JP4996498B2 - 構造物変位推定システム及び構造物変位推定方法 - Google Patents
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Description
傾斜計は梁状構造の被支持体に直接設置される他、間接的に、例えば隣接するまくらぎ間に被支持体に沿うように架設される部材に設置され、少なくとも被支持体の長さ方向の軸を含む鉛直面内の水平軸(以下、単に水平軸という)に対する被支持体の軸の傾斜角、すなわち、被支持体の計測点における接線方向の角度(たわみ角)を計測することができるように配置される。
被支持体の傾斜角を推定する関数とは、水平軸上に投影した、被支持体の長さ方向に沿う任意の位置を独立変数とし、傾斜角を従属変数とする関数である。
傾斜計が直接又は間接的に被支持体に設置され、傾斜角の計測点が固定されていることにより、傾斜角が得られる時間毎に水平軸上の定点に対する傾斜角が確定される。被支持体の傾斜角を推定する関数は傾斜計間毎に与えられるので、その関数が与えられている傾斜計間の両端での計測値を通ることがその関数の条件となる。
隣接する2つの関数は、その境界(傾斜計の設置位置)で計測値を共有するため、その境界で連続する。
傾斜計間毎に与えられた関数がその両端で隣接する関数と連続して繋がっていくことで、被支持体の傾斜角を推定する関数が被支持体の全長に亘って連続して形成される。被支持体の傾斜角を推定する関数は水平軸の位置で積分されると、被支持体の変位、すなわち構造物の変位を推定する関数となる。
また、1本からなる、又は接合されて1本となる梁状構造の被支持体とは、真に1本の部材のみからなる被支持体、又は複数個の部材が溶接や継手部材を用いることによって接続されてなる1本の被支持体のことを言う。
被支持体は一般的には複数の部材が接続されて構成される場合が多いので、長さ方向に被支持体の特性が変化することがある。例えば、長さ方向の途中で、強度、又は断面の異なる部材に変更されたり、部材間で溶接や継ぎ目板による接続部分が介在したりして、被支持体の特性が長さ方向に変化する。
被支持体の特性が長さ方向の途中で変化しても、被支持体の傾斜計間の部分の特性が一定である場合、傾斜計間における被支持体は単純な構造で構成されるので、被支持体の傾斜角を推定する関数が簡素化され、また、関数の精度が高くなる。したがって、傾斜計間の被支持体の特性が一定であるように傾斜計を設置して、関数を簡素化、又は関数の精度を高くすることができる。
前記演算装置は、前記傾斜計間毎に設定された前記被支持体の曲げ剛性から、前記傾斜計間毎に前記被支持体の長さ方向に沿った位置に対する前記被支持体の傾斜角を推定する関数を与えることもある(請求項2)。
被支持体がレールからなる場合、被支持体は通常複数の同一部材が接続されて構成され、部材部分と接続部分とからなり、部材部分と接続部分とで弾性係数が相違するので、傾斜計間によって曲げ剛性が相違することがある。また、被支持体がアーチ橋等の橋桁からなる場合、被支持体の長さ方向に沿って断面形状が変化し、断面形状の変化により断面二次モーメントが変化するので、傾斜計間によって曲げ剛性が相違する。曲げ剛性はたわみ量に大きく影響し、たわみ量は被支持体の変位となるので、傾斜計間毎に曲げ剛性を設定して被支持体のたわみ量に反映させることによって構造物の変位が高い精度で推定される。
各傾斜計間で設定される曲げ剛性をそのまま絶対値で表してもよいが、相対値、つまり基準の曲げ剛性に対する比率で表してもよい。例えば、被支持体がレールからなる場合、各傾斜計間の曲げ剛性を、代表的なレールとなる(基準となる)50Nレールの曲げ剛性に対する比率で表すことができる。50Nレールとは単位メートル当たりの重さが約50kgで、在来線に使用されるレールである。
この場合、50Nレールのみで構成される傾斜計間の曲げ剛性比率は1となり、60kレールのみで構成される傾斜計間の曲げ剛性比率は1.58(60kレールの曲げ剛性/50Nレールの曲げ剛性)となり、接続部分からなる傾斜計間の曲げ剛性はその接続手段の形態に応じて適宜に設定される。
前記演算装置は、例えば隣接する前記傾斜計間が共有する測定点において、一方の傾斜計間の一次微分係数に対する他方の傾斜計間の一次微分係数の比と、前記他方の傾斜計間の前記曲げ剛性に対する前記一方の傾斜計間の前記曲げ剛性の比とを一致させる演算を行うこともある(請求項3)。また、前記演算装置は、隣接する前記傾斜計間が共有する測定点において、一方の傾斜計間の二次微分係数に対する他の傾斜計間の二次微分係数の比と、前記他方の傾斜計間の前記曲げ剛性に対する前記一方の傾斜計間の前記曲げ剛性の比とを一致させる演算を行うこともある(請求項4)。各傾斜計間における被支持体の傾斜角を推定する関数と曲げ剛性との積は一致することから、この場合、傾斜計間で推定される関数同士の連続条件が一層正確になるので、構造物の変位の精度が高くなる。
前記構造物はレールからなる前記被支持体と、まくらぎからなる前記支持体とを有する鉄道軌道であり、前記鉄道軌道の全体の変位を推定することもある(請求項5)。構造物が鉄道軌道の場合、使用されるレールの種類は限られているので、傾斜計間で設定される曲げ剛性の種類も限られる。したがって、被支持体の傾斜角の関数を推定する際に適用される曲げ剛性を予め準備することができる。
請求項6に係る発明は、1本からなる、又は接合されて1本となる梁状構造の被支持体と該被支持体を支持している支持体とからなる構造物の変位を推定する構造物変位推定方法であって、前記被支持体の長さ方向に間隔を空けて前記被支持体に沿って設置されている、前記被支持体の前記長さ方向に対する傾斜角を測定する複数個の傾斜計を用いて前記傾斜角を計測する計測工程と、予め演算装置に入力された、前記傾斜角が設置される間隔及び前記支持体の前記傾斜計間毎に設定された曲げ剛性と、前記計測工程で計測された前記傾斜角とから前記演算装置が前記被支持体の長さ方向に沿った位置に対する前記構造物の変位を算出する演算工程とを有することを特徴とする。
図1に本発明の構造物変位推定システム1が軌道(構造物)2に使用されている例を示す。軌道2は、例えばレール(被支持体)3が道床4に支持されているまくらぎ(支持体)5に支持されて構成されている。レール3は、例えば複数本の定尺レール3Aが継ぎ目による手段で繋がれて全体で1本となるように構成されている。本実施の形態では、定尺レール3Aは代表的な定尺レールである50Nレールとする。50Nレール3A、3Aの接続部分は鉛直荷重に対して構造的な弱点部分となるので、通常まくらぎ5の上に配置される。
fi(x) =ai(x−xi)3+bi(x−xi)2+ci(x−xi)+di・・・関数(1)
dfi(x)/dx =3ai(x−xi)2+2bi(x−xi)+ci・・・関数(2)
d2fi(x)/dx2=6ai(x−xi)+2bi・・・関数(3)
fi(xi)=yi・・・条件式(A)
fi(xi+1)=yi+1・・・条件式(B)
Ki・fi+1'(xi+1)=fi'(xi)・・・条件式(C)
Ki・fi+1’’(xi+1)=fi’’(xi)・・・条件式(D)
f1’’(x1)=0・・・条件式(E)
fn’’(xn+1)=0・・・条件式(F)
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
2………軌道(構造物)
3………レール(被支持体)
3A……50Nレール(定尺レール)
4………道床
5………まくらぎ(支持体)
6………傾斜計
7………コンピュータ
7A……記憶装置
7B……演算装置
7C……出力装置
7D……ROM
7E……入力装置
8………無線LANユニット
9………受信ユニット
10……継ぎ目板
Claims (6)
- 1本からなる、又は接合されて1本となる梁状構造の被支持体と該被支持体を支持している支持体とからなる構造物の変位を推定する構造物変位推定システムであって、
前記被支持体の長さ方向に間隔を空けて前記被支持体に沿って設置されている、前記被支持体の長さ方向に対する傾斜角を測定する複数個の傾斜計と、
前記傾斜計から得られる傾斜角から、前記傾斜計間毎に前記被支持体の長さ方向に沿った位置に対する前記被支持体の傾斜角を推定する関数を与える演算装置と
を有することを特徴とする構造物変位推定システム。 - 前記演算装置は、前記傾斜計間毎に設定された前記被支持体の曲げ剛性から、前記傾斜計間毎に前記被支持体の長さ方向に沿った位置に対する前記被支持体の傾斜角を推定する関数を与えることを特徴とする請求項1に記載の構造物変位推定システム。
- 前記演算装置は、隣接する前記傾斜計間が共有する測定点において、一方の傾斜計間の一次微分係数に対する他方の傾斜計間の一次微分係数の比と、前記他方の傾斜計間の前記曲げ剛性に対する前記一方の傾斜計間の前記曲げ剛性の比とを一致させる演算を行うことを特徴とする請求項2に記載の構造物変位推定システム。
- 前記演算装置は、隣接する前記傾斜計間が共有する測定点において、一方の傾斜計間の二次微分係数に対する他の傾斜計間の二次微分係数の比と、前記他方の傾斜計間の前記曲げ剛性に対する前記一方の傾斜計間の前記曲げ剛性の比とを一致させる演算を行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の構造物変位推定システム。
- 前記構造物はレールからなる前記被支持体と、まくらぎからなる前記支持体とを有する鉄道軌道であり、
前記鉄道軌道の全体の変位を推定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の構造物変位推定システム。 - 1本からなる、又は接合されて1本となる梁状構造の被支持体と該被支持体を支持している支持体とからなる構造物の変位を推定する構造物変位推定方法であって、
前記被支持体の長さ方向に間隔を空けて前記被支持体に沿って設置されている、前記被支持体の前記長さ方向に対する傾斜角を測定する複数個の傾斜計を用いて前記傾斜角を計測する計測工程と、
予め演算装置に入力された、前記傾斜角が設置される間隔及び前記支持体の前記傾斜計間毎に設定された曲げ剛性と、前記計測工程で計測された前記傾斜角とから前記演算装置が前記被支持体の長さ方向に沿った位置に対する前記構造物の変位を算出する演算工程と
を有することを特徴とする構造物変位推定方法。
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