以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態に係る冷却水制御装置について説明する。図1は、第1実施形態に係る冷却水制御装置100の概略構成を示す図である。
冷却水制御装置100は、エンジン1と接続された冷却水通路と、排気熱回収器2と、ヒータコア5と、を備えている。冷却水制御装置100は、冷却水を用いてエンジン1の冷却を行うとともに、冷却水と排気ガスとの間で熱交換を行うことによって排気熱を回収して、エンジン1の暖機やヒータコア5の熱源に利用する装置である。冷却水は、冷却水通路7a、7b、7c、7d1、7d2、7e、7fを通過することによって、エンジン1の冷却及び暖機などを行う。図1において、実線矢印がエンジン1の暖機時(Cold時)における冷却水の流れを示し、破線矢印がエンジン1の暖機完了後(Hot時)における冷却水の流れを示している。なお、一点鎖線の矢印は信号の入出力を示している。
冷却水通路7eは、エンジン1から延びており、冷却水通路7d2、7fと三方弁6を介して接続されている。冷却水通路7fは、冷却水通路7aとヒータコア5を介して接続されている。冷却水通路7a上には、排気熱回収器2が設けられており、冷却水は、排気熱回収器2内を通過する。冷却水通路7aは、冷却水通路7bと、エンジン1から伸びている冷却水通路7cと、サーモスタット4を介して接続されている。冷却水通路7c上には、ラジエータ3が設けられている。冷却水通路7b上には、電動ウォーターポンプ(以下、「電動WP」と称す)が設けられている。冷却水通路7bは、冷却水通路7d1、7d2と接続されている。冷却水通路7d1は、エンジン1内のウォータジャケット(不図示)に通じている。冷却水通路7d2は、エンジン1を迂回する迂回通路であり、冷却水通路7e、7fと三方弁6を介して接続されている。なお、以下において、冷却水通路7d2を、エンジン1を迂回する冷却水通路であることを示すために「迂回通路7d2」と呼ぶこともある。また、冷却水通路7a、7b、7c、7d1、7d2、7e、7fを区別しない場合には、単に冷却水通路7として称するものとする。
エンジン1は、供給される燃料と空気との混合気を燃焼させることによって動力を発生する装置である。例えば、エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどによって構成される。また、エンジン1は、ハイブリッド車両などに搭載される。冷却水は、冷却水通路7d1よりエンジン1に流入する。エンジン1内に流入した冷却水は、エンジン1内のウォータジャケットを通過した後、冷却水通路7c、7eより流出する。ウォータジャケットは、エンジン1内のシリンダ(不図示)の周囲に設けられており、シリンダは、ウォータジャケットを通過する冷却水と熱交換を行う。
エンジン1の冷却水通路7eへの出口付近には、エンジン1内の冷却水の水温、正確には、エンジン1内のウォータジャケットにおける冷却水の水温を検出するための水温センサ9aが設けられている。水温センサ9aは、エンジン1内のウォータジャケットにおける冷却水の水温を検出し、対応する検出信号S9aをECU20へ供給する。
三方弁6は、三方向に冷却水の出入り口を有し、各方向の出入り口には開閉可能な弁を有している。図1に示す例では、三方弁6は、冷却水通路7d2、7e、7fの各方向に冷却水の出入り口を有しており、冷却水通路7d2、7e、7fの各方向の出入り口に弁f1、f2、f3を有している。三方弁6は、ECU20からの制御信号S6に基づいて、各方向の出入り口の弁の開閉を行う。具体的には、三方弁6は、Cold時には、冷却水通路7d2、7fの各方向の出入り口の弁f1、f3を開弁し、冷却水通路7eの方向の出入り口の弁f2を閉弁することにより、迂回通路7d2を通過するルート(実線矢印で示すルート、以下、Cold時冷却水ルートと称することもある)で冷却水を流通させる。また、三方弁6は、Hot時には、冷却水通路7e、7fの各方向の出入り口の弁f2、f3を開弁し、冷却水通路7d2の方向の出入り口の弁f1を閉弁することにより、エンジン1内を通過するルート、正確には、エンジン1内のウォータジャケットを通過するルート(波線矢印で示すルート、以下、Hot時冷却水ルートと称することもある)で冷却水を流通させる。即ち、三方弁6は、エンジン1内のウォータジャケットと迂回通路7d2との間で冷却水の流量を配分する。従って、三方弁6は、本発明における流量配分手段に相当する。なお、三方弁6の位置は、図1に示した位置には限られない。要は、エンジン1内のウォータジャケットを通過するルートと迂回通路7d2を通過するルートとの間で、冷却水の通過ルート(以下、単に「冷却水ルート」と称することもある)を変えることができる位置であればよい。従って、三方弁6は、図1に示した位置に設ける代わりに、点Psに示す位置に取り付けるとしてもよい。
排気熱回収器2は、エンジン1からの排気ガスが通過する排気通路(不図示)上に設けられている。排気熱回収器2は、内部に冷却水が通過し、この冷却水と排気ガスの間で熱交換を行うことによって、排気熱を回収する。これにより、冷却水は加温される。
電動WP8は、電動式のモータを備えて構成され、このモータの駆動により冷却水を冷却水通路7内で循環させる。具体的には、電動WP8は、バッテリから電力が供給され、ECU20から供給される制御信号によって回転数などが制御される。なお、電動WP8の代わりに、エンジン1の作動とは関係なく動作可能で、且つ、ECU20によって制御可能な機械式のウォータポンプを用いることとしてもよい。
ヒータコア5は、内部を通過する冷却水によって、車室内の空気を暖める装置(暖房装置)である。この場合、ヒータコア5によって暖められた空気は、ヒータブロア(不図示)と呼ばれる送風機によって車室内に送風される。
ラジエータ3では、その内部を通過する冷却水が外気によって冷却される。この場合、電動ファン(不図示)の回転により導入された風によって、ラジエータ3内の冷却水の冷却が促進される。
サーモスタット4は、冷却水の温度に応じて開閉する弁によって構成される。基本的には、サーモスタット4は、冷却水の温度が高温となったときに開弁する。この場合、サーモスタット4を介して冷却水通路7bと冷却水通路7cとが接続され、冷却水はラジエータ3を通過することとなる。これにより、冷却水が冷却され、エンジン1のオーバーヒートが抑制される。これに対して、冷却水の温度が比較的低温である場合には、サーモスタット4は閉弁している。この場合には、冷却水はラジエータ3を通過しない。これにより、冷却水の温度低下が抑制されるため、エンジン1のオーバークールが抑制される。
ECU(Electronic Control Unit)20は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などを備える。ECU20は、図示しない種々のセンサから供給された検出信号を基づいて、冷却水制御装置100の制御を行う。例えば、第1実施形態では、ECU20は、水温センサ9aからの検出信号9aに基づいて、エンジン1内のウォータジャケットにおける冷却水の水温を求める。ECU20は、求められた水温に基づいて、暖機が完了したか否かを判定し、三方弁6の制御を実行する。従って、ECU20は、本発明における制御手段として機能する。
(冷却水ルート切替制御処理)
次に、第1実施形態に係る冷却水ルート切替制御処理について述べる。第1実施形態に係る冷却水ルート切替制御処理では、ECU20は、エンジン1の暖機時(Cold時)には、迂回通路7d2を通過するルート、即ち、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させ、エンジン1の暖機完了後(Hot時)には、エンジン1内を通過するルート、正確には、エンジン1内のウォータジャケットを通過するルートで冷却水を流通させることとする。
具体的には、ECU20は、水温センサ9aにより検出された水温が所定温度よりも高くなっているか否かによって、暖機が完了したか否かを判定する。従って、この所定温度は、エンジン1の暖機が完了したか否かを判定するための基準となる温度である。ECU20は、暖機が完了していないと判定した場合には、即ち、Cold時には、三方弁6を制御することにより、実線矢印で示すように、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させるとともに、エンジン1内のウォータジャケットを通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させないこととする。即ち、ECU20は、エンジン1内のウォータジャケットにおける冷却水の流通を停止することとする。このようにする理由は、以下の通りである。
Cold時において、冷却水がエンジン1内のウォータジャケットを流通するとした場合、比較的低温の冷却水がエンジン1内のウォータジャケットを流通することとなる。この場合、エンジン1内のウォータジャケットを流通する冷却水がエンジン1の燃焼熱を奪うことにより、エンジン1の暖機が阻害されてしまう。そこで、第1実施形態では、エンジン1内を通過するルートで冷却水を流通させないとすることにより、エンジン1の暖機を促進することとしている。
また、Cold時において、冷却水通路7全体で冷却水の流通を完全に停止させるのではなく、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させるとした理由は、冷却水通路7全体での冷却水の流通を完全に停止した場合には、排気熱回収器2において、冷却水の水温が上がりすぎることにより冷却水が沸騰する恐れがあるからである。又は、冷却水の流通を完全に停止することにより、排気熱を十分に回収できなくなり、ヒータコア5の暖房要求を満たすことができなくなる恐れがあるからである。そのため、第1実施形態に係る冷却水制御装置100では、Cold時において、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させるとすることにより、排気熱回収器2とヒータコア5との間で冷却水の循環を行い、排気熱の十分な回収及び冷却水の沸騰抑制を図ることとしている。
一方、ECU20は、暖機が完了したと判定した場合には、即ち、Hot時には、三方弁6を制御することにより、冷却水ルートの切替を行う。具体的には、ECU20は、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させるとともに、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートでの冷却水の流通を停止することとする。これにより、エンジン1によって加温された冷却水をヒータコア5に供給することができる。
次に、第1実施形態に係る冷却水ルート切替制御処理について、図2に示すフローチャートを用いて説明する。
ステップS101において、ECU20は、水温センサ9aにより検出されたエンジン1内の水温THW1が、所定温度よりも高くなっているか否かについて判定する。所定温度は、エンジン1の暖機が完了したか否かを判定するための基準となる温度であり、例えば90℃程度である。所定温度は、予め、実験などにより求められ、ROMなどに記憶されている。即ち、この処理は、エンジン1の暖機が完了したか否かを判定するための処理である。
ECU20は、エンジン1内の水温THW1が所定温度よりも高くなっていると判定した場合には(ステップS101:Yes)、エンジン1の暖機が完了したと判定し、三方弁6を制御して、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させることとする(ステップS102)。一方、ECU20は、エンジン1内の水温THW1が所定温度以下になっていると判定した場合には(ステップS101:No)、エンジン1は暖機中にあると判定し、三方弁6を制御して、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させることとする(ステップS103)。これにより、エンジン1の暖機を促進することができる。ECU20は、ステップS102又はステップS103の処理が行った後、本制御処理を終了する。
以上に説明した第1実施形態によれば、Cold時において、エンジン1の暖機を促進することができるとともに、排気熱の十分な回収及び冷却水の沸騰抑制を図ることができる。
なお、第1実施形態に係る冷却水制御装置100では、1系統の冷却水通路上に、エンジン、排気熱回収器、ヒータコア、を有する構成となっている。このようにすることで、排気熱回収器とエンジンを結ぶ冷却水通路と独立して別個に、排気熱回収器とヒータコアを結ぶ冷却水通路を設けた構成の冷却水制御装置と比較して、電動WP8は1つで済み、また、冷却水制御装置自体の大きさも小さくすることができる。
(第1実施形態の変形例)
ここで、第1実施形態の変形例について説明する。上述の第1実施形態では、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルート、又は、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートのどちらか一方で、冷却水を流通させることとし、Hot時には、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させ、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートでは冷却水を流通させないとしていた。しかし、Hot時において、排気熱回収器2の冷却水の要求流量がエンジン1の冷却水の要求流量よりも大きい場合には、電動WP8は、エンジン1の要求流量よりも冷却水の流量を増加させる必要がある。そのため、ECU20は、電動WP8のパワーを、エンジン1の要求流量を満足するパワーよりも大きくする必要があり、電動WP8の電力消費が増大してしまう。
そこで、第1実施形態の変形例では、三方弁6として、エンジン1内のウォータジャケットと迂回通路7d2との間で冷却水の流量の分配比を変えることが可能な流量配分三方弁を用いることとする。ECU20は、Hot時において、排気熱回収器2の要求流量がエンジン1の要求流量よりも大きい場合には、三方弁6(流量配分三方弁)を制御して、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートにも冷却水を流通させることとする。このようにすることで、排気熱回収器2の要求流量がエンジン1の要求流量よりも大きい場合であっても、エンジン1内における冷却水の流量の増加量を抑えることが可能となり、電動WP8の負荷を低減することができる。また、圧力損失の大きなエンジン1を迂回するCold時冷却水ルートでも冷却水を流通させるとすることにより、冷却水制御装置100全体の圧力損失を低減することができる。これにより、第1実施形態の変形例では、電動WP8の消費電力を低減することができる。
また、上述の第1実施形態では、Cold時において、三方弁6を制御することにより、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させるとともに、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させないとしていた。しかし、これに限られるものではなく、代わりに、三方弁6として、流量配分三方弁を用いて、Cold時冷却水ルートにおける流量とHot時冷却水ルートにおける流量を調節するとしても良い。即ち、ECU20は、Cold時において、三方弁6(流量配分三方弁)を用いて、迂回通路7d2における冷却水の流量とエンジン1内における冷却水の流量との比率を変化させるとしても良い。例えば、ECU20は、Cold時において、流量配分三方弁たる三方弁6を用いて、迂回通路7d2における冷却水の流量を増加させ、エンジン1内における冷却水の流量を減少させるとしても良い。これにより、Cold時において、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートにおける冷却水の流量は増加し、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートにおける冷却水の流量は減少することとなる。このようにしても、Cold時において、エンジン1の暖機を促進することができるとともに、排気熱の十分な回収及び冷却水の沸騰抑制を図ることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について述べる。第2実施形態に係る冷却水制御装置の構成は、第1実施形態に係る冷却水制御装置100の構成と同様の構成である。
先に述べた第1実施形態では、Cold時において、三方弁6を制御することにより、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させるとともに、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させないとしていた。しかしながら、Cold時において、例えば、暖房要求、デフロスタ要求、デアイス要求のうち、少なくともいずれかの要求がある場合には、ヒータコア5の要求熱量が排気熱回収器2による回収熱量よりも大きくなる場合がある。ここで、デフロスタとは、ヒータコア5が車室内より温風をフロントガラスなどに向けて吹き付けることにより霜を除去する動作を示し、デアイスとは、ヒータコア5が車室外より温風をフロントガラスなどに向けて吹き付けることにより、フロントガラスなどに氷結した氷や雪を除去する動作を示す。ヒータコア5の要求熱量が排気熱回収器2による回収熱量よりも大きくなる場合には、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させるのみでは、ヒータコア5の要求熱量を満たすことができなくなる恐れがある。
そこで、第2実施形態では、ECU20は、Cold時において、ヒータコア5の要求熱量が排気熱回収器2による回収熱量よりも大きいと判定した場合には、冷却水ルートを切り替えて、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させることとする。このようにすることで、Cold時であっても、ヒータコア5の要求熱量が排気熱回収器2による回収熱量よりも大きい場合には、エンジン1の燃焼熱によって加温された比較的高温の冷却水をヒータコア5に供給することができ、ヒータコア5の要求熱量を満たすことができる。
(冷却水ルート切替処理)
第2実施形態に係る冷却水ルート切替処理について、図3に示すフローチャートを用いて説明する。第2実施形態に係る冷却水ルート切替処理では、先に述べた第1実施形態に係る冷却水ルート切替処理、即ち、エンジン1の暖機が完了したか否かを判定して冷却水ルートを切り替える処理に加えて、ヒータコア5の要求熱量が排気熱回収器2による回収熱量よりも大きいか否かを判定する処理が行われる。以下に具体的に述べる。
ステップS111において、ECU20は、ヒータコア5の要求熱量が排気熱回収器2による回収熱量よりも大きく、且つ、エンジン1内の水温THW1が要求温度よりも高くなるか否かについて判定する。例えば、ECU20は、暖房要求がある場合には、エアコン設定温度、外気温、内気温などに基づいて、ヒータコア9の要求熱量を算出するとともに、燃料噴射量、外気温、冷却水流量などに基づいて、排気熱回収器2の回収熱量を算出する。また、要求温度とは、エンジン1内の冷却水がヒータコア5を流通した場合において、ヒータコア5の要求熱量を満たすことが可能な回収熱量となるときの、エンジン1内の冷却水の温度である。要求温度は、予め、実験などにより求められ、ROMなどに記録されている。
ECU20は、算出された要求熱量が算出された回収熱量よりも大きく、且つ、エンジン1内の水温THW1が要求温度よりも高くなると判定した場合には(ステップS111:Yes)、ステップS113の処理へ進み、そうでなければ、ステップS112の処理へ進む。なお、ステップS111において、ECU20は、デフロスタ要求、デアイス要求のうち、いずれかの要求がある場合には、ヒータコア5の要求熱量が排気熱回収器2による回収熱量よりも大きくなるとみなす。
ステップS113において、ECU20は、三方弁6を制御して、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させる。このようにすることで、Cold時であっても、ヒータコア5の要求熱量が排気熱回収器2による回収熱量よりも大きくなる場合には、Hot時冷却水ルートで冷却水を流通させることができ、ヒータコア5の要求熱量を満たすことができる。
ステップS112において、ECU20は、水温センサ9aにより検出されたエンジン1内の水温THW1が、所定温度よりも高くなっているか否かについて判定する。この処理は、エンジン1の暖機が完了したか否かを判定するための処理である。従って、この所定温度は、エンジン1の暖機が完了したか否かを判定するための基準となる温度であり、例えば90℃程度である。所定温度は、予め、実験などにより求められ、ROMなどに記憶されている。
ECU20は、エンジン1内の水温THW1が所定温度よりも高くなっていると判定した場合には(ステップS112:Yes)、エンジン1の暖機が完了したと判定し、三方弁6を制御して、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させる(ステップS113)。一方、ECU20は、エンジン1内の水温THW1が所定温度以下になっていると判定した場合には(ステップS112:No)、エンジン1は暖機中にあると判定し、三方弁6を制御して、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させることとする(ステップS114)。これにより、エンジン1の暖機を促進することができる。ECU20は、ステップS113、S114の処理を行った後、本制御処理を終了することとする。
なお、ここで、ECU20は、Cold時において、ヒータコア5の要求熱量が排気熱回収器2による回収熱量よりも大きい場合には、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させ、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させないとしている。しかし、これに限られるものではない。代わりに、三方弁6として、流量配分三方弁を用いることとし、ECU20は、Cold時において、ヒータコア5の要求熱量が排気熱回収器2による回収熱量よりも大きい場合には、エンジン1内のウォータジャケットにおける冷却水の流量を増加させ、エンジン1を迂回する迂回通路7d2における冷却水の流量を減少させるとしても良い。これによっても、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートにおける冷却水の流量は増加することとなり、ヒータコア5の要求熱量を満たすことができる。
以上に説明した第2実施形態によれば、Cold時において、エンジン1の暖機を促進することができるとともに、ヒータコア5の要求熱量が排気熱回収器2による回収熱量よりも大きくなる場合に、ヒータコア9の要求熱量を満たすことができる。これにより、暖房要求を満たすことが可能となる。また、デフロスタ要求、デアイス要求がある場合にも、デフロスタ性能及びデアイス性能を確保することができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る冷却水制御装置100aの構成を図4に示すこととする。
先に述べた第1実施形態では、Cold時において、三方弁6を制御することにより、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させるとしていた。しかしながら、このとき、排気熱回収器2における冷却水の回収熱量が比較的大きく、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートにおける冷却水の水温が、エンジン1内における冷却水の水温よりも高くなる場合には、Cold時であるにもかかわらず、サーモスタット4が開弁して、冷却水の熱がラジエータ3より放熱され無駄になる恐れがある。
そこで、第3実施形態に係る冷却水制御装置100aでは、第1実施形態に係る冷却水制御装置100の構成要素に加え、図4に示すように、排気熱回収器2における冷却水が流出する出口付近に水温センサ9bが設けられることとする。水温センサ9bは、検出した水温に対応する検出信号S9bをECU20に供給する。ECU20は、Cold時において、検出信号9bに基づいて、水温センサ9bにより検出された冷却水の水温THW2の方がエンジン1内の冷却水の水温THW1よりも高いと判定した場合には、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させることとする。
具体的には、ECU20は、Cold時において、水温センサ9bにより検出された冷却水の水温が、所定温度よりも大きいと判定した場合には、三方弁6を制御して、冷却水ルートを切り替え、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させることとする。ここで、この所定温度は、例えば、サーモスタット4の開弁が開始する水温以下の温度に設定される。このようにすることで、サーモスタット4が開弁する前に、即ち、ラジエータ3で放熱が行われる前に、排気熱回収器2で回収された熱をエンジン1に供給することができる。これにより、ラジエータ3による無駄な放熱を抑制することができ、エンジン1の暖機を促進することができる。
(冷却水ルート切替処理)
次に、第3実施形態に係る冷却水ルート切替処理について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。第3実施形態に係る冷却水ルート切替処理では、先に述べた第1実施形態に係る冷却水ルート切替処理、即ち、エンジン1の暖機が完了したか否かを判定して冷却水ルートを切り替える処理に加え、水温センサ9bにより検出された冷却水の水温が、所定温度(例えば、サーモスタット4の開弁が開始する水温以下の温度)よりも高くなっているか否かを判定する処理が行われる。以下に具体的に述べる。
ステップS121において、ECU20は、水温センサ9aにより検出されたエンジン1内の水温THW1が、第1の所定温度よりも高くなっているか否かについて判定する。この処理は、エンジン1の暖機が完了したか否かを判定するための処理である。第1の所定温度は、エンジン1の暖機が完了したか否かを判定するための基準となる温度であり、例えば90℃程度である。第1の所定温度は、予め、実験などにより求められ、ROMなどに記憶されている。
ステップS121において、ECU20は、エンジン1内の水温THW1が第1の所定温度よりも高くなっていると判定した場合には(ステップS121:Yes)、エンジン1の暖機が完了したと判定し、三方弁6を制御して、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させる(ステップS123)。一方、ECU20は、エンジン1内の水温THW1が第1の所定温度以下になっていると判定した場合には(ステップS121:No)、エンジン1は暖機中にあると判定し、ステップS122の処理へ進む。
ステップS122において、ECU20は、水温センサ9bにより検出された、排気熱回収器2における冷却水の出口付近の水温THW2が、第2の所定温度よりも高くなっているか否かについて判定する。ここで、第2の所定温度は、サーモスタット4の開弁が開始する水温以下の温度に設定されており、例えば78℃程度である。第2の所定温度は、予め、実験などによって求められ、ROMなどに記憶されている。
ステップS122において、ECU20は、排気熱回収器2における冷却水の出口付近の水温THW2が第2の所定温度よりも高くなっていると判定した場合には(ステップS122:Yes)、ステップS123の処理へ進み、エンジン1内を通過するHot時の冷却水ルートで冷却水を流通させることとする。このようにすることで、サーモスタット4が開弁してラジエータ3で放熱が行われる前に、排気熱回収器2で回収された熱をエンジン1に供給することができる。
一方、ECU20は、水温THW2が第2の所定温度以下になっていると判定した場合には(ステップS122:No)、三方弁6を制御して、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させることとする(ステップS124)。ECU20は、ステップS123、S124の処理が行った後、本制御処理を終了することとする。
なお、上述の第3実施形態では、第2の所定温度は予め決められているとしているが、これに限られるものではない。代わりに、例えば、サーモスタット4として、ECU20と接続され、運転者の運転の仕方などに応じて開弁開始温度が変化する電子サーモスタットを用いることとし、ECU20は、第2の所定温度を運転者の運転の仕方などに応じて変化させるとしてもよい。
また、上述の第3実施形態では、ECU20は、Cold時において、水温センサ9bにより検出された冷却水の水温THW2の方がエンジン1内の冷却水の水温THW1よりも高いと判定した場合には、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させるとともに、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させないとしている。しかし、これに限られるものではなく、代わりに、三方弁6として、流量配分三方弁を用いることとし、ECU20は、水温センサ9bにより検出された冷却水の水温THW2の方がエンジン1内の冷却水の水温THW1よりも高いと判定した場合には、エンジン1内のウォータジャケットにおける冷却水の流量を増加させ、エンジン1を迂回する迂回通路7d2における冷却水の流量を減少させるとしても良い。これにより、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートにおける冷却水の流量は増加し、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートにおける冷却水の流量は減少することとなる。これによっても、ラジエータ3による無駄な放熱を抑制することができ、エンジン1の暖機を促進することができる。
また、上述の第3実施形態では、排気熱回収器2における冷却水が流出する出口付近に水温センサ9bが設けられることとしているが、これに限られるものではなく、代わりに、Cold時冷却水ルート上の任意の場所に、例えば、排気熱回収器2における冷却水が流入する入口付近に、水温センサ9bが設けられるとしても良い。つまり、ECU20は、排気熱回収器2を流通する冷却水の水温がエンジン1内の冷却水の水温THW1よりも高いと判定した場合には、エンジン1内のウォータジャケットにおける冷却水の流量を増加させ、エンジン1を迂回する迂回通路7d2における冷却水の流量を減少させるとしても良い。これによっても上述の効果と同様の効果を得ることができる。
以上に説明した第3実施形態によれば、ラジエータ3による無駄な放熱を抑制することができ、エンジン1の暖機をより促進することができる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について述べる。第4実施形態に係る冷却水制御装置の構成は、図1に示した第1実施形態に係る冷却水制御装置100の構成と同様の構成である。
先に述べた第1実施形態では、Cold時において、三方弁6を制御することにより、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させるとともに、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させないとしていた。ここで、エンジン1の暖機が完了して、冷却水ルートを、Cold時冷却水ルートからHot時冷却水ルートへと切り替えた場合には、ヒータコア5に流入する冷却水の水温が急変するため、ヒータコア9の吹き出し温度も急変し、運転者が不快と感じることがある。このことは、冷却水の流通を、Hot時冷却水ルートからCold時冷却水ルートへと切り替えた場合であっても同様に起こりうる。
そこで、第4実施形態では、三方弁6は、エンジン1内のウォータジャケットにおける冷却水と、エンジン1を迂回する迂回通路7d2における冷却水と、を混合させる中間温度モードを有することとする。中間温度モードとは、具体的には、図1に示す三方弁6において、冷却水通路7fの方向の弁f3が全開になっているとともに、迂回通路7d2、冷却水通路7eの夫々の方向の弁f1、f2が半開になっているモード、又は、図1に示す三方弁6において、冷却水通路7fの方向の弁f3が全開になっているとともに、迂回通路7d2、冷却水通路7eの夫々の方向の弁f1、f2が十分に短い時間で交互に開閉を繰り返すモードである。
ECU20は、冷却水ルートの切り替え要求があった場合には、所定時間の間、三方弁6を中間温度モードに設定した後、冷却水ルートを切り替えることとする。このようにすることで、冷却水ルートの切替時において、エンジン1内のウォータジャケットにおける冷却水と、エンジン1を迂回する迂回通路7d2における冷却水と、を混合させることができる。このようにすることで、冷却水ルートの切り替えに伴う、ヒータコア5に流入する冷却水の水温の急変を抑制することができ、ヒータコア5の吹き出し温度の急変を抑制することができる。
(冷却水ルート切替処理)
次に、第4実施形態に係る冷却水ルート切替処理について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。第4実施形態に係る冷却水ルート切替処理では、冷却水ルートを切り替える際に、三方弁6を中間温度モードに設定する処理が行われる。以下に具体的に述べる。
ステップS131において、ECU20は、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートからエンジン1内を通過するHot時冷却水ルートへの切替要求があるか否かについて判定する。例えば、第1実施形態で述べたように、ECU20は、エンジン1内の冷却水の水温THW1に基づいて、エンジン1の暖機が完了したか否かを判定することにより、Cold時冷却水ルートからHot時冷却水ルートへの切替要求があるか否かを判定することができる。
ステップS131において、ECU20は、Cold時冷却水ルートからHot時冷却水ルートへの切替要求があると判定した場合には(ステップS131:Yes)、ステップS132の処理へ進む。
ステップS132において、ECU20は、暖房中か否かについて判定する。例えば、ECU20は、暖房要求の有無などにより、暖房中か否かについて判定することができる。ECU20は、暖房中でないと判定した場合には(ステップS132:No)、Hot時冷却水ルートへ切り替える(ステップS137)。一方、ECU20は、暖房中であると判定した場合には(ステップS132:Yes)、三方弁6を中間温度モードに設定し(ステップS133)、所定時間(例えば5秒間)経過した後(ステップS135)、Hot時冷却水ルートへ切り替える(ステップS137)。このようにすることで、ヒータコア5に流入する冷却水の水温の急変を抑制することができ、ヒータコア5の吹き出し温度の急変を抑制することができる。この所定時間は、予め実験などにより求められ、ROMなどに記憶されている。ECU20は、ステップS137の処理を行った後、本制御処理を終了する。
なお、ステップS133の処理の後、ECU20は、水温センサ9aからの検出信号に基づいて、エンジン1内の冷却水の水温THW1が、所定温度よりも高くなっていると判定した場合には(ステップS134)、所定時間が経過する前に、三方弁6の中間温度モードを終了し(ステップS136)、Hot時の冷却水ルートへ切り替える(ステップS137)。この所定温度とは、冷却水の沸点以下の温度で設定され、例えば100℃程度である。この所定温度は、予め実験などにより求められ、ROMなどに記憶されている。ステップS134の処理を行う理由は、エンジン1内の冷却水の水温が沸点に達するような場合には、速やかに冷却水を冷却する必要があるからである。
ステップS131の処理へ戻り、ECU20は、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートからエンジン1内を通過するHot時冷却水ルートへの切替要求がないと判定した場合には(ステップS131:No)、ステップS141の処理へ進み、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートからエンジン1を迂回するCold時冷却水ルートへの切替要求があるか否かについて判定する。ECU20は、例えば、エンジン1内の冷却水の水温THW1に基づいて、エンジン1の暖機が必要か否かを判定することにより、Hot時冷却水ルートからCold時冷却水ルートへの切替要求があるか否かを判定することができる。ECU20は、Hot時冷却水ルートからCold時冷却水ルートへの切替要求があると判定した場合には(ステップS141:Yes)、ステップS142の処理へ進み、Hot時冷却水ルートからCold時冷却水ルートへの切替要求がないと判定した場合には(ステップS141:No)、本制御処理を終了する。
ステップS142〜ステップS146までの処理は、ステップS132〜ステップS136までの処理と同様であるので詳細な説明を省略する。簡単に説明すると、ECU20は、三方弁6を中間温度モードに設定した場合において(ステップS143)、所定時間(例えば5秒間)経過した場合(ステップS145)、又は、エンジン1内の冷却水の水温THW1が、所定温度(例えば100℃)よりも高くなっていると判定した場合には(ステップS144)、Cold時冷却水ルートへと切り替える(ステップS147)。このようにすることで、ヒータコア5に流入する冷却水の水温の急変を抑制することができ、ヒータコア5の吹き出し温度の急変を抑制することができる。ECU20は、ステップS147の処理を行った後、本制御処理を終了する。
以上に説明した第4実施形態によれば、冷却水ルートの切り替えに伴う、ヒータコア5に流入する冷却水の水温の急変を抑制することができ、ヒータコア5の吹き出し温度の急変を抑制することができる。
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態に係る冷却水制御装置100bの構成を図7に示すこととする。
先に述べた第1実施形態では、Cold時において、三方弁6を制御することにより、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させるとしていた。このとき、図1に示したように、第1実施形態に係る冷却水制御装置100では、排気熱回収器2で熱を回収した冷却水は、冷却水通路7a、7b、7d2、7fを通過した後、ヒータコア5に達することとなる。しかしながら、このとき、排気熱回収器2で熱を回収した冷却水は、ヒータコア5に達する前に放熱してしまう。具体的には、冷却水は、冷却水通路7a、7b、7d2、7fを通過する際に放熱してしまう。そのため、第1実施形態に係る冷却水制御装置100では、ヒータコア5の要求熱量を満たすのが困難になる恐れがある。
そこで、第5実施形態に係る冷却水制御装置100bでは、第1実施形態に係る冷却水制御装置100と異なり、図7に示すように、ヒータコア5が、排気熱回収器2の下流側の冷却水通路7a上に設けられることとする。この場合、図7に示すように、排気熱回収器2で熱を回収した冷却水は、ヒータコア5に達するまでに、第1実施形態に係る冷却水制御装置100の場合と比較して、より短い距離の冷却水通路7(冷却水通路7aの一部)を通過することとなる。従って、第5実施形態に係る冷却水制御装置100bでは、第1実施形態に係る冷却水制御装置100と比較して、冷却水通路7における冷却水の放熱を最小限に抑えることができ、ヒータコア5における放熱量を増加させることができる。
また、第5実施形態に係る冷却水制御装置100bでは、エンジン1の下流側で、かつ、排気熱回収器2の上流側の冷却水通路に、冷却水の水温を検出するための水温センサ9bが設けられている。このようにすることで、ECU20は、水温センサ9aにより検出されたエンジン1内の冷却水の水温THW1と、水温センサ9bにより検出された冷却水の水温THW2と、を比較することにより、水温センサ9a、9bのうち、どちらか一方が故障しているか否かを判定することができる。具体的には、ECU20は、水温THW1と水温THW2とが略一致する場合には、水温センサ9a、9bはどちらも正常に機能していると判定することができる。一方、ECU20は、水温THW1と水温THW2とが大きく異なる場合には、水温センサ9a、9bのうち、どちらか一方が故障していると判定することができる。
ECU20は、水温センサ9a、9bのうち、どちらか一方が故障していると判定した場合には、冷間始動時において、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートではなく、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させることとする。そして、ECU20は、水温センサ9aに検出された水温THW1、水温センサ9bによって検出された水温THW2の夫々についての水温の上昇度合いを検出する。ここで、ECU20は、エンジン1の消費燃料量に基づくことによっても、エンジン1内の冷却水の水温の上昇度合いを推定することができる。従って、ECU20は、検出された水温THW1、THW2の夫々についての上昇度合いを、消費燃料量に基づいて推定された冷却水の水温の上昇度合いと比較することにより、問題のある水温センサを特定することができる。
(第5実施形態の変形例)
ここで、第5実施形態の変形例について説明する。第5実施形態の変形例に係る冷却水制御装置100baの構成を図8に示すこととする。先に述べた第5実施形態に係る冷却水制御装置100bでは、排気熱回収器2の下流側の冷却水通路7aにヒータコア5が設けられるとしていた。そのため、排気熱回収器2内で冷却水が沸騰することにより発生した気泡がヒータコア5に流れ込むことがある。この場合には、ヒータコア5に異音が発生して、運転者に不快感を与える恐れがある。
そこで、第5実施形態の変形例に係る冷却水制御装置100baでは、冷却水制御装置100bの構成要素に加え、排気熱回収器2とヒータコア5との間の冷却水通路7aに、冷却水の水温を検出するための水温センサ9cが設けられることとする。水温センサ9cは、検出した水温THW3に対応する検出信号S9cをECU20に供給する。ECU20は、水温センサ9cにより検出された冷却水の水温THW3が所定温度よりも高くなると判定した場合には、冷却水が沸騰する恐れがあるとして、電動WP8を制御することにより、冷却水通路7aにおける冷却水の流量を増加させることとする。ここで、この所定温度は、冷却水の沸点よりも低い温度に設定され、例えば110℃程度である。この所定温度は、予め実験などにより求められ、ROMなどに記憶されている。このようにすることで、排気熱回収器2内の冷却水の沸騰するのを抑えることができ、気泡がヒータコア5に流れ込むことによるヒータコア5に発生する異音を防ぐことができる。
また、排気熱回収器2とヒータコア5との間の冷却水通路に水温センサ9cを設けることにより、デッドソーク時における排気熱回収器2内の冷却水の沸騰も検出することができる。
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係る冷却水制御装置について説明する。第6実施形態に係る冷却水制御装置100cの構成を図9に示すこととする。
先に述べた第1実施形態では、Cold時において、三方弁6を制御することにより、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させるとともに、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させないとしていた。しかしながら、軽負荷走行時などの排気損失が少ない状態では、排気熱回収器2による回収熱量がヒータコア5の要求熱量よりも小さくなり、逆に言うと、第2実施形態のときと同様、ヒータコア5の要求熱量が排気熱回収器2による回収熱量よりも大きくなり、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させるのみでは、ヒータコア5の要求熱量を満たすことができなくなる。
そこで、第6実施形態に係る冷却水制御装置100cでは、ECU20は、吸入空気量に基づいて、排気熱回収器2による回収熱量がヒータコア5の要求熱量よりも小さくなるか否か(逆に言うと、第2実施形態と同様、ヒータコア5の要求熱量が排気熱回収器2による回収熱量よりも大きくなるか否か)について判定することとする。具体的には、まず、ECU20は、エアフローセンサ(A/Fセンサ)11からの検出信号S11に基づいて、吸入空気量を求める。そして、ECU20は、Cold時において、吸入空気量が所定量よりも小さいと判定した場合には、排気熱回収器2による回収熱量がヒータコア5の要求熱量よりも小さくなると判定することとする。ここで、所定量は、吸入空気量がこの値よりも小さくなると、排気熱回収器2による回収熱量がヒータコア5の要求熱量よりも小さくなると予測することができる値である。
ECU20は、吸入空気量が所定量よりも小さいと判定した場合、即ち、排気熱回収器2による回収熱量がヒータコア5の要求熱量よりも小さくなると判定した場合には、エンジン内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させることとする。このようにすることで、軽負荷走行時等のように排気損失が少ないがために、排気熱回収器2による回収熱量がヒータコア5の要求熱量よりも小さくなる場合において、エンジン1の燃焼熱によって加温された比較的高温の冷却水をヒータコア5に供給することができ、ヒータコア5の要求熱量を満たすことができる。
(冷却水ルート切替制御処理)
次に、第6実施形態に係る冷却水ルート切替処理について、図10に示すフローチャートを用いて説明する。第6実施形態に係る冷却水ルート切替制御処理では、ECU20は、Cold時において、吸入空気量が所定量よりも小さいと判定された場合には、エンジン内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させることとする。
ステップS201において、ECU20は、A/Fセンサ11からの検出信号S11に基づいて求められた吸入空気量が所定量よりも小さいか否かについて判定する。この所定量は、吸入空気量がこの値よりも小さくなると、排気熱回収器2による回収熱量がヒータコア5の要求熱量よりも小さくなると予測することができる値であり、例えば、3g/sec程度である。この所定量は、予め実験などにより求められ、ROMなどに記録されている。
ステップS201において、ECU20は、吸入空気量が所定量よりも小さいと判定した場合には(ステップS201:Yes)、排気熱回収器2による回収熱量がヒータコア5の要求熱量よりも小さくなると判定し、三方弁6を制御して、冷却水ルートを切り替え、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させる(ステップS202)。これにより、エンジン1の燃焼熱によって加温された比較的高温の冷却水をヒータコア5に供給することができる。一方、ECU20は、吸入空気量が所定量以上であると判定した場合には(ステップS201:No)、冷却水ルートを切り替えないで、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートのまま、冷却水を流通させる(ステップS203)。ECU20は、ステップS201、S203の処理を実行した後、本制御処理を終了する。
なお、上述の第6実施形態では、ECU20は、吸入空気量に基づいて、排気熱回収器2による回収熱量がヒータコア5の要求熱量よりも小さくなるか否かについて判定することとしているが、これに限られるものではない。吸入空気量に基づく代わりに、燃料量に基づいて、排気熱回収器2による回収熱量がヒータコア5の要求熱量よりも小さくなるか否かについて判定することとしてもよい。これにより、空燃比が変動した場合であっても、正確に判定することができる。または、吸入空気量に基づく代わりに、排気温度を計測することによって排気損失を推測し、推測された排気損失に基づいて、排気熱回収器2による回収熱量がヒータコア5の要求熱量よりも小さくなるか否かについて判定することとしてもよい。これにより、燃焼状態が変化して、排気損失割合が変化した場合であっても、正確に判定することができる。
また、上述の第6実施形態では、ECU20は、吸入空気量が所定量よりも小さいと判定した場合には、エンジン内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させることとしていた。即ち、Cold時冷却水ルートで冷却水を流通させないとしていた。しかし、これに限られるものではなく、代わりに、三方弁6として、流量配分三方弁を用いることとし、ECU20は、吸入空気量が所定量よりも小さいと判定した場合には、エンジン1内のウォータジャケットにおける冷却水の流量を増加させ、エンジン1を迂回する迂回通路7d2における冷却水の流量を減少させるとしても良い。即ち、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートにおける冷却水の流量を増加させ、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートにおける冷却水の流量は減少させることとしてもよい。このようにしても、ヒータコア5の要求熱量を満たすことができる。
以上に説明した第6実施形態によれば、軽負荷走行時等のように排気損失が少なくなることにより、排気熱回収器2による回収熱量がヒータコア5の要求熱量よりも小さくなる場合において、エンジン1の燃焼熱によって加温された比較的高温の冷却水をヒータコア5に供給することができる。これにより、ヒータコア5の要求熱量を満たすことができ、暖房要求等を満たすことができる。また、吸入空気量に基づいて、排気熱回収器2による回収熱量の減少を予測して、上述の冷却水ルート切替制御を行うことにより、切替制御のタイムラグを防ぐことができる。
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態に係る冷却水制御装置について説明する。第7実施形態に係る冷却水制御装置の構成は、第6実施形態に係る冷却水制御装置100cの構成と同様の構成である。
先に述べた第6実施形態では、吸入空気量が所定量よりも小さい場合には、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させることとしていた。しかしながら、走行中において、一時的にアクセルオフを行う等の一時的な吸入空気量低下に追従して、Hot時冷却水ルートで冷却水を流通させるとすると、エンジン1の暖機が阻害されてしまう恐れがある。
そこで、第7実施形態では、ECU20は、Cold時において、吸入空気量が第1の所定量よりも小さいと判定した場合であっても、吸入空気量の所定時間における積算量(以下、「積算吸気量」と称す)が第2の所定量よりも大きくなっていると判定した場合には、Hot時冷却水ルートで冷却水を流通させるのを禁止することとする。即ち、Cold時冷却水ルートで冷却水を流通させることとする。ここで、第1の所定量は、第6実施形態における所定量に相当し、吸入空気量がこの値よりも小さくなると、排気熱回収器2による回収熱量がヒータコア5の要求熱量よりも小さくなると予測することができる値である。第2の所定量は、積算吸気量がこの値よりも大きくなる場合には、一時的な吸入空気量低下であると判定することができる値である。このようにすることで、一時的な吸入空気量の変動による影響を除外することができ、エンジン1の暖機促進を図ることができる。
(冷却水ルート切替制御処理)
次に、第7実施形態に係る冷却水ルート切替処理について、図11に示すフローチャートを用いて説明する。第7実施形態に係る冷却水ルート切替制御処理では、Cold時において、吸入空気量が第1の所定量よりも小さいと判定された場合であっても、吸入空気量の所定時間における積算量が第2の所定量以上になっていると判定された場合には、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させるのを禁止して、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させることとする。
ステップS211において、ECU20は、A/Fセンサ11からの検出信号に基づいて求められた吸入空気量が第1の所定量よりも小さいか否かについて判定する。ECU20は、吸入空気量が第1の所定量以上になっていると判定した場合には(ステップS211:No)、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートのまま、冷却水を流通させる(ステップS214)。ここで、第1の所定量は、吸入空気量がこの値よりも小さくなると、排気熱回収器2による回収熱量がヒータコア5の要求熱量よりも小さくなると予測することができる値であり、例えば、3g/sec程度である。この第1の所定量は、予め実験などにより求められ、ROMなどに記録されている。
ステップS211において、ECU20は、吸入空気量が第1の所定量よりも小さいと判定した場合には(ステップS211:Yes)、吸入空気量の所定時間における積算量、即ち、積算空気量が第2の所定量よりも大きくなっているか否かについて判定する(ステップS212)。ここで、第2の所定量は、積算吸気量がこの値よりも大きい場合には、一時的な吸入空気量低下であると判定することができる値であり、例えば30g程度である。この第2の所定量は、予め実験などにより求められ、ROMなどに記録されている。また、所定時間も、予め実験などにより求められ、ROMなどに記録されている。
ステップS212において、ECU20は、積算空気量が第2の所定量よりも大きくなっていると判定した場合には(ステップS212:Yes)、一時的な吸入空気量低下であると判定して、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートのまま、冷却水を流通させる(ステップS214)。一方、ECU20は、積算空気量が第2の所定量以下である判定した場合には(ステップS212:No)、一時的な吸入空気量低下ではないと判定して、三方弁6を制御して、エンジン1を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させることとする(ステップS213)。ステップS212の処理により、一時的な吸入空気量の変動による影響を除外することができ、エンジン1の暖機促進を図ることができる。
ECU20は、ステップS213、S214の処理を行った後、積算空気量をリセットして(ステップS215)、本制御処理を終了する。
なお、上述の第7実施形態では、ECU20は、Cold時において、吸入空気量が第1の所定量よりも小さいと判定した場合であっても、吸入空気量の所定時間における積算量が第2の所定量よりも大きくなっていると判定した場合には、Hot時冷却水ルートで冷却水を流通させるのを禁止するとしている。しかし、これに限られるものではなく、代わりに、三方弁6として、流量配分三方弁を用いることとし、ECU20は、Cold時において、吸入空気量が第1の所定量よりも小さいと判定した場合であっても、吸入空気量の所定時間における積算量が第2の所定量よりも大きくなっていると判定した場合には、エンジン1内のウォータジャケットにおける冷却水の流量を増加させるのを禁止する、即ち、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートにおける冷却水の流量を増加させるのを禁止するとしてもよい。このようにしても、一時的な吸入空気量の変動による影響を除外することができ、エンジン1の暖機促進を図ることができる。
以上に述べた第7実施形態によれば、一時的な吸入空気量の変動による影響を除外することができ、エンジン1の暖機促進を図ることができる。
[第8実施形態]
次に、本発明の第8実施形態に係る冷却水制御装置について説明する。第8実施形態に係る冷却水制御装置100da、100dbの構成を夫々、図12、図13に示すこととする。図12、13において、ヒータブロア5aは、ヒータコア5のヒータブロアを示している。ヒータブロア5aは、ECU20からの制御信号S5aによって制御される。
先に述べた第1実施形態では、Cold時において、三方弁6を制御することにより、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させるとともに、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させないとしていた。このとき、エンジン1内における冷却水の流れは停止しているため、水温センサ9aによって検出されたエンジン1内の冷却水の水温は、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで流通している冷却水の温度と比較して高い温度を示す。従って、このとき、エンジン1内における冷却水の水温が一般的なヒータブロアの作動温度(例えば40℃)となったとき、ヒータコア5に供給される冷却水(Cold時冷却水ルートにおける冷却水)の水温は、この作動温度よりも低くなっている。そのため、エンジン1内における冷却水の水温が一般的なヒータブロアの作動温度となったときに、ヒータブロア5aを作動させた場合、ヒータコア5より低温の風が吹き出すこととなり、運転者に不快感を与える恐れがある。また、このことに鑑みて、エンジン1内における冷却水の水温が、一般的なヒータブロアの作動温度よりも高い温度(例えば80℃)となったときに、ヒータブロア5aを作動させるように設定すると、ヒータコア5に供給される冷却水の温度が一般的なヒータブロアの作動温度になってもヒータブロア5aが作動しなくなる恐れがある。このように、エンジン1内の冷却水の水温に基づいて、ヒータブロア5aを制御した場合、暖房性能が悪化する恐れがある。
そこで、第8実施形態では、Cold時において、ヒータコア5における冷却水が流入する入口付近の水温(以下、単に「ヒータコア入口水温」と称す)に基づいて、ヒータコア5のヒータブロア風量を制御することとする。
まず、ヒータコア入口水温を求める方法としては、2つの方法が考えられる。1つ目の方法は、例えば、図12の冷却水制御装置100daに示すように、ヒータコア5における冷却水が流入する入口付近の冷却水通路7f上に水温センサ9bを設ける方法である。このようにすることで、ECU20は、水温センサ9bからの検出信号S9bに基づいて、ヒータコア入口水温を求めることができる。
2つ目の方法は、図13の冷却水制御装置100dbに示すように、A/Fセンサ11からの検出信号S11に基づいて吸入空気量を求め、吸入空気量の積算値(積算吸入空気量)とヒータブロア風量の積算値(積算ヒータブロア風量)とに基づいて、ヒータコア入口水温を推定する方法である。これにより、ヒータコア5における冷却水が流入する入口付近の冷却水通路7f上に水温センサを設けることなく、ヒータコア入口水温を求めることができる。
ここで、ヒータコア入口水温の推定方法について、具体的に述べる。エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートでは、エンジン1の始動時からの冷却水の水温の上昇温度は、排気熱回収器2で回収される回収熱量の積算値からヒータコア5の放熱量の積算値を引いた値(回収熱量の積算値−放熱量の積算値)に比例する。ここで、回収熱量の積算値は積算吸入空気量に比例し、ヒータコア5の放熱量の積算値は積算ヒータブロア風量に比例する。そこで、比例定数をA、Bとし、エンジン1の始動時における冷却水の水温を水温STHWとすると、ヒータコア入口水温HTHWは以下の式(1)で算出することができる。なお、比例定数A、Bは、予め実験などにより決められており、ROMなどに記録されている。
HTHW=A×積算吸入空気量−B×積算ヒータブロア風量+STHW・・・(1)
従って、ECU20は、A/Fセンサ11からの検出信号S11に基づいて、積算吸入空気量を求めるとともに、ヒータブロア5aに供給した制御信号に基づいて、積算ヒータブロア風量を求めて、式(1)に、求められた積算吸入空気量、積算ヒータブロア風量を代入することにより、ヒータコア入口水温HTHWを推定することができる。これにより、図13に示すように、ヒータコア5の冷却水が流入する入口付近に水温センサを新たに設けなくても、ヒータコア入口水温HTHWを推定することができる。
ECU20は、上述したヒータコア入口水温を求める2つの方法のうち、いずれか一つを用いて求められたヒータコア入口水温に基づいて、ヒータブロア5aを制御することにより、ヒータブロア風量を制御することとする。具体的には、ECU20は、ヒータコア入口水温HTHWを基に、以下の式(2)を用いて、ヒータブロア風量を求めた後、ヒータブロア5aを制御して、求められたヒータブロア風量に調節する。なお、定数Cも予め実験などにより決められており、ROMなどに記録されている。
ヒータブロア風量
= 最大ヒータブロア風量−C×(HTHW−ヒータブロアの作動温度)・・・(2)
このように、ヒータコア5におけるヒータコア入口水温に基づいて、ヒータコア5のヒータブロア風量を制御することで、ヒータコア5の暖房性能の悪化を防ぐことができる。
(ヒータブロア風量制御処理)
ヒータコア入口水温を式(1)で推定し、推定されたヒータコア入口水温に基づいて、ヒータブロア風量を制御する処理について、図14に示すフローチャートを用いて説明することとする。図14において、「ブロア風量」とはヒータブロア風量を示すものとし、「GA」とは吸入空気量を示すものとする。
ステップS301において、ECU20は、エンジン1の運転状態などに基づいて、エンジン1が始動中にあるか否かについて判定する。ECU20は、エンジン1が始動中にないと判定した場合には(ステップS301:No)、ステップS303の処理へ進む。ECU20は、エンジン1が始動中にあると判定した場合には(ステップS301:Yes)、水温センサ9aにより検出されたエンジン1内の冷却水の水温THW1を、エンジン1の始動時の水温STHWとして設定した後(ステップS302)、ステップS303の処理へ進む。
ステップS303において、ECU20は、例えば、三方弁6に供給した制御信号S6などに基づいて、Cold時制御中か否か、即ち、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させているか否かについて判定する。ECU20は、Cold時制御中でない、即ち、Cold時冷却水ルートで冷却水を流通させていないと判定した場合には(ステップS303:No)、Hot時冷却水ルートで冷却水を流通させていることとなるので、エンジン1内の冷却水の水温THW1をヒータコア入口水温HTHWとして設定するとともに、積算ヒータブロア風量及び積算吸入空気量を0に設定する(ステップS307)。一方、ECU20は、Cold時制御中、即ち、Cold時冷却水ルートで冷却水を流通させていると判定した場合には(ステップS303:Yes)、ステップS304の処理へ進む。
ステップS304において、ECU20は、A/Fセンサ11からの検出信号S11に基づいて、吸入空気量を求めた後、求められた吸入空気量を、前回実行された本制御処理で求められた積算吸入空気量に加算する。ステップS305において、ECU20は、ヒータコア5に供給した制御信号に基づいて、ヒータブロア風量を求めた後、求められたヒータブロア風量を、前回実行された本制御処理で求められた積算ヒータブロア風量に加算する。ステップS306において、ECU20は、ステップS302で求められた水温STHW、ステップS304で求められた積算吸入空気量、ステップS305で求められた積算ヒータブロア風量、を式(1)に代入することにより、ヒータコア入口水温HTHWを求める。このようにすることで、ヒータコア5の冷却水が流入する入口付近に水温センサを新たに設けなくても、ヒータコア入口水温HTHWを推定することができる。
ステップS308において、ECU20は、ヒータコア入口水温HTHWがヒータブロア5aの作動温度よりも高くなっているか否かを判定し、ヒータコア入口水温HTHWが当該作動温度以下であると判定した場合には(ステップS308:No)、ヒータブロア5aの作動を停止する(ステップS210)。ここで作動温度は、人間の体温よりも高い温度に設定され、例えば40℃程度である。作動温度は、予め、実験などにより求められ、ROMなどに記録されている。一方、ECU20は、ヒータコア入口水温HTHWが当該作動温度よりも高くなっていると判定した場合には(ステップS308:Yes)、ヒータブロア5aを制御することにより、ヒータブロア風量を調節する。具体的には、ECU20は、式(2)を用いて、ヒータブロア風量を求め、ヒータブロア5aのヒータブロア風量を、式(2)を用いて求められたヒータブロア風量に調節する(ステップS309)。これにより、ヒータコア5の暖房性能の悪化を防ぐことができる。この後、ECU20は、本制御処理を終了する。
以上に説明した第8実施形態によれば、Cold時におけるヒータコア5の暖房性能の悪化を防ぐことができる。
[第9実施形態]
次に、本発明の第9実施形態に係る冷却水制御装置について説明する。第9実施形態に係る冷却水制御装置100eの構成を図15に示すこととする。第9実施形態に係る冷却水制御装置100eでは、エンジン1内の水温を検出する水温センサ9aに加えて、ヒータコア9の上流側の冷却水通路7fに水温センサ9bを設けることとしている。水温センサ9bは、ヒータコア5に流入する冷却水の入口付近の水温THW2を検出する。
先に述べた第1実施形態では、水温センサ9aによって検出されたエンジン1内の冷却水の水温THW1が所定温度(例えば90℃)よりも高くなっているか否かを判定し、水温センサ9aにより検出された水温THW1が当該所定温度よりも高くなっていると判定した場合には、暖機が完了したとして、エンジン1を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させることとし、水温THW1が当該所定温度以下になっていると判定した場合には、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させることとしていた。
しかしながら、水温センサ9aは、エンジン1に取り付けられているため、エンジン1内の冷却水の流れが停止していると、エンジン1本体を構成している金属の温度に近い水温を示すこととなり、エンジン1内の冷却水の水温を正確に検出することができなくなる。以下に、図16を用いて具体的に述べる
図16(a)、(b)は、時間の経過に対する冷却水の水温変化の様子を示すグラフである。図16(a)は、水温センサ9aによって検出された水温THW1に基づいて、冷却水ルートを切り替えた場合における、水温THW1、THW2、冷却水センサ9a近傍の水温の夫々の時間に対する変化を示すグラフである。
最初のCold時では、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水が流通し、エンジン1内の冷却水の流通は停止している。そのため、シリンダヘッド側の冷却水の水温は、エンジン1の燃焼熱によって加温されやすいため、時間の経過とともに上昇する。しかし、シリンダヘッドから離れたシリンダブロック側の冷却水の水温は、エンジン1の燃焼熱によって殆ど加温されないため、余り上昇しない。なお、ここで、シリンダブロック側の冷却水の水温としては、Cold時において、冷却水の流通が停止している冷却水通路7d1における冷却水の水温も含む。なぜなら、冷却水通路7d1における冷却水の水温も、エンジン1の燃焼熱によって殆ど加温されないからである。
水温センサ9aは、エンジン1のシリンダヘッドに近い位置に取り付けられているため、シリンダヘッド側の冷却水の水温を検出する。そのため、Cold時において、水温センサ9aにより検出された水温THW1は、時間の経過とともに上昇する。ここで、図16(a)において、水温センサ9a近傍の水温とは、水温センサ9aより少し離れた箇所における水温のことである。具体的には、水温センサ9a近傍の水温は、シリンダヘッド側の水温とシリンダブロック側の水温との中間程度の水温を示す。従って、水温THW1は、シリンダヘッド側の冷却水の水温を示すため、水温センサ9a近傍の水温と比較して高くなる。
また、最初のCold時において、水温センサ9bによって検出される水温THW2は、Cold時冷却水ルートにおける冷却水の水温、即ち、排気熱回収器2から迂回通路7d2を通過してヒータコア5に流入する冷却水の水温となる。従って、水温THW2は、冷却水が排気熱回収器2によって加温されることにより、時間の経過とともに上昇する。
ECU20は、水温センサ9aによって検出された水温THW1が、第1の所定温度(例えば90℃)よりも高くなった場合には、暖機が完了したとして、即ち、Hot時になったとして、冷却水ルートをHot時冷却水ルートに切り替える。このとき、エンジン1内の冷却水が流通することとなるため、シリンダヘッド側の加温された冷却水はエンジン1内より押し出され、水温センサ9aは、Cold時においてエンジンブロック側にあった冷却水の水温を検出することとなる。そのため、水温THW1は、Hot時になった直後において低下する。また、このとき、Cold時においてエンジンブロック側にあった冷却水が冷却水通路7fに流出することにより、水温センサ9bによって検出される水温THW2も低下する。
次に、ECU20は、Hot時において、水温センサ9aによって検出された水温THW1が、第2の所定温度(例えば体温よりも高い温度である50℃)よりも低くなった場合には、暖機が必要であるとして、冷却水ルートをCold時冷却水ルートに切り替える。これにより、エンジン1内の冷却水が冷却水通路7fに流出することはなくなり、排気熱回収器2によって加温された冷却水が、迂回通路7d2を介してヒータコア5に流入する。従って、水温センサ9bにより検出された水温THW2は、再び上昇する。また、エンジン1内の冷却水の温度THW1も、エンジン1の燃焼熱によって加温されることにより上昇する。
しかしながら、ECU20は、Hot時において、水温センサ9aにより検出された水温THW1が第2の所定温度よりも低くなるまで、冷却水ルートをCold時冷却水ルートに切り替えないとすると、図16(a)に示すように、Hot時において、水温THW2が第2の所定温度よりも低くなる状態が発生してしまう。これは、先に述べたように、水温THW1は、シリンダヘッド側の冷却水の水温を示し、ヒータコア5に流入する冷却水の入口付近の水温THW2よりも高い温度を示すためである。このとき、ヒータコア5には、第2の所定温度よりも低い水温の冷却水が流れ込むため、車室内が暖房中の場合には、ヒータコア5より、冷たいと感じる暖房風が吹き出すこととなり、運転者に不快感を与える場合がある。
そこで、第9実施形態に係る冷却水制御装置100eでは、ECU20は、Hot時において、水温センサ9aにより検出された水温THW1が第2の所定温度よりも高い場合であっても、水温センサ9bにより検出された水温THW2が第2の所定温度よりも低い場合には、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させることとする。
図16(b)は、水温センサ9aによって検出された水温THW1、及び、水温センサ9bによって検出された水温THW2に基づいて、冷却水ルートを切り替えた場合のグラフ、即ち、第9実施形態に係る冷却水ルート切替処理を行った場合のグラフを示している。
図16(b)に示すように、第9実施形態では、ECU20は、Hot時において、水温センサ9bにより検出された水温THW2が第2の所定温度よりも低くなった場合に、冷却水ルートをCold時冷却水ルートに切り替える。このようにすることで、ヒータコア5に流入する冷却水の水温THW2が第2の所定温度よりも低くなるのを抑えることができ、車室内が暖房中の場合には、ヒータコア5より、冷たいと感じる暖房風が吹き出すのを抑えることができる。
(冷却水ルート切替処理)
次に、第9実施形態に係る冷却水ルート切替処理について、図17に示すフローチャートを用いて説明する。第9実施形態に係る冷却水ルート切替制御処理では、エンジン1の暖機が完了したか否かを判定して冷却水ルートを切り替える処理に加え、水温センサ9bにより検出された水温THW2が第2の所定温度よりも低くなっている場合には、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させる処理を行うこととする。
ステップS401において、ECU20は、Hot時であるか否か、即ち、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させているか否かについて判定する。ECU20は、Hot時冷却水ルートで冷却水を流通させていないと判定した場合(ステップS401:No)、即ち、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させていると判定した場合には、ステップS403の処理へ進む。
ステップS403において、ECU20は、水温センサ9aによって検出された水温THW1が第1の所定温度よりも高いか否かについて判定する。ECU20は、水温センサ9aによって検出された水温THW1が第1の所定温度よりも高いと判定した場合には(ステップS403:Yes)、Hot時冷却水ルートで冷却水を流通させることとし(ステップS405)、水温THW1が第1の所定温度以下であると判定した場合には(ステップS403:No)、本制御処理を終了する。つまり、ステップS403の処理は、エンジン1の暖機が完了したか否かを判定するための処理である。従って、第1の所定温度は、エンジン1の暖機が完了したか否かを判定するための基準となる温度であり、例えば90℃程度である。第1の所定温度は、予め、実験などにより求められ、ROMなどに記憶されている。
ステップS401において、ECU20は、Hot時冷却水ルートで冷却水を流通させていると判定した場合には(ステップS401:Yes)、ステップS402の処理へ進む。ステップS402において、ECU20は、水温センサ9bによって検出された水温THW2が第2の所定温度よりも低いと判定した場合には(ステップS402:Yes)、Cold時冷却水ルートで冷却水を流通させることとし(ステップS404)、水温THW2が第2の所定温度以上であると判定した場合には(ステップS402:No)、本制御処理を終了する。ここで、第2の所定温度は、人間の体温よりも高い温度であり、例えば50℃に設定される。第2の所定温度は、予め、実験などにより求められ、ROMなどに記録されている。このようにすることで、Hot時において、ヒータコア5に流入する冷却水の水温が第2の所定温度よりも低くなるのを抑えることができ、車室内が暖房中の場合には、ヒータコア5より、冷たいと感じる暖房風が吹き出すのを抑えることができる。
なお、上述の第9実施形態では、Hot時において、水温センサ9bにより検出された水温THW2が第2の所定温度よりも小さくなると判定した場合には、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させるとしていた。しかし、これに限られるものではなく、代わりに、三方弁6として、流量配分三方弁を用いて、夫々のルートにおける冷却水の流量を調節するとしても良い。具体的には、ECU20は、三方弁6を用いて、Hot時において、水温センサ9bにより検出された水温THW2が第2の所定温度よりも小さくなると判定した場合には、迂回通路7d2における冷却水の流量を増加させることにより、Cold時冷却水ルートにおける冷却水の流量を増加させ、エンジン1内における冷却水の流量を減少させるとしても良い。これによっても、ヒータコア5に流入する冷却水の水温が第2の所定温度よりも低くなるのを抑えることができ、車室内が暖房中の場合に、ヒータコア5より、冷たいと感じる暖房風が吹き出すのを抑えることができる。
以上の第9実施形態によれば、ヒータコア5に流入する冷却水の水温が第2の所定温度よりも低くなるのを抑えることができ、車室内が暖房中の場合には、ヒータコア5より、冷たいと感じる暖房風が吹き出すのを抑えることができる。
[第10実施形態]
次に、本発明の第10実施形態に係る冷却水制御装置について説明する。第10実施形態に係る冷却水制御装置100fの構成を図18に示すこととする。
先に述べた第1実施形態では、Cold時において、三方弁6を制御することにより、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させるとともに、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させないとしていた。このとき、エンジン1内の冷却水は、流通していないため、エンジン1の燃焼熱により沸騰しやすくなり、気泡が生じ、冷却水通路7における圧力が上昇して、冷却水漏れを引き起こす恐れがある。しかしながら、エンジン1内における冷却水は流通していないので、ラジエータ3で放熱することができず、冷却水通路7における圧力を下げることは難しい。また、圧力弁などを用いて、水蒸気を冷却水通路7より放出した場合には、放出した蒸気が周辺部品に付着し、周辺部品の劣化及び故障を引き起こす恐れがあるとともに、冷却水の消費が促進される恐れがある。
そこで、第10実施形態に係る冷却水制御装置100fでは、図18に示すように、第1実施形態に係る冷却水制御装置100の構成要素に加えて、エンジン1内に接続されたエア回収器15を備えることとする。エア回収器15は、エンジン1内の冷却水に生じた気泡を回収するための装置であり、エンジン1内のウォータジャケットとエア回収通路7bsを介して接続されている。
ここで、エア回収器15の構成について図19を用いて詳細に説明する。図19は、エア回収器15及びエンジン1の内部構造を示す断面図である。
エンジン1は、複数のシリンダ31を有し、各シリンダ31内では、ピストン33が、シリンダ31の上下方向に動作可能に設置されている。シリンダ31の上部には、シリンダヘッド32が装着されている。エンジン1内では、シリンダ31及びシリンダヘッド32を包み込むようにして、ウォータジャケット37が設けられている。図19において、ウォータジャケット37、冷却水通路7d1、7eにおけるハッチングは冷却水を示している。
エア回収器15の内部には、空洞のエア回収スペース34が設けられている。エア回収スペース34には、エア回収通路7bsの一端が接続されている。エア回収通路7bsの他端は、エンジン1内における、シリンダヘッド32の近傍等、冷却水の沸騰が生じやすい箇所と接続されている。エア回収スペース34がウォータジャケット37よりも高位置となるように、エア回収器15は、エンジン1に対し設置される。例えば、エア回収器15は、エンジン1の上方に設置される。このようにすることで、沸騰により冷却水に発生した気泡は、図19の波線矢印に示すように、エア回収通路7bsに沿ってエア回収スペース34へ向けて上がっていくことが可能となり、エア回収スペース34は、当該気泡を回収することができる。即ち、エア回収器15は、冷却水に発生する気泡を除去することができる。
以上に述べた第10実施形態によれば、Cold時において、エンジン1内の冷却水に発生する気泡を除去することができる。
[第11実施形態]
次に、本発明の第11実施形態に係る冷却水制御装置について説明する。第11実施形態に係る冷却水制御装置100gの構成を図20に示すこととし、このときのエア回収器15及びエンジン1の内部構造を図21に示すこととする。
先に述べた第10実施形態に係る冷却水制御装置100fでは、エア回収器15は、エア回収スペース34によって、冷却水に発生する気泡を回収するとしていた。しかしながら、エア回収器15は、気泡を水蒸気として回収するので、冷却水通路7における圧力の上昇による冷却水漏れを抑えることは難しい。
そこで、第11実施形態に係る冷却水制御装置100gでは、図20及び図21に示すように、エンジン1を迂回する迂回通路7d2は、エア回収器15内を通過するように設置されることとする。より詳細には、迂回通路7d2は、エア回収器15内において、エア回収スペース34の近傍を通過するように設置されることとする。ここで、図21における実線矢印は、迂回通路7d2を通過する冷却水の流れを示している。また、図21において、ウォータジャケット37、冷却水通路7d1、7e、迂回通路7d2におけるハッチングは冷却水を示している。図21において、迂回通路7d2を通過する冷却水は、Cold時冷却水ルートを通過する冷却水であり、その水温は沸点以下となっていることが多い。そのため、エア回収スペース34により回収された気泡は、エア回収スペース34近傍の迂回通路7d2を通過する冷却水によって熱交換されることにより、冷却されて液化される。このように、第11実施形態に係るエア回収器15は、エア回収スペース34により回収された気泡を、迂回通路7d2を通過する冷却水と熱交換を行うことにより冷却して液化することができ、冷却水通路7における圧力の上昇を抑えることができる。
以上に述べた第11実施形態によれば、Cold時において、冷却水通路7における圧力の上昇を抑えることができ、冷却水漏れを防ぐことができる。また、エア回収スペース34に回収された気泡と迂回通路7d2を通過する冷却水との間で熱交換を行うことにより、迂回通路7d2を通過する冷却水を加温することができる。
(第11実施形態の変形例)
次に、第11実施形態の変形例について説明する。第11実施形態の変形例では、第11実施形態に係る冷却水制御装置100gにおいて、冷却水が沸騰する危険があるか否かを検出するとともに、冷却水が沸騰する危険があることを検出した場合には、三方弁6として、流量配分三方弁を用いて、段階的に、エンジン1内のウォータジャケットにおける冷却水の流量を増加させ、エンジン1を迂回する迂回通路7d2における冷却水の流量を減少させることとする。
具体的には、ECU20は、運転状況に基づいて、例えば、燃料噴射量、吸入空気量、スロットル開度、エンジン回転数、エンジン負荷、などの各制御判定項目に基づいて、エンジン1内の冷却水が沸騰する危険があるかについて検出する。ECU20は、エンジン1内の冷却水が沸騰する危険があると判定した場合には、三方弁6(流量配分三方弁)を制御して、エンジン1内のウォータジャケットとエンジン1を迂回する迂回通路7d2との間で冷却水の流量の分配比を調節する、即ち、エンジン1内のウォータジャケットとエンジン1を迂回する迂回通路7d2との夫々における冷却水の流量を調節する。例えば、ECU20は、運転状況における所定の制御判定項目の値が、冷却水が沸騰する閾値に近くなればなるほど、エンジン1内のウォータジャケットにおける冷却水の流量を増加させ、エンジン1を迂回する迂回通路7d2における冷却水の流量を減少させる。このようにすることで、冷却水の沸騰を抑えることができ、エンジン1内の冷却水に気泡が生じるのを抑制することができる。
なお、ここで、エンジン1内の冷却水の沸騰を検出する沸騰検出方法としては、上述した運転状況に基づいて検出する方法の他、冷却水に気泡が発生したことを検出する沸騰検出方法を用いるとすることもできる。この検出方法について具体的に述べる。
図22は、第11実施形態の変形例に係るエア回収器15及びエンジン1の内部構造を示す断面図である。図22に示すように、エア回収器15において、エア回収スペース34は、上方にいくほど狭くなるように形成されており、その頂点には、エア回収スペース34内の温度を検出する温度センサ34aが取り付けられている。温度センサ34aは、検出された温度に対応する検出信号をECU20に供給する。エンジン1内の冷却水が沸騰すると、冷却水には気泡が発生する。冷却水に発生した気泡は、水蒸気となって、エア回収通路7bsに沿ってエア回収スペース34へ向けて上昇していく。エア回収スペース34は、図22に示すように、上方にいくほど狭くなるように形成されているので、上昇する水蒸気は、その頂点に設置されている温度センサ34aに到達する。水蒸気が温度センサ34aに到達した場合には、温度センサ34aは、冷却水の沸点に近い温度を示す。
つまり、温度センサ34aによって検出された温度が、冷却水の沸点に近い温度となった場合には、ECU20は、エア回収スペース34に達した気泡が温度センサ34aに到達している、即ち、エンジン1内の冷却水は沸騰していると判定することができる。ECU20は、このようにして、エンジン1内の冷却水が沸騰していると判定した場合には、三方弁6を制御して、エンジン1の暖機が完了したとみなして、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させるか、又は、三方弁6として流量分配三方弁を用いて、エンジン1内のウォータジャケットにおける冷却水の流量を増加させる。このようにしても、冷却水の沸騰を抑えることができる。
また、上述のように、温度センサ34aを用いた沸騰検出方法を用いることにより、運転状況の制御項目(例えば、燃料噴射量、吸入空気量、スロットル開度、エンジン回転数、エンジン負荷、など)以外の他の要因で、エンジン1内の冷却水が沸騰した場合であっても、ECU20は、冷却水の沸騰を検出することができる。
以上に述べた第11実施形態の変形例によれば、Cold時において、エンジン1内の冷却水の沸騰を抑制することができる。
[第12実施形態]
次に、本発明の第12実施形態に係る冷却水制御装置について説明する。第12実施形態に係る冷却水制御装置100hの構成を図23に示すこととする。
先に述べた第1実施形態では、Cold時において、エンジン1を迂回するCold時冷却水ルートで冷却水を流通させることとし、Hot時においては、エンジン1内を通過するHot時冷却水ルートで冷却水を流通させるとしていた。しかしながら、エンジン1の暖機が完了したHot時においても、冷却水は排気熱回収器2内で排気熱を回収し続けるため、冷却水は沸騰する恐れがある。
そこで、第12実施形態に係る冷却水制御装置100hでは、上述の三方弁6の制御に加えて、図23に示すように、Hot時における冷却水の循環方向を、Cold時における冷却水の循環方向とは逆向きにすることとする。具体的には、第12実施形態に係る冷却水制御装置100hでは、第1実施形態に係る冷却水制御装置100と異なり、2つの電動WP8a、8bを有することとする。電動WP8a、8bは、図23に示すように、冷却水通路7b上に例えば直列に接続されている。電動WP8a、8bは夫々、ECU20からの制御信号S8a、S8bにより制御される。ECU20は、Cold時には、電動WP8aのみを作動させ、電動WP8bを作動させないとすることにより、図23に示す実線矢印の方向に冷却水を循環させることとする。一方、ECU20は、Hot時には、電動WP8aを作動させずに、電動WP8bのみを作動させることにより、図23に示す波線矢印の方向に、即ち、実線矢印の方向とは逆向きに冷却水を循環させることとする。
なお、電動WP8a、8bの設置位置としては、冷却水通路7b上に限られるものでない。代わりに、電動WP8a、8bは、冷却水通路7a、7f上に設置されるとしてもよい。
図24(a)、(b)は、排気熱回収器2の断面図である。排気熱回収器2では、排気通路21の周囲を取り囲んで、冷却水通路7aと接続された冷却水通路22が設けられている。図24(a)、(b)において、冷却水の出入口B1は、図23におけるヒータコア5側の出入口であり、冷却水の出入口B2は、図23におけるサーモスタット4側の出入口を示している。また、図24(a)、(b)において、一点鎖線で示す矢印は、排気ガスの進行方向を示している。
図24(a)では、Cold時における冷却水の進行方向を実線矢印で示しており、図24(b)では、Hot時における冷却水の進行方向を波線矢印で示している。
図24(a)に示すように、Cold時には、実線矢印に示すように、冷却水は、排気ガスの進行方向とは逆向きに進むように設定される。このように、冷却水の進行方向を排気ガスの進行方向と逆向きに設定した場合には、冷却水の進行方向を排気ガスの進行方法と同じ向きに設定した場合と比較して、冷却水による排気熱の回収熱量をより大きくすることができる。それに対し、図24(b)に示すように、Hot時には、波線矢印に示すように、冷却水は、排気ガスの進行方向と同じ方向に進むように設定される。従って、このときの冷却水による排気熱の回収熱量は、Cold時における冷却水の回収熱量と比較して小さくなる。
つまり、Hot時における冷却水の循環方向を、Cold時における冷却水の循環方向とは逆向きにすることにより、Hot時における冷却水の回収熱量を、Cold時における冷却水の回収熱量よりも低減することができ、Hot時における冷却水の沸騰を抑えることができる。
以上に述べた第12実施形態によれば、Hot時における冷却水の沸騰を抑えることができ、冷却水通路7からの冷却水漏れやオーバーヒートの発生を防ぐことができる。
(第12実施形態の変形例)
次に、第12実施形態の変形例について説明する。第12実施形態の変形例に係る冷却水制御装置100haの構成を図25に示すこととする。
先に述べた第12実施形態に係る冷却水制御装置100hでは、図24に示したように、電動WP8a、8bが冷却水通路7上に直列に設置される。そのため、電動WP8a、8bのうち、一方の電動WPは他方の作動させていない電動WPに冷却水を通過させて循環させる必要があるため、圧力損失が増大してしまう。また、この場合、ECU20は、冷却水の循環方向を切り替える際、一旦、電動WP8a、8bの両方を停止する必要があり、制御のタイムラグが生じてしまう。
そこで、第12実施形態の変形例に係る冷却水制御装置100haでは、図25に示すように、三方弁6aを用いて、電動WP8a、8bが冷却水通路7上に並列に設置されることとする。ここで、三方弁6aにおいて、「fa」は電動WP8aが設けられている冷却水通路側の弁を示し、「fb」は電動WP8bが設けられている冷却水通路側の弁を示し、「fc」は冷却水通路7d1、7d2側の弁を示している。
ECU20は、Cold時において、電動WP8aを作動させるとともに、三方弁6aを制御して、弁fa、fcを開いて、弁fbを閉じることとする。なお、このとき、電動WP8bは作動させないものとする。これにより、図25に示す実線矢印の方向に冷却水を循環させることができる。一方、ECU20は、Hot時において、三方弁6を制御して、冷却水ルートをHot時冷却水ルートに切り替える。また、このとき、ECU20は、電動WP8aを停止して、電動WP8bを作動させるとともに、三方弁6aを制御して、弁fb、fcを開いて、弁faを閉じることとする。このようにすることで、図25に示す波線矢印の方向に冷却水を循環させることができる。これにより、Hot時における冷却水の沸騰を抑えることができる。また、第12実施形態の変形例によれば、冷却水通路7の圧力損失の増大を抑えることができるとともに、冷却水の循環方向を切り替える際に電動WP8a、8bの両方を停止する必要がなくなり、タイムラグが生じるのを防ぐことができる。
第12実施形態の変形例によれば、Hot時における冷却水の沸騰を抑え、冷却水通路7からの冷却水漏れやオーバーヒートの発生を防ぐことができる。また、冷却水通路7の圧力損失の増大を抑えることができるとともに、冷却水の循環方向を切り替える際に電動WP8a、8bの両方を停止する必要がなくなる。
なお、電動WP8a、8bを冷却水通路7上に並列に設置する代わりに、図26に示す冷却系システム100hbのように、冷却水の循環方向を逆転することができる電動WP8cを単独で用いるとしてもよい。電動WP8cは、ECU20からの制御信号S8cにより制御される。この場合、ECU20は、Cold時において、電動WP8cを作動させて、図26に示す実線矢印の方向に冷却水を循環させる。一方、ECU20は、Hot時において、電動WP8cを制御して、電動WP8のインペラの回転方向をCold時のときとは逆方向に回転させることにより、図26に示す波線矢印の方向に冷却水を循環させる。これによっても冷却水通路7の圧力損失の増大を抑えることができる。
[応用例]
上述の各実施形態に係る冷却水制御装置は、常に、夫々が単独で用いられるものに限られない。代わりに、上述の各実施形態に係る冷却水制御装置の構成のうち、複数の冷却水制御装置の構成を組み合わせて用いるとしてもよいのは言うまでもない。また、上述の各実施形態に係る冷却水ルート切替制御方法についても、常に、夫々が単独で用いられるものに限られない。代わりに、上述の各実施形態に係る冷却水ルート切替制御方法のうち、複数の冷却水ルート切替制御方法を組み合わせて用いるとしてもよいのは言うまでもない。