実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る路車間通信システム1の構成を示すブロック図である。本実施の形態1に係る路車間通信システム1は、例えば、VICS及びDSSSの両方に対応した通信システムである。VICS及びDSSSのそれぞれは、UTMS(新交通管理システム:Universal Traffic Management System)の一部のシステムとして稼働する。
図1に示されるように、路車間通信システム1は、サービスセンター50から道路交通情報などの車両の走行を支援する走行支援情報を受け取る道路側通信装置10と、信号機14と、車両検知部15と、車両25に搭載された車両側通信装置20とを備えている。道路側通信装置10と車両側通信装置20とが通信を行うことによって、路車間での情報提供及び情報収集が可能となり、安全走行支援サービスが実現される。
信号機14は、交差点などに設置され、信号灯器情報を出力する。信号灯器情報は、信号機14での赤や青などの制御信号色をリアルタイムに示している。車両検知部15は、例えば画像センサで構成されており、特定の車線を走行する車両を検知して、車両検知情報を出力する。車両検知情報は、車両検知部15が検知した車両に関する情報であって、当該車両の速度に関する情報などが含まれている。車両検知部15は、検知エリアに進入してきた車両の画像を撮像し、得られた撮像画像に対して画像処理を行って当該車両に関する情報を収集し、画像検知情報を生成する。なお、車両検知部15は、超音波センサや光センサで構成しても良い。また、車両検知部15を車両検知機能付きの光ビーコンで構成しても良い。
道路側通信装置10は、道路側情報処理部11及び道路側通信部12,13を備えており、交差点など、道路の様々な場所に設置される。道路側通信部12は、例えば光ビーコンであって、車両側通信装置20と赤外線を利用して光通信を行い、車両側通信装置20から受信した情報を道路側情報処理部11に出力する。これに対して、道路側通信部13は、例えばDSRC装置であって、車両側通信装置20と5.8GHz帯の電波信号を用いて電波通信を行い、車両側通信装置20から受信した情報を道路側情報処理部11に出力する。
道路側情報処理部11はCPUやメモリなどで構成されている。道路側情報処理部11は、車両側通信装置20から送信される後述の車両情報に基づいて、当該車両側通信装置20が搭載された車両25、つまりサービス対象の車両25の状況を判断する。そして、道路側情報処理部11は、車両25の状況と、信号機14から出力される信号灯器情報と、車両検知部15から出力される車両検知情報とを考慮して、当該車両25のドライバに提供すべき、警告情報などの走行支援情報を生成し、それをダウンリンク情報として道路側通信部12あるいは道路側通信部13に送信させる。また、道路側情報処理部11は、サービス対象の車両25の状況を考慮して、当該車両25のドライバに必要な走行支援情報をサービスセンター50に要求し、当該サービスセンター50からそれを受け取る。そして、道路側情報処理部11は、受け取った走行支援情報を、ダウンリンク情報として、道路側通信部12あるいは道路側通信部13に送信させる。なお、本願発明では、サービスセンター50は必須ではなく、道路側通信装置10単独で走行支援情報を生成しても良い。
車両側通信装置20は、車両側情報処理部21と、車両側通信部22,23と、表示出力及び音声出力を行う出力部として機能するナビゲーション部24とを備えている。車両側情報処理部21は、CPUやメモリなどで構成されており、データ形式変換部21aを有している。このデータ形式変換部21aの動作については後で詳細に説明する。車両側通信部22は、例えば光ビーコンであって、道路側通信部12と赤外線を利用して光通信を行い、道路側通信部12から受信した情報を車両側情報処理部21に出力する。これに対して、車両側通信部23は、例えばDSRC装置であって、5.8GHz帯の電波信号を用いて道路側通信部13と電波通信を行い、道路側通信部13から受信した情報を車両側情報処理部21に出力する。車両側通信部22と道路側通信部12との間では、例えばVICSデータ及びDSSSデータが送受信され、車両側通信部23と道路側通信部13との間では、例えばDSSSデータが送受信される。
車両25には、エンジンやブレーキを制御するECU(Electric Control Unit)などが接続されたCAN(controller area network)が設けられており、車両側情報処理部21は、このCANに接続されている。車両25は、速度、加速度、ブレーキの有無、アクセル開度、ステアリング角度、ウィンカーの点灯状態などに関する情報を含む車両情報を出力し、この車両情報はCANを通じて車両側情報処理部21に入力される。また、車両側情報処理部21には、ナビゲーション部24からも車両25の位置情報を含む車両情報が入力される。車両側情報処理部21は、入力された車両情報を車両側通信部22や車両側通信部23に送信させる。
ここで、車両側通信部22と道路側通信部12との光通信エリアは比較的狭いことから、当該光通信エリア内には、基本的には、一台の車両しか存在できず、複数台の車両が同時に存在することはできない。そのため、車両側通信部22は、当該車両側通信部22が属する車両側通信装置20が搭載された車両25に向けた情報、つまり自車両25向けの情報だけしか受信せず、他の車両に向けた情報を受信することはない。そこで、車両側情報処理部21は、車両側通信部22が受信したダウンリンク情報については、そのままナビゲーション部24に出力する。
これに対して、車両側通信部23と道路側通信部13との電波通信エリアは比較広いことから、当該電波信エリア内には、同時に複数台の車両が存在することがある。そのため、車両側通信部23は、自車両25向けの情報以外にも、他の車両向けの情報を受信することがある。そこで、車両側情報処理部21は、車両側通信部23が受信したダウンリンク情報については、当該ダウンリンク情報が自車両25に必要な情報であるか否かを判断し、自車両25に必要なダウンリンク情報だけをナビゲーション部24に出力する。
ナビゲーション部24は、カーナビゲーション機能を有しており、車両25のドライバーとのHMI(Human Machine Interface)として機能する。また、ナビゲーション部24は、GPS受信機を備えており、当該GPS受信機から車両25の位置情報を取得して、それを車両情報として出力する。そして、ナビゲーション部24は、車両側情報処理部21から受け取ったダウンリンク情報に基づいて画像表示や音声出力を行う。これにより、車両25のドライバには、必要な道路交通情報や警告情報が通知される。なお、ナビゲーション部24は、音声出力だけを行う装置でも良いし、表示出力だけを行う装置でも良い。
図2は道路側通信装置10を道路に設置した様子の一例を示す図である。図2に示されるように、Y軸方向に延在する第1道路RD1と、Y軸方向に垂直なX軸方向に延在する第2道路RD2との交差点INTには、電波通信を行う道路側通信部13が配置されている。道路側通信部13の電波通信エリアAR1は、交差点INTのほぼ全領域に広がっている。
第1道路RD1及び第2道路RD2のそれぞれは片側2車線の道路である。交差点INTには、第1道路RD1を+Y方向に走行する車両の交差点INTへの進入を制御する信号機14と、第1道路RD1を−Y方向に走行する車両の交差点INTへの進入を制御する信号機14と、第2道路RD2を+X方向に走行する車両の交差点INTへの進入を制御する信号機14と、第2道路RD2を−X方向に走行する車両の交差点INTへの進入を制御する信号機14とが配置されている。
第1道路RD1では、交差点INTを基準にして−Y側の片側の2つの車線であって、+Y方向に車両が走行する2つの車線の上方には、交差点INTの手前において光通信を行う2つの道路側通信部12がそれぞれ配置されている。各道路側通信部12の光通信エリアAR3は、当該道路側通信部12から車両の進行方向に対して斜め下後方に広がっている。また、第1道路RD1では、交差点INTを基準にして+Y側の片側の2つの車線であって、−Y方向に車両が走行する2つの車線の上方には、交差点INTの手前において車両検知部15が配置されている。車両検知部15の検知エリアAR2は、当該車両検知部15から車両の進行方向に対して斜め下後方に広がっている。
なお、図2の例では、道路側通信装置12及び車両検知部15を第1道路RD1の片側2車線に配置したが、第1道路RD1の全車線に配置しても良いし、第2道路RD2にも配置しても良い。
また図2では、ある交差点INT付近での道路側通信装置10の設置状態を示しているが、他の交差点にも道路側通信装置10は配置される。
次に、図2を参照しながら、本実施の形態1に係る路車間通信システム1の概略動作について説明する。車両側通信装置20を搭載した車両25が、交差点INTに向かって第1道路RD1を+Y方向に走行し、交差点INTの手前の光通信エリアAR3に進入すると、車両側通信部22と道路側通信部12とが光通信を開始する。
車両側情報処理部21は、車両側通信部22が道路側通信部12との光通信を開始すると、車両25及びナビゲーション部24から入力された現在の車両情報を、車両側通信部22に送信させる。このとき、例えば、車両25の右折ウィンカーが点灯している場合には、車両情報には右折ウィンカーの点灯を示す情報が含まれている。
車両側通信装置20から車両情報を受信した道路側通信部12は、当該車両情報を道路側情報処理部11に出力する。道路側情報処理部11は、受け取った車両情報に基づいて車両25の状況を判断する。例えば、車両情報に右折ウィンカーの点灯を示す情報が含まれている場合には、道路側情報処理部11は、サービス対象の車両25が、これから進入する交差点INTで右折しようとしていると判断する。そして、道路側情報処理部11は、車両25の状況と、信号機14からの信号灯器情報と、車両検知部15からの車両検知情報とを考慮して、サービス対象の車両25のドライバに提供すべき走行支援情報を生成し、それを道路側通信部12に送信させる。
例えば、道路側情報処理部11は、サービス対象の車両25が交差点INTで右折しようとしていると判断すると、車両検知部15からの車両検知情報を確認し、交差点INTに進入する対向車線の車両が存在するか否かを判断し、当該車両が存在する場合には、その旨を示す情報を生成し、それを道路側通信部12に送信させる。また、道路側情報処理部11は、車両25の交差点INTの進入を制御する信号機14からの信号灯器情報を確認して、当該信号機14の現在の制御信号色を示す情報を道路側通信部12に送信させる。さらに、道路側情報処理部11は、交差点INTで右折した車両25が走行する第2道路RD2での車線規制に関する情報(車線規制情報)や渋滞情報をサービスセンター50に要求する。そして、道路側情報処理部11は、サービスセンター50から受け取った走行支援情報を道路側通信部12に送信させる。
道路側通信装置10から走行支援情報を受信した車両側通信装置20では、車両側情報処理部21が、当該走行支援情報をナビゲーション部24に出力する。ナビゲーション部24は、入力された走行支援情報に基づいて、文字や図形を表示したり、音声出力を行う。例えば、走行支援情報に、交差点INTに進入する対向車が存在することを示す情報が含まれている場合には、その旨を文字で表示したり、その旨を伝える音声を出力する。
その後、車両25が電波通信エリアAR1に進入すると、車両側通信部23と道路側通信部13とが電波通信を開始する。
車両側情報処理部21は、車両側通信部23が道路側通信部13との電波通信を開始すると、車両25及びナビゲーション部24から入力された現在の車両情報を、車両側通信部23に送信させる。車両側通信装置20から車両情報を受信した道路側通信部13は、当該車両情報を道路側情報処理部11に出力する。道路側情報処理部11は、受け取った車両情報に基づいて車両25の現在の状況を判断する。そして、道路側情報処理部11は、車両25の状況と、信号機14からの信号灯器情報と、車両検知部15からの車両検知情報とを考慮して、サービス対象の車両25のドライバに提供すべき走行支援情報を生成する。また、道路側情報処理部11は、車両25の状況に応じて、サービスセンター50に対して必要な走行支援情報を要求する。そして、道路側情報処理部11は、生成した走行支援情報と、サービスセンター50から受け取った走行支援情報とを、道路側通信部13に送信させる。
ここで、図2に示されるように、電波通信方式で通信を行う道路側通信部13は、光通信方式で通信を行う道路側通信部12よりも、車両25の走行ルートにおいて、車両25が後に通過する位置に配置されており、車両25は、光通信エリアAR3を通過した後に電波通信エリアAR1に進入することになる。したがって、交差点INT付近の道路状況は、車両側通信装置20が道路側通信装置10と光通信を行う際と、電波通信を行う際とでは、異なる場合がある。よって、道路側通信部12が送信する車両25向けの走行支援情報と、道路側通信部13が送信する車両25向けの走行支援情報とは、その内容が異なる場合がある。
また、上述のように、電波通信エリアAR1内では複数台の車両が同時に存在することがあることから、車両側通信部23は、自車両25向けの情報以外にも、他の車両向けの情報も受信することがある。
そこで、車両側情報処理部21は、道路側通信部13から受信したダウンリンク情報から、必要な走行支援情報を、現在の車両情報と、車両側通信部22と道路側通信部12との光通信においてすでに受信しているダウンリンク情報とに基づいて抽出する。
例えば、車両側情報処理部21は、現在の車両情報に、右折用ウィンカーが点灯している旨を示す情報が含まれていると、道路側通信部13から受信したダウンリンク情報から、交差点INTで右折した自車両25が走行する第2道路RD2での車線規制情報や障害物に関する情報(障害物情報)を抽出する。このとき、車両側情報処理部21は、光通信において受信したダウンリンク情報を参照して、光通信において受信した走行支援情報と同一の情報については破棄する。
その後、車両側情報処理部21は、抽出した走行支援情報をナビゲーション部24に出力する。ナビゲーション部24は、入力された走行支援情報に基づいて、文字や図形を表示したり、音声出力を行う。
以上のように、本実施の形態1に係る路車間通信システム1では、光通信方式による路車間通信と、電波通信方式よる路車間通信とが協調して行われているため、車両走行の安全性が著しく向上し、ドライバに対して非常に利便性の高いサービスを提供することができる。
次に、本実施の形態1に係る車両側通信装置20の動作について詳細に説明する。図3は車両側通信装置20内での通信シーケンスを示す図である。図3では、特に、ナビゲーション部24と、車両側情報処理部21と、車両側通信部22との間での通信シーケンスを示している。
図3に示されるように、車両側通信装置20の電源が投入されると、ナビゲーション部24は、車両側情報処理部21を通じて、車両側通信部22に対して初期設定を行う。このとき、ナビゲーション部24は、処理可能なVICSデータのIDを、車両側情報処理部21を通じて車両側通信部22に通知する。ここで、IDとは、道路側通信装置10からのダウンリンク情報の情報種別を示しており、UTMS全体において、1番〜99番までのIDが割り当てられている。これにより、車両側通信部22は、通知されたIDを有するVICSデータを受信するようになる。なお、ナビゲーション部24から直接車両側通信部22に初期設定を行っても良い。
車両側通信部22は、ナビゲーション部24によって初期設定が行われると、車両側情報処理部21を通じてナビゲーション部24に応答信号を出力する。このとき、車両側情報処理部21は、車両側通信部22からの応答信号を確認して、車両側通信部22の応答状態を確認しても良い。また、車両側情報処理部21は、ナビゲーション部24から出力されるVICSデータのIDを記憶しても良い。
次に、車両側情報処理部21は、車両側通信部22に対して、必要なDSSSデータのIDを通知する。例えば、DSSSデータにはID62及びID63が割り当てられており、車両側情報処理部21は、車両側通信部22に対して、受信すべきDSSSデータのIDとしてID62及びID63を通知する。ID62は追突防止用の走行支援情報を含むDSSSデータを示しており、ID63は右折事故防止用あるいは左折事故防止用の走行支援情報を含むDSSSデータを示している。なお、DSSSデータに割り当てるIDは、ID62及びID63以外の番号であっても良いし、車両側通信部22には、一つのID、あるいは3つ以上のIDを通知しても良い。
DSSSデータのIDが通知された車両側通信部22は、当該IDを有するDSSSデータを受信するようになる。車両側通信部22は、DSSSデータのIDが通知されたことに対する応答信号を車両側情報処理部21に出力する。これにより、車両側通信部22が受信すべきデータのIDの設定がすべて完了する。
次に、車両側情報処理部21は車両側通信部22に対してサブシステムキーを通知する。ここで、サブシステムキーとは、道路側通信装置10に対して車両側通信装置20から送信要求を行うDSSSデータの情報種別を示しており、当該サブシステムキーには、対応するDSSSデータのIDと同じ番号が割り当てられている。例えば、サブシステムキー62及び63は、DSSSデータのID62及び63にそれぞれ対応している。
車両側通信部22が、サブシステムキーを含むアップリンク情報を道路側通信装置10に送信することによって、当該道路側通信装置10からは、当該サブシステムキーの番号と同じ番号のIDを有するDSSSデータがダウンリンク情報として車両側通信部22に送信される。なお、車両側通信部22には、一つのサブシステムキー、あるいは3つ以上のサブシステムキーを通知しても良い。
次に、車両側情報処理部21は、二輪車や四輪者などの、自車両25についての車種情報を車両側通信部22に通知する。そして、車両側情報処理部21は、車両側通信部22に対してアップリンク内容読み出し要求を行い、車両側通信部22は、この要求に応じて、通知されたサブシステムキー及び車両情報を車両側情報処理部21に通知する。車両側情報処理部21は、通知したサブシステムキー及び車両情報と、受け取ったサブシステムキー及び車両情報とが一致するかどうかを確認する。
以上により、車両側通信部22のおけるダウンリンク情報及びアップリンク情報に関する設定が完了する。
その後、車両25が光通信エリアAR3に進入すると、車両側情報処理部21は、車両側通信部22を通じて道路側通信装置10からダウンリンク情報を受信する。車両側情報処理部21は、ダウンリンク情報としてVICSデータを受信すると、それをそのままナビゲーション部24に出力する。ナビゲーション部24は、VICSデータに対応しているため、受け取ったVICSデータに基づいて表示出力及び音声出力を行う。
これに対して、車両側情報処理部21は、ダウンリンク情報としてDSSSデータを受信すると、データ形式変換部21aにおいては、受信したDSSSデータのデータ形式をVICSデータのデータ形式に変換し、データ形式変換後のDSSSデータをナビゲーション部24に出力する。ナビゲーション部24は、データ形式がVICSデータのデータ形式に変換されたDSSSデータに基づいて表示出力及び音声出力を行う。これにより、VICSデータのデータ形式にしか対応していないナビゲーション部24であっても、DSSSデータを処理することができる。以下に、データ形式変換部21aでのデータ形式変換処理について詳細に説明する。
図4はVICSデータでのフレーム構成を示す図である。図4に示されるように、VICSデータでの一つのフレーム100は、フレーム同期用の第1伝送制御部101と、ヘッダ部102と、走行支援情報を含む実データ部103と、CRC(Cyclic Redundancy Check)やその他の伝送制御用の第2伝送制御部104とで構成されている。第1伝送制御部101、ヘッダ部102、実データ部103及び第2伝送制御部104のデータ長は、それぞれ1バイト、5バイト、123バイト及び4バイトである。
本実施の形態1に係る車両側通信装置20では、データ形式変換部21aにおいて、受信したDSSSデータのデータ形式を、図4に示されるVICSデータのデータ形式に変換する。
ここで、追突防止用途となるID62のDSSSデータには、テキスト情報、あるいは簡易図形情報、あるいはテキスト情報及び簡易図形情報が含まれている。データ形式変換部21aは、テキスト情報を含むDSSSデータを受信した場合には、当該DSSSデータのデータ形式を、メッセージ情報を含むID21のVICSデータのデータ形式に変換する。つまり、この場合には、ID62のDSSSデータは、それに含まれるテキスト情報の内容はそのままで、ID21のVICSデータのデータ形式に合致したデータに変換される。
また、データ形式変換部21aは、簡易図形情報を含むDSSSデータを受信した場合には、当該DSSSデータのデータ形式を、簡易図形情報を含むID24のVICSデータのデータ形式、あるいは簡易図形情報を含む別のID32のVICSデータのデータ形式に変換する。つまり、この場合には、ID62のDSSSデータは、それに含まれる簡易図形情報の内容はそのままで、ID24あるいはID32のVICSデータのデータ形式に合致したデータに変換される。
そして、データ形式変換部21aは、テキスト情報及び簡易図形情報を含むDSSSデータを受信した場合には、当該DSSSデータからテキスト情報及び簡易図形情報を取り出し、取り出したテキスト情報を含む、ID21のVICSデータに合致したデータと、取り出した簡易図形情報を含む、ID24あるいはID32のVICSデータのデータ形式に合致したデータとを生成する。つまり、この場合には、ID62のDSSSデータは、それに含まれるテキスト情報を含むID21のVICSデータのデータ形式に合致したデータと、それに含まれる簡易図形情報を含むID24あるいはID32のVICSデータのデータ形式に合致したデータとに変換される。このように、DSSSデータのデータ形式をVICSデータのデータ形式に変換する際には、当該DSSSデータを複数種類のデータに変換しても良い。
なお、DSSSデータのデータ形式とVICSデータのデータ形式との間に、割り振られているIDの番号の相違しか無い場合には、データ形式変換部21aでは、受信したDSSSデータに含まれるIDの番号が、VICSデータに割り振られている番号のいずれか一つに変更されるだけで、DSSSデータのデータ形式が、VICSデータのデータ形式に変換される。
また、右折事故防止用途や左折事故防止用途となるID63のDSSSデータには、信号灯器情報、車線規制情報、車両走行の障害物に関する障害物情報及び車両が走行する道路の路面に関する路面情報が、テキスト情報として、あるいは簡易図形情報として、あるいはテキスト情報及び簡易図形情報として含まれている。したがって、データ形式変換部21aは、ID62のDSSSデータを処理する場合と同様に、ID63のDSSSデータのデータ形式をVICSデータのデータ形式に変換する。
なお、車両側情報処理部21は、テキスト情報及び簡易図形情報を含むDSSSデータを受信した場合において、ナビゲーション部24がテキストしか表示できない場合には、当該DSSSデータから、テキスト情報だけを取り出して、データ形式変換部21aにおいて、取り出したテキスト情報を含むVICSデータを生成する。また、ナビゲーション部24が図形しか表示できない場合には、車両側情報処理部21は、受信したDSSSデータから簡易図形情報のみを取り出し、データ形式変換部21aにおいて、取り出した簡易図形情報を含むVICSデータを生成する。このように、受信したDSSSデータの一部を取り出して、その一部のデータ形式をVICSデータのデータ形式に変換しても良い。
図5は道路側通信部12と車両側通信部22との間の通信シーケンスの詳細を示す図である。図5中の「エリアイン」は、車両25が光通信エリアAR3に進入したことを示しており、「エリアアウト」は、車両25が光通信エリアAR3を通過したことを示している。
図5に示されるように、道路側通信部12からは、ID1及びID30のVICSデータが交互に繰り返して送信されている。ここで、ID1のVICSデータには、サービス対象の車両に対してその現在位置を通知する現在位置情報が含まれている。現在位置情報としては、例えば、ID1のVICSデータを送信する道路側通信部12に割り当てられている車両感知器番号が採用される。車両側通信装置20は、ID1のVICSデータを受信すると、当該VICSデータに含まれる車両感知器番号から、現在どの道路側通信部12と通信を行っているのかを特定でき、それによって、自車両25の現在位置を確認することができる。
また、ID30のVICSデータには、サービス対象の車両に対してその走行車線を通知する車線情報が含まれている。車線情報としては、例えば、ID30のVICSデータを送信する道路側通信部12が設置されている車線を特定する情報が採用される。車両側通信装置20は、ID30のVICSデータを受信すると、当該VICSデータに含まれる車線情報から、自車両25が現在どの車線を走行しているのかを認識することができる。
車両25が光通信エリアAR3に進入すると(エリアイン)、当該車両25に搭載された車両側通信装置20の車両側通信部22は、ID1あるいはID30のVICSデータを受信すると、サブシステムキー62,63と車両情報を含むアップリンク情報を送信する。当該アップリンク情報を受信した道路側通信装置10では、道路側通信部12が、ID1及びID30のVICSデータと、ID62及びID63のDSSSデータとを、例えば約250msの間、繰り返して送信する。
車両側通信装置20は、ID62及びID63のDSSSデータを受信すると、上述のようにして、当該DSSSデータのデータ形式をVICSデータのデータ形式に変換し、データ形式変換後のDSSSデータをナビゲーション部24に出力する。そして、ナビゲーション部24は、入力されたDSSSデータに基づいて表示出力及び音声出力を行う。
なお、図5の例では、車両側通信装置20が道路側通信装置10にサブシステムキーを送信することによって、当該車両側通信装置20がDSSSに対応する通信装置であることを道路側通信装置10に通知し、道路側通信装置10は、サービス対象の車両側通信装置20がDSSSに対応していることを認識して初めてDSSSデータを送信している。これとは異なり、車両側通信装置20が道路側通信装置10にサブシステムキーを送信することなく、道路側通信装置10が自らID62及びID63のDSSSデータを繰り返して送信しても良い。
以上のように、本実施の形態1に係る車両側通信装置20では、道路側通信装置10から受信したDSSSデータが、そのデータ形式がVICSデータのデータ形式に変換されてナビゲーション部24に出力されるため、ナビゲーション部24はVICSデータのデータ形式に対応するだけで良い。したがって、VICSデータのデータ形式に対応する既存のナビゲーション部24の構成を変更することなく、データ形式変換部21aを設けるという簡単な構成変更で、DSSSデータを処理することができる。よって、新たなデータ形式のデータに簡単に対応することができる。
なお上記例では、車両側通信装置20において、DSSSデータのデータ形式をVICSデータのデータ形式に変換していたが、道路側通信装置10において、DSSSデータのデータ形式をVICSデータのデータ形式に変換しても良い。図6は、この場合の本実施の形態1に係る路車間通信システム1の構成を示す図である。
図6に示されるように、車両側情報処理部21にデータ形式変換部21aを設ける代わりに、道路側情報処理部11に、データ形式変換部21aと同様のデータ形式変換部11aを設ける。そして、データ形式変換部11aにおいて、DSSSデータのデータ形式をVICSデータのデータ形式に変換し、データ形式変換後のDSSSデータをダウンリンク情報として道路側通信部12あるいは道路側通信部13に送信させる。車両側通信装置20では、車両側通信部22あるいは車両側通信部23で受信されたDSSSデータは、データ形式の変換が行われることなく、ナビゲーション部24に入力される。そして、ナビゲーション部24は、データ形式の変換が行われたDSSSデータに基づいて表示出力や音声出力を行う。
このように、道路側通信装置10において、DSSSデータのデータ形式をVICSデータのデータ形式に変換し、データ形式変換後のDSSSデータを道路側通信装置10から車両側通信装置20に送信することによって、車両側通信装置20はVICSデータのデータ形式に対応するだけで良い。よって、VICSデータのデータ形式に対応する車両側通信装置20では、その構成を変更することなく、新たなデータ形式のDSSSデータを処理することができる。
実施の形態2.
図7は本発明の実施の形態2に係る車両側通信装置20の動作を示すフローチャートである。本実施の形態2に係る車両側通信装置20では、道路側通信部12から送信される光ビーコンデータのデータ形式を、道路側通信部13から送信されるDSRCデータのデータ形式に変換し、データ形式変換後の光ビーコンデータをナビゲーション部24に入力する。以下では、実施の形態1に係る車両側通信装置20との相違点を中心に本実施の形態2に係る車両側通信装置20の動作について説明する。
図7に示されるように、ステップs1において、車両側通信部22が道路側通信部12からVICSデータやDSSSデータの光ビーコンデータを受信すると、ステップs2において、車両側情報処理部21のデータ形式変換部21aは、受信した光ビーコンデータのデータ形式をDSRCデータのデータ形式に変換する。
ここで、道路側通信部13からは、テキスト情報、簡易図形情報及び音声情報を含むDSRCデータが送信されることがある。このDSRCデータのIDを例えば「ID36」とする。データ形式変換部21aは、車両側通信部22が、テキスト情報、簡易図形情報及び音声情報を含む光ビーコンデータを受信すると、当該光ビーコンデータからテキスト情報、簡易図形情報及び音声情報を抽出し、これらの情報を含む、ID36のDSRCデータのデータ形式に合致したデータを生成する。
ステップs2が実行されると、ステップs3において、データ形式変換部21aは、データ形式の変換を行った光ビーコンデータをナビゲーション部24に出力する。そして、ステップs4において、ナビゲーション部24は、受け取った光ビーコンデータに基づいて表示出力及び音声出力を行う。
以上のように、本実施の形態2に係る車両側通信装置20では、道路側通信装置10から受信した光ビーコンデータが、そのデータ形式がDSRCデータのデータ形式に変換されてナビゲーション部24に出力されるため、ナビゲーション部24はDSRCデータのデータ形式に対応するだけで良い。したがって、DSRCデータのデータ形式に対応する既存のナビゲーション部24の構成を変更することなく、データ形式変換部21aを設けるという簡単な構成変更で、光ビーコンデータを処理することができる。よって、新たなデータ形式のデータに簡単に対応することができる。
なお、道路側通信部13において、DSRCの代わりに電波ビーコン通信が行われる場合には、データ形式変換部21aにおいて、道路側通信部12から受信した光ビーコンデータのデータ形式を、電波ビーコン通信に対応したデータが有するデータ形式に変換すれば良い。
また、上述の図6に示されるように、車両側情報処理部21にデータ形式変換部21aを設ける代わりに、道路側情報処理部11にデータ形式変換部11aを設けて、当該データ形式変換部11aにおいて、光ビーコンデータのデータ形式をDSRCデータのデータ形式に変換し、データ形式変換後の光ビーコンデータを道路側通信部12から送信しても良い。
また、データ形式変換部21aにおいて、道路側通信部13から送信されるDSRCデータのデータ形式を、光ビーコンデータのデータ形式に変換し、データ形式変換後のDSRCデータをナビゲーション部24に入力しても良い。この場合には、ナビゲーション部24は光ビーコンデータのデータ形式に対応するだけで良く、光ビーコンデータのデータ形式に対応する既存のナビゲーション部24の構成を変更することなく、DSRCデータを処理することができる。
実施の形態3.
本実施の形態3では、上述の実施の形態1及び2に係る車両側通信部23の動作条件の設定方法について詳細に説明する。図8は当該設定方法を示す図である。本路車間通信システム1では、道路側通信部12から、車両側通信部23の動作条件を設定するための設定情報を送信し、車両側通信部22で受信された機器設定情報に基づいて車両側通信部23がその動作条件を設定する。つまり、本実施の形態3では、車両側通信装置20は、電波通信方式の一種であるDSRC方式に関する動作条件を設定するための設定情報を道路側通信装置10から受信し、当該設定情報に基づいて、DSRC方式に関する動作条件を設定する。以後、車両側通信部23の動作条件を設定するための設定情報、つまり車両側通信装置20でのDSRC方式に関する動作条件を設定するための設定情報を「機器設定情報」と呼ぶ。
図8に示されるように、道路側通信部12からはID1及びID30のVICSデータが繰り返して送信されている。車両側通信装置20が光通信エリアAR3に侵入して(エリアイン)、車両側通信部22が道路側通信部12からID1あるいはID30のVICSデータを受信すると、車両側通信部22は、サブシステムキー62,63と車両情報を含むアップリンク情報を送信する。当該アップリンク情報を受信した道路側通信装置10では、道路側通信部12が、ID1及びID30のVICSデータと、ID62及びID63のDSSSデータとを繰り返して送信する。本実施の形態3では、機器設定情報は、ID63のDSSSデータに含まれている。当然に機器設定情報は他のIDのDSSSデータに含めても良い。
図9は機器設定情報に含まれる各種情報を示す図である。ここで、DSRCを利用した一般的な路車間通信システムでは、道路側通信装置から車両側通信装置に対してFCMC(フレームコントロールメッセージチャネル)と呼ばれる制御情報が送信される。車両側通信装置は、通常は、このFCMCを利用して、DSRCに必要な機器設定を行う。本実施の形態3では、FCMCに含まれる各種情報を機器設定情報に含めている。道路側通信部12からは、FCMCをそのままのデータ形式で機器設定情報として送信しても良いし、FCMCに含まれる各種情報をテキストデータに変換し、当該テキストデータを機器設定情報として送信しても良い。
図9に示されるように、道路側通信部12から送信される機器設定情報には、変復調方式を示す物理プロファイルに関する情報(物理プロファイル情報)と、通信周波数を示す周波数種別に関する情報(周波数種別情報)と、通信ゾーンの連結状態を示す情報(通信ゾーン連結情報)と、送受信機の連結状態を示す情報(送受信機連結情報)と、データを時分割で送信するか否かを示す情報(時分割情報)と、通信エリアを示す情報(通信エリア情報)と、通信モードを示す情報(通信モード情報)と、1フレームのスロット数を示す情報(スロット数情報)と、受信感度を示す情報(受信感度情報)とが含まれている。図9では、「ダウンリンク機器設定項目」の欄に機器設定情報に含まれる情報を示し、「ダウンリンク情報」の欄に当該情報を含むDSSSデータのIDを示し、「アップリンク情報」の欄に当該情報を含むDSSSデータのIDに対応するサブシステムキーを示し、「識別子」の欄に当該情報を識別する文字列を示し、「内容」の欄に当該情報についての簡単な説明を示している。
図10,11はFCMCの構成を示す図である。図10はASK(Amplitude Shift Keying)変調方式で変調されるFCMCのデータ形式を示しており、図11はQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調方式で変調されるFCMCのデータ形式を示している。上述の図9に示される各種情報は、図10,11に示されるFCMCに含まれている。
図10に示されるように、道路側通信部13において変調方式としてASK変調方式が用いられる場合には、DSRCデータの1スロットのデータ長は100バイトに設定される。そして、FCMCは、データ長が2バイトのプリアンブル(PR)と、データ長が4バイトのユニークワード1(UW1)と、データ長が2バイトの伝送チャネル制御フィールド(SIG)と、データ長が1バイトの識別番号フィールド(FID)と、データ長が1バイトのフレーム構成情報フィールド(FSI)と、データ長が1バイトのリリースタイマ情報フィールド(RLT)と、データ長が7バイトのサービスアプリケーション情報フィールド(SC)と、それぞれのデータ長が5バイトの8つのスロット制御情報フィールド(SCI(1)〜SCI(8))と、データ長が2バイトの誤り検出符号(CRC)とで構成されている。各スロット制御情報フィールドは、制御情報サブフィールド(CI(1)〜CI(8))とリンクアドレスフィールド(LID(1)〜LID(8))とで構成されている。FCMCが送信されるスロットの先頭部分には、28バイト分のデータ長に相当するガードタイムt0が設定されており、当該スロットの末尾部分には、12バイトのデータ長に相当するガードタイムt2が設定されている。
また、図11に示されるように、道路側通信部13において変調方式としてQPSK変調方式が用いられる場合には、DSRCデータの1スロットのデータ長は400バイトに設定される。この場合のFCMCは、先頭にデータ長が1バイトのランプビット(R)が設けられている点と、プリアンブル(PR)のデータ長が16ビットである点以外は、図10に示されるASK変調方式の場合のFCMCと同様である。QPSK変調方式の場合には、FCMCが送信されるスロットの先頭部分には、111バイト分のデータ長に相当するガードタイムt0が設定されており、当該スロットの末尾部分には、214バイトのデータ長に相当するガードタイムt2が設定されている。
車両側情報処理部21は、車両側通信部22がID63のDSSSデータを受信すると、当該DSSSデータから機器設定情報を取り出し、当該機器設定情報を車両側通信部23に出力する。このとき、車両側情報処理部21は、機器設定情報をそのまま出力しても良いし、当該機器設定情報をそのデータ形式を所定の形式に変換して出力しても良い。
車両側通信部23は、受け取った機器設定情報に基づいて動作条件を設定する。車両側通信部23は、自身の機器設定が完了すると、その旨を示す応答信号を車両側情報処理部21に出力する。
その後、車両側通信装置20が電波通信エリアAR1に進入すると、車両側通信部23は道路側通信部13と通信を開始する。このとき、車両側通信部23では、動作条件がすでに設定されているため、車両側通信部23は道路側通信部13とすぐに通信を開始することができる。つまり、車両側通信装置20と道路側通信装置10とがDSRC方式で通信を開始する前に、車両側通信装置20は、機器設定情報に基づいてDSRC方式に関する動作条件を設定しているため、道路側通信装置10とすぐにDSRC方式で通信を開始することができる。
以上のように、本実施の形態3では、車両25が先に通過する位置に配置された道路側通信部12から、車両25が後に通過する位置に配置された道路側通信部13と通信を行う車両側通信部23の動作条件を設定するための機器設定情報が送信されている。そして、車両側通信部23は、道路側通信部12から送信された機器設定情報に基づいて動作条件を設定している。したがって、車両側通信部23は、道路側通信部13との通信が開始する前に、自身の動作条件を設定することができる。つまり、車両側通信部23は、事前に道路側通信部13との通信の準備をすることができる。言い換えれば、車両側通信装置20は、事前にDSRC方式での道路側通信装置10との通信の準備を行うことができる。その結果、車両側通信部23での通信確度や通信動作の安定性が向上し、車両側通信部23は、道路側通信部13と確実に通信を行うことができる。
例えば、車両側通信部23は、物理プロファイル情報を事前に受け取ることによって、変復調方式を事前に設定することができ、電波通信エリアAR1に侵入した際に、すぐに道路側通信部13との通信を開始することができる。その結果、車両側通信装置20は電波通信エリアAR1に滞在する間に道路側通信装置10から必要な情報を確実に受信することができる。車両側通信部23に設定される変復調方式としてはASKやQPSKがあり、変調方式と復調方式とが異なる場合がある。
また、車両側通信部23は、周波数種別情報を事前に受け取ることによって、今後、道路側通信部13から送信される信号の周波数チャネルを特定でき、当該周波数チャネルに応じて道路側通信部13との通信周波数を設定することができる。そのため、車両側通信部23は、周波数サーチを特に行うことなく、直ちに道路側通信部13との通信を開始することができる。
また、車両側通信部23は、通信ゾーン連結情報、送受信機連結情報及び時分割情報を事前に受け取ることによって、DSRCの通信エリア、つまり電波通信エリアAR1が単独エリアであるのか、もしくは縦列連結エリアであるのかを判定することができる。そのため、DSRCが広く複数の通信エリアに渡って行われている場合に、車両側通信部23は道路側通信部13からのDSRCデータを効率よく受信することができる。
また、車両側通信部23は、通信エリア情報を事前に受け取ることによって、道路側通信部13の送信電力が推定できる。したがって、車両側通信部23は、DSRCが狭域ゾーンで行われている場合には、道路側通信部13との通信が短時間で終了することが予想でき、次の通信エリアでの通信の準備を開始することができる。また、車両側通信部23は、DSRCが広域ゾーンで行われている場合には、道路側通信部13との通信が比較的長時間行われることが予想でき、道路側通信部13との通信が切断された状態に陥ったとしても、直ちに次の通信エリアでの通信の準備を開始することなく、現在の通信状態を維持するように動作し、道路側通信部13との通信が完了するまで、道路側通信部13との通信を維持して情報を収集することができる。
また、車両側通信部23は、通信モード情報及びスロット数情報を事前に受け取ることによって、道路側通信部13が送信されるDSRCデータでの1フレーム中に含まれるスロット数を特定することができ、より高速なフレーム受信を行うことができる。
また、車両側通信部23は、受信感度情報を事前に受け取ることによって、道路側通信部13が提供する電波通信エリアAR1での受信感度を設定することができる。そのため、車両25ごとに車両側通信部23の受信感度がばらつくことを抑制できる。
ここで、車両側通信部23の受信感度は、製作メーカによる独自の判断により設定されることがあり、道路側通信部13からの送信信号に対する車両側通信部23の受信応答が製作メーカごとに異なることがある。したがって、車両側通信部23は、製作メーカごとに異なった受信地点から受信を開始することがある。
上述のように、道路側通信部13から車両側通信装置20に対して事前に受信感度情報を送信することによって、車両側通信部23での受信感度を統一することができる。よって、車両側通信部23の受信エリアに関して道路側通信部13は想定したエリアを確保することができ、電波漏洩や車両側通信部23での電波反射による不要な受信を防止することができる。
なお上記例では、車両側通信部23に対して、道路側通信部12から送信される機器設定情報に含まれる全ての情報に関する設定項目について機器設定を行ったが、当該機器設定情報から一部の情報を取り出し、当該一部の情報に関する設定項目だけ機器設定を行っても良い。
また、道路側通信部12から送信される機器設定情報には、図9に示される複数の設定項目の一部の項目に関する情報だけを含めても良い。
実施の形態4.
図12に示されるように、通信環境によっては道路側通信部13から送信された電波は遠方まで伝搬し、電波通信エリアAR1が光通信エリアAR3を超えて広がることがある。この場合には、車両側通信装置20が、光通信エリアAR3よりも先に電波通信エリアAR1に侵入することになり、車両側通信部23での通信が、車両側通信部22での通信よりも先に行われてしまう。その結果、上述の実施の形態3のように道路側通信部12から機器設定情報を送信したとしても、車両側通信部23での通信が開始する前に、当該車両側通信部23の動作条件を設定することができないことがある。
また、ある交差点に配置された道路側通信部13の電波通信エリアAR1が、通信環境の変化によって、他の交差点付近に配置された道路側通信装置10での光通信エリアAR3の近くにまで広がることがあり、当該光通信エリアAR3を通過した車両側通信装置20は、本来通信すべき道路側通信部13よりも先に別の道路側通信部13との通信を開始することがある。その結果、車両側通信装置20は、本来通信すべき道路側通信部13と通信が行えないことがある。
そこで、本実施の形態4では、道路側通信部12と車両側通信部22との間の光通信を、道路側通信部13と車両側通信部23との間の電波通信よりも確実に優先させることができるとともに、車両側通信装置20が本来通信すべき道路側通信部13と通信することが可能な路車間通信技術を提供する。
図13は本実施の形態4に係る車両側通信装置20の動作を示すフローチャートである。図13では、左側のフローチャートが車両側通信部22の動作を示しており、右側のフローチャートが主として車両側通信部23の動作を示している。
図13に示されるように、車両側通信部22は、ステップ22において道路側通信部12からの光ビーコンデータのヘッダ部を受信するまでは、ステップs21においてアイドル状態となる。車両側通信部22は、ステップs22においてヘッダ部を受信し、その後、ステップs23において、道路側通信部12から光ビーコン識別情報を受信すると、ステップs24において、その後の道路側通信部12との通信を継続して行い、光ビーコン識別情報に続く情報、例えばID62のDSSSデータなどの走行支援情報を受信する。一方で、車両側通信部22は、ヘッダ部を受信したものの光ビーコン識別情報を受信しない場合には、ステップs21においてアイドル状態となる。車両側通信部22がステップs23で受信した光ビーコン識別情報は、車両側情報処理部21に入力され、当該車両側情報処理部21が記憶する。
その後、車両側通信装置20が光通信エリアAR3を抜けると、車両側通信部22は、ステップs25において道路側通信部12との通信を完了し、ステップs21においてアイドル状態となる。その後、同様の処理が実行される。
ここで、上述のように、道路側通信部12は、ID1及びID30の光ビーコンデータを繰り返して送信している。これらの光ビーコンデータは、道路側通信部12に固有のデータであるため、当該光ビーコンデータによって道路側通信部12を識別することができる。つまり、ID1及びID30の光ビーコンデータは、それを送信する道路側通信部12を識別可能な情報として機能する。道路側通信部12は、ID1及びID30の光ビーコンデータを、自装置を識別する光ビーコン識別情報として繰り返して送信する。また、道路側通信部13は、それ自身と対を成す道路側通信部12が送信する光ビーコン識別情報と同じ情報を光ビーコン識別情報として送信している。したがって、道路側通信装置10において、対を成す道路側通信部12,13からは共通の識別情報が送信され、ある交差点に設置された道路側通信装置10での光ビーコン識別情報と、他の交差点に設置された道路側通信装置10での光ビーコン識別情報とは一致せず、異なった内容となる。
以上のように動作する車両側通信部22に対して、車両側通信部23は独立して動作している。車両側通信部23は、ステップs31において、道路側通信部13との通信チャネルを確保するために周波数サーチを行う。車両側通信部23は、道路側通信部13との通信チャネルが確保でき、ステップs32において、道路側通信部13からDSRCデータのヘッダ部を受信し、その後、ステップs33において、光ビーコン識別情報を受信すると、当該光ビーコン識別情報を車両側情報処理部21に出力する。車両側情報処理部21は受け取った光ビーコン識別情報を記憶する。
なお、上述のように、電波通信エリアAR1は不要に広がることがあることから、ステップs33で受信される光ビーコン識別情報は、車両側通信装置20が本来通信すべき道路側通信部13から送信されたものではなく、他の道路側通信部13から送信されたものである可能性がある。したがって、この場合には、ステップs33で受信した光ビーコン識別情報と、上述のステップs23で受信された光ビーコン識別情報とは一致しないことになる。
車両側通信部23は、ヘッダ部を受信したものの光ビーコン識別情報を受信しない場合には通信を切断し、再度ステップs31を実行して周波数サーチを新たに行う。
次に、ステップs34において、車両側情報処理部21は、道路側通信部12からの光ビーコン識別情報を記憶しているか否かを判断し、記憶している場合には、ステップs35において、道路側通信部12からの光ビーコン識別情報と、ステップs33で受信された光ビーコン識別情報とが一致するか否かを判断する。一方で、ステップs34において、道路側通信部12からの光ビーコン識別情報が記憶されていないと判断されると、車両側通信部23は通信を切断し、ステップs31を実行して周波数サーチを新たに行う。
ステップs35において、道路側通信部12からの光ビーコン識別情報と、ステップs33で受信された光ビーコン識別情報とが一致する判断されると、ステップs36において、車両側通信部23は道路側通信部13との通信を継続して行い、光ビーコン識別情報に続く走行支援情報を受信する。一方で、一致しないと判断されると、車両側通信部23は通信を切断し、ステップs31を実行して周波数サーチを新たに行う。
このように、車両側通信部23は、車両側通信部22が光ビーコン識別情報を未だ受信していない状態で光ビーコン識別情報を受信すると、通信を切断し、車両側通信部22が光ビーコン識別情報をすでに受信している状態で当該光ビーコン識別情報と一致する光ビーコン識別情報を受信すると、通信を継続している。
その後、車両側通信装置20が電波通信エリアAR1を抜けると、車両側通信部23は、ステップs37において道路側通信部13との通信を完了し、再度ステップs31を実行して新たに周波数サーチを行う。その後、同様の処理が実行される。
以上のように、本実施の形態4では、車両側通信部23は、光ビーコン識別情報を車両側通信部22が未だ受信していない状態で光ビーコン識別情報を受信した場合には、道路側通信部13との通信を切断し、光ビーコン識別情報を車両側通信部22がすでに受信している状態で、当該光ビーコン識別情報と同じ光ビーコン識別情報を受信した場合には、その後の道路側通信部13との通信を継続して行っている。
上述のように、道路側通信部12,13からはともに光ビーコン識別情報が送信されていることから、光ビーコン識別情報を車両側通信部22がすでに受信している状態で、車両側通信部23が光ビーコン識別情報を受信した場合には、車両側通信部23が道路側通信部13からのデータを受信した時点ではすでに車両側通信部22が道路側通信部12との通信を行っていると判断することができる。したがって、この場合には、車両側通信部23が道路側通信部13との通信を継続して行っても、光通信よりも電波通信が優先されることは無い。
これに対して、光ビーコン識別情報を車両側通信部22が未だ受信していない状態で、車両側通信部23が光ビーコン識別情報を受信した場合には、車両側通信部22が道路側通信部12との通信を未だ開始していない状態で、車両側通信部23が道路側通信部13からのデータを受信したと判断することができる。よって、この場合には、車両側通信部23が道路側通信部13との通信を切断することによって、電波通信が光通信よりも優先されることを防止できる。
以上のように本路車間通信システム1が動作することによって、実施の形態3のように道路側通信部12から車両側通信部23で使用される機器設定情報を送信する場合には、事前に車両側通信部23の動作条件を設定することができ、車両側通信部23は必要な情報を確実に取得することができる。
また、対を成す道路側通信部12,13からは、それらに固有の光ビーコン識別情報が送信されるため、仮に車両側通信部23が、本来通信すべき道路側通信部13以外の道路側通信部13、つまり車両側通信部21がすでに通信を行った道路側通信部12と対を成す道路側通信部13以外の道路側通信部13から、光ビーコン識別情報を受信したとしても、当該光ビーコン識別情報は、車両側通信部22がすでに受信している光ビーコン識別情報とは一致することはない。よって、車両側通信部23が本来の通信相手とは異なる通信相手との通信を継続して行うことを防止できる。よって、車両側通信部23は、本来通信すべき道路側通信部13と確実に通信を行うことができる。
実施の形態5.
本実施の形態5では、道路側通信装置10から車両25の動作制御を補助的に行うことができる路車間通信システム1について説明する。図14は本実施の形態5に係る路車間通信システム1の車両側通信装置20の動作を主として示す図である。
本実施の形態5に係る路車間通信システム1では、道路側情報処理部11が車両25を制御するための車両制御情報を生成する。あるいは、道路側情報処理部11は、サービスセンター50から車両制御情報を受け取る。道路側情報処理部11は、車両制御情報を道路側通信部12,13に定期的に繰り返して送信させる。車両制御情報には、アイドリングストップを行う地域であることを通知するアイドリング該当地域情報、アイドリングストップを開始するまでの時間を通知するアイドリングストップ移行時間情報、車両の走行速度の上限を通知する速度上限情報、車両の走行加速度の上限を通知する加速度上限情報、車両のエンジンの回転数の上限を通知する回転数上限情報、エンジン制御を継続する時間を通知する制御保持時間情報、エンジン制御を継続する車両の走行距離を通知する制御保持距離情報などが含まれる。
図14に示されるように、車両側通信装置20を搭載した車両25が光通信エリアAR3に進入し、車両側通信部22が、道路側通信部12から車両制御情報を受信すると、当該車両制御情報は車両側情報処理部21に入力される。車両側情報処理部21は入力された車両制御情報を記憶する。
ここで、車両25に設けられている、エンジンやブレーキを制御するECU(以後、「車載ECU」と呼ぶ)は、CANを通じたポーリングによって、車両側情報処理部21から車両制御情報を読み出している。つまり、車両側情報処理部21は、車載ECUの要求に応じて、当該車載ECUに対して車両制御情報を出力する情報出力部として機能する。これにより、車載ECUは、処理の空き時間に、車両側情報処理部21から車両制御情報を読み出すことができ、車載ECUでの内部処理が遅延することが無い。なお、車両制御情報を受信した車両側情報処理部21が当該車両制御情報を定期的に繰り返して車載ECUに出力し、車載ECUが、処理の空き時間に、車両側情報処理部21からの車両制御情報を受信しても良い。また、車載ECUでの内部処理の遅延を考慮しなければ、車両側情報処理部21から車両制御情報が車載ECUに入力されると、当該車載ECUにおいて割り込みが発生するようにしても良い。
車載ECUは、車両側情報処理部21から車両制御情報を受け取ると、当該車両制御情報に基づいてエンジンやブレーキの制御を行う。例えば、道路側通信部12から送信される車両制御情報には、アイドリングストップ該当地域情報が含まれており、車載ECUは、アイリングストップ該当地域情報を取得すると、図14に示されるように、次に車両25が停止すると、エンジンを停止させてアイドリングストップを行う。
このように、道路側通信装置10から、車載ECUに対して、車両側通信装置20を通じてアイドリングストップ該当地域情報を送信することによって、車載ECUが自ら備えているアイドリングストップ機能とは独立して、車両25のアイドリングストップを行うことができる。なお、車載ECUには、車両の停車位置にかかわらず、停車時間に応じてアイドリングストップを行うアイドリングストップ機能が実装されている場合が多い。
次に、光通信エリアAR3を通過した車両25が電波通信エリアAR1に進入し、車両側通信部23が、道路側通信部13から車両制御情報を受信すると、当該車両制御情報は車両側情報処理部21に記憶される。
車載ECUが、車両側通信部23からの車両制御情報を車両側情報処理部21から受け取ると、車載ECUは、車両制御情報に基づいてエンジンやブレーキの制御を行う。例えば、道路側通信部13から送信される車両制御情報には、速度上限情報、加速度上限情報、回転数上限情報、制御保持時間情報、制御保持距離情報が含まれている。車載ECUは、これらの情報を含む車両制御情報を取得すると、図14に示されるように、停止した車両25が発進する際に、当該車両制御情報に基づいてエンジンを制御する。これにより、車両25では、走行速度やエンジンの回転数などが、車両制御情報によって通知された上限値を超えないようにエンジンが制御される。通常、車両が発進して加速する際には、当該車両からはCO2およびNOxが多量に排出され、特に、車両が急加速する際には、CO2およびNOxの排出量は非常に多くなる。したがって、速度上限情報などを含む車両制御情報に基づいてエンジン制御を行うことにより、車両25からのCO2およびNOxの排出量を大幅に低減することができる。
その後、車両側通信部23が道路側通信部13から再び車両制御情報を受信し、当該車両制御情報が車両側情報処理部21で記憶され、車載ECUが、車両25が電波通信エリアAR1を通過した後に、車両側情報処理部21から車両制御情報を読み出すと、車載ECUは、読み出した車両制御情報に基づいて、一定時間の間、あるいは車両25が一定距離走行する間、エンジンを制御する。このように、車両25が電波通信エリアAR1を通過した後に、一定時間あるいは一定走行距離の間、車両25を制御しても良い。
以上のように、車両25を制御するための車両制御情報が道路側通信装置10から出力されるため、車両側通信装置20が搭載される車両25を道路側通信装置10から制御することができる。
1 路車間通信システム、10 道路側通信装置、11 道路側情報処理部、11a,21a データ形式変換部、12,13 道路側通信部、20 車両側通信装置、21 車両側情報処理部、22,23 車両側通信部、24 ナビゲーション部、25 車両。