*p<0.01、**p<0.05対26T)を示す。
図6は、血球系細胞株(HL−60)におけるLT−α(26Asn)(26N)のTNF誘導活性及びICAM1誘導活性(相対的なmRNA発現量)について、LT−α(26Thr)(26T)の場合と比較した結果を示す。結果は平均値±S.D.(*p<0.01対26T)を示す。
本発明の方法は、炎症性疾患と関連性を示す特定遺伝子に存在する遺伝子多型、特には一塩基多型(SNPs)を検出することによって、炎症性疾患の発症の有無、あるいは炎症性疾患の発症の可能性を判定する方法である。
上記の特定遺伝子とは、ヒト染色体6p21上の約130kbの領域に存在するリンホトキシン−α(LT−α)遺伝子(配列番号6)、I Kappa B−like(IKBL)遺伝子(配列番号7)、及びBAT1遺伝子(配列番号8)より成る群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子であって、遺伝子多型は、これらの遺伝子を含むゲノムDNAのエキソン、イントロン、プロモーター部分に存在する。
本発明において「リンホトキシン−α(LT−α)遺伝子、I Kappa B−like(IKBL)遺伝子、及びBAT1遺伝子より成る群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子に存在する遺伝子多型(一塩基多型など)を検出する」とは、(i)当該遺伝子多型(遺伝子側多型と称する)を直接検出すること、及び(ii)前記遺伝子の相補配列側に存在する遺伝子多型(相補側多型と称する)を検出し、その検出結果から遺伝子側多型を推定することの双方を指すものとする。ただし、遺伝子側の塩基と相補配列側の塩基とが完全に相補的な関係にあるとは限らないという理由から、遺伝子側多型を直接検出することがより好ましい。
なお、本発明において検出対象となる相補側多型としては、リンホトキシン−α(LT−α)遺伝子の相補配列、I Kappa B−like(IKBL)遺伝子の相補配列、及びBAT1遺伝子の相補配列から選ばれる少なくとも一つの相補配列に存在する遺伝子多型が挙げられ、より具体的には、下記の(1)から(5)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の一塩基多型が挙げられる。
をいう。
(1)LT−α遺伝子の相補配列における、配列番号1に示すLT−α遺伝子のエキソン1の塩基配列の10番目の塩基に相補的な塩基のC/Tの多型
(2)LT−α遺伝子の相補配列における、配列番号2に示すLT−α遺伝子のイントロン1の塩基配列の90番目の塩基に相補的な塩基のT/Cの多型
(3)LT−α遺伝子の相補配列における、配列番号3に示すLT−α遺伝子のエキソン3の塩基配列の81番目の塩基に相補的な塩基のG/Tの多型
(4)IKBL遺伝子の相補配列における、配列番号4に示すIKBL遺伝子のプロモーターの塩基配列の572番目の塩基に相補的な塩基のA/Tの多型
(5)BAT1遺伝子の相補配列における、配列番号5に示すBAT1遺伝子のプロモーターの塩基配列の1228番目の塩基に相補的な塩基のC/Gの多型
本明細書において、遺伝子(例えばLT−α遺伝子)におけるX番目の塩基をその位置を示す数字Xと、塩基を表す記号との組み合わせで示す場合がある。例えば、「10G」とは、10番目の位置にあるGを示し、「10A」とは、10番目の位置にあるAを示し、「10G/A」とは、10番目の位置にあるG又はAを示す。
本明細書において配列番号2に示すLT−α遺伝子のイントロン1の塩基配列の90番目の塩基は、LT−α遺伝子のエキソン1の1番目から数えて252番目の塩基に相当する。また、配列番号3に示すLT−α遺伝子のエキソン3の塩基配列の81番目の塩基は、LT−α遺伝子のエキソン1の1番目の塩基から数えて723番目の塩基に相当する。
従って、本明細書において配列番号2に示すLT−α遺伝子のイントロン1の塩基配列の90番目の塩基におけるG/A多型は、LT−αイントロン1 252G/Aと、また配列番号3に示すLT−α遺伝子のエキソン3の塩基配列の81番目の塩基におけるC/Aの多型は、LT−αエキソン3 723C/Aと表現する場合がある。
本明細書において配列番号4に示すIKBL遺伝子のプロモーターの塩基配列の572番目の塩基は、634番目の塩基を1番とした場合に下流方向に向かって63番目(−63番目)の塩基に相当する。また、配列番号5に示すBAT1遺伝子のプロモーターの塩基配列の1228番目の塩基は、1250番目の塩基を1番とした場合に下流方向に向かって23番目(−23番目)に相当する。
従って、本明細書において配列番号4に示すIKBL遺伝子のプロモーターの塩基配列の572番目の塩基におけるT/Aの多型は、IKBLプロモーター−63T/Aと、また配列番号5に示すBAT1遺伝子のプロモーターの塩基配列の1228番目の塩基におけるG/Cの多型は、BAT1プロモーター −23G/Cと表現する場合がある。
例えば、後記表1に示すように、配列番号1に示すLT−α遺伝子のエキソン1の塩基配列の10番目の塩基がGである場合(LT−αエキソン1 10G)、配列番号2に示すLT−α遺伝子のイントロン1の塩基配列の90番目の塩基がAである場合(LT−αイントロン1 252A)、配列番号3に示すLT−α遺伝子のエキソン3の塩基配列の81番目の塩基がCである場合(LT−αエキソン3 723C)、配列番号4に示すIKBL遺伝子のプロモーターの塩基配列の572番目の塩基がAである場合(IKBLプロモーター −63A)、配列番号5に示すBAT1遺伝子のプロモーターの塩基配列の1228番目の塩基がGである場合(BAT1プロモーター −23G)は、炎症性疾患が発症している、あるいは発症の可能性が高いと判定できる。
これに対し、配列番号1に示すLT−α遺伝子のエキソン1の塩基配列の10番目の塩基がAである場合(LT−αエキソン1 10A)、配列番号2に示すLT−α遺伝子のイントロン1の塩基配列の90番目の塩基がGである場合(LT−αイントロン1 252G)、配列番号3に示すLT−α遺伝子のエキソン3の塩基配列の81番目の塩基がAである場合(LT−αエキソン3 723A)、配列番号4に示すIKBL遺伝子のプロモーターの塩基配列の572番目の塩基がTである場合(IKBLプロモーター −63T)、配列番号5に示すBAT1遺伝子のプロモーターの塩基配列の1228番目の塩基がCである場合(BAT1プロモーター −23C)は、炎症性疾患が発症していない、あるいは発症の可能性が低いと判定できる。
また、配列番号1に示すLT−α遺伝子のエキソン1の塩基配列の10番目の塩基と配列番号2に示すLT−α遺伝子のイントロン1の塩基配列の90番目の塩基(エキソン1の1番目の塩基から数えて252番の塩基)の組み合わせの違い(10G−252Aヘテロ接合、10A−252Gヘテロ接合、10A−252Aホモ接合)によってLT−α発現量が異なる。従って、配列番号1に示すLT−α遺伝子のエキソン1の塩基配列の10番目の塩基と配列番号2に示すLT−α遺伝子のイントロン1の塩基配列の90番目の塩基の組み合わせが、10G−252Aヘテロ接合、10A−252Gヘテロ接合、10A−252Aホモ接合であるかを検出することによっても、炎症性疾患の判定ができる。
例えば後記実施例に示すように、10A−252Gである場合は炎症のシグナルであるLT−αの発現量が有意に多く、炎症性疾患が発症している、あるいは発症の可能性が高いと判定できる。
また、配列番号3に示すLT−α遺伝子のエキソン3の塩基配列の81番目の塩基におけるC/Aの多型は、エキソン3中の26番目のコドンが変化(ACCからAAC)することによってスレオニンからアスパラギンへのアミノ酸変異をもたらす。例えば後記実施例に示すように、26番目のコドンがアスパラギンをコードする場合(26N)は、スレオニンをコードする場合(26T)より有意にLT−αの発現量が多く、またヒト冠状動脈平滑筋細胞(HCASMC)において細胞接着因子である血管細胞接着分子−1(VCAM−1)やE−セレクチンを誘導することから炎症性疾患が発症している、あるいは発症の可能性が高いと判定できる。
本明細書において、疾患の「判定」とは疾患発症の有無の判断、疾患発症の可能性の判断(罹患危険性の予想)、疾患の遺伝的要因の解明などをいう。
また、疾患の「判定」は、上記の一塩基多型の検出法による結果と、所望により他の多型分析(VNTRやRFLP)及び/又は他の検査結果と合わせて行うこともできる。
また、本明細書において、「炎症性疾患」とは、炎症性病態との相関が知られている細胞接着因子やサイトカインの誘導が認められる疾患であれば特に限定はされないが、例えば慢性関節リウマチ、全身性エリマトーデス、炎症性腸炎、種々のアレルギー反応、細菌性ショック、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患などが挙げられ、特には心筋梗塞が挙げられる。
(検出対象)
遺伝子多型の検出の対象は、ゲノムDNAが好ましいが、場合によっては(つまり多型部位及びその隣接領域の配列がゲノムと同一または完全相補的になっている場合)cDNA、又はmRNAを使用することもできる。また、上記対象を採取する試料としては、任意の生物学的試料、例えば血液、骨髄液、精液、腹腔液、尿等の体液;肝臓等の組織細胞;毛髪等の体毛等が挙げられる。ゲノムDNA等は、これらの試料より常法に従い抽出、精製し、調製することができる。
(増幅)
遺伝子多型を検出するにあたっては、まず遺伝子多型を含む部分を増幅する。増幅は、例えばPCR法によって行われるが、他の公知の増幅方法、例えばNASBA法、LCR法、SDA法、LAMP法等で行ってもよい。
プライマーの選択は、例えば、配列番号1から5に示される配列における、前記の一塩基多型部位を含む連続する少なくとも10塩基以上、好ましくは10〜100塩基、より好ましくは10〜50塩基の配列、及び/又はその相補配列を増幅するように行う。
プライマーは、前記の一塩基多型部位を含む所定塩基数の配列を増幅するためのプライマーとして機能し得る限り、その配列において1又はそれ以上の置換、欠失、付加を含んでいてもよい。
増幅のために用いるプライマーは、試料が一の対立遺伝子型の場合にのみ増幅されるようにフォワードプライマー又はリバースプライマーの一方が一塩基多型部位にハイブリダイズするように選択してもよい。プライマーは必要に応じて蛍光物質や放射性物質等により標識することができる。
(遺伝子多型の検出)
遺伝子多型の検出は、一の対立遺伝子型に特異的なプローブとのハイブリダイゼーションにより行うことができる。プローブは、必要に応じて、蛍光物質や放射性物質等の適当な手段により標識してもよい。プローブは、前記の一塩基多型部位を含み、被検試料とハイブリダイズし、採用する検出条件下に検出可能な程度の特異性を与えるものである限り何等限定はない。プローブとしては、例えば配列番号1から5に示す配列における、前記の一塩基多型部位を含む連続する少なくとも10塩基以上、好ましくは10〜100塩基の配列、より好ましくは10〜50塩基の配列、又はそれらの相補配列にハイブリダイズすることのできるオリゴヌクレオチドを用いることができる。また、一塩基多型部位がプローブのほぼ中心部に存在するようにオリゴヌクレオチドを選択するのが好ましい。該オリゴヌクレオチドは、プローブとして機能し得る限り、即ち、目的の対立遺伝子型の配列とハイブリダイズするが、他の対立遺伝子型の配列とはハイブリダイズしない条件下でハイブリダイズする限り、その配列において1又はそれ以上の置換、欠失、付加を含んでいてもよい。また、プローブには、RCA(rolling circle amplification)法による増幅に用いられる一本鎖プローブ(パドロックプローブ)のように、ゲノムDNAとアニールし、環状になることによって上記のブロープの条件を満たすプローブが含まれる。
本発明に用いるハイブリダイゼーション条件は、対立遺伝子型を区別するのに十分な条件である。例えば、試料が一の対立遺伝子型の場合にはハイブリダイズするが、他の対立遺伝子型の場合にはハイブリダイズしないような条件、例えばストリンジェントな条件である。ここで、「ストリンジェントな条件」としては、例えば、例えば、モレキュラークローニング・ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Sambrook et al.,1989)に記載の条件等が挙げられる。具体的には、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mlニシン精子DNAを含む溶液中プローブとともに65℃で一晩保温するという条件等が挙げられる。
プローブは、一端を基板に固定してDNAチップとして用いることもできる。この場合、DNAチップには、一の対立遺伝子型に対応するプローブのみが固定されていても、両方の対立遺伝子型に対応するプローブが固定されていてもよい。
遺伝子多型の検出は、制限酵素断片長多型分析法(RFLP:Restriction fragment length polymorphism)により行うこともできる。この方法では、一塩基多型部位がいずれの遺伝子型をとるかによって制限酵素により切断されるか否かが異なってくる制限酵素で試料核酸を消化し、消化物の断片の大きさを調べることにより、該制限酵素で試料核酸が切断されたか否かを調べ、それによって試料の多型を分析する。
遺伝子多型の検出は、増幅産物を直接配列決定することによって行ってもよい(ダイレクトシークエンシング法)。配列決定は、例えばジデオキシ法、Maxam−Gilbert法等の公知の方法により行うことができる。
遺伝子多型の検出は、インベーダーアッセイにより行ってもよい。この方法では、SNPがあるかどうかテストするDNAターゲットフラグメントに対して相補的配列を持つインベーダーオリゴと5’のフラップ構造を持ち、SNPを検出するための相補的オリゴ(シグナルプローブ)を使用する。まずターゲットDNAに対してインベーダーオリゴとシグナルプローブをハイブリダイズさせる。この時、インベーダーオリゴとプローブは1塩基がオーバーラップする構造(invasive structure)を持つ。この部分にCleavase(Archaeoglobus fulgidusから分離されたフラップ・エンドヌクレアーゼ)が作用し、SNP部位のシグナルプローブの塩基とターゲットの塩基が相補的(SNPなし)の場合にはシグナルプローブの5’フリップが切断される。切断された5’フリップはFRET Probe(Fluorescence resonance energy transfer probe)にハイブリダイズする。FRETプローブ上には蛍光色素とクエンチャー(Quencher)が近接しており、蛍光が抑制されるが、5’フリップDNAが結合することによりCleavaseによって蛍光色素の部分が切断され、蛍光シグナルが検出できる。
遺伝子多型の検出はまた、変性勾配ゲル電気泳動法(DGGE:denaturing gradient gel electrophoresis)、一本鎖コンフォメーション多型解析(SSCP:single strand conformation polymorphism)、対立遺伝子特異的PCR(allele−specific PCR)、ASO(allele−specific oligonucleotide)によるハイブリダイーゼーション法、ミスマッチ部位の化学的切断(CCM:chemical cleavage of mismatches)、HET(heteroduplex method)法、PEX(primer extension)法、RCA(rolling circle amplification)法等を用いることができる。
[2]炎症性疾患診断用キット
前記のプライマー又はプローブとしてのオリゴヌクレオチドは、これを含む炎症疾患診断用キットとして提供できる、キットは、上記遺伝子多型の分析法に使用される制限酵素、ポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸、標識、緩衝液等を含んでいてもよい。
[3]LT−α、IKBL、又はBAT1の発現状態の分析方法
本発明によればまた、前記の(1)から(5)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の一塩基多型を検出することによって、LT−α、IKBL、又はBAT1の発現状態を分析することができる。
例えば、配列番号1に示すLT−α遺伝子のエキソン1の塩基配列の10番目の塩基がAで、配列番号2に示すLT−α遺伝子のイントロン1の塩基配列の90番目の塩基(エキソン1の1番目の塩基から数えて252番の塩基)がGである場合(10A−252Gハプロタイプ)は、LT−αの発現量が多いと判断できる。これに対し、配列番号1に示すLT−α遺伝子のエキソン1の塩基配列の10番目の塩基がGで、配列番号2に示すLT−α遺伝子のイントロン1の塩基配列の90番目の塩基(エキソン1の1番目の塩基から数えて252番の塩基)がAである場合(10G−252Aハプロタイプ)、配列番号1に示すLT−α遺伝子のエキソン1の塩基配列の10番目の塩基がAで、配列番号2に示すLT−α遺伝子のイントロン1の塩基配列の90番目の塩基(エキソン1の1番目の塩基から数えて252番の塩基)がAである場合(10A−252Aハプロタイプ)は、LT−αの発現量が少ないと判断できる。
[4]LT−α、IKBL、又はBAT1の転写活性の測定方法
本発明によればまた、前記の(1)から(5)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の一塩基多型を含むLT−α、IKBL、又はBAT1遺伝子断片を細胞に導入し、該細胞を培養し、該遺伝子の発現を分析することによってLT−α、IKBL、又はBAT1の転写活性を測定することができる。
本発明の好ましい態様によれば、前記LT−α、IKBL、又はBAT1遺伝子断片の下流にリポーター遺伝子を結合させた転写ユニットを細胞に導入し、該細胞を培養し、リポーター活性を測定することによって該遺伝子の発現を分析する。
例えば、一塩基多型がプロモーター部位に存在する場合は、その一塩基多型を含む遺伝子の下流にレポーター遺伝子を挿入した系を導入した細胞を培養し、レポーター活性を測定すれば、一塩基多型による転写効率に違いを測定することができる。
ここでリポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコール、アセチルトランスフェラーゼ、ガラクトシダーゼなどの遺伝子が用いられる。
[5]LT−α、IKBL、又はBAT1の転写活性阻害物質のスクリーニング方法
本発明においては、前記の(1)から(5)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の一塩基多型を含むLT−α、IKBL、又はBAT1遺伝子断片を細胞に導入し、LT−α、IKBL、又はBAT1の転写活性を阻害する候補物質の存在下で該細胞を培養し、該遺伝子の発現を分析することによってLT−α、IKBL、又はBAT1転写活性阻害物質をスクリーニングすることできる。
本発明の好ましい態様によれば、前記LT−α、IKBL、又はBAT1遺伝子断片の下流にリポーター遺伝子を結合させた転写ユニットを細胞に導入し、該細胞を培養し、リポーター活性を測定することによって該遺伝子の発現を分析する。
例えば、LT−αの発現量が有意に高いことが認められる一塩基多型(例えば上記10A−252Gハプロタイプ)を有する遺伝子の下流にレポーター遺伝子を挿入した系を導入した細胞を候補物質の存在下又は非存在下の両方の場合について培養し、候補物質の存在下で培養を行った場合にレポーター活性が下がれば、その候補物質はLT−α転写活性阻害物質として選択することができる。
ここでリポーター遺伝子としては、上記に挙げた遺伝子が用いられる。
候補物質としては任意の物質を使用することができる。候補物質の種類は特に限定されず、個々の低分子合成化合物でもよいし、天然物抽出物中に存在する化合物でもよく、あるいは化合物ライブラリー、ファージディスプレーライブラリー、コンビナトリアルライブラリーでもよい。候補物質は、好ましくは低分子化合物であり、低分子化合物の化合物ライブラリーが好ましい。化合物ライブラリーの構築は当業者に公知であり、また市販の化合物ライブラリーを使用することもできる。
上記のスクリーニング法により得られるLT−α、IKBL、又はBAT1の転写活性阻害物質もまた本発明の範囲内である。このようなLT−α、IKBL、又はBAT1の転写活性阻害物質は、心筋梗塞治療剤、抗炎症剤、免疫抑制剤などの各種薬剤の候補物質として有用である。
[6]LT−α転写制御因子のスクリーニング方法
本発明においてはまた、前記の(1)から(5)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の一塩基多型を含む遺伝子断片とLT−α、IKBL、又はBAT1の転写制御因子の存在が予想される試料を接触させ、上記断片と転写制御因子との結合を検出することによって、LT−α、IKBL、又はBAT1の転写制御因子をスクリーニングすることができる。前記の一塩基多型を含む遺伝子断片とLT−α、IKBL、又はBAT1の転写制御因子の存在が予想される物質との結合の検出は、ゲルシフト法(電気泳動移動度シフト解析:electrophoretic mobility shift assay,EMSA)、DNase Iフットプリント法等によって行うことがきるが、ゲルシフト法が好ましい。ゲルシフト法では、タンパク質(転写制御因子)が結合すると、分子サイズが大きくなり電気泳動におけるDNAの移動度が低下するので、32Pで標識した遺伝子断片と転写制御因子を混ぜ、ゲル電気泳動にかける。オートラジオグラフィーでDNAの位置を見ると、因子の結合したDNAはゆっくり動くので、通常のバンドよりも遅れて移動するバンドとして検出される。
[7]炎症性疾患の治療方法及び炎症性疾患の治療薬
本発明においては、以下の実施例5で示す通り、LT−αタンパク質の動脈壁隆起性病変部での発現状態を調べた結果、心筋梗塞患者由来の動脈壁隆起性病変部内血管平滑筋細胞およびマクロファージにおいてLT−αタンパク質が強く染色されており、病変の発生、進展に関連している可能性が示唆された。従って、LT−αタンパク質の発現や活性を抑制すれば病変の改善、再発又は予防が期待できる。
さらに、心筋梗塞感受性遺伝子産物であるLT−αの26Asn変異体は、野生型(26Thr)に比べて血管平滑筋細胞からの接着分子(VCAM−1,E−selectin)の誘導能が強いことが知られている(Ozaki k.et al.Nature Genetics 32,650−654,2002)。本発明では、以下の実施例6で示す通り、ヒト冠動脈血管内皮細胞(HCAEC)および血球系細胞株(HL−60)におけるLT−α変異体(26Asn)のサイトカイン誘導活性及び接着分子誘導活性について、26Thrの活性と比較した。その結果、図5及び6に示したように、LT−α(Asn26)はLT−α(Thr26)に比べて血管内皮細胞からのTumor necrosis factor−α(TNF)、selectin−E mRNAを2倍高く、HL−60細胞からはTNF,ICAM−1(intracellular cell adhesion molecule−1)mRNAを3倍高く誘導した。これらの結果は、LT−α(26Asn)が心筋梗塞等の炎症性疾患の発症、進展に関与していることを示していると共に、LT−αの活性を抑制することによる心筋梗塞等の炎症性疾患の治療が期待できる。また、LT−αの活性を抑制するための手段としては、例えば、リンホトキシン−α(LT−α)に対する抗体を用いることができる。
また、リンホトキシン−α(LT−α)の発現又は活性を抑制する物質を有効成分として含む、炎症性疾患の治療薬も本発明の範囲内に含まれる。ここで用いるリンホトキシン−α(LT−α)の発現又は活性を抑制する物質としては、リンホトキシン−αに対する抗体が挙げられる。また、リンホトキシン−αに対する抗体としては、ヒト抗体又はヒト化抗体を使用することもできる。
リンホトキシン−αに対する抗体は、定法により作製することができる。例えば、リンホトキシン−αに対するポリクローナル抗体は、リンホトキシン−αを抗原として哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ等)を当業者に公知の方法で免疫感作し、該哺乳動物から血液を採取し、採取した血液から抗体を分離・精製することにより得ることができる。抗原を投与する際には、適当なアジュバントを使用することもできる。血液からの抗体の分離・精製は、例えば遠心分離、硫酸アンモニウムまたはポリエチレングリコールを用いた沈澱、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー等の通常の方法によって行うことができる。
リンホトキシン−αに対するモノクローナル抗体は、ハイブリドーマを用いて作製することができる。リンホトキシン−αに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、抗体産生細胞(免疫動物から採取した脾細胞、リンパ節細胞、Bリンパ球等)とミエローマ細胞(例えば、マウスでは、P3X63Ag8、P3U1株、Sp2/0株など)とをポリエチレングリコール又はセンダイウイルスなどの融合促進剤を用いて細胞融合させることにより作製することができる。細胞融合後のハイブリドーマの選抜にはヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(HAT)培地を常法に従って使用することができる。得られたハイブリドーマから目的とするモノクローナル抗体を製造するには、通常の細胞培養法や腹水形成法により該ハイブリドーマを培養し、培養上清あるいは腹水から該モノクローナル抗体を精製すればよい。
[8]炎症性疾患の治療薬のスクリーニング方法
上記の通り、本発明では、炎症性疾患では、リンホトキシン−αの発現又は活性の亢進が関与していることが示されたことにより、リンホトキシン−αの発現又は活性を低下させる物質は、炎症性疾患の治療薬として有用であることが判明した。本発明によればさらに、リンホトキシン−αの発現又は活性を低下させる物質をスクリーニングする方法が提供される。上記スクリーニングの一例としては、細胞と候補物質とを接触させる工程、細胞内におけるリンホトキシン−α(LT−α)をコードする遺伝子の発現量を分析する工程、及び候補物質の非存在下の条件と比較して当該遺伝子の発現量を低下させる候補物質を炎症性疾患の治療薬として選択する工程により行うことができる。また、上記スクリーニングの別の例としては、リンホトキシン−α(LT−α)と候補物質とを接触させる工程、リンホトキシン−αの活性を測定する工程、及び候補物質の非存在下の条件と比較してリンホトキシン−αの活性を低下させる候補物質を炎症性疾患の治療薬として選択する工程により行うことができる。ここで言うリンホトキシン−αの活性とは、例えば、接着分子及び/又はサイトカインを誘導する活性であり、接着分子の具体例としては、VCAM−1、ICAM−1又はE−セレクチンであり、サイトカインの具体例としてはTNFである。
候補物質としては任意の物質を使用することができる。候補物質の種類は特に限定されず、例えば、本明細書中上記[5]に記載した各種のライブラリー等を使用することができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
(1)方法
▲1▼被験者
一般に、心筋梗塞の診断には、次に挙げる3つの基準のうち2つを必要とする:(1)胸の圧迫、痛み、又は締め付けが30分以上継続する臨床歴、(2)少なくとも一の標準又は二の胸部誘導において0.1mVより大きいST−セグメント上昇、(3)通常の実験値の2倍よりも大きい血清クレアチンキナーゼ濃度における上昇。これらの基準によって心筋梗塞と診断された患者1,133名を被験者とした。心筋梗塞患者の被験者の年齢範囲は28〜85才で、平均年齢は62.5才であった。一方、幾つかの医療機関を通じて志願した健常者1,006名を対照とした。対照の被験者の年齢範囲は5才から88才で、平均年齢は38.5才であった。なお、すべての被験者は日本人であった。
▲2▼SNP発見及びゲノタイピング
全ゲノム関連性研究のために、ウェブサイト(http://snp.ims.u−tokyo.ac.jp)上で利用できるSNPデータベースを用いた。SNPsのスクリーニングは既報(Iida,A.,et al.,J.Hum.Genet.,46,668−683,2001)に従って行った。LT−α、TNF−α、LST1、1C7、アログラフト炎症因子−1(allograft inflammatory−factor−1(AIF−1))、I kappa B−like protein(IKBL)、V−ATPase G−subunit like protein(ATP6G)、BAT1、MICB及びp5−1を含む約130kbの6p21上の関連領域(図1、上パネル)をスクリーニングした。スクリーニングに先立って、GeneBankデータベースからの配列Y14768、AP000506及びAC004184をアセンブリングすることによって約130kbの参照配列を作成した。PCRプライマーデザイン、PCR実験、DNA抽出、DNA配列及びSNP発見のためのプロトコルはIida,A.,et al.,J.Hum.Genet.,46,668−683,2001に記載に従った。130kb領域におけるSNPsはインベーダーアッセイ又はPCR産物のダイレクトシークエンスによってcapillary sequencer(ABI3700、Applied Biosystems)を用いて既報(Ohnishi,Y.,et al.,J.Hum.Genet.,46,471−477,2001;Iida,A.,et al.,J.Hum.Genet.,46,668−683,2001)に従って行った。
本実施例で使用したプライマー及びプローブを以下に記載する。
(1)LT−α(インベーダー法によりタイピング)
(2)IKBL(シークエンス法によりタイピング)
(3)BAT1(インベーダー法によりタイピング)
▲3▼統計学的分析
関連性研究のための統計学的分析、ハプロタイプ頻度及びHardy−Weinberg平衡、及びLD係数(D’)の計算は既報(Yamada,R.,et al.,Am.J.Hum.Genet,68,674−485,2001)に従って行った。
(2)実験結果
関連性研究の第1のステップとして、ハイスループットマルチプレックスPCR−インベーダーアッセイ法(Ohnishi,Y.,et al.,J.Hum.Genet.,46,471−477,2001)を用いて94名の心筋梗塞患者をゲノタイピングし、その結果を健常人集団に見出されるアレル頻度と比較した。約75,000の遺伝子をベースとしたSNPsのスクリーニングの結果、染色体6p21上のLT−α遺伝子内にあるひとつのSNP(イントロン1;252A>G)の心筋梗塞に対する弱い関連性を同定することができた(χ2=9.4、p=0.0022;マイナーアレルに対するホモ接合体対その他)。続いて全部で1,133名の心筋梗塞患者と1,006の対照者をゲノタイピングした結果、χ2値が18.0(p=0.000022;マイナーアレルに対するホモ接合体対その他)及びオッズ比が1.69(95%コンフィデンスインターバル(CI);1.32−2.15、表1)となり、その関連性はずっと顕著になった。これらのデータは、心筋梗塞感受性遺伝子がこの領域内に存在することを示した。
LDマッピングのための高密度SNPマップを16名の心筋梗塞患者と16名の対照者からのDNAのダイレクトシークエンシングによって構築した。TNF−α、LT−β、I kappaB−like protein(IKBL)、及びBAT1(図1、上パネル)に関連する分子をコードするいくつかの他の分子を含んでいる約130キロベースの6p21上の関連領域をスクリーニングした。該領域に全部で187個のSNPsを同定し、そして94名の心筋梗塞患者と一般的な集団からの94名の対照を120個のそれらのマーカーに対してゲノタイピングし、エレクトロフェログラム上でヌクレオチドシグナルのピークレベルを比較することによって大まかに推定された約10%以上のアレル頻度に基づいて選択した。最終的に、疾患関連性遺伝子と決定するに十分に高いアレル頻度を有する26SNPsが(>25%、マイナーアレル)、p5−1及びAIF−1の近くにD’drop offを伴う強いLDの広がりのある一つのブロックを示した(図1、下パネル)。よって心筋梗塞感受性遺伝子がこれらの2つの遺伝子座の間に位置すると結論し、試料サイズを拡大することによってこれらの26個のSNPsをタイピングした。それらのほとんどは心筋梗塞表現型との顕著な関連性は示さなかったが、これらの26個のSNPsのうちの4個は心筋梗塞患者と対照との間でマイナーアレルに対するホモ接合性の頻度を比較したとき、心筋梗塞との強い関連性を表した(表1)。これらのSNPsはLT−αのエキソン1内の10G>A及びエキソン3内の723C>A(Thr26Asn)、IKBLのプロモーター領域内の−63T>A、及びBAT1のプロモーター領域内の−23G>Cであった。4つの全てはほとんど完全に互いに連鎖しており、その領域内の特定のハプロタイプはそれぞれのSNP単独よりも心筋梗塞との関連性に対してより高い統計学的有意差を示した。各SNPに対するゲノタイプの分布に関するHardy−Weinberg平衡は、患者群と対照群両方に対するχ2試験によって評価し、顕著な偏差を示さなかった(p>0.01)。これらのSNP遺伝子座はほとんど同じ程度の心筋梗塞との関連性を有しているので、LT−α、IKBL及びBAT1のすべてが心筋梗塞感受性に影響を及ぼす候補と考えることができた。
実施例2(LT−αのイントロン1内のSNPによってもたらされる転写活性の増加)
(1)実験方法
LT−αの−307から268まで、IKBLの−635から15まで、及びBAT1の−1231から30までに対応するDNA断片を、ゲノムDNAを鋳型として用いてPCRによって増幅し、pGL3−basic vector(Promega)に5’−3’方向にクローニングした。Jurkut細胞(RIKEN Cell Bankから入手;RCB0806)は10%ウシ胎児血清を添加したPRMI1640培地内で成長させた。LT−α遺伝子における2つのSNPs、エキソン1内の10G>A及びイントロン1内の252A>Gがその発現レベルに影響を与えるかどうかを決定するために、両方のSNPs(それぞれ10G−252A,10A−252G及び10A−252Aハプロタイプ)を含むゲノム断片をルシフェラーゼ遺伝子転写ユニットの上流に含む3種のプラスミドを構築した。
上記Jurkut細胞(2×106)に、10ugの上記プラスミド構築物と2.5ugのpRL−TKベクター(トランスフェクション効率のための内部制御)をLipoTAXIトランスフェクション試薬(Stratagene)を用いてトランスフェクトした。6時間後、細胞をPMA(20ng/ml)及びイソノミシン(1uM)(Sigma)で刺激した。24時間後、細胞を集め、ルシフェラーゼ活性をDual−Luciferase Reporter Assay System(Promega)を用いて測定した。
また、IKBL及びBAT1遺伝子のプロモーター領域におけるSNPsの転写効率に与える影響を同様にして調べた。
(2)実験結果
図2Aに示すように、10A−252Gハプロタイプを含むクローンは他の2つのハプロタイプを含むクローンよりも1.5倍の転写活性を示し、エキソンにおける一つの置換ではなく、イントロン1における置換がLT−α遺伝子の転写に影響を与えることを示した。すなわち、心筋梗塞に強い関連性を示すLT−α遺伝子におけるこれら2つのSNPsはその発現レベルに影響を与えることがわかった。
一方、同じく心筋梗塞と顕著な関連性を示すIKBL(−63T>A)のプロモーター領域におけるSNPは転写活性の適度な減少が認められた(図2B)。IKBLはIkBファミリーのメンバーで、NF kappaB(NF−κB)/rel poteinのような転写因子に対する阻害分子である(Albertella,M.R.,et al.,Hum.Mol.Genet.,3,793−799,1994)。LT−αプロモーター領域におけるDNA配列はNF−κB,SP−1及びAP−1/c−fos/junを含む数種の核因子に対する結合モチーフを含むという事実から判断すると(Messer,G.et al.,J.Exp.Med.,173,209−219,1991)、IKBLはこれらの核因子の阻害を通じてLT−αの転写を制御すると考えられる。
実施例3(LT−αのイントロン1に対する未知の核因子の結合)
(1)実験方法
Jurkat細胞からの核抽出物が252A又は252Gアレルを含むゲノム配列に対応するオリゴヌクレオチドに結合できるかどうかを調べた。Andrews,N.C.et al.,Nucleic,Acid Res.,11,2499,1991に記載したように、Jurkat細胞から調製した核抽出物をジオキシゲニン(DIG)−11−ddUTPにて標識した33bpのオリゴヌクレオチドとDIG−gel shift kit(Roche)を用いてインキュベートした。競合研究のために、未標識のオリゴヌクレオチド(100倍過剰)をDIG−標識オリゴヌクレオチドの添加前に核抽出物と前培養した。タンパク質/DNA複合体を0.5×Tris/ホウ酸/EDTA(TBE)緩衝液中、未変性7%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。ゲルをニトロセルロース膜に移し、シグナルの検出を化学発光検出システム(Roche)を用いて製造者の指示に従って行った。
(2)実験結果
図3に示すように、Gアレルに対応するオリゴヌクレオチドを用いたとき現れるバンドはAアレルに対応するバンドよりも強く、これはJurkat細胞に存在する幾つかの核因子がAアレルに対するよりもGアレルに対してより強固に結合したことを示す。実験は3回行い同様な結果を得た。この結果はこの領域に結合することによってLT−αの転写を制御する一つ又はそれ以上の核抽出物における未同定の分子が心筋梗塞に関連しているかもしれないことを示す。
実施例4(LT−αタンパク質内のT26N変異による接着分子の誘導)
(1)実験方法
LT−α産物は、その炎症プロセスへの寄与のように、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、及び種々の白血球から接着分子及びサイトカインを誘導することができる((Ross,R.,N.Engl.J.Med.,340,115−126,1999;Ware,C.F.,et al.,Curr.Top.Microbiol.Immunol.,198,175−218,1995)。これらの生物学的活性が遺伝子産物におけるアミノ酸置換によって影響されるかどうかを調べた。コドン26におけるSNPはスレオニンからアスパラギンへのアミノ酸変化をもたらす。従って、各アレル(26N−LT−αは26T−LT−α)について接着分子及びサイトカインの発現を誘導する能力を培養したヒト冠状動脈血管内皮細胞(HCAEC)及びヒト冠状動脈平滑筋細胞(HCASMC)を用いて次のようにして調べた。
まず、精製した大腸菌由来組み換え体26N−LT−α及び26T−LT−αをpET43 system(Novagen)を用いて調製した。HCAEC及びHCASMC(BioWhittaker,Inc.)を5ng/mlのLT−αタンパク質(26N−LT−α又は26T−LT−α)で4時間処理した。全RNAをトリゾール(Life Technologies)を用いて単離した。cDNAを2μgの全RNAからdT15プライミングによって調製し、SuperScript逆転写酵素(Life Technologies)を用いて合成した。mRNAをQuantiTect SYBR Green PCR kit(QIAGEN)及びABI Prism 7700 sequence detector(Applied Biocystems)を用いて定量した。各試験は3回繰りかえし、各試料は三重に試験した。
(2)実験結果
変異タンパクである26N−LT−αは26T−LT−αよりもHCASMCにおいて血管細胞接着分子−1(VCAM−1)及びE−セレクチンmRNAについて2倍高い転写活性レベルを示した(図4)。
実施例5(LT−αタンパク質の動脈壁隆起性病変部での発現状態)
(1)実験方法
動脈壁隆起性病変部位のパラフィン包埋切片をシランコーティングスライド上に貼り付け、キシレンを用いて脱パラフィン操作を行った。その後、マイクロウェーブにより抗原性を賦活し、内因性ペルオキシダーゼ活性を阻害するために3%過酸化水素水/エタノールで15分処理し、非特異的反応を抑えるために5%スキムミルク液でブロッキング反応を行った。5μg/mlの抗LT−α抗体(R & D社)を用いて、40℃、一晩反応し、洗浄後、2次抗体(rabbit ENVISION Polymer Reagent;DAKO社)を加え、室温で1時間反応した。ペルオキシダーゼ基質を用いて発色後、顕微鏡下でLT−αタンパク質のシグナルを観察した。ネガティブコントロールとして、非免疫正常ヒツジIgG(DAKO社)を用いて同様に染色した。
(2)実験結果
上記の免疫染色の結果、心筋梗塞患者由来、動脈壁隆起性病変部内血管平滑筋細胞およびマクロファージにおいてLT−αタンパク質が強く染色されることが確認された。この結果より、LT−αタンパク質が病変の発生、進展に関連している可能性が示唆された。
実施例6(LT−α変異体(Asn26)による血管内皮細胞、血球系細胞株からのサイトカイン、接着分子の誘導)
(1)実験方法
冠動脈血管内皮細胞(Bio Whittaker社)は血管内皮細胞専用培地(Bio Whittaker社)、HL−60(RIKEN cell BANK)はRPMI−1640培地(SIGMA社)で培養した。LT−αタンパク質の作製、サイトカイン、接着分子mRNAの誘導の評価は既報(Ozaki k.et al.Nature Genetics 32,650−654,2002)に従って行った。
(2)実験結果
ヒト冠動脈血管内皮細胞(HCAEC)および血球系細胞株(HL−60)でのLT−α(26Asn)のサイトカイン、接着分子誘導活性について、LT−α(26Thr)の場合と比較した。結果を図5及び図6に示す。図5及び図6に示した通り、LT−α(Asn26)はLT−α(Thr26)に比べて血管内皮細胞からのTumor necrosis factor−α(TNF)、selectin−E mRNAを2倍高く、HL−60細胞からはTNF、ICAM−1(intracellular cell adhesion molecule−1)mRNAを3倍高く誘導した。これらの結果から、LT−α(26Asn)が心筋梗塞等の炎症性疾患の発症、進展に関与していることを示された。
Claims (7)
- 下記の(1)から(5)よりなる群から選ばれる少なくとも一種の一塩基多型を検出することを含む、動脈硬化性疾患の罹患危険性の予想方法。
(1)配列番号1に示すLT−α遺伝子のエキソン1の塩基配列の10番目の塩基におけるG/Aの多型
(2)配列番号2に示すLT−α遺伝子のイントロン1の塩基配列の90番目の塩基におけるA/Gの多型
(3)配列番号3に示すLT−α遺伝子のエキソン3の塩基配列の81番目の塩基におけるC/Aの多型
(4)配列番号4に示すIKBL遺伝子のプロモーターの塩基配列の572番目の塩基におけるT/Aの多型
(5)配列番号5に示すBAT1遺伝子のプロモーターの塩基配列の1228番目の塩基におけるG/Cの多型 - 配列番号1に示すLT−α遺伝子のエキソン1の塩基配列の10番目の塩基と配列番号2に示すLT−α遺伝子のイントロン1の塩基配列の90番目の塩基の組み合わせが、G−Aヘテロ接合体であるか、A−Gヘテロ接合体であるか、A−Aホモ接合体であるかを検出することを含む、動脈硬化性疾患の罹患危険性の予想方法。
- 配列番号3に示すLT−α遺伝子のエキソン3の塩基配列の80番目から82番目の塩基の少なくとも一つが他の塩基に置換されることによって、コードされるアミノ酸がスレオニンからアスパラギンに変異する遺伝子多型を検出することを含む、動脈硬化性疾患の罹患危険性の予想方法。
- 動脈硬化性が心筋梗塞である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
- 配列番号1から5に示される配列における、下記の(1)から(5)よりなる群から選ばれる少なくとも1つの部位を含む連続する少なくとも10塩基の配列、及び/又はその相補配列を増幅することができる、19塩基以上のフォワードプライマー及びリバースプライマーを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法において用いるプライマーセット。
(1)配列番号1に示すLT−α遺伝子のエキソン1の塩基配列の10番目の部位
(2)配列番号2に示すLT−α遺伝子のイントロン1の塩基配列の90番目部位
(3)配列番号3に示すLT−α遺伝子のエキソン3の塩基配列の81番目の部位
(4)配列番号4に示すIKBL遺伝子のプロモーターの塩基配列の572番目の部位
(5)配列番号5に示すBAT1遺伝子のプロモーターの塩基配列の1228番目の部位 - 請求項5に記載のプライマーセットを含む、動脈硬化性疾患診断用キット。
- 動脈硬化性疾患が心筋梗塞である請求項6に記載のキット。
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