JP4993449B2 - 抗菌剤 - Google Patents
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本願出願人は無機酸化物コロイド粒子に抗菌性金属成分を付着せしめた抗菌剤を開示している(特開平6−80527号公報:特許文献1)。更に、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムに抗菌性を有する金属イオンをイオン交換した抗菌剤も開示している(特開平3−275627号公報:特許文献2)。
しかしながら、これらの抗菌剤であっても用途あるいは使用環境によっては抗菌性能、防黴性能あるいは消臭性能を長期に亘って維持することができない場合があり、また変色するとともに性能が低下する問題があった。
本発明者等は鋭意検討した結果、無機酸化物コロイド粒子に抗菌性金属成分と特定のキレート剤とを付着せしめた抗菌性無機酸化物コロイドが長期に亘って抗菌性能等が持続し、金属成分によっては変色することなく、長期に亘って抗菌性能等が持続ことを見出して本発明を完成するに至った。
前記抗菌性金属成分は抗菌成分安定化剤と錯体を形成していることが好ましい。
前記抗菌性金属成分は、銀、銅、亜鉛、錫から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
本発明において無機酸化物コロイド粒子としては、通常知られているコロイド溶液で負の電荷を有する無機酸化物コロイド粒子を用いることができ、酸化物コロイド粒子または複合酸化物コロイド粒子、あるいはこれらの混合物を用いることが可能である。
このような方法で製造されたコロイド粒子は、特にpHの変化に対するコロイド粒子の表面電荷の変化が小さいので、抗菌性金属成分を付着させても安定なコロイド溶液が得られるので望ましい。
特に、銀、銅、亜鉛から選択される1種以上の抗菌性金属成分は、抗菌性能、安全性などの観点から好ましい。また、消臭性能、防黴性能を併せ持つ点では銀、銅、亜鉛、錫から選択される1種以上の抗菌性金属成分が好ましい。
なお、抗菌成分安定化剤としてエチレンジアミン四酢酸ナトリウム等の塩を用いると無機酸化物コロイド粒子への付着が不充分なためか抗菌性能、消臭性能等を長期に亘って維持することが困難である。
モル比(Mab)/(Mst)が0.1未満の場合は、抗菌性金属成分の量によっても異なるが、抗菌成分安定化剤の量が多くなり、無機酸化物コロイド粒子表面の電荷が減少し、抗菌性無機酸化物コロイド粒子の安定性が低下し凝集することがある。
モル比(Mab)/(Mst)が300を超えると、抗菌成分安定化剤の量が少なく、安定化効果、変色抑制効果が得られないことがある。
本発明の抗菌性無機酸化物コロイド溶液からなる抗菌剤は、例えば、負の電荷を有する無機酸化物コロイド粒子が分散したコロイド溶液に、(1)抗菌性金属成分の金属塩水溶液を添加した後、抗菌成分安定化剤の水溶液を添加する方法、(2)抗菌成分安定化剤の水溶液を添加した後、抗菌性金属成分の金属塩水溶液を添加する方法、(3)抗菌性金属成分の金属塩水溶液と抗菌成分安定化剤の水溶液とを混合して抗菌性金属成分の錯体を形成させた水溶液を添加する方法、等により製造されるが、必ずしも、これらの方法に限定されるものではない。
なお、前記した各方法での抗菌剤の調製に際し、水を分散媒とする無機酸化物コロイド溶液の濃度は酸化物として5重量%以下、好ましくは、0.5重量%〜3重量%の範囲にあることが好ましい。
また、上記抗菌性無機酸化物コロイド溶液の分散媒である水は公知の方法により有機溶媒と置換して、有機溶媒を分散媒とする抗菌性無機酸化物コロイド溶液からなる抗菌剤とすることも可能である。
(1)コロイド粒子の表面電荷量
粒子表面電荷検出器(ミューテック社製、PCD)を使用してコロイド粒子の電荷量を測定し、一方、コロイド粒子の表面積をタイトレーション法(Analytical Chemistry Vol.28 ,No.12 (1956))に基づいて測定した。
電荷量(μクーロン/g)を表面積(m2/g)で除して表面電荷量(μクーロン/m2)を求めた。
プラズマ発光分光分析装置(セイコー社製)により、金属原子を定量して求めた。
(3)コロイド粒子の平均粒子径
レーザー散乱粒子径測定装置(ナイコンプ社製)を使用して測定した。
緑膿菌および大腸菌を生理食塩水中に懸濁させ、その30μlを後述する抗菌性能評価用試料のガラス面に滴下し、28℃で24時間放置後、生菌数を測定して式(1)により死滅率を求めた。
死滅率(%)=100×(初期生菌数−24時間後の生菌数)/初期生菌数・・・(1)
ウェザーメーター(ガス試験機器(株)製)を用いて100時間の耐候試験を行い、変色度合いを観察した。
○ ・・・変色が見られないもの
△ ・・・変色が僅かに見られるもの
× ・・・変色が見られるもの
5Lテトラパックに抗菌剤を乾燥して得た粉末試料1gと、初期濃度100ppmのアンモニア試験臭3Lおよび初期濃度4ppmの硫化水素試験臭3Lを封入して2時間放置した後、検知管にて試験臭濃度を測定し、式(2)により臭気成分の減少率(消臭率)を求めた。
消臭率(%)=100×(初期臭気成分濃度−2時間後の臭気成分濃度)/初期臭気成分濃度・・・(2)
SiO2濃度20重量%のコロイド溶液20gと純水380gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.7であり、同母液にSiO2として1.5重量%の珪酸ソーダ水溶液1500gとAl2O3として0.5重量%のアルミン酸ソーダ水溶液1500gとを同時に添加して、pH12.3のシリカ・アルミナ複合酸化物コロイド溶液とした後、限外濾過膜で濃縮して固形分濃度22.2重量%のコロイド溶液を調製した。
このコロイド溶液のシリカ・アルミナ複合酸化物コロイド粒子(比表面積1060m2 /g、平均粒子径30nm)は、負の表面電荷量が2.29μクーロン/m2であった。このコロイド溶液22gを水で希釈して固形分としての濃度1.0重量%のコロイド溶液(1)とした。
銀アンミン錯塩水溶液と亜鉛アンミン錯塩水溶液とを混合し、更に、銀および亜鉛の酸化物としての合計濃度が0.5重量%となる様に水を加えて調製した。この銀及び亜鉛のアンミン錯塩水溶液をコロイド溶液(1)に添加して十分に攪拌した。
得られた抗菌剤(1)は3ヶ月以上たっても白濁、ゲル化等することなく安定であった。
抗菌剤(1)6gと水系アクリル系樹脂(日本純薬製;ジュリマーFC65、濃度40重量%)20gとを混合して、抗菌性コート剤を調製した。このコート剤1.0gを10cm×10cmのガラス板に厚さ10μmのバーコートを用いて塗布し、100℃で乾燥して塗膜を形成し、抗菌性能評価用試料とした。
Fe2O3に換算して2gの第二塩化鉄とTiO2に換算して98gの四塩化チタンとを純水に溶解し、10kgの混合水溶液を調製した。この混合水溶液に15%アンモニア水をpHが9.0になるまで徐々に添加し、水和酸化鉄と水和酸化チタンとの共沈ゲルを得た。
この共沈ゲルを脱水し洗浄した後、該共沈ゲル1100gに35%過酸化水素1150gと純水250gとを加え、次いで80℃に加熱したところ、赤褐色の溶液2500gが得られた。この溶液のpHは7.8であった。この溶液中に含まれる鉄およびチタンの酸化物の濃度が(TiO2+Fe2O3)換算で1.0重量%になるように純水で希釈した。
得られた抗菌剤(2)は3ヶ月以上たっても白濁、ゲル化等することなく安定であった。抗菌剤(2)について実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。
シリカコロイド粒子(触媒化成工業(株)製、カタロイドSI−350、比表面積335m2/g、負の表面電荷量7・2μクーロン/m2、平均粒子径7nm)を含有するコロイド溶液(固形分濃度20重量%)を水で希釈して1重量%のコロイド溶液を調製した。
SiO2に対してAgが1.5重量%、Znが5.0重量%となる様に、0.07gのAg2Oと0.27gのZnOを用いた以外は実施例1と同様にして、銀及び亜鉛のアンミン錯塩水溶液を調製し、上記コロイド溶液に添加し、ついで、抗菌性金属成分である酸化銀および酸化亜鉛の合計量に対し10重量%になるように抗菌成分安定化剤としてエチレンジアミン四酢酸水溶液を添加し、濃度調整して固形分としての濃度3重量%の抗菌剤(3)を得た。
得られた抗菌剤(3)は3ヶ月以上たっても白濁、ゲル化等することなく安定であった。抗菌剤(3)について実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。
実施例1において、酸化銀0.12g、酸化亜鉛0.45gを用いた以外は同様にして抗菌剤(4)を得た。得られた抗菌剤(4)は3ヶ月以上たっても白濁、ゲル化等することなく安定であった。抗菌剤(4)について実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。
実施例1において、酸化銀0.12gのみを用いた以外は同様にして抗菌剤(5)を得た。得られた抗菌剤(5)は3ヶ月以上たっても白濁、ゲル化等することなく安定であった。抗菌剤(5)について実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。
実施例1において、酸化銅0.12g、酸化亜鉛0.45gを用いた以外は同様にして抗菌剤(6)を得た。得られた抗菌剤(6)は3ヶ月以上たっても白濁、ゲル化等することなく安定であった。抗菌剤(6)について実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。
アルミナ粉末(触媒化成工業(株)製、カタロイドAS−1)を水に懸濁して、濃度1重量%のコロイド溶液(比表面積230m2/g、正の表面電荷量15.6μクーロン/m2、平均粒子径43nm)を調製した。
このコロイド溶液に、実施例1と同様にして調製した銀および亜鉛のアンミン錯塩水溶液を混合したところ、直ちに凝集を起こし、コロイド溶液は得られなかった。
この凝集粒子分散液を加熱濃縮して、固形分としての濃度3重量%の抗菌剤(R1)を得た抗菌剤(R1)について実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。
Na−Y型ゼオライトを水に懸濁して、濃度5重量%の懸濁スラリー400gを調製した。
ついで、この懸濁スラリーを70℃に加温し、濃度5重量%のZn(NO3)2水溶液110.2gを添加し、70℃で30分間撹拌した後、さらに、濃度5重量%のAgNO3水溶液9.2gを添加し、90℃に加温して1時間撹拌して亜鉛および銀でイオン交換を行った。このスラリーを濾過し、60℃の温水で充分に洗浄後、120℃で乾燥し、さらに550℃で1時間焼成して粉末状の抗菌剤(R2)を調製した。
抗菌剤(R2)について実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。なお、抗菌性能評価用試料の調製には粉末状の抗菌剤(R2)0.18gを用いた。
実施例1において、抗菌成分安定化剤としてエチレンジアミン四酢酸水溶液を添加しなかった以外は同様にして固形分としての濃度3重量%の抗菌剤(R3)を得た。得られた抗菌剤(R3)は約1ヶ月後に白濁が認められた。
抗菌剤(R3)について実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。
実施例3において、抗菌成分安定化剤としてエチレンジアミン四酢酸水溶液を添加しなかった以外は同様にして固形分としての濃度3重量%の抗菌剤(R4)を得た。得られた抗菌剤(R4)は約2ヶ月後に白濁が認められた。
抗菌剤(R4)について実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。
比較例2と同様にして粉末状の抗菌剤(R2)を調製し、これを水に分散させて固形分濃度3重量%の分散液とし、これにエチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸ナトリウムを濃度が0.3重量%となるように溶解して抗菌剤(R5)を得た。得られた抗菌剤(R5)は短時間に沈降し、約1ヶ月後に灰色の変色が認められた。
抗菌剤(R5)について実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示す。
実施例1において、エチレンジアミン四酢酸の代わりにエチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸ナトリウムを用いた以外は同様にして抗菌剤(S1)を得た。得られた抗菌剤(S1)は約1ヶ月後に灰色を呈するとともにゲル化が認められた。
Claims (4)
- 負の電荷を有する無機酸化物コロイド粒子に、抗菌性金属成分とエチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、ジエチルトリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸から選ばれる1種または2種以上の抗菌成分安定化剤とを付着せしめた抗菌性無機酸化物コロイド溶液からなる抗菌剤であって、抗菌性金属成分のモル数を(M ab )とし、抗菌成分安定化剤のモル数を(M st )としたときのモル比(M ab )/(M st )が0.1〜300の範囲にあることを特徴とする抗菌剤。
- 前記モル比(M ab )/(M st )が1〜250の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の抗菌剤。
- 前記抗菌性金属成分が抗菌成分安定化剤と錯体を形成していることを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌剤。
- 前記抗菌性金属成分が銀、銅、亜鉛、錫から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌剤。
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