JP5564795B2 - Dna定量方法、及び遺伝子解析方法 - Google Patents

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本発明は、サンプル中のDNAを定量するDNA定量方法、及びそれを利用した遺伝子解析方法に関する。
遺伝子多型とは、遺伝子を構成しているDNA配列の個体差であり、一般には集団の1%以上の頻度で出現するものと定義されている。遺伝子多型の代表的なものとして、DNA塩基配列の一塩基のみが変異する一塩基多型(SNP:single nucleotide polymorphism)がある。一塩基多型には、病気の罹り易さや薬物代謝等に影響を及ぼすものがあることが知られており、病気罹患率の診断や投与薬物の効果、副作用の予測等のためにSNP部位の塩基の判別が行われている。
一塩基多型を判定する方法の一つにインベーダー反応を用いた方法がある。インベーダー反応では、一塩基多型が生じている部位(SNP部位)の塩基配列を認識する2種類のオリゴヌクレオチド(シグナルプローブ)、SNP部位においてハイブリダイズしたシグナルプローブの下に侵入するオリゴヌクレオチド(インベーダーオリゴ)、オリゴヌクレオチドが重なり合った構造(侵入構造)を認識して切断する酵素(クリベース:登録商標)、前記各シグナルプローブに対応した異なる蛍光物質を含む2種類のフレットプローブ(FRETプローブ)を含む反応試薬が用いられる。
前記反応試薬を判定対象のSNPを含むDNAと混合してインベーダー反応を実行させると、各シグナルプローブに対応するSNPの有無に応じて蛍光信号が発生する。この蛍光信号の強度を蛍光検出器によって検出することにより、各シグナルプローブに対応したSNPの有無や、そのSNPがホモ接合体であるかヘテロ接合体であるかを判定することができる(特許文献1、特許文献2参照)。
反応試薬には過剰なシグナルプローブやフレットプローブが含まれており、過剰なシグナルプローブ等によってインベーダー反応が繰り返され、これにより蛍光信号が増幅される。このため、インベーダー法は検出感度が高く、ゲノムDNAからでもPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)等によるDNA増幅無しに判定を行うことが可能である。
しかしながら、DNA増幅無しでインベーダー反応を行った場合、ゲノムDNAの濃度にもよるが、判定に十分な信号強度を得るまでに4〜8時間程度、場合によっては10時間以上を要する場合がある。一方、予めPCR等によってDNA増幅を行った場合には、インベーダー反応の反応時間を10分以下と著しく短縮することができる。
そこで、近年では上記のインベーダー法とPCR法とを組み合わせたインベーダープラス法と呼ばれる手法が開発されている。インベーダープラス法では、予め反応容器にPCR反応用の試薬類とインベーダー反応用の試薬類とを全て収容し、まずインベーダー反応用のオリゴヌクレオチド(シグナルプローブ及びインベーダーオリゴ)がアニールしない条件でPCR反応を行い、Taqポリメラーゼを高温(約99℃)で失活させた後、一定時間の間、インベーダー反応の至適温度(約63℃)に維持することによりインベーダー反応を行う(非特許文献1参照)。このようなインベーダープラス法によれば、PCR反応の後、反応容器の蓋を開けて増幅産物を取り出したり、容器中に試薬を追加したりする必要がないため、簡便且つ迅速に高感度な分析を行うことができる。
特開2002-300894号公報 WO 2006/106867 A1 特開2001-8680号公報 特開2001-299356号公報
ジャーナル・オブ・クリニカル・マイクロバイオロジー(J. Clin. Microbiol.)、(米国)、2006年、第44巻、第9号、pp.3443-3447
上記のようなSNP判定において正確な判定を行うためには、反応系におけるDNA濃度を適当な範囲とする必要がある。例えばサンプル中のDNA量が多すぎる場合には、上記インベーダー反応において非特異的な反応が起こり、本来シグナルが検出されないはずのネガティブなアレルに対応する蛍光信号が上昇して誤判定を引き起こす場合がある。一方、DNA量が少なすぎる場合には、インベーダー反応が進まないか、あるいは間違った反応が進む場合がある。特に上記のインベーダープラス法のように、PCR反応とインベーダー反応とを組み合わせる場合にDNA量が少ないことが問題となる。
例えば、2種類のアレルを持ったゲノムに対してそれぞれのSNPに対応したシグナルプローブを用いてインベーダープラス法を実施した場合、本来ならば両アレルに対応する蛍光信号の上昇速度は一致するはずである。ところが、DNA量が少ない場合には、両者の蛍光信号の上昇速度が必ずしも一致せず、まれに片側の蛍光信号のみが非常に早い時期に上昇し、他方の蛍光信号が通常の検出時間内に検出されない場合がある。この場合、ヘテロ接合体のサンプルであるにもかかわらず、ホモ接合体であると誤判定される恐れがある。
これは、ごく微量のDNAを増幅することができるPCR法と、ゲノムDNAから直接検出できる程の感度を持ったインベーダー法とを同一容器内で連続して行うことによって生じる問題であると考えられる。すなわち、PCR反応において鋳型となるDNA量が少なすぎることで両アレルの増幅量に偏りが生じ、更に、これらのPCR産物をそのままインベーダー反応に用いることでPCR産物量の偏りによるシグナルの差が増幅されたものと推定される。
このため、従来こうしたインベーダープラス法を利用したSNP解析等を行う場合には、反応前に予めサンプル中のDNA量を測定し、必要に応じてサンプルの希釈又はエタノール沈殿等によるサンプル濃縮を行ってDNA濃度が所定の範囲内になるよう調節した上で、インベーダープラス法による解析に供するのが一般的である。しかしながら、こうしたDNAの濃度測定や濃度調節には多くの手間とコストが掛かり、作業効率を低下させると共に、解析のスループット向上の妨げとなっていた。
また、近年では血液等の生体試料からDNA抽出を行うことなく直接PCR増幅を行う手法が開発されている(特許文献3、4参照)。このような手法を上記インベーダープラス法に適用すれば、血液等を直接反応液に添加してPCR反応及びインベーダー反応を行うことができるため、より簡便且つ迅速な解析を実現することができる。しかしながら、このような血液直接分析によるインベーダープラス法では反応系に持ち込まれるDNAの絶対量が不明であるため、上述のようにサンプル中のDNA量が少なすぎたことにより誤反応が生じたとしても問題の発見が困難な場合がある。
本願発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、インベーダープラス法を利用した遺伝子解析等において、事前に特別な装置を用いてDNA量を測定することなしに、反応に持ち込まれたDNA量を推定することのできる方法を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係るDNA定量方法は、
a) 標的DNAを含むサンプルと、該標的DNA上の所定領域を増幅するためのプライマー対を含むPCR反応液と、上記プライマー対によって増幅可能且つ該プライマー対によって増幅される領域内に前記標的DNAと区別可能な配列を持つ既知量の競合DNAと、前記標的DNA由来のPCR産物と前記競合DNA由来のPCR産物とをインベーダー反応によって各々特異的に検出するためのインベーダー反応液と、を含む混合液を調製する調製工程と、
b) 前記混合液の温度を制御することによりPCR反応及びインベーダー反応を行う反応工程と、
c) 前記インベーダー反応による、前記標的DNA由来のPCR産物と競合DNA由来のPCR産物の検出結果に基づいて前記PCR反応前の混合液における標的DNA量を推定するDNA量推定工程と、
を有することを特徴としている。
ここで、上記DNA量推定工程は、例えば、前記インベーダー反応における標的DNA由来のPCR産物の検出信号と競合DNA由来のPCR産物の検出信号に基づいて、所定時点における各信号の強度比又は各信号強度の上昇速度の比から前記標的DNA量を推定するものなどとすることができる。
上記構成から成る本発明のDNA定量方法は、標的DNAを定量の内部標準となる競合DNAと共にPCR反応させ、各々に由来するPCR産物をインベーダー反応によって検出した結果から初期の標的DNA量を推定するものである。上記のPCR反応では、標的DNAと競合DNAとが共通のプライマーを奪い合って増幅するため、互いのDNA増幅が競合することとなる(競合PCR)。そのため、得られる各PCR産物の量は初期の標的DNA及び競合DNAの存在量を反映したものとなる。また、競合DNAは、そのPCR産物をインベーダー反応によって標的DNA由来のPCR産物と区別して検出できるよう設計されている。従って、上記の混合物をPCR反応及びインベーダー反応させ、インベーダー反応によって生じる2種類の蛍光信号を検出することにより、その信号比からPCR反応前の混合液における標的DNAの量を推定することができる。
なお、本発明において、上記混合液中に存在する標的DNAの量が著しく少ない場合には、上述の競合PCRにおいて内部標準の競合DNAばかりが偏って増幅され、その後のインベーダー反応によって得られる蛍光シグナルが初期の標的DNAと競合DNAの比率を反映したものとならないことがある。
そこで、上記本発明に係るDNA定量方法は、上記の混合液が更に、上記プライマー対によって増幅可能且つ上記のインベーダー反応液によって検出されない配列から成る第2の競合DNAを含むものとすることが望ましい。
上記のような第2の競合DNAを混合液に加えることにより、上述のPCR反応において内部標準の競合DNAと前記第2の競合DNAとの間で競合関係が生じる。そのため、標準DNAの量が著しく少ない場合であっても、内部標準の競合DNAばかりが偏って増幅されるのを防止することができ、適切な定量を行うことができる。
また、本発明はインベーダープラス法による遺伝子解析(例えばSNP判定)において、反応系に持ち込まれたDNA(標的DNA)の量が適切であったか否かを判定し、これにより該遺伝子解析の結果の信頼性を評価するために利用することができる。
すなわち、本発明に係る遺伝子解析方法は、標的DNAを含むサンプルを複数の反応容器に分注し、前記複数の反応容器のうちの一部の反応容器においてインベーダープラス法による該標的DNAの遺伝子解析を行うと共に、前記複数の反応容器のうちの他の反応容器において上記のDNA定量方法による標的DNAの定量を行い、該定量結果に基づいて前記遺伝子解析の信頼性を評価することを特徴とするものである。
なお、上記本発明に係る遺伝子解析方法は、上記一部の反応容器と前記他の反応容器とを同時に温度制御することによりPCR反応及びインベーダー反応を行うものとすることが望ましい。
以上説明したように、本発明のDNA定量方法及び遺伝子解析方法によれば、事前に特別な装置を用いてサンプル中のDNA量を測定することなしに、インベーダープラス法の手法の中で標的DNA量が適切か否かを知ることができ、信頼性の高い遺伝子解析を簡便且つ迅速に行うことが可能となる。
本発明に係るDNA定量方法を説明するための概念図。 実験例4におけるFAM及びREDシグナルの測定値の経時変化。 実験例5におけるインベーダー反応開始後の各時刻の蛍光強度。 実験例6におけるインベーダー反応開始後の各時刻の蛍光強度。 実験例7の結果を示す図であり、(a)はシグナル測定値の経時変化を示し、(b)は蛍光変化量の最大値の比(FAM/RED)を示す。 実験例8における蛍光変化量の最大値の比(RED/FAM)と反応前の標的DNA量との関係を表した検量線。
以下、本発明の一実施態様におけるDNA定量方法について、図面を参照しながら説明する。図1は本実施態様のDNA定量方法におけるPCR反応及びインベーダー反応の様子を示す概念図である。
<混合液の調製>
本方法では、まず、反応容器に定量対象とする標的DNA10を含むサンプル、定量の内部標準となる既知量の競合DNA20、PCR反応液、及びインベーダー反応液を所定量ずつ添加し、これらを混合した混合液を調製する。
上記標的DNA10は特に限定されるものではないが、例えば、ヒトやその他の生物のゲノムDNAなどとすることができる。また、こうした標的DNA10を含むサンプルとしては、体液や動植物組織などの生体試料から抽出したDNAを含んだDNA溶液のほか、DNA抽出操作を施していない生体試料を用いることもできる。なお、後者の場合には、予め界面活性剤処理等の前処理を行って生体試料を均質化しておくことが望ましい(特許文献3、4参照)。
PCR反応液は、上記標的DNA10の所定領域を増幅するためのプライマー対(フォワードプライマー31及びリバースプライマー32)と、Taqポリメラーゼ等のDNA合成酵素、及び4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)を少なくとも含んでいる。
競合DNA20は、定量の内部標準となるものであり、その全体又は一部を上記のプライマー対31、32によって増幅でき、なお且つそのPCR産物をインベーダー反応によって標的DNA10(及びそのPCR産物)と区別して検出できるようにデザインされている。すなわち、図1に示すように、競合DNA20は標的DNA10のプライマーアニーリング部位a,bと同一配列から成る2つの領域a,bを有しており、更に、この領域aと領域bとの間に標的DNA10には含まれない配列から成る領域dを有している。こうした競合DNA20は例えば人工合成によって得ることができる。なお、領域dについては、標的DNA10上のプライマーアニーリング部位a,bに挟まれた領域cと全く異なる配列としてもよく、領域cにおいてインベーダー反応によって認識される部位に変位を導入したものであってもよい。
インベーダー反応液は、上記標的DNA由来のPCR産物11と競合DNA由来のPCR産物21とをそれぞれ特異的に検出するための各種オリゴヌクレオチド、及び酵素クリベース(Cleavase:構造特異的DNA分解酵素)を含んでいる。ここで、各種オリゴヌクレオチドとは上記各PCR産物11、21に特異的にハイブリダイズする2種類のシグナルプローブ41a、bと、該シグナルプローブ41a、bの下に侵入するようにして上記各PCR産物11、21にハイブリダイズするインベーダーオリゴ51a、b、及び前記2種類のシグナルプローブ41a、bに対応した異なる蛍光を発する2種類のフレット(FRET)プローブ61a、bである。
シグナルプローブ41a、bは3’末端側に検出しようとする配列に相補的な領域を有し、5’末端側に検出しようとする配列とは無関係な配列から成るフラップ(flap)領域42a,bを有している。また、フレットプローブ61a、bは各シグナルプローブ41a、bのフラップ領域42a,bと相補的な配列から成る領域を有しており、蛍光色素F(FAM)又はR(RED)と消光剤(クエンチャー)Qが結合している。なお、競合DNA20の配列によってはインベーダーオリゴ51a、bは標的DNA10と競合DNA20とで共通のものを用いることができる。また、上記PCR反応のプライマー31にインベーダーオリゴ51a、bの役割を兼ねさせるようにしてもよい(非特許文献1を参照)。この場合、インベーダー反応液には別途インベーダーオリゴを含める必要はない。
続いて、上記混合液を適切に温度制御することによって、PCR反応とインベーダー反応を連続的に実施する。
<PCR反応>
まず、インベーダー反応用のオリゴヌクレオチド(シグナルプローブ41a、b及びインベーダーオリゴ51a、b)がアニールしない条件でPCR反応を行う。PCRの温度サイクルは、変性工程、プライマー付着(アニーリング)工程、及びプライマー伸長工程の3工程、又は変性工程と、プライマー付着及びプライマー伸長を同時に行うプライマー付着・伸長工程との2工程を含み、例えば、変性工程が94℃で1分間、プライマー付着工程が65℃で1分間、プライマー伸長工程が72℃で1分間、もしくは変性工程が94℃で1分間、プライマー付着・伸長工程が68℃で1分間などとすることができる。このようなサイクルを所定の回数繰り返すことによって標的DNA10及び競合DNA20を増幅する。このとき、標的DNA10と競合DNA20とは同一の反応系中で共通のプライマー対31、32によって増幅されるため、互いのDNA増幅が競合する(競合PCR)。すなわち、混合液中において標的DNA10に比べて競合DNA20が多い場合には、競合DNA由来のDNA断片が優先的に増幅され、逆に標的DNA10の方が多い場合には、標的DNA由来のDNA断片が優先的に増幅される。また、標的DNA10と競合DNA20の量が同じ場合には、PCR産物の量は等しくなる。従って、このような競合PCRにおいて得られるPCR産物11、21の量は初期の標的DNA10及び競合DNA20の量を反映したものとなる。
<インベーダー反応>
続いて、反応容器を高温(例えば99℃)で加熱することによってポリメラーゼを失活させた後、一定時間の間、インベーダー反応の至適温度(例えば63℃)に維持することによってインベーダー反応を行う。
この反応では、標的DNA用に設計されたシグナルプローブ41a及び競合DNA用に設計されたシグナルプローブ41bが標的DNA由来のPCR産物11及び競合DNA由来のPCR産物21にそれぞれハイブリダイズする。また、このときインベーダーオリゴ51a、bも各DNA11、21にハイブリダイズし、各シグナルプローブ41a、bと1塩基がオーバーラップした構造をとる。
これにより形成される三塩基重複構造を酵素クリベースが構造特異的に認識してシグナルプローブ41a、bのフラップ領域42a,bを切断する(以上、第1反応)。
上記第1反応によって遊離したフラップ断片42a、bは対応するフレットプローブ61a又は61bにハイブリダイズして再び三塩基の重複構造を形成する。この構造を再び酵素クリベースが認識してフレットプローブ61a、bを所定の位置で切断する(以上、第2反応)。フレットプローブ61a、b上では蛍光色素F又はRと消光剤Qとが近接しており、消光剤Qによって蛍光が抑制された状態になっているが、クリベースによってフレットプローブ61a、bが切断されると蛍光色素F又はRが消光剤Qから離れて蛍光シグナルを生じるようになる。
なお、上記の第1反応においてフラップ領域42a、bが切断されたシグナルプローブ41a、bは各PCR産物11、21から遊離し、そこに新たなシグナルプローブ41a、bがハイブリダイズして同様の反応が繰り返される。これにより、フラップ断片42a、bが経時的に蓄積されて蛍光シグナルが増幅される。
ここで、標的DNA検出用のフレットプローブ61aと競合DNA検出用のフレットプローブ61bは、それぞれ異なる蛍光物質F又は蛍光物質Rを有しているため、蛍光波長の違いによって標的DNA由来のPCR産物11に起因する蛍光シグナルと競合DNA由来のPCR産物21に起因する蛍光シグナルとを区別して検出することができる。
以上の通り、競合PCRによるPCR産物11、21の存在比は初期のDNA存在比を反映しており、標的DNA由来のPCR産物11と競合DNA由来のPCR産物21とはインベーダー反応によってそれぞれ異なる蛍光シグナルとして検出することができる。従って、インベーダー反応によって生じる2種類の蛍光シグナルを測定して所定の時点における両シグナルの強度比や両シグナルの上昇速度比を算出し、予め作成された検量線を利用することで混合液中の標的DNA10の初期濃度(コピー数)を推定することができる。なお、このような検量線は、例えば、予め様々な量の標的DNA10と一定量の競合DNA20を用いて上記のようなPCR反応及びインベーダー反応を行い、所定の時点における両シグナルの強度比や両シグナルの上昇速度比と標的DNA量との関係とをプロットすることにより作成することができる。
上記のようなDNA定量方法によれば、インベーダープラス法を利用したSNP判定等において、事前にサンプル中のDNA量を測定すること無しに、反応系に持ち込まれたDNA量が適切であったか否かを判定することができる。
具体的には、SNP判定の対象とする単一のサンプル(例えば血液等の生体試料やそこから単離したDNAの溶液)を複数の反応容器(複数の反応チューブ又はマイクロプレート上の複数のウェル)に分注し、その内少なくとも1つの反応容器に上記DNA定量方法のための競合DNA20、PCR反応液、及びインベーダー反応液を添加し、他の反応容器には目的とするSNPを判定するためのPCR反応液及びインベーダー反応液を添加する。これらの反応容器を所定の装置によって同時に温度調節することによってPCR反応及びインベーダー反応を行い、各反応容器から発生する蛍光シグナルを測定する。その後、DNA定量のための混合液を収容した反応容器についての測定結果から初期の標的DNA量、すなわち各反応容器に持ち込まれたSNP判定の対象であるDNAの量を推定し、その結果に基づいて、他の各反応容器からの蛍光シグナルに基づくSNP判定の信頼性を評価する。例えば、標的DNA量について所定の閾値を設定し、上記DNA定量による濃度推定の結果がこの閾値よりも低かった場合には、同じサンプルを用いて得られたSNP判定の結果を破棄するようにすることで誤った判定結果の利用を防止することができる。
なお、本発明のDNA定量方法は、上記のSNP判定のみならず、インベーダープラス法を用いた遺伝子解析全般に適用可能であり、例えば、インベーダープラス法による細菌やウイルスの同定、検出等にも利用することができる。
以上の通り、本実施形態に係るDNA定量方法によれば、遺伝子解析のためのインベーダープラス法の操作の中でサンプル中のDNAを定量し、反応に持ち込まれたDNA量が適切であったか否かを知ることができる。そのため、予め特別な装置を用いてDNA濃度を測定する必要がなく、簡便且つ迅速に信頼性の高い遺伝子解析を行うことができる。
なお、上記のPCR反応、インベーダー反応、及び蛍光検出は個別の装置で行ってもよく、あるいは、サーマルサイクラーと蛍光検出器の機能を兼ね備えた一台の装置(例えば、温調機能付きマイクロプレートリーダ等)で行ってもよい。また、上記のインベーダープラス法による遺伝子解析及びDNA定量を行う際の反応容器としては、汎用的なPCR用のシングルチューブや連結チューブ、又はマイクロプレート等を用いることができるほか、基板上に多数のウェルを形成して成るマイクロチップ(例えば特開2003-070456、WO/2008/053751)を利用することもできる。
以下、従来技術が有する課題及び本発明の作用効果を検証するために行った実験例について説明する。
[実験例1]
本実験例は、合成オリゴヌクレオチド(以下、「合成オリゴ」と略称する)をテンプレートにインベーダープラス法の検出感度を調べたものである。
(サンプルの準備)
まず、インベーダープラス法における標的DNAとするため、以下の配列1、2から成る2種類の合成オリゴからPCRによって2本鎖のDNAを合成した。
配列1:AAACTCAAAGGAATTGACGGGGGCTGTGTCATGTCAAGCAGACTGAGCTCGATGGCTAGACGAACTGT
配列2:AGAAAGGAGGTGATCCAGCCGCAGCTGTGAGAGTGTCGCCGACATGAGACAGTTCGTCTAGCCATCGA
PCRは、10mM Tris-HCl、50mM KCl、5mM MgCl2、各0.8μMの合成オリゴ、各160μMのdATP、dCTP、dGTP、及びdTTP、2.5 unitsのHybriPol DNA Polymerase(バイオライン社、英国)を含む反応液を使用し、94℃で1分間のプレヒーティングの後、94℃で5秒間、59℃で5秒間、72℃で5秒間の条件で20サイクル、最後に72℃で1分間のポリメライゼーションを行った。上記2種類の合成オリゴの3'端側には、相補的な配列が含まれており、PCR反応によって、互いを鋳型及びプライマーとしたDNA合成が行われ、反応液中の合成オリゴの数だけ2本鎖のPCR産物が得られる。
以上により得られたPCR産物をDW(蒸留水)で10の10乗倍希釈及び10の11乗倍希釈したものを、それぞれ後述のインベーダープラス法におけるPCR反応及びインベーダー反応(以下、インベーダープラス反応と呼ぶ)のサンプルとした。
(反応液の調製)
反応液は、10mM Tris-HCl、50mM KCl、10mM MgCl2、各0.5μMのプライマー、各0.6μMのシグナルプローブ、各0.3μMのインベーダーオリゴ、各40μMのdATP、dCTP、dGTP及びdTTP、0.3 unitsのHybriPol DNA Polymerase(バイオライン社、英国)、90unitsのCleavase、FRETプローブ(Third Wave Technologies社)を含んだ反応液(2.5μl)を用いた。なお、FRETプローブは蛍光色素(FAM)で標識されている。
プライマーは、それぞれ以下の配列3,4のものを合成して使用した。
配列3:AAACTCAAAGGAATTGACGGGGGC
配列4:AGAAAGGAGGTGATCCAGCCGCA
上記プライマーによるPCR産物を検出するためのシグナルプローブ、インベーダーオリゴとしては、Universal Invader(Third Wave Technologies社、米国)プログラムにて設計したものをそれぞれ使用した。
(インベーダープラス反応)
マイクロプレートの各ウェルに上記反応液とサンプル0.1μlを加えて全量2.5μlの混合液とし、95℃、1分間のプレヒーティングの後、94℃ 3秒間、68℃ 5秒間の条件で32サイクルでPCR反応を行った。その後、ポリメラーゼを失活させるために、99℃で3分間処理を行った後、63℃でインベーダー反応させた。なお、インベーダープラス反応及び蛍光測定には、MX3000P(ストラタジーン社)を使用した。
表1に上記のインベーダー反応開始後、0秒、150秒、300秒の3点におけるFAMシグナルの測光結果を示す。なおテスト1〜12はマイクロプレートの各ウェルに収容された各混合液に相当し、サンプルの希釈倍率以外の組成はいずれも同一となっている。表中では、3000以上のシグナル上昇が認められたものを増幅有(○)とした。
10乗希釈の反応系(表中のテスト1, 2)では、2つのウェルで共にシグナル上昇が認められ、11乗希釈の反応系(表中のテスト3〜12)では10ウェル中4ウェルでシグナルの上昇が認められた。本例において各混合液中に存在する標的DNAの個数は、10乗希釈の反応系で推定6個、11乗希釈の反応系で0.6個となる。従って、11乗希釈の反応系に着目すると、反応液中に標的DNAが1個あるかないかの反応系において10ウェル中4ウェルで標的DNAを検出できたこととなる。
本発明のDNA定量方法もこうしたインベーダープラス法を利用するものであることから、同程度の検出感度が得られると考えられる。すなわち、本発明の方法は混合液中に1個でも標的DNAが含まれていればそれを検出できる感度を持ち、例えば、感染症の原因菌判定等における微量な標的核酸の定量にも有効であると考えられる。
[実験例2]
本実験例は、インベーダープラス反応によるSNP判定において標的DNAが低濃度の場合に、サンプルがヘテロ接合体であるのに一方のシグナルしか上がらず、ホモ接合体のようになる現象が起こることを示したものである。
(サンプルの準備)
サンプルには、コリエル研究所のDNAパネルのうち、PD35、PD18を選択して使用した。前者はCYP2C9の*2アレルを、後者はCYP2C9の*3アレルをそれぞれへテロで持つものである。各サンプルの吸光度を測定してDNA濃度がそれぞれ1.9ng/μl、及び7.8ng/μlであることを確認し、これらをそれぞれ5倍ずつ段階希釈したものをインベーダープラス反応のサンプルとして使用した。
(反応液の調製)
本実験例では1つのウェルで2種類の塩基配列(すなわち、各SNP部位の野生型と変異型)を同時に検出できるよう、各反応液には、2種類のシグナルプローブ、及びインベーダーオリゴと、各シグナルプローブに対応した異なる蛍光物質(FAM、RED)を含む2種類のFRETプローブとを添加した。それ以外の点は、実験例1と同様にして反応液を調製した。
プライマーは、CYP2C9*2の検出用として以下の配列5、6のものを、CYP2C9*3の検出用として以下の配列7、8のものをそれぞれ合成して使用した。
配列5:TCCTGTTAGGAATTGTTTTCAGCAATGGAAAGAA
配列6:AGTAGTCCAGTAAGGTCAGTGATATGGAGTAGGG
配列7:GGAGCCCCTGCATGCAAGACAGGA
配列8:TGGGGACTTCGAAAACATGGAGTTGCAG
CYP2C9*2検出用、及びCYP2C9*3の検出用のシグナルプローブ及びインベーダーオリゴは、実験例1と同様のプログラムにて設計したものを使用した。
(インベーダープラス反応)
マイクロプレートの各ウェルに上記反応液とサンプル0.1μlを加えて全量2.5μlの混合液とした。インベーダープラス反応は、95℃、10秒間のプレヒーティングの後、94℃ 1秒間、68℃ 1秒間の条件で32サイクルのPCR反応を行い、その後、ポリメラーゼを失活させるために99℃で3分間処理を行った後、63℃でインベーダー反応を行った。なお、インベーダープラス反応及び蛍光測定は実験例1と同様の装置にて行った。
表2に、インベーダー反応開始後、0秒、150秒、300秒、450秒の4点におけるFAMシグナル(野生型に相当)及びREDシグナル(変異型に相当)の測光結果を示す。ここでは段階的な蛍光強度の上昇が認められたものを、シグナル有りと判断した。なお、表中の「2C9*2」、「2C9*3」はそれぞれCYP2C9*2、CYP2C9*3を意味している。また、表中の「Both Signals」は、FAM及びREDが共にシグナル有りと判断されたことを意味し、「Grey(Both Signals)」は両シグナルともその有無が不明であったことを、「No Signals」は両方ともシグナル無しと判断されたことを意味している。
表2から明らかなように、本例ではいずれのウェルにおいてもFAM及びREDの両方のシグナルが立ち上がらなければならないにも関わらず、希釈倍率が上がるに従って一方のシグナルのみが上昇する頻度が高くなっている。ここで、CYP2C9*2のサンプル濃度0.12pg/μlのケースのように、両方のシグナルが立ち上がらない場合は反応に何らかの不具合が生じたことが明らかであるため誤判定を招くおそれはないが、一方のシグナルのみが立ち上がった場合には、そのサンプルはヘテロ接合体であると誤判定されることになる。
[実験例3]
本実験例では、インベーダープラス反応を利用したSNP判定において、PCRによるDNA増幅が多すぎる場合に正しい判定が困難になる例を示す。
(サンプルの準備)
血液10μlを界面活性剤を含む前処理液100μlと混合することによって前処理(詳細は特開2001-299356号を参照)を行い、これを水で20倍に希釈したものをサンプルとした。なお、本例では、後述の各SNP部位が野生型のホモ接合体である2名のボランティアの血液を使用した。
(反応液の調製)
本実験例ではサンプルとして上記のような血液の希釈液を使用するため、反応液としては、10mM Tris-HCl、50mM KCl、10mM MgCl2 、各0.5μMのプライマー、各0.6μMのプローブ、各0.3μMのインベーダーオリゴ、各40μM のdATP、dCTP、dGTPm及びdTTP、0.3 units のHybriPol DNA Polymerase(バイオライン社、英国)、90 unitsのCleavase、FRETプローブ(Third Wave Technologies社)に加え、ポリアミン、硫酸化多糖、界面活性剤、及びDTTを含む反応液を使用した。
判定対象とする標的SNPとしては、前述のCYP2C9の二つのSNPに加えてVKORC1のSNP(rs9934438)を用いた。CYP2C9の二つのSNP部位を増幅、又は検出するためのプライマー、シグナルプローブ、及びインベーダーオリゴとしては、実験例2と同様のものを使用した。
VKORC1のSNP部位(rs9934438)を増幅するためのプライマーとしては、以下の配列9、10のものを合成して使用した。
配列9:TGGACCCTGCCCGAGAAAGGTGATT
配列10:CATGGAATCCTGACGTGGCCAAAGG
また、このSNP部位(rs9934438)を検出するためのシグナルプローブ及びインベーダーオリゴは、実験例1と同様のプログラムにて設計したものを使用した。
(インベーダープラス反応)
上記の反応液にサンプル1μlを加えて全量2.5μlとし、実験例1に準じてインベーダープラス反応及び測光を行った。
表3にインベーダー反応開始後、0秒、150秒、300秒の3点におけるFAM及びREDシグナルの強度、及び各シグナルの上昇割合を示す。表中の「2C9*2」、「2C9*3」はそれぞれCYP2C9*2、CYP2C9*3を意味している。なお、CYP2C9の*2, *3は、いずれもFAMが野生型、REDが変異型に相当し、VKORC1はREDが野生型、FAMが変異型に相当する。表中の150/0、300/0、300/150は、各測光時点におけるシグナルの上昇割合を表しており、例えば「150/0」の列は、反応開始後0秒と150秒とにおけるシグナル強度の比率を表している。また、表中のSample1、2はそれぞれ各血液提供者の血液を用いた試行を表している。
この表から、CYP2C9の2つのSNP(*2, *3)については、野生型に対応するFAMのシグナルのみが上昇し、変異型に対応するREDのシグナル上昇はわずかであることが認められるが、VKORC1(rs9934438)については、Sample1の150/0比及びSample2の300/0比から明らかなように、野生型に対応するREDのシグナルだけでなく、本来シグナルが上がらないはずのFAMについてもシグナルの上昇が認められる。
上記のようなバックグラウンドの上昇はPCRのサイクル数が多いことに起因するものと考えられる。なお、通常のインベーダープラス反応ではPCRのサイクル数が30回であるところ、本例では32回としている(実験例1、2でもPCRのサイクル数は32回であるが、これは低濃度のサンプルを使用しているためである)。なお、同様の現象は、混合液中の当初のDNA量が多い場合にも観察される。
[実験例4]
本実験例では、インベーダープラス法における標的DNA量と反応液量の関係に着目した試験を行った。サンプルとしては前述のPD35を使用し、CYP2C9*2を標的SNPとした。
実験条件は実験例2に準じるが、上記混合液の総量を、2.5、7.5、15μlの3通りに変化させた。また、サンプルは希釈せずに添加量を2通り(上記各混合液の総量の1/25量、又は1/125量)設定し、合計6通りの条件で4回の試行(n1〜n4)を行った。
図2に、本実験例におけるFAM及びREDシグナルの測定値の経時変化を示す。各グラフ中の黒色の線がFAMシグナルを、灰色の線がREDシグナルを表している。混合液の液量が2.5μlの場合(左端の2列)には、サンプル濃度が高いもの(25倍希釈:左側の列)でも高頻度で誤反応が観察された(すなわち、本来ならFAMとREDの両方のシグナルが立ち上がるべきところ、一方のシグナルのみが上昇していた)。また、混合液の液量が7.5μlの場合(中央の2列)には、サンプル濃度が低いもの(125倍希釈:右側の列)で誤反応が見られた。一方、混合液の液量が15μlのもの(右端の2列)では、全試行中1試行のみ(n4:一番下の行)で誤反応があったものの、その頻度は著しく低かった。
このことから、サンプルのDNA濃度が低くても反応系全体の液量が多ければ、標的DNAの絶対量が稼げるために反応時の問題が起こりにくく、液量が少ない場合には、標的DNAの絶対量が少なくなるために誤反応が起こりやすくなると考えられる。
[実験例5]
本実験例では、標的DNAの濃度によって、インベーダープラス法の反応速度が変化する例を示す。
(サンプルの準備)
界面活性剤を含む前処理液100μlに血液を5μl、3μl又は、1μl添加して前処理を行い、それぞれを水で20倍に希釈したものをサンプルとした。なお、血液は実験例3の2名のボランティアのうちの1名のものを使用した。
(反応液の調整)
反応液は実験例3に準じて調製した。標的SNPとしては、VKORC1のSNP(rs9923231)と上述のCYP2C9*3を使用し、CYP2C9*3部位を増幅、又は検出するためのプライマー、シグナルプローブ、及びインベーダーオリゴとしては、実験例2と同様のものを使用した。
VKORC1のSNP部位(rs9923231)を増幅するためのプライマーとしては、以下の配列11と配列12のものを合成して使用した。
配列11:CACCTCGGCCTCCCAAAATGCTAGG
配列12:GGGATCCCTCTGGGAAGTCAAGCAA
また、このSNP部位(rs9923231)を検出するためのシグナルプローブ及びインベーダーオリゴは、実験例1と同様のプログラムにて設計したものを使用した。
(インベーダープラス反応)
上記の反応液にサンプル1μlを加えて総量2.5μlの混合液とし、インベーダープラス反応を行った。インベーダープラス反応は、まずPCRとして、95℃ 10秒間プレヒーティングの後、94℃ 3秒間、68℃ 5秒間の条件で30サイクル行い、その後、ポリメラーゼを失活させるために、99℃ 3分間処理した後、63℃でインベーダー反応させた。測光は、実験例1に準じて行った。
図3に、インベーダー反応開始後の各時刻における蛍光強度を示す。図中の「2C9*3」、「VK4」は、それぞれCYP2C9*3、VKORC1(rs9923231)を意味している。CYP2C9*3は反応開始後、0秒、150秒、及び300秒の3点で測光し(図3(a)の0、15、30のグラフ)、VKORC1(rs9923231)は、反応開始後、0秒、100秒、及び200秒の3点で測光を行った(図3(b)の0、10、20のグラフ)。
図から明らかなように、血液量が少なくなるに従って各測光タイミングでの蛍光強度が低下していることが観察された。
以上の結果から、インベーダープラス法におけるインベーダー反応の速度は、血液量、すなわちサンプル中のDNA濃度に依存して変化するものと考えられる。
[実験例6]
本実験例は、実験例5と同様の実験をサンプルの濃度を変えて行ったものである。なお、ここでは標的SNPとして、VKORC1の2種類のSNP(rs9923231及びrs9934438)を使用した。
(サンプルの準備)
界面活性剤を含む前処理液100μlに実験例5と同一人の血液を10μl添加して前処理を行い、それぞれを水で20倍に希釈したもの(これを「基本サンプル」と呼ぶ)、及びこれを更に、2、10、40倍に希釈したものをサンプルとした。
(反応液の調整及びインベーダープラス反応)
反応液の調製及びインベーダープラス反応は実験例5に準じて行った。但し、上記2つの標的SNPの領域を増幅するためのプライマー、及びこれらを検出するためのシグナルプローブ、及びインベーダーオリゴとしては、それぞれ実験例3、5に記載のものを使用した。
図4に本実験例におけるインベーダー反応開始から0、150、300秒後の蛍光強度を示す。なお、図中ではVKORC1(rs9934438)を「VK1」、VKORC1(rs9923231)を「VK4」と表記している。図4(a)はVKORC1(rs9934438)を、図4(b)はVKORC1(rs9923231)を標的とした際の結果を示しており、図中の*1, *1/2, *1/10, *1/40は、それぞれ上記の基本サンプル、及び該基本サンプルを2倍、10倍、40倍に希釈したサンプルに相当する。
この図から明らかなように、希釈倍率を大きくした場合でも、実験例5と同様にDNA濃度に依存して反応速度が変化していることが確認できた。すなわち、インベーダープラス法の反応速度は、所定のDNA濃度範囲においてはその濃度に依存して変化するが(実験例5、6)、極端にDNA量が少ない場合には、意図しないシグナルが上昇する場合がある(実験例2、4)。
[実験例7]
本実験例は本発明に係るDNA定量方法の作用効果を検証するために行ったものであり、合成オリゴ(競合DNA)を内部標準として添加することによって濃度変化を検出する例を示す。
(標的DNA及び競合DNAの準備)
上述のPD35を標的DNAとし、これを200pg/μl、50pg/μl、20pg/μl、10pg/μlの各濃度に希釈したものをサンプルとして使用した。
また、以下の配列13,14から成る合成オリゴからPCRによって2本鎖のDNAを合成し、得られたPCR産物を10の8乗倍希釈及び10の9乗倍希釈したものをそれぞれ濃度測定用の競合DNAとした。なお、PCR反応は実験例1に準じて行った。
配列13:GCTTCTGACACAACTGTGTTCACTAGCATGTGTCATGTCAAGCAGACTGAGCTCGATGGCTAGACGAACTGT
配列14:CACCACCAACTTCATCCACGTTCACCGCTGTGAGAGTGTCGCCGACATGAGACAGTTCGTCTAGCCATCGA
(反応液の調製)
反応液の組成は実験例3と同様とした。なお、本実験例では、DNA濃度測定用の標的領域としてβ-グロビン遺伝子を利用するものとし、この領域を増幅するためのプライマーとして以下の配列15,16のものを合成して使用した。
配列15:GCTTCTGACACAACTGTGTTCACTAGCA
配列16:CACCACCAACTTCATCCACGTTCACC
また、標的DNA検出用のシグナルプローブ及びインベーダーオリゴは、実験例1と同様のプログラムにて設計したものを使用した。
(インベーダープラス反応)
上記反応液にサンプル1μl及び競合DNA溶液0.3μlを加えて全量2.5μlの混合液とし、実験例1に準じてインベーダープラス反応を行った。
図5(a)に本実験例におけるシグナル測定値の経時変化(反応曲線)を示す。測光は10秒おきに行い、競合DNAの反応シグナルであるFAMの蛍光変化量(前後の測定点間における蛍光強度の差分)の最大値と、同じタイミングにおけるβ-グロビンの反応シグナルであるREDの蛍光変化量、及びその比(FAM/RED)を算出した。図5(b)に各サンプルについての前記の差分最大値の比(FAM/RED)を示す。なお、図5(b)中の200、50、20、10は、サンプルのDNA濃度を表しており、それぞれ200pg/μl、50pg/μl、20pg/μl、10pg/μlに対応している。図5(b)から明らかなようにDNA濃度の減少に従って、FAM/RED比が増加しており、競合DNAと標的DNAのシグナル比がインベーダープラス反応を行う前の標的DNA量に依存していることが分かる。従って、所定の閾値(例えば20)を定めておき、FAM/RED比がこの閾値以上の値を示した場合に標的DNA量が少ないと判定することができる。
[実験例8]
本発明によるDNA定量を行う際に検体(サンプル)のDNAが著しく少ない場合には、上述の競合PCRにおいて内部標準の競合DNAばかりが偏って増幅され、その後のインベーダー反応によって得られる蛍光シグナルが初期の標的DNAと競合DNAの比率を反映したものとならないことがある。そこで、本実験例では、このような事態を回避するために内部標準となる競合DNAとは別の競合DNA(以下、第2競合DNAと呼ぶ)を更に添加する例を示す。
(サンプルの準備)
界面活性剤を含む前処理液100μlに実験例5と同一人の血液を10μl添加して前処理を行い、それぞれを水で20倍に希釈したもの(これを「基本サンプル」と呼ぶ)、及びこれを更に、3、10、20倍に希釈したものをサンプルとした。
(第2競合DNAの準備)
以下の配列17、18から成る合成オリゴからPCRによって2本鎖のDNAを合成し、得られたPCR産物を10の7乗倍希釈したものを上記第2競合DNAとした。なお、PCR反応は実験例1に準じて行った。
配列17:GCTTCTGACACAACTGTGTTCACTAGCAACCTCAAACAGACACATTGCGACTCGTAGCTCCTGAGGAGAAGT
配列18:CACCACCAACTTCATCCACGTTCACCTTGCCCCACAGGGCAGTAACGGCAGACTTCTCCTCAGGAGCTACG
(反応液の調整及びインベーダープラス反応)
反応液としては実験例7と同様のものを使用した。なお、内部標準の競合DNAとしては実験例7で得られた配列15、16のPCR産物を10の6乗倍希釈したものを使用した。
上記サンプル1μl、上記競合DNA及び第2競合DNA各0.15μlずつを前記反応液に加えて全量2.5μlの混合液とし、実験例7と同様の反応条件にてインベーダープラス反応及び測光を行った。
実験例7と同様にして求められた本実験例におけるFAM及びREDの蛍光変化量(差分)の最大値、およびその比(RED/FAM)を表4に示す。本例では、REDが内部標準である競合DNAの反応シグナルであり、FAMが標的DNA(βグロビン)の反応シグナルである。
表4から明らかなように、サンプル(血液)の濃度が低くなるに従い、RED/FAM比が増加しており、標的DNAと内部標準の競合DNAのシグナル比がインベーダープラス反応を行う前の標的DNA量に依存していることが分かる。表4のデータに基づいてFAM及びREDの蛍光変化量の最大値の比(RED/FAM)と反応前の標的DNA量との関係を表した検量線を図6に示す。なお、同図におけるDNA濃度は、血液中のDNA濃度が平均35ng/μlであることに基づいて算出した概算値である。ここでは、目安としてRED/FAM=1.0を閾値とし、この値を上回る場合にはSNP検出に適した濃度でないと判断することができる。なお、前記1.0という閾値はあくまで今回の実験条件によるものであり、こうした閾値は装置の感度や試薬組成に応じて適宜に定められるべきものである。
10…標的DNA
20…競合DNA
31、32…プライマー
41a,b…シグナルプローブ
42a…フラップ断片
51a、b…インベーダーオリゴ
61a、b…フレットプローブ
F、R…蛍光物質
Q…消光剤
配列1:合成オリゴヌクレオチド
配列2:合成オリゴヌクレオチド
配列3:PCRプライマー
配列4:PCRプライマー
配列5:PCRプライマー
配列6:PCRプライマー
配列7:PCRプライマー
配列8:PCRプライマー
配列9:PCRプライマー
配列10:PCRプライマー
配列11:PCRプライマー
配列12:PCRプライマー
配列13:合成オリゴヌクレオチド
配列14:合成オリゴヌクレオチド
配列15:PCRプライマー
配列16:PCRプライマー
配列17:合成オリゴヌクレオチド
配列18:合成オリゴヌクレオチド

Claims (4)

  1. a) 標的DNAを含むサンプルと、該標的DNA上の所定領域を増幅するためのプライマー対を含むPCR反応液と、上記プライマー対によって増幅可能且つ該プライマー対によって増幅される領域内に前記標的DNAと区別可能な配列を持つ既知量の競合DNAと、前記標的DNA由来のPCR産物と前記競合DNA由来のPCR産物とをインベーダー反応によって各々特異的に検出するためのインベーダー反応液と、を含む混合液を調製する調製工程と、
    b) 前記混合液の温度を制御することによりPCR反応及びインベーダー反応を行う反応工程と、
    c) 前記インベーダー反応による、前記標的DNA由来のPCR産物と競合DNA由来のPCR産物の検出結果に基づいて前記PCR反応前の混合液における標的DNA量を推定するDNA量推定工程と、
    を有するDNA定量方法であって、
    前記混合液が更に、前記プライマー対によって増幅可能且つ前記のインベーダー反応液によって検出されない配列から成る第2の競合DNAを含むことを特徴とするDNA定量方法。
  2. 上記DNA量推定工程が、前記インベーダー反応における標的DNA由来のPCR産物の検出信号と競合DNA由来のPCR産物の検出信号に基づいて、所定時点における各信号の強度比又は各信号強度の上昇速度の比から前記標的DNA量を推定するものであることを特徴とする請求項1に記載のDNA定量方法。
  3. 標的DNAを含むサンプルを複数の反応容器に分注し、一部の反応容器においてインベーダープラス法による該標的DNAの遺伝子解析を行うと共に、他の反応容器において請求項1又は2に記載のDNA定量方法による標的DNAの定量を行い、該定量結果に基づいて前記遺伝子解析の信頼性を評価することを特徴とする遺伝子解析方法。
  4. 上記一部の反応容器と前記他の反応容器とを同時に温度制御することによりPCR反応及びインベーダー反応を行うことを特徴とする請求項に記載の遺伝子解析方法。
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