JP4993260B2 - 遺伝子定量装置及び定量方法 - Google Patents
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Description
これに伴い、我が国では輸送する場合に混入してくるGMOの非意図的な許容限度を最大5%として、それ以上含まれている場合はGMOの表示が義務付けられており、これにより、GMOの検知技術が必須となってきている。
各ヒータH11〜H14のうち、変性温度領域A11に対応するヒータH11は90℃に、伸長温度領域A12に対応するヒータH12は72℃に、アニーリング温度領域A13に対応するヒータH13は55℃に、ハイブリダイゼーション領域A14に対応するヒータH14は50℃に、それぞれ維持されている(特許文献1[0080]参照)。
また、毛細管流路22がハイブリダイゼーション領域A14を通過する部分には、検出用ポリヌクレオチドが固定された多孔質層が形成されている(同[0074]参照)。
そして、例えば30回のPCRサイクルを繰り返した後、最終的に変性温度領域A11で一本鎖化され、そのうち蛍光物質が結合している鎖がハイブリダイゼーション領域A14に固定された検出用ポリヌクレオチドとハイブリダイズされたときに、蛍光を発する。
したがって、サンプル液を流し終えたPCRプレート21を共焦点レーザ顕微鏡などにセットし、ハイブリダイゼーション領域A14を通過する毛細管流路22を観察することにより、その蛍光強度を測定することができる(同[0081][0082]参照)。
図6は、DNA濃度と蛍光強度の関係を示す検量線K30を示し、DNA濃度が中程度の場合は蛍光強度と濃度の関係がほぼ比例するが、高濃度及び低濃度の場合は、濃度変化に対する蛍光強度の変化が減少して比例関係が崩れるだけでなく、PCRカーブが重なる部分も生ずるため、その蛍光強度に基づいてDNA濃度を定量することができない。
これは、図5の鎖線S20、S30、S40に対応する蛍光強度を測定し、図6に示すようにその蛍光強度とDNA濃度の関係を示す検量線K20、K30、K40を求めて、定量可能な濃度の幅を広げる手法であるが、上述したPCRプレート21は、流路に固定したオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによる二本鎖ヌクレオチドに蛍光物質をインターカレートさせて、その蛍光強度を測定するようにしているため、任意の回数のPCRサイクルで蛍光強度を計測することができない。
しかしながら、この場合は少なくとも三本のチューブを用意しなければならないだけでなく、チューブを加熱するヒータ温度を時間経過に伴い昇温・降温させる熱制御が必要となり、加熱冷却に時間がかかる。また、その制御が複雑で面倒なだけでなく、制御装置などのコストが嵩み、測定精度も高くないという問題がある。
さらに、予め設定された回数のPCRサイクルを経過した時点で定量するようにしているため、DNAの増幅が他の要因で阻害されたり、DNA増幅操作中に異常が生じても、これを検知することができない。
例えば、DNA濃度が測定されたときに、DNAが正常に増幅された結果としての測定値であるのか、あるいは、温度制御装置の故障やPCR用サンプル液を調整するときのピペット誤差等によりDNAが正常に増幅されなかったときの測定値であるのか判断することができない。
これは、インターカレーターやTaqmanプローブを含んだサンプル液を入れたチューブからの蛍光強度を継続的にモニタしながら、そのチューブを所定のPCRサイクルで加熱冷却することにより、蛍光強度が所定の値に達するまでの回数からDNAの濃度を定量するものである。
この場合、図5で示すように、DNA濃度が既知の複数のサンプル液について測定された夫々のPCRカーブの所定の蛍光強度(鎖線SRT)に対応するPCRサイクルの回数を予め測定しておき、図7に示すようにそのPCRサイクルの回数とDNA濃度の検量線KRTを求めておけばDNAの濃度を定量することができ、0.01%程度のわずかの量でも正確に検出できる。
また,PCRカーブが得られることから、DNAの増幅が他の要因で阻害されたり、DNA増幅操作中に異常が生じた場合もこれを検知することができる。
長手方向に沿って変性温度領域及びアニーリング温度領域が並列形成されると共に、前記変性温度領域及びアニーリング温度領域の間を移動しながら長手方向に進行する毛細管流路が蛇行形成されたPCRプレートと、
前記毛細管流路の流入口からサンプル液を送液する送液装置と、
入力用光ファイバコネクタを介して供給された励起光を観察孔から前記毛細管流路に照射すると共に当該励起光により各流路で生じた蛍光を観察孔で受光して出力用ファイバコネクタを介して出力する光学ヘッドと、
励起光の直接反射光が前記観察孔から入射されないように当該光学ヘッドを前記PCRプレートに対して所定角度傾けた状態で前記各毛細管流路を横切るように長手方向に沿って当該光学ヘッドを移動させる移動テーブルとを備えたことを特徴としている。
その後、蛇行形成された毛細管流路を次々と横切るように、蛍光強度を測定する光学ヘッドを長手方向に移動させれば、各流路における蛍光強度をPCRサイクルの回数に対応させて測定することができるので、PCRサイクルをある特定の回数付与したときの蛍光強度ではなく、0回からPCRサイクル終了に至るまでの蛍光強度に基づいてPCRカーブを描かせることができる。
また、光学ヘッドは毛細管流路があるところと毛細管流路のないところを交互に横切るので、蛍光強度がノイズを含んだ信号として出力されるが、光学ヘッドで読み取られた蛍光強度のデータをスムージングすることにより、そのノイズを除去することができる。
したがって、スムージングされたPCRカーブに基づいて、リアルタイムPCRと同様、所定の蛍光強度(鎖線S4)に対応するPCRサイクルの回数に基づいて、DNA濃度を定量することができるだけでなく、PCRカーブの形状に基づいて、PCR法によるDNA増幅が正常に行なわれたか否かを判定することができる。
この場合に、従来、複数の同一サンプル液を別々に測定するのと同じ効果が得られ、データ信頼性が向上するだけでなく、その作業の手間が軽減されると共に測定時間が著しく短縮される。
このヒータH1及びH2としては、ブロックヒータ、薄膜状ヒーター、ペルチェ素子などが用いられ、PCRプレート3と各領域A1及びA2とヒーター部H1及びH2の間には、伝熱効率を上げるためにシリコングリースなどの伝熱性の材質が設けられている。
また、PCRプレート3は、ベースプレート3Aと、底面側に毛細管流路2となる溝が形成されたカバープレート3Bを貼り合わせて形成されている。
毛細管流路2は、変性温度領域A1及びアニーリング温度領域A2の間を移動しながら長手方向に進行し、流入口2inから流出口2outに至るまでに例えば50回のPCRサイクルを繰り返すように蛇行形成されている。
これにより、サンプル液に含まれるDNAは、変性温度領域A1で変性温度まで加熱されることにより変性されて一本鎖化され、一本鎖化されたDNAがアニーリング温度領域A2でアニーリング及び伸長される。
なお、サンプル液にはあらかじめ定量しようとしているDNAと蛍光試薬Cy5をTaqmanプローブにより標識した蛍光標識とPCR試薬が調整されている。このため、PCR反応の過程でDNA量が増加するに伴いサンプル液の蛍光強度が増加する。
そして、光学ヘッド5をY軸方向に移動させてPCRプレート3上の任意の位置で位置決めした状態でX方向に往復移動させることにより、蛇行形成された毛細管流路2を次々と横切って蛍光強度が測定される。
本例では、変性温度領域A1とアニーリング温度領域A2の間に設定した観察領域A0で毛細管流路2を横切るように光学ヘッド5が往復移動される。
また、その上面及び側面に入力用及び出力用の光ファイバコネクタ5in及び5outが形成され、例えば波長640nmの励起光照射用半導体レーザ10が光ファイバ11inを介して入力用光ファイバコネクタ5inに接続され、励起光が、ダイクロイックミラー12を透過して底面に設けられた観察孔13からPCRプレート3上に照射されるようになっている。
そして、出力用の光ファイバコネクタ5outが光ファイバ11outを介して光電変換素子14に接続されており、観察孔13から入射された光は、ダイクロイックミラー12で反射されて光ファイバ11outを介して光電変換素子14に入力されるように形成されている。
なお、光ファイバ11inの入射端側には励起波長以外の光をカットする励起フィルタF1が配され、光ファイバ11outの出射端には蛍光波長以外の光をカットする蛍光フィルタF2が配されている。
このとき、励起光の直接反射光が入射されることによる影響を排除できるように、光学ヘッド5がPCRプレートに対してθx方向及びθy方向に例えば10〜15°傾斜されている。
このとき、光学ヘッド5を長手方向に例えばPCRサイクルの0回から50回まで走査すると、毛細管流路2と流路でない部分を交互に横断して蛍光強度が測定されるので、その出力データはノイズが重畳されることとなる。
そこで、その出力データを演算処理装置15に入力してノイズを除去する処理を行う。
光学ヘッド5の長手方向の位置はPCRサイクル数に対応しているので、このデータに基づき、PCRサイクル−蛍光強度の関係を求め、必要に応じてグラフ化する演算処理を行う。
この場合の統計処理としては、例えば、単純に平均処理をしたり、偏差値などから著しく不適当なデータを排除することにより信頼性の高いデータのみで平均処理するなど、従来公知の任意の統計処理を採用しうる。
まず、PCRプレート3の各ヒータH1及びH2を夫々95℃及び59℃に維持し、DNA濃度が既知(0%、5%、10%、100%)のサンプル液を用いて、順次、蛍光強度の測定を行う。
そして、マイクロシリンジポンプP1からPCRプレート3の毛細管流路2を通り、PCRサイクルを50回繰り返すまでに約40分かかる流量で0%のサンプル液を送液した後、光学ヘッド5を所定角度傾けた状態で励起光を照射しながら長手方向に沿ってPCRサイクル0回から50回まで走査して蛍光強度を測定すると、図3の波形データW1が得られ、この波形データW1を6次関数で近似することによりスムージングして、0%のPCRカーブC1が得られる。
次いで、洗浄液供給ポート7からDNAコンタミネーション除去溶液を供給して毛細管流路を洗浄した後、マイクロシリンジポンプP2から5%のサンプル液を同様に送液し、光学ヘッド5を長手方向に沿ってPCRサイクル0回から50回まで走査して蛍光強度を測定すると、図3の波形データW2が得られ、この波形データW2を同様にスムージングして、5%のPCRカーブC2が得られる。
同様の操作を繰り返して、10%及び100%のサンプル液を順次供給し、光学ヘッド5により蛍光強度を測定すると、図3の波形データW3及びW4が得られ、これらの波形データW3及びW4を同様にスムージングすることにより、10%及び100%のPCRカーブC3及びC4が得られる。
また、リアルタイムPCRと同様に、一定の蛍光強度(例えば1.10)が得られるまでのPCRサイクルの回数に対応するDNA濃度の検量線を求めておく。
ここで、PCRカーブの形状が、予め測定したデータと著しく異なれば、PCRサイクルによるDNA増幅に異常があったと考えられるので、そのデータは廃棄する。
また、PCRカーブの形状が、予め測定したデータと略重なれば、PCRサイクルによるDNA増幅が正常に行なわれていると判定でき、この場合は、検量線を求める際に設定した蛍光強度(例えば1.10)が得られるまでのPCRサイクル数に基づいて、DNA濃度を定量することができる。
2 毛細管流路
3 PCRプレート
4 送液装置
5 光学ヘッド
A0 蛍光観察領域
A1 変性温度領域
A2 アニーリング温度領域
15 演算処理装置
Claims (8)
- DNAの二本鎖を変性させる高温の変性温度と、変性された一本鎖がアニーリングを開始する低温のアニーリング温度との間で加熱冷却を繰り返すPCRサイクルを繰り返しながら、サンプル液に含まれる特定のDNAを増幅させ、その増幅量をサンプル液の蛍光強度に基づいて定量する遺伝子定量装置であって、
長手方向に沿って変性温度領域及びアニーリング温度領域が並列形成されると共に、前記変性温度領域及びアニーリング温度領域の間を移動しながら長手方向に進行する毛細管流路が蛇行形成されたPCRプレートと、
前記毛細管流路の流入口からサンプル液を送液する送液装置と、
入力用光ファイバコネクタを介して供給された励起光を観察孔から前記毛細管流路に照射すると共に当該励起光により各流路で生じた蛍光を観察孔で受光して出力用ファイバコネクタを介して出力する光学ヘッドと、
励起光の直接反射光が前記観察孔から入射されないように当該光学ヘッドを前記PCRプレートに対して所定角度傾けた状態で前記各毛細管流路を横切るように長手方向に沿って当該光学ヘッドを移動させる移動テーブルとを備えたことを特徴とする遺伝子定量装置。 - 前記光学ヘッドから出力されたPCRサイクルの回数に対する蛍光強度のデータをスムージングする演算処理装置を備えた請求項1記載の遺伝子定量装置。
- 前記光学ヘッドを長手方向に沿って所定時間間隔をおいて所定回数往復移動させることにより測定された夫々のデータをスムージングすると共に、所定の統計処理を行う演算処理装置を備えた請求項1記載の遺伝子定量装置。
- 前記PCRプレートの前記毛細管流路にDNAを除去する洗浄液の供給手段を備えた請求項1記載の遺伝子定量装置。
- DNAの二本鎖が変性する高温の変性温度と、変性された一本鎖がアニーリングを開始する低温のアニーリング温度との間で加熱冷却を繰り返すPCRサイクルを繰り返しながら、サンプル液に含まれる特定のDNAを増幅させて、その増幅量をサンプル液の蛍光強度に基づいて定量する遺伝子定量方法であって、
長手方向に沿って変性温度領域及びアニーリング温度領域が並列形成されると共に、前記変性温度領域及びアニーリング温度領域の間を移動しながら長手方向に進行する毛細管流路が蛇行形成されたPCRプレートにサンプル液を流してPCRサイクルを繰り返し行なわせ、
入力用光ファイバコネクタを介して供給された励起光を観察孔から前記毛細管流路に照射すると共に当該励起光により各流路で生じた蛍光を観察孔で受光して出力用ファイバコネクタを介して出力する光学ヘッドを、励起光の直接反射光が前記観察孔から入射されないように所定角度傾けた状態で前記各毛細管流路を横切るように長手方向に沿って当該光学ヘッドを移動させることにより、各流路における蛍光強度をPCRサイクルの回数に対応させて測定することを特徴とする遺伝子定量方法。 - 前記光学ヘッドから出力された蛍光強度のデータをスムージングして、各毛細管流路における蛍光強度をPCRサイクルの回数に応じて測定する請求項6記載の遺伝子定量方法。
- 前記PCRプレートに連続的に同一サンプル液を供給しながら、所定時間間隔をおいて、前記光学ヘッドを長手方向に沿って往復移動させることにより測定された夫々のデータをスムージングすると共に、所定の統計処理を行って、蛍光強度をPCRサイクルの回数に応じて測定する請求項6記載の遺伝子定量方法。
- 前記PCRプレートに供給した一のサンプル液について蛍光強度の測定が終了した後、洗浄液を供給して前記毛細管流路に残るDNAを除去した後、他のサンプル液について蛍光強度の測定を行う請求項6記載の遺伝子定量方法。
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