JP2023046057A - 標的配列の検出方法及び標的配列の検出装置 - Google Patents

標的配列の検出方法及び標的配列の検出装置 Download PDF

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誉士典 岡本
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Abstract

【課題】迅速かつ簡易に遺伝子における変異を検出できる核酸の検査方法、及び、該検査に使用する装置を提供する。【解決手段】標的配列の検出方法として、標的配列を含む鋳型核酸を取得する工程と、前記鋳型核酸のうち前記標的配列を含む所定の領域を増幅するプライマーセットを用いて核酸増幅反応を実施して得られる増幅産物であって、二本鎖DNAに対する結合色素が結合された増幅産物を取得する工程と、前記増幅産物の融解曲線を取得する工程と、前記融解曲線に基づいて前記標的配列を検出する工程と、を備える、方法、及び該方法に使用する装置を提供する。【選択図】なし

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年9月1日、Journal of Infection and Chemotherapy,VOLUME 27,ISSUE 9,p1336-1341,SEPTEMBER 01,2021 公益社団法人日本化学療法学会 令和3年6月12日、https://www.jiac-j.com/article/S1341-321X(21)00168-9/fulltext#relatedArticles 令和3年7月3日、https://www.pharm-tokai67.jp/、https://www.pharm-tokai67.online/ 令和3年7月3日、https://www.pharm-tokai67.jp/、https://www.pharm-tokai67.jp/doc/abstracts.pdf 令和3年9月1日、https://www.senkyo.co.jp/eiseiforum2021/、https://www.senkyo.co.jp/eiseiforum2021/data/abstract.pdf 令和3年9月10日、 https://www.senkyo.co.jp/eiseiforum2021/
特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年3月5日、https://confit.atlas.jp/guide/event/pharm141/top?lang=ja、https://confit.atlas.jp/guide/event/pharm141/advanced、https://confit.atlas.jp/guide/event/pharm141/subject/27V10-pm-14/advanced、https://confit.atlas.jp/guide/event/pharm141/proceedings/list 令和3年3月27日、https://confit.atlas.jp/guide/event/pharm141/top?lang=ja 令和3年3月5日、https://www.47news.jp/news/new_type_pneumonia/5931476.html
特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年3月8日、株式会社TBSテレビ あさチャン 令和3年3月8日、株式会社CBCテレビ チャント! 令和3年3月11日、日本テレビ放送網株式会社 NEWS EVERY 令和3年3月15日、株式会社テレビ東京 ワールドビジネスサテライト 令和3年3月17日、名古屋テレビ放送株式会社 アップ! 令和3年3月18日、日本放送協会 まるっと! 令和3年3月22日、株式会社TBSラジオ 森本毅郎 スタンバイ! 令和3年4月6日、日本放送協会 ニュースウォッチ9 令和3年5月5日、中日新聞 令和3年5月5日付け朝刊、第1面 令和3年5月6日、https://www.meijo-u.ac.jp/news/asset/034efc0aedda429c9db33a6ccf31fd1c.pdf
特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年5月12日、学校法人名城大学八事キャンパス八事新1号館6階大会議室(愛知県名古屋市天白区八事山150) 令和3年5月12日、株式会社CBCテレビ チャント! 令和3年5月12日、日本放送協会 まるっと! 令和3年5月12日、日本放送協会 ニュース845東海 令和3年5月12日、日本放送協会 ニュースウォッチ9 令和3年5月12日、https://www.jiji.com/jc/article?k=2021051201302&g=soc 令和3年5月13日、東京新聞 令和3年5月13日付け夕刊、第6面 令和3年5月13日、日本テレビ放送網株式会社 ZIP! 令和3年5月13日、https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00598105?gnr_footer=0059058 令和3年5月13日、https://www.chemicaldaily.co.jp/%E5%90%8D%E5%9F%8E%E5%A4%A7%E3%80%81%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E5%A4%89%E7%95%B0%E7%A8%AE%E3%81%AE%EF%BD%84%EF%BD%8E%EF%BD%81%E3%81%AB%E8%9B%8D%E5%85%89%E8%89%B2%E7%B4%A0%E3%80%81%E7%B4%84%EF%BC%99/
特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年5月20日、読売新聞 令和3年5月20日付け朝刊、第24面(中部版) 令和3年5月26日、日経産業新聞 令和3年5月26日付け朝刊、第15面 令和3年5月31日、朝日新聞 令和3年5月31日付け朝刊、第27面 令和3年6月26日、日本放送協会 NHKワールドJAPAN The Signs 令和3年6月30日、https://www.meijo-u.ac.jp/news/asset/06aef1dd6bfd8cada29285766ff1125c.pdf 令和3年7月1日、中日新聞 令和3年7月1日付け朝刊、第1面 令和3年7月4日、産経新聞 令和3年7月4日付け朝刊
特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年9月22日、https://www.meijo-u.ac.jp/news/detail_26546.html 令和3年5月10日、https://www.meijo-u.ac.jp/news/detail_24824.html 令和3年5月13日、https://www.meijo-u.ac.jp/news/detail_24843.html、https://www.meijo-u.ac.jp/sp/meijoresearch/feature/covid19.html、https://www.meijo-u.ac.jp/news/asset/034efc0aedda429c9db33a6ccf31fd1c.pdf、https://www.meijo-u.ac.jp/news/detail_24824.html 令和2年9月28日、https://www.meijo-u.ac.jp/news/detail_23801.html 令和3年2月22日、https://www.meijo-u.ac.jp/sp/meijoresearch/feature/covid19.html
特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年5月5日、https://www.chunichi.co.jp/article/248343 令和3年5月13日、https://www.tokyo-np.co.jp/article/103929 令和3年5月13日、日刊工業新聞 令和3年5月13日付け紙面 令和3年5月13日、化学工業日報 令和3年5月13日付け紙面 令和3年5月31日、https://www.asahi.com/articles/DA3S14922231.html?iref=pc_ss_date_article、https://www.asahi.com/articles/photo/AS20210531000242.html 令和3年7月1日、https://www.chunichi.co.jp/article/282446
本明細書は、標的配列の検出方法及び標的配列の検出装置に関する。
ウイルスは、変異を繰り返し行って、生存環境への適応性を向上させることで自己の生存を図っている。ウイルスの変異によって、宿主の免疫系に対する耐性、宿主細胞との相互作用に変化が生じることで、感染対象の生物種、細胞の種類の変化や感染能力などの感染性、重篤度及びワクチン効果が変化する。したがって、ウイルスの変異を迅速に特定し、遺伝的多様性を把握したり、変異株の伝搬状況を把握するなど、することは、感染症対策において重要である。また、ウイルスに限らず、生物において遺伝子の変異を検出することは、種々の産業や医療において有用である。
かかる変異を検出するには、サンガー法等によるゲノムシーケンス、PCR-RFLP、TaqManプローブ法、高解像度融解曲線分析(High Resolution Melting Analysis、HRM)などが挙げられる。
特開2021-90404号公報
しかしながら、ゲノムシーケンス、PCR-RFLPは、感染症などのサーベイランスにおいてコスト等が問題となる。また、TaqManプローブ法は、汎用されているPCR法にて実施できるが、プローブが高価であるほか、プローブデザインが容易でなく迅速に変異に対応することも困難であった。
また、HRM法は、PCR産物を高解像度で融解して融解曲線のプロファイルの相違により変異等を検出する。しかしながら、ウイルスにおいて変異が集中する領域などにおいて適切なプライマーを設定することは困難であった。
したがって、これまでのところ、ウイルスについて特定の変異が判明しても、かかる変異の検出を、PCR法で行うには、時間とコストがかかっていた。
本明細書は、迅速かつ簡易に遺伝子における変異を検出できる核酸の検査方法及びかかる検査のための装置を提供する。
本発明者らは、融解曲線に着目した。そして、融解曲線によれば、類似する変異を簡易・迅速でかつ高精度に判別できることがわかった。また、融解曲線によれば、複数の変異についても迅速な検出が可能であることがわかった。本明細書は、これらの知見に基づき、以下の手段を提供する。
[1]標的配列の検出方法であって、
標的配列を含む鋳型核酸を取得する工程と、
前記鋳型核酸のうち前記標的配列を含む所定の領域をプライマーセットを用いて核酸増幅反応を実施して得られる増幅産物であって、二本鎖DNAに対する結合色素が結合された増幅産物を取得する工程と、
前記増幅産物の融解曲線を取得する工程と、
前記融解曲線に基づいて前記標的配列の存否を検出する工程と、
を備える、方法。
[2]前記鋳型核酸を、生体由来試料中の核酸に対する核酸増幅反応を行い、その増幅産物として取得する、[1]に記載の方法。
[3] さらに、
前記標的配列の対照である対照標的配列を含む以外は前記鋳型核酸と同一である対照鋳型核酸を取得する工程を、備え、
前記増幅産物の取得工程は、前記鋳型核酸に対して1種又は2種以上の比率で前記対照鋳型核酸を含む混合物につき、前記プライマーセット及び前記結合色素の存在下で核酸増幅反応を実施して、前記増幅産物及び前記対照鋳型核酸由来の増幅産物を含む混合物を取得する工程であり、
前記融解曲線の取得工程は、前記混合物につき融解曲線を取得する工程であり、
前記検出工程は、前記混合物の融解曲線に基づき前記標的配列を検出する工程である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記標的配列は、ウイルス核酸における変異である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記標的配列は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株における変異であり、
前記増幅産物を取得するのにあたり、以下の(a)~(g)の塩基配列対からなる群から選択される少なくとも一つで特定されるプライマーセットを用いる、[4]に記載の方法。
(a)配列番号2と配列番号3
(b)配列番号4と配列番号5
(c)配列番号6と配列番号7
(d)配列番号8と配列番号9
(e)配列番号10と配列番号11
(f)配列番号12と配列番号13
(g)配列番号14と配列番号15
[6]選択された前記(a)~(h)の塩基配列対からなる群から選択される少なくとも一つで特定されるプライマーセットに対して、それぞれ、以下の(h)~(n)の塩基配列対からなる群から選択される少なくとも一つで特定されるプライマーセットを用いて核酸増幅反応により前記鋳型核酸を取得する、[5]に記載の方法。
(h)配列番号16と配列番号17
(i)配列番号18と配列番号19
(j)配列番号20と配列番号21
(k)配列番号22と配列番号23
(l)配列番号24と配列番号25
(m)配列番号26と配列番号27
(n)配列番号28と配列番号29
[7]ウイルス変異株の変異の識別方法であって、
前記ウイルス変異株の2種以上の変異を含む2種以上の鋳型核酸を取得する工程と、
前記2種以上の鋳型核酸に対して、2種以上の第1のプライマーセットと二本鎖DNAに対する結合色素との存在下で、第1の反応条件で核酸増幅反応を実施して、前記結合色素が結合された、前記2種以上の変異を含む2種以上の増幅産物を取得する工程と、
前記2種以上の増幅産物を第1の温度から第2の温度まで加熱して2種以上の融解曲線を取得する工程と、
前記2種以上の融解曲線に基づいて前記2種以上の変異を検出する工程と、
を備え、
前記核酸増幅反応を、前記2種以上の各鋳型核酸について固有の2種以上の反応場において前記第1の反応条件で施して前記2種以上の増幅産物を取得して、前記2種以上の反応場内の前記2種以上の増幅産物を前記第1の温度から第2の温度まで加熱して前記2種以上の融解曲線を取得する、方法。
[8]前記変異は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株における変異であり、
前記第1のプライマーセットは、以下の(a)~(g)の塩基配列対からなる群から選択される少なくとも一つで特定されるプライマーセットである、[7]に記載の識別方法。
(a)配列番号2と配列番号3
(b)配列番号4と配列番号5
(c)配列番号6と配列番号7
(d)配列番号8と配列番号9
(e)配列番号10と配列番号11
(f)配列番号12と配列番号13
(g)配列番号14と配列番号15
[9]前記第1のプライマーセットは、少なくとも、前記(b)~前記(e)の塩基配列対で特定されるプライマーセットである、[8]に記載の色別方法。
[10]生体由来試料中の核酸に対して、2種以上の第2のプライマーセットの存在下で、第2の反応条件で核酸増幅反応を実施して、前記1種又は2種以上の鋳型核酸を取得する、[8]又は[9]に記載の識別方法。
[11]前記変異は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株における変異であり、
前記第1のプライマーセットは、以下の(a)~(g)の塩基配列対からなる群から選択される少なくとも一つで特定されるプライマーセットであり、
前記第2のプライマーセットは、前記(a)~(g)の塩基配列で特定される前記第1のプライマーセットに対して、それぞれ以下の(h)~(n)の塩基配列対で特定されるプライマーセットである、[10]に記載の識別方法。
(h)配列番号16と配列番号17
(i)配列番号18と配列番号19
(j)配列番号20と配列番号21
(k)配列番号22と配列番号23
(l)配列番号24と配列番号25
(m)配列番号26と配列番号27
(n)配列番号28と配列番号29
[12]ウイルス変異株の変異を識別するためのキットであって、
前記ウイルス変異株は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株であり、
以下の(a)~(g)の塩基配列対からなる群から選択される少なくとも一つで特定されるプライマーセットを備える、キット。
(a)配列番号2と配列番号3
(b)配列番号4と配列番号5
(c)配列番号6と配列番号7
(d)配列番号8と配列番号9
(e)配列番号10と配列番号11
(f)配列番号12と配列番号13
(g)配列番号14と配列番号15
[13]標的配列の検出装置であって、
複数の反応場を準備可能なサンプル搭載モジュールと、
前記サンプル搭載モジュール上の前記複数の反応場に対して1種又は2種以上の液体を供給する及び/又は前記複数の反応場から液体を排出する液体給排モジュールと、
前記複数の反応場内の液体を温度調節可能な第1及び第2の温度調節モジュールと、
前記複数の反応場内に光照射可能な光源モジュールと、
前記複数の反応場内の蛍光を検出する蛍光検出モジュールと、
少なくとも一つの制御部と、
を備え、
前記少なくとも一つの制御部は、
前記液体給排モジュールを作動させて、前記複数の反応場に、少なくとも、前記標的配列を含む鋳型核酸の所定の領域を増幅する第1のプライマーセットを添加して核酸増幅用反応液を調製し、前記第1の温度調節モジュールを作動させて前記複数の反応場において第1の反応条件で核酸増幅反応を実施して複数の増幅産物であって二本鎖DNAに対する結合色素が結合された増幅産物を取得し、前記第2の温度調節モジュール、前記光源モジュール及び前記蛍光検出モジュールを作動させて、前記複数のサンプルウエル内の前記複数の増幅産物についての複数の前記融解曲線を取得し、前記複数の融解曲線に基づいて前記標的配列を検出するプロセスを実行する、装置。
[14]前記少なくとも一つの制御部は、
さらに、
前記液体給排モジュールを作動させて、前記複数の反応場内の生体由来試料中の核酸を前記核酸増幅用反応液において所定濃度になるように希釈するプロセスを実行する、[13]に記載の装置。
[15]前記少なくとも一つの制御部は、
さらに、前記液体給排モジュールを作動させて、前記サンプル搭載モジュール上の前記複数の反応場に、少なくとも前記鋳型核酸を核酸増幅反応により取得するためのプライマーセットを添加して、鋳型核酸増幅用の反応液を調製し、前記第1の温度調節モジュールを作動させて前記複数の反応場において核酸増幅反応を実施して増幅産物として前記鋳型核酸を取得するプロセスを実行する、[13]又は[14]に記載の装置。
[16]標的配列を検出するためのシステムであって、
複数の反応場を準備可能なサンプル搭載モジュールと、
前記サンプル搭載モジュール上の前記複数の反応場に対して1種又は2種以上の液体をを供給する及び/又は前記複数の反応場から液体を排出する液体給排モジュールと、
前記複数の反応場を同時に温度調節可能な第1及び第2の温度調節モジュールと、
前記複数の反応場内に光照射可能な光源モジュールと、
前記複数の反応場内の蛍光を検出する蛍光検出モジュールと、
少なくとも一つの制御部と、
を備え、
前記少なくとも一つの制御部は、
前記液体給排モジュールを作動させて、前記複数の反応場に、少なくとも、前記標的配列を含む鋳型核酸の所定の領域を増幅するプライマーセットを添加して核酸増幅用反応液を調製し、前記第1の温度調節モジュールを作動させて前記複数の反応場において核酸増幅反応を実施して複数の増幅産物であって二本鎖DNAに対する結合色素が結合された増幅産物を取得し、前記第2の温度調節モジュール、前記光源モジュール及び前記蛍光検出モジュールを作動させて、前記複数の反応場内の前記複数の増幅産物についての複数の融解曲線を取得し、前記複数の融解曲線に基づいて前記標的配列を検出するプロセスを実行する、システム。
標的配列の検出方法のフローの一例を示す図である。 SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のcDNA及び変異部位を示す図である。 SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のcDNA及び変異部位を示す他の図である。 SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のcDNA及び変異部位を示す他の図である。 標的配列の検出装置のブロック図の一例を示す図である。 検出装置を用いた標的配列の検出プロセスのフローの一例を示す図である。 実施例1で取得したHRM分析による融解曲線を示す図である。
本明細書は、標的配列の検出方法、ウイルス変異株の識別方法及びキット、標的配列の検出装置及び標的配列の検出システム等に関する。本明細書に開示される標的配列の検出方法(以下、本方法ともいう。)によれば、鋳型核酸のうち標的配列を含む所定の領域をプライマーセットで増幅して、二本鎖DNAに対する結合色素が結合した増幅産物を取得し、この増幅産物の融解曲線を取得し、融解曲線に基づいて標的配列を検出する。このため、鋳型核酸に対してプライマーと結合色素を用いた核酸増幅反応とその後の、融解曲線の取得という、より迅速かつ簡易なステップで、容易に標的配列の有無などを検出することができる。また、本方法によれば、標的配列に対するプローブを用いることがないため、プローブ設計及び試作検証に要するコストと時間とが不要になる。このため、ウイルス感染症などの変異を大量にかつ迅速に検出できるようになる。また、感染拡大の早期段階や、変異発生から間もない段階でもこうした変異を検出できるようになる。
本検出方法においては、増幅産物の長さを、例えば、60bp以上150bp以下となるようにプライマーセットを設計することで、標的配列の検出を迅速かつ精度よく実現可能である。
また、例えば、130bp以上300bp以下の鋳型核酸を核酸増幅反応にて取得し、さらに、この鋳型核酸における所定の領域をプライマーセットで増幅して増幅産物を取得するという2段階の核酸増幅反応(Nested PCR)を行うことで、標的配列の検出感度を高めることができる。
本検出方法は、短いリードタイムでかつ短い検査時間で検出が必要なウイルス感染症の原因ウイルスの変異を検出するのに有用である。
また、本明細書に開示されるウイルス変異株の識別方法及びキットも、変異株の識別を迅速かつ容易に行うことができるとともに、高い精度で変異株を識別できる。また、本明細書に開示される標的配列の検出装置及びシステムは、いずれも、標的配列の検出を本検出方法と同様に迅速かつ容易に行うことができるとともに、高い精度で標的配列を検出できる。
本明細書に開示される技術は、医療分野、衛生分野、環境分野、農業分野、工業分野、研究分野など、遺伝子や生物が関連する技術分野において有用である。
以下、本明細書に開示される標的配列の検出方法等について詳細に説明する。
なお、本明細書において、被験試料とは、特に限定されない。被験試料は、検出対象とする標的配列が含有される可能性のある試料であればよい。例えば、天然ないし生体から採取したままの試料のほか、こうした試料を粗精製ないし精製した試料、こうした試料につき、試料中のDNAないしRNAを抽出した試料及びこうした試料中のDNA又はRNAを、公知の核酸増幅方法等によりその含有量を増大させたり逆転写させたりした試料であってもよい。
被験試料は、例えば、ヒト、家畜などの各種動物から人為的に採取され又は自然に分離された、血液、尿、唾液などの各種の生体由来の液性試料、細胞試料及び組織試料並びにこれらについて核酸の抽出・増幅・逆転写等された加工試料が含まれる。また、被験試料には、植物又はウイルスを含むその他の生物から人為的に採取された又は自然に分離された種々の部分又は形態の各種試料が含まれる。また、被験試料には、標的核酸を含む可能性のある食品や飲料、加工品、物品などが含まれる。
また、本明細書において、核酸とは、生物(ウイルスを含む。以下、同じ。)が保持するDNA及びRNAである天然核酸のほか、人工的に合成された核酸であってもよい。核酸は、少なくともその一部に本明細書に開示されるプライマーと水素結合を形成する塩基を備えている。DNAとしては、特に限定されないで、生物が保持しうる天然由来のDNAのほか、生物に対して人工的に導入されたDNAであってもよい。例えば、ゲノムDNAのほかプラスミドなどのベクター上におけるDNAが含まれる。また、RNAとしては、特に限定されないで、生物が保持しうる天然由来のRNAのほか、外部から生物に導入されたRNAであってもよい。RNAは、例えば、mRNA、tRNA、rRNA、siRNAやmiRNAなどのncRNA、リボザイム及び二本鎖RNA等が含まれる。
標的配列としては、例えば、その生物における特定の遺伝子に関連する配列、その生物個体を特徴付ける遺伝子に関連する変異及びその他の配列、その動物や植物における疾患や病原体や変異株を特徴付ける配列、当該配列上の変異、その他の特徴を有する配列等が挙げられる。より具体的には、一塩基多型(SNP)などの一塩基変異(置換変異等)、欠失、挿入変異等が挙げられる。標的配列とは、対比されるべき対照の塩基配列と相違する塩基配列のみを意味する。したがって、例えば、標的配列が一つの一塩基置換のみからなるとき、標的配列は一塩基でありうる。また例えば、標的配列が、二つ以上の一塩基置を含むとき、標的配列は一塩基置換で両端が規定される一続きの塩基配列(2mer~30mer程度)でありうる。
検査対象となる生物体としては、例えば、感染症などの疾患の病原体や、遺伝子変異の判定が必要な感染症などの疾患の病原体が挙げられる。かかる病原体としては、例えば、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、アデノウィルス、腸管出血性大腸菌、赤痢菌、サルモネラ属菌、カンピロバクタージェジュニ及びコリ、及び腸炎ビブリオ、ヒトパルボウイルス、B型およびC型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなど等が挙げられる。
(標的配列の検出方法)
本明細書に開示される検出方法は、標的配列を含む鋳型核酸を取得する工程と、前記鋳型核酸のうち前記標的配列を含む所定の領域を増幅するプライマーセットを用いて核酸増幅反応を実施して、DNA二本鎖に対する結合色素が結合された増幅産物を取得する工程と、前記増幅産物の融解曲線を取得する工程と、前記融解曲線に基づいて前記標的配列を検出する工程と、を備えている。本検出方法に対応するフローの一例を図1に示す。
<標的配列を含む鋳型核酸を取得する工程>
本検出方法は、図1に示すように、鋳型核酸を取得する工程を備えている。この鋳型核酸は、後段で融解曲線を取得するための増幅産物の鋳型となる核酸である。鋳型核酸は、例えば、生体から分離又は採取された試料に含まれるDNA又はRNAであってもよい。また例えば、鋳型核酸は、生体から採取分離された試料中に存在している状態の核酸として取得する場合もある。
例えば、試料が唾液であり、RNAウイルスのRNAの一部が標的配列である場合、この試料をそのまま鋳型核酸として用いることもできる。なお、RNAaseなどを常法にて除去しておくことが好ましい。また、生体由来試料中の核酸をそのまま鋳型核酸として用いる場合には、適宜、DNA分解酵素(DNAase)やウイルスなども、常法に従い予め失活又は除去しておくことが好ましい。さらに、必要に応じて、後段の核酸増幅反応の障害となりうるタンパク質などの夾雑物を除去する工程を常法に従い行ってもよい。
生体由来試料中に鋳型核酸となりうる核酸の含有量が少ない場合もある。例えば、1mlあたり、鋳型核酸が107コピー未満のときなどである。かかる場合には、このような核酸を鋳型核酸として用いて核酸増幅反応を行っても、一定のサイクルで十分量の増幅産物が得られず融解曲線分析の精度を低下させるおそれがある。また、増幅産物量の変動は、融解曲線分析の精度を低下させるおそれがある。こうした場合には、被験試料中の核酸を核酸増幅反応により増幅し、その増幅産物を鋳型核酸として取得することができる。この場合の核酸増幅反応は、標的配列がDNAである場合には、通常のPCRによりDNA二本鎖を取得し、標的配列がRNAである場合には、逆転写(REVERESE TRANSCRIPTION、RT)PCRによりDNA二本鎖として鋳型核酸を取得することが好適である。なお、RT-PCRは、逆転写反応と通常のPCRと2段階で行うTWOSTEP RT-PCRでもよいし、これらを一段階で行うONESTEP RT-PCRであってもよい。核酸増幅反応により試料中の核酸を増幅する場合には、生体試料中の核酸は、RNA一本鎖であっても最終的に二本鎖DNAとなる。
鋳型核酸の長さは、特に限定するものではないが、例えば、130bp以上300bp以下の長さのDNA二本鎖、また例えば、140bp以上300bp以下のDNA二本鎖とすることができる。かかる長さであると、増幅産物を行う場合におけるPCR効率や真性増幅産物を確実に得られるからである。鋳型核酸となる領域は、後述する増幅産物の範囲としての好適な60bp以上150bp以下の領域を決定した後、当該領域を含めるように、かつ130bp以上300bpとなるように特異的プライマーセットをデザインすることで決定することができる。
鋳型核酸を核酸増幅反応で取得する場合の操作及び条件等は、当業者に周知であるほか、当業者であれば、商業的に入手可能なPCR試薬のプロトコールに従って適切に実施することができる。
<結合色素が結合した増幅産物を取得する工程>
本検出方法は、次に、鋳型核酸のうち標的配列を含む所定の領域を増幅するプライマーセットを用いて核酸増幅反応によって得られる増幅産物であって、二本鎖DNAに対する結合色素が結合された増幅産物を取得する工程を備えることができる。この工程では、被験試料の鋳型核酸から、融解曲線を取得するための増幅産物(以下、被験増幅産物ともいう。)を取得する。
本工程は、例えば、先の工程で、睡液などの生体試料を鋳型核酸として取得して、DNAase及びRNAaseなどの核酸増幅反応に影響を及ぼす生体由来酵素を失活又は除去したり、病原体を不活性化した後に実施することができる。
増幅産物を取得する工程は、いわゆるPCRを用いることができる。PCRとしては、従来公知のPCR法を用いることができる。
(プライマーセット)
プライマーセットは、取得した被験増幅産物の融解曲線(以下、被験融解曲線ともいう。)から、標的配列の有無を検出できるように設計されている。標的配列の有無を検出するとは、例えば、標的配列が、ウイルス変異株の変異であるとき、標的配列である変異を、野生型ないし他の変異株の前記変異の対応配列(変異を含まない同種配列)と区別することをいう。標的配列の検出は、変異を含む増幅産物の融解曲線と、変異を含まない同種配列を含む増幅産物の融解曲線ととを区別することによって実現できる。融解曲線又は融解曲線分析については後段で説明する。
プライマーセットは、増幅産物が60bp以上150bp以下となるようにデザインされる。増幅産物の長さは、また例えば、70bp以上150bp以下である。また、プライマーセットにおける各プライマーの長さは、特に限定するものではないが、例えば、10mer以上30mer以下であり、また例えば、14mer以上28mer以下であり、また例えば、16mer以上28mer以下である。
また、意図する増幅産物の長さにもよるが、増幅産物が、例えば、80mer以上のとき、プライマーの長さにもよるが、フォワードプライマーの3’末端から、3’末端側に、例えば、1以上30以下のヌクレオチドの範囲に標的配列を有していてもよいし、また例えば、1以上25以下、また例えば、1以上20以下のヌクレオチド以内に標的配列を有していてもよい。また、リバースプライマーの5’末端から、5’末端側に、例えば、1以上30以下のヌクレオチドの範囲に標的配列を有していてもよいし、また例えば、1以上25以下、また例えば、1以上20以下のヌクレオチドの範囲内に標的配列を有していてもよい。増幅産物の5’末端側又は3’末端側に標的配列を備えることで、融解曲線の相違が大きくなる場合がある。
また、後段でも説明するが、増幅産物の融解温度(Tm)は、例えば、70℃以上80℃以下に設定するようにプライマーセットを設計することができる。
(結合色素)
結合色素は、DNA二本鎖の塩基対間に挿入される化合物であって、励起光の照射により蛍光を発する化合物であればよい。このように用いられる結合色素は、リアルタイムPCRにおいて周知である。例えば、SYBRGreen(登録商標)、EVAGreen(登録商標)及びSYTO9(登録商標)などを用いることができる。
例えば、新型コロナウイルスと称される、SARS-CoV-2の変異株における変異の識別にあたっては、標的部位に応じた所定のプライマーセットを、増幅産物を取得するのに用いることができる。以下に、本検出方法における標的配列としての変異(アミノ酸変異で示す)及び当該変異を検出するための増幅産物を得るためのプライマーセットを示す。
標的配列としては、例えば、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の以下の標的部位における変異、例えば、H69/V70におけるアミノ酸欠失変異、K417におけるK417N及びK417Tのアミノ酸置換変異、L452におけるL452Rなどのアミノ酸置換変異、T478におけるT478K、及びE484におけるE484Q及びE484Kなどのアミノ酸置換変異、N501におけるN501Yなどのアミノ酸置換変異、D614におけるD614Gなどのアミノ酸置換変異及びP681におけるP681Hなどのアミノ酸置換変異などが挙げられる。
これらの変異態様における野生型及び変異型の塩基配列を以下の表に示す。なお、以下の表におけるアミノ酸位置は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質(NCBI Reference Sequence YP_009724390.1)のアミノ酸配列上の位置であり、塩基位置は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のゲノム配列(NCBI Reference Sequence:NC_045512.2の21563-25384)における位置である。
また、図2において、変異箇所をSARS-CoV-2の(NC_045512.2)のスパイクタンパク質をコードするDNAの塩基配列(配列番号1)において明示するとともに、フォワードプライマー及びリバースプライマーも併せて示す。
Figure 2023046057000001
また、これらの標的配列を検出するための増幅産物を得るためのプライマーセットを以下に示す。これらのプライマーセットは、図2においても明示されている。
Figure 2023046057000002
また、SARS-CoV-2の上記各変異部位における変異を検出するのにあたって、SARS-CoV-2のRNAから鋳型核酸を取得するには、それぞれ以下のプライマーセットを逆転写後のPCR増幅たのために好ましく用いることができる。
Figure 2023046057000003
結合色素が結合した増幅産物を核酸増幅反応で取得する場合の操作及び条件等は、当業者に周知である。例えば、当業者であれば、商業的に入手可能なPCR試薬や、リアルタイム-PCR試薬のプロトコールに従って適切に実施することができる。なお、こうした試薬は、融解分析用の試薬として商業的に入手可能であり、本工程は、後段の融解曲線を取得する融解分析を含む一連の工程の一部として実施することもできる。また、結合色素が結合した増幅産物は、結合色素の不存在下でPCRを行って増幅核酸を取得し、その後、結合色素を添加して二本鎖DNA内に挿入するように熱処理を行うことで取得してもよい。
(基準鋳型核酸及び対照鋳型核酸)
標的配列を検出するのにあたり、標的配列を含む鋳型核酸を基準鋳型核酸として取得することができる。基準鋳型核酸は、いわゆるポジティブコントロールである。かかる基準鋳型核酸は、増幅産物を取得するプライマーセットを設計するのにあたり、通常作製される。基準鋳型核酸について融解曲線を、鋳型核酸と同一条件で取得しておくことにより、標的配列の存否判定に用いることができる。
また、標的配列を検出するのにあたり、標的配列を含まない陰性対照である対照配列を含む以外は、鋳型核酸と同一である対照鋳型核酸を取得することができる。対照鋳型核酸は、いわゆるネガティブコントロールである。対照配列は、例えば、標的配列がウイルス変異株の変異である場合には、標的配列に対応する変異していない野生型又は従来型の塩基配列である。かかる対照配列を含む対照鋳型核酸を取得して、対照鋳型核酸について融解曲線を、鋳型核酸と同一条件で取得しておくことにより、標的配列の存否判定の精度を高めることができる。
標的配列を検出するのにあたって、標的配列によっては、基準鋳型核酸と対照鋳型核酸に由来する増幅産物の融解曲線の相違が小さい場合などもある。この場合には、被験鋳型核酸が、標的配列を含むか否かの判定精度が低下するおそれがある。このような場合には、被験鋳型核酸に対して1種又は2種以上の比率で対照鋳型核酸を配合した鋳型核酸混合物を、被験鋳型核酸に替えて用い、この混合物について所定のプライマーセットを用いて、最終的に結合色素が結合した増幅産物の混合物を取得するようにする。この混合物には、被験鋳型核酸に基づく増幅産物と、対照鋳型核酸に基づく増幅産物とが含まれている。
次いで、この増幅産物混合物につき、解曲線を取得する。この混合物についての融解曲線によれば、被験鋳型核酸が標的配列を含むか否か、すなわち、基準鋳型核酸に一致するかどうか、あるいは、対照鋳型核酸に一致するかどうかの判定が容易になる。
これは基準鋳型核酸に由来する増幅産物と対照鋳型核酸に由来する増幅産物とのそれぞれの融解曲線が一見して類似していたとしても、基準鋳型核酸に対して所定の比率で対照鋳型を加えた混合物の増幅産物の融解曲線が、基準鋳型核酸のみに由来する増幅産物の融解曲線とは、大きな相違を呈しうるという知見に基づいている。
このため、基準鋳型核酸と対照鋳型核酸に由来する融解曲線が近似する場合には、上記のとおり、被験鋳型核酸に替えて、被験鋳型核酸と1種又は2種以上の比率で対照鋳型核酸を添加した混合物を被験鋳型核酸に替えて用いることが好適である。この場合、基準鋳型核酸にも同率で対照鋳型核酸を添加した混合物を基準鋳型核酸に変えて用いることとすることが好適である。このような代替される基準鋳型核酸の増幅産物の融解曲線も予め取得しておくことが好適である。
なお、被験鋳型核酸又は基準鋳型核酸に対する対照鋳型核酸の添加量は、特に限定しないが、例えば、被験鋳型核酸又は基準鋳型核酸を100質量%としたとき、10質量%以上60質量%以下の範囲などとすることができる。比率は、特定の1種のみでも異なる2種以上であってもよい。通常、一定の比率で添加すると、対照鋳型核酸由来の融解曲線とは明確に異なる融解曲線が得られるようになる。
こうした基準鋳型核酸及び対照鋳型核酸の取得及び融解曲線の取得は、被験試料についての標的配列の検出方法の実施毎に実施してもよいし、後述する、標的配列の検出装置のメモリに格納されていてもよいし、あるいは、ネットワークを介した備えられるデータサーバーにデータベースとして格納されていてもよい。
<増幅産物の融解曲線を取得する工程>
本工程では、先の工程で取得した被験増幅産物等につき融解曲線を取得する。ここで、融解曲線又は融解曲線分析とは、DNA二本鎖を融解させるのに必要な温度範囲の温度勾配を付与して、DNA二本鎖の融解に伴うシグナル強度の変化から、DNA二本鎖の融解温度(Tm)を測定したり、融解曲線の形状やピーク(シグナル強度の変曲点)などの変化からSNP、ヘテロ接合体とホモ接合体、メチル化パターンなどを解析できる技術である。かかる技術は、本明細書に開示される技術分野に属する当業者には周知である。
融解曲線分析は、任意の(温度)分解能で行うことができる。例えば、約0.1℃/秒~約1℃/秒の範囲内の速度で連続的に増加させることができる。また例えば、約0.01℃/秒~約0.1℃/秒の範囲内の速度で、また例えば、約1℃/秒~約3℃/秒の範囲内の速度であってもよい。融解曲線分析は、例えば、75℃以上95℃以下、70℃以上90℃以下、また例えば72℃以上82℃以下、また例えば70℃以上80℃以下などの範囲で、概ね、例えば、5℃以上20℃以下、また例えば、10℃以上15℃以下の範囲で温度を増加させることで取得することができる。融解分析は、チャンバー内で行うこともできるし、連続なフローの一部として、例えば、マイクロデバイス等におけるチャネル内において行うこともできる。
融解曲線を取得するためのデータは、例えば、核酸の温度を選択された期間上昇させた際に検出される特性を測定することによって生成される。一般的なDNA二本鎖インターカレーターである結合色素は、DNA二本鎖に挿入時において、励起光の照射により蛍光を呈示し、DNA二本鎖の変性に伴ってシグナル強度が低下する。したがって、本検出方法においては、温度変化を伴う一定時間における、DNA二本鎖の変性(融解)の指標となるシグナルの低下を測定する。融解分析によって取得されたデータから、当該分野において周知である技術によって、融解曲線を取得することができる。例えば、シグナル強度を取得する際の時間分解能としては、1秒間に例えば、10~30回、また例えば、100~300回、1000~3000回程度とすることができる。一般にこうした程度の時間分解能でのシグナル強度の検出による融解曲線は、高解像度融解曲線と称されている。高解像度融解曲線を得るためには、例えば、1塩基毎に結合する結合色素(例えば、SYTO9系などの蛍光色素)を好ましく用いることができる。なお、本明細書において、融解曲線は、昇温初期のシグナル強度で規格化した融解曲線の形態のほか、温度変化とシグナル強度の変化量とに基づく変化融解ピークの形態などのいわゆる温度変化曲線の形態として呈示されるものが、ディスプレイなどの媒体において呈示されるのに好適な形態であるが、本明細書における融解曲線はこれに限定するものではなく融解曲線解析で取得した温度変化とシグナル変化の時系列データの集合を意味する。
融解曲線解析は、当業者であれば、例えば、商業的に入手可能な当該解析が可能な装置を用いて、製造者等によるプロトコールに従い適宜実施することができる。典型的には、先の工程で取得した結合色素が結合した増幅産物を、増幅産物を取得したチューブやウエル内において、融解分析における温度範囲よりも低い温度に予熱しておき、その後、予定された温度制御を行い、励起光を照射して、蛍光を測定する。
既述の基準鋳型核酸及び/又は対照鋳型核酸について、融解曲線を取得する場合には、被験試料と同一条件で融解曲線を取得するようにする。
<融解曲線に基づいて前記標的配列を検出する工程>
本工程では、被験増幅産物につき取得した融解曲線(以下、被験融解曲線ともいう。)に基づき、標的配列を検出する。標的配列の検出は、例えば、試料について取得した融解曲線が、予め予定されていた標的配列の基準融解曲線と一致するとき、標的配列の存在を肯定することができる。また例えば、標的配列の検出は、さらに、対照鋳型核酸について取得した対照融解曲線とに基づいて検出することもできる。既述のとおり、融解曲線は、一塩基の相違を融解曲線の形状などの相違から判別することができる。このため、例えば、試料についての被験融解曲線が対照融解曲線と一致せず、かつ、予め予定されていた基準融解曲線と一致するとき、試料中に標的配列の存在を肯定することができる。また例えば、被験試料についての被験融解曲線が対照融解曲線に一致するとき、標的配列の不存在を推定することができる。さらに例えば、被験融解曲線が、基準融解曲線にも対照融解曲線にも一致しないときには、標的配列以外に、標的配列に加えて他の変異の存在か、あるいは、標的配列は不存在であるか他の変異の存在を推定することができる。
標的配列の検出、すなわち、融解曲線の一致及び不一致は、少なくとも一つの制御部を備えるコンピュータなどによって実施されてもよい。この場合、試料の融解曲線ほか、基準融解曲線及び対照融解曲線は、いずれも、メモリ等に格納され、制御部による標的配列の検出プロセスで対比され、標的配列の存否が判定される。
以上説明したように、本方法は、標的配列の検出を、迅速かつ低コストで実施することができ、ウイルス感染症などにおける変異サーベイランスに有用である。また、本方法は、各種態様で実施することができる。SARS-CoV-2の変異株の識別方法としても実施できる。この場合、以下の(a)~(g)の塩基対からなる群から選択される1種又は2種以上の塩基対で特定されるプライマーセットを好適に用いることができる。さらに、なかでも、(b)~(e)の塩基対からなる群から選択される1種又は2種以上の塩基対で特定されるプライマーセットを好適に用いることができる。これらのプライマーセットから選択される1種又は2種以上を用いることで、変異株のスクリーニングを効率的に行うことができる。これらに加えて、(a)、(f)、及び(g)の塩基対からなる群から選択される1種又は2種以上の塩基対で特定されるプライマーセットを用いることで広範囲な変異株スクリーニングが可能になる。この識別方法においては、さらに、検出しようとする変異に対応して、鋳型核酸を取得する(h)~(n)から選択される1種又は2種以上のプライマーセットを用いることができる。
(a)配列番号2と配列番号3
(b)配列番号4と配列番号5
(c)配列番号6と配列番号7
(d)配列番号8と配列番号9
(e)配列番号10と配列番号11
(f)配列番号12と配列番号13
(g)配列番号14と配列番号15
(h)配列番号16と配列番号17
(i)配列番号18と配列番号19
(j)配列番号20と配列番号21
(k)配列番号22と配列番号23
(l)配列番号24と配列番号25
(m)配列番号26と配列番号27
(n)配列番号28と配列番号29
また、SARS-CoV-2の変異株の識別するためのキットとして、例えば、検出しようとする変異に対応する(a)~(n)のから選択される1種又は2種以上のプライマーセットを好適に用いることができる。また例えば、(b)~(e)の塩基対からなる群から選択される1種又は2種以上の塩基対で特定されるプライマーセットを備えることができ、また例えば、(a)、(f)、(g)の塩基対からなる群から選択される1種又は2種以上の塩基対で特定されるプライマーセットを備えることができる。さらに例えば、検出しようとする変異に対応して、鋳型核酸を取得する(h)~(n)の塩基対からなる群から選択される1種又は2種以上の塩基対で特定されるプライマーセットを備えることができる。
<ウイルス変異株の変異の識別方法>
標的配列の検出方法は、以下に示す、ウイルス変異株の変異の識別方法(以下、本識別方法ともいう。)としても実施できる。以下に説明する本識別方法においては、既述の本検出方法と共通する部分のついては、本検出方法における各種態様を適用することができる。
本識別方法は、ウイルス変異株の変異を含む鋳型核酸を取得する工程と、前記鋳型核酸に対して、第1のプライマーセットと二本鎖DNAに対する結合色素との存在下で、第1の反応条件で核酸増幅反応を実施して、前記結合色素が結合された、前記変異を含む2種以上の増幅産物を取得する工程と、前記増幅産物を第1の温度から第2の温度まで加熱して解曲線を取得する工程と、前記融解曲線に基づいて前記変異を検出する工程と、を備えることができる。本識別方法は、さらに、前記核酸増幅反応を前記鋳型核酸について固有の反応場において前記第1の反応条件で実施して前記増幅産物を取得して、前記反応場内の前記増幅産物を前記第1の温度から第2の温度まで加熱して前記融解曲線を取得するものである。
なお、本識別方法においては、2種以上の変異についての2種以上の鋳型核酸を取得して、2種以上の第1のプライマーセットを用いて、2種以上の増幅産物を取得して、これらの増幅産物についてそれぞれ固有の反応場において融解曲線を取得してもよい。変異は、例えば、3種以上、また例えば、4種以上、また例えば、5種以上、また例えば、6種以上であってもよい。
本識別方法によれば、ウイルス変異株の変異を、鋳型核酸に対する第1の反応条件による核酸増幅反応を個々の鋳型核酸ごとにかつ行い、得られた増幅産物に対する第1の温度から第2の温度まで加熱することにより融解曲線を取得することで、変異を一挙に検出することができる、したがって、ウイルス変異のスクリーニングやモニタリングを効率的かつ迅速に行うことができて、適切なウイルス感染症対策が可能となる。
本識別方法を実施するには、変異を含む各鋳型核酸について第1の反応条件による核酸増幅反応により変異を含む増幅産物を得ることができ、かつ、第1の温度から第2の温度の範囲において、対照となる鋳型核酸の増幅産物と識別可能な融解曲線を呈することができる特異的プライマーセットを設計することが有用である。
かかるプライマーセットの設計にあたっては、例えば、まず、ウイルス変異株の塩基配列上の変異を特定し、当該変異を含む範囲で、例えば、既述のとおり、融解曲線分析を考慮して増幅産物の全長が150bp以下であり、プライマー配列には変異が含まれないようなプライマーセットを設計する。さらに、プライマーセットは、第1の反応条件で増幅可能であるようにする。なお、核酸増幅反応は、通常、用いる酵素などによって、概して反応条件は予め決定されている。特に限定するものではないが、典型的な反応条件は、例えば、90℃前後の熱変性、60℃前後のプライミング及び70℃前後のDNA伸長反応を、30~40サイクル程度行う。核酸増幅反応の反応時間は、特に限定するものではないが、例えば、全体で1時間から1.5時間程度である。プライマーセットは、一般的なPCRプライマーの設計サイト(Primer3など)やソフトフェアを使用して設計可能である。
さらに、プライマーセットの設計にあたっては、第1の温度から第2の温度の範囲で対照となる鋳型核酸の増幅産物と変異型の増幅産物とが融解曲線分析により識別可能であるかが重要である。第1の温度から第2の温度は、2種以上の増幅産物の2種以上の融解温度を含み、かつ、固有の融解曲線を得られる範囲に設定することとができる。典型的には、既に述べた範囲の加熱範囲の開始温度が第1の温度であり、終了温度が第2の温度である。昇温速度も既に説明したとおりである。融解曲線分析に要する時間は、特に限定するものではないが、例えば、全体として、処理も含めて、10~20分程度である。
融解曲線分析による識別可能かどうかは、例えば、uMELT(www.dna-utah.org)において公開されているMelting Curve Predictions Softwareを用いて確認することができる。uMELTにより、増幅産物の融解曲線が識別可能であると判明できれば、かかるプライマーセットの塩基配列を決定することができる。
SARS-CoV-2の変異株については、第1のプライマーセットとして、既述の(a)~(g)のプライマーセットを用いることができる。なかでも、(b)~(e)のプライマーセットを用いることができる。
なお、塩基配列においてAからT(TからA)への置換は融解曲線分析による識別が難しいことが知られており、uMELTによっても融解曲線が重なる結果が得られる場合がある。その場合は、既述のスパイク法による融解曲線分析を適用する。
本識別方法においては、例えば、2種以上の各鋳型核酸に対する2種以上の第1のプライマーセットを供給して行う核酸増幅反応は、鋳型核酸及び当該鋳型核酸に用いる固有の第1のプライマーセットごとの個別の反応場で、例えば、一括して実施することができる。すなわち、個々の鋳型核酸と、鋳型核酸に固有の第1のプライマーセットと、結合色素とは、一つのウエル又はチューブ内などの一つの反応場で混合され、全ての鋳型核酸についての核酸増幅反応が一括して第1の反応条件で核酸増幅反応が実施される。したがって、2種以上のプライマーセットによって同時に使用されることによるプライマーセット間の干渉などによる増幅反応の特異性の低下の問題は回避されている。こうした核酸増幅反応は、商業的に入手できるPCR装置を用いて実施することができる。なお、ここでいう反応場とは、後述する標的配列の検出装置における、サンプル台における個々のウェルやチューブに相当している。
既述の本検出方法と同様、2種以上の鋳型核酸を取得するのにあたり、第2のプライマーセットにより、生体試料由来の核酸に対して核酸増幅反応を実施してもよい。かかる核酸増幅反応も、識別しようとする変異に応じた第2のプライマーセットを設計することができる。第2のプライマーセットは、第1のプライマーセットにより得られる増幅産物を含むよりサイズの大きな増幅産物を得られるように設計される。例えば、SARS-CoV-2の変異株については、第1のプライマーセットに対応して、既述の(h)~(n)のプライマーセットを用いることができる。
かかる鋳型核酸の取得のための核酸増幅反応も、意図する変異に応じて個々の反応場で実施することができる。こうして得られた2種以上の鋳型核酸が、新たにそれぞれ反応場に供給されて、第1のプライマーセットを用いた核酸増幅反応が実施される。
さらに、本識別方法においては、個々の反応場内に取得された増幅産物について、例えば、一括して第1の温度から第2の温度まで加熱する融解曲線分析により、個々の増幅産物につき融解曲線が取得される。こうして取得された融解曲線につき、基準融解曲線や対照融解曲線などと対比処理が実施されることで、変異が識別される。なお、個々の反応場において取得された増幅産物について融解曲線を取得することは、商業的に入手可能なリアルタイムPCR装置などにより適宜実施することができる。また、融解曲線の対比処理は、いわゆるコンピュータを用いたこの種の処理ソフトウエアにより適宜実施することができる。
以上のとおり、本識別方法においては、それぞれ単一種の増幅産物を生成する反応場を複数用意し、各反応場で別種の増幅産物を取得し、複数の反応場で取得した複数種の各増幅産物に対し、それぞれの融解曲線を個別に取得する。このため、2種以上の変異を効率的にかつ迅速に識別することができる。核酸増幅反応及び融解曲線分析は、それぞれ、概して、1~1.5時間程度及び15分~30分程度であるため、合計1時間から2時間程度で、複数の変異についての識別が可能となる。なお、鋳型核酸を得るための核酸増幅反応を行った場合でも、概ね、2時間から3時間程度で複数の変異についての識別が可能となる。個々の反応場が、例えば、24個、また例えば48個、また例えば、96個準備されている場合、複数の検体(患者)などに由来する生体試料中の核酸について、2種以上、また例えば3種以上、また例えば4種以上、また例えば5種以上、また例えば6種以上の変異を効率的かつ迅速に識別することができる。さらに、本識別方法によれば、2種以上の変異の存否に基づく変異プロフィールによって特定される変異株を識別することもできる。
なお、以上の本識別方法の説明においては、1種の鋳型核酸が1種の変異を含むものとして説明したが、1種の鋳型核酸が2種又は3種程度の変異を含む場合もあり、このような鋳型核酸についても、プライマーセットを適宜選択することにより、2種又は3種の変異の存否を識別することができる場合がある。
本明細書によれば、本識別方法に用いる、(a)~(g)の第1のプライマーせっと及び(h)~(n)の第2のプライマーセットは、それぞれ及び組み合わせて、SARS-CoV-2の変異株の変異を識別するためのキットとして提供される。
<標的配列の検出装置>
本明細書に開示される標的配列の検出装置(以下、本装置ともいう。)は、複数の反応場を準備可能なサンプル搭載モジュールと、前記サンプル搭載モジュール上の前記複数の反応場に対して1種又は2種以上の液体を供給する及び/又は前記複数の反応場から液体を排出する液体給排モジュールと、前記複数の反応場内の液体を温度調節可能な第1及び第2の温度調節モジュールと、前記複数の反応場内に光照射可能な光源モジュールと、前記複数の反応場内の蛍光を検出する蛍光検出モジュールと、少なくとも一つの制御部と、を備えることができる。本装置によれば、標的配列を、迅速かつ効率的に検出することができる。第1の温度調節モジュールは、核酸増幅反応における温度制御を実施可能に構成されており、第2の温度調節モジュールは、二本鎖DNAの融解曲線の取得(融解曲線解析)が実施可能に構成されている。本装置によれば、ウイルスの変異などの標的配列を核酸増幅反応の増幅産物の取得と当該増幅産物の融解曲線解析によって、効率的にかつ高い精度で検出することができる。
本装置は、少なくとも1つの制御部を備える装置として構成されており、複数のモジュールにより実行される標的配列の検出プロセスが、制御部による一連の処理に基づいて実行される。本装置のブロック図の一例を図3に示す。
(制御部)
本装置が備える制御部は、例えば、CPUなどのプロセッサを含んでおり、さらに別途メモリと入出力インターフェースとを備えて、いわゆるコンピュータとして構成されている。制御部は、それぞれのモジュールとの間で信号を入出力可能に構成されている。また、制御部は、公知のネットワークを介して、適宜外部装置で接続可能であり、外部装置との間で入出力が可能となっている。さらに、制御部には、本装置に備えた入力部から適宜データの入出力が可能に構成されている。また、本装置は、必要に応じて、ディスプレイなどの表示装置を備えており、制御部による標的配列の存否判定結果や、サンプル毎の融解曲線を表示可能となっている。
制御部は、本装置が備えるモジュールが実行する標的配列を検出するプロセスを実行するためのプログラムをメモリから読み込んで実行することが可能になっている。制御部が行う標的配列の存否判定処理は、試料から取得して融解曲線と、予めメモリに格納された対照融解曲線や基準融解曲線と、を対比して、試料から得た融解曲線と基準融解曲線との一致性に基づいて標的配列の存否を判定し、試料から得た融解曲線と対照融解曲線との一致性に基づいて対照配列の存否を判定する。
また、同一試料について、複数の標的配列をそれぞれ含む複数の鋳型核酸を準備し、複数の増幅産物を準備して、複数の融解曲線を取得したときには、制御部は、これらの複数の標的配列について、それぞれ個別に存否を判定することができる。
制御部は、試料の識別情報とともに、融解曲線及び1種又は2種以上の標的配列の存否判定に関する判定情報を組み合わせてメモリに格納し、適宜、表示装置や外部装置に出力等することができる。なお、標的配列の存否のほか、適切な判定条件を設定できる場合には、新たな変異や他の変異の存在を推定できる場合には、こうした推定情報も併せてメモリに格納し、表示装置等に出力することができる。
(サンプル搭載モジュール)
サンプル搭載モジュールは、複数の反応場を準備可能なモジュールである。例えば、この種の装置において汎用されている、多数個の反応場備えた方形状のプレート(いわゆるウェルプレート)や種々の形状の複数の反応場を備えるサンプル台を搭載することができるとともに、他のモジュール、例えば、液体給排モジュールによる液体の給排に適した位置や温度調節モジュールによる温度調節に適した位置などに、サンプル台の移動、サンプル台の移送などが可能になっている。また、複数のサンプル台を搭載して、これらを任意の順番で適切な位置に移動し保持可能に形成されていてもよい。多数個の反応場は、例えば、24個、また例えば、48個又は96個等であり、反応場は、互いに離隔されている。反応場は、特に限定するものではないが、例えば、浅い凹状部、チューブ状の凹状部、又はチューブを収容可能な凹状部とチューブ、チューブ等を収容可能な開口部とチューブとによって構成されている。
(液体給排モジュール)
液体給排モジュールは、複数の反応場に対して1種又は2種以上の液体を供給する及び/又は前記複数の反応場から液体を排出するモジュールである。液体給排モジュールは、特に限定するものではないが、例えば、反応場内に液体の供給及び/又は反応場内からの液体の排出のための先細り状の給排チップ群と、これらに連絡される配管と、さらにこの配管に必要な液体を供給するための液体の貯留部と、反応場から排出した液体を貯留するための排水貯留部と、を備えることができる。給排チップ群と配管群とは、それぞれ液体の貯留部に対して固有に備えられていてもよい。さらに、このモジュールは、液体の供給及び排出並びに洗浄等のためのガス圧調節機構を配管の一部等に備えている。ガス圧調節機構は、また、制御部からの信号により、反応場に供給したり、反応場から排出する液体の量を調節可能に構成されている。液体給排モジュールは、必要に応じて2種以上備えられていてもよい。
液体の貯留部は、標的配列の検出に必要な試薬、希釈液、洗浄液等をそれぞれ充填可能になっている。なお、液体貯留部は、装置の外部に備えられていてもよい。
液体給排モジュールは、また、反応場内に被験試料である液体を供給可能に1種又は2種以上の被験試料をセット可能に構成されている。被験試料は、例えば、被験試料用の複数のチューブやウェルなどの反応場を備えるサンプル供給キットなどに充填された状態で液体給排モジュールにセットアップ可能に構成されている。
(温度調節モジュール)
第1及び第2の温度調節モジュールは、複数の反応場を同時に温度調節可能(昇温、降温、一定温度保持等)であって、反応場内の液体の温度を制御可能に構成されている。第1の温度調節モジュールは、例えば、核酸増幅反応を実施可能なモジュールとして構成される。第1の温度調節モジュールは、核酸増幅反応を並行して行う場合のために複数個備えていてもよい。
また、第2の温度調節モジュールは、融解分析、高分解能融解が可能な程度の温度制御能を有しており、制御部の信号により温度プロファイルが設定されるようになっている。例えば、第2の温度調節モジュールは、例えば、約0.1℃/秒~約1℃/秒の範囲内の速度で連続的に増加させることができる。また例えば、約0.01℃/秒~約0.1℃/秒の範囲内の速度で、また例えば、約1℃/秒~約10℃/秒の範囲内の速度であってもよい。(方法における温度分解能に関する段落より)
こうした温度調節モジュールは、当該分野において周知である。また、第2の温度調節モジュールも、融解曲線を取得する処理を複数平行して行うために複数個備えることもできる。一方、複数の第1の温度調節モジュールに対して単一の第2の温度調節モジュールを備えることで、再現性の良好な融解曲線解析が可能となる。例えば、第1の温度調節モジュールが実施する核酸増幅反応の所要時間と第2の温度調節モジュールが実施する融解曲線の取得所要時間との関係から、第1の温度調節モジュールの例えば4基以上、また例えば、5基以上、また例えば、6基以上、また例えば、7基以上、また例えば、8基程度で実施される増幅産物を、単一の第2の温度調節モジュールで処理することができる。
(光源モジュール)
光源モジュールは、複数の反応場内に光照射するモジュールである。光源としては、標的配列の検出に用いる結合色素を励起するための波長を必要な照度で照射可能であればよく、こうしたモジュールは、当該分野において周知である。
(蛍光検出モジュール)
蛍光検出モジュールは、複数の反応場内の蛍光を検出するモジュールである。個々のウェルからの蛍光強度をセンサで検知し、信号として制御部に出力することができるようになっている。制御部は、入力した信号を必要に応じて処理して蛍光強度としてメモリ等に保存できるようになっている。こうしたモジュールは、2次元フォトダイオードアレイ(イメージセンサ)など当該分野において周知である。本装置においては、特に、融解曲線解析に適用することを考慮すると、反応場からの蛍光強度の検出の時間分解能を、1秒間に例えば、10~30回、また例えば、100~300回、1000~3000回程度とすることができる。
なお、光源モジュール及び蛍光検出モジュールは、それぞれ単独で備えることもできるが、核酸増幅反応を実施する第1の温度調節モジュールに付随して光源モジュールと蛍光検出モジュールとを備えていてもよい。こうすることで、第1の温度調節モジュールを用いた核酸増幅反応において得られた増幅産物量を、結合色素により生成される蛍光の強度を検出することでモニターすることができる。
また、光源モジュール及び蛍光検出モジュール(特に、融解曲線解析に適した検出時間分解能を備えている)は、第2の温度調節モジュールに付随して備えられていてもよい。こうすることで、第2の温度調節モジュールを用いた融解曲線解析を精度よく実施できる。
本装置においては、制御部が、適宜、必要なモジュールを作動させて既述の標的配列の検出方法の個々の工程を実行するように構成されている。
標的配列を含む鋳型核酸を準備する工程は、例えば、本装置の複数のサンプルウエルに鋳型核酸が充填される。被験試料として、生体由来試料の核酸がそのまま用いられる場合には、本装置の外部で、複数の反応場を備えるウェルプレートが搭載されたサンプル台にこれらの試料が供給されることによって実行される。なお、被験試料は、本装置の液体給排モジュールによってウェルプレートに供給されてもよい。なお、これらの生体由来試料につき、加熱によりDNAaseなどの酵素の失活やウイルスの失活が必要な場合には、作業者がサンプル台をサンプル搭載モジュールに搭載した後、制御部は、温度調節モジュールに対して、適切な加熱プロセスや希釈プロセスを行うよう信号を出力し、加熱処理を実行してもよい。また、生体由来の被験試料の希釈が必要な場合には、制御部は、液体給排モジュールに予め設定された希釈倍率に基づく希釈するよう信号を出力する。
例えば、制御部が、被験試料中の鋳型核酸を核酸増幅反応による増幅産物として取得するプロセスを実行するとき、制御部は、液体給排モジュールを作動させて、サンプル搭載モジュール上の複数の反応場に、少なくとも鋳型核酸を核酸増幅反応により取得するためのプライマーセットを添加して、鋳型核酸増幅用の反応液を調製し、温度調節モジュールを作動させて複数の反応場において核酸増幅反応を実施して増幅産物として鋳型核酸を取得するプロセスを実行する。なお、適宜、サンプル搭載モジュールを移動させて、複数セットのサンプル台に対して、これらのプロセスを実行するようにしてもよい。
また例えば、生体由来試料などの鋳型核酸を含む鋳型核酸含有液を、結合色素が結合した増幅産物を得るための核酸増幅用反応液において適切な所定濃度になるように希釈するプロセスを行うように液体給排モジュールに対して信号を出力することもできる。
例えば、制御部が、結合色素が結合された増幅産物を取得するプロセスを実行するとき、制御部は、液体給排モジュールを作動させて、複数の反応場に、少なくとも、鋳型核酸の所定の領域を増幅するプライマーセット、さらに必要に応じて同時に二本鎖DNAに対する結合色素を添加して核酸増幅用反応液を調製し、温度調節モジュールを作動させて複数の反応場において核酸増幅反応を実施して結合色素が結合した複数の増幅産物を取得するプロセスを実行する。
次に、制御部が実行する、複数の融解曲線に基づいて標的配列を検出するプロセスの一例について図4を参照して説明する。以下においては、既述の本識別方法、すなわち、SARS-CoV-2に感染した16名の患者から採取した唾液について、6部位の変異(N501Y、E484K、K417N/T、L452R、D614G、P681H/R)を標的配列としてその存否を判定し、変異プロフィールから変異株を識別する変異株スクリーニングプロセスについて説明する。また、以下では、本装置が制御部であるコンピュータ内のメモリに、検出しようとする標的配列に関し、対照融解曲線と基準融解曲線とを備えている場合について説明する。
まず、実験者が、16名から採取した唾液試料を、95℃で5分で加熱し、公知のカラム等を用いてRNAを粗精製して被験試料とする。この16種の被験試料を、サンプル供給キットに充填して、このサンプル供給キットをサンプル搭載モジュールの所定位置にセットアップする。実験者は、予め液体給排モジュールにおいて準備された6種の変異にそれぞれ対応する6種の鋳型核酸を取得する6種の第2のプライマーセットによる核酸増幅反応、融解曲線のための増幅産物を取得する第1のプライマーセットによる核酸増幅反応、及び、融解曲線分析により16名からの各検体につき、6種の変異を識別するプロセスの実行する指示を、本装置に対して入力する。
液体給排モジュールは、各被験試料について、サンプル搭載モジュール上の8×12でグリッド状に配置される合計96ウェルを備えるウェルプレート(サンプル台の例示である。)の2×3のグリッドの計6個のウェルに所定量(例えば、2μl)を注入し、合計96個のウェルの全てに16名からの被験試料を注入する。
さらに、液体給排モジュールは、1検体につき6個のウェルに、RNAからDNAを増幅する逆転写反応及び核酸増幅反応のための逆転写酵素及びDNAポリメラーゼ、6種の変異をそれぞれ含んだ鋳型核酸を得るための6種の第2のプライマーセットを1セットずつ供給するとともに、核酸増幅反応の各種基質(dNTP)、核酸増幅反応に必要な緩衝液及び水等をそれぞれ供給して、所定量(例えば、20μl)とする。
次いで、第1の温度調節モジュールが、これらの各ウェルにおける逆転写反応及び核酸増幅反応のために必要な加熱処理を実施する。加熱処理により、1検体につき6個のウェルには、それぞれ一つの変異を含む鋳型核酸が生成され、合計6種の鋳型核酸が生成されることになる。この加熱処理は特に限定しないが、概ね1時間程度である。
増幅反応終了から一定時間冷却後、液体給排モジュールは、各ウェル中の1種の鋳型核酸を含む反応液の所定量を吸引して、別の2組のウェルプレートを用いて2段階希釈を行い、結果として、所定の希釈倍数、例えば、1000倍に希釈した反応液を、さらに、新たなウェルプレートの当初と同様の位置に供給する。なお、核酸増幅反応液の2段階希釈及び希釈液の新たなウェルプレートへの供給にあたっては、適宜、サンプル搭載モジュールが、ウェルプレートを搭載したり、所定位置に移送等したりする。
次に、液体給排モジュールは、1検体につき6個のウェル内の鋳型核酸に対して、6種の変異に対応する6種の第1のプライマーセットをそれぞれ供給するとともに、DNA二本鎖に結合する結合色素、耐熱性DNAポリメラーゼ、dNTP、緩衝液及び水等を添加して、所定量(例えば、20μl)とする。
次いで、第1の温度調節モジュールが、これらの各ウェルにおける核酸増幅反応のために必要な加熱処理を実施する。加熱処理により、各ウェルには、6種の変異を含む鋳型核酸と同等か又は小サイズであって、後段の融解曲線分析により変異を識別可能なDNA二本鎖が被験試料由来の被験増幅産物として生成される。この加熱処理は特に限定しないが、概ね1時間~1.5時間程度である。この加熱処理において、光源モジュールは、必要に応じて結合色素に適合した波長の励起光源を各ウェルに照射し、蛍光検出モジュールは、各ウェルから発光される蛍光を検知して信号として処理する。核酸増幅反応に伴ってDNA二本鎖である増幅産物量が増大することで、結合色素に基づく蛍光量が増大することをモニタリングできる。
その後、被験増幅産物がウエル内に生成されたウェルプレートはサンプル搭載モジュールによって、第2の温度調節モジュールに移送する。
第2の温度調節モジュールは、ウェルプレート内の被験増幅産物を含む反応液を、例えば、95℃で加熱して被験増幅産物を強く熱変性させ、その後、例えば、40℃に冷却し、さらに、65℃で予熱した後、75℃から95℃まで、1℃/秒の昇温速度で昇温して、融解曲線を取得するための融解曲線分析を実施する。
光源モジュールは、各ウェルに結合色素に応じた励起光を照射する。蛍光検出モジュールは、例えば、1秒間に25回の分解能で所定の蛍光を検出しシグナル信号として、制御部に出力する。
制御部は、16名の患者から得られた16検体の被験試料について、公知の融解曲線分析ソフトウエアを用いて、各検体につき、6種の変異の存否について判定する。1検体につき、6種の変異に関する6種の被験融解曲線を、それぞれの変異に対応する基準融解曲線と対比して、被験融解曲線と基準融解曲線(変異を備えるポジティブコントロールの融解曲線)との一致性に基づき、検体における個々の変異の存否を判定する。必要に応じて、個々の変異に対応する対照融解曲線(変異を備えないネガティブコントロールの融解曲線)を参照して、より確度の高い判定を行うことができる。
さらに、制御部は、16検体についてのそれぞれ6種の変異の存否の判定結果から、それぞれの検体が、6種の変異につきどのようなプロフィールを備えているかという変異プロフィール情報を取得することができる。制御部は、取得した変異プロフィール情報と、種々の変異株について既に知られている変異プロフィールと対比して、16検体から検出された変異株を既知の変異株のいずれに該当するかを識別することもできる。
本装置の上記実施形態によれば、96ウェル(8×12)プレートにおける検体由来の被験試料の配置について2×3で配置されるグリッド状に配置されるウェルに供給するものとしたので、異なる患者に由来する検体が互いに隣りのグリッドに配置される確率が低くなるため、検体が相互にコンタミネーションするリスクを低減できる。
また、上記実施形態においては、一枚のウェルプレートを用いたが、サンプル搭載モジュールが複数枚のウェルプレートを搭載可能である場合には、さらに、追加の検体についても変異を検出するプロセスを実行することができる。また、複数のウェルプレートを用いる場合には、患者ごとに異なるプレートを用いることができるほか、標的配列ごとに異なるプレートを用いることもできる。
また、上記実施形態においては、第2のプライマーセットを用いて鋳型核酸も取得することにしたため、第1のプライマーセットによる増幅産物の融解曲線分析による精度が向上されている。すなわち、第1のプライマーセットによるミスプライミングによる増幅産物の生成が抑制又は回避されているととともに、いずれの第1のプライマーセットによっても十分量の意図した増幅産物が適切な量生成されるため、融解曲線分析の精度が向上される。
また、上記実施形態では、サンプル搭載モジュール、液体給排モジュール、第1及び第2の温度調節モジュール、光源モジュール及び蛍光検出モジュールをそれぞれ単独で備える本装置を用いる場合について説明したが、これらの各モジュールのうち1種又は2種以上につき、複数個備える構成としてもよいし、全てを2セット以上備える構成としてもよい。各モジュールがプロセスに専有されている時間や変異識別のプロセスの内容や検出しようとする変異数に応じて、適宜複数個又はセットで備える構成とすることができる。かかる構成とすることで、多量の検体につき、効率的な標的配列の検出や変異識別が可能となる。
また、上記実施形態では、本装置を、標的配列の検出装置として記載したが、ウイルス変異株の変異の識別装置としても実施ができる。また、本装置におけるモジュールと少なくとも一つの制御部は、一つの装置を構成するものとして記載したが、これらは、必ずしも装置を構成する必要はなく、公知のネットワークを介して接続されていてもよい。したがって、本装置に替えて、標的配列の検出システム及びウイルス変異株の変異の識別システムとしても実施することができる。
本明細書は、以下の態様の装置及びその使用も開示する。なお、以下の態様においては、ウイルスの変異株が有する可能性のある変異の検出を例示し、複数の反応場を備えるサンプル台としてウェルプレートを例示して説明する。
<態様1:単一ウェルプレート上で複数の変異(標的配列)を検出する装置及びその使用>
本態様の装置は、液体給排モジュール、サンプル搭載モジュール、1又は複数の第1の温度調節モジュールと、第1の温度調節モジュールのそれぞれに付帯する光源モジュールと蛍光検出モジュールと、単一の第2の温度調節モジュールと、第2の温度調節モジュールに付帯する光源モジュールと蛍光検出モジュールと、データ比較部と、判定部と、基準被験曲線及び変異株情報等を格納するメモリとを備えた制御部と、ディスプレイを備えることができる。
態様1の装置を用いる場合、被験試料は、熱処理等によりウイルスを不活性化等した後、サンプル搭載モジュールに準備された反応場のウェル内に、液体給排モジュールをにより所定量が供給される。鋳型核酸を含む被験試料は、例えば、検出しようとする変異の数に応じたウェルにそれぞれ供給される。なお、被験試料は、必要に応じて希釈される、核酸増幅反応に必要な試薬は所定濃度で予め準備されて、各ウエルに供給される。さらに、変異に応じた第1のプライマーセットも被験試料が準備されるウェルに供給される。添加される。また、結合色素も所定濃度で添加される。
次いで、サンプル搭載モジュールは、核酸増幅反応を実施可能に準備されたウェルプレートを第1の温度調節モジュールに移送する。第1の温度調節モジュールは、予め決められた温度制御スケジュールに従い、核酸増幅反応を実施する。
複数の被験試料を同時に処理する場合には、以上のプロセスを、各被験試料についても実施する。複数の被験試料を、単一のウェルプレート上で実施することができる。なお、単一のウェルプレート上において異なる被験試料につき核酸増幅反応を行う場合には、既述の配置構成を採ることで相互のコンタミネーションを抑制又は回避できる。
また、複数の被験試料を同時に処理する場合には、必要に応じて複数のウェルプレートが使用される。複数のウェルプレートを使用する場合には、例えば、一定の時間間隔で完了するように複数の第1の温度調節モジュールを用いて、順次又は並行に核酸増幅反応を実施する。なお、ここで、一定の時間間隔とは、引き続き実施する第2の温度調節モジュールでの融解曲線解析のための処理時間に基づく。
次いで、サンプル搭載モジュールは、第1の温度調節モジュールにおいて核酸増幅反応を終了したウェルプレートを第2の温度調節モジュールに移送する。第2の温度調節モジュールは、例えば、厳密な温度制御の下で、65℃で1秒の予熱の後95℃まで1℃/秒の傾斜で加熱し、光源モジュールに備える励起光源から放射された励起光によって、結合色素により発せられ、蛍光検出モジュールのカラーフィルタを透過した蛍光の強度を同じく蛍光検出モジュールが備える光センサにより検出し、この検出信号はメモリに保存し、検出しようとする変異の数に応じた被験融解曲線を取得する。
サンプル搭載モジュールは、融解曲線の取得を終了したウェルプレートを第2の温度調節モジュールから排出する。さらに、核酸増幅反応を終了したウェルプレートがある場合には、サンプル搭載モジュールは、新たなウェルプレートを第2の温度調節モジュールに供給し、他の被験融解曲線を同様に取得する。
この装置においては、被験試料の増幅産物から取得され、特定の変異を検出するために取得した融解曲線を、予めメモリに格納されていた当該特定変異の基準融解曲線と対比して、被験試料が、当該変異を有するか否かを判定する。被験試料中に検出しようとする特定の変異が存在する場合、当該変異を意図して取得された被験融解曲線と当該変異のために予め準備された基準融解曲線とは一致し、被験試料中に当該変異が存在しない場合には、これらの融解曲線は一致しない。制御部が備える判定部は、被験融解曲線と基準融解曲線との一致及び不一致に関するアルゴリズムやデータベースを内蔵することができる。判定部は、融解曲線の不一致が検査のばらつきによるものか、変異によるものかを判定することができ、取得した判定結果をメモリに格納する。判定部は、上記変異の有無の検出プロセスを、検出しようとする変異について実施して、それぞれの判定結果をメモリに格納する。
判定部は、さらに、こうして得られた被験試料中の核酸が備える変異のプロファイル(検出しようとする変異の有無について情報)と、予めメモリに格納されている、複数の既知の変異株の変異プロファイルとを対比して、被験試料中の核酸が由来するウイルスが既知の変異株のいずれに該当するかも判定することができる。
本態様の装置では、複数の異なるウェルプレートを用いる場合であっても、単一の第2の温度調節モジュールを用いて、複数のウェルプレートにつき順次処理して融解曲線を取得するために、複数の第2の温度モジュールに由来するばらつきが回避されており、高精度で変異を検出できる。本態様の装置は、多数の被験試料の処理と高精度での変異検出を両立している。
本態様の装置及びその使用は、大量の被験試料につき、ある程度限定された変異のみを検出する場合において有用である。この場合の変異は、特定の変異株を特徴付ける複数の変異などが挙げられる。
本態様の装置及び使用においては、処理時間の長い核酸増幅反応と、温度制御の精度が重要である融解曲線の取得を、複数のプライマーセットに対して同時並行的に行い、判定するので、複数の変異の組み合わせで特定される変異株の同定を高精度かつ短時間で可能となる。
本態様の装置及びその使用は、例えば、ウイルス陽性患者由来の被験試料集団から抽出された被験試料につき、複数の変異を検出して変異プロファイルを同定するなどの場合において有用である。この場合の変異は、特定の変異株が保有しうる複数の変異などが挙げられる。
また、本態様の装置において複数の第1の温度調節モジュールを備える場合には、以下の効率的な使用が可能となる。すなわち、例えば、核酸増幅反応の所要時間が1時間であり、第2の温度調節モジュールによる融解曲線の取得の所要時間が15分であるとすると、被験試料についてのこれらのプロセスの総所要時間は、大まかに1時間15分(135分)となる。ここで、単一の第2の温度調節モジュールを連続稼働させて複数のウェルプレートを処理するには、全所要時間を融解曲線取得所要時間で除して得られる概数である5に基づき、5基の第1の温度調節モジュールを備えるようにする。こうすることで、核酸増幅反応を5枚のウェルプレートにつき、15分起きで順次開始して並行処理することで、第2の温度調節モジュールによる融解曲線の取得を効率的に5つのウェルプレートにつき連続的に実施することができ、全体としての所要時間を飛躍的に短縮できる。
複数の第1の温度ジュールの好適な基数は、核酸増幅反応の所要時間、融解曲線の取得条件、検出識別用とする変異(標的配列)数等の種々の条件に基づき適宜設定される。
<態様2:単一ウェルプレート上で複数の変異(標的配列)を検出する装置及びその使用>
本態様の装置は、態様1の装置の同一構成を備えている。本態様の装置の使用は、被験試料について複数の変異をそれぞれ検出するための複数の増幅産物を取得するのに先だって、被験試料から複数の鋳型核酸を取得する点以外は、態様1における使用と同一である。
本態様では、第1のプライマーセットを用いた核酸増幅反応の実施に先立って、サンプル搭載モジュールに準備されたウェルプレートのウェル内に、液体給排モジュールにより、核酸増幅反応のための各種試薬、変異に応じた第1のプライマーセットに替えて第2のプライマーセットをがまず供給され、さらに、被験試料がこれらのウェルに供給される。その後、サンプル搭載モジュールによってウェルプレートが第1の温度調節モジュールに移送され、第1の温度調節モジュールによる核酸増幅反応を実施して変異毎の鋳型核酸を取得する。
その後、ウェル内の核酸増幅反応液につき、必要に応じて、例えば、1000倍等に液体給排モジュールにより希釈されて、変異に応じた第1のプライマーセット及び各種増幅反応試薬が準備された新たなウェルプレートに供給される。その後は、態様1におけるのと同様に、核酸増幅反応を実施して、変異毎の複数の鋳型核酸をウェル内に取得し、第2の温度調節モジュールにより複数の融解曲線を取得し、変異の有無を判定する。
本態様の装置においては、核酸増幅反応を2段階行うため、被験試料の変異を検出するための総所要時間が長くなる。このため、本態様の装置においては、複数のウェルプレートを用いるなど大量の被験試料を処理する場合、複数の第1の温度調節モジュールを備えることが一層有利となる。第1の温度調節モジュールの基数は、態様1で説明したのと同様、同様に、核酸増幅反応の所要時間、融解曲線の取得条件、検出識別用とする変異(標的配列)数等の種々の条件に基づき適宜設定される。
<態様3:単一ウェルプレート上で単一の変異(標的配列)を検出する装置及びその使用>
本態様の装置は、態様1の装置において、複数の第1の温度調節モジュールを備えるが特定されている。また、本態様の装置の使用は、検出しようとする複数の変異に応じたウェルプレートを準備し、変異毎に、すなわち、第1のプライマーセット毎に、ウェルプレートを準備し、各ウェルプレートにつき、第1の温度調節モジュールによる核酸増幅反応を実施し、取得された複数のウェルプレートのそれぞれにつき、単一の第2の温度調節モジュールと光源モジュールと蛍光検出モジュールを用いて被験融解曲線を取得する点を除いて、態様1における使用と同一である。
より具体的には、例えば、複数の被験試料が存在するとき、複数の被験試料についての一つの変異を一つのウェルプレートにおいて検出し、他の1つの変異を他の1つのウェルプレートにおいて検出しようというものである。
本態様の装置は、複数の第2の温度調節モジュールを備えるために、複数のウェルプレートを用いた核酸増幅反応を、必要に応じて、後段の融解曲線の取得を考慮した一定の時間間隔で核酸増幅反応が終了するように、逐次的に又は並行的に実施できるため、処理時間の長い核酸増幅反応を効率的に実施することができる。また、本態様の装置も、態様1の装置と同様、単一の第2の温度調節モジュールを用いるために、第2の温度モジュールに由来するばらつきが抑制又は回避されており、高精度で変異を検出でき、多数の被験試料の処理と高精度での変異検出を両立している。また、本態様の装置は、異なる変異毎、すなわち、異なる第1のプライマーセット毎に、異なる核酸増幅反応条件を設定することも可能であり、核酸増幅反応をプライマーセット毎に最適化して、非特異的な増幅等を抑制して安定して増幅産物を取得できる。
本態様の装置及びその使用は、例えば、大量の被験試料につき、ある程度限定された変異のみを検出する場合において有用である。この場合の変異としては、特定の変異株を特徴付ける複数の変異などが挙げられる。
以上、ウイルスにおける変異などの標的配列を検出する方法及び装置等について説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
以下、本明細書の開示をより具体的に説明するために具体例としての実施例を記載する。以下の実施例は、本明細書の開示を説明するためのものであって、その範囲を限定するものではない。
(新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の9種類の変異の検出-RNAポジティブコントロールを用いた評価)
本実施例では、新型コロナウイルスの塩基配列における変異を標的配列として設計したプライマーセットによる融解曲線分析を、ポジティブコントロールとして作製したRNAを用いて行った。以下に標的とした変異部位7箇所における9種の変異と、変異部位7箇所に対する7種のプライマーセットを示す。
Figure 2023046057000004
Figure 2023046057000005
本実施例では、ポジティブコントロールRNAを取得するために、まず、人工遺伝子合成により同じ配列のDNAフラグメントを作製した。DNAフラグメントは、変異を有しない野生型のDNA断片と、変異を有する変異型のDNA断片との双方を作製した。それぞれのDNA断片は、400~500bpとした。塩基配列は、NCBIのreference resquence:NC_045512.2及びGISAID(www.gisid.org)から取得した。上記表に示す変異に対応する一塩基置換変異を以下に示す。なお、塩基の位置は、reference resquence:NC_045512.2に基づいている。RNAを取得するために、DNA断片の上流側には、T7プロモーター配列(5‘-TAATACGACTCACTATAGG-3’)が含まれるようにした。
合成したDNAフラグメントから、in vitro T7転写により、対照鋳型核酸及び基準鋳型核酸に相当する各種のポジティブコントロールRNAを作製した。
なお、塩基配列が、例えばAからT(TからA)への置換といった野生型と変異型の識別が困難な場合がある。その際は、野生型のRNAもしくはDNAを添加するスパイク法を実施する。その一例として、表4に示すN501における変異とE484における変異を含む変異型のポジティブコントロールRNAには、野生型ポジティブコントロールを、変異型ポジティブコントロール100質量%としたとき50質量%の比率で外添して変異型ポジティブコントロール(N501Y、E484K、E484Q)とした。
これらの各RNAにつき、上記表5に記載のプライマーセットを用いて、以下の条件でRT-PCRを行い、HRM分析装置としてLightCycler 96 System(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を使用し、付属のGene Scanning Software(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を用いて融解曲線の解析を行った。解析結果を図5に示す。
[PCR反応液]
RNA溶液(RNA濃度106copies/mL) 2 μL
HRMマスターミックス 10 μL
(MeltDoctor HRM Master Mix,Thermo Fisher Scientific)
逆転写酵素 0.2 μL
(SuperScript IV One-Step RTPCR,Thermo Fisher Scientific)
フォワードプライマー(10 μM) 0.8 μL
リバースプライマー(10 μM) 0.8 μL
水 適量
合計 20 μL
[PCR条件及びHRM条件]
逆転写:52℃で10分
熱変性:98℃で10
PCR(40cycle):95℃で10秒、60℃で30秒、72℃で30秒
熱変性:95℃で60秒
冷却:40℃で60秒
予熱:65℃で1秒
HRM:75℃~95℃、in 1℃/秒 昇温with 25 acquisitions
その後冷却
図5には、融解曲線分析による融解ピーク曲線を示す。図5に示すように、各変異についての野生型(従来型)及び変異型のRNAポジティブコントロールから取得した核酸増幅産物であるDNA二本鎖は、いずれも、相互に識別可能であった。また、K417及びE484については、一つの鋳型RNA中に二つの変異態様を含んでいたが、それらも明確に識別できた。
また、N501Y及びE484Qは、それぞれ野生型(従来型)とは、非常に識別困難な融解曲線を呈するものであったが、野生型RNAポジティブコントロールを50%外添したことで、野生型ポジティブコントロールとは大きく異なる融解曲線を呈することがわかり、これらの変異の識別が容易に可能であることがわかった。
以上のことから、本実施例で用いたプライマーセットによって、新型コロナウイルスにおける合計9種類の変異をそれぞれ識別できることがわかった。
(新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の9種類の変異の検出-感染者からの唾液における検出)
患者からの検体採取の方法は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)病原体検査の指針」に従い採取した唾液を95℃、5分で熱処理したものを使用した。新型コロナウイルス陽性検体中に含まれるウイルス量は患者によって異なる。ウイルス量が少ない検体については、実施例1では識別が困難な検体も存在するため、検体中に含まれるウイルス由来RNAを逆転写-PCRにて増幅することで、変異の確実に検出できるかどうかを確認した。
検体中の核酸(RNA)から鋳型核酸(二本鎖DNA)を得る核酸増幅反応に用いるプライマーセットを以下に示す。また、反応液及びPCRの条件は以下のとおりとした。
Figure 2023046057000006
[鋳型核酸用反応液]
検体 2 μL
PCR酵素 0.4 μL
(KOD Fx neo,東洋紡株式会社製)
PCR Buffer 10 μL
(Buffer(2×Buffer for KOD FX Neo、東洋紡株式会社製)
2 mM dNTPs 4 μL
各プライマー(10 μM) 0.3 μL
逆転写酵素 0.2 μL
(SuperScript IV One-Step RTPCR,Thermo Fisher Scientific)
水 適量
計 20 μL
[鋳型核酸用PCR条件]
逆転写:52℃で10分、94℃で4分
PCR(30cycle):98℃で10秒、60℃で30秒、68℃で30秒、冷却
鋳型核酸を取得した反応液を、水にて1000倍希釈し、以下のPCR反応及びHRM分析を行った。プライマーセットは実施例1と同じものを用いた。なお、対照例として、患者から採取した検体をそのまま用いるとともに、ポジティブコントロールとして、実施例1で作製した2種のRNA断片溶液を用いた。
なお、検体においてN501における変異とE484における変異を検出するために、野生型ポジティブコントロールにつき検体と同様に鋳型核酸用PCRを行って、野生型の鋳型DNAを取得して、水で1000倍希釈した溶液を、検体からの鋳型核酸100質量%に対して50質量%外添して希釈反応液として、以下のPCR及びHRMに供した。
[PCR反応液]
希釈反応液 2 μL
HRMマスターミックス 10 μL
(SuperScript IV One-Step RTPCR,Thermo Fisher Scientific)
フォワードプライマー(10 μM) 0.8 μL
リバースプライマー(10 μM) 0.8 μL
水 適量
合計 20 μL
[PCR条件及びHRM条件]
熱変性:98℃で10分
PCR(40cycle):95℃で10秒、60℃で30秒、72℃で30秒
熱変性:95℃で60秒
冷却:40℃で60秒
予熱:65℃で1秒
HRM:75℃~95℃、in 1℃/秒 昇温 with 25 acquisitions
その後冷却
HRM分析装置としてLightCycler 96 System(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を使用し、付属のGene Scanning Software(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)を用いて融解曲線の解析を行ったところ、検体から増幅した鋳型核酸を用いた検体について、9種類の変異の存否を明確に識別できる融解ピーク曲線を取得することができた。これに対して、検体をそのまま用いた対照例では、明確な融解ピーク曲線を取得することができなかった。以上のことから、鋳型核酸を一定量まで増量することで、より多くの検体において変異を確実にかつ精度良く識別することができることがわかった。
配列番号2~29:プライマー

Claims (16)

  1. 標的配列の検出方法であって、
    標的配列を含む鋳型核酸を取得する工程と、
    前記鋳型核酸のうち前記標的配列を含む所定の領域をプライマーセットを用いて核酸増幅反応を実施して得られる増幅産物であって、二本鎖DNAに対する結合色素が結合された増幅産物を取得する工程と、
    前記増幅産物の融解曲線を取得する工程と、
    前記融解曲線に基づいて前記標的配列の存否を検出する工程と、
    を備える、方法。
  2. 前記鋳型核酸を、生体由来試料中の核酸に対する核酸増幅反応を行い、その増幅産物として取得する、請求項1に記載の方法。
  3. さらに、
    前記標的配列の対照である対照標的配列を含む以外は前記鋳型核酸と同一である対照鋳型核酸を取得する工程を、備え、
    前記増幅産物の取得工程は、前記鋳型核酸に対して1種又は2種以上の比率で前記対照鋳型核酸を含む混合物につき、前記プライマーセット及び前記結合色素の存在下で核酸増幅反応を実施して、前記増幅産物及び前記対照鋳型核酸由来の増幅産物を含む混合物を取得する工程であり、
    前記融解曲線の取得工程は、前記混合物につき融解曲線を取得する工程であり、
    前記検出工程は、前記混合物の融解曲線に基づき前記標的配列を検出する工程である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記標的配列は、ウイルス核酸における変異である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記標的配列は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株における変異であり、
    前記増幅産物を取得するのにあたり、以下の(a)~(g)の塩基配列対からなる群から選択される少なくとも一つで特定されるプライマーセットを用いる、請求項4に記載の方法。
    (a)配列番号2と配列番号3
    (b)配列番号4と配列番号5
    (c)配列番号6と配列番号7
    (d)配列番号8と配列番号9
    (e)配列番号10と配列番号11
    (f)配列番号12と配列番号13
    (g)配列番号14と配列番号15
  6. 選択された前記(a)~(h)の塩基配列対からなる群から選択される少なくとも一つで特定されるプライマーセットに対して、それぞれ、以下の(h)~(n)の塩基配列対からなる群から選択される少なくとも一つで特定されるプライマーセットを用いて核酸増幅反応により前記鋳型核酸を取得する、請求項5に記載の方法。
    (h)配列番号16と配列番号17
    (i)配列番号18と配列番号19
    (j)配列番号20と配列番号21
    (k)配列番号22と配列番号23
    (l)配列番号24と配列番号25
    (m)配列番号26と配列番号27
    (n)配列番号28と配列番号29
  7. ウイルス変異株の変異の識別方法であって、
    前記ウイルス変異株の2種以上の変異を含む2種以上の鋳型核酸を取得する工程と、
    前記2種以上の鋳型核酸に対して、2種以上の第1のプライマーセットと二本鎖DNAに対する結合色素との存在下で、第1の反応条件で核酸増幅反応を実施して、前記結合色素が結合された、前記2種以上の変異を含む2種以上の増幅産物を取得する工程と、
    前記2種以上の増幅産物を第1の温度から第2の温度まで加熱して2種以上の融解曲線を取得する工程と、
    前記2種以上の融解曲線に基づいて前記2種以上の変異を検出する工程と、
    を備え、
    前記核酸増幅反応を、前記2種以上の各鋳型核酸について固有の2種以上の反応場において前記第1の反応条件で実施して前記2種以上の増幅産物を取得して、前記2種以上の反応場内の前記2種以上の増幅産物を前記第1の温度から第2の温度まで加熱して前記2種以上の融解曲線を取得する、方法。
  8. 前記変異は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株における変異であり、
    前記第1のプライマーセットは、以下の(a)~(g)の塩基配列対からなる群から選択される少なくとも一つで特定されるプライマーセットである、請求項7に記載の識別方法。
    (a)配列番号2と配列番号3
    (b)配列番号4と配列番号5
    (c)配列番号6と配列番号7
    (d)配列番号8と配列番号9
    (e)配列番号10と配列番号11
    (f)配列番号12と配列番号13
    (g)配列番号14と配列番号15
  9. 前記第1のプライマーセットは、少なくとも、前記(b)~前記(e)の塩基配列対で特定されるプライマーセットである、請求項8に記載の識別方法。
  10. 生体由来試料中の核酸に対して、2種以上の第2のプライマーセットの存在下で、第2の反応条件で核酸増幅反応を実施して、前記1種又は2種以上の鋳型核酸を取得する、請求項8又は9に記載の識別方法。
  11. 前記変異は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株における変異であり、
    前記第1のプライマーセットは、以下の(a)~(g)の塩基配列対からなる群から選択される少なくとも一つで特定されるプライマーセットであり、
    前記第2のプライマーセットは、前記(a)~(g)の塩基配列で特定される前記第1のプライマーセットに対して、それぞれ以下の(h)~(n)の塩基配列対で特定されるプライマーセットである、請求項10に記載の識別方法。
    (h)配列番号16と配列番号17
    (i)配列番号18と配列番号19
    (j)配列番号20と配列番号21
    (k)配列番号22と配列番号23
    (l)配列番号24と配列番号25
    (m)配列番号26と配列番号27
    (n)配列番号28と配列番号29
  12. ウイルス変異株の変異を識別するためのキットであって、
    前記ウイルス変異株は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株であり、
    以下の(a)~(g)の塩基配列対からなる群から選択される少なくとも一つで特定されるプライマーセットを備える、キット。
    (a)配列番号2と配列番号3
    (b)配列番号4と配列番号5
    (c)配列番号6と配列番号7
    (d)配列番号8と配列番号9
    (e)配列番号10と配列番号11
    (f)配列番号12と配列番号13
    (g)配列番号14と配列番号15
  13. 標的配列の検出装置であって、
    複数の反応場を準備可能なサンプル搭載モジュールと、
    前記サンプル搭載モジュール上の前記複数の反応場に対して1種又は2種以上の液体を供給する及び/又は前記複数の反応場から液体を排出する液体給排モジュールと、
    前記複数の反応場内の液体を温度調節可能な第1及び第2の温度調節モジュールと、
    前記複数の反応場内に光照射可能な光源モジュールと、
    前記複数の反応場内の蛍光を検出する蛍光検出モジュールと、
    少なくとも一つの制御部と、
    を備え、
    前記少なくとも一つの制御部は、
    前記液体給排モジュールを作動させて、前記複数の反応場に、少なくとも、前記標的配列を含む鋳型核酸の所定の領域を増幅する第1のプライマーセットを添加して核酸増幅用反応液を調製し、前記第1の温度調節モジュールを作動させて前記複数の反応場において第1の反応条件で核酸増幅反応を実施して複数の増幅産物であって二本鎖DNAに対する結合色素が結合された増幅産物を取得し、前記第2の温度調節モジュール、前記光源モジュール及び前記蛍光検出モジュールを作動させて、前記複数の反応場内の前記複数の増幅産物についての複数の融解曲線を取得し、前記複数の融解曲線に基づいて前記標的配列を検出するプロセスを実行する、装置。
  14. 前記少なくとも一つの制御部は、
    さらに、
    前記液体給排モジュールを作動させて、前記複数の反応場内の生体由来試料中の核酸を前記核酸増幅用反応液において所定濃度になるように希釈するプロセスを実行する、請求項13に記載の装置。
  15. 前記少なくとも一つの制御部は、
    さらに、前記液体給排モジュールを作動させて、前記サンプル搭載モジュール上の前記複数の反応場に、少なくとも前記鋳型核酸を核酸増幅反応により取得するためのプライマーセットを添加して、鋳型核酸増幅用の反応液を調製し、前記第1の温度調節モジュールを作動させて前記複数の反応場において核酸増幅反応を実施して増幅産物として前記鋳型核酸を取得するプロセスを実行する、請求項13又は14に記載の装置。
  16. 標的配列を検出するためのシステムであって、
    複数の反応場を準備可能なサンプル搭載モジュールと、
    前記サンプル搭載モジュール上の前記複数の反応場に対して1種又は2種以上の液体をを供給する及び/又は前記複数の反応場から液体を排出する液体給排モジュールと、
    前記複数の反応場を同時に温度調節可能な第1及び第2の温度調節モジュールと、
    前記複数の反応場内に光照射可能な光源モジュールと、
    前記複数の反応場内の蛍光を検出する蛍光検出モジュールと、
    少なくとも一つの制御部と、
    を備え、
    前記少なくとも一つの制御部は、
    前記液体給排モジュールを作動させて、前記複数の反応場に、少なくとも、前記標的配列を含む鋳型核酸の所定の領域を増幅するプライマーセットを添加して核酸増幅用反応液を調製し、前記第1の温度調節モジュールを作動させて前記複数の反応場において核酸増幅反応を実施して複数の増幅産物であって二本鎖DNAに対する結合色素が結合された増幅産物を取得し、前記第2の温度調節モジュール、前記光源モジュール及び前記蛍光検出モジュールを作動させて、前記複数の反応場内の前記複数の増幅産物についての複数の融解曲線を取得し、前記複数の融解曲線に基づいて前記標的配列を検出するプロセスを実行する、システム。
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