JP4994630B2 - 円錐ころ軸受 - Google Patents

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Description

本発明は円錐ころ軸受に関し、たとえば自走車両のデファレンシャルやトランスミッション等の動力伝達軸を支持する軸受に適用することができる。
円錐ころ軸受は、外径面の軌道面の両側に小鍔と大鍔が設けられた内輪と、内径面に軌道面が設けられた外輪と、内輪と外輪の軌道面間に配列された複数の円錐ころと、これらの円錐ころをポケットに収納して保持する保持器とからなり、保持器には、円錐ころの小径端面側で連なる小環状部と、円錐ころの大径端面側で連なる大環状部と、これらの環状部を連結する複数の柱部とからなり、ポケットが、円錐ころの小径側を収納する部分が狭幅側、大径側を収納する部分が広幅側となる台形状に形成されたものが用いられている。
自走車両のデファレンシャルやトランスミッション等の動力伝達軸を支持する円錐ころ軸受は、下部が油浴に漬かった状態で使用され、その回転に伴って油浴の油が潤滑油として軸受内部に流入する。このような用途に使用される円錐ころ軸受では、潤滑油が円錐ころの小径側から軸受内部に流入し、保持器よりも外径側から流入する潤滑油は外輪の軌道面に沿って円錐ころの大径側へ通過し、保持器よりも内径側から流入する潤滑油は内輪の軌道面に沿って円錐ころの大径側へ通過する。
このように潤滑油が外部から流入する部位に使用される円錐ころ軸受には、保持器のポケットに切欠きを設けて、保持器の外径側と内径側とに分かれて流入する潤滑油がこの切欠きを通過するようにし、軸受内部での潤滑油の流通を向上させるようにしたものがある(特許文献1,2参照)。特許文献1に記載されたものでは、図12(A)に示すように、保持器5のポケット9間の柱部8の中央部に切欠き10dを設け、潤滑油に混入する異物が軸受内部に滞留しないようにしている。また、特許文献2に記載されたものでは、図12(B)に示すように、保持器5のポケット9の軸方向両端の小環状部6と大環状部7に切欠き10eを設け、保持器の外径側から流入する潤滑油が内輪側へ流れやすくなるようにしている。なお、各図中に記入したポケット9の各寸法は、後述するトルク測定試験における比較例に用いたものの値である。
特開平09−32858号公報(第3図) 特開平11−201149号公報(第2図) 特開平09−096352号公報 特開平11−0210765公報 特開2003−343552号公報
上述したように潤滑油が保持器の外径側と内径側とに分かれて軸受内部へ流入する円錐ころ軸受では、保持器の内径側から内輪側へ流入する潤滑油の割合が多くなると、トルク損失が大きくなることが分かった。この理由は、以下のように考えられる。
すなわち、保持器の外径側から外輪側へ流入する潤滑油は、外輪の内径面には障害物がないので、その軌道面に沿って円錐ころの大径側へスムーズに通過して軸受内部から流出するが、保持器の内径側から内輪側へ流入する潤滑油は、内輪の外径面には大鍔があるので、その軌道面に沿って円錐ころの大径側へ通過したときに大鍔で堰き止められ、軸受内部に滞留しやすくなる。このため、保持器の内径側から内輪側へ流入する潤滑油の割合が多くなると、軸受内部に滞留する潤滑油の量が多くなり、この滞留する潤滑油が軸受回転に対する流動抵抗となってトルク損失が増大するものと考えられる。
したがって、軸受内部に潤滑油が流入する円錐ころ軸受における潤滑油の流動抵抗によるトルク損失を低減させる必要がある。以上が低トルク化のために油の流動抵抗を減少させる方法であるが、大幅な低トルク化を行うためには、ころがり粘性抵抗が低下するように軸受諸元を変更することが必要である。しかしながら、従来の低トルク化手法(特許文献3〜5参照)では、定格荷重を低下させない低トルク化は可能であるが、軸受剛性はいくらか低下する。
本発明の主要な目的は、軸受剛性を低下させることなく、低トルク化を実現することにある。
本発明は、ころ本数を減らさず、あるいは増加させつつ、PCDを小さくすることによって、課題を解決したものである。図13は円錐ころ軸受においてころピッチ径(PCD)を変化させた時の剛性比(−●−)およびトルク比(−○−)を表したものである。図13に示すように、PCDを小さくすると軸受のトルクは大幅に低下するが、軸受剛性はあまり低下しないことが、ころの弾性変形量を計算確認した結果として得られた。そこで、ころ本数を減らさないか増加させつつ、PCDを小さくすることによって、剛性を低下させずにトルクを低減させることができる。
本発明の円錐ころ軸受は、内輪と、外輪と、内輪と外輪との間に転動自在に配された複数の円錐ころと、円錐ころを円周所定間隔にポケット内で保持する保持器とを備え、保持器が、円錐ころの小端面側で連なる小環状部と、円錐ころの大端面側で連なる大環状部と、これら大小環状部を連結する複数の柱部とからなり、前記隣接する柱部間で、前記ポケットが、円錐ころの小径側を収納する部分が狭幅側、大径側を収納する部分が広幅側となる台形状に形成された円錐ころ軸受において、
前記保持器をプラスチック製とし、前記ポケットの狭幅側の柱部と小環状部の中央部に、前記保持器と前記内輪との間に流入した潤滑油を前記外輪側へ逃がすための切欠きを設けるとともに、前記保持器の外径面に、前記外輪の内径面に向かって凸状をなし外輪の内径面との間に微小隙間を形成する突起部を円周所定間隔で複数形成し、前記保持器外径面を前記外輪内径面に近接させて、ころ本数を減らさず、あるいは増加させつつ、ころピッチ径を小さくしたことを特徴とするものである。
ポケットの狭幅側の柱部と小環状部の中央部に切欠きを設けたことにより、保持器と内輪との間に流入した潤滑油を外輪側へ速やかに逃がすことができる。具体的には、保持器の台形状ポケットの小環状部の中央部に設けた切欠きは、保持器と内輪との間に流入した潤滑油のうち、公転している円すいころ列の各円すいころの小端面に当たった潤滑油を外輪側へ速やかに逃がす作用をする。また、台形状ポケットの狭幅側の柱部に切欠きを設けることにより、次のような作用が得られる。すなわち、保持器の内径側から内輪側へ流入した潤滑油を、この切欠きを通して外輪側へ速やかに逃がすことができる。その結果、内輪の軌道面に沿って大鍔に至る潤滑油の量が少なくなり、軸受内部に滞留する潤滑油の量が減少する。したがって、潤滑油の流動抵抗によるトルク損失が低減する。
また、保持器の外径面に突起部を形成することにより、円錐ころ軸受の回転時に突起部と外輪内径面との間に形成される楔状油膜の動圧により保持器と外輪との間の微小隙間が維持され、両者の接触に伴うトルク損失や保持器ないし外輪軌道面の損傷が防止される。従って保持器外径面を可及的に外輪内径面に接することなく近接させることが可能となり、軸受トルクを増大させることなく、かつ、軸受剛性を低下させずに、保持器のころ収容本数を増大させて内輪軌道面に生じる最大面圧を抑制することができる。
ケットの狭幅側の小環状部の中央部にも切欠きを設けたことにより、保持器の内径側から内輪側へ流入する潤滑油をこの切欠きからも外輪側へ逃がしてやることができる。したがって、内輪の軌道面に沿って大鍔に至る潤滑油の量がより少なくなり、潤滑油の流動抵抗によるトルク損失がさらに低減する。
本発明によれば、軸受剛性を低下させることなく、低トルク化を実現することができる。すなわち、保持器の台形状ポケットの狭幅側の柱部と小環状部の中央部に外径側から内径側まで切り通した切欠きを設けることにより、保持器の内径側から内輪側へ流入した潤滑油を、これらの切欠きを通して外輪側へ速やかに逃がすことができるため、内輪の軌道面に沿って大鍔に至る潤滑油の量が少なくなり、軸受内部に滞留する潤滑油の量が減少して、潤滑油の流動抵抗によるトルク損失が低減する。
また、円錐ころ軸受の保持器の外周面に外輪の内周面に向かって凸状をなす突起部を円周所定間隔で複数形成したので、保持器外径面を外輪内径面に近接させてころ収容本数を増大させても、突起部と外輪内周面との間で楔状油膜による良好な潤滑作用が得られる。従って、軸受のトルク特性を損なうことなく、かつ、軸受剛性を低下させることなく、ころ本数増大によって内外輪軌道面の最大面圧を低減させることができ、高油温、少油量、および予圧抜け発生など悪条件が重なって過酷潤滑条件となった場合でも、極短寿命の表面起点剥離がとりわけ内輪軌道面に発生するのを防止することができる。
以下、図面に従って本発明の実施の形態を説明する。図1(A)(B)に示す実施の形態の円錐ころ軸受1は、内輪2と、外輪3と、円錐ころ4と、保持器5とで構成されている。内輪2は外周に円錐状の軌道面2aを有し、外輪3は内周に円錐状の軌道面3aを有する。複数の円錐ころ4が、内輪2の軌道面2aと外輪3の軌道面3aとの間に転動自在に介在させてある。円錐ころ4は保持器5に形成されたポケット内に収容されている。各円錐ころ4は、内輪2の軌道面2aの両側に設けた小鍔2bと大鍔2cとで軸方向への移動を規制されている。
保持器5は、図1(B)に示すように、円錐ころ4の小端面側で連なる小環状部6と、円錐ころ4の大端面側で連なる大環状部7と、これらの小環状部6と大環状部7を連結する複数の柱部8とを含んでいる。そして、図2に示すように、隣り合った柱部8間にポケット9が形成される。保持器9のポケット9は台形状で、円錐ころ4の小径側を収納する部分が狭幅側、大径側を収納する部分が広幅側となる。ポケット9の狭幅側と広幅側には、それぞれ両側の柱部8に2つずつ、外径側から内径側まで切り通した切欠き10a、10bが設けてある。各切欠き10a、10bの寸法は、いずれも深さ1.0mm、幅4.6mmとされている。狭幅側だけでなく広幅側にも切欠きを設けることにより、円錐ころをバランスよく柱部に接触させることができる。なお、図面に例示した切欠きは、保持器5の半径方向に切り通した溝の形態をしているが、保持器5の内径側と外径側を連絡して潤滑油の円滑な通過を許容することができる限り、形状や寸法は任意である。
保持器5は、例えばPPS、PEEK、PA、PPA、PAI等のスーパーエンプラで一体成形される。保持器に、機械的強度、耐油性および耐熱性に優れたエンジニアリング・プラスチックを使用することにより、鉄板製保持器に比べ、保持器重量が軽く、自己潤滑性があり、摩擦係数が小さいという特徴があるため、軸受内に介在する潤滑油の効果と相俟って、外輪との接触による摩耗の発生を抑えることが可能になる。また、これらの樹脂は鋼板と比べると重量が軽く摩擦係数が小さいため、軸受起動時のトルク損失や保持器摩耗の低減に好適である。エンジニアリング・プラスチックは、汎用エンジニアリング・プラスチックとスーパー・エンジニアリング・プラスチックを含む。なお、保持器材料の例としてPPS、PEEK、PA、PPA、PAI等のスーパーエンプラを挙げたが、必要に応じて、強度増強のため、これら樹脂材料またはその他のエンジニアリング・プラスチックに、ガラス繊維または炭素繊維などを配合したものを使用してもよい。
保持器5の外径面には、突起部5aが形成してある。このような突起部5aは、保持器5をエンジニアリング・プラスチックで一体成形することにより容易に形成できる。突起部5aは、図7〜図9に示すように、保持器5の柱部8の外径面に、外輪3の軌道面3a側に向けて凸状を成す。詳しくは、突起部5aは図8に示すように、柱部8の横断方向の断面輪郭形状が円弧状を成す。この円弧状の曲率半径R2は外輪3の軌道面3aの半径R1より小さく形成されている。これは突起部5aと外輪3の軌道面3aとの間に良好な楔状油膜が形成されるようにするためであり、望ましくは突起部5aの曲率半径R2は外輪3の軌道面3aの半径R1の70〜90%程度に形成するとよい。70%未満であると楔状油膜の入口開き角度が大きくなりすぎて却って動圧が低下する。90%を超えると楔状油膜の入口角度が小さくなりすぎて同様に動圧が低下する。また、突起部5aの横幅W2は望ましくは柱部8の横幅W1の50%以上となるように形成する(W2≧0.5×W)。50%未満では良好な楔状油膜を形成するための充分な突起部5aの高さが確保できなくなるためである。なお、外輪3の軌道面3aの半径R1は大径側から小径側へと連続的に変化しているので、突起部5aの曲率半径R2もそれに合わせて大環状部7の大きな曲率半径R2から小環状部6の小さな曲率半径R2へと連続的に変化するようにする。
図3および図4に保持器5の切欠きの変形例を示す。図3に示す変形例は、ポケット9の狭幅側の小環状部6にも切欠き10cを設けたものである。そして、狭幅側の3つの切欠き10a,10cの合計面積が、広幅側の2つの切欠き10bの合計面積よりも広くなっている。なお、切欠き10cは深さ1.0mm、幅5.7mmとしてある。
図4に示す変形例は、狭幅側の柱部8の各切欠き10aの深さが1.5mmと広幅側の柱部8の各切欠き10bよりも深く、狭幅側の各切欠き10aの合計面積が、広幅側の各切欠き10bの合計面積よりも広くなっている。図3、図4に例示したような構成を採用することにより、内輪の軌道面に沿って大鍔に至る潤滑油の量をより少なくして、潤滑油の流動抵抗によるトルク損失をさらに低減させることができる。
図5に示すように、保持器5の小環状部6の軸方向外側には、内輪2の小鍔2bの外径面に対向させた径方向内向きのつば11が設けてあり、このつば11の内径面と内輪2の小鍔2bの外径面との間のすきまδは、小鍔2bの外径寸法の2.0%以下に狭く設定してある。このような構成を採用することにより、保持器の内径側から内輪側へ流入する潤滑油の量を少なくし、潤滑油の流動抵抗によるトルク損失をより低減させることができる。
また、図示は省略するが、円錐ころ4の全表面には微小凹形形状のくぼみがランダムに無数に設けてある。このくぼみを設けた表面は、面粗さパラメータRyniが0.4μm≦Ryni≦1.0μm、かつ、Sk値が−1.6以下としてある。このような構成を採用することにより、円錐ころの表面に満遍なく潤滑油を保持させて、軸受内部に滞留する潤滑油の量を減らしても、円錐ころと内輪、外輪との接触部を十分に潤滑することができる。
パラメータRyniは、基準長毎最大高さの平均値、すなわち、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定した値である(ISO 4287:1997)。また、Sk値は粗さ曲線のひずみ度、すなわち、粗さの凹凸分布の非対称性を表す値であり(ISO 4287:1997)、ガウス分布のように対称な分布ではSk値は0に近くなり、凹凸の凸部を削除した場合は負の値、逆に凹部を削除した場合は正の値となる。Sk値のコントロールは、バレル研磨機の回転速度、加工時間、ワーク投入量、研磨チップの種類と大きさ等を選ぶことにより行うことができ、Sk値を−1.6以下とすることにより、無数の微小凹形形状のくぼみに満遍なく潤滑油を保持することができる。
図6は、上述の円錐ころ軸受を使用し得る自動車のデファレンシャルの構成を例示したものである。このデファレンシャルは、プロペラシャフト(図示省略)に連結され、デファレンシャルケース21内に挿入したドライブピニオン22が差動歯車ケース23に取り付けたリングギヤ24とかみ合い、差動歯車ケース23の内部に取り付けたピニオンギヤ25が、差動歯車ケース23に左右から挿入されるドライブシャフト(図示省略)と結合するサイドギヤ26とかみ合って、エンジンの駆動力をプロペラシャフトから左右のドライブシャフトに伝達するようになっている。このデファレンシャルでは、動力伝達軸であるドライブピニオン22と差動歯車ケース23が、それぞれ一対の円錐ころ軸受1a,1bで支持してある。
デファレンシャルケース21はシール部材27a,27b,27cで密封され、内部にており潤滑油が貯留される。各円錐ころ軸受1a,1bはこの潤滑油の油浴に下部が漬かった状態で回転する。
円錐ころ軸受1(1a,1b)は以上のように構成されているため、各円錐ころ軸受1a,1bが高速で回転してその下部が油浴に漬かると、図5に矢印で示すように、油浴の潤滑油が円錐ころ4の小径側から保持器5の外径側と内径側とに分かれて軸受内部へ流入し、保持器5の外径側から外輪3へ流入した潤滑油は、外輪3の軌道面3aに沿って円錐ころ4の大径側へ通過して軸受内部から流出する。一方、保持器5の内径側から内輪2側へ流入する潤滑油は、保持器5の外径側から流入する潤滑油よりも遥かに少なく、かつ、このすきまδから流入する潤滑油の大半は、ポケット9の狭幅側の柱部8に設けた切欠き10aを通過して、保持器5の外径側へ移動する。したがって、そのまま内輪2の軌道面2aに沿って大鍔2cに至る潤滑油の量は非常に少なくなり、軸受内部に滞留する潤滑油の量を減らすことができる。
また、軸受1(1a,1b)が回転して保持器5が回転し始めると、外輪軌道面と保持器5の突起部5aとの間に楔状油膜が形成される。この楔状油膜は軸受1の回転速度にほぼ比例した動圧を発生するので、保持器5のピッチ径(PCD)を従来よりも大きくして外輪3の軌道面3aに近接させても、軸受1を大きな摩耗ないしトルク損失を生じることなく回転させることが可能となり、無理なくころ本数を増加させることが可能となる。なお、突起部5aは柱部8の外径面に形成する他、保持器5の小環状部6や大環状部7の外径面にも形成することができる。また前述したように、図5のすきまδから流入した潤滑油の大半は、ポケット9の狭幅側の柱部8に設けた切欠き10aを通過して保持器5の外径側へ移動するから、軸受内部に滞留する潤滑油の量が大幅に低下する。この結果、軸受剛性を低下させることなく低トルク化を図ることができる。
図10は、上述の円錐ころ軸受を使用し得る自動車のトランスミッションの構成を例示したものである。このトランスミッションは同期噛合式のもので、同図で左方向がエンジン側、右方向が駆動車輪側である。メインシャフト41とメインドライブギヤ42との間に円錐ころ軸受43が介装される。この例では、メインドライブギヤ42の内周に円錐ころ軸受43の外輪軌道面が直接形成されている。メインドライブギヤ42は、円錐ころ軸受44でケーシング45に対して回転自在に支持される。メインドライブギヤ42にクラッチギヤ46が係合連結され、クラッチギヤ46に近接してシンクロ機構47が配設される。
シンクロ機構47は、セレクタ(図示省略)の作動によって軸方向(図10で左右方向)に移動するスリーブ48と、スリーブ48の内周に軸方向移動自在に装着されたシンクロナイザーキー49と、メインシャフト41の外周に係合連結されたハブ50と、クラッチギヤ46の外周(コーン部)に摺動自在に装着されたシンクロナイザーリング51と、シンクロナイザーキー49をスリーブ48の内周に弾性的に押圧する押さえピン52及びスプリング53とを備えている。
図10に示す状態では、スリーブ48及びシンクロナイザーキー49が押さえピン52によって中立位置に保持されている。この時、メインドライブギヤ42はメインシャフト41に対して空転する。一方、セレクタの作動により、スリーブ48が同図に示す状態から例えば軸方向左側に移動すると、スリーブ48に従動してシンクロナイザーキー49が軸方向左側に移動し、シンクロナイザーリング51をクラッチギヤ46のコーン部の傾斜面に押し付ける。これにより、クラッチギヤ46の回転速度が落ち、逆にシンクロ機構47側の回転速度が高められる。そして、両者の回転速度が同期した頃、スリーブ48がさらに軸方向左側に移動して、クラッチギヤ46とかみ合い、メインシャフト41とメインドライブギヤ42との間がシンクロ機構47を介して連結される。これにより、メインシャフト41とメインドライブギヤ42とが同期回転する。
実施例として、図2に示した保持器を用いた円すいころ軸受(実施例1)と、図3に示した保持器を用いた円すいころ軸受(実施例2)を用意した。また、比較例として、ポケットに切欠きのない保持器を用いた円すいころ軸受(比較例1)と、図12(A)、(B)に示した保持器を用いた円すいころ軸受(比較例2,3)を用意した。なお、各円すいころ軸受は、寸法が外径100mm、内径45mm、幅27.25mmであり、ポケットの切欠き以外の部分は同じである。
実施例と比較例の円すいころ軸受について、縦型トルク試験機を用いたトルク測定試験を行った。試験条件は以下のとおりである。
アキシアル荷重:300kgf
回転速度:300〜2000rpm(100rpmピッチ)
潤滑条件:油浴潤滑(潤滑油:75W−90)
図11に試験結果を示す。同図のグラフの縦軸は、ポケットに切欠きのない保持器を用いた比較例1のトルクに対するトルク低減率を表す。ポケットの柱部中央部に切欠きを設けた比較例2や、ポケットの小環状部と大環状部に切欠きを設けた比較例3も、トルク低減効果が認められるが、ポケットの狭幅部側の柱部に切欠きを設けた実施例1は、これらの比較例よりも優れたトルク低減効果が認められ、狭幅側の小環状部にも切欠きを設け、狭幅側の切欠きの合計面積を広幅側のそれよりも広くした実施例2は、さらに優れたトルク低減効果が認められる。
また、試験の最高回転速度である2000rpmにおけるトルク低減率は、実施例1が9.5%、実施例2が11.5%であり、デファレンシャルやトランスミッション等における高速回転での使用条件でも優れたトルク低減効果を得ることができる。なお、比較例2と比較例3の回転速度2000rpmにおけるトルク低減率は、それぞれ8.0%と6.5%である。
(A)は本発明の実施の形態を示す円錐ころ軸受の横断面図、(B)は同軸受の縦断面図 図1の円錐ころ軸受における保持器の展開平面図 保持器の変形例を示す図2と類似の展開平面図 保持器の別の変形例を示す図2と類似の展開平面図 図1(B)の部分拡大図 図1の円錐ころ軸受を使用したデファレンシャルの断面図 保持器の変形例を示す円錐ころ軸受の部分横断面図 図7の軸受における保持器の柱部の拡大断面図 保持器の部分斜視図。 一般的な自動車トランスミッションの断面図 トルク測定試験の結果を示すグラフ (A),(B)は、それぞれ従来の技術を示す保持器の展開平面図 ピッチ径比に対する、トルク比と剛性比の相関グラフ図
符号の説明
1,1a,1b 円錐ころ軸受
2 内輪
2a 軌道面
2b 小鍔
2c 大鍔
3 外輪
3a 軌道面
4 円錐ころ
5 保持器
5a 突起部
6 小環状部
7 大環状部
8 柱部
9 ポケット
10a〜10e 切欠き
11 つば
21 デファレンシャルケース
22 ドライブピニオン
23 差動歯車ケース
24 リングギヤ
25 ピニオンギヤ
26 サイドギヤ
27a,27b,27c シール部材
41 メインシャフト
42 メインドライブギヤ
43,44 軸受
45 ケーシング
46 クラッチギヤ
47 シンクロ機構
48 スリーブ
49 シンクロナイザーキー
50 ハブ
51 シンクロナイザーリング
52 ピン
53 スプリング
δ すきま

Claims (1)

  1. 内輪と、外輪と、内輪と外輪との間に転動自在に配された複数の円錐ころと、円錐ころを円周所定間隔にポケット内で保持する保持器とを備え、保持器が、円錐ころの小端面側で連なる小環状部と、円錐ころの大端面側で連なる大環状部と、これら大小環状部を連結する複数の柱部とからなり、前記隣接する柱部間で、前記ポケットが、円錐ころの小径側を収納する部分が狭幅側、大径側を収納する部分が広幅側となる台形状に形成された円錐ころ軸受において、
    前記保持器をプラスチック製とし、前記ポケットの狭幅側の柱部と小環状部の中央部に、前記保持器と前記内輪との間に流入した潤滑油を前記外輪側へ逃がすための切欠きを設けるとともに、前記保持器の外径面に、前記外輪の内径面に向かって凸状をなし外輪の内径面との間に微小隙間を形成する突起部を円周所定間隔で複数形成し、前記保持器外径面を前記外輪内径面に近接させて、ころ本数を減らさず、あるいは増加させつつ、ころピッチ径を小さくした円錐ころ軸受。
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