JP2017048914A - シール付軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】シールトルクが小さく、軸受温度が上昇しにくく、シールリップの吸着現象が生じにくいシール付軸受を提供する。
【解決手段】内輪2と、外輪3と、内輪2と外輪3の間に形成される環状空間4内に設けられた複数の玉5と、環状空間4の端部開口を塞ぐ環状のシール部材7とを有し、シール部材7の外径側端部は外輪3に固定され、シール部材7の内径側端部はゴム製のシールリップ9が設けられ、内輪2の外周には、シールリップ9が摺接するシール摺接面13が周方向に連続して形成され、シール摺接面13に、シールリップ9を横切って延びる油溝14が設けられている構成をシール付軸受に採用する。
【選択図】図1
【解決手段】内輪2と、外輪3と、内輪2と外輪3の間に形成される環状空間4内に設けられた複数の玉5と、環状空間4の端部開口を塞ぐ環状のシール部材7とを有し、シール部材7の外径側端部は外輪3に固定され、シール部材7の内径側端部はゴム製のシールリップ9が設けられ、内輪2の外周には、シールリップ9が摺接するシール摺接面13が周方向に連続して形成され、シール摺接面13に、シールリップ9を横切って延びる油溝14が設けられている構成をシール付軸受に採用する。
【選択図】図1
Description
この発明は、内輪と外輪の間にシール部材が設けられたシール付軸受に関する。
一般に、自動車のトランスミッション、ディファレンシャルギヤ、等速ジョイント、プロペラシャフト、ターボチャージャ、ハブ等の回転部や、工作機械、風力発電機の回転部には、転がり軸受が使用される。転がり軸受は、内輪と、内輪の径方向外側に同軸に設けられた外輪と、内輪と外輪の間の環状空間内に設けられた複数の転動体とを有する。
自動車のトランスミッションやディファレンシャルギヤの転がり軸受は、潤滑油の環境下で使用される。この潤滑油には、ギヤの摩耗粉等の異物が混在することが多い。このギヤの摩耗粉等が軸受内部に侵入すると、軸受が早期破損する原因となる。
そこで、ギヤの摩耗粉等の異物が、軸受内部に侵入するのを防止するため、自動車のトランスミッションやディファレンシャルギヤの転がり軸受は、一般に、シール付軸受が使用される(例えば、特許文献1を参照)。シール付軸受は、内輪と外輪の間に形成される環状空間の端部開口を環状のシール部材で塞いだ軸受である。シール部材の外径側端部は外輪に固定されている。シール部材の内径側端部は、ゴム製のシールリップが設けられ、このシールリップが、内輪の外周に周方向に連続して形成されたシール摺接面に摺接している。
ところで、シール付軸受は、シール部材のシールリップが内輪の外周のシール摺接面に摺接するため、内輪と外輪が相対回転するとき、シールリップとシール摺接面の間の摩擦による回転抵抗(以下「シールトルク」という)が生じる。このシールトルクは、トランスミッションやディファレンシャルギヤ等の伝達効率を高めるためには、小さい方が好ましい。近年特に、自動車の一層の低燃費化が求められており、これに伴い、トランスミッションやディファレンシャルギヤ等に用いられるシール付軸受のシールトルクを更に小さくすることの重要性が高まっている。
また、シール付軸受は、シール部材のシールリップが内輪の外周のシール摺接面に摺接するため、シールリップとシール摺接面の間の摩擦熱によって、軸受の温度が上昇しやすい。
また、シール付軸受は、シールリップの吸着現象を生じるおそれがある。シールリップの吸着現象は、軸受の温度がいったん上昇し、その後、低下したときに、軸受の内外に圧力差が生じ、その圧力差によってシールリップがシール摺接面に吸着する現象である。このシールリップの吸着現象が生じると、シールトルクが過大になったり、シールリップが異常摩耗したりするおそれがある。
図16(a),(b)に、使用後のトランスミッションオイルを市場から回収し、そのトランスミッションオイルに含まれる異物の粒径分布を調査した結果を示す。図16(a)はオートマチックトランスミッション(AT)またはマニュアルトランスミッション(MT)を搭載する自動車(計8車輌)を対象とした調査結果であり、図16(b)は無段変速機(CVT)を搭載する自動車(計10車輌)を対象とした調査結果である。これらの調査結果を参照すると、使用後のトランスミッションオイルに含まれる異物は、50μm未満の極めて微細な粒径のものがほぼ全体(99.9%以上)を占め、50μm以上の比較的大きな粒径のものは極めてわずか(0.01〜0.02%程度)しかない。このことは、近年、トランスミッションのオイルフィルターの性能が向上し、トランスミッションオイル中の異物が微細化している(つまり大きな粒径の異物がオイルフィルターで取り除かれている)ことを示している。
一方、転がり軸受の内部の潤滑油が異物を含む場合に、その異物の粒径と軸受寿命との関係について調査を行なったところ、潤滑油に含まれる異物の粒径が大きくなるにしたがって軸受寿命が低下する傾向が存在するが、潤滑油に含まれる異物の粒径が50μm以下であれば、転がり軸受の寿命比(実際寿命の計算寿命に対する比)が、自動車のトランスミッションでの実用に十分耐えうる値(例えば7〜10倍程度)を示すことが分かった。
以上の結果に基づき、本願の発明者は、エンジンやトランスミッションやディファレンシャルギヤ等に用いられる転がり軸受をトランスミッションオイルで潤滑する場合、トランスミッションオイルに含まれる異物のほとんど全部(99.9%以上)が、軸受内部に侵入しても軸受寿命に問題を起こさない程度の極めて微細な粒径のもの(50μm以下の粒径のもの)であるという点に気付いた。そして、エンジンやトランスミッションやディファレンシャルギヤ等に用いられるシール付軸受において、シールトルクの低減等を目的としてトランスミッションオイルの軸受内部への侵入を許容し、これとともに極めて微細な粒径の異物が軸受内部に侵入するのを許容したとしても、比較的大きな粒径の異物が軸受内部に侵入するのをシール部材で防止すれば、軸受寿命の面で問題が生じるのを防止することが可能であるという着想を得た。
この発明が解決しようとする課題は、シールトルクが小さく、軸受温度が上昇しにくく、シールリップの吸着現象が生じにくいシール付軸受を提供することである。
上記の課題を解決するため、この発明では、以下の構成のシール付軸受を提供する。
内輪と、
前記内輪の径方向外側に前記内輪と同軸に設けられた外輪と、
前記内輪と前記外輪の間に形成される環状空間内に設けられた複数の転動体と、
前記環状空間の端部開口を塞ぐ環状のシール部材とを有し、
前記シール部材の外径側端部は前記外輪に固定され、前記シール部材の内径側端部はゴム製のシールリップが設けられ、
前記内輪の外周には、前記シールリップが摺接するシール摺接面が周方向に連続して形成され、
前記シール摺接面に、前記シールリップを横切って延びる油溝が設けられているシール付軸受。
内輪と、
前記内輪の径方向外側に前記内輪と同軸に設けられた外輪と、
前記内輪と前記外輪の間に形成される環状空間内に設けられた複数の転動体と、
前記環状空間の端部開口を塞ぐ環状のシール部材とを有し、
前記シール部材の外径側端部は前記外輪に固定され、前記シール部材の内径側端部はゴム製のシールリップが設けられ、
前記内輪の外周には、前記シールリップが摺接するシール摺接面が周方向に連続して形成され、
前記シール摺接面に、前記シールリップを横切って延びる油溝が設けられているシール付軸受。
このようにすると、シール摺接面に設けられた油溝に潤滑油が入り込み、その潤滑油がシールリップとシール摺接面の間に導入されることで、シールリップとシール摺接面の間に油膜が形成されやすくなる。そのため、シールリップとシール摺接面の間の摩擦係数が下がり、シールトルクを小さく抑えることができる。また、潤滑油が、シール摺接面に設けられた油溝を通過するので、シールリップとシール摺接面の間の摩擦熱が放熱されやすい。そのため、軸受の温度上昇を抑えることが可能である。また、シール摺接面に油溝が設けられているので、シールリップがシール摺接面に吸着する吸着現象を防止することができる。
前記油溝の内面に、前記シールリップと前記油溝の間にくさび状隙間が形成されるように円周方向に対して傾斜した傾斜面を設け、その傾斜面に沿って前記くさび状隙間の広大側から狭小側に潤滑油を誘導することで、前記シールリップと前記シール摺接面の間の潤滑状態を流体潤滑状態とすると好ましい。
このようにすると、シールリップとシール摺接面の間の摩擦を飛躍的に低減することが可能となり、シールトルクの大きさを極めて低く抑えることが可能となる。また、シールリップとシール摺接面の間の摩擦熱が発生しにくくなるため、潤滑油の温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。
ここで、潤滑状態は、境界潤滑状態と流体潤滑状態とに区別され、境界潤滑状態は、摩擦面に吸着した潤滑油の数層の分子層(10−5〜10−6mm程度)からなる油膜で摩擦面を潤滑し、摩擦面の細かい凹凸の直接接触が生じている状態をいい、流体潤滑状態は、流体力学的な原理によって潤滑油の流体膜(例えば10−3〜10−1mm程度)を2面間に形成し、摩擦面の直接接触が生じていない状態をいう。くさび膜効果が発生し流体潤滑状態になると、摺動抵抗がほぼゼロになるため、従来シールでは不可能だった高周速での使用が可能となる。
前記傾斜面は、前記内輪の軸心に直交する平面に沿った断面形状が凸円弧状の湾曲面とすると好ましい。
このようにすると、前記シールリップと前記シール摺接面の間の潤滑状態をより確実に流体潤滑状態とすることが可能となる。
前記油溝は、前記シール摺接面に周方向に間隔をおいて複数設けると好ましい。
このようにすると、シールリップとシール摺接面の間に、全周にわたって潤滑油が導入されやすくなり、より効果的にシールトルクを低減することが可能となる。また、軸受の温度上昇およびシールリップの吸着現象をより効果的に防止することが可能となる。
前記油溝の前記シール摺接面からの深さは、10〜50μmとすると好ましい。
油溝のシール摺接面からの深さを10μm以上とすることにより、油溝に効果的に潤滑油を導入することができる。油溝のシール摺接面からの深さを50μm未満とすることにより、異物が、油溝を通って軸受の内部に侵入するのを効果的に防止することができる。
前記油溝は、前記内輪の軸心と平行な方向に対し斜めに延びるように形成すると好ましい。
このようにすると、油溝を内輪の軸心と平行に延びるように形成するよりも、油溝の溝縁の長さが長くなる。そのため、油溝内の潤滑油がシールリップとシール摺接面の間に導入されやすくなり、より効果的にシールトルクを抑えることが可能となる。
前記内輪は、
前記転動体が転がり接触する転走面と、前記転走面に近い側から遠い側に向かって小径となる段差部とを外周に有する内輪本体と、
前記内輪本体の段差部に装着され、前記シール摺接面および前記油溝を外周に有する金属リングとを有する構成とすると好ましい。
前記転動体が転がり接触する転走面と、前記転走面に近い側から遠い側に向かって小径となる段差部とを外周に有する内輪本体と、
前記内輪本体の段差部に装着され、前記シール摺接面および前記油溝を外周に有する金属リングとを有する構成とすると好ましい。
このようにすると、油溝の加工が容易であり、軸受の製造コストを低減することが可能となる。
また、上記の課題を解決するため、この発明では、以下の構成のシール付軸受を提供する。
内輪と、
前記内輪の径方向外側に前記内輪と同軸に設けられた外輪と、
前記内輪と前記外輪の間に形成される環状空間内に設けられた複数の転動体と、
前記環状空間の端部開口を塞ぐ環状のシール部材とを有し、
前記シール部材の外径側端部は前記外輪に固定され、前記シール部材の内径側端部はゴム製のシールリップが設けられ、
前記内輪の外周には、前記シールリップが摺接するシール摺接面が周方向に連続して形成され、
前記シール摺接面に、前記シールリップを横切って延びる突起が設けられているシール付軸受。
内輪と、
前記内輪の径方向外側に前記内輪と同軸に設けられた外輪と、
前記内輪と前記外輪の間に形成される環状空間内に設けられた複数の転動体と、
前記環状空間の端部開口を塞ぐ環状のシール部材とを有し、
前記シール部材の外径側端部は前記外輪に固定され、前記シール部材の内径側端部はゴム製のシールリップが設けられ、
前記内輪の外周には、前記シールリップが摺接するシール摺接面が周方向に連続して形成され、
前記シール摺接面に、前記シールリップを横切って延びる突起が設けられているシール付軸受。
このようにすると、シール摺接面に設けられた突起に隣接して形成される隙間に潤滑油が入り込み、その潤滑油がシールリップとシール摺接面の間に導入されることで、シールリップとシール摺接面の間に油膜が形成されやすくなる。そのため、シールリップとシール摺接面の間の摩擦係数が下がり、シールトルクを小さく抑えることができる。また、潤滑油が、シール摺接面に設けられた突起に隣接して形成される隙間を通過するので、シールリップとシール摺接面の間の摩擦熱が放熱されやすい。そのため、軸受の温度上昇を抑えることが可能である。また、シール摺接面に突起が設けられているので、シールリップがシール摺接面に吸着する吸着現象を防止することができる。
前記突起の表面に、前記シールリップと前記突起の間にくさび状の隙間を形成するように円周方向に対して傾斜した傾斜面を設け、その傾斜面に沿って前記くさび状隙間の広大側から狭小側に潤滑油を誘導することで、前記シールリップと前記突起の間の潤滑状態を流体潤滑状態とすると好ましい。
このようにすると、シールリップとシール摺接面の間の摩擦を飛躍的に低減することが可能となり、シールトルクの大きさを極めて低く抑えることが可能となる。また、シールリップとシール摺接面の間の摩擦熱が発生しにくくなるため、潤滑油の温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。
前記傾斜面は、前記内輪の軸心に直交する平面に沿った断面形状が凸円弧状の湾曲面とすると好ましい。
このようにすると、前記シールリップと前記突起の間の潤滑状態をより確実に流体潤滑状態とすることが可能となる。
前記突起は、前記シール摺接面に周方向に間隔をおいて複数設けると好ましい。
このようにすると、シールリップとシール摺接面の間に、全周にわたって潤滑油が導入されやすくなり、より効果的にシールトルクを低減することが可能となる。また、軸受の温度上昇およびシールリップの吸着現象をより効果的に防止することが可能となる。
前記突起の前記シール摺接面からの高さは、10〜50μmとすると好ましい。
突起のシール摺接面からの高さを10μm以上とすることにより、突起に隣接して形成される隙間に効果的に潤滑油を導入することができる。突起のシール摺接面からの高さを50μm未満とすることにより、異物が、突起に隣接して形成される隙間を通って軸受の内部に侵入するのを効果的に防止することができる。
前記突起は、前記内輪の軸心と平行な方向に対し斜めに延びるように形成すると好ましい。
このようにすると、突起を内輪の軸心と平行に延びるように形成するよりも、突起の稜線の長さが長くなる。そのため、突起に隣接して形成される隙間内の潤滑油がシールリップとシール摺接面の間に導入されやすくなり、より効果的にシールトルクを抑えることが可能となる。
前記内輪は、
前記転動体が転がり接触する転走面と、前記転走面に近い側から遠い側に向かって小径となる段差部とを外周に有する内輪本体と、
前記内輪本体の段差部に装着され、前記シール摺接面および前記突起を外周に有する金属リングとを有する構成とすると好ましい。
前記転動体が転がり接触する転走面と、前記転走面に近い側から遠い側に向かって小径となる段差部とを外周に有する内輪本体と、
前記内輪本体の段差部に装着され、前記シール摺接面および前記突起を外周に有する金属リングとを有する構成とすると好ましい。
このようにすると、突起の加工が容易であり、軸受の製造コストを低減することが可能となる。
自動車のトランスミッションの回転軸を回転可能に支持する転がり軸受として、上記各構成のシール付軸受を使用すると特に好適である。
この発明のシール付軸受は、シールリップとシール摺接面の間に油膜が形成されやすく、シールトルクを小さく抑えることができる。また、シールリップとシール摺接面の間の摩擦熱が放熱されやすいので、軸受の温度上昇を抑えることが可能である。また、シールリップがシール摺接面に吸着する吸着現象が生じにくい。
図1に、この発明の第1実施形態にかかるシール付軸受1を示す。このシール付軸受1は、内輪2と、内輪2の径方向外側に内輪2と同軸に設けられた外輪3と、内輪2と外輪3の間に形成される環状空間4内に設けられた複数の玉5と、その複数の玉5の周方向の間隔を保持する保持器6と、環状空間4の両側の端部開口を塞ぐ一対のシール部材7とを有する。
シール部材7は、環状の芯金8の表面にゴム材(例えばニトリルゴム)を加硫接着して形成された環状の部材である。シール部材7の内径側端部には、ゴム製のシールリップ9が設けられている。シールリップ9は、芯金8の径方向内端から径方向内側に延びるゴム材の部分である。
外輪3の内周には、玉5が転走する転走面10と、シール溝11とが設けられている。シール溝11は、転走面10を間に挟む両側に設けられている。各シール溝11には、シール部材7の外径側端部が嵌め込んで固定されている。
図2に示すように、内輪2の外周には、玉5が転走する転走面12と、シール部材7のシールリップ9が摺接するシール摺接面13とが周方向に連続して形成されている。シール摺接面13は、軸方向に沿って外径が一定の円筒面である。シール摺接面13は、転走面12を間に挟む両側に設けられている(図1参照)。この実施形態では、シール摺接面13として外径が一定の円筒面を採用したが、転走面12に近い側から遠い側に向かって外径が次第に小さくなるテーパ面を採用してもよい。この場合、テーパ面は、断面が直線となる円すい形状とすると、シール摺接面13に後述の油溝14を加工する作業が容易となるので好ましい。
シール摺接面13に、シールリップ9を横切って延びる油溝14が設けられている。油溝14は、油溝14の転走面12に近い側の端部が、転走面12とシールリップ9の間の位置にくるように形成されている。すなわち、油溝14は、転走面12と交差しないように転走面12から離れた位置に端部を有する。油溝14は、油溝14の転走面12から遠い側の端部が、内輪2の端面側に開放して形成されている。
図3に示すように、油溝14は、シール摺接面13に周方向に間隔をおいて複数設けられている。各油溝14は、断面円弧状となるように形成されている。油溝14のシール摺接面13からの深さDは、10〜50μm(好ましくは10〜30μm)である。図6に示すように、油溝14は、内輪2の軸心Lと平行な方向に延びるように形成されている。なお、各図では、油溝14の深さを誇張して示したが、実際の油溝14の深さは0.1mm未満の極めて微小なものである。
図4に示すように、油溝14の内面には、円周方向に対して傾斜した傾斜面18が設けられ、この傾斜面18とシールリップ9との間にくさび状隙間19が形成されている。くさび状隙間19は、油溝14の周方向中央の側から周方向端の側に向かって径方向幅が次第に小さくなるくさび状の空間である。そして、シール部材7と内輪2が相対回転したときに、油溝14の内部の潤滑油が傾斜面18に沿ってくさび状隙間19の広大側から狭小側に誘導され、このとき潤滑油がシールリップ9とシール摺接面13の間を半径方向に引き離す方向の圧力を発生し、これにより、シールリップ9とシール摺接面13の油溝14以外の部分との間の潤滑状態が流体潤滑状態となるようになっている。シール摺接面13には油溝14が含まれる。
ここで、図5に示すように、傾斜面18は、内輪2の軸心Lに直交する平面に沿った断面形状が凸円弧状の湾曲面となるように形成することも可能である。このようにすると、くさび状隙間19のくさび角度が広大側から狭小側に向かって次第に小さくなることから、シールリップ9とシール摺接面13の間を半径方向に引き離す方向の圧力をより効果的に発生することが可能となり、シールリップ9とシール摺接面13の油溝14以外の部分との間の潤滑状態を、より確実に流体潤滑状態とすることが可能となる。
図14に、上記のシール付軸受1を、自動車のトランスミッションの回転軸(ここではプライマリプーリ軸21およびセカンダリプーリ軸22)を回転可能に支持する転がり軸受として使用した例を示す。このトランスミッションは、変速比を連続的に変化させることが可能な無段変速機(いわゆるCVT、Continuously Variable Transmission)であり、プライマリプーリ軸21と、プライマリプーリ軸21と平行に配置されたセカンダリプーリ軸22と、プライマリプーリ軸21の外周にプライマリプーリ軸21と一体回転するように設けられたプライマリプーリ23と、セカンダリプーリ軸22の外周にセカンダリプーリ軸22と一体回転するように設けられたセカンダリプーリ24と、プライマリプーリ23とセカンダリプーリ24の間に掛け渡された無端の金属ベルト25と、これらの部材を収容するハウジング26とを有する。
プライマリプーリ23は、プライマリプーリ軸21に対して軸方向に固定された固定シーブ23Aと、プライマリプーリ軸21に対して軸方向移動可能に支持された可動シーブ23Bとからなる。同様に、セカンダリプーリ24は、セカンダリプーリ軸22に対して軸方向に固定された固定シーブ24Aと、セカンダリプーリ軸22に対して軸方向移動可能に支持された可動シーブ24Bとからなる。プライマリプーリ軸21とセカンダリプーリ軸22は、それぞれシール付軸受1で回転可能に支持されている。また、このトランスミッションは、ハウジング26の内部にトランスミッションオイル(潤滑油)を噴射する図示しないノズルが設けられており、このノズルから噴射されたトランスミッションオイルが、各シール付軸受1の側面にかかるようになっている。
このトランスミッションは、この両プーリ23,24の可動シーブ23B,24Bをそれぞれ軸方向に移動させることにより、プライマリプーリ23に対する金属ベルト25の巻き掛け半径と、セカンダリプーリ24に対する金属ベルト25の巻き掛け半径とをそれぞれ変化させて、プライマリプーリ軸21からセカンダリプーリ軸22に伝達する回転の変速比を変化させることができるようになっている。
また上記のシール付軸受1は、図15に示すように、段階的に変速比を変化させる多段変速機の回転軸(ここでは入力軸27および出力軸28)を回転可能に支持する転がり軸受として使用することも可能である。図15に示すトランスミッションは、エンジンの回転が入力される入力軸27と、入力軸27と平行に設けられた出力軸28と、入力軸27から出力軸28に回転を伝達する複数のギヤ列291〜294と、各ギヤ列291〜294と入力軸27または出力軸28との間に組み込まれた図示しないクラッチとを有し、そのクラッチを選択的に係合させることで使用するギヤ列291〜294を切り替え、これにより、入力軸27から出力軸28に伝達する回転の変速比を変化させるものである。出力軸28の回転は出力ギヤ30に出力され、その出力ギヤ30の回転がディファレンシャルギヤ等に伝達される。入力軸27と出力軸28は、それぞれシール付軸受1で回転可能に支持されている。また、このトランスミッションは、ハウジング31の内部にトランスミッションオイルを噴射する図示しないノズルが設けられており、このノズルから噴射されたトランスミッションオイルが、各シール付軸受1の側面にかかるようになっている。
上述のシール付軸受1は、外部から供給される潤滑油が油溝14に入り込み、その潤滑油がシールリップ9とシール摺接面13の間に導入されるため、シールリップ9とシール摺接面13の間に油膜が形成されやすい。そのため、シールリップ9とシール摺接面13の間の摩擦係数が下がり、内輪2と外輪3が相対回転するときのシールリップ9とシール摺接面13の間の摩擦による回転抵抗(以下「シールトルク」という)を小さく抑えることができる。
また、このシール付軸受1は、油溝14の内面に、シールリップ9と油溝14の間にくさび状隙間19が形成されるように円周方向に対して傾斜した傾斜面18を設け、その傾斜面18に沿ってくさび状隙間19の広大側から狭小側に潤滑油を誘導することで、シールリップ9とシール摺接面13の間の潤滑状態を流体潤滑状態とするようにしている。そのため、シールリップ9とシール摺接面13の間の摩擦を飛躍的に低減することが可能となり、シールトルクの大きさを極めて低く抑えることが可能となっている。また、シールリップ9とシール摺接面13の間の摩擦熱が発生しにくくなるため、潤滑油の温度上昇を効果的に抑制することが可能となっている。そのため、温度上昇による潤滑油の粘性低下が抑えられ、シール付軸受1が回転している間、シールリップ9とシール摺接面13の間の潤滑状態を効果的に維持することが可能となっている。
また、このシール付軸受1は、シール摺接面13に設けられた油溝14を潤滑油が通過するので、シールリップ9とシール摺接面13の間の摩擦熱が放熱されやすい。そのため、軸受1の温度上昇を抑えることが可能である。また、シール摺接面13に油溝14が設けられているので、シールリップ9がシール摺接面13に吸着する吸着現象を防止することができる。
また、油溝14はシール摺接面13に1つだけ設けることも可能であるが、このシール付軸受1では、油溝14をシール摺接面13に周方向に間隔をおいて複数設けているので、シールリップ9とシール摺接面13の間に、全周にわたって潤滑油が導入されやすく、効果的にシールトルクを低減することが可能となっている。また、軸受1の温度上昇およびシールリップの吸着現象をより効果的に防止することが可能となっている。
また、このシール付軸受1は、油溝14のシール摺接面13からの深さDが、10μm以上とされているので、油溝14に効果的に潤滑油を導入することが可能である。また、油溝14のシール摺接面13からの深さDが、50μm以下(好ましくは30μm以下)とされているので、異物が油溝14を通って軸受1の内部に侵入するのを効果的に防止することが可能となっている。
上記実施形態では、油溝14を内輪2の軸心Lと平行な方向に形成した例を説明したが、図7、図8に示すように、油溝14は、内輪2の軸心Lと平行な方向に対し斜めに延びるように形成してもよい。このようにすると、図6に示すように油溝14を内輪2の軸心Lと平行に延びるように形成するよりも、油溝14の溝縁の長さが長くなる。そのため、油溝14内の潤滑油がシールリップ9とシール摺接面13の間に導入されやすくなり、より効果的にシールトルクを抑えることが可能となる。なお、図7は、油溝14を左右対称に設けた例を示し、図8は、油溝14を左右とも同じ方向となるように設けた例を示す。
図7、図8に示すように、油溝14を内輪2の軸心Lと平行な方向に対し斜めに延びるように形成すると、その油溝14と長手方向に直交する断面形状が同一の油溝14を、図6に示すように内輪2の軸心Lと平行な方向に形成するよりも、内輪2の軸心Lに直交する平面に沿った断面でのくさび状隙間19のくさび角が小さくなるため、シールリップ9とシール摺接面13の間を半径方向に引き離す方向の圧力をより効果的に発生することが可能となり、シールリップ9とシール摺接面13の間の潤滑状態を、より確実に流体潤滑状態とすることが可能となる。
図9に示すように、内輪2は、内輪本体2Aと金属リング2Bとを組み合わせて構成することができる。内輪本体2Aの外周には、玉5が転がり接触する転走面12と、転走面12に近い側から遠い側に向かって小径となる段差部15とが形成されている。金属リング2Bの外周には、シール摺接面13および油溝14が形成されている。油溝14は、金属リング2Bの外周に軸方向の一端から他端まで連続するように形成されている。金属リング2Bは、内輪本体2Aの段差部15に装着されている。このようにすると、金属リング2Bを内輪本体2Aに装着する前の状態で油溝14を加工することができるので、油溝14の加工が容易であり、軸受1の製造コストを低減することが可能となる。金属リング2Bの材質は、例えば、鉄である。
上記実施形態では、自動車のトランスミッションの回転軸を回転可能に支持する転がり軸受として使用されるシール付軸受1を例に挙げて説明したが、この発明は、自動車のディファレンシャルギヤ、等速ジョイント、プロペラシャフト、ターボチャージャ、ハブ等の回転部や、工作機械、風力発電機の回転部に使用するシール付軸受にも適用することが可能である。
上記実施形態では、転動体として玉5を使用する形式の軸受1を例に挙げて説明したが、この発明は、円筒ころまたは円すいころを転動体として使用する形式の軸受に適用してもよい。
上記実施形態では、環状空間4の両側にシール部材7を設けたシール付軸受1を例に挙げて説明したが、シール部材7は、環状空間4の片側にのみ設けるようにしてもよい。
図10、図11に、この発明の第2実施形態を示す。第2実施形態は、第1実施形態の油溝14を突起16に置き換えたものであり、その他の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態に対応する部分は同一の符号を付して説明を省略する。
図10に示すように、シール摺接面13には、シールリップ9を横切って延びる突起16が設けられている。突起16は、突起16の転走面12に近い側の端部が、転走面12とシールリップ9の間の位置にくるように形成されている。すなわち、突起16は、転走面12と交差しないように転走面12から離れた位置に端部を有する。
図11に示すように、突起16は、シール摺接面13に周方向に間隔をおいて複数設けられている。各突起16は、頂部が断面円弧状となるように形成されている。突起16のシール摺接面13からの高さHは、10〜50μm(好ましくは10〜30μm)である。突起16は、図6に示す油溝14と同様に、内輪2の軸心Lと平行な方向に延びるように形成されている。なお、各図では、突起16の高さを誇張して示したが、突起16の高さは0.1mm未満の極めて微小なものである。
図12に示すように、突起16の表面には、円周方向に対して傾斜した傾斜面18が設けられ、この傾斜面18とシールリップ9との間にくさび状隙間19が形成されている。くさび状隙間19は、突起16の周方向端の側から周方向中央の側に向かって径方向幅が次第に小さくなるくさび状の隙間である。そして、シール部材7と内輪2が相対回転したときに、周方向に隣り合う突起16同士の間に形成される隙間17の内部の潤滑油が、傾斜面18に沿ってくさび状隙間19の広大側から狭小側に誘導され、このとき潤滑油がシールリップ9と突起16の間を半径方向に引き離す方向の圧力を発生し、これにより、シールリップ9とシール摺接面13の突起16の部分との間の潤滑状態が流体潤滑状態となるようになっている。シール摺接面13には突起16が含まれる。
ここで、図12に示すように、傾斜面18は、内輪2の軸心Lに直交する平面に沿った断面形状が凸円弧状の湾曲面となるように形成すると好ましい。このようにすると、くさび状隙間19のくさび角度が広大側から狭小側に向かって次第に小さくなることから、シールリップ9と突起16の間を半径方向に引き離す方向の圧力をより効果的に発生することが可能となり、シールリップ9とシール摺接面13の突起16の部分との間の潤滑状態を、より確実に流体潤滑状態とすることが可能となる。
第2実施形態のシール付軸受1は、外部から供給される潤滑油が、突起16に隣接して形成される隙間17(すなわち、周方向に隣り合う突起16同士の間に形成される隙間17、図11参照)に入り込み、その潤滑油がシールリップ9とシール摺接面13の間に導入されるため、シールリップ9とシール摺接面13の間に油膜が形成されやすい。そのため、シールリップ9とシール摺接面13の間の摩擦係数が下がり、シールトルクを小さく抑えることができる。
また、第2実施形態のシール付軸受1は、突起16の表面に、シールリップ9と油溝14の間にくさび状隙間19が形成されるように円周方向に対して傾斜した傾斜面18を設け、その傾斜面18に沿ってくさび状隙間19の広大側から狭小側に潤滑油を誘導することで、シールリップ9と突起16の間の潤滑状態を流体潤滑状態とするようにしている。そのため、シールリップ9とシール摺接面13の間の摩擦を飛躍的に低減することが可能となり、シールトルクの大きさを極めて低く抑えることが可能となっている。また、シールリップ9とシール摺接面13の間の摩擦熱が発生しにくくなるため、潤滑油の温度上昇を効果的に抑制することが可能となっている。そのため、温度上昇による潤滑油の粘性低下が抑えられ、シール付軸受1が回転している間、シールリップ9とシール摺接面13の突起16の部分との間の潤滑状態を効果的に維持することが可能となっている。
また、第2実施形態のシール付軸受1は、シール摺接面13の突起16に隣接して形成される隙間17を潤滑油が通過するので、シールリップ9とシール摺接面13の間の摩擦熱が放熱されやすい。そのため、軸受1の温度上昇を抑えることが可能である。また、シール摺接面13に突起16が設けられているので、シールリップ9がシール摺接面13に吸着する吸着現象を防止することができる。
また、第2実施形態のシール付軸受1は、突起16がシール摺接面13に周方向に間隔をおいて複数設けられているので、シールリップ9とシール摺接面13の間に、全周にわたって潤滑油が導入されやすく、効果的にシールトルクを低減することが可能となっている。また、軸受1の温度上昇およびシールリップの吸着現象をより効果的に防止することが可能となっている。
また、第2実施形態のシール付軸受1は、突起16のシール摺接面13からの高さHが、10μm以上とされているので、突起16に隣接して形成される隙間に効果的に潤滑油を導入することが可能となっている。また、突起16のシール摺接面13からの高さHが、50μm以下(好ましくは30μm以下)とされているので、突起16に隣接して形成される隙間17を通って異物が軸受1の内部に侵入するのを効果的に防止することが可能となっている。
図7、図8に示す油溝14と同様に、突起16は、内輪2の軸心Lと平行な方向に対し斜めに延びるように形成してもよい。このようにすると、図6に示す油溝14と同様に突起16を内輪2の軸心Lと平行に延びるように形成するよりも、突起16の稜線の長さが長くなる。そのため、突起16に隣接して形成される隙間17内の潤滑油がシールリップ9とシール摺接面13の間に導入されやすくなり、より効果的にシールトルクを抑えることが可能となる。
図13に示すように、内輪2は、内輪本体2Aと金属リング2Bとを組み合わせて構成することができる。内輪本体2Aの外周には、玉5が転がり接触する転走面12と、転走面12に近い側から遠い側に向かって小径となる段差部15とが形成されている。金属リング2Bの外周には、シール摺接面13および突起16が形成されている。突起16は、金属リング2Bの外周に軸方向の一端から他端まで連続するように形成されている。金属リング2Bは、内輪本体2Aの段差部15に装着されている。このようにすると、金属リング2Bを内輪本体2Aに装着する前の状態で突起16を加工することができるので、突起16の加工が容易であり、軸受1の製造コストを低減することが可能となる。
この発明の実施形態のシール付軸受1を使用したときのシールトルクの低減効果を確認するため、図9に示す油溝14を設けた実施品と、図9に示す油溝14を設けない比較品とで、内輪2と外輪3を相対回転させるときの起動トルクを測定する試験を行なった。この試験で用いたシール付軸受は、実施品、比較品ともに、図9に示す一対のシール部材7のうち一方のシール部材7のみを装着したものである。また、試験に用いた軸受は、外輪3の幅寸法が6mm、外輪3の外径寸法が44mmのものである。
実施品は、油溝14が周方向に等間隔に設けられた金属リング2Bを内輪本体2Aに装着した内輪2を用いた。金属リング2Bの外周に設けた油溝14の本数は、64本である。油溝14の深さは、最大で18μmであった。一方、比較品は、油溝14が存在しない金属リング2Bを内輪本体2Aに装着した内輪2を用いた。試験結果を次表に示す。
この表により、油溝14を設けた実施品の起動トルクは、油溝14を設けない比較品の起動トルクの約57%であり、油溝14を設けることで軸受の起動トルクが大きく低減することが分かる。起動トルクは、内輪2と外輪3がいずれも停止した状態から、内輪2と外輪3の間に付与する回転トルクを次第に増加させ、内輪2と外輪3が相対回転を開始したときの回転トルクの大きさである。この起動トルクは、シールリップ9とシール摺接面13の間の摩擦による回転抵抗(つまりシールトルク)が占める割合が大きく、また、この起動トルクを低減することは、自動車のトランスミッションやディファレンシャルギヤにおいて重要な課題とされている。そのため、この発明のシール付軸受は、自動車のトランスミッションやディファレンシャルギヤに特に好適である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 シール付軸受
2 内輪
2A 内輪本体
2B 金属リング
3 外輪
4 環状空間
5 玉
7 シール部材
9 シールリップ
12 転走面
13 シール摺接面
14 油溝
15 段差部
16 突起
18 傾斜面
19 くさび状隙間
21 プライマリプーリ軸
22 セカンダリプーリ軸
27 入力軸
28 出力軸
L 軸心
D 深さ
H 高さ
2 内輪
2A 内輪本体
2B 金属リング
3 外輪
4 環状空間
5 玉
7 シール部材
9 シールリップ
12 転走面
13 シール摺接面
14 油溝
15 段差部
16 突起
18 傾斜面
19 くさび状隙間
21 プライマリプーリ軸
22 セカンダリプーリ軸
27 入力軸
28 出力軸
L 軸心
D 深さ
H 高さ
Claims (15)
- 内輪(2)と、
前記内輪(2)の径方向外側に前記内輪(2)と同軸に設けられた外輪(3)と、
前記内輪(2)と前記外輪(3)の間に形成される環状空間(4)内に設けられた複数の転動体(5)と、
前記環状空間(4)の端部開口を塞ぐ環状のシール部材(7)とを有し、
前記シール部材(7)の外径側端部は前記外輪(3)に固定され、前記シール部材(7)の内径側端部はゴム製のシールリップ(9)が設けられ、
前記内輪(2)の外周には、前記シールリップ(9)が摺接するシール摺接面(13)が周方向に連続して形成され、
前記シール摺接面(13)に、前記シールリップ(9)を横切って延びる油溝(14)が設けられているシール付軸受。 - 前記油溝(14)の内面には、前記シールリップ(9)と前記油溝(14)の間にくさび状隙間(19)が形成されるように円周方向に対して傾斜した傾斜面(18)が設けられ、その傾斜面(18)に沿って前記くさび状隙間(19)の広大側から狭小側に潤滑油を誘導することで、前記シールリップ(9)と前記シール摺接面(13)の間の潤滑状態を流体潤滑状態とするようになっている請求項1に記載のシール付軸受。
- 前記傾斜面(18)は、前記内輪(2)の軸心(L)に直交する平面に沿った断面形状が凸円弧状の湾曲面である請求項2に記載のシール付軸受。
- 前記油溝(14)は、前記シール摺接面(13)に周方向に間隔をおいて複数設けられている請求項1から3のいずれかに記載のシール付軸受。
- 前記油溝(14)の前記シール摺接面(13)からの深さ(D)が、10〜50μmとされている請求項1から4のいずれかに記載のシール付軸受。
- 前記油溝(14)は、前記内輪(2)の軸心(L)と平行な方向に対し斜めに延びるように形成されている請求項1から5のいずれかに記載のシール付軸受。
- 前記内輪(2)は、
前記転動体(5)が転がり接触する転走面(12)と、前記転走面(12)に近い側から遠い側に向かって小径となる段差部(15)とを外周に有する内輪本体(2A)と、
前記内輪本体(2A)の段差部(15)に装着され、前記シール摺接面(13)および前記油溝(14)を外周に有する金属リング(2B)とを有する請求項1から6のいずれかに記載のシール付軸受。 - 内輪(2)と、
前記内輪(2)の径方向外側に前記内輪(2)と同軸に設けられた外輪(3)と、
前記内輪(2)と前記外輪(3)の間に形成される環状空間(4)内に設けられた複数の転動体(5)と、
前記環状空間(4)の端部開口を塞ぐ環状のシール部材(7)とを有し、
前記シール部材(7)の外径側端部は前記外輪(3)に固定され、前記シール部材(7)の内径側端部はゴム製のシールリップ(9)が設けられ、
前記内輪(2)の外周には、前記シールリップ(9)が摺接するシール摺接面(13)が周方向に連続して形成され、
前記シール摺接面(13)に、前記シールリップ(9)を横切って延びる突起(16)が設けられているシール付軸受。 - 前記突起(16)の表面には、前記シールリップ(9)と前記突起(16)の間にくさび状隙間(19)を形成するように円周方向に対して傾斜した傾斜面(18)が設けられ、その傾斜面(18)に沿って前記くさび状隙間(19)の広大側から狭小側に潤滑油を誘導することで、前記シールリップ(9)と前記突起(16)の間の潤滑状態を流体潤滑状態とするようになっている請求項8に記載のシール付軸受。
- 前記傾斜面(18)は、前記内輪(2)の軸心(L)に直交する平面に沿った断面形状が凸円弧状の湾曲面である請求項9に記載のシール付軸受。
- 前記突起(16)は、前記シール摺接面(13)に周方向に間隔をおいて複数設けられている請求項8から10のいずれかに記載のシール付軸受。
- 前記突起(16)の前記シール摺接面(13)からの高さ(H)が、10〜50μmとされている請求項8から11のいずれかに記載のシール付軸受。
- 前記突起(16)は、前記内輪(2)の軸心(L)と平行な方向に対し斜めに延びるように形成されている請求項8から12のいずれかに記載のシール付軸受。
- 前記内輪(2)は、
前記転動体(5)が転がり接触する転走面(12)と、前記転走面(12)に近い側から遠い側に向かって小径となる段差部(15)とを外周に有する内輪本体(2A)と、
前記内輪本体(2A)の段差部(15)に装着され、前記シール摺接面(13)および前記突起(16)を外周に有する金属リング(2B)とを有する請求項8から13のいずれかに記載のシール付軸受。 - 自動車のトランスミッションの回転軸(21,22)を回転可能に支持する転がり軸受(1)として使用される請求項1から14のいずれかに記載のシール付軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
PCT/JP2016/075314 WO2017038813A1 (ja) | 2015-09-03 | 2016-08-30 | シール付軸受 |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2015173827 | 2015-09-03 | ||
JP2015173827 | 2015-09-03 |
Publications (1)
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ID=58280032
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016019891A Pending JP2017048914A (ja) | 2015-09-03 | 2016-02-04 | シール付軸受 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2017048914A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN113775736A (zh) * | 2021-09-06 | 2021-12-10 | 上海涟屹轴承科技有限公司 | 配油环及其齿轮箱配油系统 |
-
2016
- 2016-02-04 JP JP2016019891A patent/JP2017048914A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113775736A (zh) * | 2021-09-06 | 2021-12-10 | 上海涟屹轴承科技有限公司 | 配油环及其齿轮箱配油系统 |
CN113775736B (zh) * | 2021-09-06 | 2024-02-09 | 上海涟屹轴承科技有限公司 | 配油环及其齿轮箱配油系统 |
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