JP4273252B2 - 流路内の気泡発生の抑制方法 - Google Patents

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Description

本発明は、流路内の気泡の発生を抑制した液体試料の送液方法に関する。
近年、生化学分析を流体デバイスが集積化された数センチ角の基板上で行うμTAS(Micro Total Analysis System)の研究が行われている。本来、生化学分析は複数の機器を用いて一連の分析操作が行われるが、基板上に様々な分析機能をもつ流体デバイスを集積、連結することで、複数の分析操作の自動化が可能になる。ピペット等を用いて行っていた溶液調整を流体制御により基板上で行うことで、分析時間の飛躍的な迅速化が期待できる。また個人の技術差による分析結果の違いやコンタミネーションの問題も改善される。さらにナノあるいはピコリットルの流体制御により溶液調整を行うため、これまで人為的には不可能であった操作や条件検討が可能となる。これにより生物学的に大変興味深い実験結果を得ることが期待できる。
生化学分析は複数の生化学反応を用いて行われるが、一般的に常温で反応を行うものがほとんどである。しかし中には反応溶液の沸点付近で行われる反応も存在する。例として、生化学分析で必須のDNA増幅反応PCR(Polymerase chain reaction)は、95℃付近の高温領域で反応を行う。よってμTAS構築のためには、この様な温度条件下に対応した流体デバイスの開発が必要となる。しかし、このとき特に問題となるのが流路中に発生した気泡による送液の阻害である。これまでマイクロ流体デバイスを用いてPCRを行うContinuous flow PCRなどが報告されているが、これらは有効な気泡発生抑制方法もなく、また単にDNA増幅するだけの場合には特に問題とはならなかった(非特許文献1−5)。
しかし、増幅産物の定量測定であるRT-PCR、μTASに高温領域で反応が必要とするDNA増幅反応を導入するためには大きな問題となる。
また、特開2004-61320公報(特許文献1)では、試料液体とは非相溶性の駆動液体を用いて、微量の試料液体を送液する方法を開示している。しかし、該方法は、気泡の混入防止を目的とし、流路の流出口周辺での気泡の発生抑制を行うことができない。
加えて、流路内での高温反応では、はじめに高温領域に試料溶液を送液した場合、試料溶液の先頭部から気泡が発生し、液体試料送液が不安定になる問題点がある。
SCIENCE,VOL.280,15 MAY 1998 Lab on a Chip,2001,1,42-49 Sensors and Actuators B 82 (2002)75-81 Sensors and Actuators B 84 (2002)283-289 Anal.Chem.2003,75,288-295 特開2004-61320
本発明は、上記記載した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明では、一般的なマイクロ流体デバイスを作製し、高温条件下における送液挙動を調べた。その結果、流出口周辺に集中して気泡が発生し、また送液速度が遅くなるにつれ気泡の発生範囲が広くなった。すなわち、本発明の課題は、このような気泡の発生原因を解明し、気泡発生のない安定した液体試料送液を実現することで、様々な温度条件下に対応可能なマイクロ流体デバイス及び液体試料送液方法を提供することである。
本発明はまずマイクロ流体デバイスにおける気泡発生原因を検討した。
その結果、流路内を流れている溶液が、圧力低下により、設定温度における飽和蒸気圧以下になることによる沸騰から生じる気泡の発生、または、試料溶液の温度及び/もしくは圧力の変化により、溶液に溶け込んでいる気体の溶解度が低下し、析出することによる気泡の発生が生じること、加えて、マイクロ流体デバイスの流路内も管内の流れに従って気泡が発生していることを新たに見出した。
これにより、管内の流れの式を基に、メイン流路の流出口周辺での最適な液体試料の圧力を維持することによる気泡の発生を抑制する方法として、1)サブ流路を高温条件下でないメイン流路の流出口に導入すること、2)溶液Aを試料溶液の前に送液すること、3)流れを生じさせている上流からの圧力に対して、これとは逆方向の下流からの圧力を加えること、を見出した。
以上により、管内の流れの式を基に、最適な液体試料送液圧力の範囲に各パラメーターを設定することによって、最適長のサブ流路長、気泡発生抑制に必要な溶液Aの量を設定することができる。これによって、反応試薬の微量化やマイクロ流体デバイスの小型化が可能となった。
さらに、高温領域に試料溶液を送液した場合、試料溶液の先頭部から気泡が発生し、送液が不安定になる問題点には、溶液Aを最初に流し、次に液体試料を流すことで、気泡の発生を防ぐことが可能になった。
つまり本発明は以下よりなる。
「1.流路内を流れている溶液内の圧力を高めることにより流路内での気泡の発生を抑制する方法において、
流路内を流れている溶液における、圧力低下により、設定温度における飽和蒸気圧以下になることによる沸騰から生じる気泡の発生、または、溶液の温度及び/若しくは圧力の変化により、溶液に溶け込んでいる気体の溶解度が低下し、析出することによる気泡の発生を抑制するために、飽和蒸気圧以上の圧力に保たれ、かつ温度及び/若しくは圧力の変化により、溶存気体の析出が起きない条件を満足することができる長さをもつサブ流路を反応領域の下流に連結させることを特徴とする気泡の発生を抑制する方法。
2.流路内を流れている溶液間の圧力を高めることにより流路内での気泡の発生を抑制する方法において、
流路内を流れている溶液における、圧力低下により、設定温度における飽和蒸気圧以下になることによる沸騰から生じる気泡の発生、または、溶液の温度及び/若しくは圧力の変化により、溶液に溶け込んでいる気体の溶解度が低下し、析出することによる気泡の発生を抑制するために、試料溶液と混ざらないか、もしくは混ざりにくい、及び当該設定温度条件下では飽和蒸気圧以上の圧力を保つことができ、かつ当該条件下における温度及び/若しくは圧力の変化によって溶存気体の析出が起きない溶液Aを試料溶液の前に送液することによって、該溶液Aを押し流すための上流からの圧力と該溶液Aの抵抗により、試料溶液内の圧力を高めことを特徴とする気泡の発生を抑制する方法。
3.流路内を流れている溶液内の圧力を高めることにより流路内での気泡の発生を抑制する方法において、
流路内を流れている溶液における、圧力低下により、設定温度における飽和蒸気圧以下になることによる沸騰から生じる気泡の発生、または、溶液の温度及び/若しくは圧力の変化により、溶液に溶け込んでいる気体の溶解度が低下し、析出することによる気泡の発生を抑制するために、流れを生じさせている上流からの圧力に対して、これとは逆方向の下流からの圧力を加え、試料溶液内の圧力を高めることを特徴とする気泡の発生を抑制する方法。
4.上記圧力低下が、マイクロ流体デバイスの流れにおいて、管内の流れの式に示されるような上流から下流にかけての圧力低下である前項1〜3の何れか一に記載の気泡の発生を抑制する方法。
5.前項1〜4の何れか一に記載の気泡の発生を抑制する方法を利用する液体試料の送液方法。
6.前項5に記載の液体試料の送液方法を利用する化学反応方法。」
また、より詳しくは、
「1.メイン流路及び該メイン流路の流出口に導入したサブ流路を含むことを特徴とするマイクロ流体デバイスおいて、サブ流路長を以下の式(5)又は式(6)に従って決定することを特徴とするマイクロ流体デバイス。
Figure 0004273252
Figure 0004273252
(ここで、L:流路長、ΔP prevent:気泡発生を抑えるのに必要な圧力、μ:溶液粘度、dは流路内の直径、dh:hydraulic diameter、λ:管摩擦係数、ρ:液体試料の密度、u:液体試料の平均流速を意味する。)
2.サブ流路長を以下の式(5)又は式(6)に従って決定することを特徴とする、メイン流路及び該メイン流路の流出口に導入したサブ流路を含むマイクロ流体デバイスの作製方法。
Figure 0004273252
Figure 0004273252
(ここで、ΔP prevent:気泡発生を抑えるのに必要な圧力、L:流路長、μ:溶液粘度、dは流路内の直径、dh:hydraulic diameter、λ:管摩擦係数、ρ:液体試料の密度、u:液体試料の平均流速を意味する。)
3.メイン流路及び該メイン流路の流出口に導入したサブ流路を有するマイクロ流体デバイスにおいて、メイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力を、以下の式(3)又は式(4)に従って制御することを特徴とするマイクロ流体デバイスの液体試料送液方法。
Figure 0004273252
Figure 0004273252
(ここで、ΔP prevent:気泡発生を抑えるのに必要な圧力、L:流路長、μ:溶液粘度、dは流路内の直径、dh:hydraulic diameter、λ:管摩擦係数、ρ:液体試料の密度、u:液体試料の平均流速を意味する。)
4.前項3に記載のマイクロ流体デバイスの液体試料送液方法において、メイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力を50.00−65.00kPaの値の範囲に保つことを特徴とするマイクロ流体デバイスの液体試料送液方法。
5.前記液体試料の送液において、溶液Aを、該液体試料より先にメイン流路内に送液することを特徴とする前項3又は4のいずれか1に記載のマイクロ流体デバイスの液体試料送液方法。
6.前記溶液Aの送液量を、以下の式(7)又は式(8)によって決定することを特徴とする前項3−5のいずれか1に記載のマイクロ流体デバイスの液体試料送液方法。
Figure 0004273252
Figure 0004273252
(ここで、Voil:気抱発生抑制に必要最低量、S:流路の断面積、Loil:流路を流れる溶液Aの長さ、ΔP prevent:気泡発生を抑えるのに必要な圧力、μ:溶液Aの粘度、dは流路内の直径、dh:hydraulic diameter、λ:管摩擦係数、ρ:溶液Aの密度、u:液体試料の平均流速を意味する。)
7.前記液体試料はメイン流路内で異なる温度領域を通過させるようにした前項3−6のいずれか1に記載のマイクロ流体デバイスの液体試料送液方法。
8.前記液体試料はメイン流路内でポリメラーゼ連鎖反応を行うようにした前項7に記載のマイクロ流体デバイスの液体試料送液方法。
9.前項3−8のいずれか1に記載の液体試料送液方法を使用した、液体試料中のDNA増幅反応方法。
10.メイン流路及び該メイン流路の流出口に導入したサブ流路を有するマイクロ流体デバイスのサブ流路長の決定及び/又はメイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力の決定方法であって、
1、任意のサブ流路長を有するマイクロ流体デバイスを作製する。
2、任意の液体試料送液速度で液体試料をメイン流路内に流す。ここで、メイン流路内で気泡が発生する場合には、気泡が発生しなくなるまで液体試料送液速度を上げる。また、ここで、メイン流路内で気泡が発生しない場合には、気泡が発生するまで液体試料送液速度を下げる。これにより、気泡が発生しない程度の液体試料送液速度を求める。
3、上記2の気泡が発生しない程度の液体試料送液速度及び上記1の任意のサブ流路長を式(3)又は式(4)に代入することにより、気泡が発生しない程度のメイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力値を求める。
4、上記3の気泡が発生しない程度のメイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力値を固定値として、上記2の気泡が発生しなかった液体試料送液速度値を、式(5)又は式(6)に代入することにより、サブ流路長を求める。
5、上記3の気泡が発生しない程度のメイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力値を固定値として、上記2の気泡が発生しなかった液体試料送液速度値を、式(7)又は式(8)に代入することにより、気泡発生抑制に必要な溶液Aの必要最低量VOilを求める。
ことを特徴とする設定方法。
Figure 0004273252
Figure 0004273252
Figure 0004273252
Figure 0004273252
(ここで、ΔP prevent:気泡発生を抑えるのに必要な圧力、L:流路長、μ:溶液粘度、dは流路内の直径、dh:hydraulic diameter、λ:管摩擦係数、ρ:液体試料の密度、u:液体試料の平均流速を意味する。)
Figure 0004273252
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(ここで、Voil:気抱発生抑制に必要最低量、S:流路の断面積、Loil:流路を流れる溶液Aの長さ、ΔP prevent:気泡発生を抑えるのに必要な圧力、μ:溶液Aの粘度、dは流路内の直径、dh:hydraulic diameter、λ:管摩擦係数、ρ:溶液Aの密度、u:液体試料の平均流速を意味する。)
本発明によれば、流路内を流れている溶液内での気泡の発生を抑制できる方法を提供することができる。
液体試料
本発明の液体試料は、例えば反応原液や生成物溶液、分離原液や分離液、検出すべき物質の溶液、定量すべき液体などであり、その状態は任意である。例えば、純粋液体、混合液体、溶液、分散液などであり得るが、特に限定されない。
マイクロ流体デバイス
本発明のマイクロ流体デバイスは、マイクロ・フルイディック・デバイス、マイクロ・ファブリケイテッド・デバイス、ラブ・オン・チップ、又はマイクロ・トータル・アナリティカル・システム(μTAS)とも呼ばれるものであり、液体試料を流路内に流入し流出するまでの経路内で、液体試料が温度変化をうける機構、濃度調整される機構、化学反応をうける機構、流動の流速、流動の分岐、混合若しくは分離などの制御をうける機構、又は電気的、光学的な測定をうける機構等を設けた流路を備える。加えて本発明の一態様では、メイン流路の流出口下流に連結したサブ流路を有する。
管内の流れの式
流路内の流れが層流の場合、各パラメーターである、P1:上流の圧力、P2:下流の圧力、L:P1−P2の流路間、μ:溶液粘度、dは流路内の直径、uは平均流速とすると以下の式(1)で与えられる。この式をハーゲンポアゼイユの法則という。
Figure 0004273252
また、流路断面積が円形でない場合には、以下の式(2)で表される。
Figure 0004273252
(ここで、dh:hydraulic diameter、λ:管摩擦係数、ρ:溶液の密度、u:溶液の平均流速、L:流路長を意味する。)
よって、流路断面積が円形の場合には、以下の式(3)となり、流路面積が非円形の場合には、以下の式(4)となる。
Figure 0004273252
Figure 0004273252
(ここで、ΔP prevent:気泡発生を抑えるのに必要な圧力、L:流路長、μ:溶液粘度、dは流路内の直径、dh:hydraulic diameter、λ:管摩擦係数、ρ:液体試料の密度、u:液体試料の平均流速を意味する。)
本発明のメイン流路及び該メイン流路の高温条件下でない流出口下流に連結したサブ流路を有するマイクロ流体デバイスでの液体試料の送液は、上記式(3)又は式(4)に近似的に当てはまることを、下記実施例により新規に見つけ出した。これにより、各パラメーターの値を変更して、上記式(3)又は式(4)に代入することにより、メイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力の値の決定を行うことができる。
メイン流路及びサブ流路
本発明のメイン流路は、液体試料の反応の場である反応領域であり、この流路中で、化学反応、物理化学的処理、検出、定量などを行ったり、この流路から極微少量の液体を定量吐出したり、同じく定量吸引したりする機能を有するものである。
また、サブ流路は、飽和蒸気圧以上の圧力に保たれ、かつ温度及び/若しくは圧力の変化により、溶存気体の析出が起きない条件を満足することができる長さをもつ流路を意味する。具体的には、高温条件下でないメイン流路の流出口に連結された流路であり、主にメイン流路の流出口周辺の圧力を一定以上に保つために、設置されている。また、本発明のサブ流路長は、以下に示す式(5)又は式(6)から決定することができる。これにより、メイン流路内では気泡が発生しない必要最小限のサブ流路長を設定することができ、マイクロ流体デバイスの小型化を可能としている。
サブ流路長の設定方法
本発明の一態様では、メイン流路の流出口下流に連結したサブ流路を備えることで、気泡の発生を抑制する方法である。
サブ流路長の長さは、流路断面積が円形の場合には、式(3)を基に以下の式(5)で算出でき、流路面積が非円形の場合には、式(4)を基に以下の式(6)で算出することができる。
Figure 0004273252
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(ここで、L:流路長、ΔP prevent:気泡発生を抑えるのに必要な圧力、μ:溶液粘度、dは流路内の直径、dh:hydraulic diameter、λ:管摩擦係数、ρ:液体試料の密度、u:液体試料の平均流速を意味する。)
例えば、予めサブ流路長以外の各パラメーターを設定しておけば、式(5)又は式(6)に各パラメーターを代入することで、サブ流路長(L)を求めることができる。
メイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力
本発明のマイクロ流体デバイスの液体試料送液方法における、メイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力は、式(3)又は式(4)を基に算出することができる。
例えば、メイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力以外の各パラメーターを設定しておけば、式(3)又は式(4)に各パラメーターを代入することで、メイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力(ΔPpresent)を求めることができる。
また、本発明のマイクロ流体デバイスの液体試料送液方法における、メイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力は、例えば、本実施例の条件を基にして、50.00-65.00(kPa)、好ましくは53.00-65.00(kPa)、さらに好ましくは56.00-65.00(kPa)である。このような送液圧力は、マイクロ流体デバイスの管内に負の影響を与えずかつメイン流路内で気泡が発生しない送液圧力を意味する。また、これらのメイン流路の流出口周辺の好ましい液体試料送液圧力値は、以下に示す実施例により算出されたものである。
また、本発明のマイクロ流体デバイスのサブ流路長の決定及び/又はメイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力並びに溶液Aの量の決定方法は、以下のように決定することもできる。
以下に示すメイン流路及びサブ流路を有するマイクロ流体デバイスの作製方法により、任意のサブ流路長を有するマイクロ流体デバイスを作製する。そして、任意の液体試料送液速度で液体試料をメイン流路内に流す。ここで、メイン流路内で気泡が発生する場合には、気泡が発生しなくなるまで液体試料送液速度を上げる。また、ここで、メイン流路内で気泡が発生しない場合には、気泡が発生するまで液体試料送液速度を下げる。
以上により、気泡が発生しない程度の上記液体試料送液速度及び任意のサブ流路長を式(3)又は式(4)に代入することにより、気泡が発生しない程度のメイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力値を求めることができる。さらに、前記気泡が発生しない程度のメイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力値を固定値として、気泡が発生しなかった液体試料送液速度値を、式(5)又は式(6)に代入することにより、メイン流路内に気泡が発生しないサブ流路長を求めることができる。
さらに、上記の気泡が発生しない程度のメイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力値を固定値として、上記の気泡が発生しなかった液体試料送液速度値を、式(7)又は式(8)に代入することにより、気泡発生抑制に必要な溶液Aの必要最低量Voilを求めることができる。
Figure 0004273252
Figure 0004273252
(ここで、Voil:気抱発生抑制に必要最低量、S:流路の断面積、Loil:流路を流れる溶液Aの長さ、ΔP prevent:気泡発生を抑えるのに必要な圧力、μ:溶液Aの粘度、dは流路内の直径、dh:hydraulic diameter、λ:管摩擦係数、ρ:溶液Aの密度、u:液体試料の平均流速を意味する。)
本発明のメイン流路及び該メイン流路の流出口に導入したサブ流路を含むマイクロ流体デバイスの作製方法
メイン流路及び該メイン流路の流出口に導入したサブ流路を含むマイクロ流体デバイスの作製方法は、公知のマイクロデバイス作製方法により作製することができる。
具体的には、基板表面にレジストを塗布し、スピンコーターにより表面に薄膜を形成する。その後、ベークし、マスクアライナーを用いて、レジスト面にメイン流路及び該メイン流路の流出口に導入したサブ流路の目的のパターンを描いたフォトマスクを接触させながら、UV照射する。ベーク後、現像液に浸し、余分なレジストを除去した。最後にベークし、鋳型を作製する。
作製した鋳型に、PDMSを流し込み、加熱し硬化させる。常温に冷まし、PDMSを剥がしメイン流路及びサブ流路の転写を行った。Inlet部(注入口)及びOutlet部(流出口)にシリンジ針により貫通穴を作製し、送液用テフロン(登録商標)チューブを挿入する。PDMSを挿入部に塗布し、加熱の工程を複数回繰り返し、チューブの固定化を行う。このPDMS流路とスライドガラスの両面をイオンエッチング装置により、酸素プラズマ処理し、張り合わせることでメイン流路及び該メイン流路の流出口に導入したサブ流路を含むマイクロ流体デバイスを作製した。
溶液A(先送液体)
本発明の一態様では、溶液Aを試料溶液の前に送液することにより、気泡の発生を抑制する方法である。
溶液A(先送液体)は、液体試料をメイン流路内に導入する前に、メイン流路内に導入する液体を意味する。加えて、溶液A(先送液体)は、試料溶液と混ざらないか、もしくは混ざりにくい、及び設定温度条件下では飽和蒸気圧以上の圧力を保つことができ、かつ当該条件下における温度及び/若しくは圧力の変化によって溶存気体の析出が起きない液体を意味する。また、溶液A(先送液体)は、液体試料とは非相溶性の液体であり、液体試料やマイクロ流体デバイス などを犯すものでなければ任意である。具体的には、液体試料が水系液体、即ち水溶液や、水を分散媒とする分散液である場合には、溶液A(先送液体)は非水溶性の有機溶剤や有機液体、例えば、ノルマルヘキサン、トルエン、ミネラルオイルなどの炭化水素系溶剤;デカン酸エチルなどのエステル系溶剤;ジブチルエーテルなどのエーテル系溶剤;クロロホルムなどの塩素系溶剤;フッ素系溶剤;シリコンオイル等を例示できる。フッ素オイルは沸点が高く、化学的に不活性、高い粘性、疎水性であるため、親水性の溶液と交わらないなどの特徴があり、特に好適である。
先送液体である溶液Aの送液量は、以下の式(9)又は詳しくは式(7)若しくは式(8)から算出することができる。
Figure 0004273252
(ここで、ΔPprevent は、気泡の発生を抑制するために必要な圧力、μOil はフッ素オイルの粘度、ΔPoilはフッ素オイルを流した場合のオイル上流、下流の圧力差である。)
メイン流路内の設定温度
本発明においては、マイクロ流体デバイス 内のメイン流路が異なる温度にそれぞれ設定された複数の温度領域(温調領域部)にまたがって形成されており、これらの温度領域の流路を液体試料が通過し、異なる温度領域を通過させることによって液体試料の化学反応が行われる。特に本発明の設定温度は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うような高温条件に設定されている。
なお、本発明では、設定温度で試料溶液を送液した場合に、流路内を流れている溶液が、圧力低下により、当該設定温度における飽和蒸気圧以下になることによる沸騰から生じる気泡の発生、又は、試料溶液の温度及び/もしくは圧力の変化により、溶液に溶け込んでいる気体の溶解度が低下し、析出することによる気泡の発生を抑制するための手段を提供するものである。
液体試料送液方法
本発明の液体試料送液方法は、自体公知のマイクロ流体デバイスの液体試料送液方法で行うことができる。
例示的には、空気などの気体やシリンジポンプなどの外部駆動手段を用いた圧力差による方法、マイクロ流体デバイス内部に設けたダイヤフラムポンプやギヤポンプなどの内部駆動手段を用いた圧力差による方法が挙げられるが、これに限定されない。
本発明の流体デバイスでの試料液体の送液方法について図4を用いて説明する。
本発明の流体デバイス の溶液入口1に溶液A(先送液体)をマイクロシリンジを用いて注入する。このときの溶液Aである先送液体の送液量は、式(9)又は詳しくは式(7)若しくは式(8)から算出される。続いて、試料液体を気泡の混入がないように、溶液入口1にマイクロシリンジを用いて注入する。このときの試料液体の送液速度は、式(3)又は式(4)に制御される。
また、溶液入口1にマイクロシリンジポンプを装着した配管(図示せず)の先端を嵌挿させ、マイクロシリンジポンプを駆動させて溶液A(先送液体)、続いて試料液体を溶液入口1から注入する。
これによって溶液A(先送液体)、続いて試料液体は、メイン流路3内を一定速度で送液され、ヒーター2を通過することで温度履歴を受ける。
続いて、メイン流路3内を通過した溶液A(先送液体)、試料液体は、メイン流路3内の流出口に導入したサブ流路4に入り、その後溶液出口5から排出される。
また、本発明の気泡の発生を抑制する方法の一態様である、試料液体の流れを生じさせている上流からの圧力に対して、これとは逆方向の下流からの圧力を加える方法では、メイン流路(3)の流出口(サブ流路の設置は任意である)又は溶液出口(5)にマイクロシリンジポンプを装着した配管(図示せず)の先端を嵌挿させ、マイクロシリンジポンプを駆動させて、試料溶液の流れとは逆方向の下流からの圧力を加える。しかしながら、マイクロシリンジポンプによる逆方向の下流からの圧力を加える方法に限定はされず、逆方向の下流からの圧力を加えることができればいかなる方法でもよい。
この際、メイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力は、50.00-65.00(kPa)、好ましくは53.00-65.00(kPa)、さらに好ましくは56.00-65.00(kPa)の範囲で行うことができる。
以下で本発明を実施例によって説明するが、これらは最良の態様を例示したものであって、本発明はその対象を限定するものではない。
(マイクロ流体デバイスの作製方法)
1.試料及び試薬
本発明で使用した試料及び試薬を以下に示す。
鋳型基板としてSiウェハー(信越アステック、CZ-N、4インチ、結晶面[110]、片面研磨)を使用し、フォトリソグラフィーのレジストとしてSU-8(Micro Chem Corp., NANOTMSU-8 50)、現像液としてDeveloper(Micro Chem Corp., NANOTMSU-8 Developer)を用いた。チップ材質としてPDMS(Polydimethyl sioxane, DOW CORNING, SYLGARD kit)を使用し、送液用チユーブとしてFEPチューブ(内径0.15±0.05mm,ビー・エー・エス株式会社)を用いた。チップ下底にはMICRO SLIDE GLASS(76×52×1〜1.2mm,MATSUNAMI)を用いた。流路表面処理にリピジュア(PMB、日本油脂株式会社)を使用した。
2.マイクロ流体デバイスの作製装置及び周辺機器
Si基板上にレジストを塗布するためにスピンコーター(MIKASA,1H-DX2)、ベーキングのためのホットプレート(イウチ、DATAPLATE)、露光するためにマスクアライナー(Karl SUSS,MJB3)を使用した。転写鋳型のためのベーキングとしてオーブン(YAMATO社製、DKN301)を使用した。Inlet及びOutletの溶液注入口作製には、シリンジ針(20G×11/2、0.90×38mm、TERUMOR)の先端を切断し、フラットに研磨したシリンジ針を使用した。PDMSとGlassの接着のための反応性イオンエッチング装置(SAMCO、RIE-10NR)を使用した。Continuous flow PCRのヒーターとして、カートリッジヒーター(外径6mm×8cm、九州日昌)、ヒーターブロックとしてアルミヒーターブロック(1×1×8cm、株式会社 九州日昌)を使用し、温度制御用熱電対(九州日昌)、温度調節器(LCSS、九州日昌)を用いて温度制御を行った。送液の観察のために実体蛍光顕微鏡(MZFL.ライカ)、CCDカメラとして(Axio cam,Carl Zeiss)を使用した。
3.マイクロ流体デバイスの作製方法
マイクロ流体デバイスの作製はまず、片面研磨した4インチのSi<100>ウエハーにレジスト(SU-8-50)を塗布し、スピンコーターにより表面に薄膜を形成した。スピンコーターの回転数を3000rpmとし、30秒間行うことで、40μmの薄膜が形成されるように設定した。その後、65℃で5分、95℃で15分間ベークし、マスクアライナーを用いて、レジスト面に目的のパターン(メイン流路のみ、メイン流路及びサブ流路)を描いたフォトマスクを接触させながら、UVを25秒間照射した。65℃で2分、95℃で4分間ベーク後、現像液に約20分間浸し、余分なレジストを除去した。最後に150℃で20分間ベークし、鋳型を作製した。
作製した鋳型に、PDMSを厚さが3mm程度になるように流し込み、オーブンで120℃、約1時間加熱し硬化させた。常温に冷まし、PDMSを剥がし流路の転写を行った。Inlet部(注入口)及びOutlet部(流出口)にシリンジ針により500μm程度の貫通穴を作製し、送液用テフロン(登録商標)チューブ(内径0.15mm±0.05mm)を挿入した。PDMSを挿入部に塗布し、120℃で10分間加熱の工程を3回繰り返し、チューブの固定化を行った。このPDMS流路とスライドガラスの両面をイオンエッチング装置により10秒間、酸素プラズマ処理し、張り合わせることでマイクロ流体デバイスを作製した。また、該マイクロデバイスを切断し、顕微鏡により流路幅50μm、流路高50μmになっていることを確認した。
(高温領域における液体試料の流れ)
図1に示すように、2cmの流路が29ライン繰り返し並んだ流路構造からなるマイクロ流体デバイスを作製した。
該デバイスをヒーター上に設置し、0.2mM Neutral red溶液(0.2mM のNeutral redを溶かしたミリQ水)を送液し、溶液でデバイス内を満たした。次にヒーターの温度を95℃まで上昇させ、送液の様子を顕微鏡により観察し、気泡の発生地点を調べた。このとき0.5、0.6、0.7、0.8、0.9および1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0 mL/minの各速度について行った。
その結果、流出口周辺に集中して気泡の発生がみられた(図2)。また各速度における気泡の発生ラインをプロットしたところ、送液速度が上昇するにつれて、気泡の発生範囲が狭くなることはわかった(図3)。これは、マイクロ流路内が式(1)および式(2)で示す、管内の流れであり、下流になるほど低圧となることが原因と考えられた。
ここで流路内の流れが層流の場合、各パラメーターである、P1:上流の圧力、P2:下流の圧力、L:P1−P2の流路間、μ:溶液粘度、dは流路内の直径、uは平均流速とすると以下の式(1)で与えられる。この式をハーゲンポアゼイユの法則という。
Figure 0004273252
また、今回のように流路断面積が円形でない場合、式(2)のようになる。
Figure 0004273252
(ここで、dh:hydraulic diameter、λ:管摩擦係数、ρ:溶液の密度、u:溶液の平均流速、L:流路長を意味する。)
式(2)から、損失ヘッドは流路長に比例して大きくなることがわかる。つまり出口付近ほど圧力が低圧であり、溶存気体の析出等による気泡が発生したと考えられる。
この気泡の発生を抑制するために図4に示すように、出口に長さ33cmのサブ流路を連結し、メイン流路内の圧力を上昇させた。このデバイスを用いて上記と同様の実験を行ったところ、2.0 mL/minまで気泡の発生がみられなかった。
また、レイノルズ数は式(10)であらわされる。
Figure 0004273252
ここで は動粘度、deはhydraulic equivalent diameterである。式(1)又は式(2)および式(10)からΔPは、Lとumに線形比例することがわかる。よってサブ流路長を2倍の66cmとし、送液速度を1/2の1.0 mL/minとして実験を行った。その結果1.0 mL/minにおいても気泡が発生せず、安定した送液がみられた。
以上の結果により、流路内の流れは、近似的に管内の流れの式に当てはまり、該式を基にして、流路長を最適化し、流路内の圧力調整を行う手法は簡単でかつ有効であるといえる。また、気泡の抑制に必要以上の圧力は、デバイスやシリンジやシリンジポンプに余計な負荷を与える。よって圧力の最適化を行うことは、こういった周辺機器の耐久性を向上させる上でも重要である。
(溶液Aである先送液体による気泡の抑制)
図5に示すように高温領域に液体試料を送液した場合、液体試料の先頭部から気泡が発生する問題が生じる。これまで報告されたContinuous flow PCRは最初常温下で、バッファーをデバイスに充填し、その後PCR溶液を送液する手法が採られてきた。しかし、今後、他の機能デバイスと連結し、μTASを構築することを考えると決して有用な手法とはいえない。式(1)、式(2)から流路内圧は粘性により変化する。そこで最初に、気泡の抑制に必要な先送液体である粘性流体を送液し、次に液体試料を送液する手法を試みた。今回、粘性流体として、フッ素オイルを用いた。また、フッ素オイルの送液量は下記式(9)又は詳しくは式(7)若しくは式(8)から算出した。
Figure 0004273252
(ここで、ΔPprevent は、気泡の発生を抑制するために必要な圧力、μOil はフッ素オイルの粘度、ΔPoilはフッ素オイルを流した場合のオイル上流、下流の圧力差である。) この値を基に、送液速度1.0 mL/minで(1)フッ素オイル、(2)0.2mM Neutral red溶液の順で送液を行った(図6、赤:液体試料、青:先送液体(オイル))。図7に送液結果を示す。図7(a)は、フッ素オイルを用いて送液を行った場合であり、(b)は、フッ素オイルを用いなかった場合である。このように、フッ素オイルのような粘性オイルである先送液体を用いることで、流路内の圧力を制御し、高温化においても安定した送液が行える。
(Continuous flow PCR)
上記実施例の流路長及び粘性流体を用いた圧力制御による気泡の抑制法を用いてContinuous flow PCRを行った。
Continuous flow PCRにはKOD-plusキットを使用した。フォワードプライマーとして5'-GGATGCACT CGT TGATGTTTG-3'(配列番号1)、及び、リバースプライマーとして5'-GATGCCTTCTCCCTAGTGTTGA-3'(配列番号2)(国際公開番号WO2002-034943参照)を用い、遺伝子組み換えトウモロコシDNA(0.8 mg/mL)からMon810を標的としたDNA増幅を行った。増幅産物を回収し、3%アガロースゲルを用いて電気泳動、エチブロ染色後UV照射によりDNA増幅確認を行った。
図8に示すようにPCR溶液が、95℃、59℃の2つの温度領域を交互に通過するように、50サイクルの2ステップContinuous flow PCRデバイスの流路設計を行った。送液速度を1.0 mL/minとし、(1)フッ素オイル(100 mL)、(2)PCR溶液の順で送液を行った。また、メイン流路の流出口に流路長66 cmのサブ流路を連結することで気泡の発生を抑制した。なお送液速度を1.0 mL/minとすることで各反応時間が8秒となった。増幅産物を回収し、電気泳動を行った結果、目的のDNA増幅が確認された(図9(b))。また、サブ流路を連結しなかった場合は、図9(a)に示すようにメイン流路の出口付近に気泡が発生した。さらにフッ素オイルを初めに送液しなかった場合は、図5のようにPCR溶液の先頭部から気泡が発生し、送液を行うことができなかった。
以上により、サブ流路長の連結、先送液体(溶液A)による気泡の抑制方法はContinuous flow PCRのような高温反応に十分応用可能であることがわかった。また、管内の流れの式を用いて流路設計を行うことで広い速度範囲での送液が可能となり、これによりサーマルサイクル同様に個々のサンプルに合わせた反応時間の設定が可能となった。
(気泡が発生しないメイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力値の決定)
気泡が発生しないメイン流路の流出口周辺の液体試料送液の圧力値を求めた。図4に示すようなメイン流路に0.66mの長さのサブ流路が連結した流体デバイスに0.2mM Neutral red溶液を送液し、流路全域が溶液に満たされたのを確認後、ヒーターの温度を95℃まで上昇させた。そのときの送液の様子を顕微鏡で観察し、気泡が発生しない平均流速(u)を顕微鏡で確認した。その結果、気泡が発生しない平均流速(u)は、6.67×10-3 (m/sec)であった。
これにより、上記各パラメーターを、式(3)又は式(4)に代入し、気泡が発生しないメイン流路の流出口周辺の液体試料送液の圧力値を算出した。結果は、56.348 (kPa)となった。
以上により、メイン流路の流出口周辺の液体試料送液の圧力値を56.348 (kPa)以上に設定すれば、メイン流路及び該メイン流路の流出口に導入したサブ流路を有する流体デバイスのメイン流路内では、気泡が発生しないことがわかった。
本発明は、μTAS構築のための流体デバイスを用いた、高温反応についての研究を行った。その結果、気泡発生の原因は流路内の圧力が関係しており、圧力を高めることで気泡を抑制できることがわかった。抑制する原理としては流路内の流れを管内の流れの式を目安にし、サブ流路長の設計や送液速度等の各パラメーターを変化させ最適送液圧力を設定することで気泡の発生を抑制した。また、先送液体(溶液A)を用いた手法は、初期の送液手順での気泡による送液阻害を改善する手法であり、簡単で効果的な結果が得られた。
流路構造の概略図 気泡の発生の結果 各速度における気泡の発生ライン数 サブ流路を含む流路構造の概略図 直接送液した場合の気泡の発生の結果 先送液体を用いた送液方法 先送液体を用いた場合の気泡の発生の結果 サブ流路を含むContinuous flow PCRマイクロ流体デバイスの概略図 Continuous flow PCRの結果
符号の説明
1 溶液入口
2 ヒーター
3 メイン流路
4 サブ流路
5 溶液出口

Claims (6)

  1. マイクロ流体デバイスの液体試料送液方法において、該液体試料中の気泡の発生を抑制するために必要最低量の「試料溶液と混ざらないか、もしくは混ざりにくい、及び送液温度条件下では飽和蒸気圧以上の圧力を保つことができ、かつ当該条件下における温度及び/若しくは圧力の変化によって溶存気体の析出が起きない先送液体」を以下の1〜4の工程で得られた数値を以下の数式(3)、(4)、(7)又は(8)に代入して算出し、該算出した必要最低量以上の先送液体を該液体試料より先にメイン流路内に送液することを特徴とする液体試料送液方法。
    1.任意のメイン流路長を有するマイクロ流体デバイスを作製する。
    2.任意の液体試料送液速度の液体試料を該メイン流路内に流す。ここで、メイン流路内で気泡が発生する場合には、気泡が発生しなくなるまで液体試料送液速度を上げる。また、ここで、メイン流路内で気泡が発生しない場合には、気泡が発生するまで液体試料送液速度を下げる。これにより、気泡が発生しない程度の液体試料送液速度を求める。
    3.上記「2」の気泡が発生しない程度の液体試料送液速度及び上記「1」の任意のメイン流路長を下記式(3)又は式(4)に代入することにより、気泡が発生しない程度のメイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力値を求める。
    4.上記「3」の気泡が発生しない程度のメイン流路の流出口周辺の液体試料送液圧力値及び上記「1」のメイン流路長を固定値として、特定の液体試料送液速度値を、下記式(7)又は式(8)に代入することにより、該特定の液体試料送液速度における気泡発生抑制に必要な先送液体の必要最低量を算出する。
    Figure 0004273252
    Figure 0004273252
    (ここで、ΔP prevent:液体試料中の気泡発生を抑えるのに必要な圧力、L:メイン流路長、μ:液体試料粘度、dはメイン流路内の直径、dh:hydraulic diameter、λ:メイン流路の管摩擦係数、ρ:液体試料の密度、u:液体試料の平均流速を意味する。)
    Figure 0004273252
    Figure 0004273252
    (ここで、Voil液体試料中の気泡発生を抑えるのに必要最低量の先送液体量、S:メイン流路の断面積、Loilメイン流路を流れる先送液体の長さ、ΔP prevent:液体試料の気泡発生を抑えるのに必要な圧力、μ:先送液体の粘度、dはメイン流路内の直径、dh:hydraulic diameter、λ:メイン流路の管摩擦係数、ρ:先送液体の密度、u:液体試料の平均流速を意味する。)
  2. 前記液体試料はメイン流路内で異なる温度領域を通過させることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流体デバイスの液体試料送液方法。
  3. 前記液体試料はメイン流路内でポリメラーゼ連鎖反応を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロ流体デバイスの液体試料送液方法。
  4. 前記メイン流路の流出口周辺の圧力を一定以上に保つために、該メイン流路の流出口下流に連結した流路を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載のマイクロ流体デバイスの液体試料送液方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1に記載の液体試料送液方法を利用することを特徴とする化学反応方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1に記載の液体試料送液方法を使用することを特徴とする液体試料中のDNA増幅反応方法。
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