ところで、こうしたハイブリッド車両においては内燃機関や電動発電機の運転状態に応じてそれらに発生する熱量が異なるものになることから、機関冷却機構の放熱部と電機冷却機構の放熱部とに流入する冷却水の温度も異なるものとなる。例えば、機関冷却機構においては、冷間始動時等、内燃機関の温度が低いときに、その暖機を促進して機関燃焼状態の安定化や燃費の向上を図るために、冷却水の循環を停止する処理が行われる場合がある。こうした処理が行われると、電機冷却機構の放熱部は電動発電機やインバータを冷却した冷却水が流入するため温度上昇する一方、機関冷却機構の放熱部の温度は低温のまま維持されることとなる。この際、電機冷却機構の放熱部は機関冷却機構の放熱部に対して高温になるため、各放熱部には温度差、換言すると熱膨張差が生じることとなる。そして、これら放熱部は共通のラジエータに組み込まれているため、このように各放熱部に熱膨張差が生じると、特に各放熱部の境界部分には大きな熱応力が発生するようになる。そして、こうした熱応力が頻繁に繰り返し発生するとその境界部分において熱疲労が進行するようになる結果、ラジエータの耐用寿命を著しく低下させてしまうこととなる。
なお、こうした問題は、冷間始動時に限られるものではなく、機関冷却機構の放熱部を流通する冷却水の温度と電機冷却機構の放熱部を流通する冷却水の温度との差が大きくなって両者の間に熱膨張の差が生じる場合にあっても同様に発生し得る。またこれは熱源を冷却する冷媒を冷却水とした場合に限らず、油等、他の冷媒を採用した場合であっても同様である。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、機関冷却機構を冷却する冷媒が流通する放熱部と電機冷却機構を冷却する冷媒が流通する放熱部とが一体に組み込まれた共通のラジエータを有する車両の冷却装置において、ラジエータに過大な熱応力が発生することに起因してその耐用寿命が低下することを抑制することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、第1の放熱部を有する第1の還流路に第1のポンプを通じて冷媒を循環させることにより内燃機関を含む機関駆動系を冷却する機関冷却機構と、第2の放熱部を有する第2の還流路に第2のポンプを通じて冷媒を循環させることにより電動発電機を含む電機駆動系を冷却する電機冷却機構と、前記機関冷却機構の還流路に設けられてその還流路の冷媒温度を検出する第1のセンサ及び前記電機冷却機構の還流路に設けられてその還流路の冷媒温度を検出する第2のセンサとを含み、前記各還流路は冷媒が出入しない独立した流路として構成されるとともに、前記各放熱部はそれらに共通のラジエータを2つの部位に区画することにより構成され、機関始動時から前記第1のセンサにより検出される冷媒温度が所定温度未満であるときに前記第1のポンプの運転を制限して前記第1の還流路における冷媒の循環を制限することにより前記機関駆動系について暖機促進処理を実行する一方、機関始動時から前記第2のポンプを駆動状態として前記第2の還流路の冷媒を循環させる車両の冷却装置において、処理A:前記暖機促進処理を禁止する、処理B:前記第2のポンプの運転を制限して前記第2の還流路における冷媒の循環を制限する、としたとき、前記第1のセンサ及び第2のセンサにより検出される前記各放熱部の温度差が所定値以上となった場合に上記処理A及び処理Bの少なくとも一方を実行することを要旨とする。
同構成によれば、処理A:前記暖機促進処理を禁止する、処理B:前記第2のポンプの運転を制限して前記第2の還流路における冷媒の循環を制限する、としたとき、共通のラジエータを2つの部位に区画して各冷却機構の放熱部とした構成を採用する冷却装置にあって、各放熱部の温度差が所定値以上である場合に、上記処理A及び処理Bの少なくとも一方を実行するようにしている。暖機促進処理を禁止した場合は、第1のポンプが駆動状態とされ第1の還流路において冷媒が循環するようになる。これに伴って、内燃機関の機関燃焼室近傍において温度上昇した冷媒が第1の還流路に流入し、第1の放熱部の温度が上昇するようになる。一方、第2のポンプの運転を制限し、第2の還流路における冷媒の循環を制限した場合は、電機冷却機構に発生する熱により温度上昇した冷媒の第2の放熱部への流入量が少なくなり、その温度が低下するようになる。いずれの場合においても、各放熱部の温度差が減少してラジエータの境界部に生じていた熱応力も徐々に緩和されるようになる。このため、特に2つの放熱部の境界部に過大な熱応力が発生することに起因してその耐用寿命が低下することを抑制することができるようになる。その結果、ラジエータの境界部等に過大な熱応力が発生することに起因してその耐用寿命が低下することを抑制できる。尚、第2の還流路における冷媒の循環を制限した場合は、暖機促進処理を禁止するようにした場合とは異なり、内燃機関の暖機を促進させることができ、機関燃焼状態の安定化や燃費の向上を図ることができるようになる。
尚、本明細書において、機関冷却機構には、内燃機関のみを冷却するもの他、その排気通路と吸気通路とを連通するEGR通路に設けられて同EGR通路を介して排気通路から吸気通路に戻されるEGRガスを冷却するEGRクーラや排気通路に設けられてその排気を冷却する廃熱回収器等を内燃機関と併せて冷却するものも含まれる。一方、電機冷却機構には、電動発電機のみを冷却するもの、電動発電機の電力制御機器のみを冷却するもの、それら電動発電機及びその電力制御機器の双方を冷却するものがそれぞれ含まれる。また、電動発電機を冷却するものには、電動発電機全体を冷却するものはもとより、その電動機として機能する部分のみを冷却するもの、発電機として機能する部分のみを冷却するものも含まれる。また、電動発電機には、電動機と発電機とがアセンブリ化されて車両に搭載されるもの、電力制御機器を介して協動するものの、それら電動機と発電機とが別体として車両に搭載されものも含まれる。
また、前記ポンプの運転を制限するに際して、請求項2に記載の発明によるように、前記ポンプを停止状態とする、といった構成を採用することができる。同構成によれば、機関冷却機構及び電機冷却機構の各放熱部における温度差が増大し各放熱部の境界部に過大な熱応力が発生することに起因してその耐用寿命が低下することを好適に抑制することができるようになる。
請求項3に記載の発明は、第1の放熱部を有する第1の還流路に第1のポンプを通じて冷媒を循環させることにより内燃機関を含む機関駆動系を冷却する機関冷却機構と、第2の放熱部を有する第2の還流路に第2のポンプを通じて冷媒を循環させることにより電動発電機を含む電機駆動系を冷却する電機冷却機構とを含み、前記各還流路は冷媒が出入しない独立した流路として構成されるとともに、前記各放熱部はそれらに共通のラジエータを2つの部位に区画することにより構成される車両の冷却装置において、前記各放熱部の温度差を監視する監視手段と、前記機関冷却機構及び前記電機冷却機構の少なくとも一方の還流路についてその冷媒の流通状態を制御することにより前記監視される温度差が増大しないように各放熱部の温度管理処理を実行する制御手段とを備えることを要旨とする。
同構成によれば、各放熱部の温度差を監視し、その温度差が増大しないように機関冷却機構や電機冷却機構の還流路における冷媒の流通状態が制御されるため、機関冷却機構及び電機冷却機構の各放熱部における温度差が増大しそれらの間に過大な熱膨張差が生じることを抑制することができる。このため、独立した還流路を有する機関冷却機構及び電機冷却機構にあって、共通のラジエータを2つの部位に区画してそれら各冷却機構の放熱部とした構成を採用する冷却装置にあっても、そのラジエータ、特に2つの放熱部の境界部に過大な熱応力が発生することに起因してその耐用寿命が低下することを抑制することができるようになる。
また、各放熱部の温度差については、例えば各放熱部に温度センサをそれぞれ取り付けて、それら温度センサの検出値に基づいてこれを直接的に監視することもできるが、同温度差と高い相関を有して変化する物理量を検出することによりこれを間接的に監視することもできる。例えば、請求項4に記載の構成によるように、機関冷却機構の還流路にその冷媒温度を検出する第1のセンサを設けるとともに、電機冷却機構の還流路にもその冷媒温度を検出する第2のセンサを設け、それらセンサから求められる冷媒の温度差に基づいて各放熱部の温度差を監視する、といった構成を採用することができる。
また、各放熱部の温度管理処理を実行する際の構成についても、例えば還流路に流量制御弁を設け、その流量制御弁の開度を調整することにより、還流路における冷媒の流通状態を制御することもできるが、請求項4に記載の構成によるように、各冷却機構のポンプとしてその吐出量を可変制御できるものを採用し、それらポンプの吐出量を独立して制御することにより、各放熱部の温度差が増大しないように機関冷却機構や電機冷却機構の還流路における冷媒の流通状態を制御する、といった構成を採用することが望ましい。
請求項5に記載の発明は、前記吐出量制御手段は、機関始動時から前記第1のセンサにより検出される冷媒温度が所定温度未満であるときに前記第1のポンプを停止状態として前記第1の還流路における冷媒の循環を停止することにより前記機関駆動系について暖機促進処理を実行する一方、機関始動時から前記第2のポンプを駆動状態として前記第2の還流路の冷媒を循環させるものであり、機関始動時から前記暖機促進処理が完了するまでの期間において前記監視手段により監視される温度差が所定値以上となったことを条件に前記温度管理処理を開始することを要旨としている。
内燃機関では、機関燃焼室の温度が低いと燃焼の不安定化や熱損失に起因する燃費の悪化を招くことから、冷間始動時には、機関温度がある程度上昇するまで、機関冷却機構の第1のポンプを停止状態として第1の還流路における冷媒の循環を停止することにより、冷媒による冷却能力を低下させて暖機の促進を図ることが望ましい。一方、電機冷却機構ではこうした早期暖機の必要性が機関冷却機構と比較して低いため、機関始動時から第2のポンプが駆動状態とされて第2の還流路に冷媒が循環するようになる。
しかしながら、極寒時等、ラジエータの周囲温度が極めて低いときに、このように機関冷却機構についてのみ冷媒の循環を停止するようにした場合、第1の放熱部において冷媒は滞留した状態となるため、同第1の放熱部の温度は機関始動時における冷媒温度、すなわち周囲温度相当の低温から殆ど変化しない。一方、第2の放熱部には、例えば電動発電機等の熱源の熱により温度上昇した冷媒が流入するため、第2の放熱部が第1の放熱部よりも高温となる。そして、電機冷却機構の冷媒温度が上昇すると、これに伴って第1の放熱部と第2の放熱部との温度差が増大する。これら各放熱部はラジエータを2つの部位に区画することで構成されているため、このように各放熱部の温度差が増大すると、ラジエータにはそれら各放熱部の境界部等に過大な熱応力が生じることとなる。
請求項5に記載の構成によれば、このように暖機促進処理を実行するようにしているため、上述したようにラジエータの境界部等に過大熱応力が生じる可能性が高く、ラジエータにおける耐用寿命の低下も一層深刻なものとなる傾向があるが、このように暖機促進処理が実行される車両にあっても、そのラジエータの境界部等に過大な熱応力が発生することに起因してその耐用寿命が低下することを好適に抑制することができる。
請求項6に記載の発明は、前記吐出量制御手段は、前記温度管理処理の実行に際して前記暖機促進処理を禁止することを要旨としている。
同構成では、各放熱部の温度差が所定値以上であるときには、暖機促進処理を禁止するようにしている。このように暖機促進処理が禁止されることにより、第1のポンプは駆動状態とされ第1の還流路において冷媒が循環するようになる。従って、内燃機関の機関燃焼室近傍において温度上昇した冷媒が第1の還流路に流入し、これに伴って第1の放熱部の温度が上昇するようになるため、各放熱部の温度差が徐々に減少してラジエータの境界部に生じていた熱応力も徐々に緩和されるようになる。その結果、ラジエータの境界部等に過大な熱応力が発生することに起因してその耐用寿命が低下することを抑制できる。
請求項7に記載の発明は、前記吐出量制御手段は、前記温度管理処理の実行に際して前記第2のポンプを停止状態とし前記第2の還流路における冷媒の循環を停止することを要旨としている。
同構成では、各放熱部の温度差が所定値以上であるときには、第2のポンプを停止状態とし第2の還流路における冷媒の循環を停止するようにしている。従って、第2の放熱部は電機冷却機構に発生する熱により温度上昇した冷媒が流入しなくなり、その温度が低下するようになるため、各放熱部の温度差が減少してラジエータの境界部に生じていた熱応力も徐々に緩和されるようになる。その結果、ラジエータの境界部等に過大な熱応力が発生することに起因してその耐用寿命が低下することを抑制できる。更に、暖機促進処理を禁止するようにした場合とは異なり、内燃機関の暖機を促進させることができ、機関燃焼状態の安定化や燃費の向上を図ることができるようになる。
請求項8に記載の発明は、前記機関冷却機構は、前記第1の還流路において機関燃焼室近傍の冷媒温度と相関を有して温度変化する冷媒の温度を検出可能な位置に前記第1のセンサが設けられるとともに、前記第1の還流路の一部を構成する前記第1の放熱部を迂回する迂回路と、同第1の還流路に設けられてその感温部に接触する冷媒の温度が所定の開弁温度以上であるときに開弁状態となり前記第1の放熱部に対する冷媒の流入を許容する一方で前記開弁温度未満であるときに閉弁状態となり前記第1の放熱部に対する冷媒の流入を禁止するサーモスタットとを備え、前記吐出量制御手段は、前記温度管理処理の実行に際して、前記第1のセンサにより検出される冷媒温度が前記開弁温度未満であるときには前記第2のポンプを停止状態として前記第2の還流路における冷媒の循環を停止する一方、前記第1のセンサにより検出される冷媒温度が前記開弁温度以上であるときには前記暖機促進処理を禁止することを要旨としている。
機関冷却機構では、内燃機関の高負荷運転時等、その発生熱量が極めて大きくなる場合であっても、機関燃焼室近傍を適正な温度に維持できるように第1の放熱部の放熱能力が設定されている。但し、機関燃焼室の発生熱量は機関運転状態に応じて広範囲にわたって変化するため、例えばその発生熱量が最小になるアイドル運転等が冷間時に長期間にわたって継続されたような場合には、機関燃焼室近傍が過冷却状態となることがあり、このような場合には熱損失の増大に伴う燃費の悪化等が問題となる。従って、このように冷媒の温度が低下したときには、第1の放熱部に冷媒が流入して更に温度低下することを回避するため、機関冷却機構の還流路に設けられたサーモスタットにより第1の放熱部に対する冷媒の流入を禁止するとともに、同還流路の一部である迂回路を通じて第1の放熱部を迂回して冷媒を循環させるといった構成が一般に採用される。
しかしながら、こうした構成を採用した場合、機関燃焼室近傍に滞留する冷媒の温度が暖機促進処理を通じて十分に上昇していないときに各放熱部の温度差が所定値以上となった場合には、この暖機促進処理を禁止することにより第1のポンプの吐出量を増大して冷媒を第1の還流路に循環させるようにしても、サーモスタットが開弁状態とならない場合が発生し得る。従ってこの場合には、第1の放熱部に冷媒が流入しないか、或いは流入するようになるまで時間を要することとなり、上述したような各放熱部の温度差を速やかに解消することが困難になる。
そこで、請求項8に記載の構成では、第1のセンサを通じて機関燃焼室近傍に滞留する冷媒の温度(正確にはその相関値)を検出し、その検出される冷媒温度に応じて各放熱部の温度差が所定値以上となった場合における各ポンプの運転態様を選択するようにしている。
すなわち、第1のセンサにより検出される冷媒温度がサーモスタットの開弁温度未満であるときには、第2のポンプを停止状態として第2の還流路における冷媒の循環を停止するようにしている。その結果、第2の還流路、特に外気との熱交換量が大きい第2の放熱部に滞留する冷媒はそうした熱交換を通じて温度低下するようになり、各放熱部の温度差が徐々に減少してラジエータの境界部に生じていた熱応力も徐々に緩和されるようになる。またこの場合、暖機促進処理が不必要に禁止されてしまうこともないため、同処理を通じて機関燃焼状態の安定化や燃費の向上を図ることができるようになる。
また一方、第1のセンサにより検出される冷媒温度がサーモスタットの開弁温度以上であるときには、暖機促進処理を禁止し、第1のポンプを駆動状態として第1の還流路において冷媒を循環させるようにしている。その結果、内燃機関の機関燃焼室近傍において温度上昇した冷媒が第1の還流路に流入してサーモスタットが開弁状態となり、同サーモスタットを通じて冷媒が更に第1の放熱部にも流入するようになる。その結果、第1の放熱部の温度が上昇し、各放熱部の温度差が徐々に減少してラジエータの境界部に生じていた熱応力も徐々に緩和されるようになる。
このように請求項8に記載の構成によれば、サーモスタットの開閉状態を考慮した態様をもって各ポンプの運転状態を設定することにより各放熱部の温度差を好適に減少させることができ、ラジエータの境界部等に過大な熱応力が発生することに起因してその耐用寿命が低下することを抑制することができるようになる。
請求項9に記載の発明は、前記吐出量制御手段は前記温度管理処理の実行に際して前記暖機促進処理を禁止するのに併せて前記第2のポンプを停止状態として前記第2の還流路における冷媒の循環を停止することを要旨としている。
同構成では、暖機促進処理を禁止して第1の還流路における冷媒の循環を開始することにより第1の放熱部の温度を上昇させる一方、第2のポンプを停止状態として第2の還流路における冷媒の循環を停止することにより、第2の放熱部の温度を低下させることができる。このため、各放熱部の温度差を更に減少させてラジエータの境界部に生じていた熱応力を好適に緩和することができるようになる。
請求項10に記載の発明は、前記吐出量制御手段は前記暖機促進処理を禁止し前記第1のポンプを駆動状態とするに際してその吐出量が徐々に増大するように同第1のポンプを制御することを要旨としている。
極寒時等、第1の放熱部の温度が極めて低い状況下で暖機促進処理が禁止され、第1の還流路における冷媒の循環が開始されると、極低温状態の第1の放熱部に機関燃焼室近傍で温度上昇した高温の冷媒が即時に流入するようになる。このため、上述したようなラジエータの境界部に生じていた熱応力についてはこれを緩和することができるものの、第1の放熱部はその全体の温度が急激に上昇するようになるため、ラジエータにおいて境界部分以外の他の部分、特にその形状変化の大きい部分において熱衝撃に起因する一時的な熱応力の増大が生じることが懸念される。
この点、請求項10に記載の構成によれば、第1のポンプの吐出量を徐々に増大させるようにしているため、ラジエータの第1の放熱部を構成する部分に熱衝撃に起因した一時的な熱応力の増大が発生することを抑制することができる。従って、各放熱部に温度差が生じることをその要因とするものはもとより、こうした熱衝撃に起因するラジエータの耐用寿命低下についてもこれを抑制することができるようになる。
請求項11に記載の発明は、前記吐出量制御手段は前記暖機促進処理を禁止し前記第1のポンプを駆動状態とするに際して所定の下限吐出量を下回らないように同第1のポンプを制御することを要旨としている。
極寒時等、第1の放熱部の温度が極めて低い状況のもとで暖機促進処理を禁止して第1の還流路における冷媒の循環を開始すると、極低温状態の第1の放熱部に機関燃焼室近傍で温度上昇した高温の冷媒が流入するようになる。この際、冷媒の流量が極めて少ない場合には、第1の放熱部において一部分にのみ冷媒が流れる現象、すなわち偏流が発生するようになる。そして、こうした偏流が発生すると第1の放熱部においては低温の冷媒が滞留する部分と高温の冷媒が流入した部分との間で温度差が生じることとなり、これに起因する熱応力の発生が懸念される。
この点、請求項11に記載の発明によれば、暖機促進処理を禁止して第1のポンプを駆動状態とするに際し、その吐出量について所定の下限吐出量を設定するようにしている。そして、このように下限吐出量を設定することにより、第1の放熱部を通過する冷媒の量が確保されて冷媒が第1の放熱部全体にわたって流れるようになるため、偏流の発生を抑制することができる。従って、こうした偏流の発生に起因するラジエータの耐用寿命低下についてもこれを好適に抑制することができるようになる。
以下、本発明にかかる車両の冷却装置の一実施形態について図1〜図4を参照して説明する。尚、この車両は内燃機関11及び電動発電機21がその駆動源として搭載された、いわゆるハイブリッド車両である。
内燃機関11及び電動発電機21の各出力軸の駆動力は、動力分割機構に入力されるとともに駆動力伝達系を介して駆動輪(いずれも図示略)に伝達される。この電動発電機21は、電気エネルギを機械エネルギに変換する機能に加えて、車両減速時等において車両の運動エネルギを電気エネルギとして回生する機能を併せ有する。
次に、内燃機関11を含む機関駆動系を冷却する機関冷却機構10について説明する。
この機関冷却機構10は、大きくは、内燃機関11の内部において機関燃焼室(図示略)の周囲に形成されたウォータジャケット16と、このウォータジャケット16との間で冷却水が循環する第1の放熱部14と、これらを接続する主通路18とよって構成されている。主通路18は、その下流部分がサーモスタット13を介して第1のポンプ12に接続されている。ウォータジャケット16は第1の放熱部14を迂回する態様で設けられた迂回路17によりサーモスタット13に接続されている。この機関冷却機構10では、ウォータジャケット16、主通路18、第1の放熱部14、迂回路17等により冷却水を循環させるための第1の還流路19が構成されている。
サーモスタット13はその感温部に接触する冷却水の温度が所定の温度(以下、開弁温度θz)以上となったときに自律的に開弁する感温弁であって流路切替弁として機能する。すなわち、このサーモスタット13が開弁すると、主通路18と第1の放熱部14とが連通状態となり、主通路18から第1の放熱部14に冷却水が導入され、同第1の放熱部14において冷却水が冷却される。一方、迂回路17はサーモスタット13の開閉状態にかかわらず常に第1のポンプ12と連通状態にある。また、内燃機関11において、ウォータジャケット16の出口付近には水温センサ92が設けられている。この水温センサ92は、第1の還流路19の冷却水の温度(以下、冷却水温θ1)をウォータジャケット16における冷却水温の相関値として検出する。
内燃機関11の熱により温度上昇した冷却水は、主通路18を通じて第1の放熱部14に流入し、同放熱部14において外気と熱交換することにより冷却される。機関冷却機構10では、内燃機関11の高負荷運転時等、その発生熱量が極めて大きくなる場合であっても、機関燃焼室近傍を適正な温度に維持できるように第1の放熱部14の放熱能力が設定されている。内燃機関11の発生熱量は広範囲にわたって変化するため、例えばその発生熱量が最小になるアイドル運転等が冷間時に長期間にわたって継続されたような場合には、内燃機関11の機関燃焼室近傍が過冷却状態となり、熱損失の増大に伴って燃費が悪化してしまう。従って、冷却水温θ1が低いときには、第1の放熱部14において冷却水が更に温度低下することを回避するため、サーモスタット13により第1の放熱部14に対する冷却水の流入を禁止する一方、迂回路17を通じて第1の放熱部14を迂回して冷却水を循環するように同サーモスタット13の開弁温度θzが設定されている。
次に、電動発電機21とインバータ22とを含む電機駆動系を冷却する電機冷却機構20について説明する。この電機冷却機構20は、大きくは、電動発電機21及びインバータ22の熱により温度上昇した冷却水が流入する第2の放熱部24と、電動発電機21の内部通路(図示略)に冷却水を吐出する第2のポンプ23と、同内部通路に吐出された冷却水を電動発電機21から、第2の放熱部24、インバータ22の順に循環させる第2の還流路26と、この電動発電機21の出口付近に取り付けられて電動発電機21近傍の冷却水の温度と相関を有して温度変化する第2の還流路26の冷却水の温度(以下、冷却水温θ2)を検出する第2の水温センサ93とにより構成されている。電動発電機21及びインバータ22の熱により温度上昇した冷却水は、第2の放熱部24に導入され、同放熱部24において外気と熱交換することにより冷却される。
これら機関冷却機構10及び電機冷却機構20は、車両のコンパクト化に対する要求からその小型化が望まれている。本実施形態の冷却装置では、これに対応すべく、第1の放熱部14と第2の放熱部24とが共通のラジエータ31に組み込まれて一体形成されている。
次に、このラジエータ31の構造について説明する。図1に示されるように、第1の放熱部14は、内燃機関11を冷却した冷却水が流通する複数の独立した第1のチューブ32と、これらチューブ32の外表面に接合する波状のフィン34により構成される。第2の放熱部24も同様に、電動発電機21及びインバータ22を冷却した冷却水が流通する複数の独立した第2のチューブ33と、これらチューブ33の外表面に接合する波状のフィン34により構成される。また、これらチューブ32,33はその両端が図示しない一対の支持板によって支持されている。尚、フィン34は、各チューブ32,33の外表面の面積を増大させることによって、これら各チューブ32,33の外表面と外気との接触面積を増大させ、各チューブ32,33を流通する冷却水と外気との間で行われる熱交換の効率を向上させることを目的として設けられている。
これらチューブ32,33、フィン34、及び支持板は、同チューブ32,33の長手方向と直交する方向に延びる一対のヘッダタンク36にその両端部が組み込まれている。このヘッダタンク36は、第1のチューブ32が組み込まれる部位と第2のチューブ33が組み込まれる部位とに区画されており、第1の還流路19を流通する冷却水と第2の還流路26を流通する冷却水とが出入することなく、各放熱部14,24に各別に流入するように形成されている。なお、第1の放熱部14と第2の放熱部24との境界部には、冷却水が流通しないダミーチューブ35が設けられている。
また、これら機関冷却機構10及び電機冷却機構20に設けられる各ポンプ12,23は、モータを駆動源とし、制御装置91によって吐出量が可変制御される電動式のウォータポンプである。
この制御装置91は、第1及び第2の水温センサ92,93等、各種センサの検出値を取り込むとともに、これらセンサ92,93等の検出値に基づいて各ポンプ12,23の駆動制御をはじめとした各種制御を実行する。また、こうした制御を実行するために、制御装置91は、CPUをはじめ、メモリ、A/D変換回路、駆動回路を有して構成されている。
ところで、内燃機関11では、機関燃焼室の温度が低いと燃焼の不安定化や熱損失に起因して燃費が悪化するおそれがある。このため、冷間始動時においては、内燃機関11の暖機がある程度進行するまでは第1のポンプ12を停止状態とし、第1の還流路19における冷却水の流通を禁止する暖機促進処理を実行するようにしている。一方、電動発電機21及びインバータ22ではこうした早期暖機の必要性が内燃機関11と比較すると低いため、冷間始動時であっても、機関始動時から第2のポンプ23を駆動するようにしている。
こうした暖機促進処理が実行されると、第1の放熱部14には低温の冷却水が滞留し続ける一方、第2の放熱部24には電動発電機21やインバータ22の熱によって温度上昇した冷却水が流入する。このため、第2の放熱部24の温度は第1の放熱部14の温度に対して高くなり、各放熱部14,24には温度差、すなわち熱膨張差が生じることとなる。そして、これら各放熱部14,24は共通のラジエータ31に組み込まれているため、このように各放熱部14,24に熱膨張差が生じると、特に各放熱部14,24の境界部には大きな熱応力が発生するようになる。こうした熱応力が頻繁に繰り返し発生すると、その境界部において熱疲労が進行するようになる結果、ラジエータ31の耐用寿命を著しく低下させてしまうこととなる。そこで、本実施形態では、各放熱部14,24の温度を推定し、これら各放熱部14,24に温度差が生じているときには、その温度差が増大しないように各放熱部14,24の温度を管理する処理(温度管理処理)を実行するようにしている。具体的には、各ポンプ12,23の吐出量の制御を通じてこのような温度差を減少させて、熱応力を低減する熱応力低減処理を実行するようにしている。尚、以下では、第1の放熱部14及び第2の放熱部24の温度とは、それぞれ各放熱部14,24の出口側における冷却水の推定温度を示すものとする。
次に、図2を参照して、こうした各ポンプ12,23の吐出量制御について詳細に説明する。尚、図2に示される一連の処理は、機関始動後、制御装置91によって所定周期毎に繰り返し実行される。
この処理ではまず、機関始動時であるか否について判断する(ステップS100)。機関始動時である場合(ステップS100:YES)、そのとき検出される冷却水温θ1を始動時水温θstとして記憶する(ステップS101)。尚、機関始動時においては、機関冷却機構10及び電機冷却機構20の各部における冷却水の温度は略等しいと考えられるため、各放熱部14,24の温度は冷却水温θ1と略等しいものと推定できる。
このように始動時水温θstを記憶した後、または機関始動時でないと判断した場合(ステップS100:NO)、次に冷却水温θ1が所定温度θx未満であるか否かを判断する(ステップS102)。この所定温度θxは内燃機関11の暖機がある程度進行して、これを冷却する必要が生じる状態に移行したか否かを冷却水温θ1との比較のもと判断するための値であり試験等を通じて予め設定されている。
冷却水温θ1が所定温度θx以上である場合(ステップS102:NO)、各ポンプ12,23について通常制御を実行する(ステップS103)。
一方、冷却水温θ1が所定温度θx未満である場合(ステップS102:YES)、すなわち内燃機関11の暖機が十分に進行しておらず、暖機促進処理を実行する必要がある場合、次にフラグFが「OFF」に設定されているか否かを判断する(ステップS104)。尚、フラグFは、第1の放熱部14と第2の放熱部24との間に温度差が発生しており上記熱応力低減処理を実行する必要がある場合に「ON」に設定される。
フラグFが「OFF」に設定されている場合(ステップS104:YES)、機関冷却機構10の第1のポンプ12を停止状態に維持して、暖機促進処理を実行する。併せて、電機冷却機構20の第2のポンプ23を駆動状態とする(ステップS105)。
これにより、第2の放熱部24には電動発電機21及びインバータ22の熱により温度上昇した冷却水が流入する。このため、第2の放熱部24は、冷却水温θ2が上昇するのに伴って、同冷却水温θ2から大きく乖離しない温度状態を保ちながら徐々にその温度が上昇する。一方、第1の放熱部14には、始動時水温θstから殆ど温度変化しない冷却水が滞留しているため、第1の放熱部14と第2の放熱部24との温度差は増大するようになる。
次に、冷却水温θ2と始動時水温θstとの差が所定値α以上であるか否か、すなわち熱応力低減処理を実行する必要があるか否かを判断する(ステップS106)。尚、所定値αは、これら各放熱部14,24の境界部等に大きな熱応力が発生して、この境界部等において熱疲労が進行するおそれがあるか否かを冷却水温θ2と始動時水温θstとの比較のもと判断するための値として試験等を通じて予め設定されている。
冷却水温θ2と始動時水温θstとの差が所定値α未満である場合(ステップS106:NO)、熱応力低減処理を開始する必要はないため、暖機促進処理を引き続き実行する。すなわち、第1のポンプ12を停止状態とする一方、第2のポンプ23を駆動状態としてこの処理を一旦終了する。
これに対して冷却水温θ2と始動時水温θstとの差が所定値α以上である場合(ステップS106:YES)、フラグFをその初期値「OFF」から変更して「ON」に設定し(ステップS107)、第1の放熱部14と第2の放熱部24との温度差を減少させてこのような熱応力を緩和する熱応力低減処理を実行する。
この熱応力低減処理ではまず、冷却水温θ1がサーモスタット13の開弁温度θz未満であるか否かを判断する(ステップS108)。冷却水温θ1が開弁温度θz以上である場合(ステップS108:NO)、暖機促進処理を禁止して第1のポンプ12を駆動状態とする(ステップS109)。尚、第2のポンプ23は継続して駆動状態とされる。このように第1のポンプ12を駆動すると、内燃機関11の熱によって温度上昇したウォータジャケット16の冷却水が第1の放熱部14に流入し、同放熱部14の温度が上昇するようになるため、第1の放熱部14と第2の放熱部24との温度差は低減するようになる。
一方、冷却水温θ1が開弁温度θz未満である場合(ステップS108:YES)、上述のように第1のポンプ12を駆動して第1の還流路19に冷却水を流通させるようにしてもサーモスタット13が開弁状態とならない場合が発生し得る。従ってこの場合には、第1の放熱部に冷媒が流入しないか、或いは流入するようになるまで時間を要することとなり、上述したような各放熱部の温度差を速やかに解消することが困難になることがある。この場合には、第1のポンプ12を駆動しても第1の放熱部14に冷却水が流入しないか、或いは流入するようになるまで時間を要することとなり、上述したような各放熱部14,24の温度差を速やかに解消することが困難なものとなる。このため、この場合は、第2のポンプ23の駆動を停止する(ステップS110)。尚、第1のポンプ12は継続して停止状態に維持される。これにより、第2の放熱部24に滞留する冷却水は、外気との熱交換を通じて温度低下するようになるため、第1の放熱部14と第2の放熱部24との温度差が徐々に減少してラジエータ31の境界部に生じていた熱応力も徐々に緩和される。
ところで、極寒時等、第1の放熱部14の温度が極めて低い状況のもとで第1のポンプ12の駆動を開始して、第1の還流路19における冷却水の循環を開始すると、ウォータジャケット16で温度上昇した高温の冷却水が低温状態の第1の放熱部14に流入するようになる。この際、冷却水の流量が極めて少ない場合には、第1の放熱部14において一部分にのみ冷却水が流れる偏流が発生する。そして、こうした偏流が発生すると、第1の放熱部14において低温の冷却水が滞留する部分と高温の冷却水が流入した部分との間で温度差が生じることとなり、これに起因する熱応力の発生が懸念される。このため、第1のポンプ12の駆動を開始する際には、まず第1のポンプ12の吐出量について下限吐出量を設定し、同ポンプ12の吐出量をこの下限吐出量を下回らない量である所定量DA1に設定する。尚、この下限吐出量は、ラジエータ31の内部における偏流の発生を十分に緩和できる流量となるように試験等を通じて予め設定されている。
また更に、極寒時等、第1の放熱部14の温度が極めて低い状況で機関始動がなされた場合、熱応力低減処理の開始時にウォータジャケット16で温度上昇した高温の冷却水が低温状態の第1の放熱部14に流入すると、同放熱部14はその全体の温度が急激に上昇するようになるため、ラジエータ31において境界部以外の部分、特にその形状変化の大きい部分において熱衝撃に起因する一時的な熱応力の増大が生じるおそれがある。このため、第1のポンプ12の吐出量については、上記所定量DA1に設定した後、徐々に増大させて所定量DA2に達するように設定している。
こうした熱応力低減処理を開始した後、もしくはフラグFが「ON」に設定されている場合、すなわち前回までの処理において熱応力低減処理を既に開始していた場合(ステップS104:NO)、この処理を一旦終了する。
図3は、上述した各ポンプ12,23の吐出量制御の実行時における、(a)冷却水温θ1,θ2(実線)、各放熱部14,24の温度(一点鎖線)、(b)第1のポンプ12の吐出量、(c)第2のポンプ23の吐出量の推移をそれぞれ示している。また、図3(b)では、タイミングt1以降の期間における本実施形態にかかる第1のポンプ12の吐出量の推移を実線にて示している。
尚、図3は、図2で説明した各ポンプ12,23の吐出量制御を実行した際、冷却水温θ2と始動時水温θstとの温度差が所定値αに達したとき(ステップS106:YES)、冷却水温θ1が開弁温度θz以上であった場合(ステップS108:NO)における推移例を示す。
例えば機関始動時から短時間しか経過していないときのように、冷却水温θ1が低い期間では、同図(b)及び(c)に示すように、第1のポンプ12を停止状態として暖機促進処理を実行する一方、第2のポンプ23を駆動状態とする(機関始動時〜タイミングt1)。このとき、冷却水温θ1は内燃機関11の熱によって、冷却水温θ2は電動発電機21及びインバータ22の熱によってそれぞれ上昇する。また、第2の放熱部24には、電動発電機21及びインバータ22の熱によって温度上昇した冷却水が流入するため、同放熱部24の温度は徐々に上昇する。これに対して、第1の放熱部14には周囲温度相当の低温となった冷却水が滞留するため、同放熱部14は始動時水温θstから殆ど温度変化しない。この結果、第1の放熱部14と第2の放熱部24との温度差は徐々に増大する。そして、これら冷却水温θ2と始動時水温θstとの温度差が所定値αに達すると(タイミングt1)、熱応力低減処理が開始される。
この例では、タイミングt1において、冷却水温θ1が開弁温度θz以上であるので、第1のポンプ12の駆動を開始する。この際、同図(b)に示すように、第1のポンプ12の吐出量については、まず所定量DA1に設定した後、これが所定量DA2に達するまで徐々に増大させる。尚、同図(c)に示すように、第2のポンプ23については継続して駆動状態に維持する。
これにより、同図(a)に示すように、内燃機関11の熱により開弁温度θz以上となった冷却水が第1の還流路19を流通するので、サーモスタット13が速やかに開弁して第1の放熱部14に内燃機関11の熱により高温となった冷却水が流入する。このため、第1の放熱部14の温度は急速に上昇するので、第1の放熱部14と第2の放熱部24との温度差は徐々に減少するようになる(タイミングt1〜t2)。尚、この際、第1の還流路19に滞留する周囲温度相当の低温となった冷却水がウォータジャケット16に流入するため、冷却水温θ1は一時的に低下する。そして、このよう冷却水は内燃機関11の熱によって再び暖められるため、冷却水温θ1も上昇するようになる。
そして、冷却水温θ1が所定温度θxに達すると、第1のポンプ12及び第2のポンプ23について、通常制御を開始する(タイミングt2〜)。例えば、各ポンプ12,23の駆動を通じて、冷却水温θ1,θ2をそれぞれ所定温度θa,θbに維持する一方、第1の放熱部14及び第2の放熱部24の温度をそれぞれ所定温度θc,θdに維持する。
次に、図4について、図3との相違点を中心に説明する。
図4には、図2で説明した各ポンプ12,23の吐出量制御を実行した際、冷却水温θ2と始動時水温θstとの温度差が所定値αに達したとき(ステップS106:YES)、冷却水温θ1が開弁温度θz未満であった場合(ステップS108:YES)における推移例を示す。
上述のように暖機促進処理を実行すると、第1の放熱部14と第2の放熱部24との温度差が徐々に増大する(機関始動時〜タイミングt1)。そして、冷却水温θ2と始動時水温θstとの温度差が所定値αに達すると(タイミングt1)、熱応力低減処理が開始される。
この例では、冷却水温θ2と始動時水温θstとの差が所定値αに達したとき(タイミングt1)、冷却水温θ1が開弁温度θz未満であるため、同図(b)及び(c)に示すように、第1のポンプ12については継続して停止状態に維持するとともに、第2のポンプ23の駆動を停止する。これにより、同図(a)に示すように、冷却水温θ1は内燃機関11の熱によって、冷却水温θ2は電動発電機21及びインバータ22の熱によって、それぞれ継続して上昇する(タイミングt1〜t2)。
一方、第1の放熱部14には、周囲温度相当の低温となった冷却水が継続して滞留するため、同放熱部14の温度は始動時水温θstに維持される。これに対して、冷却水の循環が停止されることにより、電動発電機21及びインバータ22から第2の放熱部24に移動する熱量が減少するため、同放熱部24は外気との熱交換によってその温度が徐々に低下するようになる。従って、第1の放熱部14と第2の放熱部24との温度差は徐々に減少するようになる(タイミングt1〜t2)。
そしてこの間、上述のように内燃機関11の熱によって冷却水温θ1が上昇し、これが所定温度θxに達すると、第1のポンプ12及び第2のポンプ23について、通常制御を開始する(タイミングt2〜)。
以上説明した本実施形態によれば、以下に記載の作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態によれば、暖機促進処理を実行するに際して、冷却水温θ2と始動時水温θstとの差が所定値αに達したときに、熱応力低減処理、すなわち、各還流路19,26の双方における冷却水の循環を停止する、あるいは双方において冷却水を循環させる、といった処理を開始するようにしている。これにより、第1の放熱部14と第2の放熱部24との温度差が徐々に減少してラジエータ31の境界部に生じていた熱応力も徐々に緩和されるようになる。その結果、ラジエータ31の境界部等に過大な熱応力が発生することに起因してその耐用寿命が低下することを抑制することができるようになる。
(2)熱応力低減処理では、冷却水温θ1がサーモスタット13の開弁温度θz以上であるときには第1のポンプ12を駆動状態とする一方、冷却水温θ1が開弁温度θz未満であるときには第2のポンプ23を停止状態とすることにより、第1の放熱部14と第2の放熱部24との温度差を低減するようにしている。このように、サーモスタット13の開閉状態を考慮した態様をもって各ポンプ12,23の運転状態を設定しているため、第1の放熱部14と第2の放熱部24との温度差を好適に減少させることができるようになる。
またこのように、冷却水温θ1が開弁温度θz未満であるときには暖機促進処理を禁止することなく、第2のポンプ23を停止状態として第2の還流路26における冷却水の流通を停止するようにしているため、熱応力低減処理を実行することに伴って暖機促進処理が禁止されてしまうことを回避することができる。したがって、熱応力低減処理を実行しているときであっても、内燃機関11の暖機を促進することができ、ひいては燃費の悪化を抑制することができるようになる。
(3)また、暖機促進処理を禁止して第1のポンプ12を駆動状態とすることによって熱応力低減処理を開始する際、その吐出量について下限吐出量を設定して、第1の放熱部14を流通する冷却水の量を確保するようにしているため、極寒時等、第1の放熱部14の温度が極めて低い状況にあるときに、同放熱部14における偏流の発生を抑制することができる。従って、同放熱部14におけるこうした偏流の発生に起因するラジエータ31の耐用寿命低下についても、これを好適に抑制することができるようになる。
(4)また更に、このような熱応力低減処理を開始する際、第1のポンプ12の吐出量を徐々に増大させるようにしているため、極寒時等、第1の放熱部14の温度が極めて低い状況にあるときに、同放熱部14に高温の冷却水が流入した場合であっても、同放熱部14に熱衝撃に起因した一時的な熱応力の増大が発生することを抑制することができるようになる。
尚、本発明の実施態様は上記実施形態にて例示した態様に限られるものではなく、これを例えば以下に示されるように変更して実施することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
・熱応力低減処理を開始する際、冷却水温θ1が開弁温度θz以上である場合(ステップS108:NO)、第1及び第2のポンプ12,23の双方を駆動状態とするようにしたが(ステップS109)、第1のポンプ12を駆動状態とすることにより第1の放熱部14の温度を上昇させる一方、第2のポンプ23を停止状態とすることにより第2の放熱部24の温度を低下させるようにしてもよい。本変形例によれば、各放熱部14,24の温度差を更に減少させてラジエータ31の境界部に生じていた熱応力を好適に緩和することができるようになる。
・熱応力低減処理の実行を通じてラジエータ31の境界部に生じていた熱応力を十分に低減することができると考えられる所定期間を予め定めておき、熱応力低減処理を開始した後、この所定期間が経過したことをもって同処理を終了するようにしてもよい。
・上記実施形態では、熱応力低減処理を開始する際、第1のポンプ12の吐出量をまず所定量DA1に設定した後、これを徐々に増大させるようにしたが、図3の(b)に一点鎖線にて示すように、同処理の開始時から、同吐出量を所定量DA2に設定するようにしてもよい。本変形例によれば、第1の放熱部14における偏流の発生を好適に抑制することができるようになる。または、同図に二点鎖線にて示すように、同処理の開始時から、同ポンプ12の吐出量を徐々に増大させるようにしてもよい。本変形例によれば、第1の放熱部14における熱衝撃の発生を好適に抑制することができるようになる。
・(a)各放熱部14,24の温度差については、例えば各放熱部14,24に温度センサをそれぞれ取り付けて、それらの温度を直接的に監視するようにしてもよい。本変形例によれば、第1の放熱部14と第2の放熱部24との温度差をより直接的に検出することができる。このため、各放熱部14,24の温度差が所定の温度差以上となったことをもって、熱応力低減処理を開始することができ、各放熱部14,24に生じる熱応力をより好適に低減することができるようになる。
・(b)上記変形例(a)において、各放熱部14,24の温度差がラジエータ31の境界部において熱応力が発生しない程度まで十分に減少したことが上記温度センサの検出値から検出されたことをもって応力低減処理を終了することができる。本変形例によれば、ラジエータ31の境界部に生じていた熱応力が低減された後も不要に熱応力低減処理が継続されることを抑制することができるようになる。
・(c)上記各変形例(a),(b)において、各放熱部14,24に取り付けられた各温度センサの検出値に基づいて熱応力低減処理を実行するようにしてもよい。例えば、高負荷走行等により内燃機関11の温度が上昇した後、この温度が低下するまでの期間は、同内燃機関11からの熱により、第1の放熱部14の温度が第2の放熱部24の温度に対して上昇する傾向にある。このため、同期間に第1の放熱部14と第2の放熱部24との温度差が所定の温度差以上となったことをもって、第1のポンプ12の駆動を開始し、第1の放熱部14の温度を低下させる熱応力低減処理を開始することができる。本変形例によれば、このような温度上昇に起因する第1の放熱部14と第2の放熱部24との温度差を低減し、ラジエータ31の境界部に発生する熱応力を低減することができるようになる。
・第1の放熱部14と第2の放熱部24との温度差が増大しないように各還流路19,26における冷却水の流通状態を制御する際の構成としては、例えば還流路(19,26)のいずれか、もしくは双方に流量制御弁を設け、その流量制御弁の開度を調整することにより、還流路(19,26)における冷却水の流通状態を制御することもできる。
・その他、サーモスタット13を感温式の自律開閉弁から所定の信号に基づいて開閉する制御弁とし、この制御弁を適宜開閉することにより、ラジエータ31の流通状態を変更することもできる。また、電機冷却機構20において、こうしたサーモスタットと同様の機能を持たせるようにしてもよい。例えば、第2の還流路26において、電動発電機21の出口近傍とインバータ22の入口近傍とを第2の放熱部24を迂回するかたちで接続する迂回路を設けるとともに、この迂回路あるいは第2の還流路26に流路切替弁を設け、この流路切替弁により、冷却水の流通状態を、冷却水が全て第2の放熱部24に流入する状態と冷却水が全て迂回路に流入する状態との間で切り替えることにより、第2の放熱部24についてその温度を管理するようにしてもよい。
・上記実施形態及び各変形例では、第1の放熱部14と第2の放熱部24との間にダミーチューブ35を配設するようにしたが、上記熱応力低減処理を実行することで、第1の放熱部14と第2の放熱部24との境界部に発生する熱応力を十分に低減することができるため、ダミーチューブ35を省略するようにしてもよい。このようにダミーチューブ35を省略することによりラジエータ31の熱交換能力を低下させることなく、その小型化を図ることができる。
・上記実施形態及びその変形例では、各ポンプ12,23として電動式のウォータポンプを用いるようにしているが、吐出量を変更可能な機関駆動式のポンプを採用することもできる。例えば、内燃機関11の出力軸にクラッチを介してその回転軸が駆動連結され、このクラッチを係合/遮断することにより冷却水を吐出する状態と吐出を停止した状態に切り替えるポンプを採用することもできる。
・機関冷却機構10には、内燃機関11のみならず、その排気通路と吸気通路とを連通するEGR通路に設けられて同EGR通路を介して排気通路から吸気通路に戻されるEGRガスを冷却するEGRクーラや排気通路に設けられてその排気を冷却する廃熱回収器等を併せて冷却するものも含まれる。一方、電機冷却機構20には、電動発電機21のみを冷却するもの、またはインバータ22のみを冷却するものも含まれる。また、電動発電機21を冷却するものには、電動発電機21全体を冷却するものはもとより、その電動機として機能する部分のみを冷却するもの、発電機として機能する部分のみを冷却するものもの含まれる。また、電動発電機21には、電動機と発電機とがアセンブリ化されて搭載されるもの、インバータ22を介してそれら電動機と発電機とが別体として搭載されるものも含まれる。
・上記実施形態及び各変形例においては、冷媒として冷却水を使用するものについて説明したが、機関冷却機構10や電機冷却機構20の冷媒としてオイルを使用してもよいし、機関冷却機構10及び電機冷却機構20の一方の冷媒として冷却水を使用し、他方の冷媒としてオイルを使用するようにしてもよい。更に、これら冷却水やオイルに限らず、所定の熱容量を有するものであって機関冷却機構10や電機冷却機構20に求められる熱交換能力を有する冷媒であればこれを使用することができる。