JP4975294B2 - 円錐ころ軸受 - Google Patents

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Description

本発明は円錐ころ軸受に関し、たとえば自走車両のデファレンシャルやトランスミッション等の動力伝達軸を支持する軸受に適用することができる。
円錐ころ軸受は、外径面の軌道面の両側に小鍔と大鍔が設けられた内輪と、内径面に軌道面が設けられた外輪と、内輪と外輪の軌道面間に配列された複数の円錐ころと、これらの円錐ころをポケットに収納して保持する保持器とからなり、保持器には、円錐ころの小径端面側で連なる小環状部と、円錐ころの大径端面側で連なる大環状部と、これらの環状部を連結する複数の柱部とからなり、ポケットが、円錐ころの小径側を収納する部分が狭幅側、大径側を収納する部分が広幅側となる台形状に形成されたものが用いられている。
自走車両のデファレンシャルやトランスミッション等の動力伝達軸を支持する円錐ころ軸受は、下部が油浴に漬かった状態で使用され、その回転に伴って油浴の油が潤滑油として軸受内部に流入する。このような用途に使用される円錐ころ軸受では、潤滑油が円錐ころの小径側から軸受内部に流入し、保持器よりも外径側から流入する潤滑油は外輪の軌道面に沿って円錐ころの大径側へ通過し、保持器よりも内径側から流入する潤滑油は内輪の軌道面に沿って円錐ころの大径側へ通過する。
このように潤滑油が外部から流入する部位に使用される円錐ころ軸受には、保持器のポケットに切欠きを設けて、保持器の外径側と内径側とに分かれて流入する潤滑油がこの切欠きを通過するようにし、軸受内部での潤滑油の流通を向上させるようにしたものがある(特許文献1,2参照)。特許文献1に記載されたものでは、図11(A)に示すように、保持器5のポケット9間の柱部8の中央部に切欠き10dを設け、潤滑油に混入する異物が軸受内部に滞留しないようにしている。また、特許文献2に記載されたものでは、図11(B)に示すように、保持器5のポケット9の軸方向両端の小環状部6と大環状部7に切欠き10eを設け、保持器の外径側から流入する潤滑油が内輪側へ流れやすくなるようにしている。なお、各図中に記入したポケット9の各寸法は、後述するトルク測定試験における比較例に用いたものの値である。
特開平09−32858号公報(第3図) 特開平11−201149号公報(第2図) 特開平09−096352号公報 特開平11−0210765公報 特開2003−343552号公報 特開2003−28165号公報
上述したように潤滑油が保持器の外径側と内径側とに分かれて軸受内部へ流入する円錐ころ軸受では、保持器の内径側から内輪側へ流入する潤滑油の割合が多くなると、トルク損失が大きくなることが分かった。この理由は、以下のように考えられる。
すなわち、保持器の外径側から外輪側へ流入する潤滑油は、外輪の内径面には障害物がないので、その軌道面に沿って円錐ころの大径側へスムーズに通過して軸受内部から流出するが、保持器の内径側から内輪側へ流入する潤滑油は、内輪の外径面には大鍔があるので、その軌道面に沿って円錐ころの大径側へ通過したときに大鍔で堰き止められ、軸受内部に滞留しやすくなる。このため、保持器の内径側から内輪側へ流入する潤滑油の割合が多くなると、軸受内部に滞留する潤滑油の量が多くなり、この滞留する潤滑油が軸受回転に対する流動抵抗となってトルク損失が増大するものと考えられる。
したがって、軸受内部に潤滑油が流入する円錐ころ軸受における潤滑油の流動抵抗によるトルク損失を低減させる必要がある。以上が低トルク化のために油の流動抵抗を減少させる方法であるが、大幅な低トルク化を行うためには、ころがり粘性抵抗が低下するように軸受諸元を変更することが必要である。しかしながら、従来の低トルク化手法(特許文献3〜5参照)では、定格荷重を低下させない低トルク化は可能であるが、軸受剛性はいくらか低下する。
一方、ころ直径を減少させないでころ本数を増やすために、保持器を外輪内径面に接するまで寄せた円錐ころ軸受がある(特許文献6参照)。この円錐ころ軸受では、保持器の柱部の外径面に引きずりトルクを抑制するため凹所を形成する。しかし、柱部に凹所があると板厚が薄くなって保持器の剛性が低下する。
本発明の目的は、保持器剛性を低下させることなくころ収容本数を増大可能であって、しかも低トルク化が可能な円錐ころ軸受を提供することにある。
本発明は、ころ本数を減らさず、あるいは増加させつつ、PCDを小さくすることによって、課題を解決したものである。図13は円錐ころ軸受においてころピッチ径(PCD)を変化させた時の剛性比(−●−)およびトルク比(−○−)を表したものである。図13に示すように、PCDを小さくすると軸受のトルクは大幅に低下するが、軸受剛性はあまり低下しないことが、ころの弾性変形量を計算確認した結果として得られた。そこで、ころ本数を減らさないか増加させつつ、PCDを小さくすることによって、剛性を低下させずにトルクを低減させることができる。
本発明は、外輪と保持器との接触を回転中のみ避けるような保持器寸法とすることにより、ころ係数γをγ>0.94とすることを可能にした。すなわち、本発明の円錐ころ軸受は、内輪と、外輪と、内輪と外輪との間に転動自在に配された複数の円錐ころと、円錐ころを円周所定間隔にポケット内で保持する保持器とを備え、保持器が、円錐ころの小端面側で連なる小環状部と、円錐ころの大端面側で連なる大環状部と、これら大小環状部を連結する複数の柱部とからなり、前記隣接する柱部間で、前記ポケットが、円錐ころの小径側を収納する部分が狭幅側、大径側を収納する部分が広幅側となる台形状に形成された円錐ころ軸受において、前記ポケットの狭幅側の柱部と小環状部の中央部、前記保持器と前記内輪との間に流入した潤滑油を前記外輪側へ逃がすための切欠きを設けるとともに、前記保持器の外径を、保持器を半径方向に移動させると保持器外周面が外輪軌道面に当接するが、軸受回転中は保持器中心が軸中心に移動して保持器外周面と外輪軌道面との間にすきまが形成される寸法とし、かつ、ころ係数を0.94以上としたことを特徴とするものである。
ころ係数γ(ころの充填率)は、次式で定義される。
ころ係数γ=(Z・DA)/(π・PCD)
ここで、Z:ころ本数、DA:ころ平均径、PCD:ころピッチ円径。
本発明の円錐ころ軸受は、保持器の台形状ポケットの狭幅側の柱部に切欠きを設けている。この切欠きによって次のような作用が得られる。すなわち、保持器の内径側から内輪側へ流入した潤滑油を、この切欠きを通して外輪側へ速やかに逃がすことができる。その結果、内輪の軌道面に沿って大鍔に至る潤滑油の量が少なくなり、軸受内部に滞留する潤滑油の量が減少する。したがって、潤滑油の流動抵抗によるトルク損失が低減する。
保持器は鉄板製の他、樹脂製すなわちエンジニアリング・プラスチック製としてもよい。樹脂製保持器は鉄板製に比べ保持器重量が軽く、自己潤滑性があり、摩擦係数が小さいという特徴があるため、軸受内に介在する潤滑油の効果と相俟って、外輪との接触による摩耗の発生を抑えることが可能になる。また、樹脂製保持器は重量が軽く摩擦係数が小さいため、軸受起動時のトルク損失や保持器摩耗の低減に好適である。
ケットの狭幅側の小環状部の中央部にも切欠きを設けたことにより、保持器の内径側から内輪側へ流入する潤滑油をこの切欠きからも外輪側へ逃がしてやることができる。したがって、内輪の軌道面に沿って大鍔に至る潤滑油の量がより少なくなり、潤滑油の流動抵抗によるトルク損失がさらに低減する。
本発明によれば、軸受剛性を低下させることなく、低トルク化を実現することができる。すなわち、円すいころ軸受のころ係数γをγ>0.94にすることにより、軌道面の最大面圧を低下させることができるため、過酷潤滑条件下での極短寿命での表面起点剥離を防止することができる。また、保持器の台形状ポケットの狭幅側の柱部と小環状部の中央部に外径側から内径側まで切り通した切欠きを設けることにより、保持器の内径側から内輪側へ流入した潤滑油を、これらの切欠きを通して外輪側へ速やかに逃がすことができるため、内輪の軌道面に沿って大鍔に至る潤滑油の量が少なくなり、軸受内部に滞留する潤滑油の量が減少して、潤滑油の流動抵抗によるトルク損失が低減する。
以下、図面に従って本発明の実施の形態を説明する。図1(A)(B)に示す実施の形態の円錐ころ軸受1は、内輪2と、外輪3と、円錐ころ4と、保持器5とで構成されている。内輪2は外周に円錐状の軌道面2aを有し、外輪3は内周に円錐状の軌道面3aを有する。複数の円錐ころ4が、内輪2の軌道面2aと外輪3の軌道面3aとの間に転動自在に介在させてある。円錐ころ4は保持器5に形成されたポケット内に収容されている。各円錐ころ4は、内輪2の軌道面2aの両側に設けた小鍔2bと大鍔2cとで軸方向への移動を規制されている。
保持器5は、図1(B)に示すように、円錐ころ4の小端面側で連なる小環状部6と、円錐ころ4の大端面側で連なる大環状部7と、これらの小環状部6と大環状部7を連結する複数の柱部8とを含んでいる。そして、図2に示すように、隣り合った柱部8間にポケット9が形成される。保持器5のポケット9は台形状で、円錐ころ4の小径側を収納する部分が狭幅側、大径側を収納する部分が広幅側となる。ポケット9の狭い幅側と広幅側には、それぞれ両側の柱部8に2つずつ、外径側から内径側まで切り通した切欠き10a、10bが設けてある。各切欠き10a、10bの寸法は、いずれも深さ1.0mm、幅4.6mmとされている。ポケットの狭幅側だけでなく広幅側の柱部にも切欠きを設けることにより、円錐ころをバランスよく柱部に接触させることができる。なお、図面に例示した切欠きは、保持器5の半径方向に切り通した溝の形態をしているが、保持器5の内径側と外径側を連絡して潤滑油の円滑な通過を許容することができる限り、形状や寸法は任意である。
保持器5は、例えばPPS、PEEK、PA、PPA、PAI等のスーパーエンプラで一体成形される。保持器に、機械的強度、耐油性および耐熱性に優れたエンジニアリング・プラスチックを使用することにより、鉄板製保持器に比べ、保持器重量が軽く、自己潤滑性があり、摩擦係数が小さいという特徴があるため、軸受内に介在する潤滑油の効果と相俟って、外輪との接触による摩耗の発生を抑えることが可能になる。また、これらの樹脂は鋼板と比べると重量が軽く摩擦係数が小さいため、軸受起動時のトルク損失や保持器摩耗の低減に好適である。エンジニアリング・プラスチックは、汎用エンジニアリング・プラスチックとスーパー・エンジニアリング・プラスチックを含む。なお、保持器材料の例としてPPS、PEEK、PA、PPA、PAI等のスーパーエンプラを挙げたが、必要に応じて、強度増強のため、これら樹脂材料またはその他のエンジニアリング・プラスチックに、ガラス繊維または炭素繊維などを配合したものを使用してもよい。
保持器5の柱部8の左右両側面は、図1(A)のように、円錐ころ4を押える柱面5aを構成する。1つの円錐ころ4を押える左右の柱面5aが成す窓角θは、例えば25°〜50°である。本発明の円錐ころ軸受の保持器直径は、図3(B)のように、保持器5を軸方向小径側に移動させ、次に図3(A)のように径方向下側に移動させると、外輪3と保持器5は接触するが、軸受が回転し図4(C)のように保持器5がセンタリングされると、保持器5と外輪3が周方向全周で所定隙間を明けて接触しないような寸法に設定される。すなわち、保持器5が軸中心に配置され、図3(B)のように保持器5が小径側に寄った状態では保持器5と外輪3との間にすきまができるが、保持器5を軸中心から径方向に移動させると外輪3と保持器5が接触する寸法に設定される。この事により、運転初期には外輪3と保持器5は接触するが、運転中は非接触となることから、接触による引きずりトルクの増大や摩耗を抑制することができる。なお、鉄板製保持器の場合は底広げや加締め作業が必要であったが、樹脂製保持器の場合は不要となるため、発明品に必要な寸法精度を確保することが容易である。ここで「底広げ」とは、ころを組込んだ保持器5を内輪に組付ける時、ころが内輪小鍔を乗り越えるように保持器5小径側の柱部の径を大きく拡げることをいう。「加締め作業」とは、前述のように大きく拡げた保持器5小径部の柱部を外側から型で押して元に戻すことをいう。
図5および図6に保持器5の切欠きの変形例を示す。図5に示す変形例は、ポケット9の狭幅側の小環状部6にも切欠き10cを設けたものである。そして、狭幅側の3つの切欠き10a,10cの合計面積が、広幅側の2つの切欠き10bの合計面積よりも広くなっている。なお、切欠き10cは深さ1.0mm、幅5.7mmとしてある。
図6に示す切欠きの変形例は、狭幅側の柱部8の各切欠き10aの深さが1.5mmと広幅側の柱部8の各切欠き10bよりも深く、狭幅側の各切欠き10aの合計面積が、広幅側の各切欠き10bの合計面積よりも広くなっている。図5、図6に例示したような構成を採用することにより、内輪の軌道面に沿って大鍔に至る潤滑油の量をより少なくして、潤滑油の流動抵抗によるトルク損失をさらに低減させることができる。
図7に示すように、保持器5の小環状部6の軸方向外側には、内輪2の小鍔2bの外径面に対向させた径方向内向きのつば11が設けてあり、このつば11の内径面と内輪2の小鍔2bの外径面との間のすきまδは、小鍔2bの外径寸法の2.0%以下に狭く設定してある。このような構成を採用することにより、保持器の内径側から内輪側へ流入する潤滑油の量を少なくし、潤滑油の流動抵抗によるトルク損失をより低減させることができる。
また、図示は省略するが、円錐ころ4の全表面には微小凹形形状のくぼみがランダムに無数に設けてある。このくぼみを設けた表面は、面粗さパラメータRyniが0.4μm≦Ryni≦1.0μm、かつ、Sk値が−1.6以下としてある。このような構成を採用することにより、円錐ころの表面に満遍なく潤滑油を保持させて、軸受内部に滞留する潤滑油の量を減らしても、円錐ころと内外輪との接触部を十分に潤滑することができる。
パラメータRyniは、基準長毎最大高さの平均値、すなわち、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定した値である(ISO 4287:1997)。また、Sk値は粗さ曲線のひずみ度、すなわち、粗さの凹凸分布の非対称性を表す値であり(ISO 4287:1997)、ガウス分布のように対称な分布ではSk値は0に近くなり、凹凸の凸部を削除した場合は負の値、逆に凹部を削除した場合は正の値となる。Sk値のコントロールは、バレル研磨機の回転速度、加工時間、ワーク投入量、研磨チップの種類と大きさ等を選ぶことにより行うことができ、Sk値を−1.6以下とすることにより、無数の微小凹形形状のくぼみに満遍なく潤滑油を保持することができる。
図8は、上述の円錐ころ軸受を使用し得る自動車のデファレンシャルの構成を例示したものである。このデファレンシャルは、プロペラシャフト(図示省略)に連結され、デファレンシャルケース21内に挿入したドライブピニオン22が差動歯車ケース23に取り付けたリングギヤ24とかみ合い、差動歯車ケース23の内部に取り付けたピニオンギヤ25が、差動歯車ケース23に左右から挿入されるドライブシャフト(図示省略)と結合するサイドギヤ26とかみ合って、エンジンの駆動力をプロペラシャフトから左右のドライブシャフトに伝達するようになっている。このデファレンシャルでは、動力伝達軸であるドライブピニオン22と差動歯車ケース23が、それぞれ一対の円錐ころ軸受1a,1bで支持してある。
デファレンシャルケース21はシール部材27a,27b,27cで密封され、内部にており潤滑油が貯留される。各円錐ころ軸受1a,1bはこの潤滑油の油浴に下部が漬かった状態で回転する。
円錐ころ軸受1(1a,1b)は以上のように構成されているため、各円錐ころ軸受1a,1bが高速で回転してその下部が油浴に漬かると、図7に矢印で示すように、油浴の潤滑油が円錐ころ4の小径側から保持器5の外径側と内径側とに分かれて軸受内部へ流入し、保持器5の外径側から外輪3へ流入した潤滑油は、外輪3の軌道面3aに沿って円錐ころ4の大径側へ通過して軸受内部から流出する。一方、保持器5の内径側から内輪2側へ流入する潤滑油は、保持器5の外径側から流入する潤滑油よりも遥かに少なく、かつ、このすきまδから流入する潤滑油の大半は、ポケット9の狭幅側の柱部8に設けた切欠き10aを通過して、保持器5の外径側へ移動する。したがって、そのまま内輪2の軌道面2aに沿って大鍔2cに至る潤滑油の量は非常に少なくなり、軸受内部に滞留する潤滑油の量を減らすことができる。
図9は、上述の円錐ころ軸受を使用し得る自動車のトランスミッションの構成を例示したものである。このトランスミッションは同期噛合式のもので、同図で左方向がエンジン側、右方向が駆動車輪側である。メインシャフト41とメインドライブギヤ42との間に円錐ころ軸受43が介装される。この例では、メインドライブギヤ42の内周に円錐ころ軸受43の外輪軌道面が直接形成されている。メインドライブギヤ42は、円錐ころ軸受44でケーシング45に対して回転自在に支持される。メインドライブギヤ42にクラッチギヤ46が係合連結され、クラッチギヤ46に近接してシンクロ機構47が配設される。
シンクロ機構47は、セレクタ(図示省略)の作動によって軸方向(図9で左右方向)に移動するスリーブ48と、スリーブ48の内周に軸方向移動自在に装着されたシンクロナイザーキー49と、メインシャフト41の外周に係合連結されたハブ50と、クラッチギヤ46の外周(コーン部)に摺動自在に装着されたシンクロナイザーリング51と、シンクロナイザーキー49をスリーブ48の内周に弾性的に押圧する押えピン52及びスプリング53とを備えている。
図9に示す状態では、スリーブ48及びシンクロナイザーキー49が押えピン52によって中立位置に保持されている。この時、メインドライブギヤ42はメインシャフト41に対して空転する。一方、セレクタの作動により、スリーブ48が同図に示す状態から例えば軸方向左側に移動すると、スリーブ48に従動してシンクロナイザーキー49が軸方向左側に移動し、シンクロナイザーリング51をクラッチギヤ46のコーン部の傾斜面に押し付ける。これにより、クラッチギヤ46の回転速度が落ち、逆にシンクロ機構47側の回転速度が高められる。そして、両者の回転速度が同期した頃、スリーブ48がさらに軸方向左側に移動して、クラッチギヤ46とかみ合い、メインシャフト41とメインドライブギヤ42との間がシンクロ機構47を介して連結される。これにより、メインシャフト41とメインドライブギヤ42とが同期回転する。
実施例として、図2に示した保持器を用いた円すいころ軸受(実施例1)と、図5に示した保持器を用いた円すいころ軸受(実施例2)を用意した。また、比較例として、ポケットに切欠きのない保持器を用いた円すいころ軸受(比較例1)と、図11(A)、(B)に示した保持器を用いた円すいころ軸受(比較例2,3)を用意した。なお、各円すいころ軸受は、寸法が外径100mm、内径45mm、幅27.25mmであり、ポケットの切欠き以外の部分は同じである。
実施例と比較例の円すいころ軸受について、縦型トルク試験機を用いたトルク測定試験を行った。試験条件は以下のとおりである。
アキシアル荷重:300kgf
回転速度:300〜2000rpm(100rpmピッチ)
潤滑条件:油浴潤滑(潤滑油:75W−90)
図10に試験結果を示す。同図のグラフの縦軸は、ポケットに切欠きのない保持器を用いた比較例1のトルクに対するトルク低減率を表す。ポケットの柱部中央部に切欠きを設けた比較例2や、ポケットの小環状部と大環状部に切欠きを設けた比較例3も、トルク低減効果が認められるが、ポケットの狭幅部側の柱部に切欠きを設けた実施例1は、これらの比較例よりも優れたトルク低減効果が認められ、狭幅側の小環状部にも切欠きを設け、狭幅側の切欠きの合計面積を広幅側のそれよりも広くした実施例2は、さらに優れたトルク低減効果が認められる。
また、試験の最高回転速度である2000rpmにおけるトルク低減率は、実施例1が9.5%、実施例2が11.5%であり、デファレンシャルやトランスミッション等における高速回転での使用条件でも優れたトルク低減効果を得ることができる。なお、比較例2と比較例3の回転速度2000rpmにおけるトルク低減率は、それぞれ8.0%と6.5%である。
(A)は本発明の実施の形態を示す円錐ころ軸受の横断面図、(B)は同軸受の縦断面図。 図1の円錐ころ軸受における保持器の展開平面図。 (A)は軸方向移動前の保持器の断面図、(B)は移動後の保持器の断面図。 (A)は静止時の円錐ころ軸受の保持器側面図、(B)は回転初期の円錐ころ軸受の保持器側面図、(C)回転中の円錐ころ軸受の保持器側面図。 保持器の変形例を示す図2と類似の展開平面図。 保持器の別の変形例を示す図2と類似の展開平面図。 図1(B)の部分拡大図。 図1の円錐ころ軸受を使用したデファレンシャルの断面図。 一般的な自動車トランスミッションの断面図。 トルク測定試験の結果を示すグラフ。 (A),(B)は、それぞれ従来の技術を示す保持器の展開平面図。 ピッチ径比に対する、トルク比と剛性比の相関グラフ図。
符号の説明
1,1a,1b 軸受
2 内輪
2a 軌道面
2b 小鍔
2c 大鍔
3 外輪
3a 軌道面
4 円錐ころ
5 保持器
5a 柱面
6 小環状部
7 大環状部
8 柱部
9 ポケット
10a 〜10e 切欠き
11 つば
21 デファレンシャルケース
22 ドライブピニオン
23 差動歯車ケース
24 リングギヤ
25 ピニオンギヤ
26 サイドギヤ
27a,27b,27c シール部材
41 メインシャフト
42 メインドライブギヤ
43、44 軸受
45 ケーシング
46 クラッチギヤ
47 シンクロ機構
48 スリーブ
49 シンクロナイザーキー
50 ハブ
51 シンクロナイザーリング
52 押えピン
53 スプリング
δ すきま

Claims (1)

  1. 内輪と、外輪と、内輪と外輪との間に転動自在に配された複数の円錐ころと、円錐ころを円周所定間隔にポケット内で保持する保持器とを備え、保持器が、円錐ころの小端面側で連なる小環状部と、円錐ころの大端面側で連なる大環状部と、これら大小環状部を連結する複数の柱部とからなり、前記隣接する柱部間で、前記ポケットが、円錐ころの小径側を収納する部分が狭幅側、大径側を収納する部分が広幅側となる台形状に形成された円錐ころ軸受において、
    前記ポケットの狭幅側の柱部と小環状部の中央部、前記保持器と前記内輪との間に流入した潤滑油を前記外輪側へ速やかに逃がすための切欠きを設けるとともに、前記保持器の外径を、保持器を半径方向に移動させると保持器外周面が外輪軌道面に当接するが、軸受回転中は保持器中心が軸中心に移動して保持器外周面と外輪軌道面との間にすきまが形成される寸法とし、かつ、ころ係数を0.94以上とした円錐ころ軸受。
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